「OTO」と一致するもの

Rick Wilhite & Theo Parrish JapanTour - ele-king

 デトロイトのソウルフルなハウス・ミュージックのファンには待ちきれない週末をふたつ紹介しよう。待望のアルバム『アナログ・アクアリウム』を発表したリック・ウィルハイトが1月末に来日する。そして、昨年の暮れに地味にリリースされたアルバム『スケッチーズ』(IGカルチャーやラリー・マイゼルもフィーチャーされたジャズ・アルバム)がじわじわと話題のセオ・パリッシュが2月のなかばに来日。どちらもブラック・ミュージック・ラヴァーズにとってはトーナメントのベスト4並みの重要なパーティ、翌日のことをいっさいに考えずに飲んで、踊ろう。

Rick Wilhite "ANALOG AQUARIUM" Release Tour

■2011.01.29(SAT) 東京 南青山 @Trigram
MAIN ROOM:
Rick Wilhite, Billion Dollar Boys Club (4 the love), Kenta (Time & Space)
SIDE ROOM:
Ken Hidaka (hangouter/Wax Poetics Japan), musiqconcierge (dB UKi/casablanca), Dave Clark III (UCC)
open : 23:00
Discount : 2500yen (contact : info@4thelove.net for discount)
Door : 3000yen
INFO : 4 the love https://www.4thelove.net
Trigram https://www.trigram.jp TEL 03-3479-2530

■2011.01.30(SUN) 横浜 @ Jack Cafe Bassment
- Freedom School presents THE DANCER vol.6 -
Special Guest DJ: Rick Wilhite
Special Guest Dancers: Stax Groove and Broken Sport
DJ: Downwell 79's(14catherine/Jazzy Sport Brooklyn), Kentaro Kojima(Freedom School), Keisuke Matsuoka
Live Painting: Tadaomi Shibuya
Food: Donuts and Hot Dog
Sake: Dareyame
Flower Decoration: Natsu
open 14:00 - close 21:00 再入場、出入り自由です。
Door 2000yen
INFO: Freedom School info@freedom-school.net
https://www.freedom-school.net/
045-664-0822(JACK CAFE BASSMENT) https://www.jcbassment.com/

RICK WILHITE (The Godson/3Chairs/From Detroit)
デトロイト・ハウス最強のユニット3 Chairs(スリーチェアーズ)。メンバーのセオ・パリッシュ、ムーディーマンと並ぶ第3の男が、Rick Wilhite(リック・ウィルハイト)だ。ムーディーマンが運営するKDJレーベルから96年にSoul Edgeでデビュー。デトロイトのレコードショップ『Vibes Rare & New Music』のオーナーを勤める傍ら、ソロ名義"Godson"としてもシカゴのStill Musicからシングルをリリース。昨年末にオランダのRUSHHOURレーベルからリリースしたショップと同名のコンピレーションはカルトヒットとなった。ファーストアルバム『ANALOG AQUARIUM』を2月9日にリリース予定。プログラミングソフトを用いずキーボードやハンドクラップをあえて「アナログ」な手法で取り込み、ディスコ、ジャズやアフロなど様々なサウンド・マテリアルを呪術的なビートに重ね合わせることによって「濃厚な黒さ」を感じさせる作品となっている。


Theo Parrish "SKETCHES" Release Tour

■2.18(FRI) Kyoto @club Metro
STILL ECHO meets Theo Parrish

Special Guest DJ: Theo Parrish
LIVE: daichi(based on kyoto)
DJ: KAZUMA(MO'WAVE), DJ PODD
LIGHTING: YAMACHANG(POWWOW, □)
FOOD: THE GREEN
open/start 22:00
Advanced 2500yen
Door 3000yen
Advanced Ticket at チケットぴあ (0570-02-9999 / 0570-02-9966 P-code:128-554)
ローソンチケット(ローソンLoppi L-code 52254)にて1/8より発売
JAPONICA music store(075-211-8580) newtone Records(06-6281-0403) Transit Records Kyoto(075-241-3077)
INFO: 075-752-4765(Club METRO) https://www.metro.ne.jp

■2.19(SAT) Gunma Takasaki @WOAL
DJ: Theo Parrish, K, ara
open 22:00
With Flyer 4000yen with 1Drink
Door 4500yen with 1Drink
INFO: 027-326-6999(WOAL) https://members3.jcom.home.ne.jp/woal
access: 湘南新宿ライン高崎駅(新宿/渋谷駅から乗り換えなし)

■2.20(SUN) Niigata @Under Water Bar Praha
DJ: Theo Parrish, 中沢将紫, HONDA(VINYLITE) and more
open 22:00
Advanced 3000yen with 1Drink
Door 3500yen with 1Drink
INFO: 025-249-2121(praha) https://www.peacemaker-inc.com/praha

■2.25(FRI) Hiroshima @SACRED SPIRITS
DISCO UNION "ROUTINE 9th ANNIVERSARY PARTY"
Special Guest DJ: Theo Parrish
Guest DJ: KZA(Force Of Nature)
DJ: DJ ABU
open 22:00
Advanced 4000yen with 1Drink
Door 4500yen with 1Drink
INFO: 082-544-4427 info@routine-net.com (ROUTINE) 
082-240-0505(SACRED SPIRITS)

■2.26(SAT) Tokyo @AIR
DJ: Theo Parrish(open-last set)
open 22:00
With Flyer 3000yen
AIR Member 3000yen
Door 3500yen
INFO: 03-5784-3386 (AIR) https://www.air-tokyo.com
Total Tour Info AHB Production 06-6212-2587 https://www.ahbproduction.com

 2010年、インディは本当にチルウェイヴの年だったのだろうか? ......いや、きっとそうなのだろう。チルウェイヴに属すると言われる若いアーティストは単純に数の問題で言っても見過ごせないほど増えているし、作品として議論に上るものも多かった年だった。だが、それでも「2010年はチルウェイヴの年だった」と結論付けられることに抵抗があるのはどうしてだろう。26歳のインディ・リスナーである自分が、2010年トロ・イ・モワやスモール・ブラックのアルバムに心底興奮しなかったのはどうしてだろう......。現実逃避的な音楽はいつでも必要だし、ますます若者を憂鬱や孤独が襲う2010年においてはなおさらだろう。しかしそんななかにあってこそ、僕がチルウェイヴの心地良い逃避にどうしても逆らいたいと思ってしまうのは、2010年はそれでも現実から目を逸らさなかった音楽に心を動かされたからだ。チルウェイヴ的な動きは今年出るパンダ・ベアの新作が決着をつけるだろうと予想するが、ここではそれとは別のものについて書いてみようと思う。2010年にele-kingでレヴューで紹介されず、かつ欧米で高く評価された作品がいくつかあって、それはチルウェイヴ的な「子どもたちの音楽」に対比させて言うならば「大人たちの音楽」だ。


