「S」と一致するもの

三田 戸川純が12年ぶりに舞台復帰した『グッド・デス・バイブレーション考』を観て来ました。「途中で音楽の道に逸れたけれど、元々は役者だから」と本人が何度も強調していたので、ある種の執念を感じる復帰だよね。東北大震災の後、演劇に人気が集まったということがあって、その時は平田オリザ・フォロワーがメインだったので、僕はあまり引き込まれなくて。その後、また違うタイプのコンセプチュアルな演劇を観に行ったぐらいで、自分ではもう演劇は観ないかなと思ってたんだけど、『グッド・デス・バイブレーション考』はしっかりとしたオーソドックスな内容で、映画でいうと『生きてるものはいないのか』や『シャニダールの花』といった近年の石井岳龍(石井聰亙)を思わせる近未来SFものだった。

水越 深沢七郎『楢山節考』の近未来版で、戸川の配役は捨てられる老婆。同世代の私もすでに姥捨される側なのか!と暗い気持ちにもなりますが……

三田 貧困家庭で65歳以上の老人は死ねと。戸川純が「性別を超越した認知症の老人」を演じるということだけは知っていたんだけど、山の上に住む貧困家庭にひとりの女=ザラメ(野津あおい)が訪ねてくるところから話は始まる。だんだんとわかってくることだけれど、自由恋愛が禁止された世界で、国が決めたパートナーと結婚するためにザラメはやってきた。貧困家庭は長男のバイパス(板橋駿谷)、母のヌルミ(稲継美保)、ジジことツルオ(戸川純)という3世代で構成されていて、どうやらその辺り一帯はゲットーなんだね。

水越 「近未来」とは現代の辺境で、その辺境が数年後の世界に広がっていく。そして”姥捨”の話はおそらく人類の抱えてきた長い長いテーマで、さらにもっと広げれば、”役立たず”の話こそが神話を始めとするすべての物語の原型じゃないかね。

三田 それは新自由主義がはっきりさせたよね。役立たずはみな社会のお荷物だと。それでもすべての人には遺伝子改良が施されていて、社会全体としては「進歩」はしていることになっている。

水越 まあ、その状況、現実が原型であって、物語となるときは役立たずの再生、役立たずの英雄化こそ語り継がれてきたものだけどね。この芝居では役立たずは「Fランク」と呼ばれてる。そういう単語の使い方が現代との回路を強く意識させるんだよね。そういう打ち棄てられたひとびとが自給自足で生き延びている集落なんだよ。「2050年には人口が一億人を切り、三分の一が後期高齢者となる日本」のどこか。

三田 戸川純演じるジジだけが、社会がそうなる以前の記憶を持っている。

水越 そう。その設定のほか、昔、一世を風靡したポップスターだったという設定や歌いながらの登場なども現代と、舞台となる近未来とのつなぎ役になっていて、この近未来は空想じゃないじゃん、と感じさせるんだよね。

三田 自由恋愛が禁止された根拠は明らかにされていない。最近だと少女マンガの『恋と嘘』は少子化対策として自由恋愛は禁止されていたり、少しひねってあったけど、映画『ロブスター』も自由恋愛を野放しにしておかないという意味では妙に世界的なトレンドとしてテーマ化されている。『グッド・デス・バイブレーション考』でもそこは危機意識を共有しているということなんだろうけれど、さらには「歌」も禁止されている。通底しているのは「感情」の自由を許さない社会を想定していることのようで、戸川純演じるジジもその世界には順応しているかに見えるわけですね。

水越 表向きの根拠は、差別の禁止だよね。たった一人を選ぶのは差別になるからいけないって、ネットのどっかで誰かが愚痴ってるような与太を大真面目な建前として「恋愛禁止」になるという荒唐無稽さが最近の政治を見てると逆にリアルだったりする。細かいところまでこのリアルさは凝ってるんだよ。たとえば「家族だけは愛していい」とか。それで、感情を刺激する歌や知識を伝える文字も同時に禁止されるところがこの作品の大きなテーマだと思うな。ここで禁止されていたのは戸川純、的なものだった。

三田 ああ、なるほど。「戸川純禁止」。最初、あの世界に順応している戸川純がとても大人っぽくて、老賢者のような役だったでしょ。あれがとても新鮮でね。普段、楽屋で話したりする彼女とは本当に別人。戸川純自身にああいう側面もあるのかなと思ったり、完全にそういう役になり切ってるのかなと思ったり、「劇」として本当に楽しめた。作と演出の松井周は昔から戸川純のファンだったのでキャスティングしたと語ってたけど、なのに、あれをやらせるというのは、その時点ですでに批評的な意味を持っていて、とても知的な発想だと思いました。

水越 「戸川純禁止」!!!(笑) で、松井周は若い頃から何度も読んできたという「楢山節考」についてこう言っている。「「姥捨」という制度にノリノリで従おうとする「おりん」というおばあさんの自己犠牲の話は近代以降の社会や人権という発想に真っ向からぶつかります。けれど、それでも惹きつける魅力があるのです。「見過ごせない美しさ」のようなものです。生き物としてのさだめとも読めそうな、はっきり言えば危ない哲学です」。この作品は、そういう退化、野暮の見かけで現れた異端だったんだと。大正モダンの装いであわられ、ときに反動的なイメージで見られることもあった戸川純を思い出すじゃない? 松井さんはそんな「危ない哲学」を美しく軽妙に、現代に移し替えている

三田 その哲学というのは「家族」を優先させるということ?  夢警察とか思想警察とか、いろんなものが取り締まられているのに「家族」だけが無条件で許されているのは異常な感じだったよね。

水越 安倍政権の念仏にあるじゃん。「自助、共助、公助」つーのが。「共助」ってあれ、「家族」のことなのよね。親族が生活保護を受給していることで攻撃された芸能人がいたけど、あれの旗振りは自民党の議員だったでしょ。家族愛という建前のうしろには、社会保障費削減もある。しかしそういう打算以上に、ほんとうに家族の絆が好きなのかもしれない。選択的夫婦別姓への抵抗などから推察すると……。
芝居の中で、ヌルミがそのことを「秘密の話」みたいに息子にいうところは割と高度なユーモアだと思った。なんつー近未来! いや、現代!って。 ちなみに、姥捨も現代の美徳として語ることは簡単なんだよね。「尊厳を持って人生が終わることを実現し、医者も安心して対応できるような仕組みを考えたい」(安倍晋三)、「(社会保障費削減案を問われ)一言だけ言わせていただくと、私は尊厳死協会に入ろうと思っているんです」(石原伸晃)、「いい加減死にたいと思っても、『生きられますから』なんて生かされたんじゃかなわない。しかも政府の金でやってもらっていると思うとなるとますます寝覚めが悪い」(麻生太郎)などなど、おりんおばあちゃんの自己犠牲精神はかくも健在ですよ。問題は、現実に多くの日本人が「病気で生きるくらいなら長生きはしなくていい」としか思えずにいることで、姥捨を過去の物語にできないでいること。

三田 この一家は微妙に国家に蝕まれていて、それは「死んだと思っていた子ども」に対す感情が根深くストーリーを左右するところに表れている。実際にゲットーで暮らしている人たちって、誰もが国家に対する抵抗勢力になるとは限らなくて、むしろ国家が理想とするようなものになる場合も多い。そうやって弱いものとして描いたことはリアリティのあるところだったかもしれない。

水越 そうだよね。問題は、政治家たちが社会保障政策削減のために尊厳死を利用しようとしていること以上に、現実に多くの日本人が「病気で生きるくらいなら長生きはしなくていい」としか思えずにいることで、姥捨を過去の物語にできないでいることだよね。ヌルミが繰り返す「お国のために」という言い方は、いまなら違う言い方になってるんじゃないかとは思うけど、分かりやすいよね。トランプの支持者に経済的弱者が多いというのと同じで、そのための「文字の禁止」=「教育機会の剥奪」でもあるんじゃないかな。
というか、考えてみればほとんどの家族ってそういうものだよ。だから、「家族」を隔離したいのかもしれないよ。日本の戦争映画ってたいがい「愛する人のため」とかいうけど、「家族」って弱点なんだよ。弱点だけで結束させて隔離すればどんなに誘導しやすいか。

三田 佐藤友哉の小説『デンデラ』は「楢山節考には続きがあった!」という触れ込みで、そうやって捨てられた老人たちが別な村を作って生き延びていたというカウンター的な発想だったんだけど、ああいう発想があったことは、多分、誰も覚えてないよね。『グッド・デス・バイブレーション考』も結末は相当に悩んだそうなんだけど、結論から言うと、そういった発想よりも実際の現実の方が重いという終わり方だったと思います。

水越 姥捨って、「楢山節考」でも今の現実の尊厳死でも、「美しい」ってことが最大の醜さなんだけど、この芝居ではジジの雰囲気がいつの間にか変わっていって、うやむやになっていく。ネタバレしたくはないけど、ここにジェンダーを見ることもできるよ。勇ましく麗しい理想はおじさん的なものじゃないのか? なんて感じにね。無理に見ることもないけど。

三田 そう、「いつの間にか」についてもっと論じたいんだけど、これ以上はネタバレなので……

interview with Gonno & Masumura - ele-king


Gonno & Masumura
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 生演奏とエレクトロニクスとの融和はこれからさらに注力されるべきテーマだろうし、ジャンルの壁を壊すこと、リスナーの耳を押し広げることは、もうかれこれ20年来の課題だ。そしてリズムは永遠のテーマ。ロラン・ガルニエがパリで、ジャイルス・ピーターソンがロンドンで、松浦俊夫が東京で、早速それぞれのラジオ番組で紹介してくれたゴンノ&マスムラの『イン・サークルズ』
仏英日のリスナーにこの野心作がどのように聴かれたのか気になるところではありますが、まずはここにふたりの声をお届けしましょう。

普段4拍子の音楽を長時間やっている身なので、俺としてはめちゃめちゃ面白かったです。最初に作った“サーキット”という曲のリフは、BPM127くらいのハウスっぽいフレーズををなんとなくマスムラくんに送ったのですが、それが5拍子だということに気づかなくて。そしたら増村くんが5拍子のドラムを入れてきた。これは新しいなということと共に、厄介なプロジェクトだなと(笑)。──Gonno

作品ができ上がって半年くらいですか?

G:そうですね……。実質的な制作期間は3カ月くらいでした。僕がアレンジ、ミックスしたのは1カ月くらいでしたからね。

ゴンノくんが最後缶詰になって?

G:そうですね。記憶がないですからね(笑)。

一緒にやってみて面白かった点は?

G:普段4拍子の音楽を長時間やっている身なので、俺としてはめちゃめちゃ面白かったです。最初に作った“サーキット”という曲のリフは、BPM127くらいのハウスっぽいフレーズををなんとなくマスムラくんに送ったのですが、それが5拍子だということに気づかなくて。そしたら増村くんが5拍子のドラムを入れてきた。これは新しいなということと共に、厄介なプロジェクトだなと(笑)。

ゴンノくんがそれを狙って作っているのかと思った。

G:いえ、脱4つ打ちとかそういったものは一切考えてなかったです。フレーズも4つ打ちを想定してつくったものでしたけど、たしかに5拍子のフレーズを無意識に完全に一発録りしたものを増村くんに送りました。

M:音源が届いて、たしかに最初何拍子かわからなかったです。

G:とくにリクエストもなかったしね。

M:クリックも入っていなかったので。聴いていたら、これはきっと5拍子だなと思って。たしかにゴンノさんは狙ってやったというよりは、自然となっちゃったんだろうなと思います(笑)。当たり前だけどいろんなトラックが何個か重なっているじゃないですか。5拍子でミニマルになっている音を、ちゃんと聴けるくらいに自分のなかに取り入れて、それで5拍子のドラムをぶっこんで。そこから一気にプロジェクトがはじまった感じでしたね。

G:返ってきたドラムを聴いてビックリしました。

M:最初のデモが録音の粗悪さもあって、すごく過激なトラックになりました。あれをいつかボーナストラックで出したいです。

G:増村くんの音は1本マイクを立てて録ったものなので、要は80年代のブームボックスで録ったみたいな。

M:音が割れまくっている。iPadで録ったので。マイクも使っていないです。

G:なんかブートレグみたいな(笑)。

大分の山で録ったんだっけ?

