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MONJU や Sick Team といったグループとしての活動に加えて、BudaMunk、Gradis Nice、Scratch Nice、BES といったアーティストとのジョイント・プロジェクト、そして、ソロ名義でのリリースはもちろんのこと、様々なアーティストの作品へのゲスト参加、さらに 16FLIP 名義でプロデューサーとしても活躍するなど、実に幅広い活動を繰り広げながらも、その軸は全くブレることはない孤高のラッパー、ISSUGI。以前よりバンドを従えてのライヴを行なっていた彼が、WONK のメンバーや盟友である BudaMunk を含む6名のミュージシャンをバックバンドに従えて制作を行なったのが本作『GEMZ』だ。
全16曲のうち10曲が今回のアルバムのために作られた新曲で、残り6曲が ISSUGI の関連している既存の曲のバンド・アレンジによるセルフ・リメイク(リミックス)という構成になっており、そのサウンドの軸になっているのは当然、楽器を使用しての生音だ。しかし、単純に “バンド・サウンドによるヒップホップ・アルバム” という前提で本作を聴くと、良い意味で本作はこちらの思いを裏切ってくれる。“BLACK DEEP” (MONJU)、“LIL SUNSHINE REMIX”、“踊狂REMIX” (Sick Team)といったリメイク曲を中心に、ライヴ感というかセッション感が強く出ている曲もあるが、逆にアルバム冒頭の “GEMZ INTRO” や “ONE RIDDIM” のようにひとつひとつの音は生であるのに、打ち込みの感覚が強く出ている曲も多数存在している。それは実際に生音をサンプラーに通して BudaMunk がパッドにて演奏していたり、あるいは手練れのミュージシャン達があえてグルーヴをそちらの方向へ寄せているというものもあるだろうが、その結果、本作はこれまでの ISSUGI が作り上げてきた数々の作品の流れの上にしっかりと存在している。大半の曲で BudaMunk あるいは ISSUGI 自身(=16FLIP)がプロデュースを手がけており、彼らのグルーヴ感が貫かれているというのは当然なのかもしれないが、それぞれのミュージシャンのヒップホップへの理解度の深さも、作品のクオリティにもしっかりと直結しているように思う。特にヒップホップ・バンドにありがちな、オーガニックな質感というのが極力削ぎ落とされており、バンド・スタイルに抵抗のあるヒップホップ・ヘッズにもこのサウンドは受け入れられやすいに違いない。
本作中、聴きどころは多数あるが、ISSUGI ファンであればまずは “BLACK DEEP” を聴いて欲しい。MONJU のクラシック・チューンを忠実に再現しつつ、一方で生音によって厚みを加えて、バンド・アレンジとしてひとつの完成形と言えるだろう。一方で “LIL SUNSHINE REMIX” ではサンプリング・ネタとしてはド定番である Roy Ayers “Everybody Loves The Sunshine” をぶち込むことで、原曲とはまた異なる方向性のテイストを加えており、こちらもヒップホップならではの再構築の手法を見事に示している。ヒップホップならではの面白さという意味では、KOJOE をフィーチャーした新曲 “MISSION” も同様で、Jay-Z “Roc Boys” の引用の仕方が実に巧みで、バンドのヒップホップ的な優れたセンスとスキルの高さもダイレクトに伝わってくる。ちなみに個人的には生音と打ち込みのバランス感覚が絶妙な “HERE ISS” や Devin Morrison が参加した “OLD SONG” などが最も好きなラインであるが、このテイストでアルバム1枚作ったとしても素晴らしい作品が生まれるに違いない。今後、バンド・スタイルが ISSUGI の主軸になっていく、なんてことはおそらくないであろうが、本作で得たものが彼の大きな武器にもなって、今後の作品にもプラスに作用していくことを期待したい。
大前至