「P」と一致するもの

Wire - ele-king

 パンクが大衆の認識に与えた衝撃が完全に浸透するよりも前に、ワイアーはすでにパンクを弄び、嘲笑い、その限界を超越していた。新興のパンク世代が、より純粋であると思われる1950年代のロックンロールの価値観を称揚し、1970年代のプログレッシヴ・ロックの大仰さを軽蔑して根絶を望んでいたのをよそに、ワイアーは〈Harvest Records〉と契約を結んでピンク・フロイドと同じレーベルの所属となり、伝統的ロックンロールに残るブルース・ロックの影響を自分たちのサウンドから排除しようとした。パンク・ムーヴメントの中核に残された者たちは、パンクの限界をより深く突き詰めようとしたが、それがあまりにもあっさりと超えられたことに、ほとんど気づいてさえいなかった。

 それから40年以上が経ったいま、ワイアーの音楽が反ロックの衝撃をもたらすことはなくとも、その栄誉の一部はワイアー自身に与えられるべきだろう。彼らが短期間で鮮烈にロックの形態を歪め、解体したことによる影響は長くくすぶり続け、ここ数十年に渡ってロックを再構築しようとする動きに力を与えており、状況は1970年代の終わりに彼らが目指した方針に近づいている。一方でワイアーが少なくとも2008年の『Object 47』以来切り開いてきた道は、ロックとの和解を目指しているかのようであり、ロックの構造に対する遠回しでぎこちない攻撃は健在ながら、自分たちの言葉で曲作りの方法論を探求することで、以前より遙かに心地よい状態に繋がっている。

 また現在のワイアーは、過去の自分たちとの対話にますます没頭しているように見受けられる。ロックの既成概念を解剖するアイデアと、ほとばしるポップスの輝きを組み合わせるスタイルは当初から変わっておらず、バンドは過去の自分たちを折に触れて肯定することを厭わない。コリン・ニューマンが皮肉とともに“Cactused”の切迫感のあるサビに込めたメッセージは、バンドによる1979年の珠玉のポップ・ソング“Map Ref. 41 Degrees N 93 Degrees W(北緯41度西経93度)”と同じ無味乾燥なほのめかしを表している。それでもワイアーが現在のロックのあり方を受け入れるなかで辛辣さはわずかに鳴りを潜め、うまくいっているときに得られる純然たる喜びも多少は感じられるようになってきた。

 そこには以前に比べて少しだけ緩さも生じているのかもしれない。1970年代のワイアーの楽曲は槍のように脳をきつく刺激するもので、リリース時点ですでに彼らのミニマリズムは完成されており、バンドはそこにさらなる活力を与えて展開させることは望んでいないように見受けられたが、現在、その音楽のなかに新たな活気が生まれる余地が徐々に認識できるようになっており、とくに『Mind Hive』ではその狙いが見事に開花している。“Unrepentant”や最後の“Humming”のような曲では、ブライアン・イーノ風と言ってもいいほどの広大なアンビエントの流れができており、一方“Hung”は、8分近くにおよぶ曲の中で核となるグルーヴを乗りこなせるという自信に満ちている。そうしたエネルギーは、新たに加入したギタリストのマシュー・シムスが持ち込んだ幻惑的な色合いにもたしかに受け継がれており、彼の存在感はますます高まっているが、それはまたバンドが少なくとも過去12年間で辿ってきた進化の道筋に欠かせないものでもある。

 ワイアーが変わらず妥協のない挑戦的なワイアーらしさを保っていることは、歌詞に現れている。その歌詞は、現在のインディ・ロック・シーンで彼らの影響を受けているどの若手バンドと比べてもなお、鮮烈で鋭く、謎めいていると言っていいだろう。多くの楽曲では、オンライン空間のまとまりのない空虚な世界観が断片的な形で漂っており、“Humming”では謎めいたロシア人の存在に言及し、喪失感やうまくいかないものごとや頭をよぎる失われた自由について述べていて、“Hung”においては混乱のなかで制御を失われる感覚や「一瞬の疑念」から生まれた些細な混沌がひたすら描かれる。『Mind Hive』全体を貫いているのは、現在まさに動揺し崩壊しようとするこの世界に対する明白な意識だが、それぞれの歌が具体的な何かから引き出されたものだとしても、その直感の閃きを歌詞から辿ることはできない。歌詞に唯一残されているのは、断片的な糸口と脅迫めいた暗示であり、それは力強く感情を込めた、憂鬱と偏執からなる筆致で描かれている。これはおそらくロック・ミュージックに限らず、世界の全体が、ようやくワイアーに追いついたということなのかもしれない。

訳:尾形正弘(Lively Up)


Ian F. Martin

Before punk had even fully made an impact on the public imagination, Wire were already kicking it around, mocking it, transcending its limitations. As the emergent punk generation championed the supposedly purer values of 1950s rock’n’roll and sneered the pomposity of 1970s progressive rock into what they hoped was oblivion, Wire signed to Harvest Records as label mates to Pink Floyd and set about expelling the blues-rock influences of classic rock’n’roll from their sound, leaving the core of the punk movement digging deeper into its own limitations, mostly not even aware of how swiftly they’d been surpassed.
Now, more than 40 years on, Wire’s music doesn’t land the anti-rock impact, but part of the credit for that should probably go to Wire themselves. The slow-burning influence of their short, sharp distortions and deconstructions of rock forms has helped rock music over these past few decades to reassemble itself in a way that brings it closer to the path that Wire had begun charting in the late 1970s. Meanwhile, the path Wire have carved themselves, at least since 2008’s Object 47, feels like a sort of reconciliation with rock, retaining the band’s oblique and angular attacks on its structures but combining that with a greater comfort in exploring its songwriting conventions on their own terms.
The Wire of today also seem to be increasingly engaged in a dialogue with their own past selves. The combination of ideas that dissect rock conventions and bursts of glorious pop has been there since the beginning, and the band aren’t averse to the occasional nod to their past selves. Colin Newman’s irony-laced announcement of the impending chorus in Cactused directly references a similar dry aside in the band’s 1979 pop gem Map Ref. 41 Degrees N 93 Degrees W. Still, there’s a little less sarcasm in Wire’s nods to convention nowadays, a little more comfort in the simple joys of what works.
There’s perhaps a bit more looseness too. Where Wire’s songs in the 1970s were tightly-wound lances to the brain, already at such a point of minimalist completion by the time of release that the band seemed to feel no need to let them breathe and develop, there’s increasingly a sense of breathing space to their music now that is in particularly full bloom on Mind Hive. Songs like Unrepentant and the closing Humming have an expansive, almost Eno-esque ambient drift to them, while Hung has the confidence to ride its central groove for nearly eight minutes. Some of this must surely be down to the psychedelic tint brought by new guitarist Matthew Simms as he increasingly makes his mark, but it’s also part of an evolutionary course the band have been on for at least the past twelve years.
Where Wire are still uncompromisingly and defiantly Wire is in the lyrics, which are still fresher, sharper, more cryptic than nearly any of the younger bands that carry their influence in the contemporary indie scene. The disconnected, spectral presence of the online world haunts many of the songs in a fragmentary fashion; references to an ambiguous Russian presence, a sense of loss, of something gone wrong, of freedoms lost flicker through Humming; the sense of something spinning out of control, of mere chaos born out of a “moment of doubt” pounds its way through Hung. There’s a definite sense running through Mind Hive of our current shivering, crumbling world, but if the songs are drawn from anything specific, access to that spark of inspiration is closed off by lyrics that leave only fragmentary evocations and menacing hints, painted in powerfully emotional strokes of melancholic paranoia. Perhaps it’s not just rock music but the whole world that has only just caught up with Wire.

