「UR」と一致するもの

Alfa Mist - ele-king

アルファ・ミスト──ライヴから新作『Structuralism』について考える

 アルファ・ミストの音楽には、含みがある。近年のジャズの一部の潮流と並走するように、洗練されたロジカルな音楽的構造と、ヒップホップ由来のグルーヴを併せ持つ。しかし彼の音楽を覆いつくすのは、ダークで思索的、そしてメランコリックなムードだ。新作『Structuralism』のアルバム・カヴァーに描かれているように、ひとり街角に佇んで物思いに沈み込み、やがて歩き出す現代人のためのサウンドトラック。
 2015年リリースのファースト・アルバム『Nocturne』からそのトーンは一貫している。今年2019年にリリースされた最新アルバムは『Structuralism』(=構造主義)と題されている。そう聞くと、レヴィ=ストロースやジャック・ラカンを想起する者もいるかもしれない。アルファはどのような思いでこのタイトルをつけたのだろう。構造主義においては、主体的に行動する個々人よりも、個に先立って個の意味を決定づける関係性が重視される。この関係性こそが個々の意味を決定づける。そしてこの関係性を、構造と呼ぶ。例えば言語は個人に先立って存在する象徴的な存在だ。だから言語は個人の思考や行動を拘束する。しかしすでに誰かのものだった言葉をくり返し使用することで、人は主体性や自立性を獲得する()。これと同じことが、音楽についても言えるだろうか。すでに誰かのものである──過去に誰かもプレイした──フレーズをくり返し演奏することを通して、ミュージシャンは主体性や自立性を獲得していくのだと。
 もっと単純に、このアルバムに様々な「構造」を見出すこともできるだろう。全編を埋め尽くす複雑なハーモニーやリズム、あるいは例えば“Retainer”における組曲形式の構造。それらを踏まえれば、アルファ・ミストは、あえて言うなら、構造主義前後の1950~60年代に活躍したレニー・トリスターノや、アンドリュー・ヒルのような、楽曲や奏法の構造やコンセプトを巡って思索を積み重ねたピアニストたちの姿勢をも思い起こさせる。

 2019年7月4日、BLUE NOTE東京。20時丁度に、セカンドステージのショウが始まる。オープニングの“.44”のテーマが聞こえてきた途端、リラックスした客席の空気は一変する。ステージの左側に陣取るアルファ・ミストは、メインとするフェンダーローズやウーリッツァーの音色でプレイするヤマハのCP-88と思しきキーボードと、アコースティック・ピアノの間に座る格好だ。『Structuralism』の冒頭を飾る同曲は、ドラマーのピーター・アダム・ヒルのビートに先導され、ライヴの緊張感を後押しするように若干アップテンポで演奏される。印象的なテーマをなぞるトランペットのジョン・ウッドハムのミュート・サウンドは、「構造」に焦点を当てるという営為のどこか醒めた視線を象徴しているようでもある。ワウペダルやディレイを活用したジョンのソロが、リズムの隙間を縫うような、短いぶつ切りのパッセージの多用で、静かに場を温めていく。
 間髪入れずに後に続く“Naiyti”では、16分の17拍子という変拍子(ここでは1小節に16分音符のハットが5回、4回、4回、4回の組み合わせ)に、オーディエンスは狐につままれたようなノリ方を余儀なくさせられるが、メンバーたち、特にアルファはお構いなしにガンガン首を振ってノッている。スムースに進行するテーマ部分ではこの特異なリズムを意識させないのだが、各自のソロとなると、途端にこのリズム面での「構造」へのアプローチに耳がいく。ES-335シェイプのギターを抱えるジェイミー・リーミングのソロは、アルファやピーターの音への反応を挟みつつ、決して速弾き──例えば32分音符以上の速さで──はしないと自らに課しているかのようだ。速度や手癖による誤魔化しなし、といった風情。各パッセージ間の隙間を活かした抑え気味の単音のラインから、エフェクトを利用したオクターヴ奏法(オクターヴ上のエフェクト音がティンパニーのサウンドを想起させる)、そしてブロックコードの激しい応酬と、徐々に熱量を増すピーターのプレイとリンクしながら、段階的に場を盛り上げていく。リズム面で耳を引く奇数単位で構成するフレーズ・パターンも交えながら、最後はカッティング中心に激しいダイナミズムの上下を演出した彼のプレイは、オーディエンスから拍手喝采を引き出した。
 アルファ・ミストのバッキングも、濁ったテンション満載の和音爪弾きから、ビートに合わせてキャップを被った頭を振りながら、徐々にスタッカートの効いたリズムを強調したフレーズが目立つようになる。満を持してやってくる彼のソロ・パートでは、ジェイミーとの速弾き禁止の約束事を共有しているかのように、決して速いパッセージは現れない。ソロという独立したパートを技巧のひけらかしの機会とするのではなく、むしろ彼の楽曲自体が持ちうるハーモニーの複雑かつ豊かな構造をつまびらかにするために、ギリギリのスケールアウトを繰り返しながらその輪郭をなぞっていくようなのだ。他者──無数のプレーヤーたち──とフレーズを共有しながら、スケールアウトするノートを彫刻刀のように扱って、独自性を削り出していくこと。

