「William Basinski」と一致するもの

William Basinski - ele-king

 ウィリアム・バシンスキーの新作『Lamentations』がリリースされた。本作『Lamentations』はアンビエント作家として充実したキャリアを誇る彼にとっての集大成的なアルバムであり、ここ数年のバシンスキーの音楽的変化が結実した作品でもある。「彼の音楽を聴いたことがない」というリスナーの方にも躊躇なく最初におすすめできるアルバムともいえる。

 バシンスキーについてはもはや説明する必要はないだろう。現在LAを拠点に活動を展開するバシンスキーは、この20年ほどのあいだ壊れたテープ・ループや掠れた音色のサウンドによるアンビエントをコンスタントにリリースし続けてきたアンビエント音楽家である。なかでも2001年の9月11日、「あの日」、倒壊し黒煙を上げるワールドトレードセンターの映像に自身のアンビエント・サウンドを重ねた映像作品と、その音源作品である『Disintegration Loop 1.1』(2004)は、バシンスキーのことを語るときよく取り上げられるので、ひとまずは「代表作」といえよう。

 しかし自分は、ここ数年の彼のサウンドの変化を重要と考えている。具体的にはデイヴィッド・ボウイへのレクイエムでもあった2017年リリースの『A Shadow In Time』、ローレンス・イングリッシュとの共作である2018年リリースの『Selva Oscura』、インスタレーション作品の音源でもある2019年リリースの『On Time Out Of Time』以降(どれも〈Temporary Residence Limited〉からのリリース)、そのサウンドはロマンティックな音楽性が表面化し、さらに幽玄な音響空間に変化していたのだ。それらのサウンドはどこか「死」や「喪失」の時間をも表現しているように感じられた。『A Shadow In Time』がボウイへの追悼であることは象徴的だ。
 この「変化」は10年代後半以降の不穏な世界/社会情勢を(無意識に?)反映したものかもしれないし、もっと単純に彼自身が自身の死をより具体的なものとして意識する年齢にさしかかったからともいえるかもしれない。いずれにせよ彼の音楽は、どこか物語的になり演劇的になった。じじつ本作『Lamentations』には、マリーナ・アブラモヴィッチによるロバート・ウィルソン(!)の舞台作品のための音楽(“O, My Daughter, O, My Sorrow”)もふくまれているのだ。
 くわえてアルバム全体が12曲にわかれていること、曲名がかつてのように記号的なものではなく、“Paradise Lost”、“Silent Spring”、“Fin” などの言葉になっていたことも「物語性」を感じさせてくれた要因かもしれない。いずれにせよ本作には近作にあった「死」「喪失」のイメージがより具体的なサウンドとして感じられるようになったのである。

 おそらくはコロナ禍の状況が、そういったアルバム・コンセプトや音楽性に強く作用したことは容易に想像できる(“Silent Spring”などその象徴か)。どの曲も不安定なループと音響の持続をレイヤーし、聴いている者の立っている地盤を揺るがせるような不穏な音楽を展開している。
 楽曲的にはシェーンベルクの “清められた夜(Transfigured Night)” を思わせる曲名の “Transfiguration” からも連想できるように、どこか現代音楽的にも感じた。ロマンティックな響きに無調の香水を落としたような響きは不穏にして美麗である。
 クラシカルな要素はオペラ的な歌唱のサンプルを用いた “All These Too, I, I Love” などからも聴きとることができる。“O, My Daughter, O, My Sorrow” にはバルカンの古い歌がもちいられているようだ。そのような「声」のサンプルを人間=もしくは死者の声のように捉えると、『Lamentations』というアルバムは、その名のとおり死への「哀歌」のような作品ということになってくるのではないか。

 私はこの「哀歌」の感覚こそが2020年(以降)の世界のムードをあらわしているように感じられた。「9.11以降の世界の崩壊」を「黄昏」のようなアンビエントで表現したバシンスキーは、「2020年以降(コロナ以降)の世界の崩壊=不穏=死」をロマンティックかつ不穏な音楽・音響で「哀歌」として表現したのだ。つまり『Lamentations』は、バシンシキーのキャリアにおいてもきわめて重要なアルバムであり、同時に2020年のアンビエント・ミュージックを代表する一作であるのだ。

Playlists During This Crisis - ele-king

家聴き用のプレイリストです。いろんな方々にお願いしました。来た順番にアップしていきます。楽しんで下さい。

Ian F. Martin/イアン・F・マーティン

This is a multi-purpose playlist for people stuck at home during a crisis. The first 5 songs should be heard lying down, absorbed in the music’s pure, transcendent beauty. The last 5 songs should be heard dancing around your room in a really stupid way.

Brian Eno / By This River
Nick Drake / Road
Life Without Buildings / The Leanover
Young Marble Giants / Brand - New - Life
Broadcast / Poem Of Dead Song
Holger Czukay / Cool In The Pool
Yazoo / Bad Connection
Lio / Fallait Pas Commencer
Der Plan / Gummitwist
Electric Light Orchestra / Shine A Little Love

野田努

週末だ。ビールだ。癒しと皮肉と願い(冗談、怒り、恐怖も少々)を込めて選曲。少しでも楽しんでもらえたら。問題はこれから先の2〜3週間、たぶんいろんなことが起きると思う。できる限り落ち着いて、とにかく感染に気をつけて。お金がある人は音楽を買おう(たとえば bandcamp は収益をアーティストに還元している)。そして本を読んで賢くなろう。いまのお薦めはナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』。

Ultravox / Just For A Moment
フィッシュマンズ / Weather Report
Talking Heads / Air
Funkadelic / You Can’t Miss What You Can't Measure
New Age Steppers / Fade Away
RCサクセション / うわの空
Horace Andy / Rain From the Sky
Sun Ra / We Travel the Spaceways
Rhythim is Rhythim / Beyond the Dance
Kraftwerk / Tour De France

小林拓音

考えることはいっぱいあるけど、暗くなってしまいそうなのでちょっとだけ。被害は万人に平等には訪れない。割を食うのはいつだって……。問題の根幹は昔からなにも変わってないんだと思う。そこだけ把握しといて、あとは明るく過ごそうじゃないか。

Skip James / Hard Time Killing Floor Blues
The Beatles / Money
Public Enemy / Gotta Give the Peeps What They Need
Drexciya / Living on the Edge
Milanese vs Virus Syndicate / Dead Man Walking V.I.P.
Mark Pritchard / Circle of Fear
Erik Truffaz & Murcof / Chaos
Ata Ebtekar and the Iranian Orchestra for New Music / Broken Silence Cmpd
Psyche / Crackdown
Autechre / Flutter

河村祐介

怒るべきことにはちゃんと怒りましょう。僕らの生活と文化を守るために。そして、リラックスと快楽の自由も。

The Specials / Ghost Twon
Bob Marley / So Much Trouble In the World
Tommy McCook / Midnight Dub
Nightmares on Wax / Mores
7FO / Waver Vapour
石野卓球 / TRIP-O-MATIC
Nehoki / Morgentrack
Kodama And The Dubstation Band / かすかな きぼう
思い出野郎Aチーム / 灯りを分けあおう
Janelle Monáe / Smile

Neil Ollivierra/ニール・オリヴィエラ(The Detroit Escalator Co.)(LA在住)

Absorbing Songs for Armchair Traveling

Robin Guthrie, Harold Budd / How Close Your Soul
Thore Pfeiffer / Alles Wird Gut
Cortex / Troupeau bleu
Milton Nascimento / Tudo O Que Você Podia Ser
The Heliocentrics / A World of Masks
Kodo / Shake - Isuka Mata
Miles Davis / Indigo
Gordon Beck / Going Up
Funkadelic / Maggot Brain
Simply Red / I’m Gonna Lose You

Matthew Chozick/マシュー・チョジック

自己隔離生活にぴったりの癒し曲を集めてみました。コロナ野郎のせいで新しいレコード発表は激減、そんなときこそ古いアルバムを聴き直してみよう。家でパジャマパーティでも開きながら、僕のプレイリストをエンジョイしてくれたら嬉しいな。目に見えないもの同士、ウィルスとの戦いには心を癒す良薬で対抗だ!