Sleaford Mods - ele-king

 〈ラフトレード〉からのベスト盤『All That Glue』のヴァイナルは先週UKチャート1位です。

Various Artists - ele-king

 新しい生活様式ではないが、今後はCOVID-19以前・以後というフレーズが多く使われていくだろう。音楽業界も大きな変化に直面することが考えられる。たとえばライヴやフェスなどがこれまでのような形で開かれるのか先行きは不透明であるし、ライヴハウスやクラブ、ミュージック・バーなどの存続も懸念される問題だ。それによっては音楽家やアーティストたちの活動も変わらざる負えないし、youtubeなどネット配信を介したライヴやフェスのやり方もいままで以上に模索されるだろう。それでも生のライヴの素晴らしさを再現するのはなかなか困難だ。
 ライヴは観客がいてこそ盛り上がりや興奮を生み、それによって演奏者や歌い手たちもより素晴らしいパフォーマンスを見せるという相乗効果を生むもので、レコードやCD、または音楽配信などでは味わえない魅力がそこにある。
 ただし、ときには無観客で行われるスタジオ・ライヴという手法もある。スタジオという良質な録音環境の中、オーヴァーダビングや編集作業などの余計な行程を狭まずに、ライヴ・ホールにおけるパフォーマンスに近い形で奏者の生演奏を録音したものだ。観客の拍手や歓声、奏者のMCなどが入らないので、音楽の録音物としてはより純度が高い。いままでのようなライヴ開催がなかなか困難な状況下では、スポーツの無観客試合ではないが、無観客のスタジオ・ライヴというのもひとつの方法ではあるかもしれない。

 スタジオ・ライヴについてはイギリスのBBC放送が数々の名演を生んできて、ときに公式のライヴ・アルバムよりも素晴らしい演奏を聴くこともできる。BBCのスタジオ・ライヴではDJのジョン・ピールによる『ピール・セッションズ』が有名で、ジミ・ヘンドリックス、レッド・ツェッペリン、デヴィッド・ボウイなどが録音を行っているが、その舞台となったのがロンドンのメイダ・ヴェール・スタジオである。1934年に設立され、ビートルズからモリッシー、ニルヴァーナなどがセッションを行ってきた由緒正しきスタジオで、建物はヒストリック・イングランドがグレード2の建造物に指定している。今後は歴史的建造物となるために現在の場所は閉鎖され、スタジオとして新しく再開する場所を探すとのことが2018年に発表されたが、現在はCOVID-19のために3月末から閉館となっている。
 ジョン・ピール以外ではジャイルス・ピーターソンもメイダ・ヴェール・スタジオでのスタジオ・ライヴ放送をしばしば行っていて、彼の番組の『ワールドワイド』でたびたびその模様が放送されてきた。ゲストのミュージシャンやDJがプレイを披露するのだが、2018年10月には「UKジャズ」と銘打った特別プログラムが組まれ、ジョー・アーモン・ジョーンズやヌビア・ガルシアたちが出演している。
 ボイラー・ルームもそうだが、アーティストたちにとってメイダ・ヴェールのスタジオ・ライヴは絶好のアピールの場なのである。2018年の春は『ウィ・アウト・ヒア』が発表され、それをフォローする形で「UKジャズ」の特番が組まれたわけだが、本アルバムはその2018年10月のセッション音源をまとめたものである。

 参加者はジョー・アーモン・ジョーンズ、ヌビア・ガルシア、オスカー・ジェローム、ファティマ、ハク・ベイカー、イシュマエル・アンサンブルで、そのほかエズラ・コレクティヴのディラン・ジョーンズやジェイムズ・モリソン、ココロコのムタレ・チャシ、マリウス・アレスカやラス・アシェバーも加わっている。
 ジョー・アーモン・ジョーンズについては『スターティング・トゥデイ』を発表して間もなくとあって、その録音に近い形でメンバーを揃えてセッションに臨んでいる。披露する“スターティング・トゥデイ”と“オールモスト・ウェント・トゥー・ファー”は共にアルバムからのナンバーである。
 ヌビア・ガルシアの“ホールド”は〈ジャズ・リフレッシュド〉からのデビューEPである『ヌビアズ・ファイヴ』(2017年)収録曲で、オスカー・ジェロームの“ドゥ・ユー・リアリー”はデジタル配信のみで発表していた2018年のシングル曲。どちらもジョー・アーモン・ジョーンズのバンドと共演という形で演奏しているが、そもそも彼ら3人はジョー・アーモン・ジョーンズとマックスウェル・オーウィンの『イディオム』(2017年)でも共演するなど昔からの仲間であるので、今回のセッションも非常に息の合ったところを見せてくれる。
 ファティマの“オンリー”は当時リリースされたばかりの『アンド・イエット・イッツ・オール・ラヴ』からのナンバーだが、ジョー・アーモン・ジョーンズ・バンドとの共演という形で披露している。
 ハク・ベイカーはロンドンのインディ・フォーク系のシンガー・ソングライターで、やはりジョー・アーモン・ジョーンズと共演して持ち歌の“サースティ・サーズデイ”を歌っている。
 つまり、本セッションのほとんどがジョー・アーモン・ジョーンズ、ヌビア・ガルシア、オスカー・ジェロームを主軸とするジョー・アーモン・ジョーンズ・バンドの演奏となる。唯一の例外はブリストル出身のピート・カニンガムを中心とするイシュマエル・アンサンブルで、アルバム『ア・ステイト・オブ・フロウ』(2019年発表、2018年にリリースされた『セヴン・ソングス』という連作シングル曲を中心に構成)からの楽曲“トンネルズ”を演奏している。

 “スターティング・トゥデイ”に代表されるように、アルバム録音と比較してエレクトロニクスの関与する割合が減っている分、個々の演奏における即興部分の比重が増し、ライヴならではの粗削りなところもあるが、それを補って余りあるエモーションの込められた演奏が展開される。ラス・アシェバーの歌も、このセッション用に変えてきているところもある。これを聴くとやはりジャズはライヴ・ミュージックであり、レコードはたまたまその瞬間を録音したものに過ぎないということを感じる。
 オスカー・ジェロームもライヴという形態が彼のシンガー・ソングライター的な立ち位置をよく伝えてくれるし、ファティマもジョー・アーモン・ジョーンズ・バンドと共演することにより、彼女のネオ・ソウル的な資質をより引き出している。イシュマエル・アンサンブルの“トンネルズ”は原曲に比べてドラムスが退行した分、全体的にアンビエントな仕上がりとなっていて、ジョー・アーモン・ジョーンズ・バンドとの違いを際立たせるものとなっている。どちらかと言えばフローティング・ポインツに近い演奏だ。
 こうしてライヴ演奏ひとつとっても、オリジナルの演奏とは随分と違うところがあり、極端な話、同じ曲でもひとつとして同じ演奏はない。曲や演奏は生き物であり、アイデアひとつでどんどん変わっていくものである。COVID-19によっていろいろ不自由や制限を感じざる負えないライヴ環境だが、そうしたなかでも音楽は新しいアイデアを生んでいくと信じたい。

Satoko Shibata - ele-king

 これはおもしろい試みだ。昨年5枚目のアルバム『がんばれ!メロディー』を発表し、リキッドでのライヴも成功、そのライヴ盤までリリースし、まさにノりにノっているシンガーソングライターの柴田聡子。来る7月3日にはミニ・アルバム『スロー・イン』の発売を控える彼女が、「全国ツアー」を開催する。
 といってもこのご時勢、もちろん文字どおり全国へと足を運ぶわけではない。ようは配信なのだけれど、その趣向がとてもよく練られているのだ。延期になったツアーの当初の予定通りの日程で、「富山風」「金沢風」「名古屋風」と、連日自宅からライヴ配信をやっていくのである。当然、現地から以外でも視聴可能なので、全国から柴田聡子の「ひとりぼっち」を目撃しよう。

