「F」と一致するもの

Gil Scott-Heron - ele-king

 「黒いボブ・ディラン」「闘う詩人」などの異名を持ち、1970年のデビュー・アルバム以来、一貫して社会や政治に対する痛烈なメッセージを乗せた歌を歌い続けてきたギル・スコット・ヘロン。2010年にリリースされた『アイム・ニュー・ヒア』は、彼が2011年5月27日に亡くなる前の遺作であり、晩年の残された力を振り絞り(2008年に彼はHIV陽性であることを告知している)、往年の輝きを最後に放ったアルバムである。リリース元の〈XLレコーディングス〉は、ギルに敬意を表す意味も含めてこの『アイム・ニュー・ヒア』をリサイクルしてきた。ジェイミー・エックスエックスが録音素材を使ってリコンストラクトした2011年の『ウィ・アー・ニュー・ヒア』(結果的にこのアルバムがリリースされた数か月後にギルは亡くなっている)、『アイム・ニュー・ヒア』と同時期に録音された未発表作品集の『ナッシング・ニュー』(2014年)と、ことあるごとにギル・スコット・ヘロンにまつわる作品をリリースしている。そして、『アイム・ニュー・ヒア』のリリース10周年となる企画が本作『ウィ・アー・ニュー・アゲイン』である。

 『ウィ・アー・ニュー・アゲイン』も『ウィ・アー・ニュー・ヒア』同様に『アイム・ニュー・ヒア』のリミックス/リコンストラクト・アルバムで、手掛けるのはジャズ・ドラマーのマカヤ・マクレイヴンである。マカヤはミュージシャンでありながらビート・プログラミングやサウンド・メイクも行うプロデューサーであり、『ハイリー・レア』(2017年)のように生演奏やライヴ録音にDJミックスを交えて編集するようなアルバムを作ってきた。〈XLレコーディングス〉の総帥のリチャード・ラッセルはこの『ハイリー・レア』を聴き、マカヤの才能に惚れ込んで『ウィ・アー・ニュー・アゲイン』の制作を依頼したそうだ。今回のレコーディングはシカゴにあるマカヤのホーム・スタジオでおこなわれ、ギル・スコット・ヘロンのヴォーカル・パートや元々の演奏などのテープ素材をもとに、サンプリングやエレクトロニック処理と自身によるインプロヴィゼイションを交えて再構築していった。

 『アイム・ニュー・ヒア』はリチャード・ラッセルのプロデュースによって、アブストラクトなダブやダブステップ的なトラックを持つものとなっており、ギル・スコット・ヘロンにとって異色作であると共に、新たなチャレンジをしたアルバムでもあった。一方、『ウィ・アー・ニュー・ヒア』ではジェイミー・エックスエックスが、あくまで素材としてそれらを用いることにより、ダンス・トラックとしての軽やかさを持つポスト・ダブステップ~エレクトロニック・サウンドへと導いていた。確かにジェイミーの試みはフレッシュで面白いものであったが、しかしながらギルの言葉が持つ毒気や生々しさ、怒りや重みといったものは薄れてしまっており、ギル・スコット・ヘロンとしてのアルバムとして見た場合に果たしてどうなのかな、という作品でもあった。リミックスやリコンストラクトの場合、サウンドを作り変えたり更新する面白みは出せても、元のアーティストの精神性や世界観にまでなかなか立ち入っていけないものだが、今回のマカヤ・マクレイヴンの場合は、むしろギル・スコット・ヘロンの精神性を軸にリコンストラクトした作品のように感じる。ビートにヴォーカル・サンプルを乗せるのではなく、言葉に合わせたビートを作り出していくというやり方をしているように感じるのだ。それはマカヤがギルと同じジャズを演奏するドラマーであり、ジェイミーとは違うブラック・アメリカンの言語を持つからだろう。

 都市生活での暗部を歌った “ニューヨーク・イズ・キリング・ミー” は、アフリカン・リズムを用いたブードゥー的な演奏で、まるで生前のギルがキップ・ハンラハンと共演したかのようなダークでアンダーグラウンドなジャズとなっている。ジャズ・ファンクの “ピープル・オブ・ザ・ライト” は、ある意味でギル本人よりもギル・スコット・ヘロンらしい曲ではないだろうか。ヘヴィーなベースのリフでヒプノティックに進行していく “ザ・クラッチ” は、ギルとマカヤの両者の共通項となるゲットー・サウンドを浮かび上がらせる。フルートとギルのポエトリー・リーディングを交互にシンクロさせた “ホエア・ディッド・ザ・ナイト・ゴー” のミステリアスさは、あくまでギルの言葉を主体に作っているからこそ生み出せるものである。“ミー・アンド・ザ・デヴィル” (もともとはブルース・ギタリストのロバート・ジョンソンの “ミー・アンド・ザ・デヴィル・ブルース” のカヴァー)のジミ・ヘンドリックスにようにささくれたギター・リフは、原曲が持つ悪魔伝説の逸話とアフロ・アメリカンの置かれた荒廃した状況に繋がる。そして “アイル・テイク・ケア・オブ・ユー” はマカヤからギルへのレクイエム的な1曲となっている。


ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ - ele-king

 けだるいギターのループが耳から離れない。メランコリックでビター・スゥイートなメロディ。「開場 Opening」と題された主題はアレンジを変えて何度も繰り返される(「穿過黑暗的漫長旅途 貳 Long Day's Journey Into Night (II)」)。人には必ず思い出せないことがある。そして、思い出せないことの集積によって押しつぶされていく人もいる。ギターのループは催眠術のようであり、自分にはコントロールできない領域があると何度も言い聞かせられているかのよう。映画の始まりはまるで精神分析の始まりである。ホアン・ジェ演じるルオ・ホンウはベッドに仰向けになって横たわっている。父の死をきっかけに彼は故郷に還ろうと起き上がるものの、もしかすると彼は最後までベッドから一歩も動かずに記憶の断片を遡行していただけなのかもしれない。それこそこの作品はストーリーが中心にあるというより自由連想のようにしてシークエンスが連なり、12年ぶりに戻った故郷で昔の「女に会う」という目的がいつしか本当になっていく。映画の前半は努力すれば意識化できる記憶。いわゆるフロイトの「前意識」を本人に都合のいいストーリーとして組み立て直し、捏造記憶にすり替えているだけなのかもしれない。話が展開しているのに同じメロディが繰り返されることによって元の場所に引き戻されたように感じるのはそのせいではないだろうか。「女に会う」前も「会っている」時もルオ・ホンウは常に憂鬱げで、心に揺れが感じられず、感情の主体はどこかほかにあるとでもいうように。唐突に差し挟まれるナレーション(独白)では「映画と記憶の違いは、映画は常にニセモノで、記憶は真実と嘘のミックスだということ」だと告げられる。