Arcade Fire
The Suburbs

ユニバーサル

Amazon iTunes

 北米のインディ・ロックにとって、2010年のハイライトになった作品がザ・ナショナルの『ハイ・ヴァイオレット』とアーケイド・ファイアの『ザ・サバーブス』だ。優れた文学性とリベラルな活動が高く評価されるこのふたつのバンドが同じように経験したのは、オバマの「チェンジ」に少なからず加担したことであった。アーケイド・ファイアの2007年の前作『ネオン・バイブル』は、ブッシュ政権末期に響いた「アメリカには住みたくない」という告白に象徴されるように当時切実に時代とシンクロしていた。そして"ノー・カーズ・ゴー"では「私たちは車が行かない場所を知って」いて、その場所に「行こう!」とエクソダスを宣言し、それを当時の希望としたのである。だが政権交代とオバマへのバックラッシュを経た2010年、アーケイド・ファイアは......ウィン・バトラーが育ったアメリカの郊外に立ち返る。はじめ、それはあまりに感傷的な所作に見えた。つまりそれは自分たちがやったことに対する失意や後悔が苦く滲み出たもので、ある意味では非常にアメリカ的な凡庸なテーマであるように思えたからだ。だがウィン・バトラーはそのような典型的な物語を避けることはせず、スプリングスティーンの道程を思い返しつつ、もう一度アメリカの内部から生まれる物語について見返してみたのだ。『ネオン・バイブル』ほど重くはないが後悔や罪悪感が顔を覗かせ、いくらかのノスタルジックな感傷も呼び覚ましつつ、そしてアルバムは「もし時間を取り戻せたら/もういちど僕は時間を無駄にするだろう」という決意に辿り着いていく。つまり、アーケイド・ファイアは自らが宣言したエクソダスの後始末について決着をつけたのだった。決して苦難は終わらないが、それでも何度でもやり直すことは出来る――というシンプルなメッセージが『ザ・サバーブス』には刻まれていた。


Arcade Fire



The National
High Violet

4AD / Hostess

Amazon iTunes

 ザ・ナショナルはいっぽうで、エクソダスにすら参加できずにアメリカの内部に留まり続けたごく普通の人びとの物語を歌にした。自分のことを書けば、2010年にもっとも感動したのが彼らの『ハイ・ヴァイオレット』だ。前作『ボクサー』に収録されていた"フェイク・エンパイア"がオバマのキャンペーン・ソングに大抜擢される経験をした彼らだが、しかしこの新作ではある種の特権的な立場から言葉を紡ごうとしていない。バンドにとっての新たな代表曲である躍動感のあるロック・ナンバー"ブラッドバズ・オハイオ"は、保守的な故郷を嫌ってそこから離れた男が、それでも故郷への想いを捨てきれない心情を歌った1曲である。「俺は結婚しなかったけれど、オハイオは俺のことを覚えていない」
 「結婚しなかった」というのは結局リベラルになりきれなかったことのメタファーだろう。「故郷のことを考えるとき、俺は愛について考えなかった」と嘯きながら、自分の本当の生きる場所を見つけられずに苦しむ男の物語を浮かび上がらせる......例えばスフィアン・スティーヴンスの『イリノイ』と並べると見えてくるものがある作品だと言えるだろう。「ニューヨークで生きて死ぬなんて、俺には何の意味もない」と吐露する"レモンワールド"では「とにかくいまはもう、どこかに車を走らせるには疲れすぎているんだ」と言うように、アルバムでは歌の主人公たちはとにかく疲弊しきっていて身動きが取れないというイメージが繰り返される。もっと良く、正しく、幸福に生きようと願いながら、どうしてもそうすることが叶わない普通の人びとの歌を歌うことを、ザ・ナショナルは自らの使命にしたのだ。それは、「チェンジ」後も生きづらいことは変わらない現代のアメリカの歌だ。
 そして『ハイ・ヴァイオレット』の素晴らしさとは、そんないまの現実の苦難を引き受けながら、それをセクシーなポップ・ソングとして昇華させてしまった点に尽きる。バンドが自らの音楽を「ダッド・ロック」と冗談めかして言うようにある種の古風なダンディズムに支えられてはいるが、マット・バーニンガーは自分のバリトン・ヴォイスの色気により自覚的になり、そしてバンドの音は何ひとつ奇を衒ったことをしなくともタフにダイナミックに響き渡る。それはこれらの歌の底には、それでも潰えない尊厳があるという宣言のように聞こえる。
 ラストのゴスペル・ソング"ヴァンダーライル・クライベイビー・ギークス"では「僕たちの最良の部分をすべて捧げて/愛のために自らを犠牲にするんだ」と、新たな場所に足を踏み出すことも示唆される。人びとに必要なのは劇的な「チェンジ」ではなくて、着実に地面を踏みしめる足取りであると......つまりザ・ナショナルは80年代のR.E.M.を引き継ぐのだと決意したのだった。今年の春に、シカゴではアーケイド・ファイアとザ・ナショナルがともにライヴをやるのだという。それはアメリカにとって、非常に輝かしい夜になるだろうと思う。


The National



LCD Soundsystem
This Is Happening

DFA / EMI

Amazon iTunes

 「ニューヨーク、俺はお前を愛しているけど、お前は俺を落ち込ませる......」とニューヨークに対する失意と幻滅と、そして愛をこぼしていたLCDサウンドシステムのジェームズ・マーフィもまた、ポップに対する理想を捨て切れなかった男である。インターネットの土壌が進んで出てきた初めてのムーヴメントがチルウェイヴだとしたら、ジェームズはそういった動きに対して最後の悪あがきを繰り広げるような活動をしてきた。70年代のボウイのあり方をポップの理想とし、自分より若くて才能のある連中のケツを蹴り上げるような存在でありたいと、彼は繰り返し語ってきた。分断化が取り沙汰されたゼロ年代にあって、それでもそこに抵抗する形で「ポップ」を定義し直そうとした彼の姿は、僕たち若い音楽好きを虜にした。音楽オタクであることしか誇れることがない男のみっともない恨み言を並べた"ルージング・マイ・エッジ"での彼を未来の自分の姿だと確信した人間は、ジェームズ・マーフィを心底信頼したのだ。だがそんなものはもう終わっていくのだろう、とジェームズ本人が自分たちの挑戦に決着をつける意味で制作されたのが、ラスト・アルバムだと予め宣言された『ディス・イズ・ハプニング』であった。
 『ディス・イズ・ハプニング』は音楽的な参照点もやや広げ、例えばOMDのようなシンセ・ポップも溶け込ませながら、これまででもっともキャッチーな佇まいを持った作品となった。全編ダンス・トラックでありながらも非常にメロディアスで、そしてメロウでスウィートだ。歌詞はファースト・アルバムのような自問自答よりも、自分の仲間たちや聴き手に対する目線がこめられている。相変わらず自分の情けなさやみっともなさを綴りながら、しかしどこか清々しさが感じられるのはバンドが辿ってきた道のりやその記憶が明滅しているからだろうか。ラスト・トラックの"ホーム"は間違いなく、彼の挑戦を見つめ続けてきた僕たちに向けて......そしてたぶん、ジェームズよりも若い連中に向けて歌われている。「君が自分に必要なものを気にしているなら/見回してみなよ/君は囲い込まれている/そんなの、何にも良くなりゃしないよ」というのは、明らかにリスナーに向けた愛の言葉だ。ジェームズはツアーを回りながら「やっぱりこれからもアルバムを制作するかも」と思い直したことが明らかにされているが、しかし『ディス・イズ・ハプニング』が2010年において、一つの「ポップ」の時代に対して決着をつけたラスト・アルバムであったことは変わらない。


LCD Soundsystem

[[SplitPage]]

