「Nothing」と一致するもの

cyclo. - ele-king

 2001年に〈ラスターノートン〉からリリースされた、池田亮司とカールステン・ニコライによるユニット cyclo. のファースト・アルバム『. (ドット)』。ソフトウェアの計算ミスなどの「エラー」をテーマとした同作は、パルス音を駆使したグリッチ~ミニマルの名作だが、長らく廃盤となっていたため探し回っていた方も多いだろう。そんな同作が7月30日、装いも新たにリイシューされる。未聴の方はこの機会にぜひ。

世界のエレクトロニック・ミュージック~現代アート・シーンをリードする2人の天才アーティスト、池田亮司とカールステン・ニコライによるユニット cyclo. の原点となる 1st アルバムがパッケージも新たに奇跡のリイシュー! ソフトウェアの“エラー”から生まれた純粋なデジタル・サウンドのリズミカルなビートが構築していく小宇宙。

品番: PDIP-6564
発売日: 2017/07/30 (日)
タイトル: . (ドット)
アーティスト: cyclo. (サイクロ)
本体価格: 2,300円+税
フォーマット: 国内盤CD
JANコード: 4532813535647
レーベル: p*dis / Inpartmaint Inc.

※再発盤/紙ジャケット仕様
※ライナーノーツ付
解説: 國崎晋 (サウンド&レコーディング・マガジン編集人)

[トラックリスト]
01. C0
02. C1
03. C2
04. C3
05. C4
06. C5
07. C6
08. C7
09. C8
10. C9

https://www.inpartmaint.com/site/20358/

ATOLS - ele-king

 最近日本の音楽の話題はコーネリアスで持ちきりだけれど、先日リリースされたばかりの『Mellow Waves』を買ったあなたは、このATOLSのこともチェックしておかなければならない。いやもちろん、知っている人はずっと知っていたと思うが、彼は90年代のIDMに影響を受けたプロデューサー兼ヒューマンビートボクサーで、かつて『サンレコ』誌にて実施されたコーネリアスのリミックス・コンテストでは優秀賞を授かっており、すでに多くのアルバムをリリースしている。
 そんな彼がここ数ヶ月、立て続けに興味深いリリースを続けている。まずは3月に発表された“常世”を聴いてほしい。

 よく知られているように、日本はとうの昔に高齢化社会を迎え、その後高齢社会も通り越して、いまや超高齢社会となっているわけだけれど、ではそんな社会における音楽やサブカルチャーっていったい何なのだろうか? そんな疑問を投げかけているのがこの“常世”である。「Tokyo」と「Tokoyo」がかかっているのもおもしろい。
 その後、5月初頭に壮大なエレクトロニック・チューン“Future Weapon”をリリースしたATOLSは、続けざまに新たなシングル曲“リアリティーのダンス”を発表している。

 ダンスホールである。この曲は昨年のリアーナやドレイクの文脈へと接続することができるし、さらにエクスペリメンタルな要素が加わればイキノックスまで橋を架けることも可能だろう。“常世”にせよ“リアリティーのダンス”にせよ、ATOLSはたしかに「いま」を見つめている。今後の彼の動向から目が離せない。

Félicia Atkinson - ele-king

 フランスの電子音楽家フェリシア・アトキンソンの新作が〈シェルター・プレス〉からリリースされた。活動初期には〈ホーム・ノーマル〉や〈スペック〉などからアンビエントな作品をリリースしていた彼女だが、2015年に同〈シェルター・プレス〉から発表した『ア・レディメイド・セレモニー』あたりから作風がよりエクスペリメンタルな音響作品へと変化。2016年に〈ルーツ・フェスタ〉の主宰としても知られるアンビエント/サウンド・アーティスト、ジェフリー・キャントゥ=レデスマとのコラボレーション作品『コム・アン・スル・ナルシス』をリリースしたことで、「2010年代的エクスペリメンタル・ミュージック・アーティスト」としての存在感が再浮上してきた(その意味で、フェリシア・アトキンソンの創作活動には2015年前後を境に大きな変化と断絶を聴き取ることは可能のはず)。

 本作『ハンド・イン・ハンド』は、フェリシア・アトキンソンの新たな代表作としてカウントすべき傑作である。少なくとも今年前半にリリースされたエクスペリメンタル・ミュージック/電子音楽の中でも格別の出来栄えを示している。昨年あたりからやや飽和気味ともいえるこの種の音楽にあって個性と洗練が絶妙なバランスで同居している稀なアルバムに仕上がっているのだ。

 ロバート・アシュリーやジョアン・ラ・バーバラなど電子音楽史にその名を残す巨匠たちからインスパイアを受けたとされる本作は、電子音楽/ミュジーク・コンクレートの系譜にあるともいえるが(じっさい、GRMのフェスで演奏されるという)、同時に〈ポッシュ・アイソレーション〉からリリースされるノイズ作品のような衝動と色気が同居するような現代性も強く刻印している。この境界や流域の越境性において、2017年現在のエクスペリメンタル・ミュージック/ノイズ・サウンドとして格別な存在を刻み込んでいるアルバムとなっている。

 楽曲の構造も独特だ。即興と構築の「あいだ」を融解させ、連続と非連続の「はざま」に乾いた電子音や環境音の交錯/構造/結晶体が生成し、消えていき、そしてまた生成する。そこには明確な構造の意志と構造を超えたところに表出する感覚的なモノへの感性がある(彼女自身の「声」が、アルバム全編に渡って、モノローグのように、ポエトリー・リーディングのように挿入/レイヤーされていることも重要だ)。