 他の映画監督の名前を上げることはあまりしたくないのだけれど、水浸しの部屋や錆びた鉄の塀、あるいはテーブルの振動でコップが落ちるシークエンスなど『ノスタルジア』(83)から借りたイメージが表面的には横溢するにもかかわらず、タルコフスキーが権力や制度疲労を暗喩として作品に忍ばせていたのとは違い、全体を覆っているのはむしろデヴィッド・リンチの「思わせぶり」に近いものがある。ヒッチコックなどを過剰に引用したデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督『アンダー・ザ・シルバーレイク』(18)と同じく、伏線を撒き散らしてどれも回収せず、主人公があたかも「ストーリーの牢獄」から抜け出していくように行動する展開は誰よりもデヴィッド・リンチに通じ、毒々しい色使いや見世物文化を前景化する姿勢にもそれは感じられる。このところ「based on a true story(この話は事実に基づく)」というクレジットが作品の品質を保証するキャッチフレーズのように多発されていることに対して反発を感じる映画の作り手が現れてもおかしくはない状況にあったことを思うと、『ロングデイズ・ジャーニー』や『アンダー・ザ・シルバーレイク』がデヴィッド・リンチを召喚することになんの疑問もないわけだけれど(つーか、本人が『ツイン・ピークス』でカムバックしたばかりでした)。そして、何よりも『ロングデイズ・ジャーニー』がデヴィッド・リンチを想起させるのは音楽の使い方である。映画自体にリズム感がなく、映像とまったく関係がない音楽を流すことでそれなりに長いシーンを持続させてきたデヴィッド・リンチの手法はまさにMTV時代の申し子といえ、異様なほどのミスマッチを恐れない『ロングデイズ・ジャーニー』にも音楽に対する過信は増幅して感じられる。リン・チャンとポイント・スーによる多幸感あふれるドローン(「監獄訴說 Confession from Prison」)が延々と流れる刑務所での面会シーンは特に異様で、印象深かった。

 ルオ・ホンウが再会を果たす女、ワン・チーウェンには山口百恵という役名が当初は考えられていたらしい。ワン・チーウェンを演じるタン・ウェイは、そして、アン・リー監督『ラスト、コーション』(07)でデビューした際、あまりにもセックス・シーンが多く、しかも日本軍のスパイという役柄だったせいで中国では批判の的となり、以後の作品も放送禁止や出演シーンがカットされるなど波乱含みのスタートを切った女優である(彼女を起用したことについて後悔しているというアン・リー監督とハリウッド進出に当たって性器を露出する役だった菊地凛子は対談をしたことがあるそうです)。タン・ウェイはその後、香港の市民権を取得するなど、それなりに時間をかけて復活を果たしたものの、言ってみれば名前ばかりが有名な女優といえ、虚構に足を取られた人生がそのまま『ロングデイズ・ジャーニー』における「ヤクザから逃げられない女」という設定に重ねられている。ルオ・ホンウがワン・チーウェンを自由にしようとするトライアルと絶望感の上塗りがイメージの洪水を呼び起こす中盤はかなり見応えがあり、象徴を読み解きたい人たちの議論が尽きないパートにもなっている。また、日本軍のスパイ役を汚点とせず、ケータイの着メロなどで中島みゆきの「アザミ嬢のララバイ」が流れるなど、もしかするとビー・ガン監督は中国で「精日(=精神日本人)」と呼ばれるタイプの人なのだろうか。「精日」というのは単純な「日本かぶれ」から「反政府的」とされる傾向まで解釈に幅のある言葉で、どのあたりということは簡単に言えないけれど。

『ロングデイズ・ジャーニー』の白眉と言われるのは後半である。チェン・ヨンゾン演じるヤクザの親分を撃ち殺すために映画館に入ったルオ・ホンウがサングラスをかけるタイミングで観客はあらかじめ3Dメガネをかけるように指示されている。ここからの64分はワン・カットで撮影されていて、『トゥモロー・ワールド』(06)に始まり、『アバター』(09)や最近では『バードマン』(14)に『1917 命をかけた伝令』(19)といった流行りと同じ手法を用いることで「意識の流れ」を追跡してみたということになるのだろう。ここでは前半にあったような話の整合性はまったくなくなってしまう。流れや脈絡といったことはあっても論理や法則といったことからはどんどん離れていく。僕の解釈ではここからは「前意識」から「無意識」に分け入り、村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』でいえば「世界の終り」の章だけを凝縮したようなものになっている(『ロングデイズ・ジャーニー』の中国原題は『地球最後の夜』)。実際、観客が3Dメガネをかけるとルオ・ホンウは洞窟の中にすとんと落ちている。そして、少年と卓球をしなければそこから出られないという条件を押し付けられ、以後も境界線を意識させるエピソードが繰り返される。前半には曲がりなりにも行動に目的のあったルオ・ホンウは「閉じ込められて脱出する」というパターンを反復してから(以下、ネタバレ)一気に夜空へと飛び上がり、いわば虚構による虚構の解放が試みられる。ルオ・ホンウが一緒に空を飛ぶカイチンはタン・ウェイが二役を演じている女性で、いかにも身分を変えてヤクザから逃げられたかのようでもあるし、着地地点で開かれている歌謡ショーはヤクザの親分のカラオケと対をなしていると見做すことで、音楽と権力の結びつきが解かれたかのようにも感じられるけれど、すべてがどうとでも解釈できることであり、そもそも解釈の必要さえないのかもしれない。そして、この映画は現実には戻ってこない。

『ロングデイズ・ジャーニー』の原型となる『凱里ブルース』も追って4月18日から公開予定。


『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』WEB限定版予告編

Joy Orbison, Beatrice Dillon & Will Bankhead - ele-king

 きたきたきたー! ファッション・ブランドの C.E がまたもやってくれます。彼らが仕掛ける2020年最初のパーティは〈Hinge Finger〉および〈The Trilogy Tapes〉との共催で、両レーベルからおなじみジョイ・オービソンとウィル・バンクヘッドが出演、さらに、先月〈PAN〉よりすばらしいアルバム『Workaround』をリリースしたばかりのビアトリス・ディロンが加わります。前売りチケットは出血大サーヴィスの1500円。これは行かない理由がありません。4月10日は VENT に集合。

C.E、〈Hinge Finger〉、〈The Trilogy Tapes〉共催によるパーティが VENT で開催に。Joy Orbison、Beatrice Dillon、Will Bankhead が出演

C.E (シーイー)による2020年度初となるパーティが、2020年4月10日金曜日に表参道の VENT を会場に、Joy Orbison (ジョイ・オービソン)、Beatrice Dillon (ビアトリス・ディロン)、Will Bankhead (ウィル・バンクヘッド)の3名をゲストに迎え開催となります。

洋服ブランド C.E が〈Hinge Finger〉(ヒンジ・フィンガー)、〈The Trilogy Tapes〉(ザ・トリロジー・テープス)の2レーベルと共催する本パーティのラインナップは、音楽プロデューサーDJ、英国の音楽レーベル〈Hinge Finger〉主宰の Joy Orbison、今年2月に初のソロアルバムをベルリン拠点の音楽レーベル〈PAN〉(パン)よりリリースしたばかりの Beatrice Dillon、そして Joy Orbison と共同で音楽レーベル〈Hinge Finger〉、個人として〈The Trilogy Tapes〉を運営する Will Bankhead の3名です。