 これらの「大人たちの音楽」から聞こえてくるのは、現実の困難に何度も何度も打ちのめされながらも、それでも信じるものがある......という不屈さだ。あるいは、LCDの歌にはつねに自虐や情けなさが盛り込まれていながら、しかしそこには必ずユーモアがある。それは自分たちの音楽をきちんと表現へと昇華させるという意志の表れである。「子どもたちの音楽」に何か信じるものはあるのだろうか? もちろん、そんなものが見つからないからこそのリアリティなのだろうが......いっぽうで2010年にこんなにもタフで知性的な音楽があったことも忘れてはならないと思う。
 ただ、ここ日本ではそのようなものは共感されにくい。中年男が社会のなかで、正しく生きようと苦しみもがく姿の色気を伝えるのはとても難しい。音楽と社会が、音楽と政治が密接に繋がっていない(ような素振りを見せる)この国では、政権交代した後も相変わらず生きづらい社会についてポップ・ソングが歌うことは大抵の場合避けられる。そして若者たちは、子どもたちはうずくまり、現実に背を向ける......。ある意味で、若者による現実逃避はこの国ではより切迫した問題だ。社会に背を向けるということもまた抵抗だとすれば、日本でこそチルウェイヴ的な(現実や政治から切り離された)まどろみがより必要とされているとも考えられるだろう。
 あるいは、社会に根ざした若者の音楽は知性やユーモアや文学性よりも、その感情の質量、その重さが目立っている(それだけ追い詰められているということだろう)。僕が世代的にも立場的にも共感できるはずの神聖かまってちゃんにどうしても距離を感じてしまうのも、そのような理由かもしれない。社会に対する怨恨を隠そうとしない彼らの音楽はアナーキーで切実で生々しいが......あまりにも痛ましい。かまってちゃんがいることは日本においてリアルだが、それがあまりに切実に求められるような状況は辛いとも思う。もしくは曽我部恵一のように、若者たちよりも青春を鳴らそうと目論む大人たちの歌がもっと届いてほしい。
 
 今年はどんな音楽が響くのだろう。アメリカに関して言えば、ブッシュ政権下より現在の方が遥かに表現に求められることが難しくなっている。問題だらけのオバマ政権の下、状況はさらに複雑化しているからだ。チルウェイヴのような流れはもうしばらく続くであろうからそれらは横目で見つつも、僕はそれでも現実を見据えたアーティストに期待したいと思う。比較的若い連中にもそういったミュージシャンはいる。例えば2月に新作が出るアクロン/ファミリーは前作でサイケデリックなアメリカ国旗をアートワークに掲げながら、「太陽は輝くだろう、そして僕は隠れない」と歌うことを厭わなかった。アクロンは不思議なバンドで、初期にはフリー・フォーク的な文脈で、前作頃ではブルックリン・シーンの文脈で語られつつも、実のところそのどちらともあまり関係ない朗らかなヒッピーイズムとアート志向が根本にある。それから、フリー・フォークではなくて新しい時代のフォークとして登場したボン・イヴェールとフリート・フォクシーズ。彼らは何よりも高い音楽性でもってこそ勝負しようとする、真面目さと理想主義的な立場で音楽に真摯に向き合っている。また、ヘラクレス・アンド・ラヴ・アフェアはきっと、相変わらず頑なにレイヴ・カルチャーの理想を信じる新作を放ってくるだろう。
 
 音楽が現実の状況に追随しているばかりでは寂しい。世界の見方を少しばかり、時には大きく変えてしまうようなものを、僕はいまこそ聴きたいと思うのだ。


The National / High Violet
4AD / Hostess

Amazon iTunes

 大出世作である前作『ボクサー』でつけた自信は、USインディの現在の活況をリプレゼントしたコンピレーション『ダーク・ワズ・ザ・ナイト』のキュレーターを彼らに務めさせることとなる。そしてそれを経た本作は、バンドとしてより広い場所に進もうとする意欲に満ち満ちたものとなった。ポスト・パンク、チェンバー・ポップ、それに所謂アメリカーナ的なものをしっかりとアメリカン・ロックの土台でブレンドした音楽性はしかし行儀良く収まらずに、感情に任せてややバランスを崩しそうになる瞬間も見せつつスリリングに響く。フロントマンのダンディなヒゲの中年男、マット・バーニンガーの書く歌詞は抽象性もありつつ、より具体的なイメージを喚起しやすいものとなっている。そして彼が、曲によって異なる主人公を――しかし一様に思いつめたようにうなだれた男を演じ、そのバリトン・ヴォイスを響かせることでセクシーなハードボイルド感をも滲ませている。


LCD Soundsystem / This Is Happening
DFA / EMI

Amazon iTunes

 とにかくオープニングの"ダンス・ユアセルフ・クリーン"が素晴らしい。抑えたイントロがやがてシンセと共にリズムを鳴らすと、ジェームズ・マーフィが絶唱する――「まっさらになるまで踊れ!」。そうしてアルバムは幕を開け、中盤に向けて次第にメロウになっていく。ジェームズは自分がロックンロール・バンドのフロントマンをやっていることの居心地の悪さを何度も語っていたが、それでも開き直ったようにさらに自分を曝け出すようなエモーショナルな歌を聞かせるのは、やはりラスト・アルバムという決意があったからだろうか。前作の"ニューヨーク、アイ・ラヴ・ユー~"のようなバラッドはなくとも、これまでで最も切ないムードが漂っている。「僕が欲しいのは君の哀れみ」なんていう、相変わらずのみっともない歌詞も彼ならではで......そして僕たちはそんな彼のキャラクターを既に知っているからこそ、ジェームズ・マーフィその人の魅力を改めて思い知ったのだった。


Arcade Fire / The Suburbs
ユニバーサル

Amazon iTunes

 グーグルの機能を駆使し、自分の育った土地の住所を入力するとその風景がぐるぐると映し出される"ウィ・ユースト・トゥ・ウェイト"のインタラクティヴなビデオが非常に話題になっていたが、それは本作のテーマを見事に射抜いている。(もしかするとかつて捨ててしまった)自分の出自に立ち返ること......アメリカン・サバービアはかの地において宿命的なテーマだが、ウィン・バトラーはそれに真っ向から取り組んだのだった。アメリカを嫌ってカナダに抜け出した彼は、ここで自身の記憶を呼び覚ましながらアメリカのありふれた物語を描き出す。これまでの作品の悲壮感や演劇性はやや後退し、その分ニューウェーヴ風やパンク・ソングなど、音楽性を広げてとっつきやすいものになっているのも一部の層だけに届くだけでは満足しなかったからだろう。郊外の物語を個人の感傷ではなくて我らのものとして語る、現代の北米を代表するバンドであるという自負と貫禄が備わっている。


★ザ・ナショナル、来日します!
3月17日@Duo、詳細は→www.creativeman.co.jp/artist/2011/03national

名倉和哉木津 毅/Tsuyoshi Kizu
1984年大阪生まれ。大学で映画評論を専攻し、現在大阪在住のフリーター。ブログにて、映画や音楽について執筆中。 https://blogs.yahoo.co.jp/freaksfreaxx

WE DON'T CARE
ABOUT MUSIC ANYWAY...
- ele-king

 現在、渋谷のユーロスペースで公開されている映画を紹介したい。『WE DON'T CARE ABOUT MUSIC ANYWAY...』という日本の実験音楽/即興音楽のアーティストたちを追ったドキュメンタリー・フィルムだ。坂本弘道、大友良英、山川冬樹、L?K?O、Numb&Saidrum、Kirihito、Umi no Yeah!!(竹久圏、嶋崎朋子)、Goth-Trad、Hikoといったさまざまなジャンルのアーティストが出演している。
 『WE DON'T CARE ABOUT MUSIC ANYWAY...』は音楽主義を貫いていると言える。フランス人を中心とした制作クルーは、アーティストの歴史や背景を追うことよりも、彼らの一度きりの即興を捉えることに情熱を傾けている。画面は音の立ち上がる過程と瞬間をリアルに映し出し、4年という歳月をかけてパフォーマンスの現場に拘りつづけた努力は素晴らしい結果を生み出している。
 この映画はすでに、スイス、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、ポーランド、カナダ、アメリカ、アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、シンガポールといった世界各地の映画祭などで上映され、国内では昨年、吉祥寺バウスシアターで開催された爆音映画祭で先行上映された。
 とにかく面白い音を出して、未知の領域を開拓したいというアーティストたちの無邪気で原始的な動機に痺れる作品だ。実験音楽/即興音楽に普段は親しみのない音楽ファンも必ずや振り向かせることだろう。それだけ魅力のある"音楽映画"だ。DVD化するかは未定なので、いま映画館で体感しておいたほうがいい。(二木信)

