「Nothing」と一致するもの

 わたしは必然とか運命とかいう言葉を一切信じない殺伐としたばばあだが、息子が出演した映画『Last Summer』には、えっ。と思うような偶然がわりとあったことを認めずにはいられない。
 まず、息子が演じた役柄の名前が、彼の実名と同じだった。最初に脚本がメールされて来た時、へっ、もう坊主の名が入っていやがる。と思ったほどだったが、偶然に同じ名前だったらしい。
 また、息子のベビーシッター的な役を演じた英国人女優というのが、ブライトン出身で、息子の小学校正門から300メートル以内に実家がある。っつうか、息子とわたしは毎日登下校の際に彼女の実家の前を通っている。この女優さんはBBCドラマ「ロビン・フッド」でヒロインを演じた人で、その後は問題作めいた低予算ドラマを中心に出演しておられ、そのうちの1本を見た監督が「いい」と思って起用したわけだから、その時点では、監督はうちの息子の小学校正門にまつわる事情など全くご存知なかっただろう。

 しかも、わたしが「上品な婆さん」呼ばわりにしていた衣装および美術担当者が、わたしのオールタイム・フェイヴァリットと言ってもよい映画の衣装を担当した人だったという話は前回書いたし、これだけでも懇意にしている英国人のお母さんは、「ティラリラティラリラ」と『トワイライト・ゾーン』のテーマ曲を歌い出すのだが、実は、個人的なトワイライト・ゾーン話の真打ちは別にあったのである。

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 映画のプロデューサーとエグゼクティヴ・プロデューサーの違いというのは、素人のわたしには今ひとつ判然としなかった点だが、エグゼクティヴのほうが偉そう。という一般企業的解釈は間違っていたのか、『Last Summer』の場合、エグゼクティヴ・プロデューサーは実際にイタリア南部の撮影地までやって来て働く人びとで、単なるプロデューサーこそ、名前(&資金集めのネットワーク)を貸しているだけという感じであった。
 息子が出た映画にはエグゼクティヴ・プロデューサーがふたりいたのだが、そのうちのひとりであるAというスキンヘッドのおっさんは、ちょっと変な人であった。息子はこの人に一番世話になったが、例えば、息子の学校とのパイプ役になったのはこのおっさんである。それでなくとも出席率に厳格な英国の公立カトリック校で、「5週間も休ませるなんて無理」とわたしが言ったにも関わらず、このおっさんはイタリアから息子の学校に電話をかけ、いったいどうやって校長以下事務所のセクレタリーまで丸め込んだのか、「たいへん信頼できる製作会社です。5週間は欠席扱いにしません」と言わしめたのである。ハリウッドのマフィア映画を髣髴とさせる低音のイタリアン英語に女性教師たちがぐっと来たのか、それともカトリック校とイタリアという黄金の組み合わせが功を奏したのかは不明だが、息子の映画出演を可能にしたのは彼であった。
 このネゴ上手なおっさんの本職は、国際税法専門の弁護士なのだが、DJなどというちゃらけた副業まで持っており、昔はアムステルダムやイビサ界隈でぶいぶい言わせていた身分だという。で、どういうわけかこの多才なAとうちの連合いがやけに意気投合してしまい、連合いがイタリアに陣中見舞いに来た週には連日バーでふたりで飲んでいたが、また酔った拍子にうちの連合いもベラベラと余計なことをくっちゃべってしまい、「うちの嫁はジャパニーズ・ライター。専門はジョン・ライドン」などとわけのわからぬことを言ったらしい。

 んなわけで、ある日、Aがわたしに言った。
 「金曜日にメイン・プロデューサーのエルダ・フェッリがローマから来る。彼女は『ライフ・イズ・ビューティフル』を手掛けた人で、イタリアでは有名だ。しかも、『Copkiller』のプロデューサーだから、ディナーの席でジョン・ライドンについて聞いてみたら」
 わたしの全身が硬直していた。
 というのも、『Copkiller』というのは、ジョン・ライドンの唯一の主演作だからである。というか、ドキュメンタリーや、ライドン本人として出演している映画は他にもあるが、きちんと俳優として彼が出演しているのは1981年製作のこの作品だけだ。ライドンは同作でハーヴィ・カイテルと共演しており、連続警官殺しの犯人であるサイコパスを演じている。ということは知っていたが、実はまともに通して見たことは無かった。あまりにもレヴューがひど過ぎたせいもあるが、やっぱライドンは瞬発力の人というか、他人が書いた脚本を演じるのは下手だと決め込んでいたからである。
 が、ライドンの映画を製作した人が今回の映画のプロデューサーとは何たる奇遇。と気持ちは盛り上がったが、何といってもわたしの身分は単なる子役の保護者である。ディナーの席でメイン・プロデューサーのそばに座れるわけもなく、遠くからお顔を拝見するだけで終わったのだった。

 そんなわたしを不憫に思ったのか、数日後にAがホテルの部屋に訪ねて来た。
 「週末、ローマに帰ったから焼いてきた」と言って1枚のDVDをドア越しに差し出す。
 自宅のプリンターでコピーしたらしいジャケットには、『Copkiller』のUK市場用のタイトル『Corrupt』と印刷されていた。
 イタリアのホテルで見たライドンの主演映画は、意外にも面白かった。何より驚いたのは、彼がシリアスな映画俳優としても逸材だったことである。
 故ヒース・レジャーが、死後にオスカーを受賞した『ダークナイト ライジング』のジョーカー役を演じるにあたり、ピストルズのジョニー・ロットンをモデルにしたと言ったのは有名な話だが、彼は『Corrupt』(または『Copkiller』)を間違いなく見たと思う。ヒース・レジャーのジョーカーは、ライドンが演じたサイコパスのカーボン・コピーだった。

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 『Last Summer』の撮影が終了した後、わたしと息子はイタリア南部からローマに向かったのだが、ローマでAからディナーに招待された。どこまでも気配り上手なおっさんで、イタリア料理に飽きていた息子のため、英国風ロースト・チキンを自ら料理するという。
 Aの自宅で、彼の妻や子供に挨拶していると、『Last Summer』のメイン・プロデューサーであり、ライドン映画のプロデューサーも務めたエルダ・フェッリが奥から出て来た。ライドン映画のDVDを貰った後で、実はエルダはAの姑だったということがわかり、あのDVDは彼女が所有しているオリジナル・カットのコピーだということをAから聞かされていたのだった。
 「こんばんは」と挨拶すると、エルダが脇に立っていた初老の小柄な男性を紹介した。「私の夫ではないけれど、この人とは何十年も一緒に住んでいます。なんて言うのかしら、こういうの英語で」とエルダが言うので「パートナー。ですかね」と答え、「初めまして」とくだんの男性と握手を交わす。
 と、Aが背後から言った。
 「彼は、ロベルト・フェンザという映画監督だよ。『Copkiller』の監督」
 全身の関節がべきべきと外れて崩壊しそうになった。

 んなわけで、なぜかわたしは、ローマの民家で、ジョン・ライドンの唯一の主演映画の監督とプロデューサーに挟まれてロースト・チキンを食っていた。この状況がわたしにとってどれほどシュールなものであったかは、ジョン・ライドン応援サイトをやっていたわたしの過去をご存知の方ならおわかりだろう。
 「彼は生真面目でプロフェッショナル。常に現場のムードを敏感に感じ取る繊細な人間だった」
 「人は彼をパンクとか言うけど、実は一番まっとうでね」
 「シド・ヴィシャスについては何も聞かれたくないようだった」
 「どんな映画の撮影でも、製作側が俳優に保険をかけるのはmustなんだが、ジョンだけは、全ての保険会社が拒否した。後にも先にも、そんな出演者を使ったことはない。才能があっても彼が映画界で活動できなかったのは、そういう事情もあるんじゃないかな」
 「うちは今でも家族ぐるみで彼と付き合っているよ」
 などという話を膨張した頭でぼんやり聞いていると、ロベルト・フェンザ監督が言った。
 「明日PiLがローマでギグやるんだ。その翌日に一緒に食事しようってジョンから電話がかかって来たんだけど、良かったら、来る?」