 アルバムには全10曲(ヴァイナルは2枚組)が収録され、フェリシア・アトキンソンは、コンポジション/ミックスのみならずアートワークまでも手掛けている。
 電子音、環境音、声。そしてアートワーク。それらが「意味」を超えて、質感の官能を露わにしていくことで生まれる新世代の実験性と先進性。そう、本作に蠢く音響は、2017年的な新しいエクスペリメンタル・ミュージックの姿を見事に象徴しているように思えてならないのだ。先端的エクスペリメンタル・ミュージック/電子音楽/実験音楽における最良の作品が、いま、ここに生まれた。2017年前半における最良のエクスペリメンタル・ミュージックである。

Counelius - ele-king

 日本のポップ・ミュージックに静かなる高みをもたらした『Mellow Waves』、ついにリリースされましたね。新宿のタワーレコードでは、『Mellow Waves』がJ-POPのコーナー、ロックのコーナー、クラブのコーナー、そして現代音楽のコーナーにも置かれてましたが、J-POPにして実験/アンビエントという両立を果たした作品であることはたしかでしょう。そのコーネリアスが来週11日/12日と2日にわたって恵比寿のリキッドルームで発売記念ライヴをやります(DJは瀧見憲司)。そこで12日ですが、またしても、しつこいようですが、編集部野田が開演までの時間、リキッド内のKATA(Mellow Waves展開催中)でトークをやることなりました。今回のお相手は北沢夏音と松村正人です。18時過ぎを目処にゆるくはじめます。「北沢さんとなら2時間は軽く喋れるだろう」ということですが、そんなに長くはやりません。『コーネリアスのすべて』制作のこぼれ話、ツイッター厳禁でそこでしか話せない秘話をお話しする予定らしいので、開演までの時間つぶしにどうぞ〜〜。(なお、11日のライヴ開演前は、またしても、ばるぼら氏(『アイデア』編集)がトークします。こちらのお相手はデザイナーの北山雅和さんです)

中林忠良×CORNELIUS Mellow Waves展
2017/7/8(土)〜13(木) 
13:00-19:00
入場無料
KATA[LIQUIDROOM 2F]
東京都渋谷区東3-16-6
https://kata-gallery.net/

トークショー (両日ともに 18時~ 予定。)
7月11日(火)  
「Cornelius × Idea
Mellow Waves –コーネリアスの音楽とデザイン- 」 発刊記念
ばるぼら(アイデア編集)× 北山雅和(デザイナー)

7月12日(水)
「ALL ABOUT CORNELIUS コーネリアスのすべて」 発刊記念。
北沢夏音 (音楽ライター)×松村正人(編集人)×野田務(ele-king 編集長)

Akuphone - ele-king

 ワールド系のぶりぶりのハイブリッド・ミュージックをリリースする超注目のパリの〈アクフォン〉(2015年にスタート、台湾の歌手から江利チエミも発表。パリのサブライム・フリーケンシーですねぇ……)から、2枚の強力盤が出ました。
 まずはコゥ・シン・ムーン(Ko Shin Moon)のアルバム『Ko Shin Moon』。これは、ここ数年のハイブリッドなワールド系エレクトロニック・ミュージックを追っている方にはバッチリです。たとえば、〈Keysound〉からのDusk + Blackdown、あるいは〈Soundway〉からのDébruit & Alsarah……そしてもちろんオマール・スレイマンとか、ワールド系と言えばアフロや中南米(あるいはインドとか)が真っ先に浮かぶと思いますが、しかしそうじゃない、中近東の旋律に目をつけているエレクトロニック・ミュージックの最新強力盤です。
 もう1枚は、ジャケからして何か圧倒的なものを感じるのですが、チベット密教のミステリアスなマントラを実況録音盤です。キンク・ゴングによる『チベタン・ブディズム・トリップ』。ブライアン・ジョーンズの『ジャジューカ』を彷彿させる、未知の体験です。
 完璧に別宇宙に飛びたい方は、ぜひ、チェックしてみてください。


KO SHIN MOON
Ko Shin Moon

Akuphone/カレンテート


KINK GONG
KINK GONG: Tibetan Buddhism Trip

Akuphone/カレンテート


Chicano Batman - ele-king

 チカーノという言葉をきいて、何を想像するだろう。ある人は、ギャング、ある人はローライダーやズートスーツ、ある人は、スパングリッシュを想像し、その音楽は、ウエストサイド・ヒップホップか、サンタナのようなラテンロック、またはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのようなラディカルなものを想像するかもしれない。そして、チカーノたちは、メキシコ系米国移民で、米国籍を持っているが、彼らの親たちは、何十年も米国に暮らし、その発展を支えながらも、突然、強制送還される場合がある、ということを知っている人もいるだろう。米国の人気テレビシリーズ、『アグリー・ベティ』の主人公ベティは、チカーナ(チカーノの女性形)であり、父親は不法移民である。
 そんな、「チカーノ」に、アメコミから生まれた、スーパー・ヒーロー、バットマンを掛け合わせた名前を持つ、最高なバンドがいる。それが、ロサンゼルスの、中南米系移民居住区で結成された、チカーノ・バットマンだ。メンバー4人が、エレガントなお揃いのスーツに蝶ネクタイでキメて、ビンテージのオルガンやギターを奏でる姿は、60年代後半からタイムスリップしてきたかのようだ。バンド・メンバーには、チカーノもいるが、コロンビアとメキシコのハーフ、エルサルバドルとメキシコのハーフ、コロンビアからの移民といった感じで、メンバー全員がチカーノというわけではない 。だが、彼らの、2010年に発表されたデビュー・アルバム『CHICANO BATMAN』のジャケットには、チカーノ活動家、セサル・チャベスが率いた、全国農場労働者協会のシンボルである鷲のマークに、バットマンの頭を掛け合わせたイラストが象徴的に記されている。