WE DON'T CARE ABOUT MUSIC ANYWAY
https://www.wedontcareaboutmusicanyway.com/ja/

劇場情報
2011年1月15日(土)より、3週間レイトショー!!
21:00(連日)
渋谷ユーロスペース www.eurospace.co.jp
渋谷・文化村前交差点左折
03-3461-0211
特別鑑賞券 1,400円(税込) 発売中!
○劇場窓口・プレイガイドにて
○劇場窓口、各プレイガイドにてお求めください。
○ご鑑賞当日、劇場受付にて入場整理番号とお引き換え下さい。
当日:一般1,700円/大学・専門学校生1,400円/会員・シニア1,200円/高校生800円/中学生以下500円

出演者

●坂本弘道
1962年、広島生まれ。チェロ奏者、他にボイス、ノコギリを奏する。様々なエフェクター類を駆使し、叩く、こする、回す、果ては電動ドリルやグラインダーでチェロから火花を散らすパフォーマンスまで、イメージの氾濫ともいうべき演奏は常に刺激に満ちている。
「midori」(88年~92年)、少年マルタとの「echo-U-nite」(90年~01年)、石塚俊明(ex頭脳警察)の「シノラマ」を経て、ロケット・マツ主宰「パスカルズ」、チェロのみ3人のユニット「COTU COTU」、Lars Hollmer(from Sweden)と日本人音楽家とのユニット「SOLA」、大熊ワタル主宰「シカラムータ」等数々のバンドに名を連ねる。滝本晃司(from たま)、Mika PUSSE(from Paris)、十時由紀子、あかね、大谷氏・とっちゃん(from 富山)、高橋CAZ、火取ゆき、遠藤ミチロウ、等ボーカリストとの共演も多く、02年11月?03年1月にかけてUAの全国ツアー「空の小屋」に参加した。03年にはHacoとの共同プロジェクト「Ash in the Rainbow」を発表。
また、インプロヴァイザーとしての活動を中心に、様々な音楽家とのセッションを精力的に行っている。過去の共演者?さがゆき、風巻隆、おおたか静流、横川タダヒコ、鬼怒無月、ライオン・メリー、林栄一、向島ゆり子、沢井原兒、小山彰太、とうじ魔とうじ、梅津和時、サム・ベネット、HONZI、不破大輔、中尾勘二、大友良英、内橋和久、黒田京子、千野秀一、安藤明(from Berlin)、故・井上敬三、ARFIの「32 JANVIER」(from Lyon)、Jonathan Segel(from California)、等々。ジョン・ゾーンの「コブラ」「ベジーク」(プロンプター:巻上公一)等の集団即興にも度々参加している。
近年は精力的にソロライヴを行っており、99年にソロアルバム「零式」を発表している。
https://home.catv.ne.jp/dd/piromiti

●大友良英
1959年生まれ。ターンテーブル奏者 / ギタリスト / 作曲家として、日本はもとより世界各地でのコンサートやレコーディング等、常にインディペンデントなスタンスで活動し、多くのアーティストとコラボレーションを行っている。
また、映画音楽家としても、中国 / 香港映画を中心に数多くのサウンドトラックを手がけ、ベルリンをはじめとした多くの映画祭で受賞、高い評価を得ている。
近年はポスト・サンプリング指向を強め、「Ground-Zero」のプロジェクトに代表されるようなノイズやカット・アップ等を多用した大音量の作品から、音響の発生そのものに焦点をあてたスポンティニアスな作品へと、ドラスティックに作風を変化させている。
Sachiko Mと結成した電子音響系プロジェクト「Filament」で徹底した脱メモリー音楽を指向する一方で、伝統楽器とエレクトロニクスによるアンサンブル「Cathode」や、60年代のジャズを今日的な視点でよみがえらせる「大友良英 New Jazz Quintet」等をスタート。他にも邦楽器の為の作品の作曲、多方面でのリミックス、プロデュース・ワーク等、多忙を極める。
https://www.japanimprov.com/yotomo/yotomoj

●山川冬樹
ホーメイ歌手、あるいは『全身美術家/全身音楽家』。 1973年、ロンドンに生まれ。横浜市在住。音楽、美術、舞台芸術の分野で活動。
身体内部で起きている微細な活動や物理的現象をテクノロジーによって拡張、表出したパフォーマンスを得意とする。電子聴診器で心音を重低音で増幅し、さらに心臓の鼓動の速度や強さを意図的に制御し、時に停止させながら、それを光の明滅として視覚化。己を音と光として空間に満たすことで、観客との間の境界線を消滅させることを試みる。また、骨伝導マイクを使った頭蓋骨とハミングによるパーカッシブなパフォーマンスは、ソニーウォークマンのコマーシャルで取り上げられ話題を呼んだ。
活動の範囲は国内にとどまらず国際的に展開。2007年、ヴェネツィア・ビエンナーレ・コンテンポラリーダンスフェスティバルから前年に引き続き二回連続で招聘を受け、同年秋に行った米国ツアーは各地で公演がソールドアウト。ヨーロッパ、アメリカ、アジアのライブハウス、劇場、美術館でライブ・パフォーマンスを行う。
こうしたパフォーマンス活動の一方で展示形式の作品を制作。遺された声と記憶をテーマにした、映像・サウンド・インスタレーション「The Voice-over」を、釜山ビエンナーレ(2008)、東京都写真美術館(2008)、ヨコハマ国際映像祭(2009)、などで発表する。同作品は東京都現代美術館のコレクションに収蔵され、現在常設展示室で公開されている。
歌い手としては、日本における「ホーメイ」の名手として知られ、2003年ロシア連邦トゥバ共和国で開催された「ユネスコ主催 第4回国際ホーメイフェスティバル」に参加。コンテストでは「アヴァンギャルド賞」を受賞。その独自のスタイルは、現地の人々に「авангардное хоомей(アヴァンガルド・ホーメイ)」と称される。同年東京で開催された「第2回日本ホーメイコンテスト」では、第1回大会(2001年)に引き続きグランプリと観客賞をダブル受賞。「ホーメイ」の伝統と、現代の等身大の感覚からなるハイブリッドなスタンスで、独自の境地を切り開く。2004年よりシタール奏者ヨシダダイキチが結成したバンド「AlayaVijana」に参加。バンドのフロントマンをつとめ、フジロックフェスティバルをはじめ多くのフェスティバルに出演、2枚のアルバムを発表。
また、声ついての連載エッセイを、「未来(未來社)」誌上で2007年より2年間執筆。複数の大学入試において国語科目の長文問題に採用されている。
現在、東京藝術大学先端芸術表現科、多摩美術大学情報芸術コース非常勤講師。
https://fuyuki.org/

●L?K?O
1974年、東京生まれ。
ターンテ-ブリストとして早くから様々な音楽フォーマットをスクラッチにより解体、再構築するスタイルをベースに活動。Moodman、Original Love、ooioo、灰野敬二氏などあらゆる分野のアーティストとのセッションを経て、近年では、海外でのイベントにも度々招聘されるまでに至る。スクラッチとリアルタイムのDSP処理によって常に変化を生み出す唯一無二のDJスタイルは多数の音楽家から評価を受け、各種コンピレーションアルバムに自身の楽曲を提供、数々のRemixを手掛けるなど、多岐に渡る活動を続けている。
https://m-hz.com/lko/index.html