 続いて披露された“Retainer”は字義通りの「構造」を象徴するような、3章から成る組曲だ。ここではストリングスをフィーチャーした中間のパートを省略したふたつの楽章が披露されたが、白眉は後半の変拍子(今度は16分のハットが14回、14回、12回のセットがワンループ)にメランコリックなハーモニーが組み合わさったパートだ。ピーターの肌理の細かいフィルインの嵐に、今夜一番の熱っぽさでソロを回すメンバーたちの熱量に、多くのオーディエンスが掛け声で応答する。
 自分がいかにヒップホップとジャズの影響を等しく受けて生きてきたかを伝えるアルファのMCに続いて披露されたのは、“Glad I Lived”。イントロのエレピリフに続いて、アルファ自身のラップが披露される。ローズ弾き語りラップとでも言うべきその姿は新鮮だ。リリックで発信されるメッセージはタイトルの通りポジティヴなものだが、それだけには留まらない。ヒップホップ由来のグルーヴに支えられるハーモニーが、メランコリックながらも不協和音に力点を置かれていることによる、どこか暗くくぐもった含み。それがループする様は、逡巡する終わりなき思考を想起させられる。エレピのプレーヤーでいうなら、RTF期のチック・コリアのメランコリックな美しさと、エレクトリック・マイルス時代のハービー・ハンコックの呪術的な不協和音とリズミカルなアプローチを両方兼ね備えた上、さらにヒップホップでサンプリングされるボブ・ジェイムズやジョー・ザヴィヌルのビートとのフィット感も持つといったところだろうか。
 この曲もまた、複雑な構造を持つ。最初のラップ・パートから、フックを経て、メランコリックなストリングスをフィーチャーしたブレイクダウンがやって来る。そうして辿り着く後半では、オーヴァードライヴがかったウーリッツァー的なヴォイスでギターのように奏でる和音とベースラインが、J・ディラ──しかもグラスパーの“Dillalude#2”を経由した──を想起させる。さらにはその後、テンポダウンした16ビートを背景に、アルファのエレピが歪んだハープのように掻き鳴らされ、ベースラインが激しい動きを帯びると、今度はフライロー的なコズミックな世界観に包まれる。アルファの作品全般に、ディラやフライローからの大きな影響が見られるというわけではないが、こうした展開からも、ジャズとヒップホップが彼の中で等しいレベルで血肉化されているのを感じる。
ファースト・アルバム『Nocturne』で披露している打ち込みのビートは、その音色も含めどれもヒップホップのビートの「快楽」に慣れ親しんでいる者の所作だ。同郷のラッパー Barney Artist やドイツのビートメイカー Flofilz のアルバム参加曲も素晴らしく、アルファが参加することで彼の鍵盤のハーモニーが楽曲に──もっといえばループに──豊かな響きを与えていることは疑いようがない。トム・ミッシュの『Beat Tape 2』に収録されているコラボ曲“Hark”も、まさにそうだった。

 前作『Antiphon』から、アルバムのアートワークも手掛ける多才なカヤ・トーマス=ダイクのヴォーカルがフィーチャーされたエキゾチックな“Breath”と“Keep On”が演奏され、ショウは終盤を迎える。アンコールでは、客席からサプライズ・ゲストのように現れマイクの前に立つキアラ・ノリコをフィーチャーした新作のボーナス・トラック“Silence”を経て、〆の1曲は2018年のシングル「7th October: Epilogue」収録の“Resolve”が披露された。高速テンポならではの、ピーターによる一糸乱れぬ高速ファンクが駆け抜ける同曲では、またもやコーラスのかかった浮遊感溢れるアルファのウーリッツァー・サウンドが印象的だ。トランペットもギターも、BPMが速いためにうねるようにオンビートでソロを刻むのだが、その分調性からはどこまで自由になれるか競い合うような、緊張感に溢れるソロが展開される。高速テンポに体を揺らしながら複雑なパッセージを追うという分裂的な体験によって、オーディエンスがみな異常な集中力でステージを凝視するなか、この特別な一夜は幕を閉じた。
 ダンス・ミュージックを始めとする音楽は、ある種の単調さ──反復されるビートやフレーズ──によって現実逃避を助けてくれるところがある。しかしアルファのようなプレイヤーがもたらしてくれるハーモニーやリズムの含み、あるいは複雑さは、そのままひとりの人間の感情の複雑さ、そしてひとりで歩き、対峙せざるをえない世界の複雑さに目を向けさせてくれるように思える。
 アルファの音楽は、四六時中バックグラウンドに流しておく性質のものではないかもしれない。しかしアルファが、個人に先立って存在する音楽と、それをプレイするミュージシャンとの関係性に着目する意味で「構造主義」という言葉を用いたのだとすれば──彼の音楽が、先人たちによって蓄積されたフレーズをプレイすることでミュージシャンが独自性を獲得していく複雑なプロセスを示しているとするならば──、僕たちオーディエンスもまた、そのビートに自分たちの複雑な歩みを重ねたとしても、不思議ではないだろう。

※ 参考文献:出口顯『ほんとうの構造主義──言語・権力・主体』NHK出版、2013年。


OOIOO - ele-king

 日本でもっともオルタナティヴなバンド、ボアダムスの一員であり、昨年はロバート・アイキ・オーブリー・ロウ、スージー・イバラとともに素晴らしいライヴ録音盤『Flower Of Sulphur』を発表している YoshimiO。彼女の率いるバンド OOIOO が6年ぶりにアルバムをリリースする。タイトルは『nijimusi』で、10月10日に〈SHOCHY〉より発売。年明けには〈Thrill Jockey〉よりワールドワイドで発売されることも決定している。また、それに合わせて全国ツアー《OOIOO 滲ム ON 2019》もスタート、京都・大阪・宮城・東京をまわる。もしあなたが刺戟的なサウンドを求めているなら、この機会を逃してはならない。

OOIOO 滲ム On 2019

Thursday 3 October
In KYOTO @ Club Metro

京都市左京区川端丸太町下ル下堤町82 恵美須ビルB1F
B1F Ebisu Bldg. 82 Simodutsumi-cho Kawabata Marutamachi Sagaru Sakyoku Kyoto Japan
京阪・神宮丸太町駅2番口直通

