「S」と一致するもの

Nujabes Metaphorical Ensemble & Mark Farina - ele-king

 ヌジャベスの音楽を未来につなぐプロジェクト、Nujabes Metaphorical Ensemble。ヌジャベスの作品を愛するミュージシャンやDJから成る彼らが出演するライヴが12月29日、恵比寿ガーデン・ホールにて開催される(https://flows-jp.com)。マーク・ファリナやパウダー、活動休止前の最後のライヴを披露するNABOWA、ペース・ロック、寺田創一らが集う同イヴェントの最終ランナップが公開されており、新たにnasthug、Kento Nagatsuka、DJ NORIの出演がアナウンスされている。
 さらに、会場では、ヌジャベスの楽曲のみで制作されたマーク・ファリナによるミックステープ『Tribe Sampler Mushroom Jazz』が先行販売される。チケットなどの詳細は下記より。

Nujabesの音楽を未来に繋ぐプロジェクトNujabes Metaphorical Ensemble、Mark FarinaやPowder、活動休止前のラストライヴとなるNABOWA、Pase Rock、Soichi Teradaに続く最終ラインナップが公開。

2023年に出演したBoiler Roomでのパフォーマンスが120万回以上再生され、一躍注目を集める存在となったnasthugが登場する。

そしてエクスペリメンタル・ソウルバンドWONKのボーカリスト Kento Nagatsukaが豊かな音楽性を背景にしたDJセットにて参加。

さらにキャリア40年を超える日本が誇る至宝DJ NORIの出演が決定した。

全9組による極上のラインナップ。
タイムテーブルはflowsのSNSから近日公開予定となっている。


ミックステープ「Tribe Sampler Mushroom Jazz」がリリース!

Nujabesの楽曲たちとMark FarinaによるMushroom Jazzがコラボレーション。
Hydeout ProductionsのサブレーベルTribeから
ミックステープ「Tribe Sampler Mushroom Jazz」がリリース。

ジャジーなヒップホップからダビーなダウンテンポトラックを中心にミックスされるMushroom Jazzは過去に幾つもの名作を残しており、Nujabesの作品のみで構成された今回の特別な音源はMark Farinaのセンスと手腕により美しい楽曲の新たな魅力を引き出している。
NujabesとMark Farina。時を経て邂逅した必然のコラボレーションとなっている。

flowsにてミックステープの先行発売をおこないます。
完全限定生産となっているので、会場で売り切れた場合、一般販売はございません。

TITLE : Tribe Sampler Mushroom Jazz
ARTIST : Mark Farina
LABEL : Tribe
PRICE : ¥2,500 (taxout)


OUTLINE

TITLE : flows
DATE : 2024.12.29 SUN, OPEN 14:00 CLOSE 21:00
VENUE : The Garden Hall(東京都目黒区三田1-13-2)
LINE UP : Nujabes Metaphorical Ensemble、Mark Farina、Powder、
NABOWA, Pase Rock、Soichi Terada、nasthug、Kento Nagatsuka、DJ NORI
ADV TICKET :
Category 1 : ¥6,800 -SOLD OUT-
Category 2 : ¥7,800
Category 3 : ¥8,800
U-23 : ¥5,000
※小学生以下の児童及び乳幼児は保護者1名につき1名まで入場無料です
※カテゴリー1から順に完売次第、次のカテゴリーに移行します
※規定枚数に達した場合には当日券の販売はございません
TICKET AVAILABLE AT : Zaiko(https://flows.zaiko.io/item/367270)

HP : https://flows-jp.com
Instagram : https://www.instagram.com/flows_jp
X : https://x.com/flows_jp

PAS TASTA - ele-king

 ……といったところで、終わりでいいんじゃないですか? とりあえず、ね。

 とラフに結ばれているPAS TASTAの前作『GOOD POP』のレヴューだが、とりあえずという形で置かれたそのバトンを今回受け取ったのは私。ついに六人がカムバック! さて、hirihiri、Kabanagu、phritz、quoree、ウ山あまね、yuigotという現行インターネット・ミュージックにおける精鋭が集ったこのグループの成り立ちについては松島広人氏による前作の評を読んでいただくとして。とりあえず終わりでいいんじゃないですか、とゆるいノリで終わったわりには、とんでもなく精巧に作られた夢の続き~最新作~について語っていくことにしましょう。

 まず、アルバム・タイトルがつくづくすばらしいと思った。『GRAND POP』。これはもう、恐ろしく素敵なタイトルだ。例えば『Pop2』や『brat』といったチャーリーXCXのタイトル芸はファッショナブルでインディペンデントっぽいセンスだけど、PAS TASTAはあえての優雅な方向にドーン、とね。そう、『GOOD POP』からの進化を感じさせようという意思が迫力に満ちている。しかし、そこで『GRAND POP』なんて普通思いつくだろうか? Chat GPTに訊いてみるといくつか提案してくれたけれど、実にセンスに欠けるものばかりだった。『NEXT POP』? ありきたりだね。『DEEP POP』? それはPAS TASTAの本質じゃない。『PURE POP』? ちょっと酔いすぎ。『PRISM POP』? 小さくまとまっちゃったな。『ETERNAL POP』? それはインターネットっぽくないかな。メンバーは前作以上にこの作品をウェルメイドなものにしていきたいと考えていたようで、大きさがあり上品さもある「GRAND POP」にした、と語っている(J-WAVE 『GRAND MAREQUEE』11/19放送回より)。サラッと言っていたが、重要な発言だ。インターネットのジャンク感を大切にしつつも、表面上はそれを削ぎ落とし、オーセンティックなJ-POPの王道感を看板に掲げるということか。まるで『POSITIVE』期のtufubeatsのような大文字の音楽をやろうとしている! と解釈したのだが、しかしあれから約10年が経ち、「ポップ」のありかたも激変してしまったわけで。一つに、もうみんながバラバラになっちゃった、というのがある。国内のアンダーグラウンド・シーンに10,000人いたミュージシャンがいまは100,000人いて、そのうちの1人が「私、ポップやります!」と言ったところで、どうしてもスベった感が出てしまう現在。今年いよいよ流行語にもノミネートしてしまったこの「界隈」というやつは、狭いうえに横のつながりも密なもので、まぁいろいろと面倒も多くて大きいことを言いづらい。という中で、誰もが納得する実力者が組むアベンジャーズ作戦というのはとても良い。「J-POPやります宣言」を、ジョークやアイロニーではなく、語義通り受け取ってもらえるリアリティがある。

 『GRAND POP』、見事なアルバムだから次々とすごいポイントが出てきます。もう一つは、「ポップ」に見合うだけのストーリーがあるということ。ここで言うストーリーとは、歌詞の物語性とかアルバムとしての起承転結とかそういったことを言っているわけではなく、もっと本質的な部分において、サウンドと情緒の連なりが作品の思想を深めていくような感覚──と言えばよいだろうか。この点において効果的なのは、やはり、ギター・ロックやシューゲイズの導入が必然性をもってなされているのが大きい。今年はTORIENA『圏外』やVitesse X『This Infinite』など、エレクトロニック・ミュージックにギターを導入することで作品の深度を深めていくようなアプローチが散見されたが、本作においてもロックの要素が重要な鍵を握っているように思う。そもそも、Patrick St. Michel氏が書いていた通り(※)ロックはJ-POPの基盤であるがゆえに本作では引用されてしかるべきなのだが、『GRAND POP』においてはなんだか全てがどこかで聴いたかのような既視感があり、それらがすべてPAS TASTAらしいテクスチャで鳴らされている(“亜東京” で顔を覗かせるRADWIMPSには仰天!)その点で、「90年代~00年代のJ-POPの記憶」を、オーセンティシティの装置として効果的に使った作品であるとも言える。今回のアー写なんか、2000年前後のナントカやナントカといったアーティストの写真にそっくりだ。『WHAT's IN?』や『CDでーた』で、たくさん見た! どこまで狙ってるのかはわからないけれど、すばらしいパロディ・センス。

 つまり、インターネット・ミュージックは、点としての固有の面白さがありつつもどこか散発的で断片的な印象にとどまりがちなものだが、そこを出自に持ちながらもPAS TASTAはストーリーを描くことができるからこそポップになり得ているということ。それは、六人の存在感のつなぎ目がどんどんなくなってきているというのも大きい。「ここの音はhirihiriさん!」「この癖はあまねさん!」という凸凹が随分とならされていて、PAS TASTAが制作スタジオとして使っているというDiscordの、あの現代の「シェルター」の中のくつろいだ空気が、ボカロとエレクトロとヒップホップとハイパーポップとハードコアとガラージを糊代なしでシームレスにつなぐ。フォルムが綺麗なのだ。そうそう、シームレスといえばひとつ不思議なことがあって、本作は「車」をテーマにしているようだけど、どうもタイヤの接地面がなくふわふわと宙に浮いているような感じがする。車というとすぐに¥ellow Bucksのようなふくよかなベース音をどっぷり排出するサウンドを連想してしまうのは私の悪い癖だが、それと比べると、『GRAND POP』はまるで空飛ぶ車だ。ようこそ未来。六人のアイデアがどんどん浮かんできて、それを継ぎ接ぎしつつもこねてこねて洗練させていった音。「もしも、ぜーんぶ追い越して/懐かしくなっても/はやさの中にしか/おれはいないのだろうな」と見事な歌詞が歌われる “THE CAR” は、妙に懐かしいギターに包まれながら──なんといまどき呑気にフェードアウトしながら終わるという、これもまた「あの頃のJ-POP」をやっている。

 中でも、全体通してヴォーカル表現がとても空中浮遊的だ。「シュッシュ/シンフォニー/ヒュッヒュッヒュッ/ピット/ピピピ」と歌う柴田聡子は過去一番の軽やかさだし、ボカロ以降のモードに矯正されたchelmicoは悶絶するほどの脱‐人間。ピノキオピーは言わずもがな、ここにLIL SOFT TENNISのザラついた声を混ぜるのも面白いし、キタニタツヤの入り方も2024年のJ-POPとして完璧です。さて、ここまでくると早くも次作が楽しみで仕方ないのだが、ポップ無き時代のポップを背負うのはもうPAS TASTAしかいないので、どこまでもやっちゃってほしいです。できるだけ大文字の、でも意外な人たち──星野源、ado、中村佳穂、aiko、折坂悠太……etc.と、最高のコラボ相手はまだまだたくさんいらっしゃいます。夢があるって、すばらしい。ぶんぶん鳴らしてふわふわ浮いて、PAS TASTA with tomad氏の挑戦がどこまでもどこまでも広がっていきますように!