●Numb
1992年、ニューヨークのINSTITUTE OF AUDIO RESEARCHでエンジニアリングを学び、帰国後の1995年、CALMと共にレーベルKARMA MUSICを立ち上げ、シングル「FILE#2 /深脳」をリリース。
1997年にはレーベル、リヴァースの立ち上げに携わり「BEGINNING OF THE END」「ILLFUSION」「89」といった12インチシングルをリリースする。そして、2002年にリリースしたファースト・アルバム『NUMB』は、鋭さと荒々しさの裏に静寂さを合わせもつ奥深いサウンドで、聴く者のすべての感覚を振動させた。
NUMBはサウンド・パフォーマンスにおいて、ラップトップを用い、MIDIコントローラーでビートやヴォリューム、エフェクトや曲の構成をリアルタイムに操り、フィジカルに演奏する。そして、その音が身体に吸収されると、退化していた器官は開き、細胞が音を聴き始める。その霊妙な演奏は、パリで行われたBATOFARやアムステルダムのSONIC LIGHT、日本のFUJI ROCK FESTIVAL、そしてデンマークのROSKILDE FESTIVAL、同じくデンマークのFUTURE SOUND OF JAZZ FESTIVAL等、国内外で高い評価を得ている。
2003年5月、それらのサウンド・パフォーマンスをパッケージしたライヴ・アルバム『東京』をリリースし、凄まじい勢いで変貌する東京の街に疑問を投げかけた。そして、消費やスピードと引き換えにしてきたものを取り戻したいという彼の強い念が、ラップトップに魂を宿らせた。 2004年、そのサウンドはエレクトロニカ、テクノ、ブレイクビーツ、トランス、ヒップ・ホップと総てを網羅しながら、新たなグルーヴの創造を続けている。
https://www.ekoune.org/

●Saidrum
NOIZEから削り出される緻密な音響工作、そしてミニマルに展開されてゆくダブ・ワイズなスタイルで、ラディカルかつ、ディープなリズム・サウンドを演出するSound Innovationist。
96年にNUMBと出会い、サンプリング・マシーンを軸に、ジャングル、ダブ、D&B、ハードコアブレイクビーツを中心としたトラック制作を開始。その後、1999年にファーストシングル「MATADOR」をリリース。
以来、情報過多な社会の中で発生するカオティックなリズム、自然の中で脈々と流れ続ける普遍的なリズム、それら対極的な要素を音に混在させ、独自のバランス感覚でトラックを構築する。又、2004年には待望のファースト・アルバム『deadpan rhythm』(RECD-010)をリリース。圧倒的なまでの密度と緊張感が支配するデジタル・オーディオの急先鋒とも謳われたそのサウンドメイキングは、聴けば聴くほどに引きずりこまれてゆく孤高のインダストリアル・サウンドを演出した。そして、音の洪水で満たされるライブ・パフォーマンスは、その空間を時に不規則に、時に規則的に、徐々に変化をつけ、サブリミナル・催眠的とも言える魔性のグルーヴを紡ぎだす。
https://www.ekoune.org/

●Kirihito
1994年結成。GROUPのメンバーでもあり、UAのライヴ・バンドや、一十三十一やFLYING RHYTHMSの作品に参加している竹久圏(g, vo, key, etc)と、GAKIDEKA、高品格でも活動する、THE BACILLUS BRAINSのサポートも務める早川俊介(ds, vo, etc)のデュオ。ライトニング・ボルトよりも、ヘラよりも、あふりらんぽよりも早かったデュオ、である。ギターをかき鳴らしながら足でカシオ・トーンを弾き、歌う竹久、スタンディング・スタイルでドラムを叩く早川という、見世物的というか、アクロバティックなライヴ・パフォーマンスの楽しさも然ることながら、ポップでダンサブルでありながらもキテレツかつ凶暴なその音楽はまさにワン&オンリー。これまでにホッピー神山のGOD MOUNTAINレーベルより2枚、DMBQの増子真二のナノフォニカ・レーベルより1枚のアルバムをリリースしている。1996年から98年にかけて4 回、アメリカ・ツアーを敢行し、ダブ・ナルコティック・サウンド・システム、アンワウンド、モデスト・マウス等と共演している。日本国内においても全国各地で精力的なライヴ活動を展開している。ミュージシャンのシンパも多い。
https://www.kirihito.com/

●Umi no Yeah!!
神奈川県、油壺マリンパークで出会った2人が 意気投合し結成。 商売繁盛トロピカルサウンドをモットーとする 常夏の伊豆(ノイズ)ユニット。 マズくてもウマく感じるカレーライス。 摩訶不思議、海の家。 貸ボートはありません。 竹久圏(KIRIHITO/Group/younGSounds)と女優の嶋崎朋子による常夏トロピカル・ノイズユニット! 最近ではバイト(メンバー)にシロップさん(aka コンピューマ)藻JAH先生(aka KUJUN)加わり、年中無休開店中!
https://umi-no-yeah.com/

●Goth-Trad
ミキシングを自在に操り、アブストラクトなアプローチでダンス・ミュージックを 生み出すサウンド・オリジネイター。
2001年12月にフランスの船上パーティ"Batofar(バトファー)"で海外イベントに初登場。独自のサウンド・コラージュで話題を集めた。2001年、秋本"Heavy"武士とともにREBEL FAMILIAを結成。
ソロ、GOTH-TRAD(ゴス・トラッド)として、2003年4月に 1stソロ・アルバム「GOTH-TRAD I」を発表。国内でソロ活動を本格的にスタートする。同年秋にフランス・ツアーを敢行。
翌2004年1月、THE MARS VOLTA東名阪ツアーの オー プニングアクトを務めた。5月~6月にもヨーロッパ・ツアーを敢行。11月にはアート・リンゼイの東京公演にオープニングアクトとして出演。
2005年1月、2枚目のソロ・ アル バム「The Inverted Perspective」をリリース。同年3月、韓国ソウルで開催された日韓友情年イベントの"KOREA-JAPAN Road Club Festival 2005"に出演。マッド・レイヴと称した新たな音楽性を打ち出し、3枚目のソロ・アルバム「Mad Raver's Dance Floor」を発表後、ベルリン,パリ,メッツ,ロンドンそして国内8都市でリリース・ツアーを行なった。
2006年1月、限定アナログ盤12"シングル「Paranoia/Acid Steps」のリリースをかわきりに、現在
進行形Mad Raverに送る、新たなフロアチューンを製作中。
https://www.gothtrad.com/index_j.html

●Hiko
国内外で活躍中のパンクバンド「GAUZE」のドラマー。その活動と平行して、「あらゆる芸術、芸能、表現活動」の、「最も攻撃的な、破れかぶれな」部分と自己のドラミングスタイルとの融合をもって「在りそうで無かった"ハードコア的パフォーマンス、音楽」の実現を標榜し、各種表現者らと共闘中。過去の共闘者は、舞踏家、格闘家(立ち技打撃系)、バリガムラン奏者及びダンサー、俳優による朗読、薩摩琵琶奏者、ホーメィ歌手、コンテンポラリーダンサー、フェンシング競技者、暴走族のバイクのアクセルミュージック等。

THE ORB - METALLIC SPHERES JAPAN TOUR 2011 - ele-king

 昨年リリースされた『メタリック・スフィアーズ』を聴いて『チルアウト』を思い出した人も多いはずだ。なにせデヴィッド・ギルモアのメロウな泣きのギターとアンビエント・ハウスとのブレンドである。『メタリック・スフィア』は、楽天性を欠いたメランコリックな『チルアウト』だと僕は思った。
 そしてジ・オーブは、今週末から金曜日と土曜日にライヴをやる。宇宙に飛びたい人、集まろう!