Open 18:30 / Start 19:15
adv. 3000yen / door 3500yen (+1Drink)

w / 山本精一 & アリマサリ Seiichi Yamamoto and ARimasaLLi
α area (Sojirou from Abraham Cross)
DJ ALTZ

sound / kabamix

total info.
Kyoto Club Metro
phone: 075-752-4765

ticket
・ mail reserve
件名に「10/3 OOIOO 前売予約」と記入し、枚数、代表者さまのお名前と連絡先をお書きの上、ticket@metro.ne.jp に送信してください。*基本的にキャンセルはご遠慮くださいませ。
・ チケットぴあ (Pコード:159-428)
・ ローソンチケット (Lコード:56003)
e+

Friday 4 October
In OSAKA @ NOON+CAFE

大阪市北区中崎西3-3-8JR京都線高架下
3-3-8 Nakazakinishi Kitaku Osaka Japan

Open 18:00 / Start 19:00
adv. 3000yen / door 3500yen (+1Drink)

w/ α area ( Soojiro from Abraham Cross )
CROSSBRED
DJ YAMA

sound / kabamix

food : WOOST engine meals
アジアの食卓と地球エネルギーをイメージして、今の気分と食感のリズムを大切にお料理する亜細亜的移動食堂屋

total info.
NOON+CAFE
phone: 06-6373-4919
email: info@noon-cafe.com

ticket
・ mail reserve
件名に「10/4 OOIOO 前売予約」と記入し、枚数、代表者さまのお名前と連絡先をお書きの上、info@noon-web.com に送信してください。*基本的にキャンセルはご遠慮くださいませ。
・ ローソンチケット (Lコード:55265)
e+

Sunday 6 October
In MIYAZAKI @ Wandern

宮崎県都城市中町1-9
1-9 Nakamachi Miyakonojo Miyazaki

Open 18:00 / Start 19:00
4000yen (Includes 1drink)

live / OOIOO
sound / kabamix

total info. & ticket
・ tel.reservation
phone: 090 4601 8653 (セキ リョウタロウ)
・ mail reserve
件名に『OOIOO』と記入し、お名前・枚数・連絡先を書いて、wwd.ryotaro518@gmail.com に送信してください。確認後、返信メールをお送りします。
*電話 / eMAIL 予約、いずれの場合もキャンセルされる場合は必ずご連絡をお願い致します

Thursday 7 November
In TOKYO @ O-WEST, Shibuya

東京都渋谷区円山町2-3 2F
2-3 2F Maruyamachi Shibuya, Tokyo

Open 18:30 / Start 19:15
早割 early bird rate 2500yen / advance 3500yen (+1drink)

abura derabu 2019
live / GEZAN, FUCKER, OOIOO
sound / ZAK

ticket info
early bird rate O-WEST店頭早割 2019/7/21 13:00 - 2019/8/5 17:00 (03-5428-8793)
advance 一般販売 2019/8/10 11:00 e+

total info
シブヤテレビジョン 03-5428-8793 (mon to fri 12:00-18:00)

Bon Iver - ele-king

 先日新たに“Jelmore”と“Faith”の2曲が公開され、ますますニュー・アルバム『i, i』への期待が高まっているボン・イヴェールですが、なんと、新作の全世界同時先行試聴会が催されることになりました。日本では渋谷 Galaxy - Gingakei にて8月7日に開催。2019年の代表作になりそうな1枚をいち早く試聴する絶好の機会です。予定の空いている方はぜひ足を運んじゃいましょう。

Bibio - ele-king

 春先に喚起力豊かなニュー・アルバム『Ribbons』をリリースしたばかりのビビオが、未発表の新曲“Spruce Tops”を公開した。同作に収録されたサックスの映える素敵な1曲“The Art Of Living”のシングルカットに伴い、B面として採用された次第である。フルートとギターの対比がじつに麗しい。ビビオの旅路はまだまだ続くのだ……

BIBIO

最新アルバム『Ribbons』未収録の新曲“Spruce Tops”をカップリングした2曲入りシングル「The Art Of Living」をリリース!

聴く者の記憶や、心に浮かぶ情景に寄り添う心温まるサウンドで幅広い音楽ファンから支持を集める Bibio が、待望の最新アルバム『Ribbons』に収録された“The Art Of Living”に、アルバム未収録の新曲“Spruce Tops”をカップリングした2曲入りシングルをデジタル・ダウンロードとストリーミングでリリースした。

The Art Of Living
https://youtu.be/NMZ7NKj0wMw

Spruce Tops
https://youtu.be/Q41voFN0e5c

Bibio ことスティーヴン・ウィルキンソンは“The Art Of Living”を制作した際のインスピレーションを次のように語っている。

人生は目的のない旅だ。経験が素晴らしい師となり得る。その経験が辛いものであればあるほど。感動っていうのは、自分の足元にあるものだ。最もインスピレーションを与えてくれるものは、シンプルで身近にあるものだと思う。僕らの体や心には、順応し、回復する機能が備わっている。人生の旅っていうのはAからBに行くっていうようなものではなくて、もっと大きくて、曖昧なものなんだ。それは音楽に関しても言える。この曲は、個人的な経験や観察、そして哲学の教え、詩、その他の僕に影響を与えた色々な考え方を通して感じた可能性というのを反映している。 ──スティーヴン・ウィルキンソン (BIBIO)

新曲となる“Spruce Tops”は、控えめで美しいギターのサウンドが、それとは対照的に優雅なフルートのサウンドと重なり合った、瞑想的でのびのびとしたグルーヴを感じるインストゥルメンタルの楽曲だ。