M:それは東京のスタジオです。リハーサル・スタジオで。iPhoneでスピーカーから流して、聴きながらドラム叩いて、その部屋の音をiPadで録るという超アナログ・レコーディング。

今回ドラマーとのコラボレーションということで、しかも、ゴンノ君はテクノ、いわゆるダンスフロアというものを常に念頭に置きながら作品を作っている人なわけだから、リズムというのは大きなテーマですよね。

G:そうですね。

M:僕からしたら、異種格闘技戦ではあるんですけど、最初からリズムがテーマになってくれているので、むしろバンドのときよりも自然な形で、自由なアイデアでやらせてもらえたという感じです。機械とやっているけど、むしろ自然にできたという感じでした。元々テクノのことをあまり知らないですが、昔、岡田(拓郎)がジェフ・ミルズにハマっているときがあって。森は生きているの終わりくらいです。ライヴ前に聴かされたりして、これはアフロだなとそのときから思っていて。そもそも、アフリカ系アメリカ人が機械でビートを出しはじめたことが成り立ちなんですよね? ということはパーカッションとあまり変わらないのかなって。変わるけど(笑)。いままでいろいろなプロジェクトに参加してきたけれど、かなり自由に、気楽にできたというか。

G:よかった(笑)。

M:ゴンノさんの音源だと、はまるんですよね。リズムがはめやすいというか。バンドだと、先にドラムを録って他の楽器を重ねたら、最初にドラムを叩いた意思と全然違う形ででき上がることがけっこう多いですが、ふたりということもあるし、ゴンノさんのトラックの柔らかさみたいなものがあるので、叩いているときの感じでできてくれるというか。それが嬉しかったです。逆に言うとミスもはっきり出るんですけどね(笑)。

G:ずっと4拍子の世界にいたので、リズムの気付かない豊かさみたいなものが今回わかりました。例えば、5拍子だとこんなトランスの仕方をするんだとか、7拍子だとこんな具合が悪くなってくるんだとか(笑)。

一同:(笑)。

G:5拍子のレコーディングとか、終わったあと眩暈しました。

M:眩暈しましたね(笑)。

ゴンノ君はリスナーを躍らせるということがひとつの絶対的なテーマとしてあるじゃない?

G:DJだとそうですね。

今回もそれはある?

G:音楽をつくる面で僕が大事にしていることは、踊れるということよりも、いろんな音楽を紹介したり、多様性を示唆するみたいなことも自分の役目だと思っています。そういう意味では今回、例えば、“マホラマ”という曲がアルバムに入っているんですけど、それもパーカッションとドローン的なシンセサイザーだけで構成された、特に踊れるものという意識は全くない曲です。逆に4曲目の“ミスド・イット”という曲は、いわゆるファンク・ドラムにハウスっぽいベースラインを入れて踊れるような雰囲気を狙いました。そういった曲は勝手知ったる他人の家といった感じでしたが、他の曲は自分のなかでは今回チャレンジングなものばかりでした。

“ミスド・イット”は個人的にはシングルにして欲しいくらいの曲なんだけど、これって、最終形がわかっていてやったプロジェクトじゃないよね?

G:ではないです。

とりあえず出発してみたという。

M:それを逆に狙っていたというか。

どこに行くかわからないけど、出発してみようって? ゴンノ君にもそれはわからなかった?

G:わからなかったです。もともと増村くんのドラムのファンだったので、自分の曲に増村くんのドラムが乗っていたら素晴らしいのになとずっと思っていたことがひとつの経緯です。あと、やっぱりこういうプロジェクトをなかなかやれる機会がないので、面白そうだからやるしかないというか。面白そうっていちばん大事じゃないですか。楽しそうだったから。それに尽きますね。

にしても、よく9曲も作れたなぁ(笑)。

M:ほんとそうですよ(笑)。ゴンノさん様様なんですけど(笑)。

G:僕もビックリですね。

M:どっちかというとそこだけが懸念していた点というか。曲はたぶんできていくんだけど、アルバムとして形にするためにどうなっていくんだろうなということはずっと思っていました。3月のゴンノさんがそれをピシッとやってくれたのですごいよかったですけどね。

G:3月はまったく休憩がないですからね。DJしていたことの記憶もないですね(笑)。

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ゴンノさんの音源だと、はまるんですよね。リズムがはめやすいというか。バンドだと、先にドラムを録って他の楽器を重ねたら、最初にドラムを叩いた意思と全然違う形ででき上がることがけっこう多いですが、ふたりということもあるし、ゴンノさんのトラックの柔らかさみたいなものがあるので、叩いているときの感じでできてくれるというか。それが嬉しかったです。逆に言うとミスもはっきり出るんですけどね(笑)。──Masumura


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このプロジェクトですごく重要だなと思うのは、科学反応みたいな音楽的な面白さももちろんあるんですけど、ひとつのジャンルを超越する面白さというか、増村くんはインディ・ロック出身ですからね。増村くんが〈ベルグハイン〉で踊っている姿なんて想像できないじゃん(笑)。

一同:(笑)。

G:そうですね。

M:〈ベルグハイン〉ってなんすかってかんじですからね(笑)。

G:ベルリンにある、世界でもっとも面白いと言われているクラブがあって。ふたつのフロアがあって、パノラマバーというハウスのフロアがあるんですけど、僕はそこでよくDJしたりしますよ。

M:そうなんですか! 全然踊りますよ(笑)。

G:いわゆるゲイ・クラブ。

M:まじすか!

G:すごく良いですよ。けっこう価値観が変わります。こんな自由な場所があるんだって。

M:そうなんや。

ゴンノくんからすると、やっぱ現状のクラブ・ミュージックの型にはまった感じを破りたかった?

G:ハウスやテクノは、やっぱり、4つ打っていないと踊らない。4拍子じゃないと踊らないというのが沁みついちゃっているんですよね。なので、その規則性からなかなかはみ出せない。いろんなテクノとかハウスのアーティストがアルバムを出していますけど、どうしてもそこからはみ出せられない。そのフォーマットのなかで何かするしかないみたいな。4つ打っている、4バイ4のキックって強力じゃないですか。レゲエの裏を取るのと一緒で、もうこれ以上ないという引き算だと思います。そこから発展させていくのはなかなか難しいんでしょうね。

M:僕が逆に意識したことは、クラブの4つ打ち的なところを外さないようにすることです。7拍子の曲とか、7をふたつに割って2拍7連にして。そうしたら均一にベードラがくるんですよ。もしくは2小節またいで14拍あるので、ドッ、ドッってやっていったら……。

2拍7連って難しいね。

M:難しいですが、聴いている方はベードラが均等にきていれば絶対踊ってくれると思うので、それを7拍子の曲で意識したというか。5拍子の曲でもやっています。2拍5連とか2小節10拍で5発ベードラを打つ。その辺を意識しましたね。

G:途中で4つ打っているふうに聴こえるんですけど、気が付いたらまた7拍子に戻っているみたいなところがだまし絵みたいな感じで入ってます。

M:ちょっとそういうところはありますね。規則性みたいなものからはみ出ないというルールは変拍子のなかでも作っていたんですよね、一応。

G:ただ、聴感上は4拍子みたいに聴こえる。こんなトリック明かしちゃっていいんですか?

M:いいんじゃないですか(笑)?

リズムを楽しむというのは、このアルバムの重要なところ。リズムだけでも面白いんだっていうところがあると思いますよ。

M:アフロビートだって、いっぱいそういうことをやっているんですよ。でも、なかなか分析している人は少なくて。それをわかりやすい形でドラムに置き換えて叩いたというところはあります。そういう意味ではわかりやすく楽しんでもらえるかもしないですね。

G:僕も増村くんに言われるまでわからなかったです。例えば、エルメート・パスコアールの曲でじつはこれ、7拍子なんだみたいなのを教えてもらったりして。

M:それくらい気持ちよく7拍子で来ていて。

G:シェイカーが7拍子で振られているというのが。

M:「オーガニック変拍子」と僕は呼んでいるんですけどね。

なんでオーガニックなの?

M:オーガニックというか、ポスト・ロックとかプログレじゃない……

ようするに数学(マス)的じゃないと?

G:あんまりロジカルじゃない、身体感覚で鳴らされているような。

M:その身体感覚というのがすごく良くできているんですよね。現地の人は……現地っていうのは変ですけど、だってここに来てないと踊れないじゃんみたいな、当たり前の感覚があるみたい。その身体感覚を元にやっているから。その辺が民族音楽からいちばん学べるところなので、そこをちょっとドラムに置き換えて、あとは機械に置き換えて。そういう楽しさはやっていてありました。

G:増村くんから聞きましたけど、南米の人とか逆に4拍子で取るりも…

M:6/8拍子しか取れない人もいるみたいです。

G:普通に欧米のいわゆるポップスの世代とかは4拍子が当たり前で、4拍子から外れるとどうしても、ちょっとエクスペリメンタルという発想になってきちゃうけど、逆に4拍子が普通じゃないという世界もあるということを知れて良かったです。

M:もしかしたら、人口分布とか面積だったら、6/8拍子系の国の方が多いかもしれないですよね。アメリカと日本くらいかもしれないですよ、4拍子が主流すぎるのなんて。

G:あとヨーロッパですかね。

M:ヨーロッパも6/8拍子系は多いみたいですね。

ジャズも多いもんね。

M:ジャズこそ6/8拍子の応酬というか、わりと世界的には当たり前な話。けど、いずれにせよ、何を取るにせよ、日本人の僕たちは自覚的になって、ちょっと研究者的な視点も入って、それを元に作品にしたという楽しみ方でもあるし、そうやるしかないというか。

これをジャズとは呼ばないけれど、ジャズ的な要素があるなと思ったんですよ。それは何かというと、ジャズって演奏者の個性によって作品が作られていくし、やっぱり、同じ曲でも演奏者によって違う。例えば、クラフトワークやコーネリアスっていうのは誰がやってもクラフトワークになるし、コーネリアスになると思うんだよね。でもジャズ的なものって演者によって違うものになるじゃない。そういう意味でいうとジャズ寄りであると思うんだけど、演奏するパートナーとしてお互いのバックグラウンドがぜんぜん違うじゃない。

G:ジャズを即興と解釈するなら、今回あとあと上音をたくさん足してるけど、実際のベーシックな録音は2日間しかなかったので、基本的にはインプロ具合というか、ジャム具合がそのままパッケージングされている感じです。

M:けっこうふたりの良いヴァイブスが出たかなと。それこそ化学反応みたいなことを書いてくれている人がいましたけれどね。

G:そういう反響は多かったですね。ロラン・ガルニエもラジオでジャズとテクノのハイブリットだって紹介していましたね。
https://worldwidefm.net/show/it-is-what-it-is-laurent-garnier-6-2/

増村くんはスティーヴ・リードが頭にあったわけでしょ?