弾き語りツアー風 “柴田聡子のインターネットひとりぼっち’20” 開催決定

新型コロナウイルスの感染拡大により全公演延期となりました弾き語りツアー “柴田聡子のひとりぼっち’20”。いまだ振替公演スケジュール及び払い戻しのご案内をできておらず、皆様には大変なご迷惑をおかけしておりますことをお詫び申し上げます。各会場およびプレイガイドともに、この混乱の中でも最善を尽くしてくださっていることと思います。情報が揃い次第ご案内をさせていただきますので、今しばらくのお時間をいただきますよう、お願い申し上げます。

改めまして、5月22日は本来であればツアー初日、富山公演の予定でした。楽しみにしていたツアーが延期になってしまい、意気軒昂、盛り上がっていたチーム柴田聡子も一旦の進路変更を余儀なくされた中、せめて演奏を電波に乗せて届けよう! という案が上がりました。
そこで、柴田聡子の弾き語りライブを本来のツアースケジュールの通り、全日程、開演時間に合わせて YouTube LIVE にて生配信させていただきたいと思います。題して “柴田聡子のインターネットひとりぼっち’20” です!

柴田聡子の自宅から、本当に “ひとりぼっち” での配信になります。セッティングから全て本人監修になります。なので配信がスムーズに行えるかどうかもお約束できませんが、出来うる限りの準備をしてお届けしたいと思っています。
全公演無料配信です。各地に思いを馳せつつも、もちろんどなたでも、お住いの地域に限らずご覧いただくことができます。もしよろしければツアー全公演、疑似体験的に自宅で追っかけてみてください。

弾き語りツアー風 “柴田聡子のインターネットひとりぼっち’20”
5月22日(金) 19:30 富山風
5月23日(土) 18:00 金沢風
5月24日(日) 18:00 名古屋風
5月29日(金) 18:30 京都風
5月30日(土) 17:00 松江風
5月31日(日) 17:30 広島風
6月06日(土) 18:00 札幌風 day1
6月07日(日) 18:00 札幌風 day2
6月11日(木) 19:30 大阪風
6月12日(金) 19:00 岡山風
6月13日(土) 18:00 福岡風
6月21日(日) 17:30 仙台風
6月27日(土) 18:00 東京風

YouTube 柴田聡子チャンネル
https://ur2.link/TztX

[配信シングル情報]

アーティスト:柴田聡子
タイトル:変な島
品番:DGP-817 / ハイレゾ (24bit) DGP-818
リリース日:2020年6月10日(水)

[CD / 7インチ情報]

アーティスト:柴田聡子
タイトル:スロー・イン
J-POP/CD 、2枚組7インチ
発売日:2020年7月3日(金)
品番:[CD]PCD-4555 定価:¥1,500+税 / [7インチ]P7-6248/9 定価:¥3,182+税

Tracklist (カッコは7インチ)
1 (sideA). 変な島
2 (sideB). いやな日
3 (sideC). 友達
4 (sideD). どうして

Tomas Phillips - ele-king

 アメリカ合衆国ノースカロライナ州出身のサウンド・アーティスト、トーマス・フィリップスの新しい音響作品が、日本・東京を拠点とするサウンド・アート・レーベル〈SAD rec.〉(https://sad-tokyo.com/)からCDリリースされた。 2016年に〈13〉からCDリリース作品『Chuchoter Pas De Mots』と〈LINE〉からデジタルリリース作品『Limit_Fold 』以来なので、約4年ぶりのアルバム・リリースということになる。

 本作リリース元の〈SAD rec.〉は2013年の発足以降、 ケネス・カイアーシェナーとの共作『Five Transpositions‎』、ソロ作品『Two Compositions』のリリースと、この類まれな聴覚/感覚を持っているアーティストの音響作品を送り出してきたが、本作『Pulse Bit Silt』は〈SAD rec.〉/トーマス・フィリップスの協働における最高傑作ではないかと思う。音の質、空間性、コンポジション、ノイズ、音響そのどれもがかつての傑作群よりも一歩も二歩も抜きんでたからである。フランスコ・ロペスのハードコア・フィールドレコーディングに対して、エレガンスなフィールド・レコーディング作品とでも形容すべきか。
 これまでのトーマス・フィリップスのリリース作品で印象に残っているアルバムは、〈SAD rec.〉の2作に加え、2006年に〈LINE〉からリリースされた『Intermission / Six Feuilles』、日本・東京の〈ATAK〉から2009年にリリースされたi8u + Tomas Phillips 『Ligne』(i8uはサウンド・アーティストのフランス・ジョビン変名。彼女もまた本年5月に新作を〈Editions Mego〉からリリースしたばかり)などだったが、本作『Pulse Bit Silt』は、どの作品よりもアルバムを通して見事な「流れ」を形成しているように聴こえた。アルバム作品として、より成熟しているのだ。

 『Pulse Bit Silt』には計6曲(合計収録時間は46分。昨今のアルバム作品としては比較的長い収録時間といえる)の音響作品が収められているが、どのトラックとトラックもシームレスに連結し、ミニマルにして静謐な音響空間が次第に生成変化するような感覚を得ることができた。グリッチな電子ノイズやアトモスフィアな持続音に加えて、女性のヴォイスやインダストリアルなサウンドが要所に適切にレイヤーされていく。音の粒子が空気中に舞い踊り、音の粒が知覚に浸透するような麗しい音響たちを、その音の一粒、一粒を愛でるように聴取していくと、まるでゴダールやタルコフスキーの映画作品のように、カットとシークエンスが独自の持続感で進行していく総合的な芸術作品にすら思えてくるから不思議だ(彼は作家/小説家としても作品を発表しているらしい。音と言葉の両方から自らの芸術を追求しているのだろう)。

 そう、本作はトーマス・フィリップスの新しい代表作にして、いまの時代におけるサウンド・アート作品を象徴するCDではないかと思う。〈SAD rec.〉から同時リリースされたビージェイ・ニルセン(BJ Nilsen)『The Accursed Mountains』、ケン・イケダ、ユキ・アイダ、ケイタ・アサヒ(Ken Ikeda,Yuki Aida,Keita Asahi)『Summer Sessions』を合わせて聴くことで「環境録音、電子音響、ドローンなどのエクスペリンタル・ミュージック」の現在を深いレベル体験/体感できるはず。3作とも高品質/高音質な「CD作品」だ。ぜひとも聴いて頂きたい。

Michinori Toyota - ele-king

 この3月に東京から大阪へと拠点を移したシンガーソングライターの豊田道倫が、急遽明日5月22日、新曲 “明るい夜” をリリースする。緊急事態宣言下にて、引っ越したばかりの大阪の部屋でふと湧き上がってきた曲だそうで、MVも公開されている。ファースト・アルバムから25年、50歳を迎えたばかりの豊田、その新たな船出を祝福しよう。

豊田道倫(Michinori Toyota)

タイトル:明るい夜(Bright Night)
企画番号:WEATHER 81 / HEADZ 246
発売日:2020年5月22日(金)
フォーマット:Digital

Musicians
豊田道倫 : vocals & acoustic guitars
角矢胡桃 : drums & noise
みのようへい : bass, shaker & chorus
Tokiyo : electric guitar & chorus

Additional member
岡敬士 : synthesizer

Recorded & Mixed by 西川文章 at ICECREAM MUSIC on 30th, April 2020 & 4th, May 2020.
Mastered by 須田一平 at LM Studio on 5th, May 2020.