作曲作詞はもちろん、歌唱、そしてほぼすべての楽器を自ら演奏する Bibio だが、最新作『Ribbons』はさらに独学で学んだマンドリンやバイオリンなどにも挑戦し、作品に新たな色を与えている。国内盤にはボーナストラック“Violet”が追加収録され、歌詞対訳、さらに本人によるセルフライナーノーツを含む解説書が封入される。

電気じかけのサイケデリックな田園空間が花開いていく。家にいながらにして春を味わえる1枚。 ──rockin'on

ビビオのつくりだす手工芸品のような細部は聴くものを魅了し、その儚くも美しい世界がたしかに存在するのを感じさせる ──intoxicate vol:139

フォークミュージックと西海岸のドリーミーさを詰め込んだ力作~。 ──POPEYE 5月号

美しく詩情ゆたかなサウンドは、新たらしい季節をより鮮やかに彩ってくれる ──FUDGE 5月号

label: WARP RECORDS
artist: Bibio
title: The Art Of Living
release: 2019.08.02 FRI ON SALE


label: WARP RECORDS/BEAT RECORDS
artist: Bibio
title: Ribbons

【CD】
cat no.: BRC-593
国内盤CD ボーナストラック追加収録/解説・歌詞対訳冊子封入
2019.04.12 FRI ON SALE

【カセット】
cat no.: BRC-593CS
国内盤カセット ボーナストラック収録
2019.04.12 FRI ON SALE

BEATINK.COM: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10210

Tohji - ele-king

 今年3月に公開された新曲“Rodeo”が大きな注目を集め、その後の主催イヴェント《Platina Ade》は WWW の動員記録を塗り替えるなど、いまもっとも勢いに乗っているラッパーの Tohji が、待望のファースト・ミックステープをリリースする。《Platina Ade》に訪れたオーディエンスの大半が未成年だったという事実は、彼が若い世代から支持を得ていることの力強い証拠だけれど、そんな次世代のホープによる初のまとまった作品集はわたしたちに、いったいどんな表情を見せてくれるのだろう。リリースの8月7日まであと1週間、来る衝撃に備えるべし。

東京を席巻する新たな熱狂の象徴 Tohji、待望の 1st Mixtape 『angel』リリース

既成概念を軽々と更新し続ける圧倒的な存在感で同世代から強く支持され、シーンの垣根を超えた注目を集めるラッパー・Tohji の 1st Mixtape 『angel』が8/7にリリースされる。

Tohji が本作で提示するのは、穢れのない天使像とは異なる、時代の閉塞感を絶ち切る希望の象徴としての「angel」。Tohji の手にする壮大なパレットを駆使して作り上げられた本作は、常に新たな景色を切り拓く Tohji のネクストステージを予感させる内容となっている。

クレジットには、KOHH や BAD HOP にも楽曲提供を行っている MURVSAKI、Kano や AJ Tracey を手がけるUKのトッププロデューサー Zeph Ellis など、錚々たるトラックメーカーが名を連ねる。客演は、Keith Ape との共作“It G Ma”や、Frank Ocean 『blonde』の制作にも携わったことでも知られる Loota。アートワークは、Post Malone や Rejjie Snow を手がけるロシア人アートディレクター Anton Reva によるもので、ビジュアル面からも Tohji の新境地が垣間見える。

8月中に本 Mixtape からミュージック・ビデオを2本公開予定(全4本を予定)。8/8リリース予定となる“HI-CHEW”のミュージック・ビデオを手がけるのは、ベトナム・ハノイを拠点とする気鋭の映像制作チーム ANTIANTIART。8月後半にリリースされる“Snowboarding”を担当するのは、アートワークも手がけた Anton Reva。Tohji のクリエイティビティは、すでに国境を越え全世界へと広がっている。

◆About Tohji

Tohji/アーティスト

ハードとメロウを併せ持つ奔放な音楽性で、東京のユースを中心に熱狂的な支持を集める。

2018年末、主催するコレクティブ「Mall Boyz」としてepを発表。収録楽曲がストリーミングプラットフォームの公式プレイリストに多数ピックアップされ、2019年にリリースしたシングル「Rodeo」は「SoundCloud Japan All genre music chart」で1位を獲得。同年3月には渋谷WWW にて主催イベント「Platina Ade」を実施し、550人のオーディエンスを集め動員記録を更新。6月にはULTRA KOREAへ出演するなど、その勢いは留まることなく、さらに大きなステージへと向かっている。

8月には制作やライブ出演を兼ねたロンドン滞在を予定している。8/9には NTS Radio で自主企画の放送、8/16 にはパーティークルー Eastern Mergins 主催のサウンドクラッシュにヘッドライナーとして参加するなど、今後の展開にも目が離せない。

Twitter:https://twitter.com/_tohji_
Instagram:https://www.instagram.com/_tohji_/

◆商品情報

アーティスト:Tohji
タイトル:angel
リリース日:2019年8月7日

各種配信サービスにてリリース
Spotify: https://open.spotify.com/album/71f01ZBORjdXl61uvZElCN
Apple: https://geo.itunes.apple.com/jp/album/1473784456?mt=1&app=music&at=10l7qr
iTunes: https://geo.itunes.apple.com/jp/album/1473784456?app=itunes&at=10l7qr

◆トラックリスト

01. intro
02. Snowboarding
03. Rodeo
04. mamasaidloveme
05. HI-CHEW
06. Jetlife feat. Loota
07. トウジ負傷
08. on my own way
09. miss u

WWW & WWW X Anniversaries - ele-king

 渋谷を代表するヴェニューであり、精力的に尖ったイベントを開催し続けている WWW と WWW X が、今年もアニヴァーサリー企画《WWW & WWW X Anniversaries》を大展開。WWW はオープン9周年、WWW X のほうは3周年とのことで、相変わらず興味をひく公演ばかりです。
 9/20は《Local X5 World》としてツーシン(Tzusing)とキシ(Nkisi)待望の初来日公演が開催。9/23は D.A.N. の主催する《Timeless》にデンマークから Erika de Casier が参加。10/5は幾何学模様のライヴ、10/12はシカゴからジャミーラ・ウッズの来日公演。10/18は《Emotions》に KID FRESINO と釈迦坊主、そして先ほどミックステープのリリースがアナウンスされたばかりの Tohji が出演する。今年の秋も WWW と WWW X はすごい!