M:スティーヴ・リードとフォー・テットのあれは頭にありました。けどトニー・アレンとロイ・ブルックスとマイケル・シュリーヴと、ほんのちょっとだけビル・ブラッフォードを入れれば自然とオリジナリティが出るなと思って(笑)。というか、僕が一生懸命研究してきたことを、キーラン・ヘブデン×スティーヴ・リードを参考にしながらやればオリジナリティが出るなと思ったので、きっかけをくれたのがスティーヴ・リードかなという感じです。スティーヴ・リードでは、あんなおじいちゃんになってもばりばりスティーヴ・リードの音がしているんです。スティーヴ・リードの何が好きかって、パッションだったんで。ビートとかというより、あんな独特な4ビート、すごい熱量のある4ビートをやるから。喋るドラマーという言い方は変ですけど。あんなにドラムで精神性を発揮できるのかっていう。

タイムキープのためのメトロノーム的な役目をするドラマーと表現するドラマーってやっぱり……

M:表現するドラマーが少なくともいるじゃないですか。その最たるのが、やっぱりスティーヴ・リードとロイ・ブルックスで。ゴンノさんとやるにあたって、僕もタイムキープもするけど、ちょっと喋ってもいいのかなと思いました。それは良いところに最後落とし込んでくれたのかなという感じですけどね。

G:喋るドラムっていいですね。

めちゃくちゃ喋っていたじゃん(笑)。俺がちょうどスタジオ行ったとき……

M:オラついてましたね(笑)。ポップスとかでオラついちゃうと、けっこう聴けないってなっちゃうんで。

やかましいよって(笑)。

M:そういう意味で、最初にも言ったけどすごい自由にやらせてもらったから気楽でした。何をやってもゴンノさんが受け止めてくれるという感じがあったから、やりやすかったですね。

あのときのゴンノくんは様子を見ていると、増村くんをいかに本気にさせるかみたいな。

G:そうだったかな(笑)。

スタジオのなかの指揮者みたいな感じ。

M:指揮者をやってくれていましたね。

G:リズムのタイムが狂っているとかそういうところよりも、ドラムのサウンドがどういうふうに鳴っているか、単純にスネアドラムはどんな音が鳴っているかとか。そういう音をずっと聴きながらやっていました。

M:もうミックスがはじまっていた感じですね。

G:そうですね。

M:すげぇ……。

G::リズムマシンと違って、生ドラムは叩き方の強弱で音自体が変わるじゃないですか。なので、これくらいの強さで叩いてくれていた方が増村くんのドラムが録れるだろうなということを、僕が煽っていたくらいですね。あとは何もしていないです。

最後は全部ゴンノくんがまとめたんだよね?

G:そうです。ミックスまで。マスタリングは風間萌さんというスタジオATLIOの方が。

■ミキシングを自分のなかのどこで終わらせるか、という境界線みたいなものはどういうふうに考えたの?

G:毎度のことなんですけど、締め切り当日1時間前までずっと触り続けます。毎回そうなんですけどね。ここで終わりというのはないですね。ただ、生ドラムのマイクをたくさん立てて、生ドラムをミックスするということは今回が初めてだったんですよ。それは本当に面白かったですね。ステレオマイクの音量がどれくらいだとか。そこはけっこう増村くんにアドヴァイスをもらいました。

M:アドヴァイスというか、僕はミックスをやったことがないのであれなんですけど、スネアがもうちょっと大きくなって、ハットが小さくなった方が……とか。

G:この曲はハットがもっと小さい方がいいとか。

M:そういうのは伝えていました。

G:僕が迷ったときはけっこうラフ・ミックスを送ってという感じでやりました。

空気が振動する感じがちゃんと録音されているところがすごいよね。

G:それはエンジニアの葛西(敏彦)さんの成せる業ですね。

M:葛西さんっていまでは生楽器の音を録るには天下一品みたいな人なんですけど、テクノ出身で、元々地元でテクノのイベントのオーガナイザーとかやっていて。野田さんの本とかも読んでて。

コニー・プランク(の役目の人)がいたんだ!

M:完全に生のこともテクノのことも知っている人だから、葛西さんしかいないだろうって。

G:共通言語がすごく多くて良かったですね。

それでこの短期間でここまでのクォリティーのものができたんだ。

M:録音は葛西さんのおかげですね。

G:ドラムをミックスするというところがいちばん難しかったので、だいぶ助けて頂きました。やっぱりいままで自分が触っていた909のキックだったり808のキックだったりというのが、いかに……、良い言い方をすると、効率良く快楽的な音が簡単に出ていたものなんだなとすごく痛感しました。

M:気持ちいいですよね。かつてはリンドラムやなんかの。普通に気持ちいいですもんね。ドラムなんて気持ち良い音を出すには、相当ミュートして、チューニングしてとか。

G:リズムマシン単体も規則性はあるんですけど、音の揺れというのがやっぱりあるので。んですけど、さっき言っていた、歌っているドラムとか喋っているドラムというのは生ドラムにはやっぱりかなわないですよね。ドラムマシンは0.01秒後にこういう音を入れようということが、予めプログラムしないとできないじゃないですか。融通が利かないんです。そこを生ドラムでやってもらうというのが、いちばん難しくもあり同時にスリリングで面白かったところですね。

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このアルバムを作るときも、モーリッツのあのアルバムを目指そうとかということはまったく考えていなかったです。 ──Gonno
どうせトニー・アレンにやってもなれないし、違うし、みたいな諦念があるわりに、お気楽で、俺がやればどうせなんないし、みたいな。 ──Masumura


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増村くんはバンドで他者と一緒に共同作業をするということをずっとやってきているけど、ゴンノ君はひとりでやってきているからね。制作の現場に他者がそこにいるというのは、きっと違うよね?

G:人と音楽作るって良いですね。

一同:(笑)。

G:もうシンプルに、自分が思いもつかないようなことが出てくるということが素敵ですよね。

アルバムの1曲目に、最初にできた5拍子の曲にトーン・フォークと岡田くんのギターが入るんだけど、これはディレクションしたんですか?

M:してないです! 

G:岡田くんに関してはしてないですね。これ5拍子なんだけど、ちょっと入れてくれる? みたいなリクエストを増村くんが送ったその日にパッと。

M:音源をいきなり送り付けて、5拍子なんて弾いたことないよと言っていました。10分の曲なんですけど、3周分即興で弾いて素材としてどうぞと返ってくるという(笑)。さすがだなと思いましたね。即興して素材としてどうぞって。音楽のこと良くわかっているなって(笑)。

G:トーン・ホークの方は、締め切り1週間前くらいに僕がギターを入れてくれないかとコンタクトを取ったんです。5日間くらい返事がなくて、もう諦めようかなと思ったら……締め切り2日前くらいに、いまから録るからいつ送ればいいんだという返事が返ってきたんです(笑)。明後日までなんだけど、録れる? とメールをしたら、次に返ってきたメールで10パターンくらいギターパートが送られてきた(笑)。

一同:(笑)。

G:アメリカのミュージシャンってやっぱりすごいなと思って。10パターンくらいポーンと送って来ちゃうから(笑)。

ミックスするのに困っちゃうね。

G:まさしくその通りで、しかもトーン・ホークの音が個性的なので、10パターンのどれを載せてもトーン・フォークの曲になっちゃうんですよ。

M:最初、食われる感ありましたよね。

G:けっこう調和させてミックスさせるということにだいぶ集中しましたね。締め切り当日の朝に(笑)。

M:すごい馴染みましたよね。

G:表情豊かになりましたよね。

M:加えて言うと岡田のギターも馴染んで。岡田とトーン・フォークのギターちょっと似ていて。元々ちょっと似ていますよね。けど、ゴンノさんが混ぜたことが大きいのかな。

そこはやっぱり、DJミックス。

M:さすがっすね! 入れ替わりがすごいスムーズな感じで、どこからどこまでかわからないですよね。

G:岡田くんのギターにディレイやワウっぽいエフェクトはちょっとかけたりしました。それがトーン・ホークの音と上手くマッチしてるのかも?

M:そうなんですね。あれはスムーズですごいですね。

G:トーン・ホークはもちろんNY在住なので当然そうなんですけど、ふたりともアメリカの音楽とかの影響が出てるんじゃないかな。わからないけど。もしかしたらそういう共通言語があるのかもしれない。

M:ふたりとも5拍子をなぞるのを最初から放棄してくれていたんで、それが良かったですよね。またがない感じが。ドラムがあれだけ5拍子で来ているから、5拍子のカッティングがくるよりはマニュアル・ゲッチングみたいなものもナチュラルならハマるんでしょうけど、ちょっとドローンが入っているあのギターは良かったですね。

G:じつはマニュアル・ゲッチングをサンプルではめてみたヴァージョンがあるんですよ。

M:しかもすげー良いんですよ! 岡田がこれでいいじゃんって言ってましたもん。

G:やっぱマニュアル・ゲッチングすごいんだなっていう話をしましたね。

M:4拍子の曲をゴンノさんがちょこちょこっと5拍子のループにその場でしてくれて。

G:アシュラ名義の何曲かを使ったんですよ。

M:めっちゃよかったですよね(笑)。

G:相当精巧に弾いていたんだなっていうのがよくわかりました。スクエアに、延々と15分間も……。そういう発見が今回本当にたくさんあったんですよ。普通にミニマル・ミュージックとして、アシュラは僕なんかからするとトランスの祖先みたいなふうに聴いていたので、もっと構造としてこんなふうに鳴っていたんだとかという発見ができたので。とくに今回はリズムがそうだったし、そういった発見が自分にとってとても収穫でした。

このジャケットとか、『イン・サークルズ』というタイトルがすごく合っているなと思ったんだよね。

G:それは嬉しいですね。タイトルは増村くんが命名したんです。ジャケットは新谷テツヤさんという方のドローイングです。

M:本当は『ファースト・サークル』にしようと思ったんですけど、めっちゃメセニーやなと思って。探していたら『イン・サークルズ』に。

G:楽曲は基本反復の音楽なので、“サークルズ”という言葉はすごいしっくりくるなと僕も思いましたね。

M:あと、“堂々巡り”みたいな意味があるらしくて、日本人がアフロをやるっていうその……

G:矛盾しているというか。

M:悩みながら覚えてきたんで。

でもね、ふたりともあえて違うことをやろうとかそういう感じでもなかったじゃない? わりと自然体でやってたし。

G:例えば僕にモーリッツ・フォン・オズワルドのミニマル・テクノを追及できるかというと絶対できないですからね(笑)。

あれはやっぱりドイツって感じだよね?