Produced by MT

Design:山田拓矢

https://www.faderbyheadz.com/release/headz246.html

豊田道倫「明るい夜」 [official music video]

監督:小池茅
出演:小川朋子, 小川大輝, 小川千晴
撮影:小川大輝, 小川朋子, 小池茅

https://www.youtube.com/watch?v=Jr6JqEOUPJg

緊急事態宣言発令の中、引っ越したばかりの大阪の部屋のキッチンで、この曲がふと出来た。

すぐに録音したくなった、バンドで。
ミュージシャンに声を掛け、リハを何とかやり、エンジニア、スタジオも確保して、録音した。
すべてが未知だったけど、ひたすら楽しかった。
何の迷いもなくやれた。

出来上がったMVを見て、デビュー25年、50歳。
でもおれは、本当に赤ん坊やと思った。
歌うこと以外、何をやってきたんだろう。

2020年の春のレコード(記録)として残せたことを、感謝します。 豊田道倫


撮影:倉科直弘

パラダイス・ガラージ名義で1995年5月25日に発表された1stアルバム『ROCK'N'ROLL 1500』から25年。
来たる2020年5月22日(金)に、シンガーソングライター豊田道倫が丁度1年振りとなるオフィシャル音源を発表します。
今年2月に50歳を迎え、3月に25年を過ごした東京を離れ、大阪に拠点を移してからの豊田の第一弾リリースとなる作品は、配信のみでリリースされる新曲 “明るい夜”。

このご時世でのリリースもあり、豊田の宅録作品と思いきや、関西在住のメンバーと共にレコーディング・スタジオにて制作され、近年の mtvBAND とのバンド・サウンドとも違う、新たなグルーヴを生み出した7分半を超える大作が完成しました。
(バンド編成でのレコーディング作品のリリースは2015年の『SHINE ALL ROUND』以来となります)

豊田道倫の新章のスタートを飾るに相応しい、世相を織り込みながらも普遍で、懐かしくも新鮮な、MT(Michinori Tokyota)のソングライティング、アレンジ、プロデュースの才能を存分に満喫できる作品となっています。

レコーディング・メンバーは、ノイジシャン、デュオ・ユニットの HYPER GAL としても活躍する角矢胡桃がドラムとノイズで、「みのようへいと明明後日」名義の全国流通作『ピクニックへ行こう』(SSR-01)で注目されたシンガーソングライターのみのようへいがベースやコーラスで、And Summer Club のメンバーでソロでも活動する Tokiyo が エレキ・ギターとコーラスで参加しており、〈Kebab Records〉を主宰する岡敬士(昨年は新バンド「自由主義」で豊田とバンドメイトだった)がシンセで彩りを加えています。

録音とミックスは ICECREAM MUSIC にて、(スタジオの主宰の一人でもある)西川文章が担当しています。
マスタリングは豊田の近作でも辣腕振りを発揮する関西のベテラン・エンジニア、須田一平(LM Studio)が手掛けています。

Music Video は、本日休演、ラッキーオールドサン 、加納エミリ、佐藤優介の映像を手掛けている小池茅が監督を務めています。

「明るい夜」のリリースに合わせ、昨年(2019年)の5月22日にパラダイス・ガラージ名義でカセットテープのみでリリースされた『SAN FRANSOKYO AIRPORT』(UNKNOWNMIX 49 / HEADZ 237)の配信リリース(サブスクも解禁)されることになりました。
カセットテープはレーベル在庫が無くなりましたので、この機会に新曲共々、是非お聴き頂ければと思います。

明るい夜

昨日の新聞 そのままで キッチンテーブル 朝の影
彼女はひとり 出て行った 帰って来るとは 言わないまま

ふたり一緒に見ていたものは もう 夢みたい
くちびるの歌も 風の中 答えは誰も 教えてくれない

煙草の味は変わらない キスの味は変わらない
この街で いつか また
世界の色が変わっても ひとの心変わっても 
僕は待つ 君を ずっと 明るい夜に

泣いてる踊り子 どこへ行く 劇場のあかり 消えたまま
花束はもう 枯れたけど 瞳の光は そのまま

僕らがずっと 見ていたものは もう 夢みたい
抱きしめた恋も 風の中 答えは本当は わかっている

煙草の味はしなくなった キスの味もしなくなった
あの街も 行けなくなった
世界の地図が変わっても ひとの言葉変わっても
僕は待つ 誰も 来ない夜も

煙草の味は変わらない キスの味は変わらない
この街で いつか また
世界の色が変わっても ひとの心変わっても 
僕は待つ 君を ずっと 明るい夜に


作詞・作曲:豊田道倫

Jamael Dean - ele-king

 やはり〈Stones Throw〉は鼻がきくというか……またもLAから新たな才能の登場だ。カルロス・ニーニョのアルバムやカマシ・ワシントンの大作『Heaven And Earth』への参加経験もあるピアニスト、叙情的なムードから実験的なセッションまで柔軟に対応するジャメル・ディーン。昨年〈Stones Throw〉からリリースされたアルバム『Black Space Tapes』が、最新EP「Oblivion」の楽曲などを加えた形で日本盤化される(しかも、ハイレゾ対応のMQA-CD)。家聴きにもぴったりな、深いサウンドです。

JAMAEL DEAN (ジャメル・ディーン)
Black Space Tapes / Oblivion

Thundercat や Kamasi Washington とも共演し、名門〈Stones Throw〉から弱冠20歳でデビューした天才ピアニスト、プロデューサー Jamael Dean。
デビュー作『Black Space Tapes』と最新EP「Oblivion」に加え、2019年作「Eledumare」の全10曲を、ハイレゾCD「MQA-CD」仕様にてリリース!!

この若きピアニストをいち早くバンドに引き入れたカマシ・ワシントン、才能に惚れ込み共同プロデューサーを務めたカルロス・ニーニョ、二人から興奮気味にその名前を聞いた。

彼が弾くピアノは、ジャズ・ヴォーカルにしっとりと寄り添ったかと思えば、スピリチュアルでポリリズミックなジャム・セッションにも、ヒップホップとネオソウルの狹間にもディープに浸透していく。LAのコミュニティで発見され、現在はNYのニュースクールでジャズを学ぶ俊英の、驚くべきデビュー作だ。

(原 雅明 rings プロデューサー)

Official Release HP:
https://www.ringstokyo.com/jamaeldean

アーティスト : JAMAEL DEAN (ジャメル・ディーン)
タイトル : Black Space Tapes / Oblivion
発売日 : 2020/7/22
価格 : 2,800円+税
レーベル/品番 : rings / STONES THROW (RINC65)
フォーマット : MQACD (日本企画限定盤)

※MQA-CDとは?
通常のプレーヤーで再生できるCDでありながら、MQAフォーマット対応機器で再生することにより、元となっているマスター・クオリティのハイレゾ音源をお楽しみいただけるCDです。

Tracklist :
01. Akamara
02. Adawa
03. Kronos
04. Akamara Remix
05. Olokun
06. Emi
07. Eledumare
08. People of the Moon
09. Omi Eje Ota feat. Sharada Shashidhar
10. Old Ways / Infant Eyes feat. Sharada Shashidhar

Takuro Okada - ele-king

 いま岡田拓郎がすごい! え、以前からすごかったって? そうなんですけど……、まず驚いたのは最近彼がBandcampで発表しているアンビエント作品。今年の1月から4月まで、4か月連続で、『Passing』~『みずうみ』~『Between』、そして『Like A Water, Like A Song』と。この4作品すべてがわずか数秒で聴き入ってしまうほどの魔力を秘めたドローン/アンビエントなのだ。すべてが極めてシンプル(ミニマル=極少)で、なかには録音自体が5年以上前にものだったりする音源もあるのだが、STAY HOMEにくたびれた精神に心地良い芳香を吹き込んでくれる。なかでも増村和彦が参加している『Like A Water, Like A Song』は、あたかもクラスター&イーノの領域にまで届きそうな、いわば夜明け前のひんやりとした広がりを見せている。素晴らしいです。この4作品、フィジカルでも出して欲しいなぁ。