 ……といったところで、終わりでいいんじゃないですか? とりあえず、ね。



https://www.scrmbl.com/post/pas-tasta-goes-big-on-second-full-length-album-grand-pop

Roedeliusu, Onnen Bock, Yuko Matsuzaki - ele-king

 クラウトロックにおける電子音楽のもうひとりのパイオニア、クラスター(Kluster/Cluster)のメンバーとして知られるハンス・ヨアヒム・ローデリウス(今年90歳、つまり卒寿です)が日本の音楽家、松﨑裕子と共同で制作したアルバム、『月の庭(MOON GARDEN)』が来年の2月に発売される。
 1980年代より、フルート/シンセサイザー/キーボード奏者、作曲家/編曲家として幅広く活動を続け、今年の夏は80年代ジャパニーズ・アンビエントの貴重な1枚として、国内外のファンから熱心な支持を集めていたアルバム『螺鈿の箱』を再発した松﨑裕子は、1996年のローデリウスのソロ・アルバム『 Pink, Blue And Amber』においてもフィーチャーされている。『月の庭』はローデリウスとオンネン・ボック(Qlusterのメンバー)が制作した音源データを松﨑裕子がアレンジ/エディットし、新たに作曲を加えたもので、ミックス作業は2000年代前半からはじまり、そして2020年に最終ミキシングされている。エレクトロニック・ミュージック界のロマン主義者たるローデリウスのピアノ演奏と松﨑裕子による優美な演奏、そして繊細な音響工作がみごとに調和したアルバム、アンビエントことに日本のアンビエントを探求しているリスナー、およびニューエイジのリスナーは要チェックです。

ローデリウス、オンネン・ボック、松﨑裕子
月の庭 /MOON GARDEN

CD /DIGITAL
2025年2月5日
P-VINE

【Track List】
1.In The Forest of Syrinx - シリンクスの森にて
Roedelius / Onnen Bock:Piano, Singing bowls / Yuko Matsuzaki : Flute, Synthesizers, Keyboads
2.Moon Garden - 月の庭
Roedelius / Onnen Bock:Piano, Singing bowls / Yuko Matsuzaki : Flute, Synthesizers, Keyboads, Vocal
3. The Tale of Fossil - 化石の物語
Roedelius / Onnen Bock:Piano, Singing bowls / Yuko Matsuzaki : Synthesizers, Keyboads
4. Sapphire Jellyfish - 瑠璃の海月
Roedelius / Onnen Bock:Piano, Singing bowls / Yuko Matsuzaki : Vocal, Lyrics
5. Fragment of Ancient Times - いにしえの時のかけら
Roedelius / Onnen Bock:Piano, Singing bowls / Yuko Matsuzaki : Flute・Taisyogoto , Synthesizers, Keyboads

All titles composed by Roedelius ・Onnen Bock・Yuko Matsuzaki

松﨑裕子 (Yuko Matsuzaki)
 作曲家・ボンサイオブジェ作家、大阪府出身、神戸女学院大学音楽学部器楽科フルート専攻卒業。大阪音楽大学専攻科修了。フランス国立モントルイユ音楽院留学。琵琶を鶴田錦史に師事。
 フルーティストとしてリサイタル他、関西フィルハーモニー交響楽団、テレマンアンサンブル等と、ソリストとして数多く共演。元プティ・バロック・アンサンブル所属。82年より作曲活動をはじめ、85年LPレコード『螺鈿の箱』(Mother of Pearl Box)発売。
 85~87年パリ、ロンドンを中心にヨーロッパで活動。アンビエントの父、エレクトリックミュージックのゴッドファザーと称されるローデリウスや多くのミュージシャンのアルバム、コンサートツアーに参加。88年より大阪を拠点に、琵琶や雅楽などの日本の伝統楽器を中心とした作曲、コンサート活動を始める。92年、フジテレビのドラマ、久世光彦監督、小泉八雲『KWAIDAN 怪談』の音楽担当を機に東京に拠点を移す。以後、映像音楽を中心に作曲家として活動。『華岡青洲の妻』、小泉八雲『KWAIDAN 怪談』シリーズ、『キネマの青春』『サラバ サムライ!』をはじめ数々のTVドラマ、『早坂暁の花暦 一期一会』20シリーズ、『20世紀のファイル』24シリーズ、『辰巳琢郎・リフォームの魔法』24シリーズ、『世界遺産』『もうひとつのワールドカップ』『水木しげる』等のドキュメンタリー番組、こども放送局番組多数。
 映画『喰いしん坊 I ・II 』『新GONIN』『スワンズ ソング』『夜叉の舞』『ファミーユ フランスパンと私』『矜持』他、楽譜出版『フルートで楽しむショパン』他、CD『Pink Blue & Amber』『ガラパゴスの風(世界遺産ミュージック・イマジネーション南米編)』『Paradise』、DVDシネマ等、作品多数。フィナール国際美術展、モダンアートコンペティション入選。2008年、大阪に拠点を移し、ボンサイオブジェ作家として、独自のオブジェの世界を展開する。個展、インテリア&デザイン国際展示会「メゾン・エ・オブジェ・パリ」他、出品多数。

Yuki Nakagawa - ele-king

 チェロ奏者、中川裕貴による4年ぶりの新作コンサート「弭(ゆはず)」が12月28日から29日にかけ、ロームシアター京都にて開催される。日野浩志郎とのKAKUHANでの活動でも知られる彼は、通常わたしたちが想像するのとは異なるやり方でチェロの可能性を引き出す、果敢な冒険者だ。今回はDJと俳優とのコラボレーションとのことで、また未知なるサウンドを体験できるにちがいない。中川本人によるメッセージも届けられているので、下記をご確認あれ。

チェロとDJが開発する、音の新領域
令和6年度京都市芸術文化特別奨励者・中川裕貴の最新作を京都で!

チェロを主体として作曲・演奏・演出活動を行う音楽家/演奏家の中川裕貴による約4年ぶりとなる新作コンサート「弭(ゆはず)」をロームシアター京都で開催します。
チェロという楽器、DJ、俳優の行為が関わることで生まれるさまざまな「声」を、「弓」が引き出し、観客の「耳」に届けます。

中川裕貴「弭(ゆはず)」
日程:2024年12月28日(土)~29日(日)
会場:ロームシアター京都 ノースホール

作曲、演奏、演出:中川裕貴  
DJ:1729
出演:中川裕貴、出村弘美、穐月萌、1729

https://www.yukinakagawa.info/post/yuhazu_2024

スタッフ:
舞台監督:北方こだち
音響:甲田徹
照明:十河陽平
宣伝美術:古谷野慶輔
制作:平野春菜

主催:中川 裕貴
共催:ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団)
京都芸術センター制作支援事業

日程:
2024年12月28日(土)13:00
2024年12月28日(土)18:00☆
2024年12月29日(日)13:00★

☆終演後に中川裕貴とゲストによるトークイベントを実施予定
★託児サービスあり(要事前予約)。詳細・お申込みは中川裕貴 WEB サイト http://www.yukinakagawa.info/ にてご確認ください。
◎受付開始は開演の1時間前、開場は30分前
◎車椅子でご来場の方は、メールにてご連絡ください。

会場:ロームシアター京都 ノースホール(〒606-8342 京都市左京区岡崎最勝寺町13)
上演時間:約100分(予定)

チケット料金(全席自由・税込):
早割 3,000 円★
一般 3,500 円
U25 2,500 円

★早割は12月7日(土)23:59 まで。グッズ付き早割チケットは Peatix のみで限定販売(数量限定、先着順)。
※当日券は500円増、未就学児入場不可
※U25のチケットをご購入の方は、当日受付にて身分証のご提示をお願いします。

プレイガイド:
https://yukinakagawa-yuhazu.peatix.com/

ロームシアター京都チケットカウンター:
【営業時間 10:00-17:00】年中無休(臨時休館日を除く)TEL:075-746-3201
京都コンサートホールチケットカウンター:
【営業時間 10:00-17:00】第1・3月曜日休館
※休日の場合は翌日 TEL:075-711-3231
オンラインチケット
[24時間購入可] ※要事前登録(無料)https://www.s2.e-get.jp/kyoto/pt/

公演について
チェロを主体として作曲・演奏・演出活動を行う音楽家/演奏家の中川裕貴による約4年ぶりとなる新作コンサート「弭(ゆはず)」を開催します。弭という文字は「ゆはず」と読み、弓道などで用いる弓の両端にある「弦(つる)をかける場所」のことを指します。
このコンサートはその文字通り、弓と耳という2つの側面、そしてそれに関係する「チェロ」が中心に添えられ、ヒトの声に近い成分をもつと言われる楽器から、さまざまな「声」を、「弓」が引き出し、観客の「耳」に届けます。特に中川は近年、下記に記載するような自作の弓を使用した演奏を数多く行っており、このコンサートではその弓が主体的な役割を果たすことになるでしょう。
また今回のコンサートでは新たな試みとして、会場に「DJ(ディスクジョッキー)」がいます。
録音物を収集、吟味、推敲し、混ぜ合わせ、再構築し、ターンテーブルとCDJを複数台掛け合わせて複雑なサウンドコラージュを目指す「1729」は、DJの中でも異端かつ、誰もが説明に困る奇妙で曖昧な存在であるかもしれません。彼女は2022年まで“威力”名義で活動し、現在はクラブシーンのみならず、YCAM(山口情報芸術センター)や九州大学音響特殊棟などに活動の幅を広げ、「聴く」ことの根源的な領域にアクセスするようなパフォーマンスを行っています。
今回はこのDJとチェロという「両端」によって、何かを「かけ」ます。
さらに中川のコンサートにこれまでも数多く出演し、演奏やパフォーマンス、そして意味の「下限」を浮き沈みさせるような「行為」を続けてきた出村弘美、穐月萌も参加。この4人の持つ要素が絡み合いながら生まれる時間と空間は、タイトルである「弭(ゆはず)」という音をズラした「いわず」と、そこから派生する「静寂(サイレンス)」の現在進行形の「かたち」が提示されると同時に、私たちが生きるこの時代のありさまが照らされることになるでしょう。

「弭」という文字について、言葉遊びをしてみます。
弭、ゆはず、You haze(訳すと「あなたが霞んでいる」という意味)。
「ゆはず」→「ゆわず」→言わず=(I/You/We/They)don’t say。
そして「言わないこと」は静寂(サイレンス)と関係があります。
弓や耳、そして声。言わないこと。 サイレンス。 行動すること。
意志があること/ないこと。リスニング、トーキング、シンキング。
そしてそこに無音や中断が差し挟まれること。 ゆはずは「弦(つる)をかける場所」を指します。
「弭」という文字から生まれるイメージを、「コンサート(Concert)」という、そのことばの一部に「共に」「子孫」「対抗」という意味を持つイベントへ運ぼうとしています。
約4年前のロームシアター京都でのコンサートでは、わたしたちのほとんどは「マスク」と呼ばれるものを「耳」にかけていました。
それから月日が経ち、今、私たちの耳は、なにを「かけて(掛けて、賭けて、欠けて…)」、ここにいるのでしょうか。
このコンサートでは、今、ここから未来に向かって延びる、とある「疎密」をコンサート会場に集まるみなさんと共に創りたいと考えています。
中川 裕貴

[プロフィール]
中川裕貴(なかがわ・ゆうき)
1986年生まれ、三重/京都在住の音楽家。チェロを独学で学び、そこから独自の作曲、演奏活動を行う。人間の「声」に最も近いとも言われる「チェロ」という楽器を使用しながら、同時にチェロを打楽器のように使用する特殊奏法や自作の弓を使用した演奏を行う。音楽以外の表現形式との交流も長く、様々な団体やアーティスト(烏丸ストロークロック、森村泰昌、渡邉尚など)への音楽提供や共同パフォーマンスも継続して行っている。また2022年からは音楽家・日野浩志郎とのDUOプロジェクト「KAKUHAN」がスタートしている。近年のコンサート作品として、「ここでひくことについて(2019)」@京都芸術センター、「アウト、セーフ、フレーム(2020)」@ロームシアター京都サウスホール(ロームシアター京都×京都芸術センター U35 創造支援プログラム“KIPPU”)などがある。同志社大学工学部情報システムデザイン学科卒業。京都市立芸術大学大学院音楽研究科修了(音楽学)。令和6年度京都市芸術文化特別奨励者。

小林:今年スクエアプッシャーの『Ultravisitor』(2004年)が20周年を迎えたということで、アニヴァーサリー・エディションがリリースされています。先に世代感を確認しておきますと、ぼくがリアルタイムでスクエアプッシャーを聴きはじめたのが2001年です。00年の秋ころからエレクトロニック・ミュージックに興味を持ちはじめて、01年に〈ビート〉が〈Warp〉をとりあつかいはじめて。

渡辺:その前は〈ソニー〉だったね。

小林:はい。『Go Plastic』(2001年)、『Do You Know Squarepusher』(2002年)とつづいたあとに『Ultravisitor』が出て、当時、まだまだ聴いている電子音楽の量が足りていなかった自分の感想としては、「決定打が来たんじゃないか」みたいな第一印象がありました。

渡辺:そういう世代の方にフックがあったアルバムじゃないですかね。

小林:やはりその前の世代の方にとっては最初の2枚、『Feed Me Weird Things』(1996年)と『Hard Normal Daddy』(1997年)が決定的だったと思うんです。

渡辺:しかもその後にいろいろ実験をしていましたからね。

小林:『Music Is Rotted One Note』(1998年)とか。

渡辺:そこで極端に振れちゃったようにも見えて。「このひとはなにをやりたいんだろう」みたいなところは正直ありました。90年代の終わりとか2000年代初頭のスクエアプッシャーってそういうイメージが強かったと思うんですよ。『Do You Know Squarepusher』というタイトルもそうだけど、自分とはなにかを考えてた時期なのかな、と今回あらためて聴いてみて思いました。当時ってそんな話題になってました?