 えええっ。
 聞いてないですよ、そんなの!?
 ていうか、A! 貴様こういうことはサプライズにしないで、さっさと言いやがれ!! そうすれば何とかしたものを。
 ファッキン・バスターーーーーーーード!!!
 と胸中で激昂&慟哭しながら、わたしは大人の顔をつくって言った。
 「でも、わたしたち明日英国に発つんです」

 すべての道はローマではなく、ライドンに通じていた。
 が、やはり全面的には通じきってなかったところが、わたしの人生だろう。
 ロベルト・フェンザとジョン・ライドンがローマでランチしていた頃、わたしは人手不足のブライトンの保育園で21人の幼児のオムツを替えていた。

Bathsの素敵な12月 - ele-king

木津:やってまいりました、ゆうほとつよしのアラサー女子力対決「とびっきり素敵な12月」のコーナー。

橋元:勝てる気がしませんね。

木津:闘いましょうよ(笑)! 年末といえば来年の星占い記事とクリスマスでしょう? 橋元さん、クリスマス・ケーキもう決めました? それと自分へのごほうび♡

橋元:木津さんはあれでしょう? ジャスティン・ヴァーノン(ボン・イヴェール)の痛ケーキ。……あ、ちがうわ。お得意の〈ピエール・エルメ〉ね!

木津:だってこの美しさですよ! 今年の僕のケーキは「エラ」です。あー、ワインも買っちゃおうー。

橋元:「エマ」じゃないんだ。それにしても、いずれ劣らぬご褒美価格。「エラ」の赤い艶はとくにラグジュアリーですね。その点はシャアザク・ケーキもいい勝負なんですがね。

木津:オ、オタクリスマス……。まあ、クリスマスを楽しまないと年越せないですよ。締めくくり、せっかくなんで満喫しましょうね!

橋元:もちろんです。SNSが普及してから、年中行事の果たす役割が急に大きくなったように思いますね。それはいいとして、何か素敵な12月のプランはありますか?

木津:クリスマス・マーケットは行くとして、ライヴや音楽イヴェントも満喫して年を終えたいですねー。

橋元:そう、12月は本当に楽しそうなイヴェントがたくさんあります。今日はそのなかから、13日(金)にスタートするLAのビートメイカー、バス(Baths)くんの来日ツアーについてお話しましょうか。バスのセカンド・フル『オブシディアン』は、木津さん、どうでした?


左・Cerulean(2010)/ 右・Obsidian(2013)

木津:いや、前作(デビュー・フル『セルリアン』)のイメージがけっこうクリーンな感じ、やわらかな感じだったので、今回の陰影にはビックリしました。が、ある意味しっくりもきて。ダークで烈しいモチーフになってますけど、なんていうか、汚くはけっしてないんですよね。思春期的な潔癖性というか。

橋元:そうそう。前作のモチーフが「天上」のイメージなら、今作は「地獄」ですね。実際に『セルリアン』という色には天上のイメージがあったといいますし、『オブシディアン』は黒死病(ペスト)を題材にした中世の絵画からインスピレーションを得たといいます。1枚めから2枚めであまりにあからさまに天から地下へ直滑降しているんですが、その直滑降っぷりが本当に思春期的で潔癖的。
彼自身はハタチを過ぎているんですが(笑)、あのアンファン・テリブルな雰囲気というのはずっと失われないですね。ドリーミーだけれども攻撃的。14才の攻撃性です。それは両作ともそう。

木津:ドリーミーというキーワードは健在ですね。ゴシックなモチーフに惹かれる感覚、っていうのはある種の暗さの夢想ですし。ノイジーなんだけど聴いている感覚としては、すごくふわふわできるというか。

橋元:わかります。暗さがそのままロマンティシズムに結びついていますよね。「闇落ち」のドラマツルギーみたいなものがあって、『オブシディアン』はそういうものが根本に持つロマンチックでドラマチックな感覚があふれていると思います。もちろん無意識なんですけど。

木津:前作がチルウェイヴからの距離で測れた作品だったとすれば、『オブシディアン』はインダストリアルな感触もあって、すごくいまっぽい。天然かもしれないけど、感性もアンテナも鋭いですよね。

橋元:きっと天然ですね。インダストリアルを方法として意識しているとは思えないですし、あるいは今作でちょっと顔を覗かせているブラックメタル的な感覚も、「わりとそういう気分だった」というところだと思います。
でも“アース・デス”とかびっくりしました。そもそもはデイデラスに見初められて、〈ロウ・エンド・セオリー〉でDJを務めたりというキャリアがあるわけですけど、そういう「LAビート・シーン」を引っぱろうというような意識はすでに微塵もなさそうですね。ファーストのあの跳ね回って錯綜するビートが姿を消しつつあります。

木津:たしかに。でも、確実にシーンの重要なキャラクターでもあるのがおもしろいですね。僕がいちばん最近にバスくんの名前を見たのは、気鋭の23歳トラック・メイカー、ライアン・ヘムズワースのアルバムのゲストでです。彼はカナダ人ですけど、やっぱりLAビート・シーンに足を突っ込んでるひとで。僕はその「思春期的なムード」を彼にも感じ取ったんですけど、あの界隈ってそういう叙情性と親和性のあるところなのかも、じつは。ノサッジ・シングなんかもですけど。

橋元:そうですね、ティーブスとかもそう。恐れることなく叙情しますよね。それはやっぱり、彼らの音楽の基本がビートにあるなんだと思います。ドリーミーなモラトリアム感覚はチルウェイヴにも通じるんだけど、チルウェイヴの方がちょっと苦くて、かつぼんやりしていて、方法的にも甘い。適当な言い方だけど20代の甘さみたいなものを感じます(笑)。対するにバス勢の(10代的な)攻撃性は、テクニックとファンタジックな想像力に支えられたものだと思いませんか?

“Lovely Bloodflow”(『Cerulean』収録)

 このMVは『もののけ姫』のイメージだったそうなんですけど、じつに構築的というか、コンセプトの根幹がしっかりしている。ドリーミーというよりもファンタジックというほうがハマると思うんです。ぼんやりしているんじゃなくて、積極的に夢を見にいっている。彼らの複雑でアブストラクトなビート構築というのは、こういう想像力と噛み合って存在しているものだと思います。

木津:なるほど。ファンタジックというのはわかります。『セルリアン』は子どもの空想が元気よく暴れている、無邪気さゆえの危なさ、みたいなものも感じましたね。

橋元:あと、彼らがその意味で大人にならないのかなるのか問題は興味があります。映画は詳しくないんですけど、『テッド』とか? 大人になりきれない成人のグダグダをおもしろく描きつつも、アメリカの映画は、最後は何らかのかたちで彼らが社会的な責任を引き受けるという成長譚になりがちだってききます。
その功罪は措くにしても、「大人になったからつまんなくなった」とか「子どもを突き通しているからおもしろい」とかそういう短絡を拒絶する「なんだかスゴイ展開」をバスの少年性には期待したいです。

木津:成長譚、なりがちですねー。音楽ではアニコレ以降、その境目がどんどんぼやけていったけど、ただ映画でもアメコミ原作ものなんかは、そういう感覚にも抵触してるかもしれないです。その辺りの思春期性の「揺れ」に注目ですね。

橋元:ダイナミックに「揺れ」てますよねー。さて、バスくんのパーソナリティなんですが、先ほどの〈ジブリ〉の影響を指摘するまでもなく、かなり日本のカルチャーには親しみを持っているみたいですね。