 それから5月20日には、Okada Takuro + duenn によるアルバム『都市計画(Urban Planning)』がデジタル・リリースされている。こちらはジム・オルークのアンビエント作品『Sleep Like It's Winter』やAna Da Silva & Phewの何気に過激な『Island』を出している〈Newhere Music〉から。近々レヴューを掲載予定です。

 そして岡田拓郎の待望のポップ・アルバム『Morning Sun』。歌モノとしては『ノスタルジア』以来の3年ぶりの2枚目。すでに配信リリースされているこのポップ・アルバムに彼の実験的なアンビエントが無関係であるはずがなく、自らのサウンドで押し広げた静寂のなかで彼のあらたなメランコリック・スタイルは築かれている。それは人影まばらないまの街にじつによく響いている。そう、まさに岡田にはじまり岡田に終わる──いくつもの岡田作品、ぜひ聴いて欲しい。

King Of Opus - ele-king

 1995年に〈Transonic〉からの名盤『Circumstances Victimization』で知られるキング・オブ・オーパス、ダブ+ヒップホップ+エキゾティカ+テクノ+パンクというか、いかにも当時の日本らしい、いろんなものをいっぺんに吸収した独自のハイブリッド感覚はいまもって語り継がれている。メンバーの酒井が伝説のクラブZOO〜SLITSの従業員だったこともあって、当時の東京アンダーグラウンドのごちゃ混ぜ感がほど良い密度で表現されているからだろう。つまりここには、客わずか2〜3人を前にやっていた頃のフィッシュマンズやキミドリなんかの記憶もどこかに刷り込まれているのだ。
 この度、キング・オブ・オーパスの2007年に静岡FreakyShowでおこなったライヴがCD化され、リリースされた。ロスアプソンと和レアリックの拠点、ココナッツディスク江古田での限定リリース(オンラインでも買えます)。
 ちなみに静岡のライヴは、地元で長年テクノ・シーンを支えているDJ KATSU主宰のイベントで、ライヴ盤の冒頭にはDJ KATSUといまは亡きA&Rマン村上護氏とのバカ笑いが入っている。奇しくも、これは石原洋氏のソロ・アルバムと同じことがおきていて、人びとの雑談の向こうから聞こえるロービートは意味を持って聞こえてくるかもしれない。ロボ宙のラップはいつ聴いても格好良く、これは渋谷系レネゲイド・サウンドウェイヴだったのでないかと思えてもくる。
 キング・オブ・オーパスの『LIVE MIX 2007』は静かなリリースではあるが、じつは素晴らしいリリースで、彼らが、90年代の日本のインディ・シーンにおける重要なアクトであったことをあらためて証明している。


artist: KING OF OPUS
tittle: LIVE MIX 2007
sub tittle: think about TAD
価格¥1200-

interview with Laurent Garnier & Eric Morand - ele-king

僕たちの野心は慎ましいと言えるものではなかった──なにしろそれは、パリを叩き起こすことなのだ。
ロラン・ガルニエ『エレクトロショック』

 パリのレーベル〈F Communications〉、通称Fコミ。テクノDJのロラン・ガルニエ、レーベル・マネージャーのエリック・モーランの2人によって、1995年からはじまっている。つまり今年で25年。
 ロラン・ガルニエは、たとえばデリック・メイやウェストバムのように、シーンのないところにシーンを切り拓いたフランスにおけるテクノの開拓者で、情熱がそのまま歩いているような人物である。なにしろこの男ときたら、1998年パリの路上のテクノ・パレードにおいてマイクを握り「テクノはバスティーユを奪った」と高々と宣言したほどなのだ。
 そう、たしかに革命は果たされ、〈F Communications〉は多くの名盤をリリースしていった。彼の自伝『エレクトロショック』はフランスではベストセラーとなり、映画化されることになっている。テクノに関しても、パリで大がかりな展覧会が開催されるほど文化としての評価を固めている。

 いま世界はコロナウイルスによって甚大なダメージを受け、変化を強いられている。「DJの仕事とは、場所がどこであろうと、ギャラがいくらであろうと、客を踊らせること」、『エレクトロショック』においてこう記したロラン・ガルニエをはじめ、世界中のDJたちはオーディエンスを前にブースに立つことはできないでいる。つい数か月前まであったクラブ・カルチャーがいつ戻ってくるのかいまの時点では見えていない。5月21日の時点でのフランスでの死者数は2万8千人、イギリスとイタリアに次いで多いことになる。
 以下は、そんな渦中でのインタヴューである。

僕にとってもっとも重要なことは、人びとを踊らせるためにタンテーブルの後ろに立つことだ。それが僕の使命だ。

私たちはいま、歴史のただならぬ雲行きの渦中にいるわけですが、この状況をどのように捉えていますか?

エリック:まずはその質問に対して、いま私はじっさいどのように答えられるのだろうか? つまりこの瞬間は、そしてその次の瞬間には、さらに多くの質問を引き起こしているのだから。より一般的に言えば、この地球上のすべての人間と他の生命体がどのようにして、私たちが変化とともに、たしかな進化とともに生きなければならないかということだろう。
 もうひとつ言えるのは、西洋の文化は人生、変化、未知のサイクルとのつながりを失っていると私は見ている。18世紀の「啓蒙運動」以来、フランスではより(それまで恐れていた)科学を推奨し、むしろ精神や神聖さを排除しようとしてきた。「科学的」な時代においてはすべてを明晰に説明し、すべてを制御し、すべてを計画できるという盲信がある。しかし、高度に組織化された現代の社会は、その適応能力を失っている。生命はつねに適応する方法を知っていると私は深く感じているが、おそらく現在の社会のシステムではそれができないのだろう。未知なるものに対応する私たちの能力とは、つまりそれらを制御するのではないはずだ。これらの変化において踊ること。人生の一部であるものをコントロールできると盲信するのではなく、生、死、病気とともに生きること。そういうことについていまは考えるべきではないだろうか。

なるほど。それは興味深い話です。ところで、パリはどんな感じなのでしょうか?

ロラン:状況は非常に複雑で、とても大きな不安を引き起こしている。政府からの支援もあったけれど、多くの人びとはロックダウン以来収入がないからね。特定の商業分野──たとえば旅行、ホテル、ケータリング、エンターテインメント、映画館、バー、ナイトライフ──は、この夏またはこの秋までに再開することができないかもしれない。すべてのフェスティヴァルとスポーツ・イベントはキャンセルされているし、さらに多くの失業者が出る可能性がある。経済的に見れば状況は壊滅的であり、ロックダウンの延長は僕たちの多くにとってさらに事態を複雑にするだろう。特定の都市での門限、ロックダウンを強制するための警察のパトロール、スーパーマーケットでの特定の食料品──卵、パスタ、小麦粉など──の欠如などがあって、まったく、僕たちは「戦争の時代」を生きているようでもあるんだ。
 が、その一方フランスでは現在、並外れた連帯が生まれてもいるんだよ。介護者、ホームレス、高齢者、経済的に不安定な人々ための連帯──地域社会は、もっとも弱い立場の人たちを助けるために組織している。毎晩のことフランス全土が窓やバルコニーに集まり、仲間の市民の世話をするために毎日命を危険にさらしている医師や介護者、そして働き続けているすべての人びとを称賛しているんだ。
 いまのフランスは、介護者、レジで働いている人たち、ごみ収集人、配達人、宅配便業者、ホームヘルパーが僕たちの国を回していることに気づいている。銀行員ではなくね。マクロン大統領も、それ以前にくらべてはるかに謙虚さを示しているようだけど、フランス人は本当にこの危機を契機に、より良い世界を構築すんだろうか? それはまだわからない。

ロックダウンされた状況下で、人びとはどんな風に過ごしているんでしょうか?