小林:今回、当時の『ピッチフォーク』のレヴューを確認してみたんですよ。そしたらかなり微妙な評価で(笑)。うまく書いてあって、悲観的とまではいえないんですけど、「いいものはどれも終わりを迎える」という書き出しで(笑)。ちなみに書き手のドミニク・レオンは自身も〈Smalltown Supersound〉から作品を出している音楽家でもあります。

渡辺:当時リアルタイムで褒められていた印象がぜんぜんなくて。『ガーディアン』のレヴューも3点で、まったく褒めていなかった。この時期、自分はなにを聴いてたかなって思い返してみると、ミニマルなんですよ。2000年代前半はクリック・ハウス以降のミニマルをすごく聴いてたから。そんな時代に『Ultravisitor』も出て、少なくとも「これはすごい」みたいな評価がされていた記憶はないし、でも酷評されたというわけでもなく……。たとえば『Music Is Rotted One Note』が出たときはものすごい賛否両論で、よくも悪くも話題になりました。その後、実験的にやっていく時期がつづいて、広く一般にインパクトを与えたっていう印象は残っていないですね。〈Rephlex〉のファンだったりエイフェックス・ツインのファンだったり、〈Warp〉のファンだったり、コアなひとたちは少しあとから支持していたような印象があって。それこそ小林さんもそうだと思うんですけど、新しい世代のニュートラルなリスナーが支持したことで広がっていったアルバムなのかな、という気はします。

小林:20周年記念盤を出すということは需要が見こめるからこそでしょうし。

渡辺:たとえば〈R&S〉もそうなんだけど、〈Warp〉もいまやってるスタッフって世代交代してると思うんですよね。昔の〈Warp〉に憧れて新人として入ったりA&Rやったりしてる若い人たちのほうが主力になっているんじゃないかな。そのあたりの影響も、今回あるのではないかなと思います。

小林:去年はバンドキャンプがブレイクコア・リヴァイヴァルを特集していて、そういうことも背景にあったりするのかもしれないと思う一方で、でもその路線であればすでに『Feed Me Weird Things』や『Hard Normal Daddy』がありますよね。

渡辺:そうなんですよね。じっさい『Feed Me Weird Things』はリイシューが出ましたよね。それが成功したというのもあるのかも。今度は、中期の彼の評価を確立した名作ということで。今回、レア曲を詰めたボーナス・ディスクがついてるじゃない。それらの曲の背景を当時は知らなくて、今回調べたんです。どうも、当時オンライン・レコード・ショップのBleep(当時はフィジカルの販売はWarpMartという別ショップ扱い)がスタートしたタイミングで、そこで予約購入した人に配っていたCDに入っていた曲みたいですね。プロモ盤としても出していて。

小林:なるほど。当時〈ビート〉から出ていた初回限定盤にもそのCD「Square Window」の5曲がボーナス・ディスクとして付属していました。

渡辺:今回、それが正式に付属したのが大きいんじゃないかなと思っていて。当時シングルとしても出た “Square Window” もいいんですが、とくに “Abacus 2” という曲が素晴らしい。レーベルとしてはやっぱりポップでキャッチーな曲をアルバムに入れてほしいはずなんです。ラジオで流せるような曲だったり、CD時代だったら試聴機で最初に流れる1曲目をそういうものにしたいとか。〈Warp〉としてはほんとうは “Abacus 2” を『Ultravisitor』に入れたかったんじゃないかと(笑)。今回、2枚目がけっこういいんですよ。そういうメロディックな曲だけじゃなくて、“Talk About Me & You” みたいなおもしろい曲も多い。でも当時トムが嫌だと言ったんじゃないか、という深読みはしちゃいますね。

小林:もしトム・ジェンキンソンが嫌だったのだとしたら、それはなぜだと思いますか?

渡辺:『Ultravisitor』って、メロディックでメランコリックですごく静かなタイプの曲と、ものすごくノイジーな曲と、両極端がありますよね。エレクトロニックなビートはもちろんあるけど、踊りやすかったりフックがあったりする、わかりやすい曲は入っていない。だから、収まりどころがなかったんじゃないかなと。彼は作品ごとにテーマを決めてやるひとだし、すごくクレヴァーなひとだとも思うし。たとえば初期に 「Vic Acid」(1997年)といいうシングルがありましたよね。あれに入っていた “The Barn” という曲には303がブリブリに鳴っていて、弟(アンディ・ジェンキンソン/シーファックス・アシッド・クルー)の影響もあるんじゃないかと思うんですが、ほんとうはああいうタイプの曲もかなり好きだと思うんですよ。でも、シンプルな4つ打ちだったり、わかりやすいアシッドでフロア寄りみたいな曲ってほとんどアルバムには入れていないような。

小林:たしかにそういう印象はある気がします。

渡辺:『Feed Me Weird Things』のときもたしか、1曲入れようと思っていたトラックが権利関係だったかで入れられなくなっちゃって、代わりにつくった穴埋め的な曲を入れたって話をしていましたよ。それが “Squarepusher Theme” だった。後に代表曲になったものが、もともとは入らない予定だった、という。あと、〈Warp〉から最初に出た紫のシングル(「Port Rhombus EP」、1996年)、あれもアルバムに入ってないよね。

小林:入ってないですね。あれはすごくいい曲ですよね。スクエアプッシャーでいちばんの名曲じゃないかと思います。

渡辺:渋谷にあったシスコ・テクノ店の棚が全部あの紫のジャケで埋まってて、1日中かかってたのをよく覚えてる。やっぱりあれがすごく衝撃的だったんですよ。だから、〈Rephlex〉から〈Warp〉に移った最初のアルバム『Hard Normal Daddy』には代表曲として絶対に入れるよねと思っていたけど、入らなかった。そういう彼のスタンス、こだわりはあるのかなと思います。最新作『Dostrotime』も、配信しないという触れ込みで。

小林:でしたよね。その後時間が経って結局配信しちゃいましたが(笑)。

渡辺:たぶんどこかで折れたのかなっていう(笑)。

小林:最初はストリーミング時代に果敢に抗ってるなと思って、ぼくも燃えて紹介記事を書いたんですけど、「出すんかい」って思いました(笑)。

渡辺:そうそう(笑)。だからその辺はせめぎ合いというか、思い入れだったり自分のなかでこういうプランでいきたい、みたいなものがあっても、ある程度時間が経てば妥協するところもあるのかなと。そういう意味では、今回のリイシューはレーベル側の意向とアーティストのやりたかったことを、両方ちゃんとうまくパッケージしているような感じがして、すごくいいリイシューだな、とぼくは思いましたね。寄せ集めの、ほんとうにアウトテイク集みたいなのって多いじゃないですか。買ったはいいけど2枚目は聴かないよ、みたいな。でも今回は「なんで入れなかったんだろう」という曲が多い。

小林:ちなみに『Ultravisitor』本編はライヴ音源が混ざっていて、若いころ「なんだろう、これは?」と思いましたけど、それについては当時どう思いましたか?

渡辺:その前の、『Do You Know Squarepusher』の2枚目にフジロックでのライヴ音源が入ってるでしょ。ぼくは完全にあの流れだと思ってたんですよ。たしか音質があまりよくなくて、その点をリヴェンジしたいのかなって、勝手に思っていましたね。だけど今回調べたら、彼は裏でいろいろ考えていたことがわかりました。当時のインタヴューってほとんど残ってなくて、ひとつだけあったんですが、それももうリンクが死んでいて。それでなんとかアーカイヴを漁ってテキストだけ読むことができたんですけど、ライヴ音源を入れたのは、ちょっとリスナーをバカにしているというか、炎上狙いのようなところもあったみたいです。そもそも自分の音楽は多くのオーディエンスが理解できないものだけど、ライヴの歓声が入っているとウケているように聞こえるから、それで「聴いてみようかな」と思っちゃうバカなひともいるかもしれない。そういう効果を狙っている、というようなことを言っていて。それでだれかが間違ってアルバムを買ってくれたら、本人は理解できなくて放置されても、そのひとの子どもや未来のリスナーが「こいつすげーじゃん」と思うかもしれない、ネクスト・ジェネレーションが自分の真価を発見してくれたら、老害になってもライヴができるかもしれない、そういう意図があった、と。

小林:なるほど。未来を先読みしていた……と褒めていいのかどうか(笑)。

渡辺:ほんとうにそこまで深く考えてたのかはべつとしても、発想としてはおもしろいですよね。ライヴ・ヴァージョンの歓声を活かすっていう。ライヴの勢いでもグルーヴ感でもなく、ほかのミュージシャンが参加していることを打ち出すのでもなく、ただ歓声が重要だっていうのはすごくおもしろいアイディアだなと。ライヴといえば、ダフト・パンクみたいに光るヘルメットをかぶったプロジェクトもあったよね。

小林:ショバリーダー・ワンですね。超絶技巧バンドの。

渡辺:あとロボットに演奏させたりとか(『Music For Robots』、2014年)、やっぱり随所でおもしろいことをやるひとだなと思います。そういう意味ではやはりなにかリリースされるたびに、スクエアプッシャーに帰らざるをえないというか、呼び戻される感じはありますよね。

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(ここで野田編集長が登場)

野田:90年代に初来日したとき、超満員の新宿のリキッドルームでドリルン・ベースをバックにベースを弾いていたよね。

渡辺:基本そのスタイルだったね、最初。

野田:あの時点でもうひとつのスタイル、型ができあがっていたからさ、そこから抜け出ることってなかなか難しかったのかなと。『Music Is Rotted One Note』以降、違う自分を探したかったのかもしれない。そこは彼のいいところで、自分の芸風を初期の時点で捨てたというか。

渡辺:「スクエアプッシャーらしい」初期のスタイルをいつまでも求められることが嫌だったみたいだね。どこかのインタヴューでそういうステレオタイプに対して怒ってたおぼえがある。でも、初期は家でもああやって録ってたという。『Feed Me Weird Things』の記念盤セルフ・ライナーノートに書いてありました。最初はマルチトラックのレコーダーがなくて、基本的に一発録りでやっていたそうで。バック・トラックをつくっておいて、シーケンサーのスイッチ押して、同時にベースを弾いて録ってたっていう。

野田:その話はおもしろい。それで音質がその後と違うんだね。やっぱりいいね、アーティスト初期の「持たざる」時代って。みんなアイディアを駆使してつくって録音してるんだよね。

渡辺:ホックニーを輩出した名門アート・スクールに通ってて、そのお金を親に出してもらってたのに、学費や学生ローンで得たキャッシュを全部シンセサイザーに使っちゃって(笑)。

野田:それは親の立場の人間としてはちょっと(笑)。

渡辺:一応、ちゃんと卒業はしたみたいですよ。

小林:でもたしかに10年代の作品になると、システム自体かなり高度な感じになっていきますよね。

渡辺:けっこう機材オタクっぽいですよ。

野田:そう。リチャード・D・ジェイムスとはまた違うタイプの。リチャードはもうちょっと偏執狂的というか、ある意味では狂気の世界に入ってるけど、スクエアプッシャーはもうちょっと真っ当な。

渡辺:そうだよね。だからオールドスクールの機材が好きだったりとか。『Be Up A Hello』は、そういう古い機材を持ち出してつくっていた。

小林:あれは彼にしては珍しく懐古的になった作品ですよね。

野田:スクエアプッシャー史において、『Ultravisitor』はどういう位置づけなの? 『Music Is Rotted One Note』はひとつの転機だったと思う。このころからマイルス・デイヴィスとか、けっこうジャズを意識して。

渡辺:完全に生演奏でやっていたしね。さっきも話したんですけど、それでその後いろいろやって、結果『Ultravisitor』に至った、みたいな。

野田:じゃあ第2期の総括的な。

渡辺:あるいは、第3期の出発なのか。ジャケが本人の顔写真っていうのも。

小林:買ったとき、ジャコ・パストリアスみたいだなと思いました。

渡辺:そうそう、ジャコ・パストリアスのファースト(『ジャコ・パストリアスの肖像』、1976年)っぽいですよね。すごく思った。当時だれも言わなかったけど、やっぱりそうだよね。それを今回変えたじゃない。もしかしたら、ちょっと恥ずかしくなったのかなと(笑)。