G:そうですね。僕のなかではもう、あんな風にはなれないっていう諦念みたいなものもありますし、逆に自分は日本らしくてよかったなということも結果としてままあるので。このアルバムを作るときも、モーリッツ・ヴォン・オズワルド・トリオ&トニー・アレンのアルバムを目指そうとか、そういうことは考えていなかったです。

M:ドラムもまったく一緒で、どうせトニー・アレンにやってもなれないし、違うし、みたいな諦念があるわりに、お気楽で、俺がやればどうせなんないし、みたいな。でも、気持ちよさだけは残れば、新しいものというか作品にはなるなという。諦めているわりにお気楽みたいなところはありましたね。

G:もともと漠然としていたんですよね。トニー・アレンぽいドラムが欲しいというよりも、もっと広義にアフロ・ミュージックのドラム、ファンク・ミュージックのドラム、僕が聴いてきた増村くんのドラムっていうのに、自分の音が重なったらどんな感じになるだろうというシンプルな感じだったので。もう具体的にこの音を目指そうみたいな感じよりも、増村くんから出る音を掬い取って何かやろうという感じだったんで。

まさに、ゴンノ&増村だからね(笑)。

G:とにかく完成してよかったな……

目的地がわからず出発したわけだから。

G:ロジカルに考えてアレンジとかいうんじゃなく……。もちろん最初に録音したドラムありきですけど。本当に考えないで最終的に落とし込んだので、良くできたなと思いました。

M:素晴らしい。僕はドラムを叩いていただけなんで(笑)。

G:いえいえ。ドラムが歌っていたので、あとは無意識に落とし込んでよかったみたいな部分もあるのかもしれないですね。わざとらしくないというか。本当に完成してよかった……こういう実験的なことをこのペースで20年間とか続けてたら10年目くらいで死んじゃいそう(笑)。でも実験はミュージシャンとして大事ですね。

 以上、もうわかると思いますが、ふたりは、コンビとしてじつに気が合っているというか、こりゃあこのプロジェクトはまだまだ続くなと思った次第です。

※レコ発ライヴ情報!
7月8日(日曜日)代官山ユニットにて。詳細は追って告知します。

Huerco S. - ele-king


Pendant
Make Me Know You Sweet

West Mineral

Ambient Musique ConcrèteExperimental

Bandcamp

 かつてOPNの〈Software〉からファースト・アルバムを発表し、以降その独特のロウファイなサウンドで10年代のエレクトロニック・ミュージックに一石を投じてきたフエアコ・エスことブライアン・リーズ。今年の頭には新たにレーベル〈West Mineral〉を起ち上げ、ペンダント名義の新作も発表したばかりの彼がこの5月、なんとも絶妙なタイミングで来日を果たし、東京・大阪・富山をめぐる全4公演のツアーを開催する(5/11と5/12の公演では、フエアコ・エスと共演者のアンソニー・ネイプルズによるカセットテープも販売されるとのこと)。そんな来日直前の彼が急遽われわれの取材に応じてくれた。以下その言葉をお届けしよう。


Central park 2017, credit: Mathilde Chambon

まずHuerco S.という名義についてなのですが、発音が難しく、日本語で表記するとしたら「ホアコ・エス」でしょうか?

Huerco S.(以下、HS):いろんな発音で名前が呼ばれるのを僕自身とても楽しんでいるよ。イタリアのナポリ語が由来で、正確には「フー・エア・コ・エス」さ。

カンザスシティご出身とのことですが、どのような街なのでしょう? その街はあなたの音楽に影響を与えていると思いますか?

HS:生まれ育ったのはカンザスシティではなく、そこから車で1時間ほど離れたユーポリアという郊外なんだ。19か20のときに街のほうに移ってから、いわゆる「シティライフ」と呼ばれるものを体験するようになって、週末は友だちと一緒に、倉庫で開かれるとあるレイヴ・パーティに遊びに行ったね。あそこで初めて、テクノやクラブ・ミュージックとか、そういった類の音楽に触れたんだ。

音楽を作り始めることになったきっかけはなんでしたか?

HS:10代の頃にバンドをやっていたんだけれど、17歳のときに他のメンバーたちとうまくいかなくなって、それぞれが自分のやりたいことにシフトしていったんだ。ちょうどそのとき、叔母を訪ねてフランス旅行に出た前のバンドのドラマーが戻ってきて、向こうで覚えたドラムンベースとエクスタシーを僕に教えてくれてね。それからすぐに、FL Studioの初期のソフトをネットからタダで拾ってきて、母親のパソコンでいじるようになったのさ。そこから始まってもう10年以上、自分がいわゆる「エレクトロニック」な音楽を作り続けているなんて信じられないね。

現在の活動の拠点はニューヨークですか? 他のニューヨークの実験的なエレクトロニック・ミュージックの作り手たちとは交流があるのでしょうか?

HS:ああ、いまはクイーンズのリッジウッドに住んでいるよ。人が集まるという意味ではニューヨークはたしかに途方もなく大きな都市に見えるけれど、「シーン」自体はそこまで大きくはないんだ。僕がプレイするのはおもにヨーロッパで、じつはそれほどニューヨークですることはないんだけれど、たくさんの友だちのミュージシャンが地元に関わっているし、街にいるときは彼らと一緒にプレイしているよ。全体的に見てアメリカは、複数のシーンがまとまるよりも、個々の部族意識みたいなものが強いと思うけれど、それもいま変わりつつある。ノイズやパンク、メタルといった音楽と、テクノの境界がニューヨークではもはや消えつつあるというひとつの例のようにね。

あなたの音楽にはロウファイさ、あるいはくぐもった感じ、こもったような感じがあります。そのような音色を追求するのはなぜですか?

HS:僕自身もわからないよ。はじめはいくつかのプロセスを経て、そういった誰かが作った「既存」の音を模索していたけれど、いまはもう自身の一部だから。音と自分が一体になっているというか。音がそのままの僕を表しているのさ。


Kansas city 2017, credit: Mathilde Chambon

1月にはPendant名義で新作『Make Me Know You Sweet』がリリースされましたが、そこではミュジーク・コンクレートの手法も導入されており、鳴っている音がこれまでとは異なっているように感じました。本作のリリースにあたって新たにレーベル〈West Mineral〉も立ち上げていますが、音楽家として何か大きな変化を迎えたのでしょうか?

HS:それほど大きな変化はなくて、より純粋に音の探求を拡げていった結果さ。ミュジーク・コンクレートにはたしかに影響を受けている。この2年半多くの時間をパリで過ごして、僕の彼女のおかげで、音楽を超えた音の世界に興味を持つようになったんだ。
このPendantでの作品は、しばらく時間をかけて僕がこれから向かおうとしているものだ。前作の『For Those Of You Who Have Never』(2016年)をリリースしてから、僕を気に入ってサポートしてくれた人たちには感謝しているけれど、これからは「アンビエント」的と言われるような安らぎのあるものではなく、メロディから離れて、より深い音を掘り下げていきたい。ダークなものを作りたいね。

そのアルバムの曲名はすべて記号になっていますが、これには何か意味があるのでしょうか?

HS:架空の空港コードなんだけれど、取り立てて意味はないよ。

音楽には聴き手を楽しませたりリラックスさせたりする側面と、聴き手に何かを考えさせる側面があると思うのですが、ふだんあなたはどのように音楽を聴いていますか? たとえば「自分ならこの音はこうする」のように職業的な耳で聴くのでしょうか?

HS:どちらの側面からもだね。それは聴いている音楽にもよるし、聴いている時に頭の中で考えていることにもよると思うよ。ここ8ヶ月はほとんどハウスやテクノには触らず、トラップやメンフィス・ラップ、デスメタルをよく聴いていて、それぞれから思いつくことがいろいろあった。現行のヒップホップも純粋に好きだし、新しいアイデアを発見できるという理由もあってよく聴くね。そうしたものをポップ・ミュージックだと一言で片付けて無視する人もいるけれど、頭でっかちな電子音楽よりもはるかに未来的だし、真実味があると思う。

あなたはHuerco S.やPendantの他にもRoyal Crown Of Swedenという名義ではハウスを作っていますが、それぞれの名義にはコンセプトやテーマがあるのでしょうか?

HS:プロジェクトの名前はすべてオリジナルがあって、それぞれに異なった意味があるのさ。たとえばMio Mioのレコードはリカルド・ヴィラボロスのスタイルのようなものを作りたくてあの名前を思いついたし、The Royal Crown Of Swedenは祖母のスウェーデンの家系と、フランスのハウスのレ・ナイト・クラブとクリムダールに敬意を評してつけた名前。Loidisはリーズという街のもともとの名前に由来しているよ。

ファースト・アルバムの『Colonial Patterns』(2013年)はOPNの〈Software〉から発表されましたが、そのときは彼からオファーがあったのでしょうか?

HS:うん、あのレコードは、あのときの他の作品と同じように、SoundCloudがきっかけだった。ダニエル(・ロパティン)のアカウントからダイレクト・メッセージを送ってくれて、リリースすることになった。そのときすでに僕は彼のファンで、カンザスに住むひとりの男子がOPNと一緒にレコードを作れるなんて、ほんとうに光栄だったよ。

その後のOPNの音楽は聴いていますか? 彼の音楽についてどう思いますか?

HS:KGB ManChuck Person名義の初期作品、それにローランドのJunoを使った作品はすべて大好きだよ。『R Plus Seven』を出して以降は、個人的にはあまり興味のない方向に行ってしまったけれど、彼のことは尊敬してる。

音楽家としてのいまのあなたを形作る契機となった、重要なアーティストを教えてください。

HS:エリアーネ・ラディーグ、アクトレス、ヴラディスラフ・ディレイ、ミカ・ヴァイニオ、ジャマール・モス、エレクトロ・ミュージック・デパートメント、スリー・シックス・マフィア、ロバート・アシュリー、トーマス・ブリンクマン、ジョン・ハッセル、横田進、マーカス・ポップ、キャバレー・ヴォルテール、リュック・フェラーリ、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、DJスクリュー、ウォルド。

あなたの音楽をひとつのジャンル名で括るのは難しいですが、アンビエントからは大きな影響を受けているように思います。ブライアン・イーノが創始した「アンビエント」というスタイルまたはコンセプトについてはどうお考えですか?

HS:多くのアーティストは既存のカテゴリに分類されるのを嫌うけれど、聴き手の観点から見て、その気持ちはとても理解できるよ。ただ僕はブライアン・イーノのような、クラシックで、BGM的な発想のアンビエントを作りたくて始めたわけではないし、むしろそうした既存の概念を拒むようなものを作りたいと思っている。
Pendant名義のアルバムをBoomkatが「中間の音楽(Mid-ground Music)」と称してくれたけど、それこそがまさに自分の追求したいものなんだ。音楽のヒーリング力は無視できないし、自分も恩恵を受けているけれど、いわゆる「無害」や「和やか」、「静けさ」みたいな言葉で形容できるような、アンビエントのクリシェには陥りたくないのさ。


Tokyo,liquid room 2015,credit: anthony naples

今度の5月23日、ブルックリンで高田みどりと共演されますね。昨年は彼女の作品がリイシューされ話題となりましたが、彼女の音楽はどのようなところがおもしろいと思いますか?

HS:彼女の音楽はとてもクリエイティヴで、パフォーマンスにも強いエネルギーを感じる。一緒に演奏できることが嬉しいし、何より人びとが彼女の作品にふたたび注目を集めていることを光栄に思う。ときを経ていろんなアーティストやスタイルが繋がっていくということにはすごく興味があるんだ。

昨年は他にも吉村弘がリイシューされたり、あるいはヴィジブル・クロークスのアルバムが人気を博したりと、アンビエントやニューエイジが盛り上がりましたが、ご自身の音楽もそういった潮流とリンクしていると思いますか?

HS:僕の音楽が吉村弘や、当時の日本のアンビエント・ミュージックに大きな影響を受けていることはたしかだ。前作の『For Those Of You Who Have Never』を聴けばメロディに軸を置いていることからもわかるようにね。でもそれがすべてではなくて、あらゆるところからインスピレイションを受けているよ。

(質問:小林拓音 翻訳:◎栂木一徳)(「◎」は木へんに父)

Huerco S.(フエルコ・エス)来日情報

■5/11(金) UNIT
C.E presents

ANTHONY NAPLES & HUERCO S. (B2B)
LOW JACK
NGLY (Live)
KEITA SANO (Live)
DJ HEALTHY
CHANGSIE
JR

※Anthony NaplesとHuerco S.のカセットテープ販売もあり。

Friday 11 May 2018(2018年5月11日金曜日)
Open / Start: 11:30 PM
Venue: UNIT www.unit-tokyo.com
Advance ¥2,800 / Door ¥3,500
Tickets available from Resident Advisor / Clubberia / e+
※20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため顔写真付きの公的身分証明書をご持参願います (Over 20's Only. Photo I.D. Required.)