Björk / Virus
The Knife / Afraid of You
The Velvet Underground / After Hours
John Lennon / Isolation
Harold Melvin & The Blue Notes / I Miss You
Grouper / Living Room
Beat Happening / Indian Summer
ゆらゆら帝国 / おはようまだやろう
Nico / Afraid
高橋幸宏 / コネクション

細田成嗣

つねにすでにオリジナルなものとしてある声は、しかしながら変幻自在のヴォーカリゼーションや声そのものの音響的革新、あるいは声をもとにしたエクストリームな表現の追求によって、より一層独自の性格を獲得する。見えない脅威に襲われる未曾有の事態に直面しているからこそ、わたしたちは「ひとつの声」を求めるのではなく、さまざまな声を聴き分け、受け入れる耳を養う必要に迫られているのではないだろうか。

Luciano Berio, Cathy Berberian / Sequenza III for voice
Demetrio Stratos / Investigazioni (Diplofonie e triplofonie)
David Moss / Ghosts
Meredith Monk, Katie Geissinger / Volcano Songs: Duets: Lost Wind
Sainkho Namchylak, Jarrod Cagwin / Dance of an Old Spirit
Fredy Studer, Ami Yoshida / Kaiten
Alice Hui Sheng Chang / There She Is, Standing And Walking On Her Own
Senyawa / Pada Siang Hari
Amirtha Kidambi, Elder Ones / Decolonize the Mind
Hiroshi Hasegawa, Kazehito Seki / Tamaki -環- part I

沢井陽子(NY在住)

非常事態が発生し、仕事もない、やることもない、家から出られないときには元気が出る曲を聴きたいけれど、いつもと変わらないヴァイヴをキープしたいものです。

Deerhunter / Nothing Ever Happened
Unknown Mortal Orchestra / Necessary Evil
Thin Lizzy / Showdown
Janko Nilovic / Roses and Revolvers
Courtney Barnett / Can’t Do Much
Big Thief / Masterpiece
Brittany Howard / Stay High
Kaytranada, Badbadnotgood / Weight Off
St Vincent / Cruel
Gal Costa / Lost in the Paradise

デンシノオト

少しでもアートという人の営みに触れることで希望を忘れないために、2018年から2020年までにリリースされた現代音楽、モダンなドローン、アンビエント、電子音響などをまとめた最新型のエクスペリメンタル・ミュージック・プレイリストにしてみました。

James Tenney, Alison Bjorkedal, Ellie Choate, Elizabeth Huston, Catherine Litaker, Amy Shulman, Ruriko Terada, Nicholas Deyoe / 64 Studies for 6 Harps: Study #1
Golem Mecanique / Face A
Werner Dafeldecker / Parallel Darks Part One
Yann Novak / Scalar Field (yellow, blue, yellow, 1.1)
3RENSA (Nyatora, Merzbow, Duenn) / Deep Mix
Beatriz Ferreyra / Echos
Anastassis Philippakopoulos, Melaine Dalibert / piano piece (2018a)
Jasmine Guffond / Degradation Loops #1
Dino Spiluttini / Drugs in Heaven
Ernest Hood / At The Store

Paolo Parisi/パオロ・パリージ(ローマ在住)

Bauhaus / Dark Entries
Sonic Youth / The End of the End of the Ugly
Mission of Burma / That’s How I Escaped My Certain Fate
Wipers / Return of the Rat
Pylon / Feast on my Heart
Gun Club / Sex Beat
The Jim Carroll Band / It’s Too Late
Television / Friction
Patti Smith / Kimberly
The Modern Lovers / Hospital

末次亘(C.E)

CS + Kreme / Saint
Kashif, Meli’sa Morgan / Love Changes (with Meli’sa Morgan)
Tenor Saw / Run From Progress
Phil Pratt All Stars / Evilest Thing Version
坂本龍一 / PARADISE LOST
Beatrice Dillon / Workaround Three
Joy Orbison, Mansur Brown / YI She’s Away
Burnt Friedman, Jaki Liebezeit / Mikrokasper
Aleksi Perälä / UK74R1721478
Steve Reich, Pat Metheny / Electric Counterpoint: II. Slow

木津毅

If I could see all my friends tonight (Live Recordings)

ライヴハウスがスケープゴートにされて、保障の確約もないまま「自粛」を求められるいま、オーディエンスの喜びに満ちたライヴが恋しいです。というわけで、ライヴ音源からセレクトしました。来日公演は軒並みキャンセルになりましたが、また、素晴らしい音楽が分かち合われるライヴに集まれることを願って。

Bon Iver / Woods - Live from Pitchfork Paris Presented by La Blogothèque, Nov 3 2018
James Blake / Wilhelm Scream - Live At Pitchfork, France / 2012
Sufjan Stevens / Fourth of July - Live
Iron & Wine / Sodom, South Georgia
Wilco / Jesus, Etc.
The National / Slow Show (Live in Brussels)
Jaga Jazzist / Oslo Skyline - Live
The Streets / Weak Become Heroes - One Live in Nottingham, 31-10-02
LCD Soundsystem / All My Friends - live at madison square garden
Bruce Springsteen / We Shall Overcome - Live at the Point Theatre, Dublin, Ireland - November 2006

髙橋勇人(ロンドン在住)

3月25日、Spotify は「COVID-19 MUSIC RELIEF」という、ストリーミング・サービスのユーザーに特定の音楽団体への募金を募るキャンペーンを始めている。

スポティファイ・テクノロジー社から直接ドネーションするわけじゃないんかーい、という感じもするのが正直なところだし、その募金が渡る団体が欧米のものにいまのとこは限定されているのも、日本側にはイマイチに映るだろう。現在、同社はアーティストがファンから直接ドネーションを募れるシステムなどを構築しているらしいので、大手ストリーミング・サービスの一挙手一投足に注目、というか、ちゃんとインディペンデントでも活動しているアーティストにも支援がいくように我々は監視しなければいけない。

最近、Bandcamp では、いくつかのレーベルが売り上げを直接アーティストに送ることを発表している。そういう動きもあるので、この企画の話をいただいたとき(24日)、スポティファイが具体的な動きを見せていないので、やっぱり Bandcamp ともリンクさせなければと思った。ここに載せたアーティストは、比較的インディペンデントな活動を行なっている者たちである。このプレイリストを入り口に、気に入ったものは実際にデータで買ってみたり、その活動をチェックしてみてほしい。

ちなみに、「こんなときに聴きたい」という点もちゃんと意識している。僕はロックダウンにあるロンドンの部屋でこれを書いている。これらの楽曲は人生に色彩があることを思い出させてくれる楽曲たちだ。さっきこれを聴きながら走ってきたけど(友達に誘われたらNOだが、最低限の運動のための外出はOKだと総理大臣閣下も言っていたしな)、最高に気持ちよかった。

object blue / FUCK THE STASIS
Prettybwoy / Second Highball
Dan-Ce / Heyvalva Heyvalva Hey
Yamaneko / Fall Control
Tasho Ishii / Satoshi Nakamoto
Dayzero / Saruin Stage
Chino Amobi / The Floating World Pt.1
Brother May / Can Do It
Elvin Brandhi / Reap Solace
Loraine James / Sensual

松村正人

MirageRadioMix

音楽がつくりだした別天地が現実の世界に浸食されるも、楽曲が抵抗するというようなヴィジョンです。Spotify 限定で10曲というのはたいへんでしたが、マジメに選びました。いいたいことはいっぱいありますがひとまず。

忌野清志郎 / ウィルス
Björk / Virus
Oneohtrix Point Never / Warning
憂歌団 / 胸が痛い
The Residents / The Ultimate Disaster
The Doors / People Are Strange
キリンジ / 善人の反省
坂本慎太郎 / 死にませんが?
Can / Future Days - Edit
相対性理論 / わたしは人類(Live)

三田格

こんなときは Alva Noto + Ryuichi Sakamoto 『Virus Series Collectors Box』(全36曲!)を聴くのがいいんじゃないでしょうか。ローレル・ヘイローのデビュー・アルバム『Quarantine(=伝染病予防のための隔離施設)』(12)とかね。つーか、普段からあんまり人に会わないし、外食もしないし、外から帰ったら洗顔やうがいをしないと気持ち悪い性格なので、とくに変わりないというか、なんというかコロナ素通りです。だから、いつも通り新曲を聴いているだけなので、最近、気に入ってるものから上位10曲を(A-Reece の “Selfish Exp 2” がめっちゃ気に入ってるんだけど Spotify にはないみたいなので→https://soundcloud.com/user-868526411/a-reece-selfish-exp-2-mp3-1)。

Girl Ray / Takes Time (feat. PSwuave)
Natz Efx Msaki / Urban Child (Enoo Nepa Remix)
DJ Tears PLK / West Africa
Afrourbanplugg / General Ra (feat. Prettyboy)
SassyBlack / I Can’t Wait (feat. Casey Benjamin)
Najwa / Más Arriba
Owami Umsindo / eMandulo
Cristian Vogel & Elektro Guzzi / Plenkei
Oval / Pushhh
D.Smoke / Season Pass

AbuQadim Haqq/アブカディム・ハック(デトロイト在住)

These are some of my favorite songs of all time! Reflections of life of an artist from Detroit.
Thanks for letting me share my favorite music with you! Stay safe and healthy in these troubling times!