 彼らのデビュー・アルバム発表時、筆者は、彼らにインタヴューする機会を得て、 「どんな音楽から影響を受けたのか」という、ありきたりな質問をしたのだが、そこで、ベーシストのエドゥアルドから「古い洗面台の蛇口から落ちる水滴、日暮れのコオロギの歌、バス車内で泣き叫ぶ子どもの声、おばさんがメキシコ料理を作るときの包丁の響き…….そんな生活を取り巻く音のすべてが、僕らの音楽の源になっている」と応えられた時、それが彼らにとっての「チカーノ」=コミュニティであると知った。
 彼らの音には、サイケデリック、ロック、ガレージ、オールディーズ、ボサノヴァ、独裁政権下のブラジルで、60年代後半に起こった音楽ムーヴメントのトロピカリア、そして、メキシコの田舎のホームパーティで流れる演歌ランチェーラや、コロンビア発祥のクンビアが、懐かしくも新鮮に溶けあっている。だが、それは、けっして旧き良き時代の擬態を目指していないし、ラテンアメリカ系移民だけに支持されているわけでもない。だからこそ、いま米国のメディアや、音楽業界がこぞって、彼らの存在に注目している。最近では、サタデーナイト・ライヴや、ザ・シンプソンズの脚本を手がけた、有名司会者、コメディアンのコナン・オブライエンのトーク番組、『コナン』にもゲスト出演したばかりだ。

 2017年3月に発表された彼らのサード・アルバム『FREEDOM IS FREE 』は、伝説的ソウル・シンガーのシャロン・ジョーンズのバンド、ザ・ダップキングスのメンバーであった、レオン・マイケルズがプロデュースを手がけた。サイケデリックな南米色が濃厚だったセカンドである前作『CYCLES OF EXISTENTIAL RHYME』(2014)よりも、英語曲が多くなり、カーティス・メイフィールドばりのソウル、ファンクで、華麗に彩られている。そこに、チカーノ・バットマンならではといえる、ラテンの哀感あふれる旋律や軽快なリズムの絡み、ほっこりと艶やかなヴォーカルが健在し、フェラ・クティのような、うねるアフロビートを武器に、体制社会を鋭く批判する曲なども織り交ぜている。

 Freedom is Free(自由は我らのもの)というアルバム・タイトルにもなっている曲では、 自由には代償が引き換えとされがちな昨今 、そして、自由の名をもとに大地を蝕んでいる、新自由主義とグローバリゼーションが地球を包囲しつつあるなか、「騙されるな、おまえを信じて、おまえのままで生きろ」、という根源的な言葉を、私たちに投げかける。

 去る6月21日、チカーノ・バットマンの初メキシコ・ツアーの最終日、メキシコシティの国立劇場小ホールで、彼らのコンサートを見ることができた。2013年の来日時には、筆者はすでにメキシコシティに住んでいたので、コンサートを見逃して、悔しい思いをしたのだが、ようやく夢がかなったのだ。チカーノ・バットマンにとっても、メキシコでのコンサートは、夢の実現であった。離れ離れになって、けっして米国へと渡ることができない彼らの家族たちも、遠くからメキシコシティまでやってきて、コンサートを堪能したからだ。その空気は、会場の雰囲気を明らかにボーダレスにしていたし、温かく包み込まれるような気持ちにさせてくれた。
 しかし、彼らの尖った演奏には目を見張った。メインでヴォーカルを担うバルドは、ギター、オルガン、パーカッションを巧みに持ち替えて演奏し、ガブリエルのドラムや、エドゥアルドのベースは的確かつ、生き物のように変化し、カルロスのリードギターは、アドリヴに走りながらも、冷静にバンドサウンドの肝を握っていて、全体がシンクロするタイミングが絶妙だ。郷愁、メランコリア、感情を揺さぶられるけれど、後ろ向きではない、未来へ向かっている音の渦に、あの場にいた観客たちは、酔いしれた。トランプが、国境に壁を作ろうが、人びとの魂までは、コントロールできない。私たちの自由は、私たちのものなんだ。

 そうはいえども、コンサートは終わり、自由を得るために労働する日常が戻ってきた。いまは、あの美しいコンサートの残り香を確認するかのように、チカーノ・バットマンの音楽を聴くのが、至高の息抜きとなっている。 その時に頭の周りを浮遊する音は、心地よい夢を見させてくれる。そして、人生もまた、夢の果てしない連続だということに気がつくのだった。


Party 51 & Hidden Agenda The Movie - ele-king

 アジアが熱い……などと大雑把に括ってしまってはいけないのだろうけれど、近年東アジアのアンダーグラウンドで注目すべき動きが起こっていることは間違いない。
 来る7月8日、韓国と香港のインディ・シーンを描いたドキュメンタリー2本が上映される。作品は、以前ここでも紹介した『パーティー51』(韓国)と、香港で唯一のライヴハウス「Hidden Agenda」(HA)についての記録映画『Hidden Agenda The Movie』の計2作。後者のHAは営業許可を取らずに DIY で運営していたライヴハウスで、5月に起こったとある事件を受け、今月には閉店してしまうのだという。
 なお当日は、九龍ジョーと松本哉、そして『パーティー51』の日本配給も手掛ける Offshore の山本佳奈子によるトークショウも予定されている。アジアの音楽と社会について知るための貴重な機会を見逃すなかれ。

ソウルと香港の地下音楽シーンを描くドキュメンタリー
2本立て上映+トークショー開催のお知らせ

都内で活動する自主上映グループ After School Cinema Club は、7 月8 日(土)、阿佐ヶ谷 LoftA にて、香港とソウルのインディ・ミュージック・シーンを描いたドキュメンタリー映画2作を上映するイベントを開催します。

上映するのは、『パーティー51』(韓国)と『Hidden Agenda The Movie』(香港)の2 作。この2作に共通しているのは、アンダーグラウンドな音楽シーンにまつわるドキュメンタリーであるという点と、その背景に「高騰する家賃」という問題がある点です。そういった問題がインディペンデントに活動する音楽家や音楽関係者にどのような影響を与えているのか、それに対して彼らはどういった行動を起こしたのか……ということが、が映画の中では描かれています。