■5/12(土) CIRCUS Osaka
C.E presents

ANTHONY NAPLES & HUERCO S.
LOW JACK

※Anthony NaplesとHuerco S.のカセットテープ販売もあり。

Saturday 12 May 2018(2018年5月12日土曜日)
Open / Start: 11:00 PM
Venue: CIRCUS Osaka circus-osaka.com

Advance ¥2,500 / Door ¥3,000
Tickets available from Resident Advisor / Clubberia / Peatix
※20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため顔写真付きの公的身分証明書をご持参願います (Over 20's Only. Photo I.D. Required.)

■5/13(日) The local
The Local presents Anthony Naples B2B Huerco S.

[Guest DJ]
Anthony Naples & Huerco S.
[LOCAL DJ]
DJtaiki/CJ/□△○

Open / Start: 18:00 PM
Venue: The local
Entrance: ¥2,500

■5/17(木) SuperDeluxe
Huerco S. Live with Yoshio Ojima & Satsuki Shibano and Ultrafog

[Live]
Huerco S.
尾島由郎 & 柴野さつき
Ultrafog
[DJ]
荒井優作
Refund
DJ Healthy

開場 / 開演: 19:00
会場: SuperDeluxe www.super-deluxe.com
料金: 予約¥2,500 / 当日¥3,000(ドリンク別)
チケット予約: スーパーデラックス / RA

前野健太 - ele-king

 ギター1本携えて強烈な歌を吐き出す「フォーク・シンガー」前野健太が登場してきた時の、あの電撃的歓び。私を含めた少なくないファンが、2007年第1作『ロマンスカー』に痺れ、2009年作『さみしいだけ』で枕を濡らし、同年公開映画『ライブテープ』での勇姿に声援を送った。
 それからも絶えることなく、マエケンは極めて精力的に、且つ目まぐるしく活動を続けてきた。2011年に第三作『ファック・ミー』を自主リリースしたあと、松江哲明監督作品『トーキョードリフター』で再びの主演を務める。2013年にはジム・オルークとタッグを組んだ『オレらは肉の歩く朝』、そして『ハッピーランチ』と、充実作を立て続けに発表。その後、音楽活動と並行して、文筆業や映画/舞台俳優としての活動も本格化し、ここ最近では地上波テレビにも登場し、お茶の間にもその鮮烈なキャラクターを浸透させつつある。
 まさかここまでマエケンが人気者になるなんて! と少し虚を突かれるような思いを抱きつつも、しかし一方で、マエケンならいまの活躍は当然だ、とも思うのだった。

 今作『サクラ』は、約4年ぶりのオリジナル・アルバムとなる。様々な場面で彼の姿を見かける機会が増えようとも、やはり何はなくとも彼の新しい歌を聴きたいと思っていたリスナーにとっては、まさに待望という他ないだろう。
 今回、まず何と言っても注目すべきは、ひとつの弾き語り曲を除き4人のプロデューサー陣に各曲のアレンジが委ねられているという点だろう。ceroの荒内佑、元・森は生きているの岡田拓郎、前作以前からの盟友である石橋英子、そしてあの「恋するフォーチュンクッキー」を手掛けたJ-POP界の俊英、武藤星児が各楽曲のプロデュースと編曲を全面的に手がけているのだ。
 マエケンは、4人のプロデューサーへ制作の全てを一任したという。歌手とプロフェッショナルなアレンジャーの蜜月によって支えられた黄金期歌謡曲を彷彿とさせるプロセスを導入することで、これまでの自作自演アーティスト像から、個性豊かなオケ(とあえて言いたい)の上で活き活きと歌唱する「歌い手」前野健太が誕生することになった。
 
 cero荒内が手がけた1曲目“山に囲まれても”は、ピアノと木管楽器がイントロで穏やかに立ち上がり、マエケンの朗々とした歌が現れる。素朴な品格を湛えながらもふんわりとアーバンな風を送り込むようなアレンジの妙味とともに、なにより歌の表情の変化に驚く。ボイストレーニングに通った成果でもあるというその声は、かつてより余裕を感じさせるとともに、響き全体に円味と太い芯が与えられている。
 同じく荒内の手がけた続く2曲目“今の時代がいちばんいいよ”は、2015年にリリースされた同名のCDブック収録版がギター弾き語りだったのに対し、様々な楽器が導入され膨よかで広がりに満ちたアレンジが施されている。ウッド・ベースが闊達に動き、アコースティック・ギターのストロークが軽やかに刻まれ、その上にマエケンの自信に満ちた歌声が載る様は、まるであのヴァン・モリソンによる名盤『アストラル・ウィークス』のようでもある。
 
 3曲目“アマクサマンボ・ブギ”のプロデュースは、武藤星児の手による。高速に叩き出されるビートは、元祖ブギ女王・笠置シヅ子による一連作を思わせつつも、ここではよりパンキーに疾走する。ドライブ感あるAmazonsによる女声コーラスが粋を添え、まるでネオロカ歌謡とでもいうべき特異な世界が演出される。
 武藤は続く4曲目“嵐~星での暮らし”も手がけているが、この曲こそ本作の特異性を象徴するものだろう。“恋するフォーチュンクッキー”マナーも感じさせつつ、マエケンという強い個性と結びつくことで、通常あまり意識上に上ることが無い「J-POP性」のエッセンスをむしろ強く提示・発散する。打ち込みビートとシンセ・ホーンの響きこそは、我々日本人のソウルに強く刻まれた音楽的心象なのだ、ということが、逆説的に浮き彫りになる。そしてその上で、マエケンはかつてないほどの細微なニュアンス・コントロールを用いながら堂々と歌う。ナイス・マッチともミス・マッチとも言い難い、この妙な快感よ。
 武藤はさらに12曲目「ロマンティックにいかせて」も担当。“赤いスイートピー”を思い起こさせるような甘い和音進行を最大限に活かすような80’sミドル・オブ・ロード風のアレンジは流石の一言。そう、例えば来生たかおや佐藤隆など、あの時代の男性シンガーのみが持ち得ただろう色香がマエケンの歌声にこのような形で宿るとは。ギンギンのサステインで闖入してくるギター・ソロなど、実に悶絶もの。

 そして、5曲目は元・森は生きているの岡田拓郎が手掛けた。これも前述の武藤とは違った意味で強烈に「あの時代」を感じさせるトラックだが、昨今のシティ・ポップ再評価のなかから、現代へと繋がる要素を取り出して純化・培養させる手腕は流石の一言。佐藤博の80年前後諸作の如きアーバン且つバレアリックな響きの中に、マエケンのジェントルな歌声がフロートし、夢見心地のメロウ歌謡世界となっている。
 続く6曲目“マイ・スウィート・リトル・ダンサー”では、マエケンが出会ったストリップ・ダンサー「さゆみ」について歌われる。このように女性固有名詞を歌の中に綴るという、いかにも歌謡曲的な行き方が、まったく嫌味にならずに織り込まれるのだ。前曲に続き岡田がアレンジを手掛けたオケは、ニール・ヤング“Out On The Weekend”を思わせ、フェードアウト後再び焦燥感に満ちたフリーキーなサックスとマエケンの絶唱ボーカルが出現するところなどは、まるで南正人の名作『回帰線』的歌謡アシッド・フォーク世界だ。
 岡田は更に8曲目“SHINJUKU AVENUE”も担当した。先述の“今の時代がいちばんいいよ”と偶然呼応するような『アストラル・ウィークス』的世界にも聞こえてくるが、スティール・ギターの繊細な音色や精緻な音響処理に、かつての森は生きているの作品をはじめとした岡田自身の美意識が色濃く反映されており、新宿について歌われる歌詞と相まって、強く風街的心象風景を立ち上がせるのだった。
 
 
 そして、7、10、11、13曲目の計4曲と、4人のプロデューサーのなかで最多の楽曲を担当した石橋英子。マエケンとの息の合ったコラボレーションぶりということでは、やはり抜群の成果を上げていると言って良いだろう。
 7曲目“大通りのブルース”で聞かれる、自身の流麗でいてほのかな苦味を湛えたピアノプレイ、ジム・オルークによるギター、ジョー・タリアによるドラムが紡ぎ出す世界は、石橋が今マエケンの最良の音楽的理解者であるということを強く感じさせるものだ。普段着のままのマエケンに、さっとブレザーを羽織らせるような、そんなリラックスした当意即妙が漂う。
 10曲目“人生って”。まるでエレファント・カシマシ“悲しみの果て”を思わせる思い切ったイントロにつづいて、ソフトな語り口で「ジャズ喫茶のママが言った」とマエケンが歌い出し、シャウト、サックスの嘶きと続く流れの堂々たることといったら! 歌謡曲とジャパニーズ・ロック的世界の習合を、こんな新鮮に響かせることが出来るのは、一重に「攻める」と「退く」のバランス感覚の緻密さの技あってこそだろう。
 11曲目“いのちのきらめき”は、一転して静謐な美しさに満たされる。中高音域のドローンが空間に淡い色彩を漂わせる中、「どうして」という、疑問形でありながら希求にも似た詞が反復されていく。シルキーな音像の中に、さらにギターとドラムが静かに彩りを加えていく。まるでこれは、「ニュー・エイジ歌謡」とでも言おうか。
 そして13曲目にして終曲の“防波堤”。これも先述の「嵐~星での暮らし~」と併せて本作を象徴する1曲だろう。いつになくロマンティックな言葉遣いで描かれる恋愛風景を優しく包み込むオケ。この美しき、そしてオルタナティヴな「中庸」よ。荒木一郎を思わせるマンダムな節回しにそっと寄り添い、あくまで歌をとその歌手を主演として際立たせようとする筆致。マエケンが目指した歌謡世界はまさにこれだ! という風格が立ち上り、アルバム・クローザーにふさわしい曲だ。

 今私は、ああ、「歌手」の歌を聴いたんだ、という非常な満足感とともにある。一個のエポックな歌謡作品として、歌がマエケンを召喚し、歌わせしめているような、そんな感触は、かつてあった綺羅星の如き歌謡曲を「プロ」の歌唱で聴いたときの充実感に似ている。
 しかしそれでもマエケンの歌である限り、歌と同じくらい、マエケンそのものも、相変わらず聞こえてくるのだ。どんなフィールドで活動しようとも、サングラスの奥に覗くあの優しげな瞳で、常に身の回りを鋭くピュアーに眺めるその視点だけは変わらない。どれだけ身の回りが激しく移ろおうとも、美しいものを美しいままに、はっしと掴まえようと、時に身悶えのするほどの真摯さで向かい合う、そんな姿が多くの人を魅了する結果であるに違いない。
 様々なパートナーを得て完成されたこの堂々たる『サクラ』。シンプルな言葉遣いによって外へ開かれた印象を与える歌詞表現ともに、味わえば味わうほどに、ウェルメイドで繚乱たるアレンジの妙味の虜になると同時に、そこで遊ぶマエケン自身のジュブナイルが、かえって我々の胸に迫り来る。
 ジャケット写真にはサングラスを外し、眩しそうにするマエケンの姿。でもその瞳はこれまで以上にキラリンとしているではないか。