Rhythim is Rhythim / Icon
Underground Resistance / Analog Assassin
Public Enemy / Night of the Living Baseheads
Orlando Voorn / Treshold
Drexciya / Hydrocubes
Oddisee / Strength & Weakness
Iron Maiden / Run To The Hills
The Martian / Skypainter
Gustav Holst / Mars: Bringer of War
Rick Wade / First Darkness

Sk8thing aka DJ Spitfi_(C.E)

10_Spotify's_for_Social _Distancies_!!!!List by Sk8thing aka DJ DJ Spitfi

Francis Seyrig / The Dansant
Brian Eno / Slow Water
The Sorrow / Darkness
Owen Pallett / The Great Elsewhere
DRAB MAJESTY / 39 By Design
Our Girl / In My Head
Subway / Thick Pigeon
Einstürzende Neubauten / Youme & Meyou
Fat White Family / I Believe In Something Better
New Order / ICB

矢野利裕

人と会えず、話もできず、みんなで食事をすることもできず……という日々はつらく寂しいものです。落ち着きのない僕はなにをしたらいいでしょうか。うんざりするような毎日を前向きに乗り越えていくために、少なくとも僕には音楽が大事かもしれません。現実からの逃避でもなく現実の反映でもない、次なる現実を呼び寄せるものとしての音楽。そのいちばん先鋭的な部分は、笑いのともなう新奇な音楽(ノヴェルティソング)によって担われてきました。志村けんのシャウトが次なる現実を呼び寄せる。元気でやってるのかい!?

ザ・ドリフターズ / ドリフのバイのバイのバイ
雪村いずみ / チャチャチャはいかが
ザ・クールス / ラストダンスはCha・Chaで
セニョール・ココナッツ・アンド・ヒズ・オーケストラ / YELLOW MAGIC (Tong-Poo)
Negicco / カリプソ娘に花束を
スチャダラパー / レッツロックオン
4×4=16 / TOKISOBA Breakbeats
イルリメ / 元気でやってるのかい?
マキタスポーツ / Oh, ジーザス
水中、それは苦しい / マジで恋する五億年前

Sinta(Double Clapperz)

大変な時ですが、少しでも肩の力抜けたらいいなと思い選曲しました。

徳利 / きらめく
gummyboy / HONE [Mony Horse remix]
Burna Boy / Odogwu
Stormzy / Own It [Toddla T Remix feat. Burna Boy & Stylo G]
J Hus / Repeat (feat. Koffee)
LV / Walk It / Face of God
Free Nationals, Chronixx / Eternal Light
Pa Salieu / Frontline
Frenetik / La matrice
Fory Five / PE$O

Midori Aoyama

タイトルに色々かけようと思ったんですがなんかしっくりこなかったので、下記10曲選びました。よく僕のDJを聴いてくれている人はわかるかも? Party の最後でよくかける「蛍の光」的なセレクション。1曲目以外は特にメッセージはないです。単純にいい曲だと思うので、テレワークのお供に。
ちなみに最近仕事しながら聴いているのは、吉直堂の「雨の音」。宇宙飛行士は閉鎖されたスペースシャトルの中で自然の音を聴くらしい。地球に住めないのであればやっぱり宇宙に行くしかないのだろうか。

Marvin Gaye / What’s Going On
The Elder Statesman / Montreux Sunrise
12 Senses / Movement
Culross Close / Requiem + Reflections
Children Of Zeus / Hard Work
Neue Grafik Ensemble feat. Allysha Joy / Hotel Laplace
Aldorande / Sous La Lune
Michael Wycoff / Looking Up To You
Stevie Wonder / Ribbon In The Sky
Djavan / Samurai

高島鈴

コロナ禍のもとで生じている問題はひとつではないから、「こういう音楽を聞くといい」と一律に提言するのはすごく難しい。危機を真面目に受け止めながらどうにか生存をやっていくこと、危機を拡大させている政治家の振る舞いにきちんと怒ること、今私が意識できるのはこれぐらいである。みなさん、どうぞご無事で。

Kamui / Aida
Moment Joon / TENO HIRA
Garoad / Every Day Is Night
Awich / 洗脳 feat. DOGMA & 鎮座DOPENESS
Jvcki Wai / Anarchy
田島ハルコ / holy♡computer
Rinbjö / 戒厳令 feat. 菊地一谷
田我流 / Broiler
ASIAN KUNG-FU GENERATION / 夜を越えて
NORIKIYO / 神様ダイヤル

Mars89

一曲目はゾンビ映画サンプリングの僕の曲で “Run to Mall” って曲だけど、今は Don’t Run to Mall です。
それ以外は僕がお気に入りでずっと聞いてる曲たちです。部屋で悶々と行き場のない感情を抱えながら精神世界と自室の間を綱渡りで行き来するような感じの曲を選んでみました。

Mars89 / Run to Mall
Tim Hecker / Step away from Konoyo
Burial / Nightmarket
Raime / Passed over Trail
KWC 92 / Night Drive
Phew / Antenna
The Space Lady / Domae, Libra Nos / Showdown
Tropic of Cancer / Be Brave
Throbbing Gristle / Spirits Flying
Paysage D’Hiver / Welt Australia Eis

大前至

桜が満開な中、大雪が降りしきる、何とも不思議な天気の日曜日に、改めて自分が好きな音楽というものに向き合いながら選曲。今自分がいる東京もギリギリの状態ですが、昔住んでいたLAはすでにかなり深刻な状態で、そんな現状を憂いながら、LA関連のアーティスト限定でリラックス&少しでも気分が上がるような曲でプレイリストを組んでみました。

Illa J / Timeless
Sa-Ra Creative Partners / Rosebuds
NxWorries / Get Bigger / Do U Luv
Blu & Exile / Simply Amazin’ (steel blazin’)
Oh No / I Can’t Help Myself (feat. Stacy Epps)
Visionaries / If You Can’t Say Love
Dudley Perkins / Flowers
Jurassic 5 / Hey
Quasimoto / Jazz Cats Pt. 1
Dâm-Funk / 4 My Homies (feat. Steve Arrington)

天野龍太郎

「ウイルスは生物でもなく、非生物とも言い切れない。両方の性質を持っている特殊なものだ。人間はウイルスに対して、とても弱い。あと、『悪性新生物』とも呼ばれる癌は、生物に寄生して、防ぎようがない方法で増殖や転移をしていく。今は人間がこの地球の支配者かもしれないけれど、数百年後の未来では、ウイルスと癌細胞が支配しているかもね」。
氷が解けていく音が聞こえていた2019年。まったく異なる危機が一瞬でこの世界を覆った2020年。危機によってあきらかになるのは、システム、社会、政治における綻びや破綻、そこにぽっかりと大きく口を開いた穴だ。為政者の間抜けさも、本当によくわかる。危機はテストケースであり、愚かさとあやまちへの劇的な特効薬でもありうる。
ソーシャル・ディスタンシング・レイヴ。クラブ・クウォランティン。逃避的な音楽と共に、ステイ・ホーム、ステイ・セイフ・アンド・ステイ・ウォーク。

Kelly Lee Owens / Melt!
Beatrice Dillon / Clouds Strum
Four Tet / Baby
Caribou / Never Come Back
Octo Octa / Can You See Me?
tofubeats / SOMEBODY TORE MY P
Against All Logic / Deeeeeeefers
JPEGMAFIA / COVERED IN MONEY!
MIYACHI / MASK ON
Mura Masa & Clairo / I Don’t Think I Can Do This Again

James Hadfield/ジェイムズ・ハッドフィールド

Splendid Isolation

皆どんどん独りぼっちになりつつある事態で、ただ独りで創作された曲、孤立して生まれた曲を選曲してみました。

Alvin Lucier / I Am Sitting in a Room
Phew / Just a Familiar Face
Massimo Toniutti / Canti a forbice
Ruedi Häusermann / Vier Brüder Auf Der Bank
Wacław Zimpel / Lines
Kevin Drumm / Shut In - Part One
Mark Hollis / Inside Looking Out
Magical Power Mako / Look Up The Sky
Arthur Russell / Answers Me
Mike Oldfield / Hergest Ridge Part Two

小川充

都市封鎖や医療崩壊へと繋がりかねない今の危機的な状況下で、果たして音楽がどれほどの力を持つのか。正常な生活や仕事はもちろん、命や健康が損なわれる人もいる中で、今までのように音楽を聴いたり楽しむ余裕があるのか、などいろいろ考えます。かつての3・11のときもそうでしたが、まず音楽ができることを過信することなくストレートに考え、微力ながらも明日を生きる希望を繋ぐことに貢献できればと思い選曲しました。

McCoy Tyner / For Tomorrow
Pharoah Sanders / Love Is Everywhere
The Diddys feat. Paige Douglas / Intergalactic Love Song
The Isley Brothers / Work To Do
Kamasi Washington / Testify
Philip Bailey feat. Bilal / We’re Winner
Brief Encounter / Human
Boz Scaggs / Love Me Tomorrow
Al Green / Let’s Stay Together
Robert Wyatt / At Last I Am Free

野田努(2回目)

飲食店を営む家と歓楽街で生まれ育った人間として、いまの状況はいたたまれない。働いている人たちの胸中を察するには余りある。自分がただひとりの庶民でしかない、とあらためて思う。なんも特別な人間でもない、ただひとりの庶民でいたい。居酒屋が大好きだし、行きつけの飲食店に行って、がんばろうぜと意味も根拠もなく言ってあげたい。ここ数日は、『ポバティー・サファリ』に書かれていたことを思い返しています。

Blondie / Dreaming
タイマーズ / 偽善者
Sleaford Mods / Air Conditioning
The Specials / Do Nothing
The Clash / Should I Stay or Should I Go
Penetration / Life’s A Gamble
Joy Division / Transmission
Television / Elevation
Patti Simth / Free Money
Sham 69 / If the Kids Are United

Jazzと喫茶 はやし(下北沢)

コロナが生んだ問題が山積して心が病みそうになる。が、時間はある。
音楽と知恵と工夫で心を豊かに、この難局を乗り切りましょう!(4/6)

Ray Brayant / Gotta Travel On
Gil Scott Heron / Winter In America
Robert Hood / Minus
Choice / Acid Eiffel
Armando / Land Of Confusion
Jay Dee / Fuck The Police
Liquid Liquid / Rubbermiro
Count Ossie & The Mystic Revelation Of Rastafari / So Long
Bengt Berger, Don Cherry / Funerral Dance
民謡クルセイダーズ / 炭坑節

中村義響

No winter lasts forever; no spring skips it’s turn.