[8月29日追記]
 本日、情報公開第二弾として、新規公演と追加ラインナップが発表された。詳細は下記を。

「WWW & WWW X Anniversaries」追加ラインナップ
※太字が第二弾発表分

●9/20(金・深)「Local X5 World」@ WWW X
 出演:Tzusing / Nkisi / GAIKA / Fuyuki Yamakawa / Yousuke Yukimatsu / Mars89 / Mari Sakurai / speedy lee genesis
●9/23(月・祝)「Timeless #5」@ WWW X
 出演:D.A.N. / Guest Act: Erika de Casier (from Denmark)
●10/5(土)「Kikagaku Moyo JAPAN TOUR 2019」@ WWW X
 出演:幾何学模様 / Kikagaku Moyo / SPECIAL GUEST: OGRE YOU ASSHOLE
●10/12(土)「Jamila Woods」@ WWW X
 出演:Jamila Woods
10/14(月・祝)「In&Out」@ WWW
 出演:Deca Joins (from Taipei) and more
●10/18(金)「Emotions」@ WWW / WWW X / WWWβ
 出演:dodo / KID FRESINO / LEX / 釈迦坊主 / Tasho Ishi / Tohji / SPARTA / YamieZimmer & Friends / DJ: speedy lee genesis and more (A to Z)

 以下は、第一弾発表分です。

WWW & WWW X Anniversaries ページ
https://www-shibuya.jp/news/011281.php

熱狂のアジア&アフロ・ディアスポラ! ハードに燃え盛る中国地下の先鋭 Tzusing とコンゴ生まれ、ベルギー育ちのアフリカン・レイヴ/IDMなロンドンの新鋭 Nkisi (UIQ) を初来日で迎え、世界各地で沸き起こる“第3の力”をテーマとした WWW のシリーズ・パーティ〈Local World〉がアニバーサリーとして開催。圧倒的な“強さ”を誇る全8組のフル・ラインナップにも乞うご期待!

WWW & WWW X Anniversaries "Local X5 World - Third Force - "
日程:2019/9/20(金・深)
会場:WWW X
出演:Tzusing [Shanghai / Taipei] / Nkisi [UIQ / Arcola / London] / and more
時間:OPEN 24:00 / START 24:00
料金:Early Bird ¥1,800@RA *枚数限定 / limited | ADV ¥2,300@RA | DOOR ¥3,000 | U23 ¥2,000
チケット:https://www.residentadvisor.net/events/1298708

公演詳細:https://www-shibuya.jp/schedule/011423.php
https://localworld.tokyo


毎回国内外の多彩なゲストを呼んで開催される、D.A.N. によるレギュラーイベント "TIMELESS"、#5 の開催が決定! 今回のゲストは、デンマークから初来日となる新星アーティスト・Erika de Casier。コペンハーゲンのハウス・シーンと密接に繋がる彼女のアディクティブなトラックと繊細でセンチメンタルなヴォーカルはコアな音楽ファンの間で大きな話題に。作品毎にチャレンジを続け進化するD.A.N. による、まさにダークホースなゲストを迎えた Timeless をお見逃しなく。

WWW & WWW X Anniversaries "Timeless #5"
日程:2019/9/23(月・祝)
会場:WWW X
出演:D.A.N. / Guest Act: Erika de Casier
時間:OPEN 17:00 / START 18:00
料金:ADV ¥3,800(税込 / ドリンク代別 / オールスタンディング)
チケット:
■先行予約:受付期間:8/3(土)12:00~8/18(日)23:59 ※先着
https://eplus.jp/wwwx-timeless5/
■一般発売:8/24(土)10:00~
e+ / ローソンチケット / チケットぴあ / LINE Ticket / iFlyer

公演詳細: https://www-shibuya.jp/schedule/011417.php

世界各国でソールドアウト公演を連発する幾何学模様/Kikagaku Moyo の2年ぶりとなる日本ツアーが決定! 最新作『マサナ寺院群』は「Discogs で最も集められた日本産レコード 2018/2019前半」の首位を獲得し、今年はアメリカ最大級の音楽フェスティバル「Bonnaroo」、ヨーロッパ3大フェスの1つ「Roskilde」などへの出演に加え、King Gizzard & The Lizard Wizard や Khruanbin といった現在の欧米インディーシーンをけん引するアーティストたちとの交流も深く、まさに日本のサイケデリアを代表する存在となりつつある幾何学模様/Kikagaku Moyo。後日発表となるスペシャルゲストにもご期待ください!