Merzbow - ele-king

 ノイズ・ミュージックとVaporwaveの近似性については兼ねてから考えていたことだ。かつて秋田昌美が提唱した「スカム・カルチャー」という定義は、インターネットの下層に蓄積する消費社会の残滓に美学を見出したナードたちが、それを冗談半分にこねくり回すことで成立した初期Vaporwaveの意匠にも通ずる側面があるように思える。80~90年代のノイズ・ミュージック、そしてゼロ年代のVaporwave……。思想もスタイルも対極に位置していた両者がインターネット上で時代を超えて交わるとき、もはや縦の音楽史としてはあり得なかった文脈を経て、今年、Merzbowの『Pulse Demon』は再発を果たすこととなる。

 Merzbowといえば、80年代から現在に至るまで勢力的に活動を繰り広げているミュージシャンとして有名である。去年〈スローダウンRECORDS〉からリリースされたduenn、Nyantoraとのコラボレーションアルバム『3RENSA』、そのリミックス・プロジェクト『3RENSA_fb01』『3RENSA_fb02』『3RENSA_fb03』『3RENSA_fb04』が各所で大きな話題を呼んだことも記憶に新しい。そんな彼が1996年にリリースしたジャパノイズの金字塔『Pulse Demon』は、まさにMerzbowの代表作といっても差し支えないだろう。しかし、なぜいま、20年以上の時を経て『Pulse Demon』が再発に至ったのだろうか。

 この作品の再発を手掛けたのは、インダストリアルやノイズ・ミュージックに熱心なリスナーには耳馴染みのないであろう〈Bludhoney Records〉というアメリカのレーベルだ。それもそのはず。じつはレーベルのルーツを辿ってみると、意外にも行き着く先はVaporwaveである。レーベルのカタログナンバー1を飾る、OSCOB / Digital Sexの『OVERGROWTH』は、『ローリング・ストーン』でも取り上げられたVaporwaveの傑作、2814の『新しい日の誕生』をリリースしたことでも知られる〈Dream Catalogue〉のリイシューである。もともと〈Bludhoney Records〉はVaporwaveの美学に則ったカセットテープ・レーベルとして始動したのだ。

 〈Bludhoney Records〉は、日々先進的なエレクトロニック・ミュージックをリリースしているが、このレーベルのカタログに、Merzbowの『Pulse Demon』が加わったとしても、それは全く不思議なことではない。ここ近年、Vaporwaveシーン全体において、サンプリングを主体とした80年代から90年代の懐古趣味的な従来のスタイルからの脱却を図ろうとする動きが見て取れる。この数年で、ノスタルジアを標榜としたVaporwaveのベクトルは、夢想的な世界からフューチャー・リアリスティックな未来都市へと一気に移り変わってしまった。その鬱屈とした退廃的な未来都市のモチーフは、『ブレードランナー』や『攻殻機動隊』といったSF作品の世界を彷彿とさせる。Vaporwave特有のスクリューという技法が生み出した重厚なダブのようなビートは、のちに90年代のハードコアテクノと結びついたHardvapourというタームへと昇華し、サンプリングソースを執拗に引き伸ばすことで発生した無限にも続いていくような陶酔的アンビエンスは、陰鬱な都市の夜に響くかのような重厚なドローン、ダーク・アンビエントスタイルのアーティストを数多く輩出することに繋がった。Vaporwaveシーンは今、もっと先鋭的で刺激的なサウンドに飢えているのだ。そんな流れの中で、〈Bludhoney Records〉は、ASTROの名義やC.C.C.C.での活動でも知られる長谷川洋を迎えたスプリットアルバム『Saturnus Cursus』をリリースしている。

 ところで、1988年にドイツのユニット、Softwareがリリースした『Digital-Dance』は、YouTubeに無許可で転載された音源が「Vaporwaveっぽい」という理由から〈100% ELECTRONICA〉を主宰するESPRIT 空想ことGeorge Clantonの耳に止まり、リイシューを果たす結果となった。インターネットによって、あらゆる時代の音楽にアクセスできる現代、時系列に沿った縦の音楽史を語ることに、もはや意味などあるのだろうか。並列の点と点の偶発的な交わりこそが、新たな潮流を生み出すのだろう。それは偶然の連なりであり、必然でもある。『Pulse Demon』で繰り広げられる、曲間の切れ目なく押し寄せる冷徹なメタルパーカッションと、スペイシーなEMSヴィンテージ・シンセの衝突、まるで慟哭のような生命力に満ちたハーシュのうねりは、2018年のいま、時代がもっとも求める音色なのであろう。歪に捻じ曲げられた文脈を経て、パッケージも新たにカラーヴァイナル、カセットテープで再発がなされる本作。個人的にはCDとして手元に欲しかった作品でもあるが、〈Relapse Records〉のマスタリングによるあの暴力的な音圧が、アナログな音域でどのように鳴り響くのか楽しみである。

Joe Armon-Jones - ele-king

 2018年はロンドン、とりわけ南ロンドン周辺のジャズ・シーンにおいてエポック・メイキングな一年となりそうだ。コンピの『ウィー・アウト・ヒア』を皮切りに、サンズ・オブ・ケメットアシュレイ・ヘンリー、ヌビア・ガルシア、オスカー・ジェローム、イル・コンシダードなどの素晴らしいアルバムやEPが登場している。テンダーロニアスが主宰する東ロンドンを拠点とする〈22a〉の動きも活発だし、カマール・ウィリアムスのアルバムなどこれからリリースを控えた話題作も待っている。トム・ミッシュユナイティング・オブ・オポジッツ、ブルー・ラブ・ビーツなど、それらジャズ・ミュージシャンも関与している作品は多い。こうしたロンドンの新しいジャズ・ミュージシャンたちの動きが見え始めたのは今から5年ほど前からだが、2016年あたりからUKのメディアでも頻繁に取り上げられるようになり、そうした動きが今年になって一気に爆発している状況だ。そして、そんな盛り上がりの決定打となりそうな作品が、ジョー・アーモン・ジョーンズの『スターティング・トゥデイ』である。

 ジョー・アーモン・ジョーンズは1993年生まれのピアニスト/キーボード奏者及び作曲家で、既にエズラ・コレクティヴのメンバーとしても知られる存在だ。ミュージシャンだった両親の影響でクラシックやジャズの教育を受け、最初の頃はチック・コリアの曲などを練習していた。高校卒業後にオックスフォードからロンドンに出てきて、音楽大学で専門的に学ぶと共にジャズ・ミュージシャン育成機関のトゥモローズ・ウォリアーズに出入りし、そこで知り合った仲間と2013年頃に5人組バンドのエズラ・コレクティヴを結成する。エズラ・コレクティヴはジャズ、ジャズ・ファンク、アフロ・ビートをミックスした演奏を行ない、ファラオ・モンチのヨーロッパ・ツアーの演奏を務めたことで名を上げ、『チャプター7』(2016年)、『ファン・パブロ:ザ・フィロソファー(哲学者)』(2017年)という2枚のEPをリリースしている。『ファン・パブロ』に収録されたサン・ラーの“スペース・イズ・ザ・プレイス”のカヴァーなど、クラブ・ジャズ的なアプローチを見せるバンドであり、それはジョーはじめメンバーがジャズと同じようにヒップホップやクラブ・ミュージック、アフロやレゲエ/ダブにも接してきており、それらの融合から自然と出てきたものである。また、クラブなどのサウンドシステムの重要性も理解し、ロンドンのストリート・ミュージックを体現するような存在でもある。

 エズラ・コレクティヴでの活動の一方、ジョーはビートメイカーでベーシストのマックスウェル・オーウィンと共同で『イディオム』(2017年)を発表する。こちらはジャズとディープ・ハウスやブロークンビーツのフュージョン的なEPで、ジョーの近所に住むヌビア・ガルシアや、ジョーとは学校時代からの友人であるオスカー・ジェロームらが参加している。マックスウェルはジョーのルームメイトでもあり、彼からエレクトロニック・ミュージックについていろいろと影響を受け、それが反映された作品と言えるだろう。そして、『ウィー・アウト・ヒア』にもエズラ・コレクティヴと自身のソロ名義でそれぞれ作品提供を行い、満を持してリリースしたソロ・デビュー・アルバムが『スターティング・トゥデイ』である。もっとも、『スターティング・トゥデイ』の録音時期は2017年の1月で、『ウィー・アウト・ヒア』などのセッションよりも前のものとなる。

 『スターティング・トゥデイ』には現在の南ロンドンの最高のミュージシャンが集まっている。ヌビア・ガルシア、オスカー・ジェローム、マックスウェル・オーウィンという『イディオム』の録音メンバーに加え、ジョー同様にいまもっともソロ・アルバムが待ち望まれるモーゼス・ボイド、モーゼスとツイン・ドラムを形成するクエイク・ベース、エズラ・コレクティヴのトランペット奏者のディラン・ジョーンズ、同サックス奏者のジェイムズ・モリソン、ブルー・ラブ・ビーツのデヴィッド・ムラクポル、オスカーと共にアフロビート・バンドのココロコで演奏するベーシストのムタレ・チャシらも参加。女性シンガー・ソングライターのエゴ・エラ・メイ、ラスタファリ系ポエトリー・シンガーのラス・アシェバーらもフィーチャーされる。そして、ミックスを手掛けるのはガリアーノや2バンクス・オブ4などの活動で知られるディル・ハリス。アシッド・ジャズ時代より活動するベテランだが、最近はキング・クルールの作品にエンジニアとして関わり、サンズ・オブ・ケメットの『ユア・クイーン・イズ・ア・レプタイル』では共同プロデュースも行なうなどキーマンである。また、ジョーはインタヴューでカイディ・テイタムからの影響も述べているのだが、そうした先人から音楽や経験がしっかりと受け継がれていることがディルの参加でも見て取れる。

 収録作品はエズラ・コレクティヴのEPや『イディオム』に比べてずっとバラエティに富み、いろいろな音楽や人種が交錯するロンドンらしい折衷的で雑食的なものだ。ジャズ、アフロ、レゲエ、ダブ、ソウル、ファンク、ハウス、テクノ、ヒップホップ、ブロークンビーツなど、ジェロームが吸収した様々な音楽のエッセンスが詰まっている。セオ・パリッシュの“フットワーク”にインスパイアされて作ったタイトル曲の“スターティング・トゥデイ”は、ディープにジワジワと展開していく中から一気に爆発していく疾走感が素晴らしいジャズ・ファンク。ロニー・リストン・スミスの“エクスパンションズ”に比類するようなアフロ・スピリチュアリズム、コズミック・ジャズ感覚を備えているのだが、スタジオでメンバーが揃って同時に演奏し、何回かテイクを重ねる中、最後の演奏にラス・アシェバーが加わったテイクが採用されたそうだ。緊張感やテンションはこうした一発録音の生演奏でしか出せないものであり、それがジャズの醍醐味であることを再認識させられる。“オールモスト・ウェント・トゥー・ファー”は最近のサンダーキャットにも通じるソウルフルなAOR調のナンバー。ジョーもサンダーキャットからいろいろと影響を受けていることを述べているのだが、彼と同様に自身でもヴォーカルをとっている。