ロラン:できる人は在宅勤務している。多くの人はかなりの時間を掛けて子供たちが何とかうまく授業を受けらるように手伝っている。人びとは本を読んだり、音楽を聴いたり、料理したり、スポーツをしたり、ドラマ・シリーズを次々と見たりしているね。
 僕たちは皆、電話で多くの時間を過ごしたり、愛する人、友人、家族からのニュースを受け取っている。Skypeで友人と食前酒を飲んだりね! 片付けをしたり、ガーデニングをしたり、初めて絵を描くことをしたり……
 僕は、家で息子とたくさん話しているよ。ロックダウンによって僕たちは考えたり、話し合ったり、たくさんのことを共有したり、たくさんの音楽を聴いたり、クラシック映画を見たり、ボードゲームをしたり……。実際、僕たちはこの休憩時間を利用して、家族で一緒に良い時間を過ごすようにしているんだ。

そういうポジティヴな側面もあると。しかし、それにしてもFコミ25周年の年にこんなことが起きるなんて……。

エリック:現在(4月末)のロックダウンにより、フランスでは窒息について話す人もいるね。自由の欠如。音楽で逃れる人もいる。そして、それは私がフランスに住んでいる80年代の終わりに感じた感覚を直接思い出させるんだ。あの頃も音楽シーン、クラブ、レコード業界が本当に行き詰まっていた。イギリスまたはベルギーに行くとすぐに私は新しいエネルギーとすべてのダイナミックを見た。当時の私にはイギリスやオランダに住むという誘惑はあった。でも、私はフランスに残って物事を起こしたいと思った。それがロラン・ガルニエと私がパリで立ち上げたパーティ〈Wake Up〉なんだよ。そしてこれが、フランスのエレクトロニック・ミュージック・レーベルを設立する契機を与えてもくれたと。周りの人に「目を覚ませ」と伝えるというね。そのコンセプトはこうだ。つまり「別の人生は可能である!」と。「あなたには踊るし、あなたには夢を見る権利がある!」と。もしロックダウンの終わりに、物事を変えるのと同じエネルギーがあれば、ふたたびマジックが起きるかもしれない!

Fコミは25年ですが、〈Fnac〉時代から数えるともっと年数はいくんじゃないですか? 「A Bout De Souffle EP」が1993年ですし。

エリック:今年はFコミの25年だけれど、それ以前の歴史もある。たしかに1991年11月にロラン・ガルニエの最初の12"のリリースが〈Fnac Music Dance Divisio〉であった。しかし、その〈Fnac Music Dance Division〉は1994年2月に終了した。
(※Fnacとは当時のフランスにおけるもっとも大きなレコード・チェーン店で、当初はその店の事業部がダンス・ミュージックの12インチをリリースした)

これまでの25年のあいだの、とくに思い出深い出来事はなんでしょうか?

エリック:その質問に答えることができるとしたら、パリのクラブ〈La Locomotive〉で、月曜日の夜にクリシー大通りの交通を遮断して開催されたレーベルの1周年パーティになるんだろうな。でも、私個人にとっては、1995年のベオグラードでのFコミのパーティが一番の思い出だよ。

 ちょうどのそのときは、ユーゴスラビアでの戦争が数か月前に終わってはいたものの、ユーゴスラビアはまだ封鎖されていた。で、1人のプロモーターがFコミのパーティをベオグラードで開催したいと、そのために我々を彼の地に連れていきたいと言ってきてね、彼はその数ヶ月前は戦地で戦っていた。
 ロランはエレクトロニック・ミュージックが存在しなかったり、そのジャンルに対して決して好意的とは思えない国でプレイすることが大好きなDJなんだ。だから、私たちはこのクレイジーなプロジェクトに乗り出した。フランスからの直行便はないので、ブダペストに着陸し、ミニバスで移動したんだけど、軍隊がいる国境を越える瞬間が思い出深い。ロラン、Shazz、Scan X、私、プロモーター、ドライバーとライヴセット用の機材で満たされたミニバスをじっと見つめる機関銃と不吉な顔をした税関職員の顔を想像してみて欲しい。やっとの思いで通過して、ベオグラードに到着した。市長との式典に招待されて、 そのあとすぐに古いベオグラード空港でのパーティーがはじまった。戦後初のパーティでね、2000から3000人の興奮された人びとがやって来た。とても素敵な人たちだった。まさに私たちが好むクレイジーな冒険であり、素晴らしい思い出だ!

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なにもライヴ体験に取って代わることでは決してない。音楽は「その場で」体験できること、それはDJの本質でもある。瞬間を理解し、捉え、人びとと交流すること。

あなたのなかのFコミのベストな5枚は? 選ぶのはたいへんでしょうけど、ぜひ!

エリック:はい、レーベルの280枚のリファレンスから選択するのは非常に困難だ! これだけ異なる音楽ジャンルから選択するとなるとなおさらね!
 この多様性のなかで、私は常にA Reminsicent Driveのアルバム『Mercy Street』に大きな愛情を持っている。Ludovic Navarre(St Germain / Deepside)の「French」、もちろんLaurent Garnierの「Crispy Bacon」、アルバム『Unreasonable behaviour』の「Communications from the lab」、Aqua Bassinoの「Milano Bossa」、またはAvrilの「Velvet Blues」、Del Dongoの「Samiscience」の完全にサイケデリックなハイパー・グルーヴ、いまでは廃盤になったけれど、1996に再発したDJ Kudoの「Tiny Loop」もある……あ、5タイトルを大幅に超えたね(笑)!

コロナによって、音楽ファンの嗜好は変化すると思いますか?

ロラン:人びとの好みが変わるかどうかはわからないけど、ロンクダウンしている現在、人びとはより多くの音楽を聴いている可能性があるだろうね。多くの人びとが音楽を聴いている。音楽はより強く、よりそのひと個人の味方となって、内面や恩恵になるだろう。「私たちを慰めるためにそこにいる親友」のようにね。外界との接触の欠如により、おそらく現在の一部の人びとの人生のなかには音楽は別の意味を示しているかもしれないね。
 僕の場合、それは指数関数的で、いまは以前よりも多くの音楽を聴いている。もちろん以前もたくさん聴いていたけれどね。しかし奇妙なことに、新しいもの、新譜を聴くのはとても難しい。目の前を見るのに苦労しているような感じだね。
 ロックダウン以来、僕は自分のレコード・コレクションを再発見しているんだよ。完全に忘れていたアルバムを何時間も聴いている。自分はノスタルジックな人間ではないんだけれど、でもいまは、自分を形成してきた音楽を評価をする必要があるような気がする。これはおそらく、今後数週間で実際に何が起こるかについての情報がないことに関連しているのだろうけれど。
 もうひとつ少し奇妙な発見があって、それは僕はいま(ハード)テクノを絶対に聴くことができないということ。僕にとって、この時期この手の音楽を聴くことにはまったく向いてない。テクノは僕にとっての心臓の一部のはずなのに、いまはまったく無理なんだよ!

そうですよね。5年前の『La Home Box 』はテクノ、ハウスに向き合ったあなたの原点回帰とも言える内容でしたもんね。ところで、あれからアルバムをリリースしていませんよね。ご自身の制作はいまどうなっているんでしょうか?