『パーティー51』は、都市開発が進み家賃が上昇するソウルで、大企業に立ち退きを迫られた食堂の夫婦と、ライブハウスも減少し将来に不安を募らせていた音楽家たちが協力し、ユニークかつユーモアあふれる方法で抵抗運動を展開する様子を記録したドキュメンタリーです。

『Hidden Agenda The Movie』は、社会問題になるほど家賃が高騰している香港で、何度も国から立ち退きを迫られながらも、完全 DIY でライブハウスを運営する「Hidden Agenda」(HA)の奮闘を記録したドキュメンタリーです。HA では今年5 月、招聘していた UK のバンド TTNG と、US のユニット Mylets のライブ中に警察が踏み込み、興行用のビザを取得していない「不法就労」が原因で、ミュージシャンとライブハウスの責任者などが一時逮捕されるという事件がおき、日本でもファンの間で大きく話題になりました。この事件の原因も、家賃が高すぎるためにグレーゾーンで営業せざるをえなくなり、その結果ビザを取得しにくくなる……という悪循環にあります。

「高騰する家賃問題」は、ソウルと香港のインディ音楽シーンに限った話ではありません。昨年末、米カリフォルニア州オークランド市のロフトで、パーティー中に発生した火災により多くの人が亡くなった事故の背景にあったのも、同じ問題でした。現場となったパーティーには、DIY で実験的な地下シーンを支えてきた LA の老舗レーベルが関わっていたということです。世界有数の高額家賃都市である東京に住むわたしたちにとっても、無縁な話ではないはずです。

上映後には、両作にも縁が深く、アジアのオルタナティヴ/インディペンデントなカルチャーの現在を知るキーパーソンたちをゲストに迎え、トークショーも開催します。

音楽を愛する人、商業ベースではない多様な表現を求める人、ガイドブックでは知ることができないソウルと香港のリアルな一面を知りたい人など、多くの方にご覧いただきたいと思います。

【開催概要】
「No Limit ソウル自治区」プレイベント
『パーティー51』×『HIDDEN AGENDA The Movie』上映+トークショー

日時:7 月8 日(土)
OPEN 10:30 / START 11:00

会場:阿佐ヶ谷ロフトA https://www.loft-prj.co.jp/lofta/

上映作品:
●『パーティー51』
ドキュメンタリー|2013 年|韓国|101 分|韓国語|日本語字幕|監督:チョン・ヨンテク
韓国ソウル、ホンデ(弘大)地区。とある食堂オーナーとインディ音楽家たちが、自分たちの場と都市を守るために起こしたユーモア溢れる行動の記録。

●『HIDDEN AGENDA The Movie』
ドキュメンタリー|2012 年|香港|68 分|広東語|日本語字幕|監督:Hidden Agenda
香港唯一のライブハウス、Hidden Agenda。完全DIY でライブハウスを運営する愛すべきキッズたちの汗と情熱が詰まったドキュメンタリー。

トークゲスト:
●九龍ジョー
編集者、ライター。ポップカルチャーを中心に原稿執筆。編集した単行本も多数。著書に『メモリースティック ポップカルチャーと社会をつなぐやり方』(DU ブックス)、『遊びつかれた朝に――10 年代インディ・ミュージックをめぐる対話』(P ヴァイン/磯部涼との共著)などがある。
●松本哉
リサイクルショップ「素人の乱5号店」店主。「3 人デモ」「俺のチャリを返せデモ」「家賃をタダにしろデモ」「原発やめろデモ!!!!!」ほかとんでもないデモをおこなう。現在は高円寺でゲストハウス、飲み屋なども運営しつつ海外のオルタナティヴ・スペースとの交流を深め、「世界マヌケ革命」を目指す。著書に『貧乏人の逆襲~タダで生きる方法』『世界マヌケ反乱の手引書』(筑摩書房)など。
●山本佳奈子
アジアの音楽、カルチャー、アートを取材し発信するOffshore 主宰。 主に社会と交わる表現や、ノイズ音楽、即興音楽などに焦点をあて、執筆とイベント企画制作をおこなう。尼崎市出身、那覇市在住。
https://www.offshore-mcc.net

※ 本イベントは、「No Limit ソウル自治区」のプレイベントとしておこないます
「No Limit ソウル自治区」とは……?
昨年9 月、アジアのアンダーグラウンド文化圏の人々が東京に集結。上映、ライブ、トーク、くだらない講座、物販、飲み会など30 を超えるイベントを開催し、謎の自治区を出現させた巨大D.I.Y 祭り「NO LIMIT 東京自治区」。今年はソウルで開催することが決定している。

https://afterschoolcinemac8.wixsite.com/ascc

Colin Stetson - ele-king

 人間の吐く息がダイレクトに空気の振動となり、音となる――という、管楽器の身体性が、昨年のボン・イヴェールの傑作『22、ア・ミリオン』に必要であったことは象徴的なことに思える。同作はテーマの抽象性や内省にも関わらずそこに多くの人間がいることが重要であったが――ある種の音楽的コミュニティがそこでは築かれている――、サウンド面ではとりわけ管楽器が多彩な表情をつけることに一役買っていた。そこからは様々な人間の吐く息が聞こえる。そしてそれは、ときに歪められたり加工されたりすることによって、まったく個性的な「声」としてそこで共存している……。