 ブロークンビーツ・フュージョンとでも言うべき“ラギファイ”でのウーリッツァーの音色には、ロニー・リストン・スミスからロバート・グラスパーまでを彷彿とさせる要素が見えるのだが、この曲はキング・クルールの楽曲にも関わるラギファイにインスパイアされた曲。ジョーが好きなプロデューサーのひとりで、実際にレコーディングのときもスタジオに遊びに来ていたそうだ。そうして聴いてみると、ここでのラップもどこかキング・クルールにオーバーラップするところがある。ジョーがアルバムで演奏する鍵盤はほとんどウーリッツァーで、このレトロだがソウルフルな温もりを持つ楽器は楽曲の色彩に大いに役立っている。その顕著な例のひとつがダブの要素の色濃い“モリソン・ダブ”で、ダブ特有のマイルドな浮遊感にうまくマッチしている。この曲はジェムズ・モリソンにちなんだ曲のようで、彼のテナー・サックスの奏でる哀愁感もダブの雰囲気にはピッタリだ。“ロンドンズ・フェイス”は不均衡にズレた奇妙なビートを持つのだが、スタジオでのセッション中にクエイク・ベースがモロッコのグワナのリズムを遊びで演奏してみたところ、それが面白くて取り入れたそうだ。オスカー・ジェロームがギターとヴォーカルで参加しており、中間ではサン・ラーのように深遠で混沌とした展開が待っている。この曲に象徴されるように、作曲者はジョーだが、演奏には参加したミュージシャンの個性やアイデアが生かされており、ジョー個人の音楽性と言うよりも、現在の南ロンドンのシーンを代弁するものとなっている。いろいろな音楽を柔軟に、貪欲に取り入れ、面白いと思うことをどんどんやっていく、そんな実験的なコラボが日夜繰り広げられているのが南ロンドンのジャズ・シーンなのである。

interview with Joe Armon-Jones - ele-king


Joe Armon- Jones
Starting Today

Brownswood/ビート

JazzSoulFunkAORDubBroken Beat

Amazon

 ジョー・アーモン・ジョーンズは、UKジャズの新世代を代表する20代半ばのピアニストであり、先日リリースされた彼のデビュー・アルバム『スターティング・トゥデイ』には、いままさにはじまりの真っ直中にいるUKジャズの前向きなヴァイブレーション/喜びが詰まっている。いち音楽ファンとして、こうした新しい音楽にワクワクできるのはこのうえない幸せだとつくづく思う。
 そもそも昨年リリースされた「Idiom」がいまだ12インチにしがみついている粘り強いファンのあいだで話題になった。マクスウェル・オーウェンとの共作になるこの6曲入りは、ジャズ・セッションによる(つまり即興性のある)ハウス・ミュージックで、ディープ・ハウスやデトロイト・ビートダウン系のファンからロバート・グラスパー/サンダーキャットが好きなリスナーまで虜にした。自慢じゃないが、ぼく(=野田)もそのヴァイナルを所有している。というのも、アーモン・ジョーンズの音楽には、若さや勢いだけではない、極上のメロウなフィーリングがあるからだ。嘘だと思うなら、アルバム2曲目の“Almost went Too Far”を聴いて欲しい。
 無論のことUKジャズ印の雑食性はある。アルバム『スターティング・トゥデイ』を聴いていると、この2年ほどの音楽トレンド(フュージョン、ハウスなど)も見えるだろう。ただいま絶賛制作中の別冊エレキングのジャズ特集号には、アーモン・ジョーンズのインタヴューも掲載されているが、紙メディアゆえにカットせざるえない部分があった。せこい考えだがそれはもったいないし、アシッド・ジャズ以来の活況を見せているUKジャズの逆襲、その第一弾としてお届けすることにした。質問は菅澤(ブルシットのドラマー)がほとんど考えてくれた。

チック・コリアに影響を受けたとお聞きしました。彼はオーセンティックな4ビートのジャズからエレクトリック・マイルス・バンドの脱退後に結成したサークルでのフリージャズ、そしてリターン・トゥー・フォーエヴァーでのプログレッシヴなフュージョン的アプローチまで、その音楽性は幅広いですよね。彼の音楽のどんなところに影響を受けたのでしょうか?

JAJ:難しいな。僕はもちろん、チック・コリアの大ファンで……うまく言えないけど、彼のチューンを聴けばもうすぐに、彼だってわかるんだよね。彼のスタイルはそのくらいユニークなんだ。どんなことをやっていても。ハービー・ハンコックみたいな人とプレイする時でさえ、それが伝わってくる。本当にユニークな彼独自のスタイルがあるってことなんだ。そこじゃないかな。

UKにはジョン・テイラーやスタン・トレイシーをはじめとした素晴らしいピアニストがいますが、UKのジャズ・ピアニストで影響を受けた人はいますか?

JAJ:大勢いるよ。いまだったら、サラ・タンディ(Sarah Tandy)とか。ものすごいピアノ・プレイヤーで、イカレてるっていうか、クレイジーなんだよね。アシュリー・ヘンリー(Ashley Henry)っていう人もいる。うん、正直言ってロンドンのピアニストで僕が今好きなのは、その二人。でももちろん、他にも大勢いて……ロバート・ミッチェル(Robert Mitchell)も驚異的なピアノ・プレイヤーだし、デイヴ・コール(Dave Koor)も。彼はジ・エクスパンションズ(The Expansions)っていうバンドでやってる。最高だから、チェックする価値があるよ。うん、今は大勢才能のある人たちがプレイしてる。

現在のロンドンのジャズ・シーンを語るうえで〈jazz re:freshed〉の存在はかなり大きいと思います。ここで演奏されているジャズはオーセンティックなジャズに対するカウンターとしての側面もあるように感じるのですが、そういった意識はあると思いますか?

JAJ:うん。僕自身はあんまりそれぞれの音楽に定義とか、名前を付けすぎたくないんだけど、〈jazz re:freshed〉にはもちろん……『独自のサウンドがある』とは言いたくないな。むしろ、もともとジャズにはなかったようなサウンドを受け入れてるんだよ。ストレートなジャズ以外のサウンドを受け入れてる。他のサウンドをプッシュしてるんだ。そこが大きな違いを作ってると思う。例えば、僕らが最初に始めた頃、〈jazz re:freshed〉ではどんなバンドでもプレイできるチャンスがあった。彼らがその音楽を気に入って、好きになれば、自分たちがやりたいことがやれたんだ。〈jazz re:freshed〉をやってるアダム(・モーゼズ、Adam Moses)とジャスティン(・マッケンジー、Justin McKenzie )にはギグに来る観客とかからもたくさんリクエストが来てるはずなんだけど、実際、彼らは自分たちが気に入った音楽をギグに出す。それだけなんだ。

“Starting Today”で歌っているラス・アシェバーはどんな人なんでしょう? その場の即興ということは、彼があの歌詞を書いたんでしょうか。

JAJ:彼が“書いた”っていうより、フリースタイルでやったんだよね。彼がスタジオにいて。あれはかなり遅い時間、その日のセッションを終えようとする頃だった。アシェバーはその時間まで来られなかったんだけど、僕らはその日ずっと“スターティング・トゥデイ”のインストゥルメンタル部分をレコーディングしてた。で、アシェバーが夜の7時頃来たのかな? で、セッションの最後にワンテイク録ってみよう、って。彼の場合ワンテイクで十分だしね。彼にトラックを聞かせる暇もなかったし、今どうなってるかよく説明もしないまま、セッティングして始めたんだ。そしたら彼がその場であのフレーズを歌いだしたんだよ。

英語が苦手なので教えて欲しいのですが、たとえば表題曲の“Starting Today”ではどのような詞が歌われているのでしょうか? またそれぞれの曲の詞はその曲のヴォーカリストが書かれているのですか?

JAJ:うん、そう。僕が歌詞を渡して、シンガーに歌ってもらうなんてできないからね。歌うっていうのは、すごくパーソナルなことだから。“スターティング・トゥデイ”では、アシェバーが最後の方で『アシェオ』って繰り返すんだけど、あれは『生まれ変わる』って意味なんだ。生まれ変わって、再び始める。曲自体、新たにもういちどはじめること、新しい旅をはじめることについてなんだ。歌詞っていうのはもちろん、それぞれの人に違う意味を持つものだけど、僕にとってあの曲はそれについて歌ってるんだよ。

“Almost Went Too Far”はアルバムのなかでもAOR寄りの曲ですよね。この曲では自身が歌われていることもあって、MndsgnやサンダーキャットといったLAのミュージシャンと共振する要素を感じさせますが、彼らの音楽はあなたにとってどんな存在ですか? またAORで好きなミュージシャンはいますか?

JAJ:彼らのことは大好きだから、そう言ってもらって嬉しいね。どんな存在かっていうと難しいけど……彼らの音楽で一番好きなところ、もっともインスパイアされるところのひとつは、彼らは特に訓練を受けたシンガーとかじゃないんだけど、自分の言葉を音楽に乗せられる。そこがクールなんだ。あとホーム・スタジオで作られてて、サウンドに手作り感があるし。だから、そう、僕も自分の音楽を外に出せる、っていう自信を与えてくれたような存在かな。

サウス・ロンドンのジャズを聴いているととくにドラマーがアフロビートの影響が強いように感じます。今回のアルバムに参加しているモーゼス・ボイドもトニーアレンからアフロビートのレクチャーを受ける動画があがっていたりもしますが、あなたにとってアフロビートの魅力は?

JAJ:もちろん、エズラ・コレクティヴを通して、アフロビートの影響は僕も受けてる。でも、僕より通じてる連中がいるから。実際、エズラ・コレクティヴのフェミ(・コレオソ、ds.)、TJ(・コレオソ、b.)、ディラン(・ジョーンズ、Tp.)、ジェームズ(・モリソン、sax.)もみんなフェラ・クティやそのあたりの音楽にすごく影響されてるんだ。だから、あのリズムは確実に僕にも大きな影響を与えてる。アルバムでプレイしたドラマーも当然そうだし……ただ僕にとっては個人的に、このアルバムではダブやサウンドシステム・カルチャーからの影響の方が大きいんだ。でもアフロビートの影響ももちろんあるし、実際、影響されない方が難しい。ただ今回は、サウンドシステム・カルチャーの方が前面に出てると思う。

”Ragify ”に参加しているBIG SHARERについて調べたのですが、ほとんど情報を集められませんでした。彼はラッパーとして活動しているのですか?

JAJ:彼もサウス・ロンドンでやってて……ビッグ・シェアラーはルーク・ニューマン(Luke Newman)としても知られてるんだ。〈STEEZ〉っていうイベントをオーガナイズしてて、僕らも出たことがあって。あと、彼はサウスポートっていうバンドもやってた。すごく面白い男で、彼とはギグを通じて知り合ったんだ。実際、僕は彼がオーガナイズしたギグでいろんなミュージシャン、いろんな人たちについて知ったし。彼はサウス・ロンドンの音楽シーンが盛り上がってきた頃からずっとやってるんだ。しかもものすごく才能があって、歌も歌える。“Ragify”ではラップしてるけど、アウトロ・トラックで歌ってるのも彼なんだよ。

最後の曲”OUTRO (FORNOW)”からはディアンジェロの影響を感じさせますが、いかがでしょうか?