ロラン:僕にとって、いま音楽を作ることは楽しみではあるけれど、絶対ではない。僕は自分をホンモノのミュージシャンだと思ったことはないからね。アーティストとして僕にとってもっとも重要なことは、人びとを踊らせるためにタンテーブルの後ろに立つことだ。それが僕の使命だ。
 それに……音楽を作るには時間がかかる。緊急時に作曲するのも悪いことではないだろうけどね。ただ、僕のDJツアー+毎日新譜を聴く時間+ラジオ番組の制作+僕がギャビン・リヴォワールと4年間取り組んできたドキュメンタリー・プロジェクトの制作+家族生活とすべて……以上の他に皆さんがあまり知らない小さなプロジェクトを数えると、制作に割ける時間は決して多くないんだよ。

なるほど。

ロラン:『La Home Box』以降でいえば、〈Kompakt〉のEP「Tribute EP」とRekidsのEP「Feelin' Good」があったね。Madbenと共作した「MG’s Groove」、〈Skryptom records〉のアニヴァーサリー・コンピ用に1曲提供したし、Roneもリミックスしたよ。ロック系ではフランスのバンドThe Liminanasをリミックスしたし、Steeple Removeのリミックスもやったよ。
 それから、フランスのドラマ長編映画「Paris est a Nous」のサウンドトラックの50%を作曲したし、フランスのテレビ局のドキュメンタリー番組の音楽も担当したね。僕のドキュメンタリーでは、一部のKickstarter参加者のために超限定アナログ盤企画用に新しい12分のダンスフロア・トラックも作曲したな。そして、この夏はツアーができないので、フランスのロック・バンド、The Liminanasと一緒にアルバムを共作するプロジェクトが予定されてるよ。

いろいろやることがあるわけですね?

ロラン:その他、僕が住んでいる村で毎年ポップ/ロック・フェスティヴァル(YEAHフェスティヴァル)を共催している。フェスティヴァルの傍で、僕たちはより多くの社交的な目的──刑務所、家、障害者の家、学校、大学など──のために、年間を通してたくさんのミニイベントを企画しているんだ。
 執筆にも多くの時間を費やしているよ。僕は自伝『エレクトロショック』の映画化企画に10年以上取り組んできているし。こんな感じで、あまり自分の音楽に時間をかけることができないんだけど、ずっと忙しいんだよ。ちなみに来週引っ越しをするので、新しい場所、新しいスタジオに引っ越すことで、また音楽を作る気になるかもしれないね!

いま言ったドキュメンタリー映画プロジェクト#LGOTR Laurent Garnier: off the recordについて教えてください?

ロラン:ギャビン・リヴォワール監督は4年以上も僕をフォローしている。ドキュメンタリーのアイデアは、テクノについて少し語りながら、僕のキャリアのある局面、瞬間をさかのぼってかなり親密な肖像画を作ること。実際、僕たちが興味深いと考える特定の主題、場所、瞬間に立ち止まりながら、僕が歩んで来た道をフォローしている。ドキュメンタリーの目的は、この音楽(テクノ)の全体像を伝えたいと思って教訓を示すことではない。もしそれをやるなら、25時間のドキュメンタリーを実行する必要があるだろうし。ここではむしろ、この音楽(テクノ)の歴史にとって僕にとって重要であった場所、人びと、または瞬間によって区切られた一種の個人的な歩行としての体験が強調されているんだ。だからすべては主観的だね。

長年ナイトライフの世界が維持してきた経済モデルを劇的に変化させなければならないだろうし、それが論理的に重要に思える。少しの謙虚さと親切さが僕たちに最大の益をもたらすんじゃないだろうか。

いまこういう状況のなかフランスの音楽シーンで、なにか新しい取り組みなどありますか?

ロラン:現時点では、Covid-19の影響で、今後数か月の間に何が起こるかについて明確なヴィジョンを持つことは不可能だよ。すべてのクラブは閉鎖されていて、フェスティヴァルは禁止されている。僕たちは国境を越えて隣国に行くことさえできない、現状は非常に深刻だよ。ロックダウンの開始以来、誰にも何の収入が入っていない──0セントもね! この危機が長続きすると、僕たちの多くは間違えなく職を失う。DJ、クラブ、コンサートホール、フェスティヴァルなどなど。
 リニューアルについて考える前に、このシーンが今後に単純に生き残ることができるかどうかについてまず知る必要があるんじゃないのかな。もし生き残れるのであれば、どのように、誰が? たしかなことのひとつは、フランスのテクノ・シーン──他のすべての国のシーンと同様──がこの前例のない危機から多大な影響を受けることだ。残念なことに多くの人が姿を消すことを僕たちは認識しなければならない。何が起こるかがわかるまで、しばらく待たなければならないだろうな。
 僕たちみんながいままでの職業を守り続けるためには、長年ナイトライフの世界が維持してきた経済モデルを劇的に変化させなければならないだろうし、それが論理的に重要に思える。少しの謙虚さと親切さが僕たちに最大の益をもたらすんじゃないだろうか。
 あるいは、この危機が音楽よりもお金が好きな連中、日和見主義者的DJ、無能なマネージャー、変態ツアーマネジャー、不正なプロモーターを排除することができたら、それはそれで僕たちにとってとても良いことだろうけれど。

コロナ渦においてはストリーミングはひとつの手段だけど、ほかにどんなことが考えられると思いますか?

ロラン:人びとは現在、僕たちが以前知っていたのとは非常に異なる状況で音楽を聴いている。たぶんストリーミングでのDJセットで特定の経済が発展するだろうね。
 でも音楽がそこにあっても、同じダンスフロアで一緒にいるとき、DJセットやコンサートを一緒に楽しむ体験に勝るものはないよ。いまはストリーミングも良いと思うよ。ストリーミングは人と人との間に何らかのつながりを保つから。しかし、ライヴ体験に取って代わることでは決してない。音楽は「その場で」体験できること、それはDJの本質でもある。瞬間を理解し、捉え、人びとと交流すること。

とにかく、お互い無事生き延びて、いつかダンスフロアでお会いしましょうね。

ロラン:僕も心からそう願っている。僕たちみんなが愛する音楽は、それが同じダンスフロアで一緒に聴けて、体験できるときにだけ本当の価値があるんだ。そしてそれが日本のダンスフロアでもあるとすると……僕にとってそれは本当に世界でもっとも美しいものなんだよ。

最後に、25周年ということで特別に企画していることがあれば教えて下さい。

エリック:最近になってFコミを発見し、そしてフランスの音楽の歴史において私たちがどのような役割を果たして来たかを理解したいと思ってる20〜25才くらいの若いオーディエンスから多くの要望があった。こうしたインターネットでの連絡があって、私はこの25年間を祝いたいと思ったんだよ。今日では、1991年以前にフランスのハウス/テクノまたはエレクトロニック・ミュージックのアーティストについて誰も知らなかったことを想像することは難しい。しかしじっさいは、フランスのインディペンド・レーベルがフランス国外でレコードを販売することすらなかった。Gypsy Kings(ジプシー・キングス)やMory Kante(モリー・カンテ)などのワールド・ミュージックのアーティストを除いて、フランスのアーティストはフランス国外でコンサートを行うことはほとんどなかった。
 FnacとFコミでひとつのドアを開くことができたと思っている。だからこそ、すべてのレコードを復活させる必要があると思っているんだ。25年の祝いとして、元のDATマスターから完全にリマスターされた25枚の名盤、そしてあまり知られてない作品まで25枚の12"を選択した。アナログ盤とデジタルで5回に渡って5枚づつリリースするよ。今年の終わりには、アナログ盤2枚でMegasoft Officeの特別ヴァージョンもリリースする。また、デジタルで利用可能なタイトル数も増やそうと思う。デジタルで利用できなかったタイトル、宝物がまだたくさんあるからね。