Ducktails / Olympic Air
Johnny Martian / Punchbowl
Later Nader / Mellow Mario
April March / Garden Of April
Vampire Weekend / Spring Snow
Brigt / Tenderly
W.A.L.A / Sacrum Test (feat. Salami Rose Joe Louis)
Standing On The Corner / Vomets
Babybird / Lemonade Baby
Blossom Dearie / They Say It’s Spring

野田努(3回目)

Jリーグのない週末になれつつある。夕暮れどきの、窓の外を眺めながら悦にいる感覚のシューゲイズ半分のプレイリスト。

Mazzy Star / Blue Light
The Jesus & Mary Chain / These Days
Animal Collective / The Softest Voice
Tiny Vipers / Eyes Like Ours
Beach House / Walk In The Park
Hope Sandoval & The Warm Inventions / On The Low
Devendra Banhart / Now That I Know
Scritti Politti / Skank Bloc Bologna
Yves Tumor / Limerence
Lou Reed / Coney Island Baby

ALEX FROM TOKYO(Tokyo Black Star, world famous)

この不安定な時代に、ラジオ番組のように Spotify で楽しめる、「今を生きる」気持ち良い、元気付けられる&考えさてくれるポジティヴでメッセージも響いてくる温かいオールジャンル選曲プレイリストになります。自分たちを見つめ直す時期です。海外から見た日本の状況がやはりとても心配になります。みなさんの健康と安全を願ってます。そしてこれからも一緒に好きな音楽と良い音を楽しみ続けましょう。Rest In Peace Manu Dibango & Bill Withers!(4/7)

Susumu Yokota / Saku
Manu Dibango / Tek Time
Final Frontier / The warning
Itadi / Watch your life
Rhythim Is Rhythim / Strings of Life
Howlin’ Wolf / Smokestack Lightin’
Massive Attack / Protection
Depeche Mode / Enjoy the Silence
Tokyo Black Star / Blade Dancer
Bill Withers / Lean on me (Live from Carnegie Hall)

Kevin Martin(The Bug)

(4/9)

The Necks / Sex
Rhythm & Sound / Roll Off
Miles Davis / In A Silent Way / It’s About That Time
William Basinski / DLP3
Thomas Koner / Daikan
Talk Talk / Myrrhman
Nick Cave + Bad Seeds / Avalanche
Jacob Miller / Ghetto on fire
Marvin Gaye / Inner City Blues
Erykah Badu / The Healer


増村和彦

最近は、「音楽やサウンドに呼吸をさせて、ゆがみや欠陥の余地を残して流していくんだ」というローレル・ヘイローの言葉が妙に響いて、その意味を考えるともなく考えながら音楽を聴いている。いまは、できるだけ雑食で、できるだけ聴いたことがなくて、直感で信頼できる音楽を欲しているのかもしれない。人に会わないことに慣れているはずのぼくのような人間でも、あんまり会わないと卑屈になってくるので、冷静にしてくれる音楽を聴きたくなります。(5/15)

Laurel Halo / Raw Silk Uncut Wood
Alex Albrecht pres.Melquiades / Lanterns Pt1 & Pt2
Minwhee Lee / Borrowed Tongue
Moritz von Oswald & Ordo Sakhna / Draught
Grouper / Cleaning
Moons / Dreaming Fully Awake
"Blue" Gene Tyranny / Next Time Might Be Your Time
Sun Ra / Nuclear War
Tony Allen With Africa 70’ / Jealousy
Tom Zé / Hein?

Jlin - ele-king

 アフリカ大陸を想起させる土着的なパーカッションの音を多用し、シャーマニックな声が響き渡る。まるでエレクトリックな音も巧みに操る部族が密林の奥地でおこなう儀式の音楽のようだ。『Dark Energy』、2015年にリリースされた、それまでのジューク/フットワークとは一線を画す突然変異的フットワーク・アルバムのタイトルである。米国中西部インディアナ州ゲイリー出身のジェイリン(Jlin)ことJerrilynn Pattonは、このアルバムでキャリアをスタートさせた。そしていまから1年ほど前に昼間の製鉄工場での仕事を辞め、より制作に時間を割ける環境を得て、2年ぶりとなる2ndアルバム『Black Origami』をリリース。『Dark Energy』からいかに進化したのかを解き明かしたいと思います。

 A1、アルバムタイトル曲”Black Origami”。彼女の場合、基本的にBPM80/160を3の倍数で割ったフレーズ、リズムがベースとなっていて、非常に細かく速く刻まれ、音の定位も細かく変化を加えられていて、とにかく複雑。この曲の場合、様々な音色のパーカッションが様々な音程とリズムを同時に刻むため、パーカッションだけでほとんどメロディを奏でているような感じで、そこに彼女の声とシンプルな上音やフレーズが乗るのですが、そのアンサンブルの妙が本当に素晴らしく、上音はひとつか、被ってもふたつくらいのもので、無駄が一切無く、必要最低限の要素だけで構築されているような感じです。
 冒頭からエレクトリックな音色のシンコペーションフレーズではじまり、ベースラインが刻まれ、キックが入り、パーカッションが複雑なリズムを刻み始めます。笛や銅鑼の音も入っています。そしてとにかくリズム楽器の音色、音程の多彩さに圧倒されます。ソリッドにそぎ落とされながらも複雑という、非常に高度なトラックメイキングだと思います。本当にオリジナルだなと感嘆。
 2015年5月か6月頃にC3の“Nandi”が出来て、これはいままでに作ったものとは違うと感じ、いま思うとこれが“Black Origami”制作のスタートだったとFADERのインタヴューに答えていたジェイリン。このアルバムタイトルトラックは2番目に完成、これもいままでとは違うサウンドだと感じたという。何をJlinは見つけたのか。それは音のまばらな配置だと彼女は言います。“Dark Energy”でも似たような音使いはしている。でもパーカッションはより多彩に、より高速に、より複雑に、転がるような流麗さで刻まれ、音の粒立ちがよりはっきりし、音と音の間の空白が際立つようになった。以前より速く複雑になっているにも関わらず。おそらくこれが彼女が「これでもっと深いところにいける」と感じた要因ではないかと僕は思います。空白。無。そこには底無しの深淵が口を開く可能性が秘められているからでしょう。それをこのアルバムでは追求していったのだと思います。

 タイトルトラックの“Black Origami”が出来て何かを掴んだ頃、彼女は“Dark Energy”が大好きだと言うダンサーAvril Stormy Ungerと出会います。彼女が踊っているヴィデオを見て、「Oh my god,これだ」と感じたと。Jlinのトラックに合わせて踊る彼女の動きはその音楽のリズムと音にぴったり合っていて、彼女は以降Jlinの良き制作パートナーとなり、今年も多くの共同パフォーマンスの予定が控えていて、ジェイリンはオーガナイザーとしても忙しく動いているようです。

https://www.native-instruments.com/en/specials/jlin/

 Jlinの音楽にインスパイアされて踊る彼女に、今度は逆にJlinがインスパイアされて、A2“Enigma”、B3“Hatshepsut”、C2“Carbon 7(161)”の3曲が完成したという、とてもクリエイティヴな循環が生まれています。“Enigma”は多彩なパーカッション、シンバルにベルなどの打楽器と彼女の声だけでほぼ曲が出来上がっていて、そこに時折ビリンバウの音が入るだけ。打楽器と声でメロディとリズムを奏で、そこに唯一付け足す要素としてビリンバウの音を選ぶこと、そして極限まで削ぎ落とされたビリンバウをどの音程でどこで鳴らすか。そこに彼女の考え抜かれた楽曲構成の妙が感じられます。

 “Hatshepsut”もほぼ打楽器だけで構成されています。この曲では彼女の声の代わりに『Dark Energy』の頃から彼女が好んでよく使う、唸りを上げるように弧を描くACIDYな電子音が打楽器に絡み付き、要所要所で吹奏楽器であるホイッスルが吹き鳴らされ、後半の展開部分ではそこにギロの音色が加わります。ちなみにHatshepsutとは古代エジプトの女王、ファラオの名前で、戦争を嫌い平和外交によってエジプトを繁栄させたと言われています。また旧約聖書の出エジプト記でモーセをナイル川で拾って育てたのは彼女だという説もあるそうです。Jlinは彼女に敬意を表したかったと。