1.21 fri @ 大阪 SOUND-CHANNEL "テクノ喫茶 SPECIAL"

Live:
THE ORB, TERRAs
DJs: ALEX PATERSON (THE ORB), nakamoto, kobayashi, mongoose, kanadiann
Bar Space DJs: 威力, mikiako, yoshi, HaRuKa, makishi, kunio asai, YURI OGUSHI
VJ: HiraLion Deco: ONA, chancom a.k.a Emile
SHOP: parampara, 甘茶蔓, Lily Deva, abetica, ArihiruA

Open / Start: 20:00-
¥3,000 (Advance), ¥3,500 (Door) 共に w/ 1 Drink
Info: 06-6212-5552 (SOUND-CHANNEL) www.sound-channel.jp
TICKETS: newtone records (06-6281-0403), tamtamcafe (06-6568-9774), sound-channel (manager@sound-channel.jp), sea of green (info-seaofgreen01@hotmail.com) *上記アドレスまでパーティー開催日/お名前/ご連絡先/枚数を明記の上、送信ください。当日エントランスでの支払いとなります。

1.22 sat @ 東京 UNT "UBIK"

Live: THE ORB
DJs: ALEX PATERSON (THE ORB), yoshiki (Runch, op.disc), DJ SODEYAMA (ARCHIPEL, NO:MORE REC)
Saloon: Timothy Really Lab - Ryujiro Tamaki, tosi, y., kon, Sisi, Ngtom

Open / Start: 23:30-
¥3,000 (Advance), ¥3,500 (w/ Flyer), ¥4,000 (Door)
Info: 03-5459-8630 (UNIT) www.unit-tokyo.com
TICKETS: PIA (126-724), LAWSON (76503), e+ (eplus.jp), DISK UNION CLUB MUSIC SHOP (SHIBUYA, SHINJUKU, SHIMOKITAZAWA), DISK UNION (IKEBUKURO, KICHIJOJI), TECHNIQUE, WARSZAWA

THE ORB(ジ・オーブ)
www.theorb.com www.myspace.com/orbisms

イギリス出身のDJ/プロデューサー、アレックス・パターソンとThe KLFのジミー・コーティーによって、88年に結成。ジミー・コーティーの脱退以降、スラッシュや、キリング・ジョークのユース、システム7のスティーヴ・ヒレッジなど多数のアーティストがアルバム毎に参加。移り変わりの激しいエレクトロニック・ミュージック・シーンに於いて、常に時最先端で革新的な作品を送り出し続けている。代表作は『The Orb's Adventures Beyond The Ultraworld』『U.F.Orb』『Orbus Terrarum』など数知れない。

「アンビエント・ハウス」というチルアウト・ミュージックのジャンルを事実上具現化したアーティストであり、その後のエレクトロニック・ミュージックに多大な影響を与えた。近年はファースト・アルバム以来の盟友でありジャーマン・エレクトロニック・ミュージック界の重鎮トーマス・フェルマンとの共同作業が多く、2005年にはヨーロッパに於ける最優良テクノ・レーベルKOMPAKTから『Okie Dokie It's The Orb On Kompakt』、2009年にはドキュメンタリー映画「Plastic Planet」のサウンドトラック『Baghdad Batteries』など、ミニマル~クリック以降のテクノの潮流を独自解釈しながらも、The Orb本来のサウンドスケープを継承する珠玉の作品をリリースしている。
2010年12月、元ピンク・フロイドの伝説的ギターリスト、デヴィッド・ギルモアをフィーチャーした『Metallic Spheres』をリリースしたばかりである。

interview with Simi lab - ele-king

 神奈川県は相模原を拠点とするヒップホップ・ポッセ、シミラボはまだオリジナル・アルバムを出していない。が、しかし、彼らが2009年12月にYouTubeに何気なくアップした1本のミュージック・ヴィデオの衝撃だけで、彼らを現時点でele-kingに紹介するのには十分であると確信している。
 シミラボは突如として現れた異邦人たちである。これはある意味でメタファーであるが、そうでないとも言える。彼らの存在はわれわれが生きる社会の常識や固定観念に揺さぶりをかけているようにさえ思える。たかがヒップホップ・グループと侮ってはいけない。

 "WALKMAN"と名付けられた曲のMVには、ふたりの黒人男性のラッパーとラテン系と思しき女性ラッパー、そして小柄な東洋系の男性ラッパーが登場する。と、何の情報もなかった僕は最初そう認識した。妖しげなミニマル・ファンク・トラックの上で4人全員が日本語でラップしている。それが英語訛りの日本語なのか、それともネイティヴの日本語なのか。それさえ判別がつかなかった。4人ともおそらく20歳かそこそこだろうと思った(いくつかの思い違いはインタヴューで明らかになる)。
 部屋のなかで愉しげにラップし、コンビニに買い物に出かけ、夜道を颯爽と歩く。ただそれだけの、おそらく彼らのなんの変哲も無い日常を捉えたチープな映像だったが、この国の現実の速度に自分の感覚や想像力が追いつけていないことをまざまざと思い知らされた気がした。いったい彼らは何者なのだろうか? シミラボの瑞々しくユーモラスな音楽――奇妙なファンクネスが漂うトラック、変則的でリズミカルなラップ、人を煙に巻くようなリリック、それらには特別な輝きがあり、未知の可能性を秘めていることは間違いなかった。


QN From SIMI LAB
THE SHELL

ファイルレコード

Amazon iTunes

 2010年7月に〈ファイル〉からリリースされた、シミラボのリーダー的存在のQNのソロ・デビュー・アルバム『THE SHELL』も素晴らしかった。また、今年の3月にリリースされる予定の、アース・ノー・マッド(QNのトラックメイカー名義)のファースト・アルバム『Mud Day』の仮ミックス段階の音源を聴いたが、これはきっとさらにユニークな作品となって完成することだろう。"WALKMAN"はこのアルバムに収録される。グループとしてのアルバムも今年出す予定だという。
 正直言えば、僕はシミラボについてまだ上手く言葉にできていないでいる。しかし、答えを急ぐ必要はない。まずは彼らの話を聞こう。今回、取材に参加してくれたのは、ディープライド(DyyPRIDE)、マリア(MARIA)、QN、オムスビーツ(OMSB`EATS)、ハイスペック(Hi`Spec)の5人だ。シミラボとして初となるロング・インタヴューをお送りする。

シミラボのひとりひとりがマイノリティの世界で生きてきた人たちで、世界や社会を外から細かいところまで見てた人たちだと思うんです。この歳にしてはわかりきっちゃってる部分もある。もともとマイノリティだったものが集まって化学反応が起こったんだと思う。


QN

"WALKMAN"のMVを観て、シミラボに興味を持ったんです。まず「何者なの?」というのがあって。肌の色も性別もいろいろだし、しかも、みんな、日本語でラップしている。HPを見ても全貌がつかめないし(笑)。トラック、ラップ、リリック、すべてが斬新だと思いました。これまでにないユニークなスタイルを持った人たちが現れたことに興奮したんです。

マリア:うんうん。

新代田の〈フィーヴァー〉のライヴにも行きました。で、とにかく会って話したいと思ったんです。今日はみなさんの音楽的、人種的ルーツも含めてじっくり話を訊ければと思ってます。まずはひとりひとり軽く自己紹介からお願いできますか。

QN:そういうのはやっぱディープライドからじゃない。

ディープライド:いま21歳です。親父はアフリカのガーナの人です。

お父さんはどういう経緯で日本に来たんですか?

ディープライド: 曾じいさんが、1960年にガーナ大使館が建つときにはじめて日本に来たガーナ大使一行のひとりだったんです。親父はじいさんにその話を聞いてて、20歳から10年間エジブトで家庭教師をしたあと日本に来たらしいです。オレがまだ小さくて両親がいっしょだった頃、親父は現場仕事、工場、英会話教師をやってたみたいです。寝ないで働いてたって聞きました。最近、ガーナに不動産を買ったらしく、そろそろ帰るみたいですね。

お母さんは日本人の方ですか?

ディープライド:そうです。

ディープライドくんは日本生まれ日本育ち?

ディープライド:横浜生まれのちらほら育ちって感じっす(笑)。中学時代はオレのねぐらは押し入れでしたね。引きこもってました。ドラえもんみたいなもんです。CDプレイヤーと漫画を持って、押し入れにこもってずっと音楽を聴いてたりしてた。映画のサントラ集とか。その頃から、リリックじゃないけど、殴り書きはしてました。そこからラップを歌い出すまでに2、3年ぐらいかかってる。兄貴がDJやってて、親父が昔のR&Bとか聴いてたから、ラップとか音楽をやるようになったのはそういうのもあるかもしれない。

引きこもってたんだね。

ディープライド:押し入れのなかにこもってばかりだったオレが行けるような高校は私立で3つぐらいしかなかったから、定時制に行くつもりだったんだけど、母ちゃんが「昼間の学校に行けよ」って言ってくれて、頭の弱い高校になんとか入れてもらいましたね。卒業してからは普通に仕事してて、ラップをはじめたのは1年半前ぐらいです。

最初にガツンとやられた音楽はなんだった?

ディープライド:はじめて自分で買ったCDが50セントの『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン』でしたね。試聴して言葉じゃ説明できないぐらい食らって、CD買ったんですよ。あとからいろいろ調べて、50セントの逆境に立ち向かう姿にも感銘を受けて。50セントは自分のなかにあった反骨精神に火を付ける引き金になったと言っても過言ではないと思いますね。ほんとに衝撃だった。

なるほど。まずはそんなところで、次はマリアさんお願いできますか。

マリア:22歳です。お父さんはアメリカ人でお母さんは日本人です。小学生のときにぜんぜん友だちがいなくて。日本の学校に通っていたから、米軍にも友だちがいなかったんです。

お父さんが米軍の人なんですか?

マリア:そうです。私の出身は青森の三沢基地で、そこから横浜にある根岸の米軍基地のPハウスに引っ越しました。基地のなかにティーン・センターみたいな10代の子たちが集まる施設があったんです。みんなの溜まり場みたいなところ。友だちはいなかったんですけど、そこでいつも映画とか観たりしてました。米軍のなかには白人のハーフより黒人のハーフが多くて、みんなヒップホップとかR&Bを聴いてて、小4ぐらいのときにスヌープ・ドッグの"ザ・ネクスト・エピソード"が出たんですよ。

うんうん。ドクター・ドレの曲だ。

マリア:そう、あれをみんな超かけてて。密かにカッコイイなって思ってたんですよ(笑)。小学校から中学校に上がっていくに連れて、自分から音楽を聴くようになって、高校に入ってはじめてブッダ・ブランドを聴いたんです。ニップスのラップを聴いたときに、日本のヒップホップってこんなカッコイイんだってはじめて実感したんですね。自分もラップしようと思ったのは15歳のときです。だから、やりはじめてからはけっこう長いです。高校に入ってからはヒップホップはどういうルーツで来ているかにすごく興味が沸いて、ファンクとかソウルを聴くようになって、いまは自分なりにいちばんカッコイイと思うやり方をしてます。

歌も歌ってますよね?

マリア:そうですね。デバージやアイズレー・ブラザーズなんかのソウルも好きだし、やっぱりブーツィー・コリンズは外せないですね。エアロスミスやマリリン・マンソンみたいなロックも好きです。あとは、アーハの"テイク・オン・ミー"とかクラウデッド・ハウスの"ドント・ ドリーム・ イズ・ オーヴァー"とか、ビリー・ジョエルも外せないですね。気持ちに残る爽やかなメロディが好きなんで、歌も少しやってる状態ですね。

なるほど。

マリア:ヤバい! チョー緊張する! 

お互いどんどんツッコミ合っていいですよ。

ディープライド:マリアはジャーマンの血も入ってるでしょ。

マリア:うちの父親がアメリカとドイツのハーフですね。

ディープライド:親父がハーフなの?! じゃあ、マリアはクォーターなのか。

マリア:そう。まあ、ハーフでもクォーターでもなんでもいいんだけどさ!

ディープライド:でも、言っとくけど、クォーターがいちばんモテるからね。

一同:ハハハハハッ!

[[SplitPage]]

アメリカと日本のハーフです! 小さい頃に離婚して親父はいないんですけど、結婚したときに挨拶がてらに日本に来て住み着いたんだと思います。親父の仕事は足が臭かったんで土木だと思います。ちなみにいまはアメリカの従兄弟の家に居候してて、シャブ中らしいです(笑)。


OMSB'Eats

では、QNさん、お願いします。


QN From SIMI LAB
THE SHELL

ファイルレコード

Amazon iTunes

QN:僕はいま20歳で、母ちゃんはよくフィリピン人に間違えられる日本人です(笑)。親父は普通の日本人です。僕のルーツはなによりうちの姉ちゃんで、姉ちゃんがヒップホップが好きですごい聴かされてました。中学ぐらいで何を思ったか、吹奏楽に入ったりもしました。あと、オレ、事故にあって、かなり重症だったんです。生存確率が50%の事故で脳みそがいまでも右だけ腫れてるらしいんです。みんなにそれを話したら、「だから、QNって音楽的にすごいんだね」って。喜んでいいのかなんなのか。自分の才能には事故にあったことがでかいのかなって思ってますね。

ディープライド:よかったんじゃない!

QN:あと、気づいたら、自分がマイノリティっていうか少数派であることのほうが似合ってるんじゃないかなって思いはじめて。3人ぐらいで風呂行こうよって言って、けっきょく15人ぐらいで行くことになったときとか、じゃあ、オレ行かないって。

マイノリティってそういうことか(笑)。

QN:みんな行くならオレいいやって。

天邪鬼なところがあるんだね。

QN:そうっすね。オレの世代はやっぱエミネムがでかくて。『8マイル』があったし、流行ってました。みんながエミネム聴くなら、オレは他の聴こうって。それでスティーヴィー・ワンダーとか、そっちに行きました。

ラップやトラックを作りはじめたのはいくつぐらいですか?

QN:DJは中学3年のときにはじめました。親父の仕事先を手伝って、溜まった金でターンテーブルを買いました。それから2年後ぐらいに自分でトラック作るようになって、ラップするヤツもいないし、ラップもしようかなって。自分でやったほうが調子がいいなって。

最初はひとりではじめたんだね。

QN:そうっすね。中学の頃に仲良かったヤツをむりやり「やるぞ!」って誘ったけど、そいつは野球部で忙しくて。

オムスビーツ:いま、あいつはギャルちゃんとよく遊んでるけどね!(笑)

ハハハ。じゃあ、次はオムスビーツさんにお願いしますか。

オムスビーツ:21歳です。アメリカと日本のハーフです! 小さい頃に離婚して親父はいないんですけど、結婚したときに挨拶がてらに日本に来て住み着いたんだと思います。親父の仕事は足が臭かったんで土木だと思います。ちなみにいまはアメリカの従兄弟の家に居候してて、シャブ中らしいです(笑)。義理の父親がいるんですけど、そっちのほうが付き合いが長いしマトモなんで、父親って感じですね。

そうなんだね。

オムスビーツ:僕はもともと音楽とか嫌いだったんですよ。小さい頃、親が車でヒップホップを爆音で流してて、「音、下げろよ!」とかずっと言ってました。当時、ビギーが流行ってたから、『レディ・トゥ・ダイ』の"ギミ・ザ・ルート"のフレーズをよく覚えてますね。

へー、すごい小さいときですよね。

QN:子供のころ、オムスビーツがなにかを聴いて踊ってる写真があるよね?

オムスビーツ:MCハマーでしょ。あ、違う、R・ケリーだ!

ませた子供だねー。それも親が持ってたCDだったの?

オムスビーツ:そうですね。R&Bで踊ってました。あんま音楽とかどうでもよかったんですけど、中学の頃に地元の神奈川TVで『サクサク』っていう音楽番組がやってて、そこで紹介されるインディーズ・ロックが面白くなって。

たとえば、どういうバンド?

オムスビーツ:木村カエラが司会の番組だったんですけど、いきものがかりとかが出てましたね。その流れでヒット・チャートの音楽が好きになった。

親がヒップホップを聴いてたことにたいする反動があったの?

オムスビーツ:いや、反動ではないと思います。中学の頃にエミネムの"ルーズ・ユアセルフ"と"ウィズアウト・ミー"が流行ってて、それを聴いて「ヤバイ!」って思いましたよ。それから親が持ってるCDをパクりはじめた。『レディ・トゥ・ダイ』を聴いて、「あれ?! これ聴いたことあるな」って。当時はビギーより2パックのほうがリスペクトされてて、やんちゃな中学生Bボーイは2パックが好きだったから、ビギーを貸しても「微妙だな」って言われてた。でも、オレはビギーが好きだった。高校になって、ひたすら親のCDをパクって聴いてましたね。

QN:悪いね。

オムスビーツ:高校になってバイトをはじめて、やっと自分でCDを買うようになった。それからサウスに行きました。スリー・シックス・マフィアが"ステイ・フライ"を出して爆発寸前の時期ぐらいにそれのスクリューを聴いてた。ああ、気持ちいい~って。

マリア:ヤバイね。

オムスビーツ:それで、オレ、DJやるわってなって、高2ぐらいのときにタンテを買った。そのときに『ソース・マガジン』もゲトって。MFドゥームとマッドリブのマッドヴィレインってあるじゃないですか? あれをジャケ買いしてすごく良かったから、それぐらいからサウスが抜けてきた感じですね。

それからラップを自然にやるようになったんですか?

オムスビーツ:いまもシミラボのメンバーにいるDJアット(ATTO)っていうヤツと高校の頃に知り合って、よく遊ぶようになった。そしたら、たまたま知り合った、前はシミラボのメンバーだったマグってヤツと3人で音楽やりたいってなったんです。マグのフリースタイルを見て、自分もラップしたいと思って、その3人でIDBってグループを作りました。そいつらと〈サグ・ダウン〉(神奈川の相模原を拠点とするヒップホップ・ポッセ、SDPのパーティのこと)に遊び行ったときに、QNが当時やってたイヴェントのフライヤーを配ってて、オレがそれに遊びに行ったんです。それでなんか気が合って、オレとマグとアットとQNと当時いたヤツらでシミラボができたんです。

シミラボ結成の話はまたあとでじっくり訊こうと思いますが、最後にハイスペックさん、よろしくです。

ハイスペック:23歳です。父親と母親は純日本人です。

一同:フフフフフッ。

どうしたの?

ハイスペック:いや、オレ、いつもメキに見られるんで。

メキ?

ハイスペック:メキシカンの血が入ってるんじゃないかって。

ああ、掘りが深い顔してますもんね。

ハイスペック:だから、あえて純日本人だって言ったんです。自分が中1、2ぐらいのときに兄貴がDJをはじめて、オレもヒップホップを聴くようになりました。ちょこちょこターンテーブルを触らせてもらうようになって、そこから興味持ちはじめたのが高校入ってぐらいからですね。高校の文化祭で人の曲を使ってラップしたりして、高校卒業したら自分たちでちゃんとやりたいなって。

最初はどういう音楽だったんですか?

ハイスペック:湘南乃風とかですね。

オムスビーツ:レゲエじゃん。

ハイスペック:最初にはまったヒップホップはウェストサイドでしたね。『アップ・イン・スモーク』が流行ってて。卒業してグループ作って、自分もMCやる予定だったけど、DJがいなかったから、オレがDJやることになった感じです。ライヴも1回しかやってないんですけど。

で、いまはシミラボのメインバックDJですよね?

ハイスペック:そうです。オレが本厚木のほうでイヴェントをやってて、そのときにいっしょにやってた友だちがジョーダンを誘ってきて。

オムスビーツ:ジョーダンじゃわからないだろ!

ハイスペック:あ、オムスビーツのことです。

[[SplitPage]]

私が横須賀のクラブでディープライドをカッコイイなって思って逆ナンしたんですよ。でも、彼女がいたからそのときは諦めて。そのあと、私は1年ぐらいアメリカに行ってて、帰って来て久しぶりにディープライドと遊んだんです。「お前、まだ音楽やってるか? オレ、ヤバいヤツらと知り合ったんだよ」ってディープライドが言うから、いっしょにQNの家に遊びに行ったんです。


MARIA

さっきも少し話が出ましたけど、シミラボが結成された経緯を教えてもらえますか。


QN From SIMI LAB
THE SHELL

ファイルレコード

Amazon iTunes

オムスビーツ:やっぱりQNが中心でしょ。

マリア:まず私が横須賀のクラブでダン......、あ、ディープライドをカッコイイなって思って逆ナンしたんですよ。でも、彼女がいたからそのときは諦めて。そのあと、私は1年ぐらいアメリカに行ってて、日本に帰って来て久しぶりにディープライドと遊んだんです。「お前、まだ音楽やってるか? オレ、ヤバいヤツらと知り合ったんだよ」ってディープライドが言うから、いっしょにQNの家に遊びに行ったんです。そこではじめてみんなと会ったんだよね。

クラブとかで知り合ってじょじょに形成された感じだ。みんな同じ地元や学校ではない?

一同:ぜんぜん違います!

高校のころからクラブに遊びに行ってたんですね?

ディープライド:ぜんぜんしてましたね。

クラブのIDチェックとか厳しかったから大変だったんじゃない?

オムスビーツ:厳しかった。

QN:うん、厳しかったよ。

マリア:でも、六本木はぜんぜん厳しくなかったよ。

ディープライド:マリアは女だからだよ。

オムスビーツ:しかも、マリアは老けてるし。

マリア:うるせーよ!

ディープライド:女だと甘いよね。男だと目くじら立ててさ。「わかってんのかよ!」って怒られるけど、女の子だと入れる。

どんなところに遊びに行ってたんですか?

ディープライド:みんなけっこう違うんだよね。この3人(QN、オムスビーツ、ハイスペック)が軽くまとまってる感じで、このふたり(マリア、ディープライド)は遊んでた場所がまたちょっと違いますね。

QN:渋谷のクラブでDJするときも普通にIDチェックされて、顔が若いからライヴがあるのに入れないって言われたりしてた。

3人が遊んでたクラブとふたりが遊んでたクラブの違いはどういったところにあるの?

ディープライド:クラブやジャンルで違いをうまく説明できないけど、オレは当時ウェッサイどっぷりだったから、横浜が多くて、都内なら六本木でした。高校時代はずっと昔のウェッサイばっかり聴いてたから。それ以外は音楽として興味ないぐらい。イージー・E、アイス・キューブ、スヌープ・ドッグ、ほんと西ばっかりでしたね。20歳ぐらいになってから、ルーツ・レゲエとかウェッサイの元ネタになってるファンクやソウルを聴くようになりましたけど。

オムスビーツ:オレがはじめて会ったとき、ディープライドはアフロだったよね。

マリア:私がナンパしたときもアフロだった。

QN:そのときスティード乗ってたよね。あれでヘルメット被るんだって。

ディープライド:2年間もアフロをすきもしないで、伸ばし放題だったから。いまの髪の毛の7倍ぐらいあった。当時は地下への階段を転げ落ちるぐらい飲んで、綺麗なお姉さんと遊ぶことしか頭になかったです。というか、当時はそれが最高の現実逃避の処世術でしたね。

マリア:私は普段六本木なