「S」と一致するもの

遠くで鳴るビート、蒸気を吸いそして Chill-out……
エイフェックス・ツイン最大の問題作を読み解く

リリース25周年!
エイフェックス・ツイン、あるいはテクノ、アンビエント、ヴェイパーウェイヴのファンであるなら避けては通れない本、テクノ史上もっとも謎めいた名作の秘密をさぐる快著、ついに翻訳!
アンビエント/IDMのオーソリティーが膨大な資料のもとに構成する、世界で唯一のエイフェックス・ツインの単行本。

発売当時、明晰夢によって作曲された音楽だと本人が解説した『セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2』。
曲名のクレジットもなく、ダンス・カルチャー全盛期に、いっさいのビートを削除した作品。リリース当時はリスナーとメディアを大いに困惑させた問題作。いまとなっては傑作と言い切れる先駆的なアルバム。
その『セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2』を紐解きながら、ブライアン・イーノのアンビエント、レイヴ・カルチャーにおけるチルアウト、そして21世紀のオンライン・カルチャーにおけるアンビエントまでを解読していく。

【著者】
マーク・ウィーデンバウム(Marc Weidenbaum)
サンフランシスコ在住。著述家。アンビエントとエレクトロニカに特化したサイト『Disquiet.com』の設立者。アメリカでもっとも有名なサイト『Boing Boing』や科学系のサイト『Nature』などにも寄稿。メディアやアンビエントにかんする講義もおこなっている。

日本の戦後、そこにはつねにレコードがあった──

社会が変容する中で起こる様々な出来事を、巧みに歌謡曲として織り上げてきた「歌謡民族」日本人
誰もが知っている大ヒット曲の意外な背景から、ロッキード事件やグリコ森永事件のような犯罪を歌ったもの、花粉症の流行やバブル経済など社会現象を題材にした珍レコードまで──歌謡曲でたどる戦後日本の精神史

【著者略歴】
とみさわ昭仁(とみさわ・あきひと)
1961年、東京都生まれ。歌謡ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』への参加を経て、1983年にライターデビュー。書評や映画評のほか、ゲームシナリオ、漫画原作など、幅広く執筆活動を行なっている。珍レコードのコレクターとしても知られ、「伊集院光とらじおと」(TBSラジオ)の人気コーナー「アレコード」にも度々出演。

【目次】

はじめに
第1章 終戦からの復興
 ①焼け跡に流れる復興の唄 ②故国からの旅立ちと帰還の唄 ③還らぬ息子を想う母の唄 ④焼け跡に咲く悲しい花 ⑤焦土に咲いた夢のひとひら ⑥そびえ立つ復興のシンボル
第2章 国民のヒーロー
 ①街頭に炸裂する空手チョップ ②オリンピックの顔と顔 ③馬場と猪木、BI砲の時代 ④歌う女子プロレス ⑤王と長嶋、ON砲の時代 ⑥土俵から出たミリオンヒット
第3章 戦争の忘れ形見
 ①安保、平和を願う魂の叫び ②還ってきた日本兵 ③日本と中国の友好の使者 ④とり残された孤児の唄 ⑤沖縄の忘れられた約束 ⑥さい果てに未練を残す北方の島
第4章 高度成長の時代
 ①高度成長を支えた労働者の唄 ②電力不足解消のための一大事業 ③モーレツ社員へのカウンター ④交通網の発達 ⑤社会発展による弊害 ⑥高度成長期の終焉とバブル景気
第5章 多様化する家族のあり方
 ①ベビーブームからの集団就職 ②核家族の増加 ③小市民の時代 ④加熱する受験戦争 ⑤四畳半フォークの世界
第6章 戦後事件史
 ①吉展ちゃん誘拐事件 ②三億円強奪事件 ③連続射殺魔事件 ④三島由紀夫割腹自決 ⑤連合赤軍あさま山荘事件 ⑥コインロッカーベイビー ⑦ロッキード疑獄事件 ⑧横浜米軍機墜落事件 ⑨金属バット殺人事件 ⑩疑惑の銃弾事件 ⑪羽田沖日航機逆噴射事件 ⑫グリコ・森永事件
第7章 流行あれこれ
 ①人々を夢中にさせたマスコット ②歩行者天国は青空のステージ ③レジャーとスポーツ ④幸福行きの切符 ⑤街角のハプニング ⑥噂の口裂け女 ⑦インベーダー襲来 ⑧珍アニマル動物園
第8章 国外からのお客様
 ①ビートルズがやってきた! ②ツイッギー来日 ③世界の国からこんにちは ④モナリザ来日 ⑤人か猿か? オリバーくん ⑥遥かアフリカからの訪問者
第9章 まだ見ぬフロンティアへ
 ①南極観測の始まり ②人類ついに月へ降り立つ ③ネッシー探検隊 ④音速の壁を越えて ⑤試験管の中の生命 ⑥76年周期の危機
第10章 昭和の終わった日
 ①崩御、そして改元
あとがき

天国でまた会おう - ele-king

 昨年11月からフランス全土で巻き起こったジレ・ジョーヌは過剰な「警察の暴力」が問題視され始めたけれど、抗議運動が始まってちょうど1ヶ月が経った頃、取り締まる側の警察がエリゼ宮にデモを行おうとして同じ警察組織に行く手を阻まれ、シャンゼリゼに座り込むということも起きていた。中心となったのは「怒る警官たちの運動(MPC)」で、デモに参加していた警察のひとりが「我々はマクロンを守っているのではない、共和国を守っているのだ」とコメントしたことが僕の心には強く残っている。予算を削減された警察はプロテクターやヘルメットの数が足りず、自腹で身の安全を守らなければ危険だと感じるほどジレ・ジョーヌの抗議行動が激しさを増していたということでもあり(フランス全土で監視カメラの6割が壊されたという)、彼らの帰属意識がどこにあるのかということがはっきりと伝わってくる声明でもあった。それは政府や権力ではなく、国家はどうあるべきかという理念に属するのである(この春に行われる天皇の退位が2•26事件とオーヴァーラップしてしまうのは僕だけ?)。警官が理念を語れるということは、しかし、ものすごいことではないだろうか。そして、アルベール・デュポンテル監督『天国でまた会おう』を観ながら、僕はこの警官たちの言葉を思い出してしょうがなかった。物語は警察の取り調べ室から始まる。場所はモロッコ。彼の供述はそして、勢いよく犬が砂漠を走っていく場面へと飛ぶ。

『その女アレックス』(文春文庫)が日本でもベストセラーになったピエール・ルメートルが初めてミステリー以外の小説を書き、あっという間にゴンクール賞を獲得した同名の長編小説が原作。悪趣味が複雑骨折を起こしたような『その女アレックス』とはだいぶ異なったイメージながら正義を行う主体が屈折した社会的位置にいるという設定は共通で、脚本にはルメートル自身も参加。同作の重みをリアリズムではなく、『アメリ』や『ムード・インディゴ』といったトリッキーな演出でまとめたところもフランス映画の強みを増したといえる。事件は第1次世界大戦終結の直前に起きる。やっと戦争が終わると思った兵士たちをブラデル中尉(ロラン・ラフィット)はムダな突撃に向かわせ、監督自らが演じるマイヤールを砲撃から救おうとしたエドゥアールが顔の下半分を失ってしまう(演じるのは『BPM』で鮮烈な印象を残したばかりのナウエル・ペレーズ・ビスカヤート)。戦地から戻った帰還兵たちには居場所がなく、マイヤールとエドゥアールは孤児のルイーズを加えて慎ましやかな共同生活を始める。言葉を話せなくなったエドゥアールの考えていることはルイーズだけにはわかる。そして、ルイーズはエドゥアールが壮大な詐欺の計画を考えているとマイヤールに告げる。エドゥアールには類まれなる画才があり、彼の絵の才能を利用してありもしない戦没者の記念碑を売りつけようというのである。

