「ZE」と一致するもの

Local World x Foodman - ele-king

 夏に新作『Yasuragi Land』を〈Hyperdub〉からリリースした食品まつり。当初は8月・9月に予定されていたものの延期となってしまっていたリリース・パーティが、あらためて開催されることがアナウンスされた。
 11月13日、同日営業再開となる下北沢 SPREAD と HANARE にて開催。計12時間にもおよぶ特大のパーティとなる。前売特典はオリジナルのサウナ・タオル。100枚限定のようなのでお早めに。

Local World x Foodman - Yasuragi Land - Tokyo 2021

世界で最もピースな電子音楽家Foodmanの〈Hyperdub〉からの最新アルバム『Yasuragi Land』を祝し、Local Worldとのデイとナイトを合わせた計12時間に及ぶ特大コラボ・パーティへ変更&開催。
リリース記念品として前売特典にオリジナル・サウナ・タオルが付いてきます!

土着、素朴、憂い(潤い)をテーマに南は長崎、北は北海道、これまでFoodmanにまつわるアーティスト含む全国各地からフレッシュな全20組が集まる、デイのコンサートとサウナと水風呂の2会場のフロアに別れたクラブ・ナイトの2部構成、計12時間に及ぶロングラン・リリース・パーティ。

The world's most peaceful electronic musician Foodman's release party featuring his latest album "Yasuragi Land" from UK's finest label Hyperdub will be held at SPREAD Tokyo as a collaboration with Local World, a club and mode adventure party. With the themes of Indigenous, honesty and melancholy, the event, a total 12 hours long-running release party will consist of two parts: a daytime concert and club night divided into two venue floors, a sauna and a water bath with a total of 20 fresh artists and DJs from all over Japan from Nagasaki in the south to Hokkaido in the north including artists related to Foodman. A limited original sauna towel will be given as a special gift for ADV ticket purchasers.

Local World x Foodman - Yasuragi Land - Tokyo 2021
SAT 13 NOV 18:00 - 06:00 12H at SPREAD + HANARE
ADV ¥2,850+1D@RA w/ special gift: Yasuragi Land sauna towel *LTD100
DOOR ¥3,000+1D / U23 ¥2,000+1D

[前売リンク] https://jp.ra.co/events/1474555

DAY CONCERT@SPREAD 18:00 -

LIVE:
7FO
cotto center
Foodman
NTsKi
Taigen Kawabe - Acoustic set -

DJ:
noripi - Yasuragi Set -

18:00 (60) noripi - Yasuragi set -
19:00 (20) cotto center LIVE
19:20 (20) Taigen Kawabe LIVE
19:40 (15) set change noripi - Yasuragi set -
19:55 (30) NTsKi LIVE
20:25 (30) 7FO LIVE
20:55 (15) set change noripi - Yasuragi set -
21:10 (30) Foodman LIVE
21:40 END

CLUB NIGHT - SAUNA FLOOR@SPREAD 23:00 -

LIVE:
Foodman
JUMADIBA & ykah
NEXTMAN
Power DNA

DJ:
Baby Loci [ether]
D.J.Fulltono
HARETSU
Midori (the hatch)
バイレファンキかけ子

23:00 (60) バイレファンキかけ子
24:00 (60) Midori (the hatch)
01:00 (60) JUMADIBA & ykah LIVE & DJ
02:00 (20) Power DNA LIVE
02:20 (20) NEXTMAN LIVE
02:40 (30) Foodman LIVE
03:10 (50) Baby Loci
04:00 (50) HARETSU
04:50 (70) D.J.Fulltono
06:00 END

CLUB NIGHT - COLD BATH FLOOR@HANARE* 22:00 -

LIVE:
hakobune [tobira records]
Yamaan
徳利

DJ:
Akie
Takao
荒井優作

22:00 (50) Yamaan LIVE
22:50 (30) 徳利 LIVE
23:20 (80) 荒井優作
24:40 (80) Akie
02:00 (50) hakobune LIVE
02:50 (70) Takao
04:00 END

artwork: ssaliva

- 前売特典*100枚限定: やすらぎランド・サウナ・タオル *会場にて受け渡し / ADV special gift *Limited to 100: Yasuragi Land sauna towel *pick up at the venue
- 再入場可 *再入場毎にドリンク代頂きます / A drink ticket fee charged at every re-entry
- HANARE *東京都世田谷区北沢2-18-5 NeビルB1F / B1F Ne BLDG 2-18-5 Kitazawa Setagaya-ku Tokyo

食品まつり a.k.a foodman

名古屋出身の電子音楽家。2012年にNYの〈Orange Milk〉よりリリースしたデビュー作『Shokuhin』を皮切りに、〈Mad decent〉や〈Palto Flats〉など国内外の様々なレーベルからリリースを重ね、2016年の『Ez Minzoku』は、海外はPitchforkのエクスペリメンタル部門、FACT Magazine、Tiny Mix Tapesなどの年間ベスト、国内ではMusic Magazineのダンス部門の年間ベストにも選出された。その後Unsound、Boiler Room、Low End Theoryに出演。2021年7月にUKのレーベル〈Hyperdub〉から最新アルバム『Yasuragi land』をリリース。Bo NingenのTaigen Kawabeとのユニット「KISEKI」、中原昌也とのユニット「食中毒センター」としても活動。独自の土着性を下地にジューク/フットワーク、エレクトロニクス、アンビエント、ノイズ、ハウスにまで及ぶ多様の作品を発表している。

《最新作リリース情報》食品まつり a.k.a foodman - Yasuragi land [Hyperdub / Beatink]
https://open.spotify.com/album/1160ly60lfUV9CpGOKLVhI?si=K2HictdARNuA9tfsvs5hxw&dl_branch=1

Local World

2016年より渋谷WWWをホームに世界各地のコンテンポラリーなエレクトロニック/ダンス・ミュージックのローカルとグローバルな潮流が交わる地点を世界観としながら、多様なリズムとテキスチャやクラブにおける最新のモードにフォーカスし、これまでに25回を開催。

Local 1 World EQUIKNOXX
Local 2 World Chino Amobi
Local 3 World RP Boo
Local 4 World Elysia Crampton
Local 5 World 南蛮渡来 w/ DJ Nigga Fox
Local 6 World Klein
Local 7 World Radd Lounge w/ M.E.S.H.
Local 8 World Pan Daijing
Local 9 World TRAXMAN
Local X World ERRORSMITH & Total Freedom
Local DX World Nídia & Howie Lee
Local X1 World DJ Marfox
Local X2 World 南蛮渡来 w/ coucou chloe & shygirl
Local X3 World Lee Gamble
Local X4 World 南蛮渡来 -外伝- w/ Machine Girl
Local X5 World Tzusing & Nkisi
Local X6 World Lotic - halloween nuts -
Local X7 World Discwoman
Local X8 World Rian Treanor VS TYO GQOM
Local X9 World Hyperdub 15th
Local XX World Neoplasia3 w/ Yves Tumor
Local XX0 World - Reload -
Local XXMAS World - UK Club Cheers -
Local World x ether

https://localworld.tokyo

WWW & WWW X - ele-king

 さまざまなライヴ、パーティ、イヴェントを開催してきた渋谷のヴェニュー、WWW および WWW X が「センキョ割」を実施することを発表している。来る衆院選で投票を済ませた方限定で、ドリンクチケットを配布するとのこと。期日前投票も対象で、また、実施期間外の公演のチケットを持っている場合でも対応してくれるそうだ。
 飲食店などが投票へ行った人びとになんらかの割引を実施するのは海外ではよくおこなわれていることだが、これまで日本の音楽業界でも故・飯島直樹氏のレコード・ショップ「Disc Shop Zero」などが取り入れてきた。規模の大きい WWW および WWW X の今回の決断は、まさに英断と言えるだろう。
 ちなみに、先週末にはコムアイをはじめ、俳優などの著名人14名が投票を呼びかける動画「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」がユーチューブで公開されている。ようやく日本でもアーティストなどによる態度表明が定着していきつつある。
 第49回衆議院議員総選挙の投票日は10月31日(日)、期日前投票は10月20日(水)~10月30日(土)。

2021年 第49回衆議院総選挙での「センキョ割」実施について

WWW、WWW Xでは衆議院総選挙の投票証明をお持ちの方へ、「センキョ割」としてドリンクチケットをプレゼントします。

[投票日]
2021年10月31日(日)

[センキョ割 実施期間]
2021年10月20日(水)〜11月7日(日)

[センキョ割 参加方法]
・お一人様一回まで参加可能です。
・「投票証明」として投票済証、もしくは投票所の看板前でご自身(or学生証や免許証などのID)を撮影した写真をお持ちください。
・期日前投票も対象となります。
・実施期間中の公演チケットをお持ちでない方も、WWW、WWW X受付にて対応いたします。
・ドリンクチケットは2022年2月末まで有効です。有効期間内にWWW、WWW Xで行われる公演にてご利用頂けます。
 
[ご来場の際の注意事項]
・公演の開場時間付近は、お客様誘導のため対応ができかねる場合がございます。事前にWWW HPにてスケジュールをご確認の上、開場時間を避けたご来場をお願い致します。
・10/26(火)、11/1(月)は休館日となります。
・必ずマスクをご着用の上、ご来場をお願い致します。公演へ参加される方は、WWWの「新型コロナウィルス感染拡大予防に関する注意事項」のご確認と遵守をお願い致します。

WWW:03-5458-7685
WWW X:03-5458-7688

※当社は一般社団法人選挙割協会の規則を遵守しております。特定政党、候補者を応援する形で拡散などする行為を固く禁じます。

DELAY X TAKUMA - ele-king

 なんとなんと、モダン・クラシカルとエクスペリメンタルあるいはアンビエントを自由に往復する音楽家・渡邊琢磨の楽曲をダブ・テクノの騎手ヴラディスラヴ・ディレイがリミックスするというのは、良いニュースです。しかもただのリミックスではありません。最新作『ラストアフターヌーン』に収録の2曲を1曲に再構築するという、これが2ヴァージョン(つまり4曲が2曲に再構築されている)、かなりの迫力ある音響に仕上がっています。デジタル配信は11月5日、来年の1月にはUKの〈Constructive〉から12インチとしてリリースされる。
 野党も共闘していることだし、音楽もジャンルの壁を越えています……なんてね。

Delay x Takuma
Constructive
※ヴァイナルは2022年1月7日発売

interview with Lucy Railton - ele-king

 今春、イギリスのレーベル〈SN Variations〉から、本稿でご紹介するチェリスト/作曲家のルーシー・レイルトン(Lucy Railton)と、ピアニスト・オルガニストのキット・ダウンズ(Kit Downes)による作品集成『Subaerial』が送られてきた。アルバム1曲目“Down to the Plains”の中程、どこからともなく聴こえてくる木魚のようなパルス、篝火のように揺らめくパイプオルガンの音、ノンビブラートのチェロが直線的に描き出す蜃気楼、そして録音が行われたアイスランドのスカールホルト大聖堂に漂う気配がこちらの日常に浸透してくる。その圧倒的な聴覚体験に大きな衝撃を受けた。