木津:おお、OTAKUですか。

橋元:モラトリアム云々という話を置いておくにしても、かなりのポケモン好きらしいですし。

初来日の際に真っ先に向かった〈ポケモンセンター〉前でのもの。

木津:はははは。でもポケモンっていうのがほんと、男の子感あっていいですねー。変にエグい方向ではなくて(笑)。

橋元:そういうところもキュートなんですけど、その表出がけっこうアートっぽかったりするところもミソですね。ツイッターなんかには自分のイラストも投下するし、自身の全身タイツ姿をとってもイマジナティヴに撮ってアップしたりね、多才だと思います。

木津:クリエイションもするんですね。ビョークが好きだというのもなんだか頷ける。

橋元:そうそう、ビョークすごく好きみたいですね。お父さんがテレビ・ドラマとかの脚本家で、お母さんが画家だったかな。お家の環境から受けた影響も少なくないでしょうね。彼に実際に会うと感じるんですけど、すごくタレンテッドなというか、「お隣の兄ちゃん」って感じはさらさらないんですよ。変人でも変態でもないんだけど、天才型な雰囲気をバンバン出してます。


Baths / Pop Music / False B-Side / Tugboat(2011)
Bサイド集。ジャケットの絵はBaths本人のもの

木津:橋元さんはインタヴューされてますもんねー。『イナズマイレブン』のノートを見てすごく喜んでくれたとか……。あと、バスくんが描いたキュートすぎる絵も強烈に覚えてますよ。

橋元:そうですよね。彼のツイッターなんかを見ていると、無邪気にオジサン好きに見えるんですが、あれって無邪気に見えちゃうほど複雑な感覚が隠れていたりするんですかね?

木津:たぶん複雑な回路は彼のなかにあると思うんですけど、アウトプットを無邪気にしている時点で、僕にはひとつの態度表明に思えますね。たしかに僕は、男が好きな男ということを異化できるひとの表現にほうにより興味はありますけど、あの無邪気さっていうのは、知恵なんだと思うんですよね。つまり、社会的なアングルを一切廃した場所で、自分の感情(とリビドー)が正しいんだ、という。やっぱりオタク少年っぽいんですよ。そういう意味では理解はできますよ。でもバスくん、キレイなマッチョが好きなんですねえ……。

橋元:キレイなマッチョ(笑)。彼のまわりのオジサンにはデイデラスがいますけど、木津さんはデイデラスのヒゲはどうです?

木津:僕が好きなヒゲは、順に髭(口ヒゲ)、髯(ほおヒゲ)、鬚(あごヒゲ)なんですけど、口ヒゲがないのは大きくマイナスですよねえ……独自のセンス出しすぎ……。

橋元:はは。わっかんねー……。

木津:でも、奥さんとラブラブなのはいいです。奥さんを大事にしているオーラのある男のセクシーさってありますよね~。ともかく、知的にぶっ飛んだひとですよね。ヒゲはイマイチでも、存在は大好きです。

橋元:なるほど、奥さんのローラ・ダーリントンとは付き合いも古そうな感じが素敵ですね。ジェントルがネタなようでいてとても本気っていうのも好きです。キマってます。

木津:ライヴ、僕は観たことないんですけど、どういう感じですか? 音源を聴く感じだと、歌が重要なんじゃないかなという予想があるんですけど。

橋元:はい。ライヴはとにかくエネルギーに満ちていて。それこそデイデラスが華麗にサンプラーのパッドやツマミをいじるように、ヴィジュアル体験としてもかなり充実したものがあります。京都はseihoさんも出演されますが、彼との競演というのはちょっとすごいと思いますよ。アルバムのヴァージョンの何割増の音数、ノイズ。音圧ももちろん比べ物にならないですし、当然のこと、彼のライヴの本懐は音源の再現・再生にはありませんね。

木津:へえー! ノイズばりばりっていうのはいいですね!

橋元:ご指摘のように歌(メロディ)は重要で、とにかく声量もすごい。あのファルセットは吠えるように出てきます。なんだかそういうことも含めてマンガっぽい存在というか、けっこう規格外ですね。

木津:ああ、エクストリームな感じになっちゃうんですね。それはすごく理に敵ってる感じしますね。

橋元:ただ、今作は音楽的にずいぶんと装いが変わっているので、どんなかたちになるのか楽しみです。カラオケ状態ってことはないと思いますが、さらに歌に重点が移っているとも考えられますよね。

木津:今年は歌の年でもありましたし、声とメロディを聴きたい気分ですよね。バスくんの歌心を発見できたら、まさにドンピシャなんですけどね。

橋元:彼にはビートを跳ねて暴れまわらせる、本当に奔放でやんちゃな天使といった佇まいがあるんですけど、ビートを抑圧する展開があるとすれば、彼はその分のエネルギーをどうやって放出するんだろう……。

木津:抑圧があるってことは抑揚があるってことですから、その分ビートが暴れる展開のカタルシスはあるのかのしれない。あとはやっぱり、何よりも彼のエモーショナルな部分を僕は見たいですね。

橋元:その点はもう、エモーションの塊ですよ! 12月の空からね、バスのエモーションがキラキラ降ってきます。そういうことがやれちゃう個性、やれちゃう音ですね。
 ちなみにバスは4月16日生まれということなので牡羊座ですけれども、牡羊座ってどんな感じなんです? 相性ですとか。

木津:えっ、橋元さんとの相性ですか(笑)? 牡羊座も獅子座も火の星座だからバッチリですよ! ちょっと暑苦しい相性ですね。牡羊座は猪突猛進で、直感を信じるタイプです……バス、そんなところありますね。ちょっと納得しましたよ。

橋元:ははは! わたしとの相性はまあおいといて(笑)。じゃあ獅子座の人は運命の出会いになるツアーかもしれませんね。

 11月といえばホリディ。今回はホリディ前後のイベント・レポートをお届けします。

■11/23 (Sat)
 ホリディ1週間前の週末は、NYから約4時間北のロードアイランド州のプロヴィデンスへ遠征。今までたくさんの伝説を作ってきたロフトビル’ビルディング16’の最後のショーが行われた。昔ライトニング・ボルトが住んでいたフォート・サンダー(コンタクトレコーズからの『u.s. pop life vol.11 トリビュート・トゥ・フォート・サンダーCD』に日本語で詳しく解説)の現在版とも言えるこのビルディング16。このショーを最後に、このビルは(も)立ち退きになる。住所は掲載していないのに、どこから集まったのかプロヴィデンスのキッズたちで大混雑。バスルーム近くに真っ赤な棺桶があり、ビルディング16にメッセージを書いて、カードを棺桶に入れるようになっている。ショーのクライマックスは、ハウス・バンドのワット・チアー・ブリゲイト。ボリウッド、バルカンズ、ニューオリンズ、サンバ等々をミックスした19人(!)のブラス・バンドで、子供から大人までを巻き込むお祭りバンドである。ステージに入りきらないので、フロアやスピーカーの上にもメンバーがいるし、観客が天井によじ上ったりするのは当たり前で、メンバーが観客にダイブし、ドラムごとドラマーを持ち上げたり、観客とバンドの盛り上がりの半端ない事。フィナーレでは、バンドがビルディング16の棺桶を、外に持ち出しマーチング(バンドは、外でもプレイを続ける)、観客はひとりひとり花火を渡され、棺桶に火をつけ燃やしてしまう。火力は相当強いし火事にならないのかと心配したが、勢い良く燃えて形がなくなって行く棺桶を見て、ぐっと心に突き刺さる物があった。長い間お疲れさま。これがプロヴィデンスのパーティ・スタイルのようだ。