 ボン・イヴェールやアーケイド・ファイア、アニマル・コレクティヴら北米インディ・バンドへの参加で知られるサックス奏者、コリン・ステットソンのソロ作『オール・ディス・アイ・ドゥ・フォー・グローリー』は、一言でいえばバリトン・サックスによるIDMということになるだろう。ステットソンはEX EYEというポスト・メタル、ジャズ・メタル(と、とりあえずはいまのところ呼ばれている。カテゴライズが難しい非常に実験的なメタルということ)・ユニットでも現在活動しているが、いまや北米のエクスペリメンタル・シーンをつなぐ重要人物のひとりである。これまでのソロ作や、同じくアーケイド・ファイアのライヴ・メンバーであったヴァイオリニストであるサラ・ニューフェルドとの共作『ネヴァー・ワー・ザ・ウェイ・シー・ワズ』ではそのミニマルな作風からスティーヴ・ライヒやマイケル・ナイマンと比較されることが多かったが、『オール・ディス~』では本人が明言しているとおり方法論的に雛型となっているのはエイフェックス・ツインであり、IDMである。つまり、複雑に変幻していくリズム感覚と緻密なエディットが大きな聴きどころとなっている。サックスの演奏を多重録音し、そこに少しばかりのリズム、声を加えていく作風はこれまでと同様だ。ただ、ヘンリク・グレツキの交響曲第3番を独自に解釈し、オーケストラと声楽を大きく導入した前作『ソロウ』がある種の過剰さに貫かれていたのとは対照的に、本作では音のレイヤーをぐっと減らし、少ない音を的確に配置していくことによってストイックに耳を興奮させる。
 単一の楽器によるループとその多重録音を骨格とするという点では、たとえばマーク・マクガイアの手法と近いと言えるかもしれないが、マクガイアのギターが醸すリリカルさやスピリチュアリティに比べると、サックスという楽器の特性ゆえかステットソンの吐き出す音はもっと粗暴で生々しく、フィジカルだ。“Like Wolves On The Fold”や“In The Clinches”ではキーをカチャカチャと素早く押さえる音がそのままリズムとなり、ミストーンのノイズや音の乱れもそのまま録音されている。何よりもバリトン・サックスの低音の迫力――ゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラーのような重々しさを内包したまま、速弾きの躍動感でドライヴする離れ業がステットソンの魅力だ。本作のオフィシャル・ヴィデオではサックスを狂おしく吹き続けるステットソンの姿とサックスのアップばかりが映されるが、人間の身体からいまその瞬間に放たれる息が音に変換しているというダイナミズムがそこでは運動する。とりわけ、終曲“The Lure Of The Mine”において、13分にわたってウネウネと姿を変えていくサックスの旋律はほとんど官能的ですらある。ミニマルなのに自在に上下するメロディと、荒々しいグルーヴ、聴き手を陶酔と覚醒で翻弄するかのような不敵な構成――スリリング極まりない。

 もうひとり、ボン・イヴェールに参加したプレイヤーのソロ作を紹介したい。ジャスティン・ヴァーノンと同郷のウィスコンシンはオークレアのトランペット奏者、トレヴァー・ハーゲンによるノイズ・アルバム『ワンダータウン』は日本のカセットテープ・レーベルである〈kolo〉からリリースされているが、これがトランペットという楽器の知らなかったポテンシャルを発見するような驚きに満ちている。プリペアド・トランペットによる乾いた高音は悲鳴のように轟き、それは切り刻まれのたうち回る。まるで音それ自体がひとつの生き物のようなのだ。けっして耳触りのいいものではないが、管楽器が呼吸器と繋がっていることを如実に感じさせるような熱がこもっている。そしてそれは、静謐なドローンへとやがて姿を変えていくが、緊迫感に満ちた音楽体験がここにはある。

 ステットソンにしてもハーゲンにしても、2000年代後半からのノイズ/ドローンと地続きのものではあるのだろう。昨年のボニー“プリンス”ビリーとビッチン・バハスのジョイント・ライヴを観たときにも感じたが、USインディ・シーンにおいてアメリカーナやフォーク・シーンとノイズやエクスペリメンタルがシームレスに繋がっていることは、そのサウンドの拡がりにおいて大きな強みとなっている。そこでは雑多な人間の実存を主張するかのように、多様な「声」が複雑にポリフォニックに折り重なっているのである。

Satomimagae - ele-king

 音色とは音符では表されない音楽の重要な属性で、クラシックからすればシンプル極まりない音楽であろうロックやフォークだが、歌っているのがその人でなければ成り立たない曲ばかりであって、いや、リズムやメロディが凡庸でも、声の魅力だけで成り立ってしまう曲はまったく珍しくない。
 サトミマガエは本当にクールな音色=声の持ち主だ。畠山地平の〈White Paddy Mountain〉からの2枚目になる『Kemri』を聴いてあらためてそう思った。なんといっても1曲目の“Bulse”が素晴らしい。絞り出される低い声は、荒削りだが魅力充分で、そしてブルース調の展開による音の隙間には、彼女のあらたな可能性を感じる。“Odori”や“Leak”や“Mebuki”のような曲では、アコースティック・ギターの霊妙な響きとともに、彼女の歌は前作同様にもうひとつの世界を創出する。このCDが再生されているあいだ、見慣れた日常の風景はすべて幻に転じるというわけだ。
 しかしなんだろうね……、エフェクト効果もあってか、生活音らしきフィールド録音のミックス効果もあってか、あるいはレーベルの方向性もあるのだろうか、例によって歌詞(言葉)はほとんど伝わってこない。が、彼女の魅惑的な歌声と曲が醸し出すその独特のムードは、したたかに残る……などと書くと、一時のチルウェイヴ系に見られたリヴァーブによる雰囲気だけの歌と誤解される向きもいるだろうが、サトミマガエからは時流のスタイリッシュさの対岸にいることの力強さ、心持ちの強さを感じる。
 とはいえフォークと呼ぶには、やはり前作同様、サウンドが先立つ。そして、曲名が日本語でありながら日本語表記ではなくアルファベット表記なのも彼女の作品の特徴だ。曲名の意味のポイントをはぐらかそうとしているかのように、さもなければ、インターネットによって個人の趣味や行動が管理/スキャン/モニタリングされている今日において、大切な何かをさっと隠すかのように。まあ、深読みというか、いや、深読みなのだが。
 『Kemri 』にはしかし、隠しきれない孤立が響いている。その繫がっていない感じがさらにぼくを惹きつける。10代の頃はビョークやファナ・モリーナを聴いて、近年はデルタブルースをよく聴いているという話だが、彼女はポテンシャルとしては、(前作のレヴューでも書いたようにグルーパーとか)新作を聴いて思ったのはエリザベス・フレイザーとかそっちじゃないかという気がする。
 そしてぼくが勝手に想像して目に浮かぶのは、小さな場所で、10人ぐらいの客を前に歌っている彼女だ。ネットを賢く利用することでのし上がるアメリカン・ドリーム、あるいはん万PVなどと騒いでいるこのご時世において、むしろそれぐらいの人数がどこからともなく名も無き場所に集まるというのは、じつは贅沢である。ストリーミングされることのない場所、コピーされることのない声──『Kemri』にはガツガツしない者が持ち得る力強さがある。そして、情報の速度に惑わされたくない人たちが集まる、密会じみた場所を探り当てるような作品でもある。アートワークもすごく良い!