WWW & WWW X Anniversaries "Kikagaku Moyo JAPAN TOUR 2019"
日程:2019/10/5(土)
会場:WWW X
出演:幾何学模様/Kikagaku Moyo + Special Guest: TBA
時間:OPEN 17:00 / START 18:00
料金:ADV¥4,000(税込 / ドリンク代別 / オールスタンディング)
チケット:発売中
e+ / ローソンチケット[L:76545] / チケットぴあ [P:159-853] / iFLYER / WWW店頭

公演詳細:https://www-shibuya.jp/schedule/011360.php

シカゴの知性“Jamila Woods”来日公演決定!
今年5月に絶大な評価を獲得した前作『Heavn』から約3年振りとなる待望の2ndアルバム『LEGACY! LEGACY!』をリリースし、自らのルーツやアイデンティティを深く掘り下げ、詩的に表現して、その評価を決定づけたシカゴのシンガー・詩人“Jamila Woods”の来日公演をお見逃しなく!

WWW & WWW X Anniversaries "Jamila Woods"
日程:2019/10/12(土)
会場:WWW X
出演:Jamila Woods
時間:OPEN 18:00 / START 19:00
料金:ADV ¥6,000 / DOOR ¥6,500 (税込 / ドリンク代別 / オールスタンディング)
チケット:
■先行予約:8/3(土)10:00~8/18(日)23:59 ※先着
https://eplus.jp/wwwx-jamilawoods/
■一般発売:8/24(土)10:00
e+ / ローソンチケット[L:72345] / チケットぴあ[P:161-087] / WWW店頭 / iFLYER

公演詳細: https://www-shibuya.jp/schedule/011424.php



WWW・WWW X・WWWβを舞台に様々な感情や価値観が集い、多様性豊かに彩るフライデーナイトパーティーシリースズ 「Emotions」。出演者第一弾はフリーフォームかつジャンルにとらわれない柔軟な活動が注目を集め、先日の FUJI ROCK FES でもヒップホップの可能性を拡張させるような圧倒的パフォーマンスを披露した“KID FRESINO”、耽美でサイケデリックな世界観を最新型のトラップミュージックとして表現し、自身が主催するイベント「TOKIO SHAMAN」は毎回超満員で狂信的人気を博す“釈迦坊主”、既成概念を軽々と更新し続ける圧倒的な存在感でユースを中心に熱狂的な支持を集め、本日同時に待望の1st Mixtape『angel』の8/7リリースが発表された“Tohji”がラインナップ!
後日発表となるジャンルレスな追加出演者にも乞うご期待!

WWW & WWW X Anniversaries "Emotions"
日程:2019/10/18(金)
会場:WWW / WWW X / WWWβ
出演:KID FRESINO / 釈迦坊主 / Tohji / and more (A to Z)

詳細後日発表

公演詳細:https://www-shibuya.jp/schedule/011425.php

Joe Armon-Jones - ele-king

 UKジャズの躍進は止まらない。そのキイパースンのひとりであり、春にはエズラ・コレクティヴとしても良作を送り出しているジョー・アーモン・ジョーンズが、早くもニュー・アルバムをリリースする(彼の最新インタヴューはこちらから)。ダブにアプローチした最新シングル曲“Icy Roads (Stacked)”が体現していたように、「ジャズ」という枠にとらわれない内容に仕上がっているとのことで、これまた2019年の重要な1枚になりそうな予感がひしひし。ちなみに先行配信された新曲“Yellow Dandelion”には、先日 16FLIP とのコラボも話題になったジョージア・アン・マルドロウが参加。いやー、発売が待ち遠しいぜ!

Joe Armon-Jones
トム・ミッシュも輩出した南ロンドンのUKジャズ・シーンから、新時代をリードする異才ジョー・アーモン・ジョーンズがアルバム『Turn To Clear View』のリリースを発表! さらにアルバムから“Yellow Dandelion feat. Georgia Anne Muldrow”を先行配信!

UKジャズ・シーンでの活躍により、多方面から注目を集める若きキーボーディスト/プロデューサーのジョー・アーモン・ジョーンズが9月20日(金)に最新アルバム『Turn To Clear View』をリリースする。

今年リリースしたデビュー・アルバムが大きな反響を呼んでいるアフロ・ジャズ・ファンク・バンドのエズラ・コレクティヴの一員としても活躍するジョー・アーモン・ジョーンズ。Glastonbury、SXSW、Boiler Room などでのパフォーマンスを果たし、ジャイルス・ピーターソンの Worldwide Awards 2019 ではセッション・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、新世代ジャズ・シーンを語る上では欠かせない存在となっている。今年、FFKT の出演で来日を果たし、日本でも早耳のリスナーから強く支持されるアーティストだ。

先行配信されている“Yellow Dandelion feat. Georgia Anne Muldrow”
https://www.youtube.com/watch?v=R1Li_bri66k

シングル・リリースされている“Icy Roads (Stacked)”も今作に収録されている。
https://www.youtube.com/watch?v=INGbirNwZAI

今作はジャズという枠にとらわれず、ダブ、ハウス、ヒップホップ、などクラブ・カルチャーに強くインスパイアされた内容のアルバムとなった。参加アーティストも豪華で、〈Brainfeeder〉に所属し、ケンドリック・ラマー、エリカ・バドゥ、ロバート・グラスパーなど名だたるミュージシャンから多くの支持を集めるジョージア・アン・マルドロウは先行配信されている“Yellow Dandelion”でフィーチャリングされている。他にも、ナイジェリア出身の注目シンガーObongjayar、〈YNR Productions〉の設立者でもあるラッパーのジェスト、Maisha でも活躍中のヌビア・ガルシアがアルバムに参加。また、国内盤CDには10インチ限定シングル「Icy Roads (Stacked)」でのみ聴けた“Aquarius”が今回のボーナストラックとして追加収録される。

label: Brownswood / Beat Records
artist: Joe Armon-Jones
title: Turn To Clear View
release date: 2019.09.20 FRI ON SALE