Joy Orbison は昨年19年の9月にデビュー10周年を迎えた、英国を拠点とする音楽プロデューサー、DJ、そして音楽レーベル〈Hinge Finger〉の主宰です。昨年19年には Joy O 名義で、〈Hinge Finger〉から「Slipping」を、〈Poly Kicks〉から「50 Locked Grooves」をリリースした他、Overmono (Truss&Tessela) とのユニット Joy Overmono として「Bromley / Still Moving」をリリースし、Off The Meds の楽曲のリミックス「Belter (Joy O Belly Mix)」をてがけました。

Beatrice Dillon は、UKはロンドンを拠点とするアーティスト、ミュージシャン、DJです。前述した〈The Trilogy Tapes〉や〈The Vinyl Factory〉、〈Where To Now?〉、〈Boomkat Editions〉などより楽曲をリリースするほか、Call Super や Kassem Mosse、Rupert Clervaux との共作、多種多様なアーティストの楽曲のリミックスも行っている。今年20年2月には、Kuljit Bhamra や Laurel Halo、Batu、Untold、Kadialy Kouyaté、Jonny Lam、Verity Susman、Lucy Railton, Petter Eldh、James Rand、Morgan Buckley らが参加し、マスタリングを Rashad Becker がてがけた、自身のキャリア初となるソロアルバム『Workaround』を〈PAN〉から発表しました。

Will Bankhead はダンスミュージックのファンだけでなく多くの音楽愛好家が信頼をおく英国の音楽レーベル〈The Trilogy Tapes〉の主宰で、前述した Hinge Finger の運営を Joy Orbison と共同でおこなっています。イギリスのインターネットラジオ局、NTSではマンスリープログラムを担当しています。

C.E, Hinge Finger, The Trilogy Tapes present

JOY ORBISON
BEATRICE DILLON
WILL BANKHEAD

開催日:2020年4月10日金曜日
開催時間:午後11時〜
開催場所:VENT (https://vent-tokyo.net/
当日料金:2,500円
前売り料金:1,500円 (https://jp.residentadvisor.net/events/1402254

※20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため顔写真付きの公的身分証明書をご持参願います。(Over 20's Only. Photo I.D. Required.)

Matsuo Ohno × 3RENSA - ele-king

 待ってました! 去る1月18日に決行された大野松雄と 3RENSA (メルツバウduennニャントラ)による公開ライヴ・レコーディングが、ついに音盤化を果たす。発売は4月29日。永久保存されることになった歴史的瞬間、驚異のコラボレイションを思うぞんぶん堪能すべし。

伝説的な音響デザイナー、大野松雄と、エクスペリメンタル・ユニット、3RENSA (Merzbow、duenn、Nyantora)による公開ライヴ・レコーディングをパッケージ化!

2019年2月16日、Nyantora と duenn によるアンビエント・イヴェント、Hardcore Ambience が恵比寿映像祭で「Another World」として実現。テレビ・アニメ『鉄腕アトム』の音楽の生みの親として知られる伝説的な音響デザイナー、大野松雄、エクスペリメンタル・ユニット、3RENSA (Merzbow、duenn、Nyantora)、写真家・金村修の最新映像とともに究極の視聴覚体験のトランスポジションとなるスペシャル上映とライヴを開催した。チケットはソールドアウト。その時のパフォーマンスをさらにアップデートする形で、“HARDCORE AMBIENCE presents 大野松雄×3RENSA_Space Echo_Public recording” と題し、大野松雄と 3RENSA の録音をパッケージングすることを目的とした公開ライヴ・レコーディングが、2020年1月18日にサウンド・デザイナーの金森祥之氏がプロデュースする天王洲アイルの KIWA にて行われた。その歴史的とも言えるレコーディングを音盤として永久保存する。スリリングでありながらもどこかユーモラスでもある極上の音響体験をお届けする。

[商品情報]
アーティスト:大野松雄 × 3RENSA
タイトル:space_echo by HardcoreAmbience
レーベル:Pヴァイン
商品番号:PCD-25293
フォーマット:CD
価格:定価:¥2,500+税
発売日:2020年4月29日(水)

収録曲
1. space_echo01
2. space_echo02
3. space_echo03

大野松雄
1930年東京・神田生まれ。府立六中(現・都立新宿高校)を経て旧制富山高等学校(現・富山大学)中退。文学座、NHK東京放送効果団を経て、1953年フリーの音響マンとなり独立プロの映画などの録音・効果の仕事を開始。多くの映像作家の作品に関わる。同時にまだシンセサイザーがない時代に発振器とテープ・レコーダーを駆使し、エコー等さまざまなテープ編集技術を工夫して電子音や電子的加工音による「この世ならざる音」の探求へと向かう。
1963~66年テレビアニメ『鉄腕アトム』の音響デザイン。小杉武久がアシスタントとして参加。以後、自ら「音響デザイナー」を名乗る。
1968年以来、滋賀県の知的障害者施設で演劇活動に協力し、障害者と施設の記録映画を制作。つくばEXPO'85、未来の東北博覧会(1987)、アジア太平洋博覧会福岡(1989)等、大規模博覧会におけるパビリオンの空間音響システム・デザイナーとしても活躍。
1993年から2001年京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大学)講師。
アルバムに「大野松雄の音響世界」3タイトル(キングレコード)ほか。
2009年3月、「東京国際アニメフェア2009 第5回功労賞」受賞。
https://www.af-plan.com/oto

3RENSA
Merzbow、Duenn、Nyantora (ナカコー)によるバンド「3RENSA」。バンド名は2017 年にベルギーのサウンド・レーベル、〈Entr’acte〉よりリリースした初の共演盤アルバム『3RENSA』から由来。ノイズ、アンビエント、ドローン、エクスペリメンタル、ロックなど流体的なバンドの在り方を提示しています。

yukifurukawa - ele-king

 成熟したプロダクションになんとも色鮮やかな詩情──ギター/キイボード/ヴォーカルの古川悠木を中心に、ソロでも活動するコルネリ、サラダマイカル富岡製糸場グループのサラダらが集合した東京のバンド、その名も yukifurukawa が、4月1日にファースト・アルバム『金貨』をリリースする。どこかテニスコーツやマヘル・シャラル・ハシュ・バズを想起させつつも、よりクリアな音響がそっとやさしくリスナーの耳を包みこんでいく……まずは先行公開された “ハイキングコース” を聴いてみてほしい。これはチェックしておくべきでしょう。

[3月24日追記]
 まもなくリリースされるアルバム『金貨』より、もう1曲 “サマー” が現在公開中です。とても軽快で元気のわいてくる曲ですね。なお、4月4日には SCOOL にてレコ初ライヴも予定されています。ヒップホップ・グループの E.S.V が共演。詳細はこちらから。

yukifurukawa
『金貨』
WEATHER 80 / HEADZ 245

「yukifurukawa」は古川悠木の曲を無為に演奏すべく2019年5月に活動を開始したが、コルネリ(Maher Shalal Hash Baz / のっぽのグーニーBad medicines)の加入をきっかけに、当初から参加するサラダ(サラダマイカル富岡製糸場グループ)と共に元々シンガーソングライターとしても活動している二人の曲も持ち寄ってライヴ演奏をしていくこととなった。その後、突き進む勢いで完成したのがこの『金貨』と題されたファースト・アルバムである。

『金貨』は古川悠木、サラダ、コルネリという、三人の作曲家によるそれぞれテイストの異なる楽曲が併存して収録されており(“ムーン” が唯一の共作曲)、ワクワクさせられたり、寂しさや諦めを感じたり、それでいてどこかに望みがあるかのような、さまざまな心象世界が描かれている。
古川悠木による丁寧なサウンド・プロダクション、ベース森田哲朗とドラム久間木達朗による渋く手堅いリズム隊の演奏、サラダとコルネリによる美しいコーラス・アレンジが全編に渡って施され、非常に効果的なアクセントになっており、さらに三人のカラーの違う個性的なヴォーカルが見事に調和することで新たな化学反応が起き、予想以上に熟達した作品となった。
ゲストとして、シンガーソングライターの mmm がエレキベースで参加しており(過去に一度、yukifurukawa のライブにサポートとして参加している)、素晴らしいグルーヴを醸し出している。

マスタリングは折坂悠太、入江陽、さとうもか、Taiko Super Kicks、TAMTAM、本日休演などの作品のエンジニアリングも行なっている中村公輔が担当。

フロント・カヴァーのドローイングは若き画家・森ひなたが描き下ろし、デザインはグラフィックデザイナーの浅田農が担当(彼が手掛けた、おさないひかり詩集『わたしの虹色の手足、わたしの虹色の楽器』は東京TDC賞 2020のブックデザイン部門に入選)し、yukifurukawa の世界観をより引き立たせるようなアルバム・ジャケットに仕上がっている

アーティスト:yukifurukawa
アルバム・タイトル:『金貨』
規格番号:WEATHER 80 / HEADZ 245
価格:[税抜価格 ¥2,000]+税
発売日:2020年4月1日(水)
レーベル:WEATHER / HEADZ

01. ハイキングコース
02. どこかの窓
03. 遡行不良
04. サマー
05. 海と犯人
06. 庭
07. 話したくない
08. 蟹の思い出
09. Les méchants
10. ムーン

yukifurukawa
古川悠木:ボーカル(M2,3,5,8,9)、ギター(M1,2,3,5,6,9,10)、ピアノ(M1,2,4,7,8)、オルガン(M3,4)、口笛(M3,5)
サラダ:ボーカル(M4,5,8,10)、ギター(M1,4)
コルネリ:ボーカル、ギター(M7,8)
森田哲朗:コントラバス(M1,2,5,6,8)
久間木達朗:ドラム(M1,2,4,5,6,8)

mmm:ベース(M4)

編曲:古川悠木
コーラスアレンジ:サラダ(M4,10)、コルネリ(M2,3,5,8,9,10)

録音:古川悠木、西村曜(StudioCrusoe)
ミックス:古川悠木
マスタリング:中村公輔
録音場所:StudioCrusoe、七針、柳瀬川、阿佐ヶ谷、天沼、池袋、高田馬場

絵:森ひなた
写真:梨乃
デザイン:浅田農

drøne - ele-king

 ドローン(drøne)は、マイク・ハーディング(Mike Harding)とマーク・ヴァン・ホーエン(Mark Van Hoen)によるエクスペリメンタル・サウンド・アート・ユニットである。今年頭、彼らの4作目のアルバム『The Stilling』がリリースされた。この特異な作品にについて語る前に、まず、ふたりのメンバーについての簡単な紹介からはじめたい。とてもスペシャルなユニットなのだ。

 マイク・ハーディングは英国のエクスペリメンタル・ミュージックの老舗〈touch〉の創設者である。彼はレーベル運営の傍、自身の音源をいくつかをリリースしている。1998年に、彼はフェネス、ハーディング、レーバーグ(Fennesz Harding Rehberg)『Dĩ-n』を〈Ash International〉からリリースした。20分ほどの音響作品だ。ちなみに〈Ash International〉は、マイク・ハーディングと音響作家のスキャナーことロビン・リンボー(Robin Rimbaud)が1993年に設立したレーベルである。
 2011年、〈touch〉から7インチ・レコードでマイク・ハーディング「Repaired/Replaced」をリリースした。ジョン・ヴォゼンクロフトによる美麗なアートワークによるこの作品は、短いながらも秀逸な環境録音作品である。さらに〈touch〉から2001年に発表されたコンピレーションアルバム『Ringtones』に MSCHarding 名義の楽曲を収録し、〈Cabinet〉から2001年にリリースされたコンピレーション・アルバム『Cabinet #3: Squall』に MSC Harding 名義で楽曲を提供している。

 マーク・ヴァン・ホーエン(Mark Van Hoen)は、ポストロック・バンド~エレクロトロニック・ミュージックの草分け的存在シーフィールの初期メンバーで、ロカスト(Locust)やソロ名義でも活動するアーティストである。
 マーク・ヴァン・ホーエン名義では1995年に同じく元シーフィールのメンバーである ダレン・シーモア(Daren Seymour)と『Aurobindo: Involution』を〈Ash International〉から送り出した。2年後の1997年には〈touch〉から2枚組『The Last Flowers From The Darkness』をリリースする。翌1998年は〈R&S Records〉傘下のアンビエント・レーベル 〈Apollo〉から『Playing With Time』を発表し、2004年には英国〈Cargo Records〉傘下の〈Very Friendly〉から『The Warmth Inside You』を発表した。2010年代以降は「Boomkat」のオーナーでもある Shlom Sviri と〈Morr Music〉からリリースしたアルバムでも知られる Herrmann&Kleineの Thaddeus Herrmann が運営する〈City Centre Offices〉から『Where Is The Truth』をリリースした。2012年には〈Editions Mego〉から『The Revenant Diary』、2018年には〈touch〉から『Invisible Threads』を発表する。
 ロカスト名義でも、94年に〈Apollo〉から『Weathered Well』を発表して以降も活動を継続している。00年代以降も2001年に〈touch〉から『Wrong』、2013年に〈Editions Mego〉から『You’ll Be Safe Forever』、2014年に同レーベルから『After The Rain』を送り出す。2019年にはアンビエント作家の Min-Y-Llan = Martin Boulton 主宰〈Touched - Music For Macmillan Cancer Support〉から『The Plaintive』をデータ配信で発表した。