ラストショーの写真集
https://everydayilive.com/bands/building16farewell/

Building 16

■11/25 (Mon)
 NYに戻ると、少し前から噂されていたロンドンのレコードショップ、ラフトレードのNY店がウィリアムスバーグ/グリーンポイント・エリアにオープンした(https://www.roughtradenyc.com)。元々HBOの倉庫だった場所(イースト・ロンドンの本店より3倍大きい)は、レコード店兼カフェ(byファイブ・リーヴス)、ギャラリー、音楽会場などの多目的スペース。初日(11/25)は、スカイ・フェレイラ(フリーw/CD購入)、チャールス・ブラッドリー(フリー)のインストアがあった。スカイはきっぱり諦め、チャールス・ブラッドリーを目指して行く。先に行った友だちは、ワンブロック以上の行列ができて入れなかったと言っていたが、タイミングよく前に5人ぐらい待っていただけで5分ぐらいで入れた。遅めに着いて正解。
 新譜100%の店内は、まだ空いている棚が多かったが、1階が新譜レコード/CD、メインドラッグが展開するギア・コーナー。2階には本&雑誌コーナー、ロンドンとNYをつなぐデジタル・ニュース、ガーディアンによるブース、アートギャラリーなどの分かれた小さいセクションがある。店内の作りがタワーレコード的、と思ったのはメガストアだからか。アートギャラリーの最初のキュレーターは、チルディッシュ・ガンビノで、彼は12/8でここでショーも行うのだが、ブライアン・ロッティンガーによるアート作品、ドナルド・グローバーのベッドルームの再現(サイケデリック・レインボウのライト・デザイン)が展示されていた。
 音楽会場は250人を収容、イスも設置されたバルコニーがあり、バワリーボールルームの縮小版のようだった。2階の後ろにはピンポンテーブルが2台設置されていた(チケット制のショーの時にはないとの事)。
 ジェイムス・ブラウンに影響を受けたというチャールス・ブラッドリーは、ステージにいるだけでカリスマ性があり、独特のソウルフルで無敵の動きを惜しげなく披露。彼を見ていると思わず笑顔になるし、バンドもとても楽しそうだ。近くで見れること自体がレアな、64歳の彼をオープニング・ナイトに持ってくるのは、さすがラフトレード。ショーの後も、追い出される事なくバーでハングアウトしたり、レコードを探しに行ったり、2階でピンポンしたり、ここはアミューズメント満載。ダニー・ブラウン、マシュー・E・ホワイトのフリーショー、ソールドアウトのテレヴィジョンのショーが終わり、12/3はジョン・グラント(フリーw/CD購入)、12/6はアンドリュー・バード(ソールドアウト)、12/6はアララス(ソールドアウト)、12/7はダイブ(ソールドアウト)、12/8はニック・ロウ(フリーw/CD購入)、などのフリー&チケット制のショーが続く。ブッキングを担当しているのがバワリー・プレゼンツなので、納得のラインナップである。
 キャプチャード・トラックスの記事でも書いたように、最近グリーンポイントエリアに、レコード店が密集している。
https://www.thelmagazine.com/TheMeasure/archives/2013/07/30/greenpoint-is-becoming-the-best-record-store-hood-in-brooklyn
 2013年にレコード店をオープンするという事自体が大胆だと思うが、それぞれのインディ・ショップは自分たちのカラーを売りにし、それに対抗するラフトレードは、長年の歴史もあり、レコードセレクションの特徴(ラフトレード限定版の物を多数扱う)と、多目的スペースにすることで、レコード店という場所の定義を変えるかもと期待が高まる。

https://www.roughtradenyc.com
https://www.brooklynvegan.com/archives/2013/11/some_very_initi.html
https://www.brooklynvegan.com/archives/2013/11/sky_ferreira_pl_3.html

rough trade nyc

■11/28 (Thu)
 音楽関係の仕事や、自営業をしている限り、ホリディと言っても、いつもと変わらずなのだが、アメリカ人は自分の田舎へと帰って行くため、ホリディNYは静かで、仕事をするには実はもってこい。夜になると、観光客と何処にも行けない移住者が集まりだし、ささやかにパーティをするのである。今年の著者のサンクスギヴィングは、ウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンドを主催するアーサーの仕事場兼のロフトでパーティ。来ている仲間はアーサーのアシスタントをはじめ、ファッション、音楽関係者達なので華やか。サンクスギヴィングと言えばターキー(=七面鳥)なのだが、探究心あるアーサーは今年はグース(=ガチョウ)に挑戦。ガチョウの首でスープを取ったり料理はこなれた感じ。付け合わせのスタッフィング、クランベリー・ソース、グレイビー、マッシュ・ポテト、ビーン・キャセロール、温野菜のグリル、特製のフレッシュ・ペストソースはすべてアーサー作。ゲストは、オックステイル・シチュー(絶品!)、ビーツ・サラダ、マック・アンド・チーズ、ポテト・サラダ、更にスナックなど、これでもかというぐらいのごちそうが振る舞われた。5時に集合をかけたが、みんなの料理&集合事情でディナーが始まったのは結局9時過ぎ。サンクス・ギヴィング・ディナーには良くある事で、料理が出来上がる頃には、つまみ食いをしすぎてお腹いっぱい。ディナーが終わると、来ていた別の友だちの家に移動。そこは、お手製チーズケーキ(プレーンw/ラズベリーソース&チョコ)、コーヒー&サイダー、そしてダンス・パーティと、別の天国が待っていた。月に3、4回ショーもホストする場所なので、パーティの用意は完璧。ディスコボールが周り、サウンドシステムも完備。チーズケーキのあまりのおいしさに倒れそうになり(おばあちゃんのレシピらしい)、ホストの自家製フレッシュミントをインフューズしたウィスキーなど、キャラクターのあるドリンク&楽しい仲間で、サンクスギヴィングという名目のパーティは夜な夜な続いた。この場所はワイルド・キングダム。ウエブサイトはないが、NYに来たら、目の前の高架を通る電車に野次をとばしながら、ベランダでハングアウトするには最高の場所である。

https://williamsburgfashionweekend.com
https://www.ele-king.net/columns/regulars/randomaccessny/001412/

thanks giving dinner

■11/29 (Fri)
 11月からはじまっているブルックリン・ナイト・バザーに参加。2011年からはじまったこのイベントは、ウィリアムスバーグのホリディショッピングの強い見方で、ホリディ時期になると、いろんなエリアに出没していた。今までは、毎年場所を移動していたが、今年はグリーンポイントにようやくパーマネントの場所を見つけ、1年を通してオープンする(夏には、アウトドアのビアガーデンがオープン!)。アジアン・マーケットの雑多な感じをモデルにしたというマーケットは、100ものアーティスト&クラフトショップ、20のフードベンダーなどがすらりと並ぶ。一角には、地元の媒体がオーガナイズするライブショーがあり(ベンダーがない時には1800人収容できる、ブルックリンで2番目に大きい会場となる)、ピンポン・テーブル、インドア・ミニゴルフ、WIFIもあり、仕事できるスペースもある。ラフトレと同じ多目的仕様。去年は、著者の大好きなパックマンのイヤリングを発見したのだが、今年は、キャラクター物はあまり見られず、ジュエリー、洋服からiPhoneケース、タオル・ヘアバンド、古本をベースにした時計、アート・レギンスなどアーティなお店が並ぶ。著者のお勧めブランド、RHLSも出店していた。この日のバンドは、ア・プレイス・トゥ・バリー・ストレンジャー、ドーン・オブ・ミディ、ポンティアック、ウッズマン。ショッピングに夢中になり、ア・プレイス・トゥ・バリー・ストレンジャーしか見れなかったが、映像とスモークで、ほとんどバンドが見えなかった(後で聞いたらスタイルのようだが)。毎週のようにバンドが見れ(オウ・レヴォワール・シモーヌ、ティーン、マーク・デマルコなど)、アーティストの作品が随時入れ替わり、アミューズメントもありで、ハングアウトリストがまた増えた。そして、今日はキャサリン・ハンナのパンク・シンガーの上映会へ。Q&Aやライヴもあるらしい。
https://bkbazaar.com

brooklyn night bazzar

Melt-Banana - ele-king

 本作のリリース前からニュースなどでこのバンドに対して使われている「ノイズコア」という形容にどうもひっかるものがあるのは理由がいろいろあるのだが、まず第一には彼らの演奏はノイジーではあるけども、極めてコントローラブルで再現可能なものなので、「ノイズ」という形容が適切とは思えないという点がある。彼らの演奏は初期のころから一貫してインプロヴィゼーションの要素はかなり少ないはずだ。
 もう一点としては、彼らの出自がハードコアではないという点にある。ハードコア系の企画に出演することは多いが、決してハードコアシーンに属しているわけではない(あるんですよ、シーンっていうのは厳然と)。

