Home > News > Quit Your Band! - ──イギリス人ジャーナリストによるJポップ批評、『バンドやめようぜ!』刊行のお知らせ
日本人は、さんざん自分たちが海外文化をあれこれ好きに解釈してきたのに関わらず、海外人が日本の文化に口を出すことにまだあまり慣れていない。音楽界はとくにそうだ。オンラインマガジンをやって新たにわかったことのひとつ:海外からも読まれていること。当たり前だが、日本人が海外を見る、海外人も日本を見る。文化的内弁慶がなくなることはないかもしれないが、いずれ衰退はするだろう。パリの日本オタクに受けたことが真の意味での海外進出ではないし、海外とは韓国もインドネシアもそうであり、欧米だけのことではない。21世紀のデジタル・ネット時代を生きる音楽関係者にとってまず必要なことは、これまでドメスティックな評価だけで閉じていた日本の音楽に対して、海外からの解釈もあることを理解し、海外からの評価もまた同時に面白がれるぐらの寛大さを持つこと。
ele-king booksからの今年最後の爆弾は、在日イギリス人ジャーナリスト、イアン・マーティンによる『バンドやめようぜ!』(原題:Quit Your Band! Musical Notes from the Japanese Underground)。
本書は、広範囲にわたる日本ポップス・ロック通史と文化批評によって構成されている。通史のところには、解釈やニュアンスの違い、説明不足など重箱の隅を突かれるような箇所もある(その正確なところは北中正和『にほんのうた』や田川律『日本のフォーク&ロック史』などを読めばいい)。しかしながら裸のラリーズも松田聖子もスーパーカーもひとつの通史のうちに語る試みからは、ぼく自身も含めて日本の音楽メディアが分断を持ってこの国の音楽を語ってきたという事実が浮かび上がる。
もっともこれは、メディアだけの問題ではない。日本の音楽産業界全体が批評性を求めていないし、我こそがこのアーティスト(ジャンル)の理解者であると言わんばかりのマウティングじみたレヴューばかりが無駄に増えていく。しかしこれでは結局は、産業以前の問題として、文化として脆弱になるのもむべなるかな……である。
というわけにもいかないので、翻訳を刊行することにした。著者の好みもあろうが、日本ではまず批判されることのない大物の作品が批判され、悔しいが日本人ライターには言えないことを言っている。あるいは、日本音楽産業界では「当たり前」だと慣らされてしまっていることが、世界基準では奇妙に見えることをあらためて知ること。とくにアイドル論に関しては、セクシャリティ・ポリティクスに関する問題提起ないしは現代の日本文化批評にもなっている。
日本では、ほとんど奇書扱いされたジュリアン・コープの『ジャップ・ロック・サンプラー』は、しかし海外において日本の音楽への注目の起爆剤になった(彼の妄想癖はともかく、せめてその成果は讃えるべきだろう)。マイケル・ボーダッシュによる『さよならアメリカ、さよならニッポン』は、はっぴいえんどの内なるアメリカへの憧憬とそのアンヴィバレンスを見抜きながら戦後ポップ史を分析した。さて、今回は、日本で10年以上暮らしているイギリス人ジャーナリストから見える日本のポップスおよびロック論である。高円寺をこよなく愛する著者は、おそらく日本でもっとも全国のライヴハウスに足を運んでいるライター。原書の副題はドストエフスキーの『地下生活者の手記』のもじり。あまりに構えたりせずに、愛情とユーモアの込められたその解釈を楽しんでいただきたい。(発売は11月25日)
イアン・F・マーティン(著) 坂本 麻里子(訳)
バンドやめようぜ!
──あるイギリス人のディープな現代日本ポップ・ロック界探検記
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■目次
プロローグ
PART1
僕はどんな風に日本の音楽シーンにたどり着いたのか、
そしてそこで僕が発見したのは何だったか
序文
ʼ97の世代
日本の音楽について書くということ
PART2
総合的かつ完全に正確きわまりない日本のポピュラー・ミュージック通史
日本のポピュラー・ミュージックの初期展開
ロックンロール、日本上陸
ニュー・ロック
ロックンロールとガソリンの臭い
薬物不法所持逮捕からニューミュージックまで
成熟を迎えたポップと演歌の硬直化
パンク
ニュー・ウェイヴ
アイドルと歌謡曲の死
J‐ポップと現代日本音楽の誕生
渋谷系、そしてインディを発見した日本
日本音楽の歴史の終わりと永遠のナウの誕生
PART3
ライヴ・アクトたちを見舞う経済的、政治的、そして実際的な
危険の数々、もしくはバンドをやめずに続けるにはどうしたらいいか
高円寺、東京にて
海外へ
日本の音楽は海外でどう受け取られているのか
日本音楽の海外進出作戦
愛のためでも金のためでもなく―ライヴ・ハウス事情
シーン内の政治をさばくには
シーンにある制約を克服するということ
レーベルはくたばれ
言い分は分かるけど、なんでCDの話になるの?
言語と日本人らしさ
すべてのアートは政治的である
サブカルとアイドル
おがくずの詰まった操り人形、音を出す操り人形:―〝夢見るシャンソン人形〟
ピンクのギター
何だって好きなことを言うのも、何も言わないのも同じこと
とは言っても、結局は……
補遺およびシーン観察記:
この本のサウンドトラックとなった音楽とそれらが生まれた場所
日本のレコード・レーベルと地方シーン
オモチレコード
関西アンダーグラウンド
九州アンダーグラウンド
名古屋アンダーグラウンド
インディ・ポップ
バウハウス/東京ノイズ
テクノポップ/ポスト渋谷系
東京ボアダム
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