JAJ:もちろん、そうだね(笑)。とくにサウンド・プロダクション。ヴォーカルのレイヤーがたくさんあって、いろんなことが起きてる、っていう。あのトラックで歌ってるのはビッグ・シェアラー、ルークと、あとエゴ・エラ・メイ(Ego Ella May)っていう女の子も歌ってるんだ。素晴らしいシンガーだから、彼女はチェックした方がいいよ。若いシンガー・ソングライターで、EPが6月に出るはず。きっとすごい作品になると思う。彼女は僕の家に来て、ほとんどの曲でバッキング・ヴォーカルとかをやってくれたんだけど、“アウトロ”は彼女とルークのヴォーカルを混ぜたものになった。それが気に入ってるんだ。

※UKジャズの逆襲(2)に続く……

タクシー運転手 約束は海を越えて - ele-king

 忘れてた。昨年暮れ、ele-king booksの『超プロテスト・ミュージック・ガイド』に原稿を書くことになって、10代の時に耳に入ったポリティカル・ソングをあれこれと思い出すことができて、我ながら大した記憶力じゃないかと思っていたのに、すっかり忘れていた曲があった。白竜の“光州シティ”である。正確にいうと「10代の時に聞いた」のではなく、1981年に“光州シティ”という曲が入っていたがために「白竜のデビュー・アルバムは発売禁止になった」ということを知っただけで、曲そのものにショックを受けたわけではなかった。実際に曲を聴いたのはもっと後のことで、調べてみると、それは自主製作盤としてライヴ会場では売られていたらしい。そこまでは知らなかった。ニカラグアの政変をタイトルにしたクラッシュの『サンディニスタ!』は聴いていたのに、その翌年に韓国で起きた「光州事件」にはそこまでの興味はもっていなかったということだろう。そして、例によってどんな作品かもよく調べずに観始めたチャン・フン監督『タクシー運転手』が「光州事件」を扱った作品だということがわかった瞬間、発売禁止のことまで一気に思い出すことになった。ああ、これか。ということは、あっという間に曲にして、さっさと葬り去られたということだったのか。素直に発売されていた方がむしろ僕の記憶には残らなかったかもしれない。「光州事件」というキーワードはそれ以来、いつも頭のどこかにあり、それがいま、目の前のスクリーンで再現されている。“光州シティ”でキーボードを弾いているのは、ちなみに小室哲哉である。

『映画は映画だ』(08)というウィットの効いた作風でデビューしたチャン・フン監督は前作の『高地戦』(11)でもすでに大きく社会派に舵を切っていた。南北朝鮮を分ける38度線がどのようにして決まったのかを扱った『高地戦』は目を疑うような内容で、それこそ何日か前にキム=ジョンウンとムン=ジェインが交代で跨いだあのラインは僕には死体の山にしか見えなかった。『高地戦』ほど無力感を覚えた映画も珍しく、さらには同じ民族に対してここまでやるかというテーマが『タクシー運転手』には引き継がれている。ストーリーは実に単純で、日本のプレスセンターにいたドイツ人ジャーナリスト、ピーターことユルゲン・ヒンツペーター(トーマス・クレッチマン)は光州で何かあったらしいという情報を耳にし、単身、韓国に乗り込む。家賃が払えなくて困っていたタクシー運転手、キム・マンソプ(ソン・ガンホ)はソウルから光州まで往復してくれれば大金を払うというピーターを他の運転手から横取りし、軍の検問を突破して光州に辿り着く。政治にまったくといっていいほど関心を持っていないマンソプは金さえ貰えればいいと思っていたものの、チョン=ドハン(全斗煥)政権が光州で行なっていた虐殺を目の当たりにして動揺し、自分の目の前で起きていることをピーターが世界に報道しなければならないと思うようになっていく。僕にとっては馴染みがなかったけれど、映画はニュースなどで報道された場面がそっくりに再現され、さながらドキュメンタリーのようなつくりなのだという。エンドロールの前には役者ではなく、ユルゲン・ヒンツペーター本人が出てきて、回想を語るシーンもある。

 光州で軍事独裁に抗う様々な人々。キム・マンソプが光州で出会う学生や同業者たちはかなり念入りに造形されている。ソウルで軍事独裁に反抗していたのは一部の学生だけで、それらは理解しがたいものだと思っていたマンソプも光州市民と行動を共にしているうちにだんだんどっちが正しいのかわからなくなってくる。一気に考え方が変わってしまうわけではないところがこの映画は上手い。「おにぎり」の使い方も巧みだった。韓国映画を何本か観たことがある人なら、韓国にはチョルラド(全羅道)差別があることにはすでにお気づきのことでしょう。『サニー 永遠の仲間たち』(12)のような楽しい映画でも発音が少し違う友だちがそのことを隠そうとしていたり、最近でも『荊棘の秘密』(16)で「奥さんは全羅道出身だからなー」というわざとらしいセリフがあったりと、気になり始めるとあちこちに爪痕は残されている。チョン=ドハンがなぜ光州で歴史的な国民の大虐殺を始めたかは、民主化を求めるデモが特に激しかったからということもあるのだろうけれど、おそらくこの差別も影響しているだろうとは言われている。そのことは特には『タクシー運転手』では描かれていない。さらには軍事独裁を容認していたアメリカについても言及はない。実在したタクシー運転手の目を通して「光州事件」が淡々と描かれ、韓国国内でさえ民主化運動ではなく長らく「北朝鮮に扇動された暴動」だと見なされていたという「光州事件」を79年から始まった「ソウルの春」と同じものだったと位置付けていく。そして、後半は取材テープをどうやって外に持ち出すかというアクション・モードに切り替わり、『アルゴ』や『コロニア』といった政治サスペンスと同じ楽しみに変えてくれる。「光州事件」がどれだけのものであったかは韓国の猟奇映画に出てくるシリアル・キラーの多くが「光州事件」の年に生まれたという設定になっていることからも窺い知れるものがある。良いか悪いかはともかく、それだけで説明されてしまうことがあるということなのだろう。


惑星観測 - ele-king

 おかげさまで好評をいただいております『ボーカロイド音楽の世界 2017』ですが、その刊行を記念してなんと、トーク・イベントが開催されます! 出演は、同書の監修を務め、またweb ele-kingのレヴューでもおなじみのしま、そして同書に原稿を寄せてくださったマンボウおよびアンメルツPの3氏。
 当日はボカロとジャズの関係についてや、初音ミクと同じく昨年10周年を迎えた鏡音リン・レンについてなどのトークをはじめ、数多くの楽曲が紹介される予定です。あなたのまだ知らない1曲に出会えるかも。
 5月26日、ぜひ会場まで足をお運びください。

惑星観測
『ボーカロイド音楽の世界 2017』刊行記念トーク・イベント

初音ミク10周年という節目を迎え、大きな盛り上がりを見せた2017年のボーカロイド音楽シーン。その実態を振り返る書籍『ボーカロイド音楽の世界 2017』の出版を記念して、トーク・イベントを開催!

『ボーカロイド音楽の世界 2017』はどのような意図のもと生まれたのか? 2017年はどんな作品があったのか、そして2018年の現在はどんな動きが出てきているのか? 『ボーカロイド音楽の世界 2017』監修者のしま氏とクリエイターのマンボウ氏にゲストを交え、アングラからジャズまで、さまざまな切り口で現在のボカロ・シーンを大観測!


[イベント情報]

会場:ロフトプラスワンWEST(大阪)
日時:5月26日(土)
OPEN 17:00 / START 18:00
出演:しま、マンボウ、アンメルツP

前売り ¥2,000 / 当日 ¥2,500(飲食代別)※要1オーダー¥500以上
前売券はイープラス、ロフトプラスワンウエスト電話予約は4/28(土)10時~発売開始!
■購入ページURL(パソコン/スマートフォン/携帯共通)
https://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010843P006001P002259240P0030001
ロフトプラスワンウエスト電話→0662115592(16~24時)
※ご入場はプレイガイド整理番号順→ロフトプラスワンウエスト電話予約→当日の順となります。

https://www.loft-prj.co.jp/schedule/west/87385


[書籍情報]

ボーカロイド音楽の世界 2017
2018年3月14日 発売
ISBN: 978-4-907276-93-5
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4907276931/

[contents]

VOCALOIDはボサノヴァ――an interview with EHAMIC (しま+小林拓音)

The World of Vocaloid Music 2017
ボーカロイドに関する2017年の重要トピック (しま)
初音ミク10周年のトピック (しま)
鏡音リン・レン10周年のトピック (アンメルツP)
まえがき ~みんながよく話す「ボカロ」という言葉~ (ヒッキーP)
2017年は新陳代謝の年 ~初音ミク10周年を祝った旧世代と無視した新世代~ (ヒッキーP)
ぼからんで見る「2017年」という時代 (あるか)

The 50 Essential Songs of 2017 (キュウ+しま)
The 20 Essential Albums of 2017 (キュウ+しま)

Various Aspects of Vocaloid Music
ボカロとジャズ (Man_boo)
ボーカロイド・アンダーグラウンド (ヒッキーP)
中国ボーカロイド・シーンの発展と現状 (Fe+しま)
VOCALOIDタグ動画におけるニコニ広告の拡大とそのランキングへの影響 (myrmecoleon)


[CD情報]

合成音声ONGAKUの世界
2018年3月14日 発売
PCD-20389
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/B0797M1GSY/

[tracklist]

01. 春野 「nuit」
02. Treow 「Blindness」
03. piptotao 「春 etc.」
04. 羽生まゐご 「阿吽のビーツ」
05. 拓巳 「Kaleidoscope」
06. cat nap 「ぺシュテ」
07. 鈴鳴家 「フリーはフリーダム」
08. 松傘, mayrock, sagishi, 緊急ゆるポート, trampdog 「人間たち」
09. でんの子P 「World is NOT beautiful」
10. のうん 「箒星」
11. ぐらんびあ 「孤独、すべて欲しい」
12. キャプテンミライ 「イリュージョン」
13. Dixie Flatline 「シュガーバイン」
14. yeahyoutoo 「lean on you」
15. Noko 「只今」

THE NOUP - ele-king

 岡山からとんでもないブツが飛んできました。クラブ・ミュージックを通過したオルタナティヴなロック・サウンドを打ち鳴らす新世代バンド、THE NOUP。『バンドやめようぜ!』でもおなじみ、イアン・F・マーティンの主宰する〈Call And Response Records〉が編んだコンピ『THROW AWAY YOUR CDS GO OUT TO A SHOW』にも楽曲を提供していた彼らが、この5月に満を持してファースト・アルバム『Flaming Psychic Heads』を発表します。アートワークを手がけているのはなんと、宇川直宏!
 リリースにあたってメンバーからコメントも届いております。
「THE NOUPとしてこれまで作ってきた曲群をアルバムとしてまとめる際、音の中で常に探り続けてきた、根底に眠る意識を“開く”イメージを視覚的にも表現したいと思い、DOMMUNEの宇川直宏さんに依頼し、素晴らしいジャケットカバーを作成して頂きました。是非、音とアートワークを同時に体感して頂きたいと思います」。
 発売日は5月16日。要チェックです!

バンド名: THE NOUP
タイトル: Flaming Psychic Heads
NOUP3/CD/¥2,200(+tax)
リリース日: 2018/5/16 (水)

曲目:
1. Noup Parade!
2. Utopia
3. Flowmotion
4. Monochrome Dead
5. Impotents Anaaki

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Tower
HMV


■THE NOUP
2013年より現メンバー岡田高史(vo, dr, syn)、矢野駿典(gt, per)、清原基之(ba, syn)で活動開始。
楽曲は主にパルス調のギター、反復する硬質なドラムビートとベースから構成され、そこに囁きかけるかの如きボーカルが加わることで、独特のドライブ感を持ったグルーヴを作りあげる。
最近ではアナログシンセサイザーを導入し、ダンス・ミュージックというカテゴリーではない、よりポリリズミックでミニマルな楽曲も演奏している。
自身のイベント《NOUP PARADE!》を岡山でコンスタントに企画しながら、これまでに3つのカセットテープ、2015年に7インチEP「PARADE!」を自主リリース。2017年には〈Call And Response records〉主宰のコンピレーションCDに参加。
2018年5月16日には1st album『Flaming Psychic Heads』をリリース予定であり、アートワークはDOMMUNE宇川直宏が担当。

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