 戦後のドイツ政府がゲーテの家を復興しようとしたことはある種の現実逃避だったとされている。それはナチスに加担したり見て見ぬ振りをしていた人たちが現実から目を逸らすための方便だったとドイツ哲学の三島憲一も指摘していた。マイヤールとエドゥアールからしてみれば、自分たちのことを受け入れなかった戦後のフランス社会が自分たちの存在から目を逸らすためにモニュメントを必要としていたことになる。彼らはそれこそどこに帰属意識を探せばいいのかわからない状態に置かれたのである。年末に保坂和志と久しぶりに食事をして、その時もなぜだったか帰属意識の話になった。あれこれ聞いているうちに、少なくとも保坂は「軍隊は嫌いだけど戦友は大事だ」という意味のことを話していた。マイヤールとエドゥアールの結びつきもまさにそれで、戦争にもしもいいことがあるとしたら戦時下の友情が尋常ならざる強固なものになることだろう。水木しげるもそれがなければ『総員玉砕せよ!』のような作品を残すことはなかったし、『少年H』のような回想も残らなかったことだろう。その結びつきがホモ・ソーシャルなものとして悪い方向へ向かうことがないようルイーズやポリーヌといった「おんなこども」の要素をうまく噛み合わせていることもこの作品の巧みなところである。それこそフランス的というべきかもしれない。とくにマイヤールが黄色いスーツを着込んでポリーヌをデートに誘うシーンは楽しいエピソードであり、彼らはいわゆる詐欺師グループであるにもかかわらず、権力に虐げられている人は誰なのかということを同時に分からせていく組み立てもよくできている。図式的といえばあまりに図式的な構成なのだけれど、それを凌駕するアイディアやウィットに満ちていて、並行して進むもうひとつのストーリーに様々な角度から食い込んでいく妙味もある。マイヤールとエドゥアールが金をだまし取ろうとしている相手は実はエドゥアールの父親で、戦争を遂行した権力の重要人物でもある。そのような人物がどうして息子を戦地に送り出したのかという疑問は残ったけれど、結果的に父と子は戦争というハプニングを挟んで向かい合い、お互いの存在意義や関係性を再確認することになる(父親のモデルはヴォクトル・ユゴー)。ありきたりな表現で申し訳ないけれど、ラスト・シーンはかなりびっくりだった。いまだに「え、なんで?」という感触が脳のどこかには残っている。

 トリッキーな演出である以上、美術が大袈裟で過剰なのは当たり前。なかでも顔の下半分を失ったエドゥアールがつける仮面の造作は当時の美術傾向であるキュービスムがそのまま反映され、題材もバスター・キートンからジャン・コクトーと、それだけで見事な一幕劇をなしている。自分の顔を失ったことでたくさんの顔を持つことができたと解釈するならば、エドゥアールはドゥルーズ=ガタリが言う「顔の解体」を経て主体性というブラックホールから脱出したということになる。かつてベトナム帰還兵がエドワード『シザーハンズ』として再生し、朝鮮戦争からの帰還兵だったディック・ホワイトマンがドン・ドレイパーになりおおせた『マッドメン』のように。戦地から戻ってきたのは本当は誰だったのか。失ったのは顔の半分というのが哲学的には少しややこしいところだけれど、なんとかして『犬神家の一族』のスケキヨに観せたい作品である。

(予告編動画)
映画『天国でまた会おう』予告編

James Blake - ele-king

 きみはもう聴いたか? 去る1月中旬、唐突に新作をリリースし一気に賛否両論を巻き起こしたジェイムス・ブレイクだけれど、このたびその新作『Assume Form』の日本盤が発売される運びとなった。いや、これは素直に喜ばしいニュースでしょう。なぜって、ボーナス・トラックはもちろん、歌詞対訳も封入されるんだから!
 もともとダブステップのシーンから頭角を現した彼は、大胆に歌へと舵を切り大きな成功をおさめた後も積極的にアンダーグラウンドとの接点を保ってきた。たとえば一昨年はジェイ・Zやケンドリック・ラマーをプロデュースする一方で盟友マウント・キンビーと共作したり、自身の新曲もドロップした昨年はOPNの問題作『Age Of』に貢献する一方でトラヴィス・スコットの話題作『Astroworld』に参加したりと、メインストリームとアンダーグラウンドのあいだに橋を架けるような活動を続けている。そのトラヴィス・スコットとマウント・キンビーが同居する今回の新作も、そのような往来の賜物と言えるだろう。
 ではそのニュー・アルバムではいったいどんなことが歌われているのか? 昨年は歌詞にかんするツイートも話題になった彼だけに、現在の彼がどのような言葉を紡いでいるのかは大いに気になるところである。日本盤の発売は2月27日。

“形式”を凌駕する“音”の未来形──。
James Blake New album “Assume Form”

ジェイムス・ブレイク『アシューム・フォーム』
2019.02.27発売
UICP-1192 ¥2,700 (税込)
【日本盤ボーナス・トラック2曲収録】

深遠なるエレクトロ・サウンドで世界の頂点に立つ
現代音楽界の至宝、ジェイムス・ブレイク。
意欲的なゲストを迎え新境地へ到達した
孤高の4thアルバム。

2011年の1stアルバム『ジェイムス・ブレイク』で衝撃のデビューを飾り、2013年の2nd『オーヴァーグロウン』で第56回グラミー賞(2014年)の最優秀新人賞にノミネートされるなど、ジャンルを超越した深遠なるエレクトロ・サウンドで全世界を席巻したジェイムス・ブレイク。現代音楽界における孤高の天才とも称される彼が、2016年の3rd『ザ・カラー・イン・エニシング』以来約3年ぶりとなる待望の4thアルバム『アシューム・フォーム』を1/17にリリースしました。トラヴィス・スコット、メトロ・ブーミン、アンドレ3000といった今まで以上に意欲的なゲストを迎えたこの作品、ネット上では“早くも2019年の最重要作品が登場した!”という声も聞かれるなど、さらに進化した独自の音世界が絶賛されている。日本盤CDは、2017年以降にデジタル・リリースされた2曲のシングル「ヴィンセント」「イフ・ザ・カー・ビサイド・ユー・ムーヴス・アヘッド」をボーナス・トラックとして世界初CD収録したファンには嬉しい内容で2月27日にリリース。この2月から3月にかけては全米ツアー、4月にはロンドンやマンチェスターでの公演が発表されているジェイムス・ブレイク、2016年以来の来日にも期待が高まります!