 もともと、彼らのルーツはポストパンクやニューウェイヴにあり、初期からのトレードマークであるスライド・ギターは『ノー・ニューヨーク』収録のティーンネイジ・ジーザス&ジャークスにヒントを得ているし、前身バンドを見たことのある人によれば当時はセックス・ギャング・チルドレンやバースデー・パーティなどのニューウェイヴ/ポジティヴ・パンクの影響を感じさせるサウンドだったという。
 94年にリリースされたゼニゲバのK.K.Nullのプロデュース、スティーヴ・アルビニの録音によるファースト『Speak Squeak Creak』で聴けるのはたしかにそうしたポストパンクを高速化したようなサウンドで、スライドギターの多用によりグニャグニャなのに金属的、という独特の感触がある(ところで彼らがずっと精力的に海外ツアーをおこなってきたのは、初期の時点でゼニゲバの姿を見ていたことも影響しているのではないかと思う)。
 当時のドラマーの須藤俊明は自身のドラムスタイルについて、ロバート・ワイアットの影響を受けていると発言している。たしかにいま聴いてみると、ハードコアのドラムとはまた違った、手数の多いドラミングである。
 95年のセカンド『Scratch or Stitch』(前作に続きアルビニのプロデュース、録音はジム・オルーク)も前作の延長にあるサウンドである。この時期にMr.Bungleのオープニングアクトとしてアメリカツアーを行ったことで一気に海外での知名度が上がったと思う。あと、須藤が現在ジムのバンドのメンバーになっているのはこの頃からのつながりなんでしょうね。

 90年代中頃のハードコア・シーンではファストコアとかパワーヴァイオレンスと呼ばれる「速さ」を重視したスタイルが盛り上がっており、メルト・バナナも内外でそうしたバンドと共演する機会が増えてくる。そんななか、須藤が脱退し、元サタニック・ヘルスローターのオオシマが加入(現在はWatchman名義のエレクトロニカ・ユニットで活躍している)。サウンド面では一気にハードコアに接近する。ジョン・ゾーンのレーベル〈Tzadik〉からリリースされたライヴ・アルバムは1〜3枚目までのベスト的な選曲になっているので、ノリの違いを聴き比べても面白いと思う。

 そんなオオシマも4枚目のアルバム『Teeny Shiny』を最後に脱退。以後、固定ドラマーを持たないまま彼らは活動を続けることになる。日本国内と海外でドラマーを分けて活動するというスタイルには何らかの苦労がうかがえるというか、「これからのバンドは海外活動に目を向けるべきだ」みたいなことはよく言われてるけども、ツアー中心の生活ってのはなかなか誰にでもできるってもんでもないんだろうな、という気にさせられる。
 2003年の5枚目『Cell-Scape』で急激にサウンドがエレクトロニックな印象になるのは、固定ドラマーがいなくなったことも関係あるのではないかな、という気はする(まあ単純にギターのエフェクターとかが大きいんだけど)。
 その後、サンプラーを使った打ち込み版メルト・バナナともいうべき「Melt-Banana Lite」というユニットでの活動を平行して行うようになり(Liteによるライヴ・アルバムもリリースされている)、ついにはオリジナル・メンバーのベーシスト、Rikaが脱退。以後、ヴォーカルのYakoとギターのAgataのふたりとなったメルト・バナナは、ベースもドラムもすべて打ち込みという形での継続を選択した。

 とまあいろんなことがあって、ふたりとなったメルト・バナナの初めてのアルバムとなった『Fetch』がリリースされるには、実に8年というブランクがあった。そんなブランクにも関わらず、先行無料ダウンロード・トラックが『Tiny Mix Tapes』での配信だったのをはじめ、発売に際しては多くの海外メディアで取り上げられているのは、その間も毎年精力的なツアーを怠らなかったことによるものが大きいだろう。
 打ち込みになったとはいえ急にEDMとかダブステップになったりするわけもなく、基本的にはバンドサウンドを再現することに注力されているのだが、やはりここ数年来のサウンドの延長で極めてエレクトロニックな感触である。冒頭の話題に戻るけども、メルト・バナナがノイズ的と言われるのはおそらくはギター・サウンドが極めてギターっぽくないからなんじゃないかと思うのだが、むしろエレクトロニック・ミュージックの攻撃的な電子音を聴き慣れた耳には普通に「楽音」として捉えることが可能なんじゃないかと思う。エレキギターの可能性を縦横に拡張し続けているAgataの尽きることないアイデアにはいつも感服する。
 あと、ハイトーンのシャウトを基調とした女性ヴォーカルってなんとなくヒステリックな印象を与えがちなのだけど、Yakoのヴォーカルは常にどこか情念みたいなものを排した感じがあるので、(録音のせいもあるけど)わりとプラスティックな印象をあたえる。この辺も、エレクトロニック・ミュージックと近い感触のもとになっていると思う。

 個人的には何より驚いたのはふたりになってからのライヴである。ステージ後方にずらりとアンプが並び、確認したわけではないがおそらくドラムとベースと、それぞれ別系統でスピーカーから音を出している。ステージそでにラップトップが置かれているが単にトラックを流すのではなく、Yakoが片手にコントローラーみたいなのを持って操作している模様。リズムトラックにギターと歌を乗せた演奏って録音はまだしもライヴだと音色面や「ライヴ感」みたいな部分でどうしても不満が残りがちなんだけど、彼らの演奏に限ってはそういったことはほとんどなかった。

 こうして振り返ってみると、中心になるふたりは不動ながらもメンバーチェンジがしっかりサウンドの変化に結びついていることがわかる。今作は『Cell−Scape』以降の集大成のようなアルバムになったと思うが、今後ふたりになったメルト・バナナが今後さらにエレクトロニックになっていくのか、はたまた新たにベーシストやドラマーを迎えるのか。いずれにしてもとても楽しみだし、彼らを見ているとロックにはまだまだできることがあるんだなあと思えて、とても嬉しい。

Baths、オフショット! - ele-king

 いよいよツアーは来週から!
 バスは最初の来日の折からラップトップとサンプラーを駆使するスキルフルなライヴを行っていたが、あのドリーム感の裏側に、デイデラスに見初められ、〈ロウ・エンド・セオリー〉でのDJを務められるスキルがあるということは重要なポイントだ。もしかすると、セカンド・フル『オブシディアン』から聴きはじめたファンは、彼のそうした側面をあまりご存知ないかもしれない。ぜひ、ライヴ映像なども探してみるといいだろう(https://www.tugboatrecords.jp/)。
 そして見応えある彼のショウをさらに楽しむために、彼の愛すべきキャラクターもあわせてご紹介しよう。


初来日の際に真っ先に向かった〈ポケモンセンター〉前でのもの。
バスは日本のアニメが大好き!
来日の際は〈三鷹の森ジブリ美術館〉にも執着するとのこと。
Lovely Bloodflow”は『もののけ姫』の世界のイメージなのだとか。

2度めの来日では、奈良の鹿が見たかった――。
シカ耳は新しかったね。
ご当地キャラ感も出ています。


今回のヨーロッパツアーを終え、休暇中の写真。
温泉にいったようです。
ちょっと痩せたのかな?