special talk : Shota Shimizu × YOUNG JUJU - ele-king


清水翔太
FLY

MASTERSIX FOUNDATION

J-PopR&BSoul

初回生産限定盤 Amazon Tower HMV

通常盤 Amazon Tower HMV iTunes


YOUNG JUJU
juzzy 92'

Pヴァイン

Hip Hop

Amazon Tower HMV iTunes

 R&Bシンガー、清水翔太の最新アルバム『FLY』の“Drippin’”という曲でKANDYTOWNのラッパー、YOUNG JUJUとIOがヴァースをキックしている。2人のスムースなフロウが甘美なR&Bのラヴ・ソングのなかを駆け抜ける。JUJUはオートチューンを効果的に用い歌ってもいる。客演のきっかけがあった。JUJUがラッパーのB.D.をフィーチャリングした“LIVE NOW”という曲で、清水の“Overflow”をサンプリングしたビートでラップした。ビートを作ったのはJJJ、サンプリング・クリアランスを取得した上でJUJUのファースト・ソロ・アルバム『juzzy 92'』に収録された。

 前作『PROUD』、そして本作『FLY』を聴けば、清水がいま変化のときを迎えていることがわかるだろう。2月にele-kingにアップされたインタヴューでも、その変化についておおいに語ってくれた。その変化は清水個人のチャレンジであると同時に、現在のUSのR&Bやラップ・ミュージックをいかに“翻訳”して日本の大衆音楽として表現するのか、という(この国の大衆音楽における永遠のテーマとも言える)問いを考えるときに興味深くもある。そういう点でも僕は清水のいまの動向に注目している。

 “Drippin’”、あるいはJUJU がtofubeatsと共作した“LONELY NIGHTS”などを聴くと、JUJUもまた同じような問題意識をもって創作のあり方を模索していっているように思えた。そこで2人の対談の企画が浮上した。ラップもこなすR&Bシンガーの清水翔太と歌うことをより意識し始めているラッパーのYOUNG JUJUに語り合ってもらった。


清水翔太“Tokyo”

YOUNG JUJU“LIVE NOW” feat. B.D.

日本語と英語の混ぜ方という点で、KANDYTOWNの人たちの表現に影響を受けた部分もすごくあるんですよ。 (清水)

最近はラップしながら歌うみたいなのが調子良くて、そのスタイルがいま自分がやりたいことですね。 (JUJU)

YOUNG JUJUさんの『juzzy 92'』には、JJJがトラックを作り、B.D.をフィーチャリングした“LIVE NOW”という曲が収録されています。あの曲が清水翔太の曲をサンプリングしていることを知ったときどう思いました?

JUJU:「(リリースするのは)無理じゃん」って思いましたね。J君が送ってくれた曲が何曲かあったんですけど、僕はそのなかでもあのビートがいいなと思って。Illicit Tsuboiさんのところでよく録るんですけど、Tsuboiさんにも聴いてもらって、「こっちのビートがいいんじゃない?」って選んでもらったのが“LIVE NOW”だったんですよね。そうしたらあとからJ君に「サンプリングの問題でこれはできないかもしれない」と言われて。「じゃあなんで送ったんですか」って思ったんですけど(笑)。そのあとに(サンプル・ネタが)清水翔太さんの“Overflow”だって聞いて。初めて聴いたときは清水翔太さんの曲だと思わなかったので、びっくりしたというのが率直な感想ですね。

ご自身の曲がサンプリングされた“LIVE NOW”を初めて聴いたとき、まず率直にどういう感想を持ちましたか?

清水:うれしいなと思いましたね。僕はポップスに寄りながら、自分のエゴや欲をアルバムの収録曲で出したりしてきたんです。それがまさに強く出ていたのが“Overflow”だったと思うんですよ。そういう曲を自分が好きな人たちがカッコいいと思ってサンプリングしてくれたのがうれしかったですね。しかも原曲とは違うカッコよさで表現してくれていた。

JUJU:ありがとうございます。

清水:こちらこそ本当にありがとうございます。

お会いするのも初めてなんですよね?

清水:そうなんですよね。

JUJU:めちゃくちゃ緊張してます……。実は僕が清水翔太さんを初めて知ったのは、中学生のときにテレビで観た朝のニュースだったんですよ。ニューヨークでライヴしてましたよね?