小林:以降も顔をバーンって出したアートワークはないですし。そもそもテクノのアーティストはそういうことを滅多にやらないですよね。やはり『Ultravisitor』には自分の振り返り、自分史的なテーマが込められているのでしょうか。

(このあたりで野田編集長が退場)

渡辺:そういう時期だったのかなと。『Music Is Rotted One Note』に “Don't Go Plastic” という曲があったけど、その後『Go Plastic』を出した。「ニセモノはやめましょう」って言っていたのに「やっぱりまがいものがいいです」みたいな(笑)。生演奏のような、いわゆる「ホンモノ」の音楽も自分はできるんだというのを見せたかった部分がありつつ、完全にそればっかりでもない、みたいな。

小林:なるほど。『Ultravisitor』はセンティメンタルなメロディの曲が多いのも特徴ですよね。そこで内面的なものを表現しようとしていたのかもしれません。Spotifyで見ると、“Iambic 9 Poetry” と “Tommib Help Buss” だけ断トツの再生数で、ほかの曲とケタが違っていて驚きます。大多数はその2曲しか聴いてないんじゃないかと危惧してしまいます。すごいライト層だとは思うんですが。

渡辺:残酷というか、ハッキリ見えちゃうから怖いですよね。その2曲の人気からもうかがえますが、スクエアプッシャーといえば過剰なビートだったりドリルン・ベースの極北だったり、あるいはベースもむちゃくちゃ弾きまくるみたいな印象だったのが、それと真逆のイメージを打ち出してきたのが『Ultravisitor』で。“Abacus 2” のようなポップでわかりやすいリズムで、かつメロディがきれいな曲を入れなかったのは、もっと静かなもののほうが彼のアナザー・サイドを打ち出すためにはいいっていう判断をしたのかもしれないですよね。こういう曲はその後も継続してある程度出てくるし。

小林:たしかにこれ以降、こういう曲がちょこちょこ入るようになりますね。

渡辺:インタヴューで「そういう曲がすごく好きだし、自分のなかにあるものだ」って自分でも認めている。それを本人がはっきり認識したり、あるいは自分のそういう面を発見した時期なのかなって思う。デビューが95年だから、そろそろ10年目が近づいてきている、正念場みたいなタイミングだったのかもしれない。そう考えるとやっぱり転機になったアルバムだと思うんですよね。

小林:肖像のジャケにしても感傷的な曲調にしても、ちょうど現代とつながる感覚があるようにも思いました。いまはSNSで有名人も一般人も自分語りをするし、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーも自分史3部作を出した。そういう時代の流れにハマったリイシューでもあるのかな。

渡辺:さっき当時のインタヴューの話をしましたけど、じつはもう1本あって、LAの雑誌『URB』がインタヴューしているんです。そっちはメール・インタヴューなんですが、トムが「ヴァーチャル・コメディアン」っていうソフトを使って返信をつくりました、って書いてて、ぜんぜんインタヴューになっていない(笑)。ようはChatGPTの先祖みたいなソフトなんですけど、当時から「新しい技術に新しいことをさせよう」みたいな発想が彼にはある。『Dostrotime』の “Wendorlan” のヴィデオでもオシロスコープを使っていましたよね。オシロスコープ自体は新しくないけど、そういうふうに技術に寄り添って自分を出していくところもおもしろいなと。いまでこそAIは当たり前のものになってきましたけど、20年前にそういうことをやっていて。そのソフトも自分でつくったらしいんですよね。ほんとうかどうかわからないけど。

小林:たしか『Damogen Furies』(2015)のときはソフトウェアから自作していましたし、テクノロジーへの関心は高いですよね。先ほどのロボットもそうですし。そうしたハイテクなものへの関心がある一方で、今回『Ultravisitor』を聴きなおして再発見したのは、やはり静かな曲で。といっても先ほど話に出た大人気の2曲ではなくて、“Andrei” と最後の “Every Day I Love” です。おなじくメロディアスなタイプの曲ですが、この2曲はバロック的ないし古楽的な感じもあって、もしかしたらスクエアプッシャー流の、民衆の音楽という意味でのフォークともとらえられるかもしれないと思いました。個人的には “Iambic 9 Poetry” や “Tommib Help Buss” より、この2曲のほうがいまは響くなと。先ほどの『ピッチフォーク』では「退屈だ」って書いてあったんですが(笑)。

渡辺:バロックっぽいのはぼくも気になりましたね。2004年のライヴを調べると、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールでやっていたりするんですよ。クラシカルのひとたちとやったり、いろいろ実験もしていた時期のようなので、そういう影響もあるのかも。でも、なんで “Iambic 9 Poetry” があれほど広く受け入れられたのかについては、考えてみたんですけどわからないんですよね。ピアノやクラシカルな楽器でのカヴァーをYouTubeで見かけたりとか、ぜんぜん違う層に刺さっていたりして。

小林:エイフェックス・ツインの “Avril 4th” がひとり歩きしているのと似たような現象かもしれませんね。エイフェックスやスクエアプッシャーの凶暴なブレイクビーツは、ふだんそういうものを聴かないリスナーからすると受け入れられないけど、きれいなメロディの穏やかな曲だったら聴けるという。

渡辺:“Iambic 9 Poetry” については、新しく発見したことがあって。ぼくは普段ゲームの仕事をしていて、英語の脚本をつくったりしてるんですけど、いろんなキャラクターに方言とか昔のことばを喋らさなきゃいけないことがあるんです。そのキャラクターが違う文化圏のキャラクターであることを表現するために、古い時代の喋り方をさせたり。それで、あるときイギリス人のスタッフから「アイアンビックを入れたらどうですか」と言われたことがあって。古典詩の脚韻のひとつに「イアンボス(iambos)」というのがあって、日本語だと「弱強格」。ようするにリズムのことです。そのリズムに合うことばを選んで入れて、読み方も強弱をつけて読むんです。シェイクスピアのころはそういうことが盛んで、だからイギリスの舞台俳優はみんなけっこうそれができるんですよ。現代の日常会話では使われてない言語だけど、「こういうキャラクターなので、そうしてください」と伝えると、普通にやってくれる。その弱強格にも「三歩格」とか「四歩格」とか種類があるんですが、「Iambic Pentameter」が「弱強五歩格」のことで。『Budakhan Mindphone』(1999年)に “Iambic 5 Poetry” という曲がありますけど、そのことだったんですね。それが、『Ultravisitor』だと “Iambic 9 Poetry” だから、「弱強九歩格」ということになる。なんで「9」にしたのかわからないんですけど、「弱強九歩格」というのはおそらく存在しないんですよ。以前「5」はやったから今回はその上を行く「9」でやろうということなのか、静かな曲調のなかで波を打っていくようなドラムの流れのことを意識しているのかはわからなですけど。インストの曲なのに、舞台とか古典詩からインスパイアされてそういう題をつけるのはおもしろいなと。

小林:それはすごい発見ですね。ぜんぜん知りませんでした。

渡辺:リアルタイムではまったく気づいてなくて。最近になって仕事をしてるときに気づいたんですよね。「これじゃん!」って。だから、彼はことばづかいは荒っぽいときもあるけど、すごく頭のいいひとなんだなと思います。

小林:『remix』時代に野田さんがやった、『Just A Souvenir』(2008年)リリース時のインタヴューでも、コンセプトなどをめぐってかなり知的な話をしていました。ブレグジットに反対する曲(“Midi Sans Frontières”、2016年)を出したりもしていましたよね。

渡辺:その曲の素材をフリーで出すから、みんなでそれを使ってリミックスしてくれという。あれはすごくおもしろいなと思いました。昔オウテカがクリミナル・ジャスティス・ビルのときに「これなら捕まらない」ということで反復しない曲(“Flutter”、1994年)を出してたじゃないですか。あれに通じるものを感じましたね。〈Warp〉もスピリットを失っていないなと。

小林:今回聴き返してみて、あらためていいなと思った曲ってありましたか?

渡辺:最初はトムが観客に話しかける声、そこからすごく静かにはじまって激しいドリルン・ベースになっていく曲……“Tetra-Sync” かな。前から割と好きではあったんだけど、今回聴き直してもやっぱりすごくいいなと思った。まあ、ライヴを観たいですね。

小林:いま『Ultravisitor』でライヴをやってくれたらすごくハマりそうな気がしますよね。

渡辺:その後ライティングに凝ったライヴなどが評価されましたけど、そういうこともぜんぶ経てきたうえで、この時代の曲をやったらどうなるのか、というのは聴いてみたいですね。

小林:ということで、ここまでの話を一言でまとめると、『Ultravisitor』はスクエアプッシャー試行錯誤期の名作、ということですね。

Squarepusher
Ultravisitor (20th Anniversary Edition)

Warp / ビート
2024.10.25 release

2CD国内盤

Amazon Tower HMV disk union

3LP国内仕様盤

Amazon Tower HMV disk union

拝啓 ゲンイチさん

 挨拶は抜きにしよう。だいたい2024年になってまでも、貴兄と『セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2』(以下、『SAW Vol.2』)についてこうして手紙をしたためことになるとはね。我ながら30年前からまったく進歩がないとあきれるばかりだよ。もっとも『SAW Vol.2』が30年という年月に耐えた、いや、それどころか、むしろじょじょに光沢を増していったことに話は尽きるのかもしれないけれどね。まあ、とにかくだ、我ら老兵の役目としては、この作品がその当時、どのような背景から生まれ、そしてどのような意味があり、それがもたらした文化的恩恵について後世のためにも語ってみようじゃないか。
 まず、ぼくとしては以下に『SAW Vol.2』についてのポイントとなる事項を挙げてみた。どうぞ確認してくれたまえ(そしてもし見落としがあれば追加を頼む)。

 ■AFXのカタログのなかでもっともミステリアスな作品。

 ■明晰夢から生まれた。

 ■円グラフ、曲名のクレジットはなし。

 ■メジャー・レーベル第一弾の意図的に商業的でない作品。

 ■評価の分裂(否定も激しかった)。

 ■『セレクテッド・アンビエント・ワークス85-92』(以下、『SAW85-92』)と違って、ダンス・ビートがほとんどない/あっても作品全体では強調されていない。

 ■1993年~1994年のアンダーグラウンド・シーンとアンビエント

 発売当日、唯一曲名がわかっていたのは、1992年の決定的なコンピレーション『The Philosophy of Sound and Machine』から再録の “Blue Calx” だけだったね(2019年の 「Peel Session 2 EP」で“♯2”が “Radiator” という曲だったことが判明される)。ちなみに “Blue Calx” は、発表時は作者名でもあった。あの曲をリアルタイムで聴いていた人間からすると、当時としては実験的で画期的な曲だったけれど、それがどうだ、『SAW Vol.2』においてはもっとも聴きやすい曲として挙げれらる。
 あの時代、こうしたインディ音楽はアナログ盤での流通が普通だったから[※CDよりヴァイナルのほうが安かった。LP盤は平均2千円、CD盤は2千300円くらい]、当然のこと我々はアナログ盤を買って聴いているわけだが、アナログ盤で3枚組というリリース形態にも、1993年から1994年にかけての時代のドープさを見ることができる。時間にして167分、2時間半以上のリスニングを日常的にしていたことは、若くて暇だったからではなく、それだけ音楽の吸引力が凄かったということだ。そうじゃないかね、ゲンイチさん。