 そんな経験豊富なふたりによるドローンは、2016年に、カール・マイケル・フォン・オスウルフ(Carl Michael Von Hausswolff)の娘であり、アーティストとしても知られるアンナ・フォン・オスウルフ(Anna von Hausswolff)主宰のレーベル〈Pomperipossa Records〉から最初のアルバム『Reversing Into The Future』をリリースした。翌2017年には同レーベルから『A Perfect Blind』と自主リリースでCD作品『Mappa Mundi』を発表する。そして2020年、約3年の歳月を経て、〈Pomperipossa Records〉から新作『The Stilling』がリリースされたわけである。

 本作『The Stilling』もこれまでの作品同様に夢のような幻想的なサウンドスケープを形成しているが、より成熟した技法によって実験的な短編映画のようなサウンドへと変貌を遂げた。世界各国(なんと日本も)で録音された環境音が溶けるような1め “Mumming” から引き込まれる。環境録音とそのむこうに鳴るドローンの交錯は刺激的であり麗しくもある。そのサウンド空間は、けっして穏やかなだけではなく、ある種の不穏さや性急さがレイヤーされている点にも注目したい。続く2曲め “Influence Machines” も上空から世界の雑音を高速スキャンするような音響を展開する。音響と音楽の境界線を溶かすような3曲め “Vitula” は、アルバム中でも特に重要な曲だ。ヴァイオリンを、2019年に〈touch〉からアルバムをリリースしたばかりのザッカリー・ポール(Zachary Paul)が、チェロを前作『A Perfect Blind』や〈touch〉より発売されたサイモン・スコット(Simon Scott)の『Soundings』にも参加していたチャーリー・カンパーニャ(Charlie Campagna)が演奏している。人の息吹を折り重ねた4曲め “Sunder” では人のよりパーソナルな領域へと音響が接近する。そしてラスト3曲 “In The Eye”、“The Stilling”、“Hyper Sun (Including Every Day Comes And Goes)” では、環境音とドローンが高密度に交錯・融解し、まるで聴き手の耳と記憶に急速に浸透するようなサウンドスケープを展開する。次第に壮大な音響が生成されていくさまは、まさに圧巻というほかない。そのほかゲストとして Smegma の Nour Mobarak や Bana Haffar らも参加している。

 以上、全7曲、どのトラックも成層圏から地上、そしてヒトへと高速ズームアップするようなサウンドであった。そのうえまるで記憶が溶けていくような不思議なノスタルジアを放っている。彼らの最高傑作であるばかりでなく、近年のエクスペリメンタル/ドローン作品の中でも出色の出来といえよう。

Ben Watt - ele-king

 どうして彼の音楽はこうも美しいのだろう。1983年の『ノース・マリン・ドライヴ』でデビューし、その後のEBTGの全活動を経て、2014年発表の『ヘンドラ』から改めて本格的に自身のソロ名義の活動を本格化させたベン・ワットが、2016年の『フィーヴァー・ドリーム』に続いて今春リリースしたのが本作『ストーム・ダメージ』である。
 とはいえ今回は「嵐の被害」のタイトルからも明らかな通り、全体にやや重めの仕上がりとなっている。資料に拠ればベンは近年、相次いで異母兄姉らを亡くしたのだそうで、その経験が随所に影を落としていることは否めない。悲しみや苛立ちといった感情を、かなり私的な視点から掘り下げているトラックが目立つのだ。

 たとえば、葬儀の場面を描いたと思しきM3“Retreat to Find”では、サビの部分で「すべてのしがらみから逃げ出し、もう一度きちんと死と向き合える場所を見つけるんだ」と歌われる。特にこのトラックでは、ベン・ワットらしからぬと形容するしかない、怒りや悲痛さといった要素がヴォーカルにおいてもあえて強調されていて、それが、やや鋭利に過ぎる音色のアコギのストロークプレイに乗せられてくる。自ずと想起されてくるのは荒涼という形容が相応しいような光景となる。
 開幕の“Balanced on Wire”は若者らへと向けられたメッセージとも読み取れるのだけれど、全編を貫いているのは切迫感か、あるいは焦燥とでも呼ぶべきものだ。「一瞬を生きろと人は言うが、時にその一瞬はあまりに儚く、あるいは時に間延びしている」「傷つけられたと思っているかも知れないけれど、そういう経験をしていない人間なんていないものだ」「不安を感じたことのない人間だって同じだ」こうした言葉が、規則的に過ぎるほどのピアノとダブルベースを前面に押し出したパターンの上で綴られていくのだ。終盤に向け、さながら終末の景色を描き出そうとでもするかのように押し出されてくるSEの中、細い鉄線の上で危ういバランスを取ろうとするヤジロベエにも似たイメージは、あたかも今のベン自身の心象風景にも思える。
 続く“Summer Ghost”もやはりマイナーコードを主調に展開される。異界と現世がふと重なる一瞬を切り取ったかのような歌詞を、高音のシンセサイザーによる揺らぐような白玉が巧妙に演出してみせる。その先は上の“Retreat to Find”を挟んで“Figures in the Landscape”へと続くのだが、こちらのトラックもまた、風の音しか聞こえて来ない寂寞とした一人きりの場面の描写で幕を開けている。そのまま「自分たちは景色の中の人形みたいなものだ」とまで断じられてしまえば、さすがに重苦しさに息が詰まりそうにもなる。

 けれどここに至って少しだけだがようやく上向きな要素が登場してくる。明らかにロックのリズムのサビに「またもう1日生きてゆくために、さあ手を打とう」と歌われるのだ。そしていよいよこちらとしても、本作は実はベン自身の、いわば回復のための手続きのようなものだったのかも知れないなと想像せざるを得なくなるのである。
 M5M6もともにやはり喪失感を基調としている。引き出しに残されていたナイフに、姿を消してしまった歌姫。選ばれたモチーフがそのまま曲を決定してしまった印象だ。それぞれの物語が具体的な誰かを想定して綴られているのだろうことは、たぶん間違ってはいないはずだ。甘い郷愁とまでは言わないけれど、それでもここまでくると、冒頭から響いていた棘々しさは多少ながら和らいでいる。

 そして次のトラックのタイトルに、僕らはほんの少しだけ、胸をなで下ろすことを許される。「夜に続く日の光」だ。ようやくここから先、メジャースケールを基本にしたメロディーなりコードワークなりが曲を支配していくようになってくる。手のひらの温もりやあるいは「時とともに変わらざるを得ない自分たちの姿」といった内容を肯定的に感じられるようになり始めたベンの姿が垣間見えるのだ。特にM9“You’ve Changed, I’ve Changed”はベン・ワットのバラードとして安心して聴ける仕上がりとなっている。