 ルーシー・レイルトンの〈Modern Love 〉からリリースされたファースト・アルバム『Paradise 94』(2018)は、当時のドローン、エクスペリメンタル・ミュージックを軽く越境していくような革新的な内容であると同時に、音楽的な価値や枠組みに留まらないダイナミックな日常生活の音のようでもあった(アッセンブリッジな音楽ともいえるだろうか?)。その独自の方向性を持ちつつ多義的なコンポジションは、その後の諸作でより鮮明化していくが、前述の新作『Subaerial』では盟友キット・ダウンズとともに未知の音空間に一気に突き進んだように思われる。絶えず変化し動き続ける音楽家、ルーシー・レイルトンに話を伺った。

私には素晴らしい先生がいました。その先生はとても反抗的で、クラシック音楽の威信をあまり気にしない人だったので、その先生に就きたいと思いました。というのも、私はすでにクラシック音楽に対して陳腐で嫌な印象を持っていて、何か別のことをしたかったので。

ロンドンの王立音楽院に入学する以前、どのようにして音楽やチェロと出会ったのでしょうか。

ルーシー・レイルトン(LR):私はとても音楽的な家系に生まれたので、子供のころから音楽に囲まれていました。胎内では母の歌声や、父のオーケストラや合唱団のリハーサルを聞いていたと思います。父は指揮者で教育者でもありました。母はソプラノ歌手でした。父は教会でオルガンを弾いていたのですが、その楽器には幼い頃から大変な衝撃を受けてきました。私は、7歳くらいになるとすぐにチェロを弾きはじめました。その道一筋ではありましたが、子供の頃はいろいろな音楽を聴いていて、地元で行われる即興演奏のライヴにも行っていました。即興演奏やジャズは、私がクラシック以外で最初に影響を受けた音楽だと思います。そこから現代音楽や電子音楽に引かれ、ロンドンで本格的に勉強を開始しました。

王立音楽院在籍時印象に残っている、あるいは影響を受けた授業、先生はいましたか?

LR:英国王立音楽院では、特別だれかに影響を受けたことはありませんでしたが、私には素晴らしい先生がいました。その先生はとても反抗的で、クラシック音楽の威信をあまり気にしない人だったので、その先生に就きたいと思いました。というのも、私はすでにクラシック音楽に対して陳腐で嫌な印象を持っていて、何か別のことをしたかったので。その先生は、私に即興演奏や作曲することを勧めてくれて、練習の場も設けてくれたので感謝しています。
 それから、ニューイングランド音楽院(米ボストン市)で1年間学んだときは、幸運にもアンソニー・コールマンと、ターニャ・カルマノビッチというふたりの素晴らしい音楽家に教わることができました。彼らは私のクラシックに対する愛情を打ち破り、表現の自由とはどのようなものかを教えてくれました。同院にはほかにも、ロスコー・ミッチェルのような刺激的なアーティストが来訪しました。彼はたった1日の指導とリハーサルだけで、ひとつの音楽の道を歩む必要はないことを気づかせてくれました。私はその時点でオーケストラの団員になるつもりはなく、オーディションのためにドヴォルザークのチェロ協奏曲を学ぶ必要もありませんでした。創造的であること、そしてチェリストであることは、オーケストラの団員になるよりも遥かに大きな意味があることを理解しました。これはその当時の重要な気づきでした。

私は、チェロに加えて新しい音の素材を探していたのですが、それらのとても混沌としたシンセは、私が作りたい音楽にとって必要十分で甚大なものだと感じました。自分の好みが固まったところで、すべてのものを織り交ぜる準備ができました。

ジャズや即興演奏に触れる稀有な機会のなかで、クラシック以外の音楽に開眼されていったとのことですが、電子音楽やエレクトロニクスをご自身の表現や作品制作に取り入れるようになった経緯も教えていただけますか。

LR:それは本当に流動的な移行でした。まず、ルイジ・ノーノの『Prometeo』(ルーシーは同作の演奏をロンドンシンフォニエッタとの共演で行っている)のような電子音響作品や、クセナキスのチェロ独奏曲のような作品に、演奏の解釈者として関わりましたが、その間、実に多くの音楽的な変遷を遂げていきました。それは、私がロンドンのシーンで行なっていたノイズやエレクトロニック・ミュージシャンとの即興演奏、キット・ダウンズとの演奏、そしてアクラム・カーンの作品(「Gnosis」)におけるミュージシャンとの即興演奏に近いものです。インドのクラシック音楽のアンサンブルである「Gnosis」のツアーに参加した際、即興演奏の別の側面を見せてもらいましたが、それは実験とは無縁で、すべてはつながりと献身に関連していました。
 また20代の頃は、自分でイベントや音楽祭を企画していたので、自然と実験的な音楽への興味を持つようになりました。そういった経過のなかで、何らかの形で私の音楽に影響を与えてくれた人びとと出会いました。とくに2013年から14年にかけては多くの電子音楽家に出会いました。ことピーター・ジノヴィフとラッセル・ハズウェルとのコラボレーションでは、即興と変容が仕事をする上で主要な部分を占めていて、そういった要素を自分で管理することがとても自然なことだと感じ、いくつかのモジュールを購入して、シンセを使った作業を開始しました。
 それから、Paul Smithsmithに誘われてサリー大学のMoog Labに行き、Moog 55を使ってみたり、EMSストックホルムに行ってそれらの楽器(Serge/Blucha)を使ってみたりしました。
 私は、チェロに加えて新しい音の素材を探していたのですが、それらのとても混沌としたシンセは、私が作りたい音楽にとって必要十分で甚大なものだと感じました。自分の好みが固まったところで、すべてのものを織り交ぜる準備ができました。私のアイデンティティのすべてを、何とかしてまとめ上げようとしたのが『Paradise 94』だったと思います。

テクノロジーや電子音と、ご自身の演奏や音楽とのあいだに親和性があると考えるようになったのはなぜでしょうか。あるいは、違和感を前提としているのでしょうか。

LR:これらの要素を融合させることには確かに苦労しますし、まだ適切なバランスを見つけたとは言えません。チェロのようなアコースティック楽器をアンプリファイして増幅することは少々乱暴です。しかし、スタジオでは編集したりミックスしたり、あらゆる種類のソフトウェアやシンセを使ってチェロをプッシュしたりすることができて、それはとても楽しいです。ライヴの際、チェロをエレクトロニック・セットのなかのひとつの音源として使いたいと思っていますが、それをほかのすべての音と調和させるのは難しいですね。
 なぜなら、私がチェロを弾いているのを観客が見ると、生楽器と電子音のパートを瞬時に分離してしまい、ソロ・ヴォイスだと思ってしまうことがあるのです。また(チェロが)背景のノイズや音の壁になってしまうこともあり、観客だけではなく私自身も混乱してしまうことがあるのです。スタジオレコーディングでは何でもできますが、ライヴでの体験はまだ難しいです。

そして2018年に、〈Modern Love〉から鮮烈なソロ・デビュー・アルバム『Paradise 94』をリリースされます。先ほど、ご自身のアイデンティティのすべてをまとめ上げようとしたのが本作であるとお伺いしましたが、本作の多義的なテクスチュアや音色は、生楽器と電子音によるコンポジションと、そのコンテクストに静かな革命をもたらしていると思います。本作における音楽的なコンセプト、アイディアは何だったのでしょうか?

LR:私は、ミュージシャンとしてさまざまなことに関わってきた経験から多くのことを学んだと感じていました。『Paradise 94』を作りはじめるまでは、自分の音楽を作ったことがなかったので、いろいろな意味で自分の神経を試すようなものでした。私は初めて自分の声を発表しましたが、それは当然、自分が影響を受けてきたものや興味のあるものを取り入れたアルバムです。自分の表現欲求と興味を持っている音の世界に導かれるように、このふたつの要素を中心にすべてを進めていったと思います。素材や少ないリソースから何ができるかを試していましたが、このアルバムはその記録です。

‘Paradise 94’

[[SplitPage]]

それぞれの楽曲は、別々の時期に制作されたものですか? また制作過程について教えてください。

LR:はい。完成までに約3年かかりました。終着点のない、ゆっくりとした登山のようなものでした。私は期限を決めずに作業をしていました。時間をかけて、気分的にも適切な時にだけ作業していましたし、その時期は、ロンドンとベルリンを頻繁に行き来していました。ロンドンではフリーランスのミュージシャンとして活動していましたが、ベルリンでは自分の仕事に専念するようになりました。その為このアルバムは、さまざまな場所や状況と段階で制作されたので、多くの点で焦点が定まっていませんでした。だからこそ、ヴァラエティに富んだレコードになっているのかもしれません。私はこの点はとても気に入っています。

本アルバムには、巻上公一さんが、“Drainpipe(排水管?)”で参加されてますね。巻上さんとはどのようにして知り合ったのですか?(私事ですが、巻上さんがコンダクトしたジョン・ゾーンの『コブラ』に参加したことがあります)

LR:巻上さんとは、日本のツアー中に出会いました。彼の芸術性には刺激を受けましたし、とても楽しい時間を過ごすことができました。実際にはアルバムのなかでは、あまり実質的なパートではなかったのですが、巻上さんとロンドンで一緒にパフォーマンスをしたとき、彼は’drainpipe’を演奏したのですが、それはとても特別なものでした。彼のエネルギーが、その時の私に語りかけてきました。当時の私は、レコーディングのためにいろいろな音を集めて準備していたのですが、巻上さんが親切に彼の音を提供してくれました。それは今も、素材の網目のなかに埋め込まれ、彼のインスピレーション記憶として存在しています。彼のパフォーマンスは、私のライブにも影響を与えてくれました。彼は素晴らしいアーティストです。

あらゆる点で。私は音楽業界に近づくことよりも、創造性に焦点を当て、自分と同じ価値観を共有できる人々と時間を過ごすことが重要だと感じています。私が音楽をやる理由はそこ(業界)にはありません。

2020年には多くの作品をリリースしています。はじめに、ピーター・ジノヴィエフとのコラボレーション作品『RFG - Inventions for Cello and Computer』についてお伺いします。あなたとピーターはLCMFで出会って、コラボレーションのアイディアについて話し合いました。それから、あなたの即興演奏を録音したり、ピーターがエレクトロニクスを組み立てたりしながら、一緒に作品を作り上げていきました。このプロセスから生まれた作品をライブパフォーマンスでおこなう際、そこに即興の余地はあるのでしょうか?