敬具

2024年11月18日 野田より


拝復 
野田くん

 いや、ほんとうに恐ろしいね。30年かあ。僕は1961年生まれなので、1991年にちょうど30歳を迎えたんだよ。30歳という年齢もさることながら(Don’t Trust Over Thirty!)、1991年っていろんな意味で記憶に残る年だった。湾岸戦争にソ連崩壊で日々リアル世紀末を感じてたりもしていたいっぽうで音楽にとっても特異な年だったからね。ニルヴァーナの『Nevermind』やらREMの『Out of Time』 やらダイナソーJr.の『Green Mind』もすごいインパクトだったけど、やっぱりプライマル・スクリームの『Screamadelica』とマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの『Loveless』だよね。
 でさ、僕が生まれた1961年のヒット曲を眺めてみると、たとえば洋楽だとプレスリーの “Can't Help Falling in Love(好きにならずにいられない)” とかベン・E.キングの “Stand by Me” 、ジョン・コルトレーンの “My Favorite Things” 、国内に目を向けてみると石原裕次郎と牧村旬子のデュエット曲の定番ともなった “銀座の恋の物語” や植木等の “スーダラ節” だったりする。そこから30年後、マイブラの “Soon” やプライマルの “Higher Than The Sun” が来る。このジャンプアップはとんでもないわけじゃないですか。1961年に若者でこういう音楽を聴いてた人たちに “Soon” 聴かせたらまあ “???” ってなるよね。そのくらいことこの2曲についてはそれまでの音楽のクリシェが通用しないものだったわけでさ。これを聴くにつけ、いやー音楽もずいぶん遠いところまでたどりついたものよのぅ……なんて思ったりしてね。30年ってそのくらい長い時間なんだよ。
 ところがさ。1994年にリリースされたこの『SAW Vol.2』。プレスリーや植木等とマイブラの間に横たわる時間と同じ時間が流れたんだぜ、30年! 少なくとも僕の耳にはこの『SAW Vol.2』が30年前の音楽には聴こえない。全然古びていない。今回発売された30周年記念盤で初めて耳にする若いリスナーにしてみても、僕が1991年にベン・E.キングや石原裕次郎を聴いて懐かしさを感じるのと同じように『SAW Vol.20』を聴くとは思えないよね。それがすごいのかどうかは微妙だけどね。もしかして音楽の進化が遅くなってるのかなとか。ま、実際そうなんだろうなと感じることはあるんだけどね。『SAW Vol.2』が出た頃ってネットもありはしたけどまだまだ黎明期だったしYou Tubeもないし、音楽聴くなら買うか借りるかしかなかったのに、30年後の今はもう普通にストリーミング主体の状況になってるわけで、やはり時代は進化しているわけなんだけど、音楽そのものの革命的な変化ってもうあんまり感じられないのも事実でしょう。
 それはともかく、1994年においてこのアルバムがミステリアスだったというのは事実。調べるって言ったってネット情報なんてないし、そもそもこのエイフェックス・ツイン/リチャード・D.ジェイムス(RDJ)がいったいどういうアーティストなのかということも、海外の音楽新聞などに載ってくる記事とせいぜいレコード店のPOPなんかで類推するしかなかった。彼の名が多少なりともテクノ好きの間で知られるようになったのはブーメラン・ジャケットの 「Digeridoo」 (1992年)だったよね。それとヒトデ・ジャケの 「Xylem Tube EP」 。この2枚のシングルはベルギーのテクノ・レーベル〈R&S〉からのリリースで、その前にも別のレーベル(イギリスの〈Mighty Force〉と〈Rabbit City〉)からのシングル(「Analogue Bubblebath」の1枚目と2枚目)があったけど、レーベルとしては〈R&S〉のほうが知名度があったからね。よけいに目に留まりやすかったというのはある。あのころ〈Mighty Force〉盤買っていたのって三田格くらいじゃないの?(笑)
 で、1994年にはこのアルバムがあって、UKのDJイベントMegadogの引っ越し公演があって、そのDJとしてRDJが初めて日本のファンの前に姿をあらわし、取材もいくつか受けたから少しずつその神秘のヴェールが剥がれてはきてたんだけど……いや、むしろもっと??になったと言ってもいいのかもしれない(笑)。印税で軍事用のタンク買ったとか、リミックスする相手の音楽は嫌いであればあるほどいいリミックスができるとか、明晰夢で曲を作るとか……どこまで信じて良いのかみたいな、石野卓球の言葉が思い出されるよ。

 RDJの最初のアルバムは〈R&S〉から出たエイフェックス・ツイン名義の『SAW 85-92』で、これが1992年。このアルバムに続く同名義のアルバムが『SAW Vol.2』だったわけだけど、これは〈R&S〉からではなく、〈WARP〉と契約しての最初のアルバムだった。〈WARP〉からの最初のリリースは『SAW Vol.2』に4ヶ月ほど先立つ1993年末のシングル 「On」だったね。同時に彼はアメリカでは大手ワーナー傘下の〈Sire〉と契約し、〈Sire〉からは本国から2ヶ月遅れで 「On」がリリースされてる。これはディレイのかかった叙情性すら感じるピアノの美しいメロディと暴力的なリズムが融和した素晴らしい曲だったよね。レーベルとしても力を入れているであろうことは、珍しくリミックス・シングルも別にリリースされていることからもわかる。この 「On」の次に『SAW Vol.2』が出るわけだけど、それに続くシングル 「Ventolin」もリミックス盤が出た。もっともリミキサーはReload、μ-Ziq、Cylob、Luke Vibertと、みんな近親者ばかりというのが笑っちゃうけどね。ちなみにこの 「Ventolin」に次いで出たシングル 「Donkey Rhubarb」には、アメリカン・ミニマルの代表的作曲家フィリップ・グラスのリミックス(というよりオーケストレーション)が収録されてて当時は興奮したものだよね(笑)。
 それにしてもだよ。移籍後の初シングルの数ヶ月後にアルバムが出るのであれば——しかもそのシングルがけっこう力を入れたものであればなおさら——その曲を含むアルバムが出るものと思うよね。それなのに出たのは『SAW Vol.2』(笑)。これは衝撃的でしょう。仮にもメジャーからのリリースとなれば、まず間違いなく先行シングル→ヒット→それを含むアルバムで快進撃という図式に則るだろうなと思いますよ。しかし事実は違った。まさかのシングル曲 “On” 未収録、まさかのオール・インストのアンビエント・アルバム。まさかの2枚組(アナログは3枚組)。まさかの曲名なし……〈WARP〉ならともかく、〈Sire〉がよくこれをOKしたなと今でも思うよ。

2024年11月20日 杉田より


前略
ゲンイチさん

 冬になったかと思えば、秋に戻ったり、老体にはこたえる今日このごろ、今朝もなんとか不死鳥のごとく起き上がって仕事をしているよ。たははは。
 さて、それにしても、うん、音楽作品とは面白いものだね、たとえば、90年代前半、シーンで絶大な支持と人気を誇った作品にオービタルの2枚目がある。リアルタイムにおける支持と人気で言えば、『SAW Vol.2』は、それよりも勝っていたとは言えない。『SAW Vol.2』ほど評価が二分した作品はなかったし、我々支持した側の人間にしても、大声で、目くじら立てて支持したわけでもなかった。支持率や共鳴度で言えば、やはり『SAW 85-92』と『Surfing on Sine Waves』(93)のほうが圧倒的だったし、『SAW Vol.2』の次作、『...I Care Because You Do』の激しさのほうが新しいファンを巻き込んでいった。ところが、21世紀もクォーターが過ぎようとしている現在、『SAW Vol.2』の評価はずっと上昇し、人気の面でもひょっとしたら、『Surfing on Sine Waves』なんかともかなり拮抗しているんじゃないないだろうか。つまり、『SAW Vol.2』は、それがリリースされた時代やその背景から切り離されてから、どんどん存在感を増していった作品だったと。まあ、よく言うところの、「時代がこの作品にようやく追いついた」のだろうね。もちろんリスナーの耳が、時代が進むにつれて、当時は難解だと思われていた音楽を楽しめるようになっていったのは事実だよ。ゲンイチさんだって、1994年よりもいまのほうがこのアルバムを好きなんじゃないかな。
 昔話はこれで最後にしておくけど、まあ、あの時代はね、いまと違ってダンス熱がすごかった。みんなで集まって身体で音楽を感じること、その素晴らしさに多くの人たちが気付いた時代だったよね。だからあの時代は、ダンスに即したオービタルやアンダーワールドが人気だった。だから、みんなが汗をかいて踊っているところにこのアルバムを投下したRDJの逆張りも、なかなかのものだった(笑)。〈Sire〉もよく出したというか、メジャー移籍第一弾でこれをやるRDJがすごいよ。たしかにこの時代、アンビエントはブームだった。いろんなアーティストがアンビエント作を作りはじめていたよね。ダンスフロアのピースな空気にも陰りが見えはじめたころで、みんないったんクールダウンしようじゃないかという話になったわけだけれど、しかし、ここまで無調音楽やドローンをやるの人は、シーンのなかにはまだ他にいなかったね。しかも、曲名もないときた。反商業主義も甚だしい。
 ここで再度、追加でポイントを挙げてみた。

 ■当時のRDJ(まだ22歳~23 歳の若者)の説明によると、音楽制作のため、なるべく寝たくない。

 ■睡眠時間を削りに削った結果、日常生活において “老人のように頭が混乱し始める。お茶を淹れてもシリアルボウルに注いでしまうような、予測不可能なことをするようになる” (1993年の『Melody Maker』のインタヴューより)。

 ■こうしたある種の催眠状態(ぼけ状態)から、RDJは明晰夢を見るようになった。

 ■そして、その能力を音楽制作にも活かそうと作ったのが『SAW Vol.2』である。

 ■夢の状態や、夢で見たことを起きてから音楽にする。

 ■『SAW Vol.2』に神秘的な風景が広がるのはこのためである。

 ざっくり言えば、こういうことで、細かく言えば、このアルバムには明らかに『SAW 85-92』時代の曲もあるし、前の手紙にも書いたように、1992年の “Blue Calx” もある。ただ、多くはやはり、アルバムの最初の曲、 “Cliffs(崖)” とファンからは呼ばれているこの靄のかかったトラックが象徴的で、驚異的と言える神秘的な音像が散りばめられている。当時もいまも、ほんとうにRDJは夢で作曲したのかどうは議論の対象だけれど、ぼくはね、それはあながち嘘じゃないと思っている。それから、1992年から1993年のあいだにRDJは、過去にはない音楽体験をしたんじゃないかともにらんでいるんだ。たとえば現代音楽と言われてる “現代” ではない過去の音楽なんかをね。そこはゲンイチさんの専門だから、どう思うか訊いてみたかったんだ。

早々

2024年11月22日野田より


拝復
野田くん

 RDJは “テクノ・モーツァルト” なんて呼ばれていたこともあったね。別に彼がクラシック好きというわけじゃなくて、ようするにわずか35年の生涯に700曲以上の作品を遺したヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトみたいに曲を大量に作っていることから付けられたイメージだろう。もっとも曲をたくさん書いた作曲家といえばヨハン・ゼバスティアン・バッハとかフランツ・シューベルトも1000曲以上書いてるし、シューベルトなんてモーツァルトより4歳も早く死んじゃったんだから、モーツァルトよりやばい量産家だけどね。もっともシューベルトよりモーツァルトのほうが一般的な知名度は高いから “テクノ・バッハ” とか “テクノ・シューベルト” じゃなくてやっぱり “テクノ・モーツァルト” なんだろうけど。
 あの時代のRDJが確かに湧き上がる楽想をスケッチするようにどんどん創り貯めていたのは事実だろうね。アンファン・テリブルと言われていた20代前期までの彼は特に。毎週アルバム出しても2、3年は持つくらいの曲があるよって言っていたね。彼のデビュー作『SAW 85-92』は、創り貯めた曲からコンパイルされたアルバムなわけだし。ほんとに14歳のときの曲あんのかぁ?って思わなくはないけど(笑)。