国内盤CD BRC-610 ¥2,200+税
ボーナストラック追加収録/解説書封入

詳細はこちら:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10409

iTunes : https://apple.co/2YECpvn
Apple Music : https://apple.co/2YECpvn
Spotify : https://spoti.fi/2OuUgAM

TRACKLISTING
1. Try Walk With Me Ft. Asheber
2. Yellow Dandelion Ft. Georgia Anne Muldrow
3. Gnawa Sweet
4. Icy Roads (Stacked)
5. (To) Know Where You’re Coming From
6. The Leo & Aquarius Ft. Jehst
7. You Didn’t Care Ft. Nubya Garcia
8. Self:Love Ft. Obongjayar
9. Aquarius *Bonus Track For Japan

Moodymann - ele-king

 ドレイクの人気曲“パッションフルート”には、ムーディーマンのMCがサンプリングされている。けだるく、Fワード連発のなかば酩酊したその声は、ブラック・ミュージックとしてのハウスという点において、そしてまたはアンダーグラウンドの生々しい猥雑さを伝える意味において極めて重要な意味を持っている。
 ラナ・デル・レイの“ボーン・トゥ・ダイ”をハウスの部屋に強引に連れ込み、煙ともどもドアを閉めてしまったデトロイトのDJには、彼自身にしかできない“型”というものを持っている。つまり、かつてカール・クレイグがムーディーマンについて説明したように、リアルな話ソウルにはアグリーな側面もあり、が、アグリーさはとくにアメリカにおいては隠蔽されるがちだ。たとえばインディ・シーンなんかを見ていると、アメリカ人はみんなスマートであるかのような錯覚を覚えてしまう。流行の服に流行の髪型。実際に行けばわかることだが、まったくそんなことはない。とくにデトロイトは、なんともじつにいなたいひと/イケてないひとばかりで、自分はそういうひとたちの側にいるんだと強く主張しているのがムーディーマン(ないしはマイク・バンクス)のようなひとだ。

 こうしたムーディーマンのアティチュードは、彼の音楽性に直結しているというよりも、彼の音楽そのものである。今回もまた1曲目の“I'll Provide”で度肝を抜かれた。ここにはセックスと教会がある。うねるようなベースラインと崇高なストリングス、聖と猥雑さと陶酔の三重奏はハウス・ミュージックの真骨頂だ。
 裏面の“I Think Of Saturday”はその後半戦といえるだろう。黒いゲンズブールたる彼のささやき声は、暗い人生をほのめかしながら、たえずパーティの快楽をうながしている。素晴らしいグルーヴとセクシャルなフィーリング。これが超一級品のディープ・ハウスというものである。
 もう1枚のレコードのC面に掘られた“If I Gave U My Love”、ここでのムーディーマンはジャズに接近しながら女性ヴォーカルをフィーチャーし、雲のうえに浮いているようなムードを演出する。ミュージシャンであり活動家でもあったカミラ・ヤーブローの1975年のアルバムから歌詞を引用しているということだが、曲調は初期から続いている彼の得意なスタイルだ。
 D面には2曲ある。ダウンテンポの“Deeper Shadow”はナイトメアズ・オン・ワックスの同曲のリミックス。「彼は私の考えていることを知らない」と繰り返される哀しみの入り混じった歌詞もそうだが、この艶のあるダウナーな展開は最盛期のマッシヴ・アタックを彷彿させる。また、その甘美さはC面2曲目の“ Sinnerman”にも引き継がれる。アナログ盤のみに収録されたこのスローテンポな曲はやはり女性ヴォーカルもので、けだるくロマンティックに展開する。

 Sinner =罪人がこの2枚組のタイトルで、普通に考えれば「罪」がひとつのテーマなのかと思ったりするものだが、そもそもこの2枚組は、本人主催のバーベキューで売っていたものらしい(いったいどんなバーベキューだ)。それがこのような形で一般販売され、またbandcampにはアナログ盤未収録の2曲がある。そのうちの1曲、ジャズの生セッションからはじまる“Downtown”からはバーベキュー・パーティの笑い声が聞こえてくる、気がしないでもない。
 今回はアナログ盤を予約しなかったので買いそびれてしまい、セカンド・プレスを待つしかなかった。もしそれがゲットできなければ仕方ないデジタルで買おうと思っていたところだが、先週末運良くレコードをゲットできた。日本や欧州では高価で売られるムーディーマンのアナログ盤だが、地元デトロイトのショップやKDJ/Mahogani Music主催のパーティでは手頃な価格で売られているという。

CFCF - ele-king

 カナダはモントリオールの才人 CFCF =マイク・シルヴァーの新作『Liquid Colours』は、「ニューエイジ+ジャングル」という「2019年のモード」を感じさせる卓抜なコンセプトを持ちながらも、澄み切ったミネラルウォーターのように体に染み込んでくる洗練されたエレクトロニック・ミュージックでもあった。
 いちど再生してしまえば清流のようにアルバムは流れ、曲はシームレスにつながる。しかし音のトーンは変化し、ラストの曲まで全15曲が時間旅行のように進行する。とにかくリラックスできるし、エレクトロニック・ミュージックならではの快楽にみちてもいる。テクノ・ファンにもIDMファンにもニューエイジやアンビエント・ファンにも広くおすすめできる逸品である。

 『Liquid Colours』は洗練されたエレクトロニック・ミュージックだ。それは「過剰なまでの洗練」と言いかえてもいい。この洗練。この快適さ。この心地よさ。
 まるでどこかの企業のコールセンターに電話したときオペレーターに回線が繋がるまでのあいだに耳元に流れる軽快な音楽、実践的な教習用ビデオの邪魔にならないBGM、巨大なホテルのロビーにうっすらと流れる清潔なサウンド、ショッピングモールに流れる瀟洒な音楽のようにも聴こえる。いわば社会の隅々にまで浸透したバッググラウンド・ミュージックのように極度に洗練されているのだ。完璧に構成された消費社会のための音楽? これは批判ではない。ストレスフルな現在を生きる私たちの心身はこういった音を求めている。