 “Carbon 7(161)”がAvrilにインスパイアされて最初に作った曲で、比較的ゆったりとしたフロウを感じさせるトラックです。BPMは同じですが。Avrilがゆったりと踊っている時の動きにインスパイアされたのでしょう。全体的に低い音が使われていて重心が低く、低音の持続音が多用されています。下降していくベースラインはドラムンベースを想起させてくれます。

 A3”Kyanite”は「House of Flying Daggers」という映画のあるシーンにインスパイアされたということで、実際に見てみました。youtubeで検索すると出てきます。The Echo Game Sceneというやつです。チャン・ツィイーが盲目の女性役で、ずらっと円形に並ぶ太鼓に囲まれています。彼女の前に、テーブルに座っている男がいて、そこから石を投げて、当たった太鼓を音だけを頼りにそれと同じものを身につけている長いスカーフで叩くというシーンです。この荒唐無稽なシーンからしっかりと制作に繋げることが出来るジェイリンの真摯な姿勢に心を打たれました。ぜひ見てみて下さい。チャン・ツィイーの動きからこの曲にたくさん入っているカラカラ鳴るカウベルの音を想起したとのことです。

 Jlinは件のインタヴューでこのアルバムのなかからとくに好きな曲を3つ挙げています。それはB1“Holy Child”、D1“1%”、ラストトラックの“Challenge(To Be Continued)”で、そのなかでもとくに好きなのが“Holy Child”だと。なぜならこの曲はラシャドに捧げた曲だからだそうです。同時にこの曲はこれまででもっとも挑戦的なトラックであり、ベースラインがシンコペーションしまくりで、ペースもリズムも唐突に変化する、ラシャドの“I Don’t Give A Fuck”に近い世界観だと思います。ジェイリン自身の幽玄な世界へといざなうような声が、あの世とこの世を繋ぐかのように響きます。そしてこの曲ではかの“the disintegration loops”で有名なWilliam Basinskiがコラボレーターとしてクレジットされています。おそらく機材関係のサポートをしてくれたようで、この冥界的ムードの現出にも貢献しているのかも知れません。

 B2“Nyakinyua Rise”は先行12”のB面にも収録されていて、versionは同じようです。途中から野太い男性の声が合いの手を入れたり、チャーチャッチャー、チャーチャッチャーと叫びまくっていてかっこいい。リズムセクションも重心は低いけれど軽やかさも有ってコントラストが効いている。打楽器とベースラインと声だけで構成されています。

 C1“Calcination”はすごく短いのですが、RabitのレーベルHalcyon Veilから“Death Is The Goddess”をリリースし、〈Planet Mu 〉20周年のコンピでも“Ankou Celeste”でジェイリンと共演していたFawkesがふたたびその声を響かせています。彼女の声もまた浮遊感の有る霊的な雰囲気を纏っていて、折り重なる声とシンプルでゆったりとしたパーカッションによって儀式的ムードを充満させたかと思うと、あっという間に終わってしまいます。もっと長く聴いていたい曲。

 これはPlanet Mu 20周年コンピに収録されている共作曲です。


 C3“Nandi”。この曲にこれまで作ったどの曲にもないサウンドを感じ、結果的にアルバム“Black Origami”のなかでいちばん最初にできたという曲。パーカッションと声とベースだけで構成されていて、パーカッションの細かく割り振られた音の定位と、隙間を活かした構成。これほどまばらな音の配置はいままでにやったことがなく、この手法を使えばもっと深いところまで行けるとJlinは進化の糸口を掴みます。
 いま『Dark Energy』を念入りに聴き直してみると、たしかにこのアルバムほど細かく音の位置を変化させてはおらず、声や上音フレーズなどはよく左右にパンさせていますが、パーカッションは多少の変化は加えられているものの、大体中央に定位しています。恥ずかしながらChartに寸評を書いたときにはそこまで理解できていませんでした。“Infrared(Bagua)”ではこのアルバムほど複雑でも速くもありませんが、この手法の萌芽が感じられます。

 D1“1%”はHolly Herndonとの共作で、アルバムの中でも異色な音色なのはHollyのカラーが出ているのでしょう。一番エレクトリックな印象。リズムの組み方はジェイリン色が強いけれど、普段の乾いた生々しいパーカッションの音はエレクトリックな音に置き換わっている。Hollyは私と同じでとても細部にまで気を配るアーティストだとジェイリンは言っています。僕も大好き。

 D2“Never Created,Never Destroyed”。Dope Saint Judeをゲストに迎え、トラップとミュータント・フットワークを配合させた異色作。引きずるようなベースラインがかっこいい。ラスト手前に新しい試みを収録して、最後の曲“Challenge(To Be Continued)”と題されているのがなんとも頼もしい。

 D3”Challenge(To Be Continued)”。勇ましい曲で、挑戦は続くと宣言しています。一層多彩なパーカッション群が華やかに打ち鳴らされ、ホイッスルが高らかに響き、ジャケットにもなっている象までもが鳴き声をあげ、さながらカーニバルのようです。そして駆け抜けるかのように一瞬で終わってしまいます。Challengeという言葉の余韻を残して。

 シンプルな1枚の何も書かれていない紙。そこからどれだけの可能性を引き出せるか。それが折り紙というアートフォーム。このアルバムの複雑ながらシンプルな音使いで畳み掛けるように流れていくリズムは、シンプルな一枚の紙を複雑に細かく折りたたむことを、音によって表現しているかのようです。

 パーカッションのサンプルの種類は非常に多彩になり、それを緻密に使いこなし、細かく複雑に音を配置することによって、左右だけでなく奥行きまでをも感じさせる事を可能にしたジェイリン。広がりのある音の配置によって、そこに空間があるかのように感じることができます。パーカッション以外の音は厳密に選択し、無駄を削ぎ落とし、空間を残す。シンプルにすることで、逆に力強さを引き出すことに成功しています。

 この時点ですでにかなり踏み込んだ領域に到達していると思われるが、しかし彼女はどんどん次へと向かっていくでしょう。次はどんな風に進化して帰ってくるのか。それを心待ちにしながら、自分も頑張らないとと尻を叩く日々です。Challenge!!!!!

行松陽介 - ele-king

ZONE UNKNOWN List

interview with Forest Swords - ele-king

たとえ自分の音楽に長い時間をかけることになっても、ぼくはつねに「正しい」と思えてから初めてリリースすることにしている。 / 彼ら(=マッシヴ・アタック)のじっくり時間をかけて進めてゆく手法を見て、ぼくは自分で準備が整ったと感じるまで何もリリースするべきじゃないということを学んだ。


Forest Swords
Compassion

Ninja Tune / ビート

PsychedelicDubExperimental

Amazon Tower HMV iTunes

 この男は何をしているのだろう。大地に転がる岩を持ち上げた後にバランスを崩し、ひっくり返ってしまったようにも見える。あるいは上空から落下してきた隕石を全身で受け止め、必死で支えているようにも見える。それとも何か宗教の修行の最中なのだろうか? いずれにせよ彼は、通常では起こりえない状況にその身を置いている。おそらく彼は耐えている。何に? わからない。だがおそらく彼は、苦しんでいる。
 フォレスト・ソーズは、リヴァプール出身のプロデューサー、マシュー・バーンズによるプロジェクトである。彼は〈Tri Angle〉からリリースされた前作『Engravings』でウィッチハウスの隆盛の一端を担い、その後ゲーム音楽や映画音楽を手がけたりコンテンポラリー・ダンス作品のスコアを担当したりするなど、どんどんその活動の幅を広げていっている。最近ではマッシヴ・アタックとのコラボやビョークのリミックスも話題となった。そんな彼が満を持して〈Ninja Tune〉から放ったセカンド・アルバムが『Compassion』である。
 タイトルの「compassion」は「同情」という意味だが、この単語は見てのとおり「passion」という語に「com-」という接頭辞がくっつくことで成立している。「passion」とは一般的には「情熱」を意味するが、その原義は「受難、苦しみ」である。つまり「compassion」とは「ともに苦しむこと」なのである。
 ということは、アートワークで被写体となっているこの男は、自らの苦しみを誰かとわかち合おうとしているのだろうか? 『TMT』はフォレスト・ソーズのこのアルバムについて、スーザン・ソンタグの写真論『他者の苦痛へのまなざし』を引用しながら論じている。たしかに、僕たちはネットやテレビや新聞に掲載される写真を介して、遠くの戦場の惨禍を想像することができる。僕たちは「安全な」場所でリラックスして、いつもどおりの日常を送りながら他者の苦しみを眺めることができる。そして僕たちがその行為の暴力性を意識することはめったにない。では『Compassion』のこのアートワークは、そんな僕たちの残忍性を非難しているのだろうか? しかし石の下敷きになっているこの男の表情は両義的だ。不思議なことにこの男は、自らが置かれた状況を楽しんでいるようにも見えるのである。だからこのアートワークはおそらく、僕たちのまなざしを糾弾しようとしているのではなくて、もっと別の何かを伝えようとしているんだと思う。
 この危機的であるはずの光景を中和しているのが、薄く差し入れられたブルーとオレンジの彩りだ。それらの差し色によってモノクロの原画は独特のセピア感を帯同させられているが、この繊細な色彩感覚はフォレスト・ソーズのサウンドにもよく表れ出ている。
 映画のサウンドトラックのようなホーン、打ち込まれるパーカッション、むせび泣くコード、もの悲しげなメロディ、ところどころ顔を出す日本風のメロディ、何かを主張するエディットされた音声。それらのサウンドの見事な調和が、ダビーでサイケデリックな『Compassion』の音響世界に幽玄なムードをもたらしている。ダークではあるが、悲愴感はない。その絶妙な均衡感覚こそがこのアルバムの醍醐味だろう。
 そもそも、苦しみ(passion)を共有する(com-)ことなど不可能である。そのことを踏まえた上で『Compassion』は、その事実を悲観的に捉えるのではなく、ポジティヴに呈示しようとしているのではないか。バーンズ自身は以下のインタヴューで「人を迎え入れるようなアルバムを作りたかった」と発言しているが、フォレスト・ソーズの『Compassion』は、「ともに苦しむこと」の不可能性を引き受けた上で、それでもなお他者の苦しみと向き合おうとする、そういうアルバムなのだと思う。