【豪華ゲスト参加】
●トラヴィス・スコット ●アンドレ3000 ●メトロ・ブーミン 他

■ALBUM
ジェイムス・ブレイク『アシューム・フォーム』
James Blake / Assume Form
2019.02.27発売

UICP-1192 ¥2,700 (税込)
【日本盤ボーナス・トラック2曲収録】
配信のみでリリースされたシングル2曲を世界初CD収録!
「イフ・ザ・カー・ビサイド・ユー・ムーヴス・アヘッド」(2018年)
「ヴィンセント」(2017年/ドン・マクリーンのカヴァー)

【収録曲】
01. Assume Form
  アシューム・フォーム
02. Mile High feat. Metro Boomin, Travis Scott
  マイル・ハイ feat. メトロ・ブーミン、トラヴィス・スコット 【リード曲】
03. Tell Them feat. Metro Boomin, Moses Sumney
  テル・ゼム feat. メトロ・ブーミン、モーゼス・サムニー
04. Into The Red
  イントゥ・ザ・レッド
05. Barefoot In The Park feat. Rosalía
  ベアフット・イン・ザ・パーク feat. ロザリア
06. Can't Believe The Way We Flow
  キャント・ビリーヴ・ザ・ウェイ・ウィ・フロー
07. Are You In Love?
  アー・ユー・イン・ラヴ?
08. Where's The Catch? feat. Andre 3000
  ホエアズ・ザ・キャッチ? feat. アンドレ3000
09. I'll Come Too
  アイル・カム・トゥー
10. Power On
  パワー・オン
11. Don't Miss It
  ドント・ミス・イット
12. Lullaby For My Insomniac
  ララバイ・フォー・マイ・インソムニアック
13. Vincent*
  ヴィンセント*
14. If The Car Beside You Moves Ahead*
  イフ・ザ・カー・ビサイド・ユー・ムーヴス・アヘッド*
*: Bonus Tracks for Japan Only (日本盤ボーナス・トラック)


■バイオグラフィー
James Blake (ジェイムス・ブレイク)
2011年の1stアルバム『ジェイムス・ブレイク』で衝撃のデビューを飾り、2013年の2nd『オーヴァーグロウン』で第56回グラミー賞(2014年)の最優秀新人賞にノミネートされるなど、ジャンルを超越した深遠なるエレクトロ・サウンドで全世界を席巻したジェイムス・ブレイク。現代音楽界における孤高の天才が2016年の3rd『ザ・カラー・イン・エニシング』以来3年ぶりに発表した待望の新作は、意欲的なゲストを迎えた2019年の最重要作品と呼び声高い作品である。

■LINKS
◎日本公式ページ 
https://www.universal-music.co.jp/james-blake/
◎海外公式ページ 
https://www.jamesblakemusic.com/
◎海外公式instagram
https://www.instagram.com/jamesblake/
◎海外公式twitter
https://twitter.com/jamesblake/
◎海外公式Facebook
https://www.facebook.com/jamesblakemusic/
◎海外公式YouTube
https://www.youtube.com/user/jamesblakeproduction/

A Man Called Adam - ele-king

 90年代初頭のアシッド・ジャズ期における粋な1枚に、ア・マン・コールド・アダム(AMCA)の『The Apple』(1991)というアルバムがある。サリー・ロジャーズとスティーヴ・ジョーンズのふたりを中心に、レフトフィールドのポール・デイリーなんかも参加したこのプロジェクトは、エブリシング・バット・ザ・ガールやウィークエンドのような品の良い折衷主義が売りで、ジャズとハウス、ポップスを混ぜながらも玄人受けもした。
 それからAMCAは、シングルを中心に作品を発表し続けているが、オリジナル・アルバムに関しては1998年に1枚のアルバムを出したきりだった。ここ数年サリーはリーズの音楽大学で教師として、スティーヴは音楽デザイナーとして大英博物館や英国文化協会などで働いたりで、ともに忙しくしていたようだが、ふたりがAMCAのことを忘れたわけではなかった。
 AMCAはこの3月にアルバムとしてはおよそ30年ぶりの新作を発表する。『Farmarama』というタイトルで、彼ららしい品のある折衷主義が聴ける。ジャズ、ハウス、ディスコ、ダブ、ポップス、そしてAORっぽさもある。今宵は、大人が奏でる極上のメロウネスなんていかがでしょう?


A Man Called Adam
Farmarama

other

https://www.amancalledadam.com/
 

The Specials - ele-king

 偶然だったとしても素晴らしい。2017年、バーミンガムにおけるイギリスの極右団体への抗議の現場を報じたガーディアンのひとコマには、あるイスラム系の女性の姿が写っていた。当時20才だったサフィヤ・カーンの着ていたデニムジャケットの下には、「THE SPECIALS」と描かれたのTシャツが覗いている。さっそくザ・スペシャルズは彼女をライヴに招待した。そして、およそ40年振りのアルバムのなかの1曲でMCをまかせることにした。大役である。なぜなら、彼女が任せられたのはプリンス・バスターのいにしえのヒット曲、“10 Commandmentsl”をリライトすることだった。バスターは、ルードボーイ音楽の王様にして2トーンにとっての英雄、ザ・スペシャルズにとっての巨大な影響だ。が、しかし、“10 Commandmentsl”には露骨な性差別が歌われていた。ザ・スペシャルズは、若き勇敢なフェミニストを起用して、名曲の言葉を書きかえるという大胆なアイデアに挑んだのだった(プリンス・バスターはイスラム教徒でもあるので、イスラム系の若い女性がそれを改稿するというのは、二重の反転がある)。
 ザ・スペシャルズ、さすがである。

 いまさらぼくと同世代のリスナーにザ・スペシャルズの偉大さを説くのは釈迦に説法なので、ここではリアルタイムでは知らない世代に向けて書こう。
 そもそもUKのパンクおよびポストパンクの多くがいまもなお参照点である理由は、彼ら/彼女らがサッチャリズム(新自由主義)に対する若者たちの最初の抵抗だったからだ。それゆえメッセージの多くは現在でも有効だし、音楽性に関していえば、そのメッセージを裏付けるように、彼ら/彼女らのほとんどは妥協なきオルタナティヴだった。
 ザ・スペシャルズは、70年代末〜80年代初頭のポストパンク期におけるスカ・リヴァイヴァルを代表するバンドだった。スキンズが好んだジャマイカのスカを音楽のモチーフにした彼らは、自らも、そしてオーディエンスも人種を混合させ、スキンズとパンクとモッズをいっしょに踊らせた。分断されたサブカルチャーを混ぜ合わせたこと、これがザ・スペシャルズの功績のひとつだ。もうひとつの功績は、新自由主義時代における若者文化の虚無感を実直に綴ったことだった。
 それは1980年のセカンド・アルバム『モア・スペシャルズ』であらわになる。スタジオでの多重録音を駆使したそのアルバムは、ご機嫌なスカを求めていたファンの期待を裏切るかのように、日々の生活における暗い心情が表現されている。それが1981年の傑作12インチ「ゴーストタウン」へと発展して、解散後はまったく楽しくない楽しい男の子3人(ファン・ボーイ・スリー=FB3)へと続いた。