清水:ああ、やってましたね。

JUJU:それを観た母親が「こんな子いるんだね。スゴいね」と言っていて、それで知ったんですよね。だから今回、清水さんと共演していちばん喜んでいるのは母親ですね。

清水:ありがとうございます。うれしいですね。

“LIVE NOW”の経緯もあったと思うのですが、今回YOUNG JUJUとIOを“Drippin'”という曲に客演として招いたことにどんな思いがあったのでしょうか?

清水:元々僕は頑なに日本語を大事にして、なるべく英語を使わないスタイルでやってきたんです。ただ最近は英語を混ぜて歌ったりラップするようにもなってきている。そういう、日本語と英語の混ぜ方という点で、KANDYTOWNの人たちの表現に影響を受けた部分もすごくあるんですよ。そういうのもあって2人にお願いしました。

JUJU:すごくうれしかったですね。曲に関しては、ラッパーが勢い良くラップするようなビートがくるのかなとも思っていたんです。そうしたら、ああいうテンションの曲が送られてきたんで。

R&B寄りの楽曲で、テーマも恋愛ですよね。

JUJU:そういうテーマも送ってもらって。ただ、僕たちは女の子のことを直接的に書くみたいなことをあんまりやってこなかったんで、IOくんと「さあ、どうしようか?」って話はしましたね。最終的には、曲のムードや感情を壊さないけど、ナヨナヨした感じは嫌なのでああいう形で落ち着きましたね。

ははは。

JUJU:僕がメロディをつけてラップするのはKANDYTOWNの曲のフックとかでしかやってこなかったんですけど、最近はラップしながら歌うみたいなのが調子良くて、そのスタイルがいま自分がやりたいことですね。

清水さんがKANDYTOWNの日本語と英語の混ぜ方に触発された部分があるという話をされていましたが、JUJUさんは「Amebreak」のインタヴューで、「言葉からラップを作っていくのって本当に難しいし、特に日本語だとそうなんですよね。フロウに合う/合わない言葉が日本語だと分かれる。『日本語だと合わないな』ってときに英語をハメていくタイプかな」と語っていますよね。

JUJU:昔からフリースタイルが得意じゃなくて、みんながフリースタイルをやっているときにはやってなかったんですよね。意味わかんない言葉でフロウするってことをやっていたんですよ。「俺らのフロウだけ聴いとけ!」みたいな感じで意味わかんない言葉でフリースタイルしていたのが原点ですね。だから、特にIO君と曲を作るときは「俺ならこうハメる」みたいに意味わかんない言葉でフロウして、「そのメロディ、ハンパない!」ってなったときに日本語か英語でハマる言葉を探して作ることが多いですね。

清水:僕もいわばいっしょで、最初にトラックを作ってとりあえず適当な英語でバーッと歌うんですよ。それでメロディが決まってきてあとから歌詞をつける。英語で適当に歌っているときのフロウがいちばんカッコいいんですよ。何が何でも日本語をハメていかなきゃ、という思考でやればやるほどどんどん良くなくなっていくんです。だからまずは「日本語でやりたい」というこだわりよりも、自分からナチュラルに生まれてきたメロディやフロウが活きるように言葉をハメていくのがいちばんいいと思うんです。

とりあえず歌が上手くて詞も書きます、というR&Bシンガーじゃつまらないじゃないですか。だからいまは自分の歌の力を無駄遣いしてでも、クリエイティヴなことをやっていきたいんですよね。 (清水)

人に届くような歌詞を書こうというマインドに変わりつつあるんです。前よりもそういう風に考えて歌詞を書くようになってますね。 (JUJU)

清水:僕の場合、作品自体の質はもちろん、自分がいまやりたい音楽の方向にリスナーを導いていくというのが課題としてもありますね。やっぱりこれまでの活動があってそういう音楽を求めてくるファンも多いですから。『PROUD』でいろんな挑戦をしましたし、さらに少しずつ広げていきたいですよね。いまは特にヒップホップにはクリエイティヴな人が多いですし、僕もそうでありたいんです。とりあえず歌が上手くて詞も書きます、というR&Bシンガーじゃつまらないじゃないですか。だからいまは自分の歌の力を無駄遣いしてでも、クリエイティヴなことをやっていきたいんですよね。

新作の『FLY』で僕が大好きな曲のひとつは“いつもBlue”なんですけど、この曲はメロディやフロウ、歌詞の部分でも、ラップ・ミュージック、R&Bのディープな要素とポップスの要素を絶妙なバランスで作っている曲だと感じました。

清水:本当にそうだと思います。あと全体の流れも含めて、行き切っている曲も、あえて引いている曲も全部納得いってもらえるように、バランスはすごく考えて作りましたね。ただ、もっとメチャクチャにやってやりたいという瞬間はいっぱいありましたし、途中でぶっちゃけ本当にアルバムの方向性わからなくなったりもしましたけど、とりあえずやりたいことをやって音を作って歌うっていうのをひたすらやり続けて結果としてバランスが良くなったという感じでもあるんです。ツアーも決まっていたのに本当に間に合わなさそうでかなり追い詰められつつ……、でもなんとか間に合ったかな。

『juzzy 92'』は聴かれましたか?

清水:はい。ただただいいなあっていう(笑)。僕は基本的にKANDYTOWNのみなさんのスムースなところが好きなんです。必要以上がないというか、計算されていないようにも見えるし、計算されているようにも見える。どちらにせよスムースだなと。あの感じは狙って出せないし、すごくいまのセンスなんだなと思いますし、やっぱり超カッコいい。

JUJU:ありがとうございます。

清水:ところで、どういうときに(リリックを)書こうと思います?

JUJU:いろいろありますよね。ニュースを見てなにか思いつくこともあるし、くだらないことをやっている人を見て思うこともあるし。

清水:書こうと思ったらすぐ書きます?

JUJU:俺は無理っすね。自然とヴァイヴスが向いていかないと書けないです。「お前座れ!」って言われたら「無理!」ってなっちゃうタイプなので。清水さんはどうやって曲を書くんですか?