「なんだっていい。とにかくほれぼれするほどの傑作を作りなさい」とその教師はいつも言っていた。彼は数年前に亡くなってしまったが、ぼくが作るものはすべて彼に捧げている。

今回の新作のアートワークはおもしろいですね。うっすらと入っているブルーやオレンジの色合いがとても綺麗ですが、写されているのはなんとも奇妙な光景です。彼は何をしているところなのでしょうか?

マシュー・バーンズ(Matthew Barnes、以下MB):このイメージがアルバムのサウンドにぴったり合っているように思ったんだ。この写真には、本当に美しい何かがある――もともとは白黒だったんだけど、上から色を重ねてみた。写っている男の表情がすごく気に入ってるよ。意味はわからないけれど。何かを瞑想しているようなところがあって、楽しそうにも見えるけれど、その印象は、男が支えている巨大な石があることで相殺されてる。あるいは、彼はこの石に押し潰されたんだろうか? ともかく、これは本当に多義的で目を惹く画像で、アルバムの音楽に込められた、たくさんの感情や音に本当にうまくフィットしているように思えた。

日本には「石の上にも三年」という諺があって、「冷たい石でもその上に3年も座り続ければ温かくなる」、そこから転じて「辛抱すればいつかは成功する、うまくいく」ということを意味するのですが、このアートワークを見て「石の“下”にも三年」というフレーズを思い浮かべてしまいました。それは、ただ座っているよりもずっとハードな状況です。あなたはご自身を忍耐強い、我慢強いと思いますか?

MB:素晴らしい諺だね。ぼくはかなり我慢強いと思う。考えてみれば、完璧に仕上げられたという手応えがないままで、音楽を発表したことは一度もない。他の人なら、かなりフラストレイションが溜まるだろうね――いまでは多くのアーティストが、次から次へと作品を世に出しているから――でも、そういうやり方では、作品につぎ込む品質や労力が減少するということになりかねない。たとえ自分の音楽に長い時間をかけることになっても、ぼくはつねに「正しい」と思えてから初めてリリースすることにしている。質の高い基準を持つことは、いいことだと思っている。

EP「Fjree Feather」や「Dagger Paths」、前作『Engravings』などでは、アートワークやサウンドに日本的な要素が盛り込まれていました。今作でもところどころ和風のメロディが顔を出しています。日本の何があなたをインスパイアしているのでしょうか?

MB:西洋の人間の多くが、日本のより進歩的な側面を敬愛している。その技術や食べ物、芸術といったものをね。ぼくに関して言えば、より古来の日本文化にずっと興味を持っていた――物語や歴史、環境といったものだ――そしてそこには伝統音楽や伝統楽器も含まれている。だから、日本の楽器やメロディを思わせる音が聞こえるのがわかると思う。ぜひいつか日本に行ってレコーディングをしたいし、しばらく時間を過ごしてみたいね。

ちなみに『Engravings』以前の作品のアートワークでは、みな同じ構図で女性が映し出されていました。それにはどのような意図があったのでしょう?

MB:昔の作品、それに『Engravings』では、ヴォーカルの多くが女性だったんだ。ジャケットに女性を使うことで、きっと無意識のうちに、そのことを反映させようとしたんだと思う。今回のアルバムでは男性の声がもっと多い。というより、聞こえてくる音では、性別というものがいくぶん曖昧になっているかもしれない。だからもしかしたら、ジャケットに男性の画像を選んだのかもしれないね。たったいまきみが指摘するまで、まったく気づいていなかったよ! いままで手掛けたアルバムのジャケットの中では、たぶんこれがいちばん気に入ってるし、おもしろいくらい音楽とも調和していると感じている。

前作『Engravings』は〈Tri Angle〉からのリリースでしたが、今回のアルバムは〈Ninja Tune〉からのリリースです。どのような経緯で〈Ninja Tune〉からリリースすることになったのですか?

MB:〈Tri Angle〉とはとてもいい関係を築いていたし、『Engravings』はレーベルに完全にフィットしていたと思う。だけど今作は、あのレーベルの色とは合わないように感じていた――今回のアルバムは前作よりずっと開放的で、感情豊かだ。前作はもっと暗くて、閉鎖的というか偏狭だったから。〈Ninja Tune〉としばらく話をしていたんだけど、彼らはデモをとても気に入って、アルバムの目指す方向性を理解していたし、すごく前向きに考えてくれた。だから自然にはまったという感じがした。どのレーベルと仕事をしてリリースするかということは、つねに柔軟に考えるようにしている。それぞれのアルバムにもっとふさわしいレーベルがあるのなら、別のレーベルからリリースすることに抵抗はない。いろんなものごとを切り替えられるようにして、契約に縛られることがないようにしたいんだ。すごく解放感があるよ。

今回の新作『Compassion』のテーマやコンセプトはどのようなものなのでしょうか?

MB:『Engravings』よりも威圧的ではないレコードを作りたいと思っていた。前作はとても暗いアルバムだったから。さまざまな企画でさまざまなアーティストたちとコラボレイトしてきたことで、他の人に心を開くことや、異なる視点や環境を体験することの価値に気づかされた。当時は(いまもそうだけど)世界の大部分がシャッターを下ろして、利己的になり、他者に心を閉ざそうとしていた。だからぼくは、『Engravings』の激しさを保ちながらも、もっと正直で人を迎え入れるようなアルバムを作りたかった。

今回のアルバムを制作するにあたって、音作りの面でもっとも注意を払った点は何ですか?

MB:それぞれの曲に任せて進むべき方向を決めていったらどうなるだろうということに、すごく興味を持ったんだ。ぼくがメロディやビートを明確な構成に収めるよりも、音楽自体にその道筋を決めさせようとした。そうしたことで、いくつかの楽曲にはかなり珍しい構成が存在することになった。

あなたの音楽にはダブやサイケデリック、R&Bなどの要素があります。これまでウィッチハウスという言葉と関連付けられたこともあるかと思います。しかし、昨年リリースされたEP「Shrine」はコンテンポラリー・ダンス作品のスコアで、人の声や息を前面に押し出した実験的な内容でした。他にもあなたは、ビデオ・ゲームや映画の音楽も手掛けています。あなたの活動をひとつのジャンルにカテゴライズするのはとても難しいですが、ご自身ではそれらの多岐にわたる創作活動には一貫したもの、共通したものがあるとお考えですか?

MB:うん、自分のやっていることはすべて一貫していると思っている。もし、これまで手掛けたすべての作品を続けて聴いてもらえば、その全部に共通している流れに気づいてもらえると思う。ぼくが惹かれる特定の響きやメロディや音色が存在するんだ。そしてアートワークについても、同様に一貫していると思っている。ぼくの持つある種の美意識は、人びとにも受け入れてもらえるだろうと考えている。問題は、音楽ファンと音楽業界の双方が、いろんなものをジャンルの枠に当てはめて理解しようとするのが好きだということだ――それはぼく自身も同じだけどね――そして残念ながら、ぼくの音楽はひとつのジャンルにきちんと収まるようなものじゃない。みんなはそういうことで苦労をしている。最近では、ジャンルの境界がどんどんぼんやりとしてきているのに。ぼくは自分のことをエレクトロニックのミュージシャンだと捉えているけれど、自分が用いる響きや影響力といったものは、たくさんの異なる場所や時間に由来しているんだ。

[[SplitPage]]

リヴァプールは旅行客にもっともフレンドリーな街のひとつとしてつねに名前があげられているんだ。みんな会話を交わすのが大好きだし、それはアーティスティックな眼で見れば、コラボレイト好きってことにもなる。

最初に音楽に興味を持ったきっかけは何でしたか? また、そこからいまのような音楽を作るようになった経緯を教えてください。現在のあなたを形作ったもの、もっとも影響を受けたものは何だったのでしょう?