 もっとも CFCF のこのような音楽性は、本作から始まったわけではない。2015年に〈Driftless Recordings〉からリリースされた『Radiance & Submission』、同年〈1080p〉からリリースされた『The Colours Of Life』以降、彼が追求してきた「80年代的な電子音楽を現代のサウンドで再生させる」をコンセプトとサウンドを継承するものといえよう(余談だが、2015年こそ2010年代における先端的な電子音楽を考えるうえで重要な時期だろう)。
 これら『Radiance & Submission』や『The Colours Of Life』で CFCF は失われた80年代をモダンなサウンドでアップデイトした。結果としてヴェイパーウェイヴ・ムーヴメントやニューエイジ・リヴァイヴァルにも共通・貫通する「2010年代的な」音楽となった。「失われた未来を、過去から希求する」ものである。
 しかしマイク・シルヴァーの音楽は、ヴェイパー的な喪失した過去と未来から生まれた濃厚なノスタルジアに浸っている「だけ」ではない。CFCF の音楽は、不思議と「いまここ」に鳴っているのだ。これが彼の独自性に感じられる。
 マイク・シルヴァーは、極度に洗練した消費社会のもろもろの音楽をミニマルで洗練された日用雑貨のように、この現在に再生しようとしている。CFCF の音楽からはヴェイパーウェイヴにあるようなブラックユーモアは希薄になり、ミニマムな空間にマッチするようなアンビエンスをたたえたエレクトロニック・ミュージックとなった。
 その意味で CFCF =マイク・シルヴァーはブライアン・イーノ直系のアンビエント思想を継承するアーティストともいえるし、家具のような音楽という意味でエリック・サティのクラブ・ミュージック経由ヴァージョンといえなくもない。
 つまりマイク・シルヴァーは、オーセンティックな音楽家/作曲家の資質を持っているアーティストなのだ。さすがポスト・クラシカルの巨匠マックス・リヒターのリミックスを手掛けるだけの音楽家である。
 むろん、CFCF の音楽が現代的な批評性を欠いていることを意味するわけではない。彼はこの社会にただ存在する音楽の存在にとりつかれているし、消費社会に存在する幽霊のような音楽を探し続けているアーティストだ。
 CFCF はもろもろの音楽フォームが、全盛期を過ぎて先端性を失い、やがて洗練を極めたBGMになり、ポストモダンな社会に浸透している状態に興味があるのだろう。本作はまるで「存在しない無印良品の店内音楽」のようでもある。ミニマムな製品たちが陳列される空間のための音楽として聴くこと。20年から30年前の音楽を洗練された音楽として再生し、過去と現在の亡霊(?)をこの時代に蘇生すること。

 思うにニューエイジとジャングルを合体・蘇生させた意味もそこにあるのではないか。社会に浸透した音楽。彼はそのために音を洗練させていく。じじつ、アルバムは1曲め“Re-Utopia”から、全15曲、どのトラックの音色もテンポも曲の構造も共通のトーンで進行する。2曲め“Green District”以降もシームレスにトラックは繋がり、まるで良質なミックス音源のようにまったく淀みなく進む。私は本作聴き終えたとき、浮遊するような幸福感を感じた。空間が綺麗になったような感覚である。同時にニューエイジ+ジャングルということは、つまり80年代と90年代を交錯させることを意味するとも思った。
 “Re-Utopia”のマリンバ的な音色などは、まるで坂本龍一『音楽図鑑』や80年代に手掛けたCM音楽を思わせるが、そこに90年代的なジャングル・ビートをレイヤーさせる。つまり80年代と90年代を融合させている。その手腕は実に見事で、異質なはずのものが極めて自然にミックスされている。澄んだ水を飲むように何度も聴けてしまう。
 加えて渋谷系およびネオ渋谷系リヴァイヴァルのごとき9曲め“Oxygen Lounge”に現在のニューエイジ・リヴァイヴァル「以降」の萌芽も聴き取った(次にくるリヴァイヴァルは渋谷系~ネオ渋谷系か?)。

 いろいろと御託を並べてしまったが、心地よく繰り返し何度も聴ける極上のエレクトロニック・ミュージックに仕上がっていることが何より重要である。洗練と極上の結晶。特に静かな盛り上がりを見せる12曲め“Last Century Modern”以降は、現代のエレクトロニック・ミュージックならではのミニマルにしてエモーショナルなサウンドスケープを生んでいた(13曲め“Closed Space”では坂本龍一『エスペラント』収録曲を引用するなど小技も実に効いている)。
 ニューエイジ+ジャングル。それは80年代と90年代の融合であり、洗練された心地よい電子音楽の完成であり、心身をケアする完璧な消費社会への希求である。そう、つまり『Liquid Colours』は、ストレスフルな現代社会に対するシェルターのようなものかもしれない。

FESTIVAL de FRUE 2019 - ele-king

 先日まさかの初来日公演がアナウンスされ、多くの音楽ファンを歓喜させたトン・ゼーですが、すでに発表されている東京公演に続き、静岡の掛川で催される《FESTIVAL de FRUE 2019》の詳細が公開されました。トン・ゼーを核としつつ、テクノやジャズやロックなど、じつに多様かつ趣のある面子がずらり。豊かな自然のなか、素敵な音楽たちに囲まれて、秋から冬への転換を楽しみましょう。

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