 スカはアッパーでのりのりの音楽だと思われていたし、多くの若者にポークパイハットを被らせたザ・スペシャルズはファッション・リーダー的な存在でもあった。が、ザ・スペシャルズにはのちのマッシヴ・アタックと連なるようなメランコリーがあったし、自己矛盾かもしれないがファッション文化を空虚なものだと見なしていた。『モア・スペシャルズ』の“Do Nothing”(なんもやらない)という曲は、ファッションばかりに金を投じる若者の空しさをこれでもかと表現している。個人的にもっとも好きな曲のひとつ、“I Can't Stand It”(がまんできない)では、私生活から職場にいたる生活のすべてにうんざりしている若者の気持ちが描かれているし、「誰もが着飾ったチンパンジー」と歌う“International Jet Set”はエリート層への嫌悪が歌われている。
 いまの若い人には信じられない話かもしれないが、お洒落というのはある時期までは、お金のない抵抗者たちほど拘っていたものだった。パンクが服を重視したのもそういう事情があったからだ。服は、社会が強制するアイデンティティとは別の、個人が主張するアイデンティティを表現することも可能だからだ(家や車は買えなくても服は買えるからね、と昨年ドン・レッツは言っていた)。それゆえに、パンク〜ポストパンクはなるべくオルタナティヴな服装を選んだ。が、1980年のザ・スペシャルズによれば、ファッションはすでにエリート文化の一部になっていた。そう、このバンドは、オーウェン・ジョーンズの“エスタブリッシュメント”というあらたな上層階級の出現を40年も前に察知し、簡潔な言葉で皮肉っていたことになる。
 「ゴーストタウン」に関していえば、セックス・ピストルズの「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」に次いで重要なシングルだという声もある。全英1位になったそのヒット曲は、この社会が生き地獄であることを歌っているのだから──。

 新作のタイトルは『アンコール』で、これは本作が『モア・スペシャルズ』からの続きだということを意味している。メンバーは、リンヴァル・ゴールディング(g)、テリー・ホール(vo)、ホーレス・パンター(b)というオリジナルのフロントマンが揃っている。
 『アンコール』は、ジ・イコールズのカヴァーからはじまる。
 ジ・イコールズは60年代に結成されたUKのロック・バンドで、当時としては珍しい白黒混合のバンドだった。のちにレゲエ・アーティストとして有名になるエディ・グラントが在籍していたことで知られているし、ザ・クラッシュは『サンディニスタ!』において彼らの“ポリス・オン・マイ・バックをカヴァーしているわけだが、ザ・スペシャルズが選んだのは、1970年のヒット曲“Black Skin Blue Eyed Boys”だ。この曲に続く2曲目は、今作のためのオリジナル曲で“B.L.M.”……これはもうブラック・ライヴズ・マターということで間違いないだろうし、この2曲の並びをみても本作でのザ・スペシャルズのメッセージのひとつは見えてくる。

 しかしながら、ぼくのような古いファンはノスタルジーを禁じ得ないだろう。3曲目の“Vote For Me”の曲調およびピアノのフレーズは、“ゴーストタウン”を思い出さないわけにいかない。FB3のカヴァー曲もある。ラテン調の“The Lunatics”(狂人たち)は、もともとは“The Lunatics Have Taken Over The Asylum”(狂人たちが弱者の場さえ支配した)という長い曲名で、FB3のファースト・アルバムに収録されていた。FB3には、“Our Lips Are Sealed”(ぼくらの口は封じられている)という最高のキラーチューンがあるのだけれど、本作で演っているのはへヴィーな曲である。
 気怠いラテンのリズムは、今作のためのオリジナル曲のひとつ、インターネット社会の憂鬱を歌詞にしているという“Breaking Point”でも展開されているが、その曲が終わるとルードボーイ・クラシックのザ・ヴァレンタインズ“Blam Blam Fever”(別名“ガンズ・フィーヴァー”)のカヴァーが待っている。そして、銃について風刺したその曲が終わると、冒頭で紹介した“10 Commandmentsl”がはじまる。このあたりは『アンコール』におけるクライマックスだ。

 8曲目は、“Embarrassed By You”(あんたのおかげで困窮している)という、いかにもザ・スペシャルズらしい曲名のレゲエ・ナンバー。難解な言葉や文学的な言い回しはしない、シンプルで直球な言葉遣いは彼らの魅力のひとつで、それは本作でも変わっていない。そして、座ってでしか音楽を聴いていない連中を嘲るかのように、踊れない曲はつまらない(労働者階級ほど踊る音楽好きである)というアプローチも一貫している。しかしながら、踊れる曲であっても楽しげである必要はないということを実践したのもザ・スペシャルズだった。“The Life And Times (Of A Man Called Depression)”(うつ病と呼ばれた男の人生と時代)は、曲名が言うように物憂げな曲で、UKガラージのリズムが取り込まれている。『アンコール』の最後は、“We Sell Hope”(我々は希望を売る)というアイロニカルな題名の曲で締められる。このなんとも後味の悪い終わり方がいい(笑)。
 そもそもパンクたるもの、アンコールなんてものには応じないのが流儀だった。だからこの『アンコール』には、バンド内でもやや自嘲的な思いがあったのかもしれない。それでもザ・スペシャルズは、その21世紀版としてよくやったと思う。40年前にはできなかったことをやってのけたのだから。ちなみにもう1枚のCDには、ファン・サーヴィスというか、お約束というか、この手のベテラン再結成にありがちなライヴ演奏(2014年、2016年)が収められている。これは、ま、ご愛敬ということで。


追記:ぼくは知らなかったんだけれど、ザ・スペシャルズはテリー・ホール抜きの(もちろんジェリー・ダマーズ抜きの)メンバーで、1996年から2001年のあいだに4枚のアルバムを出している。この時期のオリジナルのメンバーは、リンヴァル・ゴールディングとネヴィル・ステイプルズのふたり(ともに元FB3)。で、これが意外と良かったりするから困る。ザ・クラッシュの“誰かが殺された”や“プレッシャー・ドロップ”のカヴァーなんてかなり良い。主役抜きのバンドが名前だけで続ける──よくある話だが、ザ・スペシャルズのおそろしいところは、それさえも素晴らしいという点だ。テリー・ホールの陰鬱やジェリー・ダマーズの作り込みはない。しかし、ゴールディング&ステイプルズはバンドの魂を保持していたと。ちゃんと聴いておけばよかったな。

 昨年12月、水道事業を民営化する伏線として改正水道法が成立した。いくつかのニュースサイトを見ると、大阪で地震が発生し、21万人以上が水道の被害を受けたことを理由に(というか逆手にとって)、「水道管の老朽化」問題を振りかざし、自・公、日本維新の会、希望の党など大多数の賛成によって可決されたという。ナオミ・クラインが『ショック・ドクトリン』で解き明かした、災害便乗型の新自由主義をぼくたちは目の当たりにしたわけである。

 水は……水だけを飲んでいれば良いという言葉があるように、水は人間が生きてくうえでの命綱だ。それを民営化するというのは、経済状況によっては水も飲めないひとが出てくる可能性があるということだ。こんな重要で恐ろしいことがわずか8時間の審議で可決されてしまうのが、我が国の現状だ。しかもだ……、水道事業の民営化こそサッチャリズムであり、この政策がはじまって数十年後の現在、結局のところ失敗だったという事例はすでにある。当のイギリスにだって自治体によっては倒産したという話もあり、再公営化の動きさえあるという、にも関わらず……なのだ。(日本において新自由主義が本格的にはじまったのは小泉政権から。つまり、英米よりおよそ20年遅れではじまっている)

 そういう意味でオーウェン・ジョーンズの『エスタブリッシュメント』の翻訳刊行は、日本の近未来を案ずるうえでの貴重な資料になる。新自由主義先進国のイギリスで起きたこと、そのプロセスと現状を知ること。まあしかし……もはやそんな悠長なことを言ってられないんだよというのが、日本で生活するひとたちの本音なんだろう。

 というのもつい先日、厚生労働相は9カ月にわたる実質賃金マイナスを認めた。サラリーマンの平均収入は相対的にみてアジアでも最低レヴェルじゃないのかなどと言われはじめて久しいけれど、いよいよ現実味を帯びてきているというわけだ。ちまたには日本でサラリーマンやるより香港で家政婦したほうが稼げるんじゃないかという説もあり、こと文化産業に携わっている身としては暗澹たる気持ちにならざるえない(円安政策がどれほどレコード好きにとって弊害かという話はおいておいて)。与党はしかしアベノミクスの非を認めないし、またいままでのようにだらだらと世間の関心が薄れるまで時間だけが過ぎていくんだろうなぁ。……とまれ。『エスタブリッシュメント』からは、いま読み方によっては未来に繋がるヒントが導き出せるんじゃないかとも思う。


 『エスタブリッシュメント』は、早い話、新自由主義に乗っかって、おいしい思いをしている連中のことを定義し直している。エスタブリッシュメントとは、支配的な経済エリートとも言えるだろうし、格差社会の上層部と言えるだろうし、そういう連中は、有能で高額な会計士を雇うことで巧妙な税金逃れをしながら、政治のみならずマスメディアも操作し世論すらコントロールできる立場を築いている。(ここでザ・クラッシュの“コンプリート・コントロール”でも聴いて気合いを入れよう)

 よし、気合いが入った。エスタブリッシュメントとは、ある意味リベラルでさえある。LGBTにだってアプローチする。しかもエスタブリッシュメントには(金融が良い例であるように)お互いが助け合う社会主義がある。そしてエスタブリッシュメントは、エスタブリッシュメントではないひとたちを容赦なく蹴落としていく。

 それはサッチャーが右翼というレトリックを使ってやってのけた、その後の世界の方向性を決定づける経済実験の行き着く先を象徴している。『エスタブリッシュメント』にはそのことが詳述されている。あまりにも詳細に書かれているので、イギリス政治マニアでもない限りすらすらと読める代物ではないけれど、ただし、左派も右派も呑み込んでいく新自由主義の恐ろしさを知るうえでは入魂のレポートであり、たんに自分の教養を肥やすためだけではないヒントもあるように読める。

 ぼくがもっとも興味深く読めたのは、警察の話である。これは新鮮な驚きだった。ジョーンズによれば、第一次大戦後のイギリスの警察は、自分らの労働条件に不満を抱き、労働党を支持し、政府に楯突く存在だったそうで、しかしその警察を政府への反対勢力を取り締まるための兵器に仕立て上げたのもサッチャーだった。デモがあればデモ隊を鎮圧する役目を引き受けるあの警察とは、サッチャーが作り上げたもののひとつだったのだ。サッチャーは公務員や労働者階級にむごたらしい仕打ちをしたが、警察には砂糖を与え、そして人員を増やし、みごとに手懐かせた。それは、警察が新自由主義を守るうえで重要な役割を担っていることを見越しての政策だった。

 しかしいまとなっては……たしかに、こんな文章を書いている人間は奇人であり、変わり者であり、アホであり、スマートではないマイナーな人間だと思わせてしまう世の中にしてしまえば、まあ、監視装置や対抗者撃退のために金をかけなくても済む。スリーフォード・モッズなんかのいうことはスルーして、口当たりのいい言葉をふるまうセレブの一挙手一投足に注目せよと。いや、こんなところまでジョーンズが言っているわけじゃないんだけれど。

 だが、しかし、新自由主義の勝者であるエスタブリッシュメントがメディアさえも我がモノにしたとき、もはや警察の力はかつてほど重要ではなくなった。もともと公的資金を福祉や公共事業につぎ込むくらいなら儲かる話に投資しようというのが新自由主義なので、さほど重要ではなくなった警察に対して冷淡になるのは必然といえば必然である。かくして人員削減がはじまり、民営化がはじまり、かつては激突していた労働者たちと同じ運命を彼らもたどるにいたり、そして2012年には警察のデモがはじまった。数年前までデモを包囲していた人間がデモをはじめたというわけだ。


 だれもがきつい思いをしているってことだ。右左関係なく、下の方にいる人間はきつい、『エスタブリッシュメント』を読みながらぼくが思ったのはそういうこと。ぼくはいま怒りのこもった初期のURが聴きたい。レゲエが聴きたい。パンクが聴きたい。スペシャルズが聴きたい。CRASSが聴きたい。底辺にいる人間の声が聴きたい。『エスタブリッシュメント』を読んでしまっては、そうするしかないだろう。マーク・フィッシャーの『資本主義リアリズム』も同じようにイギリスにおいての新自由主義の行き着いた現在を描いているが、フィッシャーが思想ないしは文化批評ならこちらは直球の政治ジャーナリズムだ。

 で、結局のところ世界はエスタブリッシュメントにとって好都合にしかならないように動いていると。そうかもしれないが、歪みは見え軋みも聞こえはじめている。こうした流れをぼくたちなりに表現するためにも、たったいま、『別冊エレキング』臨時増刊号として「黄色いベスト運動」に関する一冊を作っている。3月末までには出る予定です。お楽しみに!

interview with Simon Halliday - ele-king

 メンバーのひとりは一時期スージー&ザ・バンシーズに関わり、アダム・アンド・ジ・アンツやサイキックTVへと合流し、その後マスやザ・ウルフガング・プレス、そしてレネゲイド・サウンドウェイヴにも発展する1980年のRema-Remaをはじめ、初期バウハウス、レーベル創始者が率いるディス・モータル・コイル、デッド・カン・ダンス、コクトー・ツインズ……同じ匂いを発しながらも際だった個が揃っていたオリジナル〈4AD〉に強固なレーベル・イメージがあったことは、当時を知らずとも想像がつくだろう。それはポストパンク期におけるゴシックの代表格でありインダストリアルであり、ペイガニズムであり、モノトーンの美学であり、耽美主義であり、ないしはノイズやエクスペリメンタル・ロックなどにカテゴライズされる、笑顔や太陽がもっとも似つかわしくない音楽だった。(〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉や〈モダン・ラヴ〉のようなレーベルは、オリジナル〈4AD〉の現代解釈ともいえる)
 UKのインディ・ロック全盛時代のはじまりに誕生した〈4AD〉は、〈ファクトリー〉や〈ラフトレード〉や〈ミュート〉のように、日本においてもレーベル自体のファンが多くいたし、黒いシャツに黒いロングコートを着て前髪が長ければ、それはまあほぼ〈4AD〉のファンでしょうという時代があった。いまはもうみんないい歳になっているけれど。
 オリジナル〈4AD〉の創始者は、アイヴォ・ワッツ=ラッセルというカリスマ性のある人物で、ディス・モータル・コイルなるプロジェクトをオーガナイズして音楽作品も出していたほどのレーベルの顔役だった。ワッツ=ラッセルはしかし、90年代末にレーベルを去っている。それでも〈4AD〉は、しばらくのあいだワッツ=ラッセル時代の〈4AD〉イメージから脱却できずいたようだが、2008年にもともとは〈WARP〉のスタッフだったサイモン・ハリデイが社長に就任すると、レーベルはようやく古い衣を脱ぎ捨てて、新生〈4AD〉が始動した。
 まあ、それでもその残照はディアハンターの『Halcyon Digest』(2010)には確実にあったと思うし……、グライムス『Visions』(2012)のアートワークも〈4AD〉っぽいよなぁと思ってしまうのは年老いたモノの悪いクセだろう。でもね、UKガラージから来たゾンビーの『With Love』(2013)なんていかにも〈4AD〉だった。が、そのいっぽうで、チューン・ヤーズはパワフルで温かい音楽なわけだし、オルダス・ハーディングはエモーショナルだし、U.S.ガールズはポップだし、グライムスの音楽はエレクトロニックでキャッチーだ。アーティストは世代交代したし、新生〈4AD〉がいま活気づいているのはここ数年のカタログを見れば一目瞭然なのである。
 去る1月後半にレーベルのショーケース・ライヴのために来日した新生〈4AD〉の社長、サイモン・ハリデイに話を訊いた。

本当は〈ワープ〉にいるときにディアハンターと契約したかったんだけど、やらせてもらえなかったんです。彼らと仕事をしはじめる何年か前からずっと様子を伺っていました。そのあと〈ワープ〉を辞職して〈4AD〉にいったタイミングで彼らと契約をしました。

1992年から長いあいだ〈ワープ〉に勤めていたんですよね?