MB:リヴァプールのアートスクールでグラフィック・デザインを勉強していたときに、ジョンという教師がいたんだけど、彼はびっくりするような曲をたくさん聞かせてくれて、何時間もかけて、ものを作り出す方法やその理由を教えてくれた。すばらしい芸術作品を世の中に送り出すことの重要性についてもだ。「なんだっていい。とにかくほれぼれするほどの傑作を作りなさい」とその教師はいつも言っていた。彼は数年前に亡くなってしまったが、ぼくが作るものはすべて彼に捧げている。それは、彼がぼくと話すことに時間を費やしてくれたり、いろんな生き方があることを考えさせてくれたりしたおかげでいまのぼくがあるからだ。
 音楽を始めたときのことだけど、ぼくは数年前にリストラされたんだ。そのときにノートパソコンのミュージック・ソフトで音楽を6ヶ月ほど勉強した。それででき上がったのがEP「Dagger Paths」だ。すべてオーガニックにゆっくりと時間をかけて生まれたものだ。適当に音を鳴らしたり、メロディを奏でたり、リズムを打ったりしていただけで、音楽をきちんと演奏する気はなかった。それが可能だとは思わなかったし、そんな野心もなかった。だから、ぼくのやっていたことに人が関心を示し始めてくれたのは嬉しい驚きだったよ。それで、徐々にフルタイムで音楽をやるようになったんだ。とても幸運だと思っている。

リヴァプールのご出身とのことですが、当地はビートルズを筆頭に、多くのアーティストを生み出してきた都市です。リヴァプールが、ロンドンやマンチェスターなどの他の都市と異なっているのはどういうところでしょうか?

MB:リヴァプールはロンドンやマンチェスターに比べると小さな都市なんだ。80年代や90年代には多くの経済問題や社会問題があった。でも、この10年で街は自ら再生を果たした。いまは素晴らしい音楽や芸術や文化があって、観光業も栄えている。リヴァプールと他の都市の違いだけど、リヴァプールは、ぼくが行ったことのある英国の他のどの都市よりも、ずっと親しみやすくて開放的だね。リヴァプールは旅行客にもっともフレンドリーな街のひとつとしてつねに名前があげられているんだ。みんな会話を交わすのが大好きだし、それはアーティスティックな眼で見れば、コラボレイト好きってことにもなる。リヴァプールくらいの町の大きさだと、良い演奏会場やバーを安く開店できるチャンスもあるから、アーティストやミュージシャンが手軽にライヴをできるし、こういうエリアの出身だってことを誇らしく思うよ。

あなたはショート・フィルム『La fête est finie』のためのスコアでマッシヴ・アタック(Massive Attack)とコラボレイトしています。かれらはあなたにとってどのような存在ですか?

MB:10代で初めて『Mezzanine』を聴いて以来、マッシヴ・アタックのファンなんだ。エレクトロニック・ミュージックに対してまったく違う見方をさせられた作品だった。彼らは、楽器の生の音やサンプリングやヴォーカルといった異なった要素をおもしろいやり方で取り入れた。音楽を始めたときに、自分の作品を作る上で彼らの方法が大きな刺戟になったよ。だからマッシヴ・アタックと手を組むことは、ものすごい特権だし、光栄なことだった。彼らのじっくり時間をかけて進めてゆく手法を見て、ぼくは自分で準備が整ったと感じるまで何もリリースするべきじゃないということを学んだ。彼らのいくつかの新曲にビートを書いたんだけど、望んでくれるならまたぜひ一緒に仕事をしたいね。

ビョークはいつも弦楽器、金管楽器といった伝統的な楽器とエレクトロニック・ビートを、作品のバランスを保ちながらおもしろい形で調和させている。それが、今回のアルバムでぼくがやろうとしたことだ


Forest Swords
Compassion

Ninja Tune / ビート

PsychedelicDubExperimental

Amazon Tower HMV iTunes

あなたの音楽のダークな部分には、トリッキー(Tricky)やポーティスヘッド(Portishead)の音楽に通じるものがあると感じました。90年代のトリップホップのムーヴメントからは影響を受けているのでしょうか?

MB:影響を受けているよ。ぼくは、この手の曲を聴くのが大好きだった。90年代に10代前半だったから、こういった音楽の影響力が大きい。ぼくの作るビート・プログラミングを聴くとトリップホップの影響がはっきりとわかると思う。90年代に流通していた多くのエレクトロニック・ミュージックと比べて、トリップホップのどっぷり浸れる感じが気に入っていた。本当にはまれる世界だったね。幾重にも重ねられた思慮深いサウンドが耳にも美しく響いた。圧倒されたよ。

あなたは最近、ビョーク(Björk)とアノーニ(Anohni)のリミックスを発表しています。かれらの音楽のどういったところに惹かれますか?

MB:10代でビョークの音楽を知ってから、ずっと彼女のファンなんだ。ラッキーなことに何回か会えた。本当にすてきな女性だ。彼女の作品はぼくの人生に多大な影響を与えてきたし、作曲家、アレンジャー、プロデューサーとしての彼女もとても尊敬している。『Compassion』には彼女の影響が色濃くあらわれているよ。というのは、ビョークはいつも弦楽器、金管楽器といった伝統的な楽器とエレクトロニック・ビートを、作品のバランスを保ちながらおもしろい形で調和させている。それが、今回のアルバムでぼくがやろうとしたことだからだ。

それらのリミックスでは、原曲がまったく別のものへと生まれ変わっています。特にビョークのそれは45分もの長大な作品に仕上がっていますが、リミックスという作業をする際に心がけていることがあれば教えてください。

MB:曲をリミックスしたいときには、いつもゼロから作るようにしている。だから新しい曲のような気がするんだ。オリジナル曲からはわずかな要素だけを使用しているけど、もとのアーティストがわかるように努力はしている。でもバランスが難しいね。だから、リミックスの完成までとても時間がかかるんだ。けど、仕上がりにはいつも満足しているよ。その曲に自分自身のアイデンティティを加えているわけだから。まるでコラボレイションのように感じる。ビョークの曲のオリジナルは短い繰り返しで終わるけど、その部分を聴くのがとても好きだったから、さらに40分間続くようにしたんだ。そのとき、ウィリアム・バシンスキー(William Basinski)をずいぶん聴いていたから影響を受けたのかもしれない。

今後リミックスしてみたいアーティストや曲はありますか?

MB:ケイト・ブッシュ(Kate Bush)。彼女の曲作りも手がけてみたい。とても才能がある人だからぼくみたいな人間を必要としないだろうけど。

グライムは1970年代のパンク・ミュージック以降に英国で生まれたもっとも重要なジャンルだ。

いまUKではスケプタ(Skepta)やストームジー(Stormzy)などが勢いに乗っていますが、グライムのシーンについてはどのように見ていますか?

MB:気に入っているよ。グライムは1970年代のパンク・ミュージック以降に英国で生まれたもっとも重要なジャンルだ。実際、グライムはある意味とてもパンクで、自分たちの力で活動しているアーティストもいれば、クリエイティヴな面で自分たちにプラスになるようにメジャー・レーベルを利用しているアーティストもいる。5年前まではグライムにメインストリームのリスナーはいなかったけど、スケプタやストームジーのようなアーティストたちが、どうやったらみんながグライムを手にとってくれるか、その方法を身につけたんだ。ルーツに忠実なままでね。彼らはいまでは大きな会場で演奏しているし、ラジオでも曲が流れている。賞もとっていて、大変な驚きだよ。他のグライム・アーティストや、女性のアーティストへの注目も続くよう、これが一時的なものでないことを祈っている。

あなたはレーベル〈Dense Truth〉を主宰されています。現時点ではまだご自身の作品しかリリースされていないようですが、今後、他のアーティストの作品もリリースする予定はあるのでしょうか?

MB:Zurkas Tepla という、モスクワ出身のエレクトロニック・ミュージシャン&アーティストのEPをリリースしたばかりだ。銀行強盗を題材にしたコンセプト・レコードで、すごくワイルドだよ。他にも、〈Dense Truth〉では、今年から来年にかけて進行中のものがたくさんある。ぼくは映画やダンスのスコアといったプロジェクトを手がけているから、通常のアルバムやEPよりも挑戦的な作品をリリースするのに、〈Dense Truth〉のような販売経路があるのはとても有益なんだ。でも単なるレコード・レーベルじゃなくて、クリエイティヴ・スタジオでもある。ぼくはいろんなプロジェクト(例えば、ヴィデオなど)で、才能あふれる多くのコラボレイターたちと手を組んでいて、そういう意味でも、いわゆるレーベル以上のものである方がしっくりくる。将来的には、コンテンポラリー・ダンスや映画のプロジェクト、出版など、素晴らしいコラボレイターたちと手を組んで、やり甲斐があると思えることならなんにでも門戸を開いていくつもりだ。

昨今は Spotify や Apple Music あるいは YouTube で音楽を聴くというスタイルが主流になっていると思いますが、そのことについてはどうお考えですか?