LR:『RFG - Inventions for Cello and Computer』における演奏は、固定された素材と自由なパーツの混在から成る奇妙なものです。そのため、ライヴで演奏するのは難しく、チャレンジングな部分があります。ピーターのエレクトロニクスは固定されているので、私は彼と正確に(演奏を)調整しなければならないので(その指標として)時計を使います。もちろん時計は融通が効かないので、更にストレスがたまります。このように苦労はしますが、これもパフォーマンスの一部であり、意図的なものです。私は作曲時に固定した素材を使って即興で演奏していますが、時には素材から完全に逃れて「扇動者」、「反逆者」、「表現力豊かなリリシスト」のように振る舞います。また、電子音のパートと正確に調整する際には、通常の楽譜を使用することもありますし、例えば、ピーターのパートとデュエットすることもあれば、微分音で調律された音のシステムを演奏することもあります。本作の演奏方法は、既知のものとかけ離れていることが多いので、ガイドが必要になります。それはなければ即興演奏をすることになりますが、(作品には)即興ができる場所と禁止されている場所がありました。

一般的にピーター・ジノヴィエフは、EMS Synthiなどのシンセサイザーを開発した先駆者と言われていますが、このコラボレーションにおいてピーターは、実機のシンセサイザーではなく、主にコンピュータを使用したのでしょうか?

LR:はい。実はピーターはアナログシンセで音楽を作っていたわけではないのです。もちろん、彼がアナログシンセを開発した功績は称えられています。しかし作曲家としては、伝統的なアナログ・シンセはあまり使っておらず、所有もしていませんでした。『RFG - Inventions for Cello and Computer』では、彼の2010年以降の他の作品と同様、コンピュータの技術やソフトウェアを利用しています。彼は常に私の録音を素材としていたので、作品のなかで聞こえるものはすべてチェロから来ています。彼がおこなった主な作業は、Kontaktやさまざまなプラグインを使って音を変換し、電子音のスコアをつくることでした。彼はソフトウェアの発展に魅了され、コンピュータ技術の進歩に驚嘆し魅了されていました。それと同時に彼は、人間と楽器(私やチェロ)がコミュニケーションをとるための新しい方法を常に模索していました。ですから、私たちの実験の多くは、コンピュータによる認識、特にピッチ、リズム、ジェスチャーに関するものでした。

同年、オリヴィエ・メシアンの『Louange à l'Éternité de Jésus』がリリースされましたが、このレコードの販売収益を、国連難民局のCovid-19 AppealとThe Grenfell Foundationに均等に分配されています。10年前に録音された音が、この激動の時代に明確な目的を持ってリリースされたことに感銘を受けました。

LR:LR:これは、私が24歳の時の演奏で、家族の友人が偶然コンサートを録音してくれたのですが、そのときの観客の様子や経験から、ずっと大切にしてきたものです。それが録音自体にどう反映されているかはわかりませんが、その演奏の記憶はとても強く残っています。そのことについては、ここで少し書きました
 当時の私は、自分が癒される音楽を人と共有したいと思っていましたが、この曲はまさにそれでした。最初は友人や家族と共有していましたが、その後、リリースすることに意味があると気づきました。その収益を、Covid-19救済を支援していた団体に寄付しました。そのようにしてくれた〈Modern Love〉(マンチェスターのレコードショップ’Pelicanneck’=後の’Boomkat’のスタッフによって設立された英レーべル)にはとても感謝しています。

INA GRMとの関係とアルバム「Forma」の制作経緯について教えてください。

LR:彼らは若い世代の作曲家と仕事をすることに興味を持っており、2019年にINA GRMとReimagine Europereimagine europeから(作品制作の)依頼を受けました。私はすでにミュージック・コンクレートや電子音楽に興味と経験を持っていたので、GRMのアクースモニウム(フランスの電子音楽家、フランソワ・ベイルによって作られた音響システム)のために作曲するには良い機会でした。この作品を初演した日には54台のスピーカーがあったと思います。私は主にチェロの録音、SergeのシンセサイザーとGRMのプラグインを使って作業しました。ただ、マルチチャンネルの作品を作ったのはこれが初めてでしたし、非常に多くのことを学びました。この作品が(音の)空間化の旅の始まりになりました。GRMのチームは、信じられないほど協力的で寛大です。作曲からプレゼンテーションまで、チームが一緒になって新しい作品制作を行います。私はこれまでとても孤独な経験を通してレコードを作ってきましたが、それらと(本作は)全く違いました。「Forma」(GRM Portraitsより、2020年リリース)では、とてもエキサイティングでチャレンジングな時間を過ごし、この作品を通して自分の音楽に新しい形をもたらしたと感じました。

'Forma'

Editions Mego · Lucy Railton 'Forma' (excerpt) (SPGRM 002)

今年の初めに、Boomkat Documenting Soundシリーズの『5 S-Bahn』がレコードでリリースされました。Boomkatのレヴューによると、ロックダウン下にご自宅の近所で録音されたそうですね。このアルバムに収められたサウンドスケープを聴いていると、あなたの作品は音楽的な価値や枠組みから逃れて、よりダイナミックな日常生活の音に近づいているように思えます。パンデミック以降、日常生活はもちろんですが、音楽制作に変化はありましたか?

LR:そうですね。あらゆる点で。私は音楽業界に近づくことよりも、創造性に焦点を当て、自分と同じ価値観を共有できる人びとと時間を過ごすことが重要だと感じています。私が音楽をやる理由はそこ(業界)にはありません。私は、業界の人びとがいかに自分の成功を求めて、互いに競い合っているかに気づきました。これまで音楽制作においても社会生活においても、彼らの期待や要求に気を取られ過ぎていました。いまでは、自分の価値観や芸術的な方向性をより強く感じていますし、それは1年以上にわたって家やスタジオで充実した時間を過ごしたからです。自分の方向性が明確になり、それを認めてくれる人やプロジェクトに惹かれるようになりました。ですから、今の私の音楽作りは、よりパーソナルなものに自然となってきています。来年には変わるかもしれませんが、それは誰にもわかりません。

新作『Subaerial』についてお伺いします。キット・ダウンズと一緒に演奏するようになったきっかけを教えてください。

LR:キットと私は、2008年にロンドンに留学して以来の知り合いで、長い付き合いになります。主に彼のグループで演奏していましたが、他の人とも一緒に演奏していました。『Subaerial』は、チェロとオルガンを使ったデュオとしては初めてのプロジェクトです。この作品は私たちにとても合っています。私は、ジャズクラブでチェロを弾くのはあまり好きではありませんでした。というのも音が悪いのが普通で、特にチェロの場合、私は音質に敏感です。オルガンのある教会やコンサートホールで演奏するようになってから、突然快適になり、アンプリファイの問題も解消され、表現力を発揮できるようになりました。
 教会では、音に空気感も温かみもあり、空間や時間の使い方もまったく違うものになります。このアイディアに辿り着くまで13年かかってしまいましたが、待った甲斐がありました。このアルバムは、私たちにとって素晴らしい着地点だと思います。私たちはお互いに多くの経験をしてきたので、自分たちの音楽のなかに身を置き、一緒に形成している色や形に耳を傾ける時間を持つことができます。チェロがリードしているように思えるかもしれませんが、実際にはそんなことはなく、私は部屋のなかの音に反応しているだけなのです。
 キットは最高の音楽家ですから、彼がやっていることからインスピレーションを得ることも多くありますが、私たちはすべてにおいてとても平等な役割を担っています。お互いが、非常に敬意を持って深く耳を傾けることができるコラボレーションに感謝しています。

Lucy Railton & Kit Downes Down ‘Subaerial’

このアルバムは、アイスランドのスカールホルト大聖堂で録音されたものです。あなたとキットは、なぜこの大聖堂をレコーディングに選んだのでしょうか? また、レコーディングの期間はどのくらいだったのでしょうか?

LR:車を借りて、海岸沿いの小さなチャペルからレイキャビックのカトリック教会まで、いくつかの教会をまわりました。実際にはすべての教会で録音してみましたが、スカールホルトでは最も時間をかけて録音しました、というのも場所、音響、空間の色が適切だったからです(太陽の光でステイングラスの赤と青の色が内部の壁に投影されることがよくありました)。だから、私たちは快適で自由な気分で、一週間を過ごしました。しかし、アルバムに収録されている音楽は、ある朝、数時間かけて録音したものを42分に編集したものです。

このアルバムは、基本的に即興演奏だと聞いています。レコーディングを始める前に、あなたとキットは何かコンセプトやアイデア、方向性を考えていましたか?

LR:いえ、私たちはただ何かをつかまえたかったのです。新曲を作るつもりではありましたが、しばらく一緒に演奏していなかったので、その演奏のなかで再開を楽しみました。また、ピアノではなくオルガンを使った作業は、私たちデュオにとってまったく新しい経験だったので、「音を知る」ことが多く、その探究心がこのアルバムに強く反映されていると思います。なので、ある意味では、新しい音を求めるということ自体がコンセプトでしたが、音楽を作ることは常に、未来への探求、そして発見だと思います。

今後の予定を教えてください。

LR:実はまだ手探りの状態で、先が見えない不安もあります。しかし、パンデミックが教えてくれたのは、このような状況でも問題ないということ、そして期待値を下げることです。「大きな」プロジェクトも控えていますが、最近は最終的なゴールのことをあまり考えないようにしています。その代わり、もっと時間をかけて物事をより有機的に感じ取るようにしています。なぜなら、そのポイントに向かう旅路が最も重要だからです。たとえすべての予定がキャンセルになったり、何かがうまくいかなかったとしても、創造の過程にはすでに多くの価値があり、それはすべて集められ、失われることはありません。

Lucy Railton & Kit Downes
タイトル:Subaerial
レーベル:SN Variations (SN9)
リリース:2021年8月13日
フォーマット:Vinyl, CD, FLAC, WAV, MP3