 プレ『SAW Vol.2』的なスタンスの作品として、たとえば『SAW 85-92』があったりPolygon Window名義の『Surfing on Sine Waves』(特に “Quino-Phec” )みたいなアンビエント的な作品が『SAW Vol.2』の前にあったわけじゃない。けど、それらの2枚よりも『SAW Vol.2』が注目されたというのは、前にも言ったようにメジャーからのデビュー・アルバムっていうこととかもあるけど、やはり3時間近い大作っていうことと、より深遠(あるいはやや難解)な感じを聴き手に与える響きがそこにあったからでしょう。アンビエントという点では1990年にはKLFの『Chill Out』が、翌年にはThe Orbの『Ultraworld』があり、さらにはミックスマスター・モリスのIrresistible Forceやピート・ナムルックが台頭し、1993年にはUKロックChapterhouseのセカンド・アルバムをまるごとアンビエント化したグロコミことGlobal Communicationの『Pentamerous Metamorphosis』があったね。これが翌年のGCによる最高のアンビエント・アルバム『76 14』を生み出すきっかけとなったわけだけど、『SAW Vol.2』が94年の3月で『76 14』が6月。これだけでも94年はすごいアンビエント・イヤーだったよね。そういや94年の春には野田くんたちとコーンウォールへアンビエント・トリップ、リアルなドライブをしたっけな。この旅と『76 14』の関係については第一期ele-kingの創刊号に長い原稿を書いたので、探して読んでほしいところだけどまあそれは置いとくとして、これらの先行作が状況を用意したとしても、やはりこの『SAW Vol.2』のジャンプアップにはみんな驚かされたんだよね。
 野田くんが指摘するようにRDJがこの時期に “過去にはない音楽体験をした” かどうかは正直わからないよ。でも明らかに『SAW Vol.2』の前の作品、つまり『SAW 85-92』とか『Surfing on Sine Waves』とはだいぶ音の感じが変わった。『SAW Vol.2』以前の2作にあったダンスビート——実際踊れるかどうかは別としても——がない(あるいは少ない)こともあるだろうけど、あくまで電子音楽の装いだった前2作と比べて、『SAW Vol.2』の響きはクラシックで言うところの室内楽的なそれに近いものになっていたということが大きい。もちろんそれは電子音で作られたもので、別にリアルな弦楽合奏や管楽器が使われてるわけじゃない。でも、全体的に彼の音楽にみられがちな神経症的な響きではなく、ふくらみのあるハーモニーが前面に出ているし、コード進行もスムースな曲が多い。声高にメロディ!と主張するものはないにしても、移りゆくコード進行のトップノートの連続がとても印象的に聞こえる感覚を聴き手にもたらすんだと思う。このアルバムの何曲かはクラシカルなオーケストラやアンサンブルに編曲されて演奏されていたりするけど——Alarm Will SoundとかLondon Sinfoniettaとかにね——そういうことをしたくなる曲がたくさんあるアルバムなんだよ。
 それにしてもだよ。〈WARP〉移籍後のリリースを見てみてよ。 「On」~『SAW Vol.2』~ 「Ventolin」、この振れ幅ってやっぱりとんでもないなと改めて思うね。もっと細かく言うと 「Ventolin」の前に出たAFX名義の 「Analogue Bubblebath4」 と 「Hangable Auto Bulb」シリーズを含めて考えるともっとすごいなとなるけど。とはいえ、RDJ言うところの “明晰夢からのインスピレーションで作曲・創作” したのは『SAW Vol.2』だけだろう。だからこのアルバムだけが前後の作品から切り離されて屹立しているんだと思うんだよ。

2024年11月24日杉田より


前略
ゲンイチさん

 朝方は冷える今日のこの頃。今朝も歯を食いしばって布団から出たよ。それはそうと、この便りを最後に旅に出ることにする。もちろん、金もないから内面旅行だ。
 それはそうと、ここで言っておくと、『SAW Vol.2』の系譜というか、これに匹敵する謎めいた作品がRDJにはもうひとつある。そう、『Drukqs』(01)だ。いつかこのアルバムも、より深く語られるときが来るだろう。またそのさいには筆をとることになるかもしれないから覚悟しておきたまえ(笑)。
 それはそうと、もうまとめよう。最後に読者への案内をかねて、このアルバムのなかのお互いのなかのフェイヴァリットをいくつか挙げようじゃないか。 “Blue Calx” を除いて、本来は曲名のクレジットなしのこのアルバムには、時間のなかでファンが勝手につけた曲名が非公式ながらレーベルも認めているので、その曲でいくつかピックアップするよ。

 以下、野田のハイリー・レコメンド
 ・Cliffs(クリフス)
 ・Rhubarb(ルーバーブ)
 ・Blue Calx(ブルー・カルクス)
 ・Stone in Focus(ストーン・イン・フォーカス)

 レコメンド
 ・Radiator(レディエイター)
 ・Grass(グラス)
 ・Weathered Stone(ウェザード・ストーン)
 ・Lichen(ライカン)

 まあ、これはたんに好みであって曲を評価するものではない。ただ、アルバムの正規のクローサートラックが “Matchsticks(マッチスティックス)” 、つまりマッチ棒なのがどうなのかというのは、当初から思っていたよ。もうちょっとロマンティックな終わり方をしても良かったと思うんだが、じつに不穏なエンディングだ(笑)。
 とにかく、 “Blue Calx” が名曲なのは言うまでもないけれど、 “Cliffs” と “Stone in Focus” もほんとうに好きだな。ことに1曲目の “Cliffs” は、異世界への完璧な入口だ。ちなみに、 “Blue Calx” はコーンウォール時代に(通称〈Linmiri〉スタジオにて)レコーディングした最後の曲だと言われているね。つまり、機材的には『SAW85-92』と重なっている。ああ、それから曲名の代わりに配置されている円グラフだけれど、ファンがいろんな考察——それぞれの角度に意味があるんじゃないかとか——をしているものの、結局、いまだにその謎は解けないでいる。
 じゃ、最後に、先生の推し曲をご教示いただけますかな。

早々

2024年11月26日野田より


拝復
野田くん

 そうだね、『Drukqs』。 “Avril 14th” という『SAW 85-92』における “Xtal” 、『SAW Vol.2』における “♯3(Rhubarb)” と並ぶ静謐系RDJのベスト・ソングが入ってるアルバムね。アルバムとしても僕はこの3枚が好きだし今も聴き続けてる。死ぬまで聴くだろう……とは言ってもこの先何年生きられるのかわからないけどさ(笑)。
ということで、僕の『SAW Vol.2』の推し曲はこれ。

 ハイリー・レコメンド
 ・Rhubarb(ルーバーブ)
 ・Curtains(カーテンズ)
 ・Domino(ドミノ)
 ・Blue Calx(ブルー・カルクス)
  ・Z Twig(ゼット・トウィッグ)

 レコメンド
  ・Blur(ブラー)
  ・Windowsill(ウィンドウシル)
  ・Hexagon(ヘクサゴン)
  ・Stone in Focus(ストーン・イン・フォーカス)
  ・Lichen(ライカン)

 僕も野田くんと同じように2曲目の穏やかな “Rhubarb” がほんとうに好きなんだけど、RhubarbといえばRDJにはとんでもなく騒がしい “Donkey Rhubarb” という曲もある。『…I Care Because You Do』の先行シングルのリードトラックだった曲だけど、続いて出たアルバム『…I Care~』にはこの曲は収録されず、かわりにフィリップ・グラスがミニマルなオーケストレーションを施して話題だった “Icct Hedral” のエディットテイクが収められたっていうところもRDJらしい悪戯心かな。
  “Blue Calx” が素晴らしいのはもちろんだね。RDJにとって “Calx” は重要なテーマなんだろう、『SAW 85-92』のGreen、『SAW Vol.2』のBlue、ちょっと飛んで『Richard D. James Album』のYellowと、見事に三部作を揃えてる。リズムは3曲とも全然違うけど、背後に美しいパッド系の音が鳴っている点は共通している。タイトルがナンバリングだけだった『SAW Vol.2』において、唯一最初から曲名が明らかにされていたのは、RDJのこの曲への思いがあったからじゃないかな。まあ、野田くんも指摘していたようにこの曲だけは既発曲だったというのも関係しているのかもしれないけど。
 あと、このリストには入れてないけど、僕はオリジナル盤のラストが “Matchsticks” であること、嫌いじゃないけどね(笑)。この “物語が終わらない感” がいいんだよ。最後、響きが唐突に途切れるところも含めてね。だから、今回の30周年記念盤で追加された2曲は、正直蛇足じゃないかって思うんだけどどう? いや、曲としては悪くないんだけどね。そういえばこの追加トラックの2曲目にまたしても “Rhubarb” が登場してる。全曲リバース処理されてて響きはおもしろいけど、これを足して30周年記念盤を閉じるっていうのがRDJらしい一筋縄ではいかない感ありありで、おもしろいといえばおもしろいんだけど。

2024年11月28日 杉田より


前略 
土門さん、いや、ゲンイチさん、

 冬の透明な空気が気持ちいい。家のなかでビールを飲みながら聴いているよ。自分としてはいまもこの『SAW Vol.2』を楽しめることは嬉しいよ。あの頃の音楽が2024年になっても現役なのは、ある意味いまだからこそ『極悪女王』が面白いのと同じように……いや、違うか、はははは。
 ジェフ・ミルズの “サイクル30” を思いだそう。あれはテリー・ライリーの “In C” から30年、つまり、ミニマルの30周年期ということで “サイクル30” なんだけど、1994年に我々は(コイちゃんと一緒に)テリーさんの『ア・レインボウ・イン・カーヴド・エアー』をよく繰り返し聴いたよね。だから、30年前の作品であっても、まったく古くはならない音楽作品はほかにもいろいろあるし、おそらく 『ア・レインボウ~』がむしろ時間が経ってから聴いたほうがよく聴こえたように、あるいはより幅広いく聴かれていったように、『SAW Vol.2』もそういう作品だった。こういうのをタイムレスな音楽っていうんだね。若い人たちにもぜひ聴いて欲しい。いまでもぜんぜん新しいから。
 ところで、ゲンイチさんがあの頃買った『SAW Vol.2』にもナンバリングしてあるわけだけど、何番? ぼくのは7000番台のかなりの前のほう。いつかディスクユニオンの壁に『SAW Vol.2』の7000番台のかなりの前の番号のがあったら、それはぼくが売ったレコードかもしれないよ。12月は1年のうちでいちばんセンチメンタルな季節だと言ったのはレスター・バグスです。では、いずれまたお会いしましょう。

拝具

2024年11月28日 野田より


拝復
野田くん

 なんだよ、野田くんってサッカー野郎じゃなかったっけ。ドカベンなんて今の読者ついてこれませんよ(笑)。そして極悪女王と言えばやっぱりジュワイヨクチュールマキウエダ……いや、この話はやめとこう。これも読者がついてこれないや。

 “ア・レインボウ~” ね、あれ、ほんとよく聴いたよなー練馬のコイちゃんの家で。やっぱり30年前くらいだよね。先日その “ア・レインボウ~” を日本のSONYがリイシューしたんだけど、その制作を外注された僕がライナーを野田くんに頼んだのは、あの経験があったからですよ。今でもこの曲の電子音が迸るように鳴り始めるイントロを聴いただけであの風景を思い出せる。音楽ってそういう要素あるよね。そして聴取体験を重ねれば重ねるほど、その音にまつわる記憶もどんどん増えていく。その記憶がノスタルジーの場合もあれば、いつまでも新鮮さを伴って思い出せるものである場合もある。 “ア・レインボウ~” や『SAW Vol.2』は典型的な後者のタイプなんだろうな。
 30年といえばさ、僕と野田くんが出会ったのも30年ちょっと前の話だったね。あの頃から僕らは変わったのか変わらなかったのか……こうして今でも出会ったころに聞いてた音楽についてああだこうだと話ができるんだから、きっと変わってないんだろう(笑)。

 僕の『SAW Vol.2』のアナログも7000番台だよ。同じ店で買ったんじゃないかな(笑)。あれ盤面がマーブル色で溝がよく見えなかったから、狙った曲をかけるのが大変だったことをよく覚えてる。もっとも狙って聴くのは “Blue Calx” くらいだったけど。あれはLP2枚目のB面の1曲目だったからわかりやすかったね。だからこのアルバムで当時いちばんよく聴いたのは “Blue Calx” から “Z Twig” までの5曲だったんだ。だから僕は “Z Twig” が好きになったのかもしれないな。

