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House music

House music

渡部政浩 Oct 07,2021 UP

 ハウスは12インチの文化とよく言われる。それは、僕がハウスを気に入っているひとつの理由でもある。ロックを聴いていた高校生のころは「フルレングスのアルバム以外認めない」なんて謎にオラついていたけれど、いまではアルバムという単位にちょっと重く感じてしまうときがある。その点、12インチは気軽に針を落とせるし、基本的には音がいいし、なにより安いのだ(あくまで、アルバムと比べて)。僕のサウンド・パトロールではアルバムに縛られず、お気に入りの12インチ、EPやコンピレーションなど、さまざまなフォーマットでリリースされたダンス・ミュージックを定期的に紹介することをコンセプトに据えている。それらにはアルバムと違った聴きかた、楽しみかたがあると思うので、以下に紹介する5枚をぜひ聴いてみてほしい。


V.A - BEAUTIFUL PRESENTS: BEAUTIFUL VOL 1 〈Beautiful〉

 ロンドンの〈Beautiful〉は、Reprezent RadioやBBC Radio1で活動しつつ、かたや『Fabric Presents』では、モーター・シティ・ドラム・アンサンブルやオーヴァーモノに続いてそのミックス・シリーズに抜擢されるなど、いま勢いに乗りまくっているシェレリが新たに設立したレーベル。その第一弾となるコンピレーションは、「ブラック・エレクトロニック・ミュージックをセレブレートするためのホーム」と言う通り、ロレイン・ジェイムズ、イーロン(:3LON )、ティム・リーパー、カリーム・アリなど、性別を問わずエレクトロニック・ミュージックの若い才能たちが一堂に会している。コンピレーションで曲数が多いから通して聴くのは大変かもしれないが、騙されたと思ってオープナー“Sirens”と続く“THE PSA”だけでも聴いてみてほしい。〈Beautiful〉は黒人、クィア、女性であるひとびとの良きプラットフォームを目指しているようだが、それはこのコンピの人選を見ても明らかだ。シェレリの野心的な試みにはこれからも目が離せない。


V.A - Melodies Record Club #002: Ben UFO selects 〈Melodies International〉

 フローティング・ポインツによる、リイシュー専科の〈Melodies International〉。このレーベルの『Melodies Record Club』シリーズは、DJやアーティストが12インチで過去のレアな音源をキュレーションする企画で、記念すべき第一回はフォー・テット、そして今回はベン・UFOがセレクトするなど、フローティング・ポインツと馴染み深い面々が担っている。電子音楽の先駆者のひとりとして数えられるローリー・シュピーゲルによる、“Drums”の実験的な7分間のアフリカン・マシン・リズムが最高なのは言うまでもないが、僕は B面のオロフ・ドレイジャーによる“Echoes From Mamori”のほうにさらなる衝撃を受けた。これは、彼の友人が企画したエキシビジョンのためにCDでリリースされた音源だそうで、アマゾンとベルリンで録音したカエルや鳥のサウンドから始まる、およそ13分もの長大なハウス・ミュージックに仕上がっている。『Melodies Record Club』のこれからのラインナップとして、ハニー(〈Rush Hour〉)、ダフニ(カリブー)、ジャイルズ・ピーターソンなどをそのキュレーターとして予定している。非常に楽しみだ。


Kush Jones - Rugrats / Basic Bass 〈FRANCHISE〉

 シカゴで生まれた正真正銘のアンダーグラウンドなダンス・ミュージック、ジューク/フットワーク。しかし、ご紹介するものはシカゴでなくニューヨークで、もはやこれをジューク/フットワークと呼んでいいのかと思うくらいの変異ぶりを感じる。ブロンクスで生まれ育ったクッシュ・ジョーンズは、シカゴにおける猥雑でゲットーな同ジャンルの正統な旗振りというより、そのフォームをよりエクスペリメンタルに前進させようと試みるDJと言うべきかもしれない。彼と同じ〈Juke Bounce Werk〉のクルーであるDJノアール、EPが待たれるマンチェスターのアンズ、そしてブルックリンのDJマニーと、リミックス陣も抜かりなく豪華な面々が揃えられているところもポイント。ベスト・トラックはDJマニーによる不協和音ギリギリを狙っていくかのような“Rugrats”のリミックスかな。


effgee - Good Morning 〈fellice records〉

 ドイツはハンブルクを拠点とする、エフギーことフェリックス・ガスによるモダン・ハウス。彼自身によって2021年に設立された〈fellice records〉のレーベル第一弾で、イタリアでの生活をもとに、fellice(フェリーチェ、イタリア語で「幸せ」を意味するらしい)なフィーリングを伴った音楽を提供している。“Place”のオーガニックで温かみのあるハウス・グルーヴは、彼のソウルやジャズを背景としたドラマーとしての出自がおそらく関係しているのだろう。奇妙で不確かないまの時代において、自分のサウンドとデザインをアウトプットするための必要性を感じたことがレーベル設立の動機で、その通り今作のサウンドとアートワークはエフギー自身がすべてを手がけている。ウクライナのヴァクラをいち早く紹介したことでも知られるUKの〈quintessentials〉から、2009年のレーベル・コンピレーションに登場していたらしいが、まったく知らなかった。要チェックです。


Project Pablo - Beaubien Dream 〈Sounds Of Beaubien Ouest〉

 前回にならって、最後はまたもや再発物で締めよう。〈Sounds Of Beaubien Oust〉(SOBO)から、記念すべきカタログ第一番が約5年ぶりのリイシュー。カナダはモントリオールを拠点に活動するプロジェクト・パブロことパトリック・ホランドの出世作。デジタルですでに持っていたので、今回のリプレスをヴァイナルで買うか迷っていたけれど、あたふたしているうちに売り切れ……。なにはともあれ“Closer”を聴いてほしい、ふわふわした夢見心地なディープ・ハウスが鳴っている。モントリオールは極寒の地だと聞くが、たしかにどこか寒々しいテクスチャも感じられ、これは秋が終わった冬に聴きたいハウス・ミュージックかもしれない。

渡部政浩