ルーシー・レイルトン/Lucy Railton
ベルリンとロンドンを拠点に活動するチェリスト、作曲家、サウンドアーティスト。イギリスとアメリカでクラシック音楽を学んだ後、即興演奏や現代音楽、電子音楽に重点を置き、Kali Malone、Peter Zinovieff、Beatrice Dillonほか多岐に渡るコラボレーションを行っている。また、Alvin Lucier、Pauline Oliverosなどの作品を紹介するプロジェクトにも参加している。2018年以降、Modern Love、Editions Mego/GRM Portraits、PAN、Takuroku等から自身名義のアルバムをリリースし、約50のリリース(ECM、Shelter Press、Ftarri、Sacred Realism、WeJazz、Plaist)に客演している。https://lucyrailton.com/

interview with Jeff Mills + Rafael Leafar - ele-king

override:乗り越える、覆す、制御不能

「ぼくがやろうとしていることは、人に理解させることではない、人の注意を喚起させることだ」とジェフ・ミルズは言った。いまから26年前の取材でのことだ。「まったく違う観点からまったく違う思考をすること」
 これはUKの批評家コジュオ・エシュンが言うところの「ソニック・フィクション」の概念と重なっている。旧来の思考から解放され、音楽をもって世界をとらえ直すこと。で、これこそ、アフロ・フューチャリズムの思考法と言っていいだろう。ジェフ・ミルズの新作『オーヴァーライド・スウィッチ』は、彼がこの30年に渡って追求してきた未来的思考の最新型の成果だ(ジェフは2009年のWIREの取材のなかでこう言っている。「ずっと前から、黒人として、黒人の子供として、僕ははるか先を見なければならないんだってことは理解していた」と)。
 1967年のデトロイトの大暴動では、それを鎮圧するために派遣された軍に市民がさらに応戦するという、その夏の暴動においてもっとも熾烈なものとして記録されているが、まさにその真っ只中、市街から安全な場所へと避難するため彼の両親が子供たちを連れて行ったところがモントリオールの万博だった。彼の地に展示された未来主義とユートピア、そして宇宙旅行は、幼少期のジェフ・ミルズの記憶に深く刻まれたという。
 なるほど。暴動と未来主義、これはたしかに初期ジェフ・ミルズや初期URを語る上では有効かもしれない。執拗にハードで、そして当時としてはダンスの範疇を超えた速さと日常を超えた空間。スウィングよりもスリル。地球人よりも宇宙人。プログラムされた思考を超越すること。が、あくまで30年前の話だ。最新作の『オーヴァーライド・スウィッチ』にもジェフの未来主義は貫かれている。それはいまも実験的ではあるけれど、より優雅で円熟した音楽として録音されている。
 『オーヴァーライド・スウィッチ』は、ジェフ・ミルズがデトロイトのマルチ楽器奏者、おもにジャズ・シーンで活躍するラファエル・リーファーと一緒に制作した。昨年ブラック・ライヴズ・マターの高まりのなか発売された、詩人ジェシカ・ケア・ムーア擁するザ・ベネフィシアリーズのソウルフルな1枚、トニー・アレンのバンドでピアノを担当していたJean-Phi Daryとのザ・パラドックス名義による官能的なフュージョン作品——新作は、ジャズ・シリーズとでも呼べそうなこれら2枚と連続しているようだが、趣は異なっている。パーカッションと管楽器の数々をフィーチャーした本作はおおよそフリー・ジャズめいているし、異空間を描こうとするアンビエントめいたフィーリングもあり、もちろんテクノも残されている。この30年間追い求めているユートピアへの夢もある。まあ、ひとことで言うなら、ジェフ・ミルズ宇宙探索機に導かれたアフロ・フューチャリズムのアルバムということだろうか。
 ちなみにアルバムの担当楽器は以下の通り。

Jeff Mills : Keyboards, electronic drums and percussion
Rafael Leafar : Bass Flute, Bass Clarinet, Soprano & Tenor Sax, Soprano Sax, Double Soprano-Sopranino Saxes, Fender Rhodes, Wurlitzer, Moog Synth, Moog Sub 37, Yamaha CS, Oboe, Contra-Alto Clarinet

 パンデミック以降、ほとんどすべてのDJのギグが中止になってしまったなか、与えられた時間のほぼすべてを創作に費やしているひとりがジェフ・ミルズだ。彼はこの間、無料で読めるオンラインマガジン『The Escape Velocity』を創刊させ、未来主義にこだわったその誌面はすでに3号までが公開されている。彼の〈Axis〉レーベルからの作品数にいたっては、この2年ですでに50作以上を数えている。そのなかで、ジェフ・ミルズ自身のソロと彼が関わっている作品は10作以上(※)。さらにまた、今年は30周年を迎えたベルリンの名門中の名門〈トレゾア〉からは初期の名作の1枚『Waveform Transmission Vol.3』(常軌を逸した時代のミニマル・テクノの金字塔)がリイシューもされている。
 ほとんどワーカーホリックと言えるこのベテランのDJ/プロデューサーは、パンデミック以降ようやく動きはじめたヨーロッパのダンス・シーンのツアーから帰ってきたばかりだった。じつは昨年もジェフ・ミルズには別冊エレキングの「ブラック・パワー」号のためにzoomで取材させてもらっているので、今回は二年連続の取材となる。ジェフはいつものように温厚に、自らのうちに秘めている思考について話し、デトロイトからはラファエル・リーファーーが彼のジャズへの熱い思いを語ってくれた。

いまの世のなかは間違ったことがあまりにも多くて、解決の糸口を探す合理的なアプローチが必要だ。何事にもそれを超越できる、あるいは避けて通る方法があるという希望を提案したかった。

ヨーロッパでのDJはどうでしたか?  

ジェフ: みんなまたパーティに来ることができてハッピーな雰囲気だった。とはいえ、やっぱりいままでとはちょっと違う。他人と近づいて息がかかったりすることが自然と気になったりしてしまう。いままでは気にも留めていなかったことに注意を払うようになってしまった。でもお客さんはみんなマスクなしで、飲んで騒いでって感じだったけれどね。

とくにすごかったのはどこですか?

ジェフ:クラブではロンドンのファブリックかな。もっとも最近ではアムステルダムだったかな。屋内で1000人くらいの規模のイベントがあったんだけど、年齢層が低くて、みんなマスクしてなかったんだよね。

マイアミはどうなんですか?

ジェフ:マイアミではクラブはかなり前からオープンしているよ。だからパーティに行くことができるし、DJもプレイできる。僕は数ヶ月前にジョー・クラウゼルを観に行ったくらいしか出かけていないけれど、そのときもいろいろなところを触らないようにしようとか、人とあまり近づかないようにしようとか、感染しないように気をつけていたけど。

アメリカのコロナの状況はいま(10月9日)はどうなっているのでしょうか?

ジェフ:いま現在のことで言えば、感染者も死者も数は減ってきている。

日本と同じですね。

通訳:いやー、日本とはちょっと規模が違います。(10月9日発表ではフロリダ州の昨日の感染者は3141人。パンデミックがはじまってから300万人以上の感染者、56400人の死者を出していますから、日本とは比較にもならない。フロリダの人口は約2200万人。ちなみにアメリカのワクチン接種率は現在56%)

ラファエル・リーファーさんとは初めてなので、バイオ的なことを質問させてください。デトロイトでは多くのヒップホップとロックと、あと少しのテクノ‏/ハウスだと思いますが、ジャズというのはかなり少数派なのではないでしょうか? もちろんデトロイトには70年代のトライブ・レーベルがあったように、ジャズの伝統があることは知っていますが、あなたはどうしてジャズの道を選んだのか教えてください。

ラファエル:家族が音楽好きで、それがまずはいちばん大切なポイントだった。8人兄弟の家族で、つねに音楽に囲まれて育ったからね。ジャズ、ファンク、ロック、ソウル……両親は僕が本当に小さい頃からジャズを聴かせていてね、4〜5歳のときには父と一緒にトランペットを吹いたりしていたほどだ。そんな幼い頃からジャズに出会ったことは幸運だったと思っているよ。
デトロイトはいまでもジャズに関してもパワーハウスと呼べるけどね。外にいる人たちからは見えないかもしれないし、業界としての重要性はないかもしれないけれど、いつだってミュージシャンはデトロイトに存在していて、その影響力は変わっていない。ちなみに、1940年代はデトロイトに古くからあるスタジオのサウンドシステムを求めて多くのジャズ・ミュージシャンがレコード制作をしている。マイルス・ディヴィスやチャーリー・パーカーもそこでレコーディングしたことがある。経済的な理由からスタジオはニューヨークやカリフォルニアに移っていってしまったけれど、僕たちはまだここにいるんだ(笑)。ウェイン・ステイト大学、ミシガン州立大学、ミシガン大学など優秀なジャズ・プログラムのある学校も多いのもミュージシャンが集まってくる理由のひとつだね。

あなた個人はなぜジャズを選んだのですか?

ラファエル:僕は自分のことをジャズ・ミュージシャンと思っていない。それがデトロイトのユニークなところかもしれないね。ジャズはデトロイトのシーンのバックボーンとしてつねに存在しているけれど、音楽家として生き残っていくためにはジャズ以外のさまざまな音楽にも精通していなくてはならないんだ。ひとつのジャンルにこだわっているわけにはいかない。ニューヨークだったらジャズ一本でやっていけるかもしれないけど、デトロイトではそういうわけにはいかないんだ。

曲制作というのはストーリーテリングのようなものだ。アフロ・フューチャリズムが好きな人たちが、このアルバムに興味を持ってもらうにはどのようなしたらいいか、何か特別な方法があるかは考えた。

このプロジェクトは、もともとジェフの頭のなかにあったものなんですか? それとも、ラファエルさんと出会ったことで生まれたのでしょうか?

ジェフ:ラファエルと出会ってからだね。タイトルの『オーヴァーライド・スウィッチ』、何かを超越するというコンセプトは、レコーディングの最初のほうで、たぶん“Homage”を制作しているときに思いついた。制約できないもの、妥協できないもの、カテゴライズができないもの。すべてを超越して、リセットするようなものを共同制作したいと思ったんだ。普通に考えられる音楽、好きか嫌いかで判断される音楽はこのアルバムには当てはまらない。一緒に作業をはじめてますますこの考えに確信を得るようになった。ラファエルが僕のトラックに加えてくる音を聴いて、僕は次の作業に移る基礎を考えることができたし、彼と会話をすればするほど、どんどん組み上げられていった。そうしているうちに、このコラボレーションが単なる共同作業ではないとますます痛感していったね。ジャズとか、テクノ、エレクトロニック・ミュージックなどといった範疇を超えていったと思う。だから『オーヴァーライド・スウィッチ』というタイトルがコンセプトと合ってふさわしいと思った。

ラファエルさんはどのようにしてジェフと出会ったのですか?

ラファエル:URのマイク・バンクスを介してだね。サブマージのビルにあるスタジオを借りていた時期があって、そこでマイクと出会ったんだ。会話するようになって、僕がやっている音を聴いてもらったり、音楽全般の深い話をするなかで、あるときジェフの名前が出てきたことがあってね、ジェフの昔の曲を僕に聴かせてくれたんだ。で、ある日、マイクがジェフの最新作を持ってきて、「これに君の演奏を重ねてジェフに送ってみたらどうだろう?」と言った。それで僕は軽い気持ちでそれをやった。それをジェフが気に入ってくれたと。

ジェフは、The Beneficiaries、The Paradoxなど、ここのところコラボレーションが続いていますが、それは理由があるのですか?