 ボーナストラック的にアルバムの掉尾を飾っているのが“Festival Song”だ。海辺での大規模ライブの光景を切り取ったこの曲は、モチーフとは裏腹に静謐さに満ちている。そしてこんな一節が登場する。
 「僕の歌うすべての歌が、ちゃんと真実として響きますように──」
 そしてこの言葉が実は、開幕の“Balanced on Wire”で切迫した声で歌われていた「心を開き、自分に忠実であることしかできない」というフレーズときっちり呼応していることに気づかされるのである。そして、きっとベンはだから、本作の全体をそういう作品として提示したかったのだろうなと考えさせられるのである。おそらくはこれが今の彼の、等身大の、嘘偽りのない姿なのだろうな、と。

 個人的には『ヘンドラ』所収の“Spring”や、あるいはEBTG時代の“25th December”といった辺りの、穏やかで優しいミッドテンポのバラードこそベン・ワットの真骨頂と思っているので、真っ向からのこちらの手触りを作り上げてくれているトラックが見つからなかったことは正直やや残念ではある。もっとも本人の公式コメントに拠れば、自身の感受性に忠実であるためには新しいアプローチが常に必要なのだという思いが根底にはあるらしい。繰り返し、あるいは焼き直しを慎重に回避した結果なのだろう。

 本作のサウンドは基本、ベン自身が〝フューチャー・レトロ・トリオ〟と呼ぶところのアップライトピアノにダブルベース、ドラムスといった編成に、各トラックの世界観に相応しい音色を加味する形で仕上げられている。そんなことを思い合わせれば4月の来日公演が一層楽しみにもなってくる。また、最後になったが、個人的には各曲のアプローチに随所で、ほんの少しだけではあるが、レナード・コーエンの後期の楽曲のタッチを思い出したことをつけ加えておこうと思う。あるいはこの先彼は、どこかでああいった立ち位置を目指していくのかも知れないなと、漠然とそんなことを想像しもした。

■来日公演予定

東京公演:2020年4月20日(火)恵比寿リキッドルーム 開場18:30 開演19:30
大阪公演:2020年4月21日(水)梅田シャングリラ   開場18:30 開演19:30

Norma Jean Bell - ele-king

 ビッグ・ニュースの到着だ。サックス奏者として70年代から活動をつづける一方、ムーディマンとともにデトロイト・ハウスを牽引してきたノーマ・ジーン・ベルが、2008年の「Do You Wanna Party ?」以来、12年ぶりに新作をリリースする。レーベルは彼女自身の主宰する〈Pandamonium〉。アリサ・フランクリンのヴォーカルをフィーチャーしたA面の “Got Me A Mann” も気になるが、B面のタイトルがフランス語なのは、かの地に暮らすブラック・ミュージック・ラヴァーたちへの目配せだろうか(彼女の代表作のひとつ「I'm The Baddest Bitch」はかつて〈F Communications〉がライセンス)。ともあれ、これは買い逃せない1枚なり。

artist: Norma Jean Bell
title: Got Me A Mann / Libre comme un oiseau
label: Pandamonium

tracklist:
A side: Got Me a Mann
B side: Libre comme un oiseau (Free as a Bird)

disk union

King Krule - ele-king

 乾いている。3枚めのアルバムとなる『マン・アライヴ!』において、これまでのキング・クルールの音楽にあった湿り気は後退し、とくに序盤、ザ・フォールのようなポストパンクを思わせるドライな音質とクールな攻撃性が前に出ている。オフィシャル・インタヴューでアーチー・マーシャルは「もっと乾いた音にしたかった。それはかなり意識してた。ギター・サウンドにせよ自分のヴォーカルにせよ、リヴァーブやエコーという点でもっとドライなものにしたかった」と発言しているが、あくまで意図的な変化であったことがわかる。ビート・ジェネレーションの文化への憧憬があったのだろう、キング・クルールには1950年代のアメリカにおけるモダン・ジャズやブルーズのスタイリッシュな引用があったが、ここでは、70年代末の英国まで時代も空間もワープしているようだ。オープング、“Cellular” におけるパサついた音質で素っ気なく繰り返されるビートや無機質な電子音、断片的なサックスのフレーズ。ギターは叙情的だが、かえって異化効果を高めている。あるいは、簡素きわまりないリズムとぶつぶつと乱暴に放たれるばかりのヴォーカルの組み合わせで始まる “Supermarché” はそのまま、“Stined Again” の混沌を導いてくる。ピッチを外したギターとフリーキーに交配されるサックス、音程を取らずに吐き捨てられるマーシャルの叫び──「またハイになってしまった」。そこでは無軌道な音たちが散らかっている。

 アルバムは後半に向かってメロウになり、“The Dream” のアコースティックでジャジーな響き、“Theme for the Cross” のピアノの音、“Underclass” におけるムーディなサックスの調べなど、穏やかさや甘さを感じさせる瞬間も少なからずある。しかしそれ以上に、“Alone, Omen 3” のノイズのなかでトリップするような体温の低いサウンドに耳を強く引きつけられ、強烈なまでにダビーな音響に酩酊させられる。重さや暗さはいつでもキング・クルールの音楽の危うい魅力だった、が、これまではもっと聞き手を包みこむような柔らかさを有していたと思う。『マン・アライヴ!』には、無調やノイズ、インダストリアルなビートに象徴される乾いた音によって容赦のない力で引きずりこむような、冷えたダークさがある。
 マウント・キンビーブラック・ミディなど、英国ではポストパンクを更新する若いアーティストが目立っているが(プロデューサーとして参加しているのは、マウント・キンビーやサンズ・オブ・ケメットを手がけているディリップ・ハリス)、キング・クルールもまたそのひとりに挙げられるだろう。前作『ジ・ウーズ』からその傾向を強くし始め、本作でより明確にその意思を見せているマーシャルは、そして、21世紀のジャンル・ミックスを踏まえつつも、ポストパンクの冷たい音を借りて彼の厭世観を深めているように見える。

虐殺が起こっている
陸で
海で
僕には見える
掌のなかに
(“Cellular”)

最下層にいる
社会の穴の奥深く
最後にきみを見たのはそこ
僕らはみんなその下にいた
戻って来るという感覚はたしかにあった
だけどそうはならなかった
(“Underclass”)