来日情報はこちら。
各公演のゲストも注目アクトばかりだ。
SeihoとBaths対決@京都も、編集部はみんな観にいきたかった! Madeggまで観られるんだから、行ける人はぜひこの機を逃さないように! 放射される熱量が強すぎてハコが発火してしまうんじゃないだろうか。

LAが誇る若きビートメーカーBaths来日公演!!
Tugboat Records presents Baths Live in JAPAN 2013

■12/13(金) 名古屋池下CLUB UPSET
OPEN / START 24:00
ADV ¥4,200 / DOOR ¥4,700(共にドリンク代別)
Act:Baths, DE DE MOUSE + his drummer (Akinori Yamamoto from LITE)
DJ: I-NiO, sau(otopost), LOW-SON(しろー + オクソン)
VJ: Clutch
[Buy] : 9/7(土曜)〜
チケットぴあ(P: 211-365)
ローソンチケット(L: 41184)
e+(https://eplus.jp)
※名古屋公演はオールナイト公演ですのでIDをご持参下さい。

■2013.12.15(日) 京都メトロ
OPEN 18:00 / START 18:30
ADV¥4,000(+1Drink)/DOOR¥4,500(+1Drink)
Act:Baths,Seiho,Madegg
[Buy] : 発売中
チケットぴあ(P: 208-539)
ローソンチケット(L: 59065)
e+(https://eplus.jp)
前売りメール予約→ticket@metro.ne.jpでも受け付けています。
前日までに、公演日、お名前と枚数を明記してメールして下さい。
前売料金で入場頂けます。

■2013.12.16(月) 渋谷WWW
OPEN 18:00 / START 18:30
ADV¥4,500(+1Drink)/DOOR¥5,000(+1Drink)
Act: Baths,Taquwami,Sodapop (anticon. Label Manager)
[Buy] :発売中
チケットぴあ(P: 208-502)
ローソンチケット(L: 79947)
e+(https://eplus.jp)


Le1f - ele-king

 あるいはこれを、ヒップ気取りたちによるクリシェと呼ぶ向きもあるだろう。アフロ・フューチャリズムの最新ヴァージョン……を騙ったフェイクだとかなんとか。そう、ニューヨークのアンダーグラウンド・ヒップホップ、『ピッチフォーク』が言うところの「クィア・ラップ」のシーンは、ミッキー・ブランコとリーフという得難いタレントを輩出しつつも、むしろそのわかりやすいイメージ──ニューヨーク、ゲイ、黒人、ラップ──のキャッチーさゆえにか、いまだに決定的なバズを迎えていない。
 あらためてな話になってしまうが、これは、例えば小林雅明氏が本誌の紙版『vol.8』号で書いているような「高度な作品性を兼ね備えたものも多いミックステープが、フリーダウンロードであることにもありがたみなど感じさせないほど供給過多な状況」の弊害だと思われる。こうした無限供給に近い状況は、ヒップホップの多様化を下支えするとともに、その消費の高速化にも拍車をかけている。高速化どころか、それは空虚化と言ってもいいのかもしれない。クィア・ラップの色さえも、それは軽く呑み込んでしまうのだ。
 もちろん、ミックステープの軟派な利用者のひとりとして、僕も偉そうなことを言える立場ではない。しかしあらためて今年を振り返ったとき、胃袋に縫い付けられた鉛のようにズシリとのしかかってきたのは、<UNO NYC>からリリースされたミッキー・ブランコのEP『Betty Rubble: The Initiation』であり、リーフの二枚のミックステープ、『Fly Zone』と『Tree House』だった。少なくとも「黒人音楽の現在2013」を考える時、ニューヨークのアンダーグラウンドは輝いていた。それも、とても禍々しく。真夜中のための、二重生活者のための、そしてアンダーグラウンドのための音楽が、間違いなくそこにあった。

 ドローント・ラップ。欧米の一部批評筋ではそう呼ばれている。とくに、リーフの2013年2作目となる本作『Tree House』は目立って異質だ。手短に言うなら、ここには宇宙とディストピアが同時に拡がっている。
 いまになって振り返れば、最初のミックステープ『Dark York』は、〈Fade to Mind〉の気鋭・Nguzunguzuらがプロデュースしていることで知られているが、それはディジー・ラスカルやM.I.A.を高校生の頃に聴いたという世代感覚がストレートに発揮されたアグレッシブな内容だった。それがここに来て、ビートはよりテンポ・ダウンし、ラップも含めてムードは終始ダウナー。ビート・プロデュースはほぼ全曲で異なるトラックメイカーが務めているが、雰囲気は共振しており、重厚でありながらドローン風に浮遊するシンセウェイヴ、地底から響いてくるような遠くも重いベース、そしてそこに、キックよりもハットやスネアが強調されたトラップめいたビートが合わせられる。一般にヒップホップと言って想像する音からすれば、これはもはや、アンビエント・ミュージック。が、限られた音のなかにあっても、シンセのうねりまで含めたトラック全体のグルーヴとしては不思議とバウンスさせてしまうのだから、各トラックメイカーたちの手腕はもう見事としか言いようがない。
 少しだけ紹介しておくなら、今年『Contact』という怪物のようなアルバムをリリースしているシカゴのThe-Drum、一作目からの付き合いにして、EP『LIQUID』を共同でリリースしているBoody、ニューヨークの注目株・Shy Guy、アメリカ生まれの日本育ちだというCybergiga、そして、3曲入りのEPのみの形式に限定して作品を配信しているLAのカッティング・エッジなネット・レーベル<TAR>からは、LAのDEに加えてUKのAeirs TVが参加し、コズミックなクローサー・トラックにして本作のベストのひとつ“Cry Bb”にビートを提供している。確かに、二木信の言うとおり、「インターネットの大海原には、Arcaに匹敵する才能はゴロゴロ転がっている」というのは間違いではない。あとは、それを誰がどう編むか、だ。
 そういう意味では、そもそもがArcaとのタッグで知られたミッキー・ブランコの作品に、<Hippos in Tanks>のGatekeeperや、ハイプ・ウィリアムズのライブ・ドラマーでもあるGobbyが参加してきたことには触れておくべきだろう。そしてもう一人、この界隈における重要人物を挙げるなら、ボルチモアのRICK RABがプロデュースした“Blood Oranges”に参加しているシンガー/ソングライター、Ian Isiahだろう。“M1NDFVCK”(https://vimeo.com/64564103#)がとにかくクラシックだが、ミッキー・ブランコともメロウなR&B“Ace Bougie Chick”で共演しているほか、アンダーグラウンドのスーパーグループ、Future Brownのアルバムにも参加予定。本人名義でも、スィートなデビュー・アルバム『The Love Champion』が<UNO NYC>からリリースされている。

 ではそろそろ、本人らのコメントを引用しつつ、冒頭の話に戻ろう。

「ゲイ・コミュニティのラッパーたちが世間の注目を浴びるのは、やはり素晴らしいことだと思う。でも、“ゲイ・ラップ”というのはジャンルではない、ということをよく理解してもらう必要がある。自分が何者であるか、というだけのことで音楽のスタイルを定義されたくないんだ。あくまでも自分が作った音楽で判断してほしい。ミックステープ『Dark York』には21もの楽曲が収められていたけど、同性愛のことをテーマにしたのはたった5曲だよ」──リーフ(『インタビュー』マガジンでの発言から