サイモン:そうです。10〜11年ほど〈ワープ〉で働きました。なので、私はふたつの良いレーベルで働いたことになります(笑)。

〈ワープ〉で働きはじめたきっかけは?

サイモン:レーベル・マネージャーと友人であったということもあって、〈ワープ〉で働きました。で、90年代ずっと〈ワープ〉にいたんですけど、じょじょにアメリカのマーケットでもいい状況になっていったんですね。それで私がアメリカに行くことになって、で、フライング・ロータス、バトルズ、グリズリー・ベアなどといったアメリカのアーティストと契約を結んだんですよ。

へー、なるほど。どうして音楽業界で働きたいと思ったのですか?

サイモン:仕事という感じがしなかったんです。趣味という感じ。働いている感じがしないので、趣味を仕事にするほうがやっぱりいいなと。もうひとつの趣味がフットボールで、それを仕事にすることはできないけど、音楽ならできるなと思いました(笑)。当時ナイトクラブで踊ってばかりいて、もし音楽業界で働けば仕事としてナイトクラブにも行けるなと思いました(笑)。だから音楽を仕事にすることは自然でした。

〈ワープ〉に初期から携わっていたということは小さな地方のレーベルがどんどん大きくなっていく、成長していく過程をまさに現場で見ていたということで、これはあなたにとって大きな経験だと思います。いま〈4AD〉で働くうえでそのときの経験はどのように生かされていますか?

サイモン:〈ワープ〉での経験と〈4AD〉とはまた全然違いますね。なぜかというと、〈4AD〉は自分が入ったときすでにビックなレーベルだったので、成長というよりは、維持をするということのほうが大事だったんです。〈4AD〉も下降気味のときはありましたが、自分が〈4AD〉に入ったときは良いときだったのですごくラッキーでした。なので、ボン・イヴェールディアハンターと契約したときすぐに成功することができたんです。自分にとってやりやすい環境でした。簡単に成功することができたんです。

すこし話が前後しますが、長年携わってきた〈ワープ〉をなぜやめて、なぜ〈4AD〉に入ることになったのですか?

サイモン:〈ワープ〉のオーナーと自分とのあいだに少し意見の食い違いがでてきて、彼が契約したいバンドと自分が契約したいアーティストが少し違ってきたんです。だからそのときに〈ワープ〉を去ろうと思いました。ボスと対立するということはよくあることですよね。他にもいろいろ道があるわけですが、その他のことに挑戦することで成長もできると思うんです。自分はそれによって成長したと思います。他の誰かがノーといっても、自分の決断に100%の責任を持ちたい。チームで働くことにおいてとても大事なのは、自分はチームの二番手ではなくて、チームを導く存在になりたいということだと思っています。

〈4AD〉に移ったのは2008年ですか?

サイモン:2007年です。

ディアハンターと契約したのもあなたですか?

サイモン:本当は〈ワープ〉にいるときにディアハンターと契約したかったんだけど、やらせてもらえなかったんです。彼らと仕事をしはじめる何年も前からずっと様子を伺っていました。そのあと〈ワープ〉を辞職して、自分が〈4AD〉にいったタイミングで彼らと契約をしました。

たしかにあなたが〈4AD〉に携わってから、〈4AD〉のカタログの間口がザ・ナショナルや、チューン・ヤーズなどなど、すごく広がったし、活気づいたと思います。オリジナルの〈4AD〉はゴシックのイメージがあまりにも強いレーベルでしたが、〈4AD〉の更新させるというのはあなたにとって大変なことでしたか?

サイモン:そんなことないよ。たしかに〈4AD〉は80年代のイメ―ジがすごく強くてアイコニックだったと思います。でも、〈4AD〉はコクトー・ツインズだけじゃなく、ピクシーズだっているんです。とはいえ、たしかに80年代の〈4AD〉はコクトー・ツインズ的なイメージのほうが強かったと思います。しかし90年代に入ってからこのイメージは消えました。そもそも音楽はその10年で大きく変化しましたから。そして〈4AD〉はその時代の大きな変化を受け入れなかったからだと私は思っています。
レーベルはビジネスと音楽の両方のバランスをとることが大事です。これはとても難しいことです。私が〈4AD〉に入った10年前、〈4AD〉は80年代のアイコニックではなく、多様性のあるモダンな若者のレーベルになろうとしていました。それは私にとってラッキーなことでした。もしそのときの〈4AD〉が絶頂期だったらそうはいかなかっただろうし、維持し続けるのは難しかったと思います。低迷期だったからこそ変化させることができたと思っています。
それと、〈4AD〉の人たちも良い音楽のテイストをもっているんです。みんな趣味が良い。だから私たちは良い音楽を取り上げて、成長することができたと思います。とても素晴らしいことでしたね。私が決断をしたとき、みんなが賛成してくれる。素晴らしいことです。チームで決断をするというのはすごく難しい、しかし、チームみんなで決めるべきことというのはたしかにあるんです。それにはふたりの人がいることが必要です。たとえば実験し挑戦する人と決断する人、チェックする人と決断する人みたいな感じです。チェックがうまくいくと、バランスが良くなって仕事が良くなる。ひとりで決断するほうが良い結果をだせるという人もいるけれど、私はチームでベストなアイデアをピッキングするほうが良い結果が生まれると思っています。〈ワープ〉では私とスティーブが一緒に決断をしようとするときは、お互いの意見を言い合っていました。これと同じことが〈4AD〉でもできているんです。

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〈4AD〉の場合は、ビッグにしてくれるものやビックにしようとしているものを世界中に探している。だからあなたのおっしゃるとおり。アンダーグラウンド・ミュージックを幅広いオーディエンスに届けようとしている。でも完全にポップにはならない。だからビック・インディペンデント・ミュージックと呼んでいるんです。ビック・インディ(笑)。

〈ワープ〉はエレクトロニック・ミュージックとクラブ・カルチャーがバックグラウンドにあってアイデンティティがすごくわかりやすいレーベルですよね。オリジナルの〈4AD〉には確固たるアイデンティティがあったと思います。では、現在の〈4AD〉にとってのアイデンティティというものを、あなたはどのようにお考えでしょうか?