 じゃあ僕もこの辺でペンを置きます。次の往復書簡は2031年だね。そう、『Drukqs』30周年(笑)。それまでがんばって生きようや。あ、酩酊はほどほどにね。

2024年11月29日杉田より


Aphex Twin
Selected Ambient Works Volume II (Expanded Edition)
Warp/ビート

30周年記念新装版にして決定版。CDでは3枚組。アナログでは4枚組。名曲“#19”(“Stone in Focusで知られる”)ほか、初のフィジカル・フォーマットでリリースされる“th1 [evnslower]”、今回初めて公式リリースされる“Rhubarb Orc. 19.53 Rev”が追加音源として収録されている。(輸入盤CDはボックス使用ではない)

東京国際映画祭レポート - ele-king

 今年の東京国際映画祭は、ドナルド・トランプが米大統領選での勝利宣言をした同じ日に閉幕するという不運に見舞われた。トランプの勝利は、マイノリティや女性の権利、ウクライナ・パレスチナ情勢、世界の民主主義、そして地球環境の未来にまで深刻な影響を及ぼすものとなるだろう。そのような事態を前にして、日本を代表する映画祭はあまりにも小さく感じられた。

 東京国際映画祭(TIFF)がそもそも話題性の高いイベントであるというわけではない。TIFFという略称からしても、1ヶ月先に開催されるトロント国際映画祭(同じくTIFF)の影に隠れてしまいがちだ。毎年、東京国際映画祭のコンペティション部門で上映される外国映画のうち、日本で劇場公開されるのはほんの一握り。しかも、最高賞にあたる東京グランプリを受賞しても、配給会社が見つかる保証はない。

 しかし、今年最高賞を取った吉田大八監督の『敵』は、2005年以来、日本映画として初めてグランプリを受賞した作品であり、その心配は無用だろう。以下に、その作品と、今年上映された注目すべき映画について簡単にご紹介する。

『敵』

 吉田大八監督はこれまで駄作を撮ったことはないが、この作品は彼の最高傑作と言えるかもしれない。筒井康隆による1998年の小説を映画化した今作は、その穏やかな滑り出しから、後にシュルレアリスムへと突入する衝撃的な展開をみせる。長塚京三は、退職した大学教授を演じ、その日常生活が徐々に、そして最終的には劇的に破綻してゆく様を見事に演じきり、主演男優賞を受賞。このラストは、ルイス・ブニュエルや、ダーレン・アロノフスキーの『マザー!』を彷彿とさせるほどである。トランプ当選のニュースを聞いた後、再びこの映画を鑑賞したのだが、作品が描く死生観や、謎の「敵」に関する噂、そして大量の難民であふれかえる社会の描写は、さらに不吉なトーンを帯びていた。
(2025年1月17日劇場公開:https://happinet-phantom.com/teki/) 

『トラフィック』

2024 © MINDSET PRODUCTIONS – LUNANIME – LES FILMS DU FLEUVE – BASTIDE FILMS – FILMGATE FILMS – FILM I VÄST – AVANPOST MEDIA – MOBRA FILMS
119分/カラー/ルーマニア語、オランダ語、英語/日本語、英語字幕/2024年/ルーマニア、ベルギー、オランダ

 西欧と東欧の格差を赤裸々に描いたテオドラ・アナ・ミハイ監督の社会派ドラマ。ルーマニア人ギャング集団がロッテルダムの美術館から多数の文化財を盗み出したという2012年の事件を基に制作。前半はオランダが舞台で、窃盗集団の1人の内縁の妻(最優秀女優賞を受賞したアナマリア・ヴァルトロメイ)に焦点を当てており、後半よりも面白い。この映画では、裕福な西欧において、出稼ぎに来る移民たちが二流市民として扱われている様子が容赦なく描かれているが、その一方で、彼らの母国にも深刻な不平等が存在することも取り上げられており、そのような背景を思えば、ピカソの作品がどうなろうと、取るに足らないことのように思えてくる。

『雨の中の慾情』

©2024 「雨の中の慾情」製作委員会
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
11月29日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

 昭和の時代に描かれた、変態チックでシュールな漫画は、現代の映画制作者に対して「健康を害する可能性あり」という注釈を添えるべきかもしれない。台湾を舞台にした片山慎三監督の映画は、つげ義春の作品いくつかを翻案したものだが、手塚眞が監督した『ばるぼら』と共通する難点があった。最先端の映像技術や、時折織り込まれるドリーミーな空想シーンを駆使しても、時代錯誤的な性描写を美化することはできないのである。さらに、この映画は(現実というものがあるとすれば)現実が何なのかという感覚を揺るがそうと躍起になっているせいで、こちらとしては、結局、何もかもがどうでもよくなってくる。しかし、この作品は散漫・雑然としながらも、見どころのない映画というわけではない。例えば、大日本帝国陸軍による大虐殺を描いた豪勢なシーンなど、現代の日本映画ではあまりお目にかかれないような場面もある。 
(11月29日劇場公開:https://www.culture-pub.jp/amenonakanoyokujo/

『アディオス・アミーゴ 』

118分/カラー/スペイン語/日本語、英語字幕/2024年/コロンビア

 イヴァン・D・ガオナ監督による、マカロニ・ウェスタン風のコロンビア映画。昔懐かしい西部劇の雰囲気が色濃く出ているが(主人公たちのやけに汗ばんだ顔がやけにアップで映るなど)、一筋縄ではいかない展開で予想外の方向へと進み、人類は暴力行為から脱却できるのかという話になる。そして、「イエス・キリスト」という名の先住民シャーマンによって与えられる天然の幻覚剤を大量に摂取することで、復讐に燃えていた登場人物たちに、平和を考える余地が生まれてくる。あまりテンポがよいとは言えないが、『アディオス・アミーゴ』のラストは力強く、パラレルワールドでのメキシカン・スタンドオフ〔訳注:互いに武器を向け合ったまま誰も動けない状態〕で締めくくられ、セルジオ・レオーネというよりもアレハンドロ・ホドロフスキーに近い。

『レイブンズ 』

© Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, Katsize Films, The Y House Films
2025年3月28日よりTOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館、ユーロスペースほか全国ロードショー

 伝記映画『イングランド・イズ・マイン モリッシー、はじまりの物語』に続き、マーク・ギルが制作したこの作品も、悩める芸術家の姿を描いているが、その内面には踏み込めていない。『レイブンズ』は、2時間という上映時間内に、芸術家のキャリアすべてを詰め込もうとするという、ありがちな罠にはまっている。特に、写真家・深瀬昌久のような複雑な人物を扱うとなると、その取り組みはさらに困難なものとなる。この映画は、深瀬役の浅野忠信と、深瀬の妻でありミューズでもあった洋子役の瀧内公美の安定した演技が支えとなり、映像も良く仕上がってはいるが、どこかありきたりな印象が残る。ギルの最も大胆な試みは、深瀬を突き動かした闇の衝動を具現化したことであり、それはホセ・ルイス・フェラーがヴォイスオーバーを務めた、人間サイズのカラスという形を成しているのだが、このカラスは、残念なことに漫画『DEATH NOTE』の死神に酷似している。(2025年3月劇場公開:https://www.ravens-movie.com/

『黒の牛』

2024年/日本=台湾=アメリカ/114分/シネマスコープサイズ/5.1chサラウンド/白黒&カラー
配給:ALFAZBET、ニコニコフィルム、ムーリンプロダクション

 東京国際映画祭でデビュー作『祖谷物語―おくのひと―』が上映されてから10年あまりを経て、蔦哲一朗監督はさらに素晴らしい2作目で返り咲いた。『黒い牛』は、19世紀後半、日本近代化の波に翻弄される山男(リー・カンション)の物語を通して、禅の悟りへの道を描いた作品。70mmフィルムで一部撮影されたモノクロ映像には独特の質感があり、その一方で、音響効果はサイケデリックな域にまで達している。それ加えて、ただただ唖然とするような場面もあったので、この作品は、ぜひとも大画面・大音量で鑑賞していただきたい。

Tokyo International Film Festival Report

written by James Hadfield

This year’s Tokyo International Film Festival had the misfortune to wrap up on the same day Donald Trump declared victory in the US presidential election. In the face of an event that’s likely to have such dire consequences – for minorities, women’s rights, Ukraine, Palestine, global democracy and the state of the planet itself – Japan’s preeminent film festival felt awfully small.

Not that TIFF tends to be a major news event anyway; even its acronym ensures that it’s forever in the shadow of Toronto’s more high-profile festival, which takes place a month earlier. Only a handful of the non-Japanese films screened in competition each year go on to receive a theatrical release here; even winning the top Tokyo Grand Prix is no guarantee of finding a distributor.

That won’t be an issue for this year’s winner, Daihachi Yoshida’s “Teki Cometh,” which became the first Japanese film to take the festival’s top prize since 2005. Here are some brief notes on that, and a few of the other notable movies that screened this year.

Teki Cometh (敵)

Yoshida has never made a bad film, but this might be his finest hour. The director’s adaptation of a 1998 Yasutaka Tsutsui novel starts so gently, its later turn into surrealism comes as a shock. Kyozo Nagatsuka deservedly won the Best Actor award for his portrayal of a retired professor whose domestic harmony starts to unravel, first slowly and then spectacularly, in a final act that recalls Buñuel and even Darren Aronofsky’s “Mother!” Watching it for a second time, after getting the news about Trump’s electoral win, the film’s rumination on mortality and its depiction of a society awash with rumours of a mysterious “enemy” and hordes of refugees took on an even more ominous tone.
(Released theatrically on January 17, 2025: https://happinet-phantom.com/teki/)

Traffic (Reostat)

Europe’s east-west divide is laid bare in this anti-thriller by Teodora Ana Mihai, based on a 2012 heist in which a Romanian gang made off with a clutch of priceless artworks from a museum in Rotterdam. The first, and stronger, half of the movie is set in The Netherlands and focuses on the common-law wife of one of the thieves (Anamaria Vartolomei, who won the Best Actress prize). The film is merciless in its depiction of the second-class status afforded to migrants in the affluent West, though also attentive to the stark inequalities that exist in their native country – compared to which, the fate of a Picasso painting starts to look rather insignificant.

Lust in the Rain (雨の中の慾情)

Kinky, surreal manga from the Showa era should probably come with a health warning for contemporary filmmakers. Shinzo Katayama’s Taiwan-set drama, loosely adapted from several stories by Yoshiharu Tsuge, suffers some of the same problems as Macoto Tezka’s “Tezuka’s Barbara.” Superior tech specs and occasional bursts of dreamlike visual imagination can’t gloss over some retrograde sexual politics, while the film works so hard to undermine our sense of what (if anything) is real that none of it seems to matter any more. This sprawling, messy movie isn’t without its highlights, though, including a lavish set-piece depicting an Imperial Army killing spree – not something you see often in modern Japanese cinema.
(Released theatrically on November 29: https://www.culture-pub.jp/amenonakanoyokujo/)

Adios Amigo (Adiós al amigo)

This Colombian spaghetti western from Ivan D. Gaona goes hard on the throwback vibes (the faces are extremely close and extremely sweaty), but takes a circuitous route to an unexpected destination, where what’s at stake is whether or not people can move on from violence. It takes some liberal doses of all-natural psychedelics – dispensed by an Indigenous mystic named Jesus Christ – to get the film’s vengeful characters to a point where they might consider giving peace a chance. While the pacing is a little off, “Adios Amigo” ends strong, with a Mexican standoff in a parallel dimension, more Jodorowsky than Leone.

Ravens

Mark Gill’s follow-up to Morrissey biopic “England is Mine” is another portrait of a tortured artist that doesn’t get past the surface. “Ravens” falls into the familiar trap of attempting to squeeze a whole career into a two-hour runtime, which is a particularly fraught undertaking when you’re dealing with a figure as problematic as photographer Masahisa Fukase. The film looks good, and is grounded in solid performances by Tadanobu Asano as Fukase and Kumi Takiuchi as his wife-slash-muse, Yoko, but it ends up feeling oddly generic. Gill’s boldest step is to give a literal manifestation to the dark impulses that drove Fukase, which take the form of a man-sized raven, voiced by Jose Luis Ferrer, who bears an unfortunate resemblance to the Shinigami from “Death Note.”
(Released theatrically in March 2025: https://www.ravens-movie.com/)

Black Ox (黒の牛)

Over a decade after his debut film, “Tale of Iya,” screened at TIFF, Tetsuichiro Tsuta returned with an even more impressive sophomore feature. “Black Ox” sets out to depict nothing less than the path to Zen enlightenment, through the story of a mountain man (Lee Kang-sheng) who comes spiritually adrift during Japan’s late-19th century modernisation. Shot partially on 70mm film, the monochrome imagery has a tactile quality to it, while the sound design pushes things to almost psychedelic heights. There are sequences that left me slack-jawed: it’s worth seeing on the biggest screen, and with the loudest speakers, possible.