 「新世代のビート詩人」などとリリカルに形容されることも少なくなかったマーシャルは、しかし、『マン・アライヴ!』では路上のロマンを掲げるよりも、この世で起きている悲惨な現実をテレビを通して呆然と見ている。そして遠くで起きていることが、自分の身に迫っているものに感じられるのだとつぶやく。それは彼にとって、錯覚ではないのだろう。
 前作から本作までの間に、マーシャルはフォトグラファーのシャーロット・パトモアとの間に娘が生まれたことを公表している。本作に収録された楽曲は娘が誕生する前にできていたそうだから、ここで見られる厭世観は子どもを持つ以前のものだということだ。そうした失意はもちろん、これまでの彼の作品にも色濃く影を落としていた。しかしどうなのだろう。果たして、いまの世界は子どもが生まれるのが喜ばしいと思える場所なのだろうか。僕には、『マン・アライヴ!』のさらなる重さはこれから親になる世代の不安や混乱と同調しているように感じられる。そうした恐れは親にならない選択をした者にとっても同様で、世のなかの反出生主義のような流行りは、ある意味ではそれに対する逃避的なリアクションだろう。アーチー・マーシャルの音楽のなかでは、未来が明るく感じられないこと……が、ポストパンクの記憶と重なる。
 しかしだからこそ、かつて『シックス・フィート・ビニーズ・ザ・ムーン』というタイトルで死のイメージを持ち出していた痩せっぽちな少年はいま親となり、「生」にエクスクラメーションマークをつけて叫ぶのである。死を甘美に夢見るのではなく、むしろ過酷な生を選択するのだと。だから『マン・アライヴ!』は、不安や恐れを撒き散らしながらも、反出生主義のような「夢想」に反発する。どれだけそこが酷かろうと、まずは現実から目を逸らさずに絶望することから始めること。だから音は醒めてなければならなかった。
 ヘヴィな作品であるとはいえ、どうにか聴き手をなだめるようなところもある。“Alone, Omen 3” はメランコリックでダウナーな響きがやがてノイズに飲みこまれていくトラックだが、そのノイズのさなか、マーシャルは「きみは独りじゃない」と繰り返す。この世界に絶望しているのはきみだけじゃない、という逆説的な力──それが、明日をどうにか生き抜くために必要なものとして、暗闇からひっそりと鳴らされている。

『Zero - Bristol × Tokyo』 - ele-king

 先月12日に急逝した下北沢のレコード店オーナー、飯島直樹さんを追悼するコンピレーション『Zero - Bristol × Tokyo』が3月11日にリリースされる。作品はバンドキャンプを経由してリリースされ、現時点では数曲が先行公開中だ。
https://bs0music.bandcamp.com/album/bristol-x-tokyo
 飯島さんが親交を持っていた、ブリストルの伝説的アーティスト、スミス&マイティのロブ・スミスと、生前、彼もその中心メンバーだった東京のクルー、BS0が中心となって今作の制作は始動した。彼らの呼びかけに応え、ブリストルと東京のアーティストを中心に、総勢61曲もの楽曲がこのコンピレーションのために寄付された。今作の売り上げは、彼のご遺族へと送られる。

 このプロジェクトが開始したのは、飯島さんが亡くなる直前のことだ。フェイスブック内に立ち上げられたページ「Raising Funds For Naoki DSZ」には、今作の発表と同時に公開されたブリストルのアーティストの集合写真の撮影風景を収めた動画が投稿されている。ロブ・スミスをはじめ、レイ・マーティやDJダイ、ピンチやカーンなど、ブリストルの音楽シーンを担う重要人物たちが、飯島さんのために集結した。そのブリストル勢に答えるように撮影された東京チームの写真も、飯島直樹/Disc Shop Zeroへの敬意に溢れた力強い一枚である。
 ブリストル側の制作チームによって執筆されたプレス・リリースにあるように、飯島さんは、その生涯を通じてブリストルのアーティストたちとの交流し、その紹介を「何かに取り憑かれたように」行ってきた。その活動は現地のアーティストやレーベルとの交友の上に成り立っている。そして、最近ではブリストルの名レコード店/レーベルの、アイドルハンズが「Tribute to Disc Shop Zero」(2017)というトリビュート盤を出しているように、その関係は東京からの一方向に留まるものではなかった。
 また、飯島さんはブリストルと東京のアーティストを積極的に繋げる役割も果たしてきた。シンガー/プロデューサーのG.リナとロブ・スミス、MC/詩人のライダー・シャフィークと日本のビムワン・プロダクションなど、彼を経由して生まれたコラボレーションは多い。東京の若手プロデューサーのMars89やダブル・クラッパーズのブリストルのアーティストやレーベルとの交流も積極的に取り上げていた。

 『Zero - Bristol × Tokyo』には、飯島さんがライフワークとして取り組んできた彼らとの交友関係が凝縮されている。そこに収められた音源も非常に強力だ。スミス&マイティやヘンリー&ルイスといった、ブリストル・サウンドのハートと呼ぶべき重鎮たちからは、重厚なダブ・サウンドが放たれ、そこにブーフィーやハイファイブ・ゴーストなどの若いグライム・サウンドが重なり、ゼロの店頭の風景が脳裏をよぎる。

 亡くなるまでの5年間に、飯島さんが取り組んでいたBS0のパーティに登場したカーン&ニーク、ダブカズム、アイシャン・サウンド、ヘッドハンター、ガッターファンク、サム・ビンガ、ライダー・シャフィークといった豪華なアーティストたちの新作音源が今作には並んでいる。グライム、ステッパーズ、ガラージ、ドラムンベースなど、彼らの音にはゼロが紹介してきた音が詰まっていて、そのどれもがサウンドシステムでの最高の鳴りを期待させる仕上がりだ。他には〈Livity Sound〉のぺヴァラリストとホッジ、さらにはグライムのMCリコ・ダンを招いたピンチとRSDの豪華なコラボレーションも必見である。

 日本勢からも多くの力作が届いている。パート2スタイルやビムワン、イレヴンやアンディファインドなど、日本のダブ・サウンドを担う者たちが集結。さらにG.リナの姿もあり、カーネージやデイゼロ、シティ1といったダブステップの作り手たちや、グライムのダブル・クラッパーズも収録されている。ENAやMars89など、ベース・ミュージックを重点に置きつつも、その発展系を提示し続けるプロデューサーもそこに加わることによって、サウンドの豊饒さが一層深くなっている点にも注目したい。BS0のレギュラーDJである東京のダディ・ヴェダや、栃木のBライン・ディライトのリョーイチ・ウエノなど、飯島さんが現場から紹介してきた日本のローカルのDJたちからは、フロアの光景が目に浮かんでくるようだ。

 ここに収録されたすべての作り手たちと飯島さんは交流を結び、レコード店として、ライターとして、時にはパーティ・オーガナイザーとして我々の元にその音を届けてくれた。ゼロがいままで伝えてきたもの、そして、そこから巻き起こっていくであろう未来の音を想像しながら、今作に耳を傾けてみたい。生前、「ゼロに置いてある作品のすべてがオススメ」と豪語していた彼の言葉がそのまま当てはまるのが、『Zero -‘Bristol × Tokyo'』である。
(髙橋勇人)

Various Artists - Zero - ‘Bristol x Tokyo’
Artist : Various Artists
Title : Zero - ‘Bristol x Tokyo’
Release date : 11th March 2020 (band camp pre-order from 4th March 2020 - )
Genre - Dub, Dubstep, Drum n’ Bass / Jungle, Grime, Bass, Soundsystem Music
Label : BS0
Format : Digital Release via Bandcamp https://bs0music.bandcamp.com/