ジェフ:とくにコラボレーションを探し求めているわけではないんだ。でも機会に恵まれたときは、二度とないチャンスかもしれないから積極的に取り組むようにしている。だいたいこういうことは、狙ってできるものじゃないからね。それに、他のミュージシャンと交わることは刺激的だし、同じヴィジョンや似たような考えを持ったアーティストと出会う幸運に巡り会えたら、何かを作ろうと思うのは当然のことだ。長いキャリアのなかでずっとひとりで制作し続けるほうが不自然だよ。

[[SplitPage]]

音楽は人びとの心を自由にするものだということをつねに忘れてはいけない。そのプロセスにはさまざまなアプローチがある。『オーヴァーライド・スウィッチ』」はマインドをリセットして、何か目の前の障害に向かっていくというようなテーマだ。

いままでのジェフの作品とはリズムへのアプローチが違っていますよね。それはなぜですか? 今回のリズムのコンセプトについて教えてください。

ジェフ:ひとつは、トニー・アレンと共演して学んだことが今回のプロジェクトに反映されている。アコースティックのドラムスがエレクトリック・ドラムとマッチしたときに生まれる特別な感覚、アルバムにはそれがある。ストリングスやベース・ラインでも表現したいアイディアがあって、自分だけでスタジオで作業していたものもあった。とはいえ、ラファエルとは青写真があったわけではなかった。とくにディレクションもなしで、トラックをラファエルに送って、彼がどう感じるか、何をきっかけに次のレベルに進展させていくのかとても楽しみにしながら、制作は進行したんだよ。

お互いの音をなんども往復させたんですか?

ジェフ:だいたい2回往復だったかな。僕がトラックを送って、ラファエルがそれに音をかぶせて、それにさらに僕が音を足したりしてからミックスをして。エディットもだいぶした。音を省いたり、動かしたり。ポストプロダクションの作業はけっこうやったけど、ふたりのあいだのやり取りは2回だったと思う。

離れたところで音を加えながら、セッションしている空気感を出すのはなかなか難しいと思うのですが、その感じは出ていますよね。

ジェフ:そこはラッキーだった。ラファエルはスタジオを移動する最中で機材をいろいろと変えたりして、逆に音にヴァリエーションを持たせる結果になった。ラファエルはじつにたくさんのホーンのパーツを送ってきたから。多くの音源から選ぶことが可能だったし、送られてきた音を聞くだけで何時間もかかるような作業だった。そこから、どの音を残し、どの音を削るか、そしてどう楽曲を構築していくかを考えていった。パーカッションを加えたり、必要な要素を加えて、リズムやメロディをエディットした部分もあるけれど、大まかにはラファエルが演奏した段階で曲の構成は出来上がっていたと言っていい。空気感に関しては、最初からアルバムを制作する意図があったから、違和感のないように同じテクスチュアを持たせるように心がけた。もっとも、細かい計算をしたわけではなく、あくまでもフィーリングを大切にしたんだけどね。

ラファエルは出来上がった曲を聴いてどんな風に思いましたか?

ラファエル:すごく興奮したよ。ジェフがどういう風に自分の送ったホーンを料理するのかを楽しみにしていたから。じっさい、いまジェフが言ったように、ものすごい量のパーツを送ったからね。彫刻を作るような感じかな。ジェフが渡した素材を形づくって彫刻にしていくような。

出来上がった曲は想像していたようなものでしたか? それともまったく違った?

ラファエル:そうだな。想像と違ったというべきかな。最初に送られてきたのはドラムトラックのみだった。

2曲目の“Crashing”やそれに続く“Homage”、後半の“Soul Filters”にはサン・ラーやアフロ・フューチャリズムを感じたのですが、意識されました?

ジェフ:曲制作というのはストーリーテリングのようなものだ。その方法論はたくさんある。最初からはじめるものもあれば、話の途中からはじまるストーリーや終わりからはじまるものもある。そいう意味で自由に曲の構成を決めた。アフロ・フューチャリズムやフューチャリズムが好きな人たちが、このアルバムに興味を持ってもらうにはどのようにしたらいいか、何か特別な方法がないものかと思考したよ。圧倒的なホーンを中心に、その他のパーツの順序やアレンジを決めるのにかなり頭を使った。ラファエルはディープで重圧感のあるホーンをたくさん用意したから、それらを聴くというよりは体で感じるように集中して、たとえば重圧感が感じられるようなフリーケンシーを音のレアーの下の方に置いたりとか、ずいぶん工夫した。そうやることで、ストーリーがよりカラフルにヴィヴィッドになるからね。

サン・ラーの影響はありますか?

ジェフ: いや、サン・ラーよりはクラシック作曲家のグレゴリー(ジョルジュ)・リゲティの影響が大きい。彼の作品は次に何が起こるかわからない。突発的なものが次から次へと続いていく。ホーンを中心にそのような雰囲気で曲を作っていくのが面白いと今回は思った。“Sun King”がその良い例だ。長い楽曲で構成が定まらず流れに身をまかせるしかない。

ラファエル:ジェフが最初に言っていたことは同感だ。僕のリスペクトするアーティスト、ジョン・コルトレーンはかつて「私はときには曲の終わりから演奏をはじめる」と言ったことがある。コルトレーンの演奏は予想できないし、同じ曲でもまったく違って聞こえる。僕もそういったアプローチがつねに頭にある。
アフロ・フューチャリズムというのは、過去と未来に重点を置いて、過去の重圧、地球に根を張りつつも未来、宇宙との繋がりを考えるという思想だけれど、僕は未来を考えるには、いま現在も大切だと思っている。自分がソロ演奏するときにはいま、この瞬間を体現する必要がある。だから僕がアフロ・フューチャリズムを考える場合には過去からつながる現在を表現し、それが演奏中のインプロヴィゼーションになっていく。さまざまなホーンでいろいろな音を表現して。

アフロ・フューチャリズムとは、過去の思い出よりも未来の可能性にかける、というような意味合いもあると思います。このアルバムは、昨年盛り上がったBLMムーヴメント以降に制作されたアルバムなわけですが、そのようなサブジェクトが潜んでいるのでしょうか?

ジェフ:それは正しいと言える。つまり、いまの世のなかは間違ったことがあまりにも多いじゃないか。いま必要なのは、解決の糸口を探す合理的なアプローチなんだ。このアルバムで、いまあるものを超越できるということ、あるいは避けて通る方法はあるんだという希望を提案したかった。困難を乗り越えることができる精神状態を作れるよう自分に暗示をかけるみたいなもので、どんな苦しい状況にあっても進化への道筋は残されていると。誰が何をしようが、何を言おうが、振り回されない、前に進むための自信をつかむというか。それがこのアルバムの基本的な考えだ。こうした考えがフューチャリズムと同じとは言わないけれど、方法論として似たところもあると言えるんじゃないかな。違った考え方を啓蒙することで未来がより良くなるという、そういう思想。それは否定的な思想にもなりうるけれど、このアルバム『オーヴァーライド・スウィッチ』の場合はポジティヴな思考を主張している。僕らの音楽が少しでも人の役に立てればいいと思っているんだ。

ジョン・コルトレーンはかつて「私はときには曲の終わりから演奏をはじめる」と言ったことがある。コルトレーンの演奏は予想できないし、同じ曲でもまったく違って聞こえる。僕もそういったアプローチがつねに頭にある。

昨年世界中で盛り上がったBLM以降、何か状況の変化の兆しはありましたか? UKではDJネームを変えるような人たちもいたり(例:ジョーイ・ネグロ)、レーベル名を変えたりとか(例:ホワイティーズ)、変化がありますが。

ラファエル:BLMはあまりにも大きなテーマだな。そして黒人のなかにおいても、それをひとつのトライブと捉えていいのかという議論もある。世のなかにはさまざまの肌の色のさまざまな考えを持った美しい人たちがいて、僕がそれを代表して何かを言うことはできないと思っているし。でも、DJネームを変えるような些細なことはかえってムーヴメントの妨げになっていると思うよ。重要なのは、この400年のあいだ、黒人が何を成し遂げようとしてきたのかということで、まずはそのことを考えるべきなんだ。表層的な政治性は本当に必要な変革を達成するうえでは邪魔だと言える。

ジェフ:僕も同感だ。400年ものあいだ、黒人の生命はおもちゃのように扱われ、弾圧され続けて、ひどく破壊されてきた。BLMは400年に渡る制度的な拷問に対抗する闘いで、黒人家庭、黒人街、黒人教育などに対するすべての破壊と闘っている。これは、今後も継続していく戦いだ。BLMによって改善されたこともあるし、変化も起きた。一時的でないことを希望するよ。でもBLM以前より黒人の人生が良くなったと結論づけるのは難しいね。時間が教えてくれるだろうけれど、少なくともより多くの人の意識が高まったのは事実だ。そして結果を見る機会は再び訪れるだろうね。アメリカ国民がよりブラウン(非白人)になるにつれて、白人の恐怖感を見る機会は増えるかもしれない。白人はいままでよりいっそう内省的になるかもしれない。彼らはいままでには経験しなかった気持ち、かつてのように優遇されている状況ではないことをより意識するようになるかもしれない。それがBLMによる変化なのか、単なる偶然かはわからない。でも事実は変わらない。この国はかつてないスピードでブラウンが増え続けている。いまはこの変化に気づく最初の段階なのかもしれないね。アメリカはいつだって白人だけの国ではなかったし、黒人の人口比率は彼らが思っているほどに低くはない。もちろん黒人以外の非白人も増え続けているからね。

なるほど。それはそうと、ジェフはこのコロナ禍で『The Escape Velocity』というオンラインマガジンを創刊しました。今回の『オーヴァーライド・スウィッチ』もそうですが、何かから脱出したいというような気持ちがあるのでしょうか?

ジェフ:音楽は人びとの心を自由にするものだということをつねに忘れてはいけない。そのプロセスにはさまざまなアプローチがある。『オーヴァーライド・スウィッチ』はマインドをリセットして、何か目の前の障害に向かっていくというテーマだ。『The Escape Velocity』は瞬間、比率、A地点からB地点へ到達して自由になる過程をテーマにしている。ふたつのプロジェクトに類似性はあるけれど、どちらも結局は音楽が人を解放するという僕の基本概念に基づくものだ。無から何かをクリエイトすることはとてもパワフルなことだし、そこには自分の感情の延長が存在する。音楽を通して、言葉とは違う次元での会話が可能になる。

なるほど。最後にラファエルさん、最近のデトロイトの音楽コミュニテイはどんな感じしょうか?