サイモン:先ほども言いましたが、〈4AD〉には80年代にはゴシックのイメージがありましよね。〈ワープ〉には、エレクトロニックでもっと賢い音楽というイメージがあると思います。シンプルなハウスではなくて、複雑で知的なダンス・ミュージック。家で聴けるエレクトロという感じです。それに対して、いまの〈4AD〉にはアイデンティティというか、なにか固有のイメージというものはないかもしれません。多様性があって幅が広すぎるんです。〈4AD〉には、グライムスピュリティ・リングもいますから。
いまの時代、音楽ファンは音楽を幅広く聴くようになっています。とくに若い人たち、10代の人たちはプレイリストでポップ、ヒップホップ、R&B、ギター、いろんな音楽をどこでも聴いているわけですよ。だから多くの契約をすることは多様性を持つひとつの方法であり、敢えてイメージを持たないことにつながるんです。ひとつの音楽にイメージを持つことは簡単だけど多様性をじつげんするのは難しいと思います。

ちょうど〈クランキー〉みたいなレーベルがやっていることと、メインストリームとの懸け橋みたいなポジションに〈4AD〉はいるのかなと思います。要するにアンダーグラウンドで、マニアックな音楽を作っている人たちのなかにもポテンシャルを持っている人たちがいて、それをもう少しポップフィードに近づけるということを意識されているんじゃないですか?

サイモン:そう、まさにおっしゃるとおりだと思います。ビック・インディだと自分では思っているんですけど。〈クランキー〉みたいなアンダーグラウンドのレーベルはもまったく素晴らしいですよね。ゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラーとか、スターズ・オブ・ザ・リッドとかディアハンターとか。ディアハンターももともとは〈クランキー〉なんですよ。あのレーベルは素晴らしいテイストを持っていると思います。

あとはティム・ヘッカーもそうですね。〈クランキー〉で出していて〈4AD〉からもリリースした。

サイモン:そうそう。〈クランキー〉は彼らの選択によってシンプルでスモールにやっています。〈4AD〉の場合は、ビッグにしてくれるものやビックにしようとしているものを世界中に探している。だからあなたのおっしゃるとおり。アンダーグラウンド・ミュージックを幅広いオーディエンスに届けようとしている。でも完全にポップにはならない。だからビック・インディペンデント・ミュージックと呼んでいるんです。ビック・インディ(笑)。

先ほどのあなたの話で、〈ワープ〉時代にアメリカ働かれていたとおっしゃっていましたが、やはりイギリスのインディ・シーンとアメリカのインディ・シーンとは違いますか?

サイモン:じつはあまり違いは感じていません。アメリカのインディもイギリスのインディも達成したい目標というものは同じです。文化や音楽が違えど、ドイツでもオーストラリアでも日本でもアメリカでもイギリスでもファンはみんな一緒なんです。良いテイストをもっていて、本当に音楽が好きで、音楽を聴きたいという。なので、あんまり違いは感じませんでした。
でもアメリカにオフィスをもっていたことで、アメリカのバンドというのがより心地良く、他国という感じがせずに契約できたということはすごくよかったですね。90年代に入ってからイギリスの音楽というのは、悪くなったというとあれですが、アンダーグラウンドが低迷していったと思います。オアシスもそうですが、スピリチュアライズドもだんだんポップになってしまった。ものすごくビックになってしまったんです。アンダーグラウンドというものが存在しなくなっていったと思います。しかしアメリカでは、同じ時期に30万枚とかどんなにレコードが売れたとしてもインディにいることができたんです。ポップのラジオでかからなくてもインディのちゃんとしたシーンというものがあって、アンダーグラウンドというものがすごく盛り上がっていたと思います。そのころのイギリス(のシー)はアメリカと違って迷っていたと思いますね。
とはいえ、やがてイギリスのアンダーグラウンドからはグライムなんかがでてきて、以来、変化していますよね。しかし最近では、アメリカのヒップホップがどんどん侵略してきて、若いひとたちはR&Bとかラッパーに憧れています。なので、今後アメリカとイギリスのアンダーグラウンド・シーンというものがどうなっていくのかを私も見守っていきたいと思っているんです。

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たとえば、チューン・ヤーズのときは、チューン・ヤーズを聴くまではどんな音楽か想像できなかったように。探し求めているようなオリジナリティというのは、たとえるなら頭のなかに浮かぶ電球玉のようなものだと思います。「ああ! 新しいね!」みたいなね。

いろいろやってますが、根幹には〈4AD〉はロックというか、ギター・ポップにこだわっているところもあるのかなという気もしますが、いかがでしょうか?

サイモン:それは違います。ただ自由に、ほとんどの場合アーティストを探すときは、オリジナリティを求めています。たとえば、チューン・ヤーズのときは、チューン・ヤーズを聴くまではどんな音楽か想像できなかったように。探し求めているようなオリジナリティというのは、たとえるなら頭のなかに浮かぶ電球玉のようなものだと思います。「ああ! 新しいね!」みたいなね。グライムスやピュリティ・リングもそうです。グライムスのデモは静かなギター調でした。サウンドはマッシヴ・アタックみただし、スピリチュアライズドみたいでもありましたね。

なるほど。オリジナルという点では、ゾンビーU.S. ガールズギャング・ギャング・ダンスもたしかにそうですねぇ。これからグライムス、ベイルートの新作がでて、今月はディアハンターがでたので、せっかくなのでそれぞれに関してあなたのコメントをください。

サイモン:ディアハンターの新しいアルバム『Why Hasn't Everything Already Disappeared?』は大好きです。ライヴ演奏もより良い新しいサウンドになっています。

あなたは彼らを最初に契約したと言いましたが、どこにいちばん惹かれたのですか?

サイモン:彼らのもっていたフィーリングです。ロック、サイケデリックのミクスチャー。彼らの音楽は、コクトー・ツインズとかスピリチュアライズドとか、自分が大好きなものを思いおこさせたんです。似ているサウンドではないのに、なぜかそれが混ざりあっているような気にさせる。

わかります。ディアハンターって、アメリカのバンドですが、UKインディっぽい感じがありますよね。UKの80年代のインディ・ロック・バンド、エコー&ザ・バニーメンみたいでもあります。

サイモン:私もその名前をだすべきでした(笑)! エコー&ザ・バニーメンは自分が若いときに大好きだったバンドでした。本当にそうですね。当時、ディアハンターが脚光を浴びたとき(※2008年ぐらい)、イギリスのバンドは、そういうサウンドを作っていませんでした。ディアハンターがそういうサウンドを作って、ブリティッシュ・バンドもふたたびそのような音を作るようになったんです。

おもしろいですよね。UKのバンドがかつてやっていたことをいまUSのバンドのほうが受け継いでいるような。

サイモン:アメリカとイギリスでしょっちゅうアイデアを交換しているようなことはあります。ハウスとテクノが良い例だと思いますね。86、87年はアメリアのシカゴとデトロイト、UKで、UKがハウスとテクノをやりだして、それがアメリカに戻ってそれぞれが変化しました。同じように、イギリスのバンドにとってもディアハンターは重要だったんです。

グライムスのアルバムに関してはどうですか?

サイモン:まだ完成していないんだけど、音楽的で、プログレッシヴで、曲が長いです(笑)いまのところ私が聴いた曲はあまりダンス的ではありませんでした。マッシヴ・アタックのセカンド・アルバムみたいな感じでしたね。8分から9分くらいのトラックで、スピリチュアライズドみたいな雰囲気もありました。ほかにハウスっぽい曲もありましたよ。とにかくバラエティーがありますね。彼女はやってくれるますよ(笑)!