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 個人的なよき思い出としては、2006年に『エレクトロショック』の日本語版を出せたことと、ゴダールの映画『勝手にしやがれ』でジャン・ポール・ベルモンドが最後にぶっ倒れる道路を明け方よれよれに酔っぱらいながらいっしょに歩いたことだ。その『勝手にしやがれ』のフランス語の原題「A Bout De Souffle」が、彼の最初の出世作だった。1993年のEPでその1曲目は『勝手にしやがれ』の英語タイトル“Breathless”。彼がエリック・モランとはじめたパリで最初のアシッド・ハウス/テクノのパーティの名前となった“Wake Up”も、その「A Bout De Souffle EP」に収録されている。
 このEPはFコミからではなく〈Fnac〉からのリリースで、当時は〈Warp〉にもライセンスされている、時代を切り拓いた決定的なシングル。その筋で重要なもう1枚は、同じく1993年にデリック・メイの〈Fragile〉と〈Fnac〉からリリースされたChoice(ロランとサンジェルマン=ルドヴィック・ナヴァールによる)の「Paris EP」で、収録された“アシッド・エッフェル”は永遠のクラシックである。

Alex from Tokyo Pratによる〈F Communications〉25枚

(年代順))

St Germain-en-Laye - Mezzotinto EP
D.S. – Jack On The Groove
Shazz – A view of Manhattan EP
Nuages – Blanc EP
Juantrip – Switch out the sun
Nova Nova – Nova Nova EP
St Germain – Boulevard LP
Laurent Garnier – Club Traxx EP
Various – Musiques pour les plantes vertes CD
Nova Nova – Tones
Scan X – Earthquake
DJ K.U.D.O – Tiny Loop
Laurent Garnier – Crispy Bacon
Aqua Bassino – Deeper EP
Various- Megasoft Office 97 CD
A Reminiscent Drive – Mercy Street LP
Jii Hoo – Let me love you
Frederic Galliano – Espaces Baroques LP
Jori Hulkonen – You don’t belong here
Various – Live & Rare 3LP
Mr.Oizo – Flat Beat
Laurent Garnier – The Man with the Red Face
Frédéric Galliano with Hadja Kouyaté - Alla Cassi Magni
Avril – French Kiss
Laurent Garnier - Retrospective LP

【元F Communications日本大使としての思い出】

 文:ALEX FROM TOKYO PRAT

 1991年9月、大学のために東京から出身地のパリへ。ダンス・ミュージックに関しては東京での高校時代にからすでに心酔、フランスに来てからパリのアンダーグランド音楽とクラブ・シーンを発見しました。
 まずは毎週木曜日、伝説のRex ClubでLaurent GarnierとDj DeepがレジデントDJを務めていたフランス初のアンダーグランド・テクノ・ハウス・パーティ〈Wake Up〉に通う。そして、Gregory(グレゴリ−)とDj Deepと親しくなって、Dj Deep通して〈Fnac Music Dance Division〉のレーベル・マネージャー、Eric MorandとFnacのアーティストSt Germain(サンジェルマン)やShazz(シャズ)等と知り合いました。
 1993年にDj DeepとDJ Gregoryと共にDJユニット「A Deep Groove」を結成します。伝説的なRadio FG 98.2fmのランチタイムに放送された「リアル・アンダグランド・ダンス・ミュージック」ラジオ番組が、St. GermainやShazzなどの初期シーンのディープ・ハウス・アーティストに初めてスポットライトを当てます。
 1995年、東京に帰還しました。テクノとエレクトロニック・ミュージックが日本で爆発してるなか、来日するフランスやヨーロッパのレーベル、DJやアーティストたちの橋渡し役として活動。そのなかで、パリで仲良くなったLaurent GarnierとEric Morandのレーベル〈F Communications〉の日本大使役を1996年から2002年まで務めることになりました。
 1995年の秋、King Recordとのレーベル契約に合わせて新宿Liquid Roomで〈F Communications〉のパーティが開催されました。Fumiya TanakaがオープニングDJでしたが、そのときのLaurent Garnier, Scan X, Lady Bらが出演したパーティはいまでも鳥肌が立つほど感動的でした。
 1996年には西麻布のクラブ〈Yellow〉でレギュラー・パーティをはじめました。日本のエレクトロニック・ミュージックDJの立役者のひとり、DJ Kudoが〈F Communications〉から12”「Tiny Loop」をリリースします。日仏関係がさらに結ばれるようで、嬉しかった!
 1996年にはP-VineからSt Germainのデビュー傑作アルバム『Boulevard(ブルヴァード)』が日本盤でリリースされます。普段限られた状況だけでしかDJプレイしないSt.Germain本名Ludovic Navarre(ルドヴィック・ナヴァール)がわざわざ来日し、Yellowで2公演を披露しました。そして、美しいディープ・ハウスをプロデュースするスコットランドのAqua Bassinoとの出会いと東京と大阪での日本ツアーがありました。Scan Xが1997年に「攻殻機動隊-Ghost In The Shell」のゲーム・サウンドトラックに参加したことも忘れられません。
 1998年からは、Toys Factoryとのレーベル契約から数々の素晴らしい日本特別企画アーティスト・アルバムを発表&ツアー。2000年のLaurent Garnierのアルバム『Unreasonable Behavior』のリリースに合わせて『ele-king』ではパリの現地取材をしましたが、これはとても思い出深いです。
 1998年から2002年頃までに掛けては、Frederic Galliano(フレデリック・ガリアーノ)のジャズ&アフリカ音楽の企画が日本でも注目されました。Fredericが〈F Communications〉を通して担当していた、マリ音楽の再発/リミックス特別企画レーベル〈Frikyiwa〉では、井上薫ことChari Chariが参加しましたが、自分もTokyo 246 Ave. Project名義でAbdoulaye Diabateのリミックスを手掛けました。青山CAYでFredericがフル・バンドと女性ヴォーカリストAfrican Divas(アフリカン・ディヴァーズ)と来日ライヴを披露したときは本当に感動しました!
 それから、70年代から活動している作詞/作曲家と写真家であるJay Alanskiのエレクトロニカ/アンビエント・プロジェクト、A Reminiscent Drive(ア・レミ二セント・ドライヴ)の美しい桜の写真のアルバム『Mercy Street』も日本でとても人気がありましたよね。また、北海道、札幌のTha Blue HerbがライヴでNova Novaのピアノ傑作“Tones(トンズ)”をバックトラックに良く使っていたことを初めて聞いた時はビックリしました。
 最後に、2006年にはロラン・ガルニエの自伝『エレクトロショック』を日本語に訳して、野田努さん監修のもと河出書房から出版しました。自分が学生の頃に通っていた東京の日仏学院でロラン、野田さんと三田さんとトークショーをやって、その後日仏学院をクラブ・パーティにしたことはとくに自分の人生のなかでは重要な素晴らしい出来事でした。その後、ロランとは一緒に、日本の数々の素晴らしいパーティ&ツアーでプレイしてます。〈F Communications Japan〉では日本のミュージック・ラヴァーと感動的で楽しい思い出深い時間を共有することができた。実に素晴らしい体験でした。
 いままでサポートをしてくれた日本の音楽&クラブ業界のパートナーの皆さんや日本のファンには本当に感謝してます!
 この25周年を祝って、日本の新世代にもここで〈F Communications〉レーベルの魅力を知ってもらいたいです。
 Tres bon 25eme anniversaire F Communications!

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