ラファエル:若いミュージシャンがたくさんいるよ。デトロイトはいつだってミュージシャンの巣窟だ。素晴らしいジャズ、ゴスペル、ファンク、R&Bのミュージシャンなど多くの才能を輩出しているからね。デトロイトには、例えばロスアンジェルスとハリウッドのつながりのような、いわゆるプラットフォームがない。昔はモータウンがあったけれど。それに、ジェフもよく知っていると思うけれど、デトロイトの公立学校では音楽教育が廃止されてしまった。けれど、それでデトロイトの子供たちのクリエイティヴィティがなくなったわけではない。才能を止めることはできず、何かしら違う形で姿を現してくると思う。僕がデトロイトのシーンで素晴らしいと思うのは、すべてのジャンルがつながっていることだ。それがユニークなサウンドを生み出しているんだと思う。

ジェフ: 違うジャンルのミュージシャンの交流はあるの? ジャズとエレクトロニックとか、ヒップホップとか。

ラファエル:もちろん。とくに若い子たちのあいだでは。お互い何をしているかチェックしあっている。同時に才能ある者はデトロイトを出ていってしまい、他の都市のシーンを支えているという事実もある。ニューヨークに行けば、どんなジャンルでも必ずデトロイト出身のミュージシャンがいるよ。ロスにはたくさんのデトロイト出身のヒップホップ・プロデューサーがいる。例えばKarriem Riggins。ジャズとヒップホップをミックスした最初のプロデューサーのひとりだ。もちろんJ. Dillaも。ニューヨークにもデトロイト出身の偉大なジャズ・ミュージシャンが大勢いる。Gerald Cleaverとかね。

ジェフ:デトロイト・テクノとジャズのミュージシャンのあいだの交流は?

ラファエル:それはマイク・バンクスが長年やってることだよね。Shawn Jones、Jon Dixonといったアーティストはマイクが後押ししてきた。僕もそれに加担している。やらない理由がないだろう?

そうですよね。では、これからもデトロイトから面白い作品が出てくるのを期待しましょう。今日はありがとうございました。ところで、ジェフはDJのブッキングはこの先もけっこう入っているのですか?

ジェフ:じょじょに増えてきているよ。2022年はもうスケジュールがいっぱいになりつつある。いままではプロモーターも政府の要請がいろいろと変わって、なかなか前もってイベントを企画することができなかったけれど、状況が良くなってきて、ヴェニュー、アーティストなど事前にブッキングできるようになってきたので今後は元に戻っていくと思うよ。

(※)The Escape Velocityからのリリースが現在44作品(すべてジェフ以外のアーティスト)、Millsart名義のEvery Dogシリーズがvol.5~13 まで9作(すべてデジタルのみ2020年)、ソロ作品では『Clairvoyant』(アルバム)、「Think Again」 (Millsart名義)、Jeff Mills + Zanza21による「When The Time Is Right」。また、エレクトロニック・ジャズ系のリリースでは、ジェフ自身が関わったThe BeneficiariesとThe Paradoxをはじめ、Byron The Aquarius、Raffaele Attanasioといったアーティストの作品もリリースしている。

Black Country, New Road - ele-king

 2021年はUKのインディ・ロック/ポスト・パンク新世代たちの活躍が目覚しい。ロンドンの7人組、ブラック・カントリー、ニュー・ロードもムーヴメントの中心の一組だ。今年2月5日に鮮やかなデビュー・アルバム『For the first time』を送り出している彼らだが、そのほぼ1年後にあたる2022年2月4日、早くもセカンド・アルバムをリリースする。総力をあげて制作したそうで、これまでのスタイルを大胆に更新した作品になっているとのこと。まだ4ヶ月ほど先ですが、楽しみに待っていましょう。

Black Country, New Road
全英チャート初登場4位を記録、2021年の年間ベスト筆頭として満点レビューを多数獲得した衝撃的デビュー作発売から1年、早くもセカンド・アルバム『Ants From Up There』を2022年2月4日にリリース決定!
ファンの間ですでにライブ・アンセムとして知られる傑作シングル「Chaos Space Marine」が先行曲として解禁!

1stアルバム『For the first time』に対する称賛

バトルスとかサンダーキャットなどにも似た形で、熱狂的なブレイクを果たす予感がビリビリとする - rockin’on
現代のギター音楽における重要なマイルストーン - CLASH
独創的な曲作りと荒々しくもテクニカルな演奏でリスナーを引き込んでいく - Music Magazine
もし世界に救いが必要なら、それは彼らかもしれない - The FADER
名作 - Loud & Quiet 10点満点

ロンドンを拠点に活動する、アイザック・ウッド(ヴォーカル/ギター)、ルイス・エヴァンス(サックス)、メイ・カーショウ(キーボード)、チャーリー・ウェイン(ドラム)、ルーク・マーク(ギター)、タイラー・ハイド(ベース)、ジョージア・エラリー(ヴァイオリン)の7人から成るバンド、ブラック・カントリー・ニュー・ロード。2021年のベスト・アルバムの一つとして各方面から評価され、メディアからの満点レビューが続出、全英チャート初登場4位の快挙を達成した衝撃のデビュー作『For the first time』に続くセカンド・アルバム『Ants From Up There』を2022年2月4日にリリースすることが発表され、アルバムからの先行配信曲「Chaos Space Marine」が公開された。

https://bcnr.lnk.to/afut

本楽曲は既にライブではファンの間で人気の楽曲で、混沌としながらも整然とした楽曲についてフロントマンのアイザック・ウッドは次のように語っている。

これまで書いたなかでも最高の曲だ。
この曲には、アイデアがあれば誰のものであってもすべて投入した。
だから、この曲の制作は、本当に早かったし、ユニークなアプローチでもあったんだ──とにかく何もかも壁に投げつけて、それをすべてくっつけたままにしておく、という感じだった。
──アイザック・ウッド

本作は、バンドが総力をあげたアルバムで、これまであった様式を大胆に更新した作品でもあり、自然に完成した作品でもあり、巧みなバランスの仕上がりとなっている。デビュー作の『For the First Time』では、伝統音楽のクレズマーやポスト・ロック、そしてインディー・ロックを融合させていたが、その独自の製法を『Ants From Up There』では、さらに発展させ、伝統的なミニマリズムやインディー・フォークやポップ、そしてオルタナティブ・ロック、すでに彼ら独特のものとなっている多彩なサウンドを他に類を見ない形で結合させることに成功した。

アルバムのレコーディングは、バンドの長年のエンジニアであるセルジオ・マシェッコとともに、ワイト島のシャーレ・アビー・スタジオで夏に行われた。深いところに根ざしたバンドの信念を詰めこみ、それが結果としてあらわれたアルバムに対して、メンバー自身も大きな満足を感じているという。

ずっと興奮していた。
制作は本当に楽しかった。残りの人生で自分が手がけるもののなかでも、これが最高の出来事になるかもしれないと、認めているようなかんじ。それでいいと思っている。
──タイラー・ハイド

ブラック・カントリー・ニュー・ロードのライブ・パフォーマンスは、すでに音楽ファンから最高級の評価を得ており、英ガーディアン紙は「UKで最高のライブ・バンド」と評した。この秋には、43日間のUKおよびヨーロッパ・ツアー、そして年明けにはアメリカでのソールドアウト・ツアーが予定されている。

待望のセカンド・アルバム、『Ants From Up There』は2022年2月4日にCD、LP、カセットテープ、デジタルでリリース! 国内盤CDには歌詞対訳・解説が封入され、ボーナストラックが収録される。また輸入盤CDは通常盤に加え、ライブ音源が収録された2枚組デラックス盤CDもリリースされる。LPはブラック・ヴァイナルの通常盤、ブルーマーブル・ヴァイナルの限定輸入盤、日本でしか発売されないクリスタル・クリア・ヴァイナルに日本語帯が付いた日本限定盤、ライブ音源が収録された4枚組デラックスLPで発売される。なお、BIG LOVE RECORDSでは数量限定のサイン入りヴァイナルの発売も予定されている。

[商品情報]
label: Ninja Tune / BEAT RECORDS
artist: Black Country, New Road
title: Ants From Up There
release date: 2022.02.04 fri on sale

国内盤CD BRC685 ¥2,200+税
国内盤特典:ボーナストラック追加収録/歌詞対訳・解説書封入


日本限定カラー盤2LP(帯付き/クリスタル・クリア・ローズ) / ZEN278JP
デラックス輸入盤2CD / ZENCD278X
輸入盤2LP(ブラック) / ZEN278
限定輸入盤2LP(ブルー・マーブル) / ZEN278X
デラックス輸入盤4LP(ブラック) / ZEN278BX
カセット / ZENCAS278

https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12146

TRACKLISTING

[CD / BRC685]
01. Intro
02. Chaos Space Marine
03. Concorde
04. Bread Song
05. Good Will Hunting
06. Haldern
07. Mark’s Theme
08. The Place Where He Inserted the Blade
09. Snow Globes
10. Basketball Shoes
+ Bonus Track

[Deluxe CD / ZENCD278X]
Disc 1
01. Intro
02. Chaos Space Marine
03. Concorde
04. Bread Song
05. Good Will Hunting
06. Haldern
07. Mark’s Theme
08. The Place Where He Inserted the Blade
09. Snow Globes
10. Basketball Shoes

Disc 2
01. Mark’s Theme (Live from the Queen Elizabeth Hall)
02. Instrumental (Live from the Queen Elizabeth Hall)
03. Athens, France (Live from the Queen Elizabeth Hall)
04. Science Fair (Live from the Queen Elizabeth Hall)
05. Sunglasses (Live from the Queen Elizabeth Hall)
06. Track X (Live from the Queen Elizabeth Hall)
07. Opus (Live from the Queen Elizabeth Hall)
08. Bread Song (Live from the Queen Elizabeth Hall)
09. Basketball Shoes (Live from the Queen Elizabeth Hall)

[2LP Tracklist]
Side A
A1. Intro
A2. Chaos Space Marine
A3. Concorde
A4. Bread Song
Side B
B1. Good Will Hunting
B2. Haldern
B3. Mark’s Theme
Side C
C1. The Place Where He Inserted the Blade
C2. Snow Globes
Side D
D1. Basketball Shoes

[Deluxe 4LP]
Ants From Up There
Side A
A1. Intro
A2. Chaos Space Marine
A3. Concorde
A4. Bread Song
Side B
B1. Good Will Hunting
B2. Haldern
B3. Mark’s Theme
Side C
C1. The Place Where He Inserted the Blade
C2. Snow Globes
Side D
D1. Basketball Shoes