清水:僕もなるべく書けるときに書きますね。

JUJU:でも期日とかあったりしたら大変ですよね。

清水:それで頑張らないといけないときもあるけど、でもそういうときはだいたい良い曲はできないですよね。

JUJU:今回の僕らのラップは大丈夫でしたか?

清水:超良かったですよ!

“Drippin’”のラップのヴァースに関して、清水さんからディレクションはしましたか?

清水:自分が「こうしてくれ」と言われるのが嫌ですし、好きにやってもらえればカッコいいだろうという安心感があったので、僕からはそんなに細かく言わなかったですね。

JUJU:テーマも伝えられて、清水さんのリリックもフックもできていたので、イメージはしやすかったですね。僕らが押し出しすぎて邪魔にならないようにしようとは思いました。だから「やりに来たよ!」みたいな感じも出さないで、「あいつらいたね」くらいの雰囲気で添えられたらいいなと思って。自分のなかではそういうイメージがあったという感じでしたね。

ラップのヴァースのリリックを掲載しないのはJUJUさんが決めたんですか?

JUJU:僕らがたしかにそういうことを言って、周りの人がJUJUやIOは歌詞を公開しないスタンスだと思ったんだと思います、歌詞が載っていないのはいま初めて知りました(笑)。でも、もう最近は歌詞を載せても大丈夫ですね。人に届くような歌詞を書こうというマインドに変わりつつあるんです。前よりもそういう風に考えて歌詞を書くようになってますね。

『juzzy 92'』の制作時からも創作に関して変化があるってことですね。

JUJU:ただ、あのアルバムは本当に廃盤にして欲しいぐらいなんです。あの作品に関しては一言も話したくないくらい嫌で、アルバムが出てから一回も聴いていないし、だからライヴとかできないぐらいリリックもわからない。

そうなんですか。どうしてそんなに嫌なんですか? すごく良いアルバムだと思いますよ。

JUJU:あのときは本当にイケイケドンドンみたいになっていたし、いまみたいに真剣に音楽をやるようになるとは思っていなくて、だからちゃんとしておけばよかった、って後悔しかないですね。申し訳ないですけど。

清水:やっぱり作品を出していくなかで、自分の未来との距離感のバランスがなんとなくわかってくると思うんですよ。出せば出すほど、これはたぶんあとから後悔するなって作品とかなんとなくわかってくるんですよね。だから僕も最初は「ここはこうしておけばよかった」とかすごく多かったんですけど、だいぶ減りましたね。でもそれくらいのほうが次はもっといいものを作ろうと思うからいいですけどね。

JUJU:はい。なんというか、ラップだけで気持ちいい音楽を作れる人もいるんですけど、日本語ラップは言っている内容も含めて気持よくないものも多いじゃないですか。自分が恥ずかしいと感じることと、人が恥ずかしいと感じることは違うと思うけど。恥ずかしくなるラップは無理ですね。清水さんの曲は、ラップにも歌にも気持ち良いメロディがあっていいですよね。

清水:ただ、僕もただメロディアスなラップは嫌なんですよね。 僕はラップやヒップホップがやりたいということではなく、言いたいことを伝える方法として歌うことがいちばん適しているなら歌うし、ラップの方が伝わるならばラップするんですよね。表現しようとすることが先にある。歌は基本的にすごく制限があるんですよね。例えばAメロ、Bメロ、サビができちゃったら、2番も文字数を合わせなければならない。そこが面白さでもありますけどね。いまはラップでたくさん言いたいことを言えるというのがちょっとうれしいというか、気持ち良くなっちゃっているところがあるのかもしれないですね。

清水さんが今回のアルバムでいちばん納得している曲を挙げるとしたらどれですか?

清水:個人的にいちばん納得しているのは“夢がさめないように”ですね。ただ、ある意味ではいちばん適当な曲なんですよね。音数も少なくて、シンセとベースとドラムとピアノとか、4つくらいしかない。歌もスタジオに入らずに、家で録ったものなんですよ。そんなことをやったのは初めてなんです。家のマイクでとりあえずやってみて、良いのが録れたからもうこれでいいって感じでしたね。

“夢がさめないように”の余韻を残しながら次の曲“Interlude -夢の続き-”へ流れていきますね。このソウルフルな2曲はたしかに印象的でした。

清水:いままでインタルード的なものを作ったことがなかったんですけど、この曲も家で録ったもののまんまで、トラック・ダウンもしていないんですよ。僕のミックスをそのまま使ってますね。そういう意味ではいちばんナチュラルに僕を感じられるのがその2曲の流れなんです。だからそこが好きだし、聴いてもらいたいですよね。

なるほど。今後、“Drippin’”をステージで共演して披露するなんて予定はあったりしますか?

清水:どうですか(笑)?

JUJU:ぜひやりたいですね。

清水:本当ですか? 2人が2番でバッと出てきてもらうのもカッコいいけど、わりとすぐ終わっちゃいますし、やるとしたらどういう構成でやるんだろうなあというのも考えたりしましたけど(笑)、ぜひやりたいですね。

JUJU:はい。僕はいま、音楽を聴いて「これヤベえ!」ってなっていた時期のフレッシュな感覚に戻りつつあって、歌詞を書いたりビートを聴いたりするのが楽しくて、特に決まったプランはないんですけど、制作にも集中したいって感じですね。

清水:ぜひ呼んでいただけることがあればいつでも呼んでください。

JUJU:ありがとうございます。ぜひお願いします。

●清水翔太info
全国ツアー「LIVE TOUR 2017〝FLY〟」を開催中。
8月12日13日日本武道館、8月20日ツアーファイナル大阪城ホール公演を開催予定。
上記アリーナ公演のチケット一般発売が7/10(土)10:00より各プレイガイドよりスタート。
詳細はホームページをチェック。

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