どういう方向に行くのか、気になりますね。

サイモン:わからないですね。彼女でさえもわかっていない(笑)。

あとはベイルートもでましたよね。ベイルートも素晴らしいバンドです。

サイモン:シングルはすごく良い調子です。年齢を重ねるにつれて良いシングルの書き方というのがわかってきていると思います。あのシングルはみんながとても好きですね。

最後に〈4AD〉の野心というか、今後の目標としているものがあれば教えてください。

サイモン:目標は良い音楽をリリースし続けて、良いアルバムを作るということだけです。これからの10年はオリジナリティがあるレコードをリリースし続けて、ミュージシャンをより上の段階へと上げていくことです。チームとなって彼らを手助けし、音楽を取り上げ、音楽をよりビックにし、ミュージシャンをプロフェッショナルにする。音楽を作るだけで生活ができるようにです。
しかし、現実的な野心はいくつものオリジナリティがある素晴らしい音楽をリリースするだけ。「野心はそれだけ?」と思われてしまうかもだけど、そうなんです(笑)。純粋でありつづければ、すべてはどんどん良くなっていくと思います。良い音楽をリリースし続けていくこと、それがすべてです。いま自分たちが何をしているのかかわからなくても、数年後に振り返ったときには「ああ、よかったな」と思えるでしょう。

今晩(4ADナイト)DJをやりますね。どんな曲をかけるんですか?

サイモン:幅広い音楽をかけます。催眠的な音楽です。オウテカとか、コクトー・ツインズ、エイフェックス・ツイン、アリエル・ピンク、ジェイムズ・ブラウン……有名な曲ではない曲をかけます。シングルにはなっていない曲です。あとはハウスをいくつか……たとえばムーディーマンとか。ムーディーマンはいいですよね。大好きなんです。ただし私は、あんまり良いDJじゃないですけど……。でもテイストだけはいいので(笑)。

Bibio - ele-king

 2017年の暮れに美しいアンビエント・アルバムを送り出し、昨年はその続編となるEPを届けてくれたビビオが、突如新曲を発表しました。再生ボタンを押すと……あのギターリフです。ビビオです。と思いきやヴァイオリン。なんでも昨年弾きはじめたんだとか。アルバムごとにいろんなスタイルにチャレンジする彼のことだから、また何か考えていることがあるのかもしれませんね。そして前作とは関係のない新曲が公開されたってことは、ニュー・アルバムがリリースされる日も近い? 続報を待ちましょう。

Bibio

聴く者の記憶や、心に浮かぶ情景に寄り添う心温まるサウンドで支持を集めるビビオが新曲“Curls”をリリース!

『A Mineral Love』(2016年)ではグラミー賞アーティストのゴティエと共演をし、サカナクションの山口一郎やボーズ・オブ・カナダなどを筆頭に、国内外のアーティストから賞賛を集めるビビオ。聴く者の記憶や、心に浮かぶ情景に寄り添う心温まるサウンドで、幅広い音楽ファンから支持を集める彼が、新曲“Curls”を突如リリース!

https://www.youtube.com/watch?v=Vx9_FIIH-UM

僕の多くの歌やインストゥルメンタルの楽曲と同様に、この曲はギターのリフから始まる。そこから、去年始めたマンダリンとヴァイオリンで演奏した主旋律に繋がる。歌詞については、一見すると関係なく見えるけど、実は結びついている人生の小さな物事──異なる記憶の断片やこの目で観測したこと、そして空想──がインスピレーションになっている。ここ数年のことを振り返ってみると、自分にとって大切なもののいくつかは、日常の小さな観察や体験だと気づいた。木に染み付いた雨の匂いだったり、外から部屋に入ってきた人の髪の毛が持ち込んでくる新鮮な空気だったり。そういう瞬間は喜びに満ちているし、とても意義深いものだったりもする。人生がどんなものかってことや、生きることの意味、もしくは意味すら超えた何かだってことに気づかせてくれる。それはまた、歌詞を乗せた曲よりも、言葉を持たない曲の方が多くを語りかけてくれることに気づかせてくれる。そういう日々の瞬間が、生まれ持った資質や、野心的に物事を達成することよりも重要だったり、記憶に残ることもある。それは太古まで遡っても存在することだし、個人の心の中の世界を超えたものなんだ。こういった意識っていうのは恐らく何千年も昔から体験されてきたことなんだろうと思う。新鮮な空気以外にも世の中には素晴らしいものがたくさんあって、そういった存在を目の当たりにしたとき、人は幸せを感じることができる。だからこそ、日々の小さな物事が自分の心に響くし、それらを曲の中で歌うことは意味のあることなんだ。 ──スティーヴン・ウィルキンソン(Bibio)

新曲“Curls”は各種サービスにて配信中!

label: WARP RECORDS
artist: Bibio
title: Curls

iTunes: https://apple.co/2SvA9mS
Apple Music: https://apple.co/2DY6AlR
Spotify: https://spoti.fi/2WSHUTo

お詫びと訂正 - ele-king

 2月5日にアップした、沢井陽子のコラム「Random Access N.Y./vol.110 史上最悪のスーパーボウル騒動」にて、複数の読者からいくつかの間違いの指摘がありました。
 事実誤認と誤解を招く表現があったことをここに深くお詫び申し上げます。
 筆者に確認したうえで、以下の3点について訂正させていただきます。

①ハーフタイムのショウは伝統的にノーギャラなので、カーディBが膨大なギャラを蹴った、というのは何がソースか、という点。

 カーディーBの件は、筆者が「たくさんのお金を犠牲にしてショーをやる」という話を「ギャラを蹴る」というふうに読み間違えてしまったとのことでした。

“I got to sacrifice a lot of money to perform. But there’s a man who sacrificed his job for us, so we got to stand behind him.”
私は演奏するためにたくさんのお金を犠牲にしないといけない。でも、私たちのために、自分の仕事を犠牲にしている人もいるから彼(コリン・キャパニック)を支持するべき。

https://www.apnews.com/8b5d8a59de03402c948b1b0341cb8615

②トム・ブラディ選手がトランプ支持者という点(つながりはあるらしいが、公に支持を表明しているのか)

 公にはしていませんが、NYの筆者のまわりでは、支持者だ思っているひとは少なくないようです。トランプとは友だち(https://www.thedailybeast.com/inside-tom-brady-and-donald-trumps-14-year-bromance)なのでサポートする、という話らしいのですが。

Brady backed off a little when his wife clearly told him to, said that he didn’t actually have political opinions at all, that actually he was “a positive person,” and that Trump was just his friend he supported because he always supports his friends, even if he did think it would be cool if he won.
トム・ブラディの妻は「トムは政治的な意見はまったくなく、ポジティヴな人で、トランプは彼の友だちだったから、彼が勝ったら良いねと支持するの」と言う。

https://www.thedailybeast.com/tom-bradys-new-england-patriots-are-team-maga-whether-they-like-it-or-not?ref=scroll

③30年以上前からあるのに、「ビヨンセ以来スーパーボウルがアメリカでもっとも注目されるショウになった」という点

 こちらは筆者の個人的な見解です。なので、「ビヨンセ以来、私のなかではスーパーボウルはがアメリカでもっとも重要なショウになった」と表現すべきでした。

 以上です。記事のほうは、修正させていただいております。申し訳ございませんでした。

編集部・野田努

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