東京の名レコード店Disc Shop Zeroの店長であり、レベルミュージック・スペシャリストであり、そしてブリストル・ミュージックのナンバーワン・サポーターだったNaoki ‘DSZ’ E-Jima(飯島直樹)は、2020年2月12日、短くも辛い闘病ののち、多くの人々に惜しまれながらこの世を去った。その生涯と仕事を通して、Naokiはブリストルと東京の音楽シーンの重心として活躍し、同時に多大なる尊敬を集め、素晴らしい友情を育んできた。この新作コンピレーション『Zero - Bristol × Tokyo』の目的は、二つの都市が一丸となり、61曲にも及ぶ楽曲によって、この偉大な男に敬意を示すことである。リリースは、彼の誕生日である2020年3月11日を予定している。

Naokiのブリストル・ミュージックへの情熱は90年代にはじまる。当時、彼は妻のMiwakoとともに音楽ジャーナリストとしても活動していた。この約30年間、二人はブリストルを頻繁に訪れ、アーティストと交流し、レコード店を巡り、そして何かに取り憑かれたようにローカル・シーンを記録し続けた。二人はハネムーンでさえもブリストルで過ごしたほどだ。

Naokiのレコード店であるDisc Shop Zeroは、ブリストルで生まれた新旧両方のサウンドに特化していて、それと同時に、東京のアーティスト、並びに世界中の多くのインディペンデント・レーベルを支援していた。彼を経由した両都市のレーベルとアーティストたちの繋がりも重要
で、多くの力強い結束と友情がそこから生まれた。

近年では、音楽を愛する同志たちと共に、彼はあるムーヴメントを始動させている。「BS0」と銘打たれたそれは、想像上のブリストルの郵便番号を意味し、多くのブリストルのDJとアーティストたちに東京でのパフォーマンスの機会を与え、ツアーを企画し、二つの都市の間に架け橋を築き上げた。Kahn&Neekをフィーチャーした初回のイベント(BS0 1KN)は大成功を収め、後に定期的に開催される「東京のブリストル」のための土台となった。

本コンピレーションのために、世界中から親切にも寄付された楽曲が集まった。その多くが今作のために制作されたものだ。ブリストルと東京だけではなく、さらに遠く離れたグラスゴーのMungo’s HIFIやウィーンのDubApeたち、さらにその他の地域のアーティストたちも参加している。

トラックリスト:
1. Jimmy Galvin - 4A
2. Crewz - Mystique
3. Popsy Curious - Jah Hold Up the Rain
4. Chad Dubz - Switch
5. Henry & Louis ft Rapper Robert - Sweet Paradise (2 Kings Remix)
6. Ree-Vo - Steppas Taking Me
7. Smith & Mighty - Love Is The Key (steppas mix) ft Dan Rachet
8. LQ - Jupiter Skank
9. Part2Style - Aftershock
10. Arkwright - Shinjuku
11. Mungo's Hi Fi - Lightning Flash and Thunder Clap
12. Bim One Production - Block Stepper
13. Alpha Steppa - Roaring Lion [Dubplate]
14. Headhunter - Mirror Ball
15. V.I.V.E.K - Slumdog
16. Ryoichi Ueno - Burning DUB 04:27 17. Pev & Hodge - Something Else
18. Teffa - Roller Coaster
19. Lemzly Dale - So Right
20. CITY1 - Hisui Dub
21. Big Answer Sound - Cheater's Scenario ft Michel Padrón
22. Mighty Dub Generators - Lovin
23. Karnage - Drifting
24. Karnage - Agreas
25. LXC & JB - Men Hiki Men
26. Alpha - On the Hills Onward Journey
27. Boofy - Unknown Dub
28. Daddy Veda - Sun Mark Step
29. Antennasia - Beyond the Dust (album mix)
30. ELEVEN - Harvest Road
31. Atki2 - Mousa Sound
32. Boca 45 - Mr Big Sun (ft Stephanie McKay)
33. DubApe - Hope
34. Hi 5 Ghost - Disruptor Rounds
35. G.Rina (with King Kim) - Walk With You
36. ENA - Columns
37. Red-i meets Jah 93 - Jah Works
38. Peter D Rose - It's OK (Naoki Dub)
39. Flynnites - Freak On
40. Pinch x Riko Dan x RSD - Screamer Dub 04:02
41. BunZer0 - Vibrant
42. Dub From Atlantis - You Are What You Say
43. Suv Step - Jah Let It Dub
44. DoubleClapperz - Ponnamma
45. Denham Audio & Juma - Ego Check (Unkey remix)
46. Mars89 - I hope you feel better soon
47. Kahn & Neek - 16mm
48. Dayzero - Convert hands
49. Sledgehead - Rocket Man
50. Jukes ft Tammy Payne - Tunnel
51. Tenja - We Chant (New Mix)
52. RSD - Lapution City (Love Is Wise)
53. DJ Suv - Antidote
54. DieMantle - Shellaz
55. Ishan Sound - Barrel
56. Ratman - Sunshine
57. Tribe Steppaz - Slabba Gabba
58. Scumputer - PENX - Mary Whitehouse edit
59. Dubkasm - Babylon Ambush (Iration Steppas Dubplate Mix)
60. Undefined - Undefined-Signal (at Unit, Tokyo)
61. Dubkasm - Monte De Siao - Sam Binga / Rider Shafique DSZVIP

クレジット:
Cover Art by Joshua Hughes-Games
Original 'BS0' Kanji drawn by Yumiko Murai
Group photography by Khali Ackford (Bristol) & Yo Tsuda (Tokyo)
Special thanks to Ichi “1TA” Ohara Bim One & Rider Shafique for Tokyo/Bristol co- ordination

Big love & thanks to all BS0 crew & all Bristol crew
Big love & thanks to Annie McGann & Tom Ford
Special love & thanks to Miwako Iijima

全ての楽曲は、我々の旧友である飯島直樹(Disc Shop Zero, BS0)の ためにアーティストたちから無償で寄付され、売り上げは彼の遺族へと 直接送られます。

Eternal love & thanks to Naoki san - you remain ever in our hearts.
直樹さんに永遠の愛と感謝を。あなたは私たちのハートとずっと一緒です。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727 728 729 730 731 732 733 734 735 736 737 738 739 740 741 742 743 744 745 746 747 748 749 750 751 752 753 754 755 756 757 758 759 760 761 762 763 764 765 766 767 768 769 770 771 772 773 774 775 776 777 778 779 780 781 782 783 784 785 786 787 788 789 790 791 792 793 794 795 796 797 798 799 800 801 802 803 804 805 806 807 808 809 810 811 812 813 814 815 816 817 818 819 820 821 822 823 824 825 826 827 828 829 830 831 832 833 834 835 836 837 838 839 840 841 842 843 844 845 846 847 848 849 850 851 852 853 854 855 856 857 858 859 860 861 862 863 864 865 866 867 868 869 870 871 872 873 874 875 876 877 878 879 880 881 882 883 884 885 886 887 888 889 890 891 892 893 894 895 896 897 898 899 900 901 902 903 904 905 906 907 908 909 910 911 912 913 914 915 916 917 918 919 920 921