 あるいはミッキー・ブランコは、「自分の活動が(集客を前提とした)パフォーマンスである、ということをみんなよく考えるべきじゃないかな」とけん制した上で、自らの音楽を「ライオット・ガールとゲットー・ファビュラスの激しい衝突」と切れ味よく説明する。あるいは、「自分としてはただグラム・ロックをやっているつもりなんだけどね」とも(すっかり書きそびれてしまったが、クィア・ラップのシーンはミュージック・ヴィデオがどれもラディカルで、シーパンクとの共振性もたびたび指摘されている)。
 そして、詩の朗読者ないしはパフォーマー上がりのミッキー・ブランコとは対照的に、もともとトラックメイカーとして出発しているリーフは、(本人曰く)すぐにゲイのそれと分かってしまうイントネーションに当時は自信が持てず、これまでにもラッパーとして音源をリリースする機会もあったそうだが、見事に「何も起こらなかった」という。であればこそ、このような発言が出てくるのも頷けるかもしれない。「自分はエイリアンなんだって感じるよ。少なくとも、ゲイ・ラッパーなんだって言われるよりはね」
 これをアフロ・フューチャリズムの最新ヴァージョンと呼ぶのは、あまりにベタだろうか。そうかもしれない。だが、例えばアルカのミックステープ『&&&&&』の評で紹介したディストロイド的な感性、つまりインダストリアルとアンビエントとグライムを激突させてしまうセンス、あるいは本作で展開されている異形のドローントラップにしてもそうだが、それらアンバランスで宇宙的/異次元的な(それこそクィアな)ビートの鳴りを、自らのミュータント的なイメージに引き付けてしまう大胆さが、ここにはある。自分の英語力の無さを開き直るようで申し訳ないが、懇切丁寧な歌詞の翻訳集をとても待ってはいられない。ミュータント・エンジェルたちの美しいトリップに酔ってしまえ。

踊ってばかりの国×快速東京 - ele-king

 紙エレキング10号、「ANTI GREEK HEROES」特集の表紙を飾ってくれたふたり、下津光史率いる踊ってばかりの国、そして福田哲丸が歌っている快速東京のライヴが12月12日恵比寿リキッドルームであります。いやいや、素晴らしい組み合わせですね。もうこの彼らに関しては説明不要でしょう、2013年は全国のライヴハウスやフェスで、がんがんにショーをやって、ファンもどんどん増やしているこのふたつのバンド、ともに年明けに新しいアルバムのリリースを控えているので、きっと新曲もいっぱい聴けると思います。今年最後のロックンロール・ショーです。みんなで楽しく騒ぎましょう。
 ちなみに、来年の2月には、踊ってばかりの国の12インチ・シングル「踊ってはいけない国EP」をele-king レーベル第一弾の完全限定盤としてリリース予定です。風営法にもの申す名曲“踊ってはいけない国”をDJのヨーグルトさんが陶酔的なハウス・ミュージックに再構築してくれました。レコードには、オリジナルとは別ヴァージョン、最近のライヴの1曲目でお馴染みのディープな超大大名曲“ANTHEM”も収録しています。お陰さまで、すでにかなりの予約が入っています。こちらもお楽しみに!

■東京ダンス
快速東京、踊ってばかりの国
12月12日木曜日@恵比寿リキッドルーム

open/start:18:45/19:30
チケット:前売スタンディング¥2,500(税込) D別/当日料金未定

問:エイティーフィールド 03-5712-5227(平日13:00-19:00)
https://www.atfeild.net
チケット発売:11/16(土)
プレイガイド:ぴあ、ローソン、e+

踊ってばかりの国HP
https://odottebakarinokuni.com

快速東京HP
https://kaisokutokyo.com


The Strypes - ele-king

 カヴァン。(現地出身者は「キャーーヴン」と発音する。その発音はダブリン在住者の間では「田舎者」を意味する表現にもなっている)というアイルランドのカウンティは、わたしにとって縁の深い場所である。若い娘だった頃、カヴァン出身の男と一緒に住んでいた。で、その後、ロンドン出身の男と結婚したら、そいつの父方の家族も代々カヴァンの人びとだった。
 で、このザ・ストライプスもカヴァン出身なんだよねー。みたいなことを言っていると、連合いが言った。
 「おめー見てるよ、そのキッズ。何年か前に、カヴァンで」

 どうやら、カヴァンのロック・フェスに出演している姿を見たらしい。ロック・フェスといっても、修道女と羊ぐらいしかストリート(農道)を歩いていないカヴァンのことである。著名バンドなどは出ておらず、近所のパブに集まるおっさんたちのTHEMのコピー・バンド。とか、子育てを終えたお母さんたちの熟女メタル・バンド。とか、巡査さんの弾き語りボブ・ディラン。とか、そういうのどかなメンツに混じって、たしかにやけに上手いちびっ子バンドが出ていたと記憶している。
 が、あの頃のザ・ストライプスは全然いまとは違うファッションをしていた。なんかこう、袖の長い赤いモヘアのセーターやカラフルなチェックのシャツにブルージーンズ。みたいな、ちょっとアメリカンな、それ故いかにもアイルランドの子供。といった外見だった。平均年齢13歳ぐらいだったろう。ローティーンの子供たちが普通に演奏するビートルズの曲とかを普通に演奏していた記憶があるが、たしかに芸達者だった。しかし、それにしたって、「あいつらは俺ら以上に音楽好き」と英国人も一目置くアイルランドのことである。はっきり言って、あの程度の子供はわりといる。
 ということは、ザ・ストライプスって、あれから大化けしたのね。と思って、おばはんも一念発起して彼らのデビュー・アルバムを聴いてみた。ストーンズ、ビートルズ、ザ・フー、キンクス。などのUKバンドを引き合いに出されることの多いザ・ストライプだが、わたしが連想したのは、アラン・パーカー監督の『ザ・コミットメンツ』のサウンドだった。あの、「アイリッシュはヨーロッパの黒人種だ!」と宣言した映画のアイルランドのパブロック、ならぬ、パブR&Bである。

              **********

 彼らに惚れ込み、自分のマネジメント会社と契約させたエルトン・ジョンは、LGBT運動にも熱心だが、労働者階級という自らの出自にも拘り続けている。UKの労働者階級の若者がもっともクールだったのは60年代だそうだから(ツイッギーやマイケル・ケインの時代だ)、その頃に青春を送ったエルトンが、ブライトンのパブでザ・ストライプスを見てぶっ飛んだというのはわかる。イメージ的にブリティッシュ・ビートっぽいパッケージングが施されているのはそのせいかとも思うが、だからと言って彼らをポール・ウェラーやマイルズ・ケインの少年版と整理しても良いのかというと、それは違う。彼らの音はもっと泥臭いというか、随所で『ザ・コミットメンツ』が毀れている。

 彼らのレヴューには、英日を問わず、ルーツ。という言葉が頻用されている。ロックが好きになった子供が、現在のそれのルーツであるところのストーンズやDr フィールグッドを発見し、さらにそのルーツであるところのチャック・ベリーやボ・ディドリーを発見して、夢中になる。その発見をティーンズが演奏しているのが新しい。というような文脈は、しかし果たしてそうだろうか。と思う。
 なぜなら、このルーツ探しの旅は、昔からロック好きの若者が通って来た道であり、とくにアイルランド(の田舎)のような老いも若きも一緒くたになってパブで音楽を奏でているような国では、ロックンブルーズは不変のスタンダードだ。ザ・ストライプスのサウンドには「温故知新の新しさ」というより、脈々とそこに流れて来たものとしての腰がどっしり入っている。彼らが抜きん出ているのは、むしろ彼らを生み出した土壌のせいだろう。

 最後に、そしてたいへん重要なことに、アイルランドは詩人の国としても有名だが、この点におけるザ・ストライプスはどうなのだろう。

 「彼女が僕のドアをノックするときは、いつもティーカップを手にしている 彼女はミルクと砂糖が欲しいだけ でも僕は彼女が欲しいだけ」“Blue Collar Jane”

 「基本的に、『Snapshot』の曲の歌詞を聞いていると、テレタビーズのほうがよっぽど知的なのではと思えてくる」とSputnikmusicのレヴューでアイルランド人寄稿者は嘆いている。
 とは言え、彼らはジェイク・バグのようなストリート詩人ではなく、ロックンブルーズの兄ちゃんたちなのだから、歌詞はバカで良いのだ。が、せめて同じ紅茶ならば、「絞って僕のレモンを あなたの好きなだけ/たっぷり僕のレモンを あなたの紅茶の中に/アーアーアー ふたりで飲みますレモンティー」と書いた柴山俊之ぐらい肉感的なひねりを見せて欲しい。
 そうしてミルクティーを何かもっといやらしいものに転化できたときこそ、ザ・ストライプスはめちゃうま子供バンドを卒業し、次の地平に進むのだろう。

Destroyer - ele-king

 フェニックスのレヴューで、「日本人は英語でロックを歌うべきだった」と書いたけど、デストロイヤーの最新EPはスペイン語で歌われている。どないなってるねんである。

 デストロイヤーことダン・ベイハーがスペイン語で歌っていると聞いたときは、ウェス・アンダーソンの映画『ライフ・アクアティック』で話題になったあのデヴィッド・ボウイのいなたいスペイン語ボサノヴァ・カヴァーな感じでくるのかなと思ったら、けっこう正統派でびっくりした。『カプート』でデストロイヤーの音が完全に完成したから、それをぶち壊したという意味でのスペイン語だったと思うのだが、ただスペイン語で歌っているだけやん、と笑ってしまった。

 でも、音楽を変えるとかじゃなく、違う国の言葉で歌うことで、新しい音楽を生もうとしているのは、なかなか面白い試みだなと思った。デストロイヤーは音楽スタイルを変えることで前進してきたのかなと思っていたのですが、違っていたのですね。彼が自らの音楽を「ヨーロピアン・ブルース」と言っていた意味がなんとなくわかりました。彼にとって表現とは旅なんですよ。彼はずっとどこにも所属しない異邦人なんです。唯一彼を癒してくれるものは音楽だけだった。彼にとって言葉はただの記号で、それほど重要なものじゃなかったのでしょう。メロディに癖を与えてくれるものくらいにしか考えていなかったのでしょう。

 このEPで、僕はデストロイヤーというアーティストが、どういうアーティストかというのがよくわかりました。彼が好きであろう、スコット・ウォーカー、ダンカン・ブラウン、ダンカン・ブラウンを彼が好きなのかどうなのか、僕は知らないですが、でもデストロイヤーを聴いていて、いつも僕が思い出すのはメトロなんです。異邦人の音楽ですよね。

 この頃、日本人は英語で歌えと思っていたんですけど、このデストロイヤーのEPを聴いていて、日本人はもっと異邦人にならないといけないんじゃないという思いました。

 デストロイヤーの気持ちよさってこれですよね。帰るところのない人間の悲しさ。そんな人には言葉なんて無意味なんですよ。ジプシーたちはまさにそんな感じで旅をしながら、そのエリアの言葉をマネして、小銭を稼いでいたんだと思います。僕らの音楽の原点にはそういうものがあるんですよ、きっと。
ちょっといろいろ考えさせられたデストロイヤーの新作でした。

Ryan Hemsworth - ele-king

 OPNがサウンドトラックに参加していることで話題のソフィア・コッポラの『ブリングリング』は、たしかにこれまでと違って物欲盛んな悪ガキたちを主人公にしているが、結局彼女の少女たちの捉え方は『ヴァージン・スーサイズ』の頃から変わっていないように思える。ただ、思春期の虚無感が融解する先がインターネット・カルチャーとセレブリティ・カルチャーに向かったのが前者で、70年代のノスタルジーに封印されたのが後者だとすれば、より幸福で美しいのは自死を選んだ少女たちのほうなのだろうか。そこでその「揺らぎ」は永遠になり、ソフィアもまたそれをデビュー作に据えたことで、彼女自身がそのイメージを引きずっているように見える。



 カナダ人のDJ/プロデューサー、ライアン・ヘムズワースのことが気になったのは、多くのひとが即座に『ヴァージン・スーサイズ』を連想したであろう“カラー&ムーヴメント”のややサイケデリックなヴィデオを見ていると、そこからエリオット・スミスの“エヴリシング・ミーンズ・ナッシング・トゥ・ミー”のサンプルが聞こえてきたからだ(同曲ではドイツのロック・バンドであるノーツイストのサンプルも使用している)。大きく言ってヒップホップのトラック・メイカーであるヘムズワースだが、突然この世から消えてしまったシンガーソングライターのいまにも壊れそうな歌声を取り入れる彼の感性は、他のトラック・メイカーにはなかなか見当たらないものに思えたのだ。俄然彼に興味が沸き調べてみると、メイン・アトラクションズのトラックを担当することもあるという22歳の青年だという。それが今年の頭のことだ。それから様々なところで彼の名前を見るようになり、本作が現在は23歳の彼のデビュー・アルバムとなる。
 様々なところ、とはライやフランク・オーシャンからカニエ・ウェスト、グライムスまでのリミックスであり、あるいは逆に情報デスクvirtualによるリミックスなどなど、だ。要するにクラウド・ラップ、チルウェイヴにチル・アンド・ビー、さらにはヴェイパーウェイヴまでをまたぐ領域にいるということで、実際、『ギルト・トリップス』からはそれらの反響がすべて聞こえてくる。もう少し離れて見れば、ハドソン・モホーク以降のチップチューンのアップグレード版も微妙にあるし、〈ロウ・エンド・セオリー〉周辺と共鳴するものもあるだろう。ヘムズワースはLA拠点のプロデューサー集団〈WEDIDIT〉のメンバーでもあり、LAビート・シーンはおそらく彼の音楽的アイデンティティの置き場だと考えられる。
 けれども、アルバムを聴いていてもっとも尾を引いて残るのは、「ドレイクのエモ・ヒップホップとサンプルを基調としたエレクトロニカの接続」と説明されるときの「エモ」の部分だ。彼の発言によると10代の頃はエリオット・スミスとブライト・アイズが好きなインディ・ロック少年だったそうだが、『ギルト・トリップス』でももっとも大切に扱われているのは、その、いまなお引きずる思春期性ではないか。オープニングの“スモール+ロスト”でスムースな女性ヴォーカルが演出するメランコリーの純度の高さを聴くとそんな風に思わずにはいられないし、バスが参加した“スティル・コールド”なども、驚くほどナイーヴでささやかなトラックだ。ビートがアグレッシヴなほうの“ハピネス&ドリームス・フォーエヴァー”でさえタイトルから想像されるようなフラジャイルさを湛え、タイトルに自分の名前を出してしまう“ライアン・マスト・ビー・デストロイド”でも電子音が物悲しく歌う。ライアン少年はアコースティック・ギターを持って歌う可能性だってあっただろうが、だがヒップホップ・ビートでこそ彼のエモーションを丹念に滲ませていく。
 ここには現在の彼の「揺らぎ」が漂っていて、しかしそれはサウンドともに今後変わっていくだろうという予感がある。非常な旬な音がヴァラエティ豊かに本作にはあるが、そのコアはまだ見出しにくいからだ。だが、だからこそどんな方向にも行けるだろう。そのとき彼の感情のアウトプットがどのような姿になるのか、僕は強い興味を掻き立てられる。が、『ギルト・トリップス』にはナイーヴな青年の甘美なメランコリーがあり、いまはそれでじゅうぶんだ。

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