MB:音楽ファンのひとりとして、新しいものを発見できるそういったツールは大好きだ。最近ぼくはジャズやアンビエントをよく聴くようになったけど、いままでその辺のジャンルはあまり知らなかった。でも Spotify や YouTube のおかげでずいぶんわかるようになったし、おかげで素晴らしいレコードをたくさん聴くことができた。だからある意味、同じような方法で人びとにぼくの音楽も知ってもらえたらと思う。とはいえ、アーティスト本人が得られるお金は本当に少なくて、その状況がすぐに変わるとも思えない。規模の小さいアーティストたちをサポートする最善の方法は、物質的にレコードやTシャツを買ったり、チケットを購入してライヴに行ったりすることだよ。

そろそろ昨年の国民投票から1年が経ちますが、ブレグジットという結果は今後アーティストたちの活動にどのような影響を及ぼすとお考えですか?

MB:ひどく厄介なことになるだろう。現実的な問題としては、英国のアーティストがヨーロッパの他の国でパフォーマンスをするのにヴィザが必要になってしまう。いま現在は国境を越えるのにヴィザは要らない。スペインだろうがフランスだろうが、飛行機に乗って演奏しにいくのにいまはなんの書類も要らないのに、それがまるきり変わってしまうんだ。それにレコード・レーベルとしては、製造コストがいまよりも高くなる。レコード盤に2ポンド上乗せしたら、音楽ファンたちはもう買わなくなってしまうかもしれない。交渉過程も長くなりそうだ。どちらの国にとっても、そしてぼくらの芸術や文化にとっても、悪い結果にならなければいいと思うよ。

William Basinski - ele-king

 「世界」が終わりつつある。より正確には「20世紀的な世界」が終わりつつある、というべきか。われわれにとって所与の概念・世界観・倫理観・思考の大枠となっていた時代・世紀が、なし崩し的に消失していく。歴史の継続性が軽視され、失われていく。それは全体主義の萌芽でもある。波打ち際の砂粒のように消え去っていく20世紀(後半?)の痕跡。後世の歴史家たちも「21世紀の真の始まりは2017年だった」を記すようになるのではないか。新・全体主義の誕生にむけて?
 このような時代において芸術は、「20世紀的な概念で形成された人間」の「終わり」を強く意識することになるだろう。死。消失。ゆえにこの時代において、音楽は20世紀(後半)へのレクイエムとなる。

 テープ・ループ・レクイエム。ウィリアム・バジンスキーの新譜『ア・シャドウ・イン・タイム』を聴き終えたとき、そのような言葉が脳裏に浮かんだ。本アルバムは、昨年(2016年)1月に亡くなったデヴィッド・ボウイへの追悼でもあるという。じじつ1曲め“フォー・デヴィッド・ロバート・ジョーンズ”はボウイの本名からつけられている。

 音楽的には、あのバジンスキーのサウンドである。霞み、傷つけられた、しかし柔らかい音の連鎖、生成、変化。記憶が崩壊していくようなムード、アンビエンス。本作の雰囲気は、どことなく名作『ザ・ディスインテグレーション・ループス』を思わせる。『ザ・ディスインテグレーション・ループス』は映像作品でもあり、2001年9月11日、倒壊していくワールド・トレード・センターを映したものであった。そこに乗るバジンスキーによる霞んだ色彩のテープ・ループ・アンビエント。その時が止まるような美しさ。だが、その美には、20世紀の死と終焉が刻印されているのだ。

 本作『ア・シャドウ・イン・タイム』もまた、そのような終末/崩壊の感覚を継承している。むろん違う点もある。ボウイへ追悼作であることからも分かるように、本作は「世界の終わり」と「個人の死」が、不思議な説得力で結びついている。
そう、昨年から続く20世紀偉人的音楽家たちの死は、20世紀の終わりを強く意識させることになった。20世紀の終わり。21世紀のはじまり。それは歴史の継続性の終焉でもある。それがわれわれに強い不安(と高揚感?)をもたらしている。世界は、どうも良くなってはいない。20世紀を変革した偉人たちは、相次いで世を去った。となれば私たちが今、生きている現在=この世界は、どうやら、あの「20世紀」ではないらしい。この根拠が剥奪された感覚は、根拠を希求し、その結果、誤った高揚感を求めるだろう。

 本作は、ボウイという20世紀後半のイコンの死=消失の向こうから鳴らす20世紀へのレクイエム/アンビエントである。その音は死の不穏さに彩られているが、同時に死の華のように儚く、最後の生の発露のように美しい。終わりはいつも甘美であり、同時に不穏な色彩に彩られているものだ。そう、ウィリアム・バジンスキーはアンビエントの「黒い星」を作出したのだ。


HIRAMATSU TOSHIYUKI - ele-king

 『CHASM』はグリッチを基調にしているが、本作のノイズはかならずしも制御不能なエラーを志向するのではなく、マッシヴなビートやアンビエントな電子音、サブリミナルな効果を生むヴォイス・サンプルといったいくつかのエレメントのなかにそれを配置し、多面的に構成(コンポーズ)することで、HIRAMATSU TOSHIYUKIは古典的なIDMの方法論(というより、IDMそのもの)のアップデイトをはかるかのようである。ビートの波間をノイズがただよう点描的な"Chasm"、グリッチ・アンビエントの"Old Soil"とそれを反転させたかのような不定形のビートと音響による"Mass"、つづく"N_V_H"のコラージュ感覚、さらにビートメイカーとしての非凡さをうかがわせる "Let's Dance"、そのベースにはヒップホップからなにから、同時代のエレクトロニック・ミュージックを血肉化した身体が見え隠れするので、私は次作はもっと長尺の作品にじっくり浸りたいと思った。

オブスキュアな音像、 卓越した展開力で聴かせる上質なエレクトロニカ。

HIRAMATSU TOSHIYUKIは滋賀出身、京都在住のアーティスト。関西を拠点としており、音響だけでなく、映像を含めたライブやVJも行う。また滋賀の山中や、琵琶湖に浮かぶ離島にて音楽イベントを共同開催するなど、地域に根差した活動も展開している。楽曲制作の軸にはMax/MSPによるプログラミングがあり、パッチ式のシンセNord Modularを外部音源で使用している。 本アルバムはCDフォーマットではキャリア初リリースとなる。光る霧に包まれる中ゆっくりと歩いていくような、淡い音像を持つタイトル曲"CHASM"、William Basinskiの『The Disintegration Loops』を思わせるシンセの不安定なループとグリッジ・ノイズの重なりが、オブスキュアな空間性を作り出す"Old soil"と、冒頭アンビエント・マナーの2曲が続く。
リズムとノイズの境界線を破壊するカオティックな"Mass"以降は、一転してダンスフロア仕様のエレクトロニカへシフト。デジタル・ノイズとアンビエントを基軸としながら、巧みに変転する展開力が素晴らしい。最後にテープ・コラージュ的なループ音とダビーなエフェクトが幻想的な"Walk"でアルバムが終わる余韻も心地良い。 アートワークは関西を中心に活躍するフォトグラファーの久田元太が手掛けた。
(中本真生/UNGLOBAL STUDIO KYOTO)

Duenn - ele-king

BGM SELECT 10


1
teebs-Ardour
ローランドSP-404一台でサイケでドリーミーな世界観を提示してくれるまさにインスタント禅。人呼んで黒いレイハラカミ。

2
STELLAR OM SOURCE - TRILOGY SELECT
美人なのにド変態な音を奏でるオランダの女性シンセ奏者。どこが好きなのか説明しにくいが何故か惹かれるものがある不思議な作品。

3
IKEBANA-From Dusk Till Dusk
作品全体に漂う喪失感にも似たアンビエント感がせつない。ジャケットもメンバー自ら一枚一枚シルクスクリーンでハンドプリント。昨年弊社レーベルの定期イベントに出演して頂きました。

4
Expressway Yo-Yo Dieting - Bubblethug
残像の美学。球種で例えたら間違いなくチェンジアップ。

5
ken ikeda-kosame
木とゴムで作ったハンドメイド感溢れる創作楽器を駆使して日常音を奏でてるにも関わらず聴いてると未知な世界と交信してるような錯覚を覚えます。

6
THE XX-THE XX
漢字一文字で例えると黒。一生ミニマリストを貫いて欲しいです。

7
rim-friends in Astoria
myspaceで知り合ったフランスのサウンドアーティスト。一緒にファイルを投げ合って曲を作ろうと意気投合して早5年。まだ1曲も出来てません。このタイム感が心地良くも有るんですがそろそろ何か作りたいです。

8
arcars-the surface of muclique
大分在住のエガミヤスシが福岡のテクノレーベルサイジジーレコードより1996年にリリースのアンビエント作品。自分にとって教科書のような存在。これがあれば何も要らないというぐらい好きです。一生聴きます。

9
WILLIAM BASINSKI / DISINTEGRATION LOOPS
無音じゃ少し物足りなく、でも「音楽」を聴きたくない時に極小音量で聴いてます。良い事も悪い事も全てを包み込んで肯定してくれるイメージ。

10
i8u/Surface tension
カナダのフィールドレコーディング作家。ここではないどこかへ連れて行ってくれます。ライブが見たいです。
1