 渋谷・WWWのサウンドをつかさどるスピーカー・FUNKTION-ONEとの組み合わせで多様な音を彩りコントロールしてきた英・Midas社のアナログ・ミキサーの名機「Heritage 3000」が、2025年1月中旬に勇退しデジタル・ミキサーへと切り替えられるようだ。それに際し、入替直前の年始に〈WWW presents “Heritage 3000” Farewell series〉と題した「Heritage 3000」で鳴らす最後の公演シリーズの開催が決定。

 すでにアナウンスされている公演内容はOGRE YOU ASSHOLEによるワンマン、MERZBOWによる入場無料(!)ライヴ、Minami Deutsch(南ドイツ)とおとぼけビ~バ~によるツーマン、FLATTOP feat. 内田直之、柴田聡子ワンマンと、いずれもアナログ卓の魅力を存分に引き出せるWWWとも縁深い豪華なラインナップとなっている。

 そこに追加公演として、1月7日に弾き語りスリーマン〈寺尾紗穂 x 七尾旅人 x マヒトゥ・ザ・ピーポー〉の開催が決定。時代と、そこに生きる人の軌跡を「うた」で描き続ける3組のアーティストが、ひとつの楽器と自身の歌声というもっともミニマルなフォーマットで三者三様に名機のポテンシャルを引き出す濃密な内容となっている。なお、本日11月28日(木)よりスタートする先行受付期間後の12月7日(土)には、一般販売とあわせて10代限定の無料チケットも枚数限定で予約を受け付ける。

 2010年にミニシアターの跡地から生まれた、クラブ・カルチャーもバンド・サウンドも包括的に支えるスポット・WWWの現行サウンドシステムで最後に鳴らされる「いま、ここにしかない表現」の場を存分に楽しんでいただきたいとのこと。ライブハウス/クラブの心臓ともいえるPAミキサーの味わい深いサウンドを堪能する最後の機会でもあるし、なによりいずれの公演もWWWらしさにあふれた魅力的な内容だ。ぜひいずれかに足を運んではいかがだろうか。

WWW presents “Heritage 3000” Farewell series
寺尾紗穂 x 七尾旅人 x マヒトゥ・ザ・ピーポー

日程:2025年1月7日(火)
会場:渋谷 WWW
時間:OPEN 18:00 / START 19:00
料金:ADV.¥4,300 (+1drink)
出演:寺尾紗穂 / 七尾旅人 / マヒトゥ・ザ・ピーポー

【チケット】
◆先行受付(先着):11月28日(木)19:00〜12月1日(日)23:59 イープラス
◆一般発売日:12月7日(土) 10:00 イープラス
◆10代無料チケット(枚数限定):12月7日(土) 10:00 ZAIKO

INFO:WWW 03-5458-7685
公演詳細:https://www-shibuya.jp/schedule/018595.php
主催・企画制作:WWW
Artwork Design: Takuto Okamoto

〈WWW presents “Heritage” 3000 Farewell series〉

1/5(日) OGRE YOU ASSHOLE ※SOLD OUT
1/6(月) MERZBOW ※入場無料
1/7(火) 寺尾紗穂 x 七尾旅人 x マヒトゥ・ザ・ピーポー
1/9(木) Minami Deutsch / おとぼけビ~バ~
1/10(金・深夜) FLATTOP feat. 内田直之
1/13(月・祝) 柴田聡子 ※SOLD OUT

主催・企画制作:WWW
お問い合せ:WWW 03-5458-7685
HP:https://www-shibuya.jp/feature/018497.php

Tomoyoshi Date - ele-king

 『432Hz, As it is, As you are』。『Tata』。『Requiem』。この三作は、アルバム全体が「ひとつ/複数」のレクイエムのようなピアノ作品である。ひとつにしてふたつ、ふたつにしてみっつ、みっつにしてひとつ。いわば単数と複数が同時に存在する音響、音楽とでもいうべきか。もしくは鎮魂と祝福が同時に存在している音楽とでもいうべきか。

 この三つの作品は、アンビエント音楽家の伊達伯欣が2021年から2024年にかけて制作した3本のカセットテープ/アルバムである。まさに「ピアノ・トリロジー」。三作とも伊達の演奏するピアノと電子音や環境音が交錯するサウンドとなっている。近年、伊達は純正律音楽を自動生成する世界初のプログラムに取り組んでいるという。つまり、この「ピアノ・トリロジー」と名付けられた三部作は、伊達の過去の平均律作品の集大成ともいえる作品集なのだ。

 『432Hz, As it is, As you are』は、2021年に〈laaps〉からリリースされた11年ぶりのソロ・アルバムがベースになっている(現在は廃盤)。アルバムには4曲が収録され、それぞれ「光」「熱」「土」「光」という曲名が付けられている。伊達の母方の祖母の姉(山田美喜子)の家にあった1950年代につくられたDiapasonのアップライト・ピアノで録音されている。このアルバムは、その古いピアノを438Hzに調律し録音されたという。アルバムを再生するとすぐにノイズとピアノの境界線が無化されていく音楽だと誰もが気が付くだろう。響きと音が「そこにある」感覚。音楽があり、音がある。そこに境界線はない。そのサウンドスケープのなんという穏やさ。静謐な音空間に身を浸すように聴くこと。『432Hz, As it is, As you are』の音は、われわれにそのように問いかけている。
 『Tata』は2023年9月東京・高円寺のGallery Tataにて行われたSilverGelatin(古書・キュレーション)の展示のための音楽として作成されたこの作品。音と空間が浸透するような音響だ。Tataの店内にある古時計や床、古物、紙の音を用いて作成されたという。「ギャラリーTataへの入場から黄泉の国へと誘われるような、アルバム全体がひとつのストーリーとして構成されています」というように、まるで未知の世界に足を踏み入れるように、ヒタヒタと暗闇を歩むような音楽・音響となっている。音楽とサイレンスの境界線が次第に無化していくような聴取体験がここにある。
 『Requiem』は伊達の親友の葬儀に流された。いわば親友の人生への祝福の思いで制作されたという音楽である。ゆったり響きの雫を確かめるようなピアノの響きはどこまでも透明だ。音と音のあいだにあるサイレンスですらも音楽であるとでもいうように、ピアノの音は時に途切れていく。そして微かに聴こえるガラスのような響きの物音。ピアノと物音はそれぞれに存在するが、同時にひとつの時の中にも存在する。死という鎮魂が、悲しみとしてのみあるだけではなく、魂の旅立ちを祝福するような物音/音楽であること。その穏やかな音の連なりは、聴き手の耳と心のなかにある「音楽と音の境界線」を解きほぐすように無化してくれる。

 伊達のサイトでは、本作について「モノと時間の経過をテーマに作成されたこの三部作は、引き伸ばされて反復するピアノと有機的なエレクトロニクスのマリアージュを特徴とし、リズムと旋律という境界の解体を試みた音楽です」と綴られている。
 さすがに作曲者本人の言葉である。これに付け加えることなど何もない。いわば坂本龍一とアルヴァ・ノトの歴史的競作群以降、電子音響+ピアノの音響領域を拡張(=解体)するようなアルバムともいえよう。全三部作、音の雫のサウンドスケープとでも称したいほどに「美しい」音楽である。
 私はこの三作を聴き、「音がおとずれる」感覚を感じ取った。訪れる。音ずれる。この二つの感覚である。じっとピアノと電子音の交錯に耳を済ましていると、音が一足一足こちらに忍び寄ってくるように聴こえてきた。音楽が「訪れる」感覚である。同時に、ここでは音の境界線がどんどん消失、さまざまな音のずれがそのまま音楽となっていくような感覚も得た。「音ズレる」感覚である。
 
統一ではなく、いくつかの多層な時が静かに流れるような音楽。私にはこの三部作は生活と共にあるピアノ音楽のように思えた。生活とは小さな反復と小さな祝福と小さな喪失の連続である。そしてそれらは決して「同期していない」。バラバラに巻き起こり、そして消えていく。だがそれこそが生きている時間。つまり生活の時間なのだろう。
 伊達のピアノ三部作は、この生活の音・音楽を非同期的に反復することで、この「暮らし=人生」の向こうにある死者たちの黄泉も国の境界線を無化しようとしているように思えた。人生の反復の果てには必ず死が待っている。死は悲しい。だが同時にそこに救いを求めたいのも人間だ。
 私には、この小さな音楽たちが、その世の向こうにある世界にゆく人たちへの弔いの音楽でもあり祝福を捧げる「祈りの音楽」に思えた。ピアノの音はむこうに行く。そしてまた訪れる。一方通行ではない音世界。そう、世界のすべての音は「おとずれる」(訪れる・音ズレる)。無音。環境音。ピアノ。その複数の存在たちがズレつつ、奏でられる音楽。人と生活と地上と天上に捧げる「祈りの音楽」。

 ともあれピアノと音の静謐にして優雅なコンポジションがここにはある。そのピアノの滴るような響きに耳を傾ける時間は、とても贅沢なひとときとなるだろう。時間が許すならばぜひとも3本連続して聴いていただきたい。

JULY TREE - ele-king

 ラッパーであり映像作家としてPUNPEE“タイムマシーンにのって”、BIM“NOT BUSY”、唾奇 × Sweet William“Let me feat. CHICO CARLITO”などのMVを手がけるOle/Takeru Shibuyaの作品展覧会が渋谷の神泉駅近くのギャラリー、JULY TREEにて開催される。HIP HOPシーンを中心に多岐にわたって活動する作家のアートを堪能しよう。

■展示情報
Ole/Takeru Shibuya
Solo Exhibition「Sketch World」

会期:2024/12.1(sun)~2024.12.16(mon)
15:00〜20:00*予定
会場:JULY TREE
*営業日時間等お問い合わせについてはJULY TREE 公式Instagramにてお願いいたします。

■イベント情報
オープニングイベント:
日時:2024.12.1(SUN) 14:00〜19:00
会場:JULY TREE
※オープニングイベントのみ、エントランス500円(ワンドリンク付)
*お問い合わせについてはJULY TREE 公式Instagramにてお願いいたします。

■リリース情報
2024.11.27 Release Ole New SG『IJIN』
配信リンク:https://orcd.co/ole_ijin

■Ole/Takeru Shibuya :プロフィール
東京出身のラッパー/映像監督。
映像と音楽をクロスオーバーさせ、自由自在に行き来しながら軽やかに自身を表現する。2019年 シングル「Doller (beats by illmore)」でシーンに軽やかに参入。これまでシングル作品他、3枚のEPもリリース。どこか気怠げながら、小気味良いスムースなフロー。自身にしか描けない唯一無二のライミングセンスで、独自の音楽感を発信し続ける。映像監督「Takeru Shibuya」 としても活動。PUNPEE「タイムマシーンにのって」、Kvi Baba 「TOMBI」、WILYWNKA & Brasstracks「Our Style」、唾奇×Sweet William「Let me feat. CHICO CARLITO」、VaVa「Mugen」など多くのHIP HOPアクトのMVを手がける。また、MVに留まらずきゃりーぱみゅぱみゅ、PUFFY、KIRINJI、POP YOURSなどのアートワーク/ライヴ演出に至るまでその活動はシーンの枠に留まらない。最近では、親子丼がだいぶ好き。

〈店舗情報〉
JULY TREE(ジュライ・トゥリー)
住所:153-0042
東京都目黒区青葉台4-7-27 ロイヤルステージ01-1A
・HP: www.julytree.tokyo
・Instagram:@july_tree_tokyo
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