Live from the Queen Elizabeth Hall
Side A
A1. Mark’s Theme (Live from the Queen Elizabeth Hall)
A2. Instrumental (Live from the Queen Elizabeth Hall)
A3. Athens France (Live from the Queen Elizabeth Hall)
Side B
B1. Science Fair (Live from the Queen Elizabeth Hall)
B2. Sunglasses (Live from the Queen Elizabeth Hall)
Side C
C1. Track X (Live from the Queen Elizabeth Hall)
C2. Opus (Live from the Queen Elizabeth Hall)
C3. Bread Song (Live from the Queen Elizabeth Hall)
Side D
D1. Basketball Shoes (Live from the Queen Elizabeth Hall)

スマーフ男組 - ele-king

 スマーフ男組、その名前からしてマッチョイズムのパロディになっているこの3人組——マジアレ太カヒRAW、コンピューマ、アキラ・ザ・マインド——は、90年代に活躍した実験的ラップ・ユニット、Asteroid Desert Songs (A.D.S.)を母体とし、よりエレクトロ(彼らは初期トミー・ボーイなど、オールドスクールのエレクトロ狂でもあった)にフォーカスしたグループとして1997年に始動、そして2007年に1枚だけアルバム『スマーフ男組の個性と発展』を発表、やがてシーンから消えていった。しかしながら彼らのあまりにも独創的なその音楽は、忘れられることはなかった。むしろ年を追うごとに彼らのユーモアと実験精神たっぷりのその音楽は、町の酒場の片隅で、あるいはネット上で、ことあるごとに語られ続け、そして10月20日に未発表曲を3曲加えたかたちでリマスタリングされ発売されることになった。封入されるブックレットには、活動当時のアーカイブ、パーティー・フライヤー、CD発売当時のお祝いコメント、マジアレ太カヒRAWの楽曲解説、磯部涼による解説入りという豪華盤。売れ切れ必至なので、早めにどうぞ。

スマーフ男組
スマーフ男組の個性と発展

Lastrum / MUSICMINE / JET SET

※2LP+Download Code付き
ゲスト・ミュージシャンはZEN-LA-ROCK(FNCY)、Nanao Del Monaco (FATHER)、AYA (OOIOO)。デザインは前田晃伸

House music - ele-king

 ハウスは12インチの文化とよく言われる。それは、僕がハウスを気に入っているひとつの理由でもある。ロックを聴いていた高校生のころは「フルレングスのアルバム以外認めない」なんて謎にオラついていたけれど、いまではアルバムという単位にちょっと重く感じてしまうときがある。その点、12インチは気軽に針を落とせるし、基本的には音がいいし、なにより安いのだ(あくまで、アルバムと比べて)。僕のサウンド・パトロールではアルバムに縛られず、お気に入りの12インチ、EPやコンピレーションなど、さまざまなフォーマットでリリースされたダンス・ミュージックを定期的に紹介することをコンセプトに据えている。それらにはアルバムと違った聴きかた、楽しみかたがあると思うので、以下に紹介する5枚をぜひ聴いてみてほしい。


V.A - BEAUTIFUL PRESENTS: BEAUTIFUL VOL 1 〈Beautiful〉

 ロンドンの〈Beautiful〉は、Reprezent RadioやBBC Radio1で活動しつつ、かたや『Fabric Presents』では、モーター・シティ・ドラム・アンサンブルやオーヴァーモノに続いてそのミックス・シリーズに抜擢されるなど、いま勢いに乗りまくっているシェレリが新たに設立したレーベル。その第一弾となるコンピレーションは、「ブラック・エレクトロニック・ミュージックをセレブレートするためのホーム」と言う通り、ロレイン・ジェイムズ、イーロン(:3LON )、ティム・リーパー、カリーム・アリなど、性別を問わずエレクトロニック・ミュージックの若い才能たちが一堂に会している。コンピレーションで曲数が多いから通して聴くのは大変かもしれないが、騙されたと思ってオープナー“Sirens”と続く“THE PSA”だけでも聴いてみてほしい。〈Beautiful〉は黒人、クィア、女性であるひとびとの良きプラットフォームを目指しているようだが、それはこのコンピの人選を見ても明らかだ。シェレリの野心的な試みにはこれからも目が離せない。


V.A - Melodies Record Club #002: Ben UFO selects 〈Melodies International〉

 フローティング・ポインツによる、リイシュー専科の〈Melodies International〉。このレーベルの『Melodies Record Club』シリーズは、DJやアーティストが12インチで過去のレアな音源をキュレーションする企画で、記念すべき第一回はフォー・テット、そして今回はベン・UFOがセレクトするなど、フローティング・ポインツと馴染み深い面々が担っている。電子音楽の先駆者のひとりとして数えられるローリー・シュピーゲルによる、“Drums”の実験的な7分間のアフリカン・マシン・リズムが最高なのは言うまでもないが、僕は B面のオロフ・ドレイジャーによる“Echoes From Mamori”のほうにさらなる衝撃を受けた。これは、彼の友人が企画したエキシビジョンのためにCDでリリースされた音源だそうで、アマゾンとベルリンで録音したカエルや鳥のサウンドから始まる、およそ13分もの長大なハウス・ミュージックに仕上がっている。『Melodies Record Club』のこれからのラインナップとして、ハニー(〈Rush Hour〉)、ダフニ(カリブー)、ジャイルズ・ピーターソンなどをそのキュレーターとして予定している。非常に楽しみだ。


Kush Jones - Rugrats / Basic Bass 〈FRANCHISE〉

 シカゴで生まれた正真正銘のアンダーグラウンドなダンス・ミュージック、ジューク/フットワーク。しかし、ご紹介するものはシカゴでなくニューヨークで、もはやこれをジューク/フットワークと呼んでいいのかと思うくらいの変異ぶりを感じる。ブロンクスで生まれ育ったクッシュ・ジョーンズは、シカゴにおける猥雑でゲットーな同ジャンルの正統な旗振りというより、そのフォームをよりエクスペリメンタルに前進させようと試みるDJと言うべきかもしれない。彼と同じ〈Juke Bounce Werk〉のクルーであるDJノアール、EPが待たれるマンチェスターのアンズ、そしてブルックリンのDJマニーと、リミックス陣も抜かりなく豪華な面々が揃えられているところもポイント。ベスト・トラックはDJマニーによる不協和音ギリギリを狙っていくかのような“Rugrats”のリミックスかな。


effgee - Good Morning 〈fellice records〉

 ドイツはハンブルクを拠点とする、エフギーことフェリックス・ガスによるモダン・ハウス。彼自身によって2021年に設立された〈fellice records〉のレーベル第一弾で、イタリアでの生活をもとに、fellice(フェリーチェ、イタリア語で「幸せ」を意味するらしい)なフィーリングを伴った音楽を提供している。“Place”のオーガニックで温かみのあるハウス・グルーヴは、彼のソウルやジャズを背景としたドラマーとしての出自がおそらく関係しているのだろう。奇妙で不確かないまの時代において、自分のサウンドとデザインをアウトプットするための必要性を感じたことがレーベル設立の動機で、その通り今作のサウンドとアートワークはエフギー自身がすべてを手がけている。ウクライナのヴァクラをいち早く紹介したことでも知られるUKの〈quintessentials〉から、2009年のレーベル・コンピレーションに登場していたらしいが、まったく知らなかった。要チェックです。


Project Pablo - Beaubien Dream 〈Sounds Of Beaubien Ouest〉

 前回にならって、最後はまたもや再発物で締めよう。〈Sounds Of Beaubien Oust〉(SOBO)から、記念すべきカタログ第一番が約5年ぶりのリイシュー。カナダはモントリオールを拠点に活動するプロジェクト・パブロことパトリック・ホランドの出世作。デジタルですでに持っていたので、今回のリプレスをヴァイナルで買うか迷っていたけれど、あたふたしているうちに売り切れ……。なにはともあれ“Closer”を聴いてほしい、ふわふわした夢見心地なディープ・ハウスが鳴っている。モントリオールは極寒の地だと聞くが、たしかにどこか寒々しいテクスチャも感じられ、これは秋が終わった冬に聴きたいハウス・ミュージックかもしれない。

Little Simz - ele-king

 2019年に発表した前作『GREY Area』が非常に高く評価された Little Simz。StormzyHeadie One とも肩を並べるUK屈指のラッパーとなった彼女の最新作『Sometimes I Might Be Introvert』は、歌詞とサウンド両面で、自身のルーツと向き合いながら、同時に現在の自分をも表現した作品となった。

 彼女の本名は Simbiatu Ajikawo。フッドの仲間は「SIMBI」と呼ぶ。タイトルを和訳すると「たまに内向的になるの」。本作は、ラッパーとして成功した「Simz」と素の「SIMBI」というキャラクターとパーソナリティの乖離と融和を描いている。ちなみにタイトル(『Sometimes I Might Be Introvert』)の頭文字を取ると「SIMBI」になる。

 サウンド面をサポートするのは幼なじみの Inflo こと Dean Josiah Cover。その正体は長らく謎に包まれていたが、実は Little Simz 作品では常連のシンガー・Cleo Sol(Cleopatra Nikolic)、Kid Sister(Melisa Young)とともに活動する SAULT のメンバーであった。アフロ、ファンク、ジャズ、ヒップホップ、パンク、ニューウェーヴ、ハウス、ガラージ、ドラムンベース……さまざまな要素をロンドンらしくミックスして、バンドのダイナミックな演奏で表現しているのが特徴だ。

 話はアルバムから少しだけ逸れるが、Little Simz が昨年配信したEP「Drop 6」に収録されていた “one life, might live” のベースラインは、Roni Size & Reprazent のクラシック “Brown Paper Bag” へのオマージュ。これがオバマ夫妻のプレイリストに入ってたというエピソードはなんというかいろいろ想像力が広がって最高だった。ちなみに同曲のプロデューサー・Kadeem Clarke はおそらく SAULT 周りのコレクティヴのメンバーで、Discogs を見ると『Sometimes I Might Be Introvert』の “Standing Ovation” にも参加しているとのこと。

 私は当初、このサウンド・プロダクションや、“Introvert” と “Woman” の豪華絢爛なMVに夢中になった。だが本作はリリックも素晴らしい。

 冒頭を飾る “Introvert” の1ヴァース目ではコンシャスなラッパー「Simz」として世界中でいまも続く差別について心を痛める。2ヴァース目は「SIMBI」として27歳の女性としての心の弱さをさらけ出す。そしてアウトロに女優のエマ・コリン(Netflix のドラマ『クラウン』でダイアナ妃を演じている)による、後に続くストーリーの幕開けを予感させるナレーションが入る。

 続く “Woman” はナイジェリアの血を引く彼女がアフリカ系の女性をエンパワメントするナンバー。この曲のリリックは、サウンドに負けず劣らず、言い回しがかわいくてしゃれているのだ。ナイジェリア、シエラレオネ、タンザニア現地の話題を交えながら「Woman to Woman I Just Wanna See You Glow/Tellen What’s Up(女性同士 あなたが輝くのを見たいの/みんな元気でやってる)」と語りかけたり、ブルックリンのレディーたちに「Innovative just like Donna Summer in the 80’s/Your time they seeing you glow now(80年代のドナ・サマーみたいに革新的/最盛期のあなたをみんな見てる。輝いてるよ)」と言ってくれたり。男性ですらこんなにテンションが上がるんだから、女性ならブチ上がることは必至だろう。

 だがおそらくこれは社会的な「Simz」の言葉。もちろん「SIMBI」自身もそう感じているんだろうけど。“Two Worlds Apart” では徐々に「SIMBI」の顔が見えてくる。なかなか結果ついてこなかった活動初期。昼の仕事をしながらラップを書き続けていた。“I Love You I Hate You” ではアーティスト活動が厳しい反面、音楽への捨てきれない愛を語る。そのリリックに、なんらかの問題を抱えている実父との関係を重ねるあたりが彼女がリリシストとして評価される所以だろう。

 いとこの Q によるモノローグ “Little Q Part 1” を経て、名曲 “Little Q Part 2” では彼女が育った地域がどんな場所であったかをラップする。Q は14歳で一家の主にならざるを得なかった。兄は刑務所で、父は行方不明だから。ストリートで銃を突きつけられ、病院で二週間も意識不明だったという。だが Little Simz の最近の Instagram には、その Q が大学を卒業する写真がアップされていた。Q は彼女とは違う方法で貧困から抜け出したのだ。

 “Speed” はアルバムで最も攻撃な1曲。サウンドは SAULT 的だ。緊迫感あるタイトなベースラインからは活動初期に彼女が切磋琢磨してきたことが思い起こされる。リリックも自身を認めないシーンに対するフラストレーションに満ちている。次の “Standing Ovation” へは曲間なくシームレスにつながる。自らのラップでクィーンになった彼女は、「スタンディング・オベーションを受けてもいいと思う。10年間じっと耐えて働いてきた」と胸を張る。1st アルバム『A Curious Tale of Trials』のジャケットには、王冠をかぶった女性が描かれているが、それを実際に手に入れたのだ。いま改めて 1st アルバムを聴くと、サウンドの本質はあまり変わってないように思える。“Standing Ovation” には「Still running with ease marathon not a sprint(軽々走ってるの/マラソンみたいに/徒競走じゃないよ)」というラインがある。つまり目先のトレンドを資本主義的に追いかけるのではなく、自分の信じる表現を突き詰めるということ。だからこの曲はことさらゴージャスでエモーショナルなのだ。「どうだ!見たか!」と。

 おそらくここまでが『GREY Area』で成功するまでの彼女。“I See You” はラヴ・ソング。「Simz」ではなく完全に「SIMBI」の瞬間。この瞬間がないと不安で押しつぶされそうになる。活躍し続けるためには自由(完全に「SIMBI」の瞬間)を犠牲にしなくてはいけない。周りもみんな王座を狙ってるから。“The Rapper That Came To Tea” では Little Simz の心情をエマ・コリンが代弁する。本作の狂言回しであると同時に女神でもある彼女は、困惑する Little Simz を「いまのままでいい。そのままでスターになれる」と励ます。“Rollin Stone” は非常にユニークな曲で、前半は「Simz」で、後半は「SIMBI」になる。この曲から彼女はこれまで二律背反だった概念を統合して自己肯定する方向に歩みはじめる。“Rollin Stone” 後半のサウンド感が次の “Protect My Energy” のリリックの内容につながる。群れない。本当の仲間のみ、あるいはひとりでいることでポジティヴなエネルギーを蓄える。以前、彼女の Instagram で、車での移動中に編み物をしてる動画が上がっていた。何も考えずに集中して心を落ち着ける瞬間なのかな、と思った。

 結局彼女は自分自身を信じて進むしかないと気づく。もしくは言い聞かせる。その過程がインタールードの “Never Make Promises”。そしてアフリカのブルータルな舞踏の躍動を感じさせる “Point and Kill” へ。彼女の中にある表現への強い欲求が、アフロ・ルーディな Obongjayar のヴォーカルとともに、ひしひしと伝わってくる。次の “Fear No Man” へも曲間なくつながる。こちらはアフロビート。呪術的なパーカッションとコーラスに乗せて、ポジティヴな自信をラップする。さらにインタールード “The Garden Interlude” でも自分を信じるように念を押すように言う。このあたりに Little Simz の本質があるような気がする。自分を信じると言うのは簡単だが、多層的に思考が走り続ける脳内でそれを実行し続けるのは難しい。そんな繊細な本音は、これまで「SIMBI」が言ってきた。だがいまはもう「Simz」として言える。それが “How Did You Get Here” だ。

 ラストの “Miss Understood” は自分と世間のギャップに病むこと、さらに極めて個人的な家族とのトラブルについて歌っている。結局、自分自身の問題が片付いても、次から次へと新しい苦悩は外からやってくる、ということなのかもしれない。神話的なスケールで己の葛藤を歌いながら、最後をシニカルなコメディーのように締めるあたりに、やはり彼女はUKのアーティストであるなと感じてしまう。

 『Sometimes I Might Be Introvert』は昨年のロックダウン中に Inflo とスタジオに籠って制作された。その間、世界は分断していた。そこで何を歌うか。彼女はあえてフォーカスを自分自身に絞った。ナイジェリアにルーツを持つ、ロンドンで生まれ育った、27歳のラップする女性。強くて弱くて大胆で繊細。矛盾すら自分の一部。誰の中にもあるカオスと向き合って作品に落とし込んだ。自分を世界に合わせるのでなく、自分を信じて、自分の世界を作り出す。それが本作のメッセージだ。

 それはサウンドにも顕著に表れている。彼女はロンドンにいながらUSのヒップホップ/R&Bに強く影響されてきた。同時に『GREY Area』でUSツアーを経験した。憧れの Lauryn Hill のツアーにも参加した。そんな彼女のサウンド的バックグラウンドを前述の SAULT 的解釈、つまりさまざまな人種で溢れかえり、レゲエやグライム、アフロなど、世界各国の有名無名の音楽が鳴り響く、2021年のロンドンのストリートの視点から表現したアルバムなのだ。そこに「Simz」と「SIMBI」の物語をミュージカル的に聴かせるオーケストラ・アレンジが加わる。個人の内面を語っているのに、神話的なスケール感と奥行きがある。ゆえに『Sometimes I Might Be Introvert』は2021年を代表するアルバムだ。そして Little Simz をさらなる高みに導く作品となる。

Popp - ele-king

 ミュンヘンからツイン・ドラムのジャズ・ユニット、ファジー(Fazer)のサイモン・ポップによるセカンド・ソロ。ハッセル&イーノ『Possible Music』を思わせる2年前の『Laya』と同じく打楽器だけで構成されたインプロヴァイゼイション・アルバム。複数の打楽器や細かいパーカッション・ワークを駆使し、全体にインド音楽のテイストを残しながらもアフリカ色が強くなったことで同じようにスタティックな作風でも静謐さの種類に変化がもたらされている。ファジーが元々、ラウンジ・ミュージックに近い音楽性だったこともあり、テンションをみなぎらせるようなインプロヴァイゼイションではなく、かといってニューエイジのようなユルユルでもなく、ビアトリス・ディロンへのクラブ・ジャズからのアンサーというのか、スティーヴ・ライヒから可能な限り緊張感を取り除いたアンビエント・ドラミングというのか。あくまでも演奏を基本にしていることでフィールド・レコーディングとプロセッシングでつくり出すアンビエント・ミュージックにはないオーガニックなムードが全体のトーンを決めている(90年代の雰囲気を出すためにゲート・リヴァーブとピッチ・シフトは多用したらしい)。サイモン・ポップはファジー以外の活動としてアブシュタン(Abstand)やファジーのドラマー2人によるファジー・ドラムス名義のアルバム『Sound Measures』などでミニマルにフォーカスした試行も並行して続けており、そのためか、サイモン・ポップのソロ作を取り上げた欧米のレヴューでは「サード・ストリーム・ミニマリズム」という定義がやたらとコピペされて使われているものの、僕が調べた限りどこにも定義の内容は書かれていない(ので、よくわからない)。お笑いの第7世代みたいなものなのだろうか?



 前作の『Laya』は鐘の使い方やランダムなビートの刻み方など明らかにメディテイションを目的としていて、フィジカルではなく音の効果は意識に集中していた。『Devi』ではそれがガーナのリズムなど東アフリカのリズムを取り入れた結果、一転してフィジカルに訴えかける要素が増え、全体的に内省的な気分を誘発するものではなくなっている。“Gundel”や“Jilu”などインドとアフリカが融合し、なんとも気持ちのいいハイブリッドに仕上がっていて、透き通るような残響音が美しい“Myna”や、いまにもデヴィッド・アレンがごにょごにょとマントラじみたヴォーカルを歌い出しそうな“Dama”などどの曲も素晴らしく、『Devi』はドイツのミュージシャンがアフリカ音楽を取り入れた最高傑作といえるのではないだろうか(“Xolotl”は食品まつりのリミックスが聴いてみたい)。クラシック大国ドイツによるアフリカ音楽の受容はこれまで悲惨としか言いようがない過程を辿ってきた。ボアダムズ『77 Bore Drum』にヒントを与えたらしきナイアガラ(クラウス・ヴァイス)や最近のアフロ・ハウスまで、まったく横揺れがしないドイツ人のアフリカ趣味は彼らの生真面目な性格を伝えるだけで(なにせメトロノミック・ビートである)、カンのヤキ・リーベツァイトを例外としながらマーク・エルネスタスによるジェリ・ジェリやタイヒマン兄弟によるアフリカとの交流によって発展してきたクラブ・ミュージックの片隅でようやく重要が喚起されてきた程度だろう。その上でのサイモン・ポップであり、『Devi』なのである。

 70年代のクラウトロックでもミヒャエル・フェッター(Michael Vetter)やドイター(Deuter)がインド音楽をメインに似たようなことはやっていた。しかし、これらとモンバサやオム・ブッシュマンといったドイツのジャズ・ドラムが結びつくことはなく、2017年にヤン・シュルツ(=ヴォルフ・ミュラー)が『Tropical Drums Of Deutschland』を編纂することで新たなフュージョンの可能性が出てきたということなのだろう。70年代の空気と80年代のテクニックが結びつき、これに「サード・ストリーム・ミニマリズム」wを加えることでサイモン・ポップの音楽性は立ち上がってきたといえる。“Higlehasn”がクラフトワーク“Tanzmusik”のアンビエント・ヴァージョンに聞こえてしまったのは僕だけだろうか。ちなみに「Laya」はインドの音楽用語、「Devi」はインドの女神を意味しているのかなと思うけど、正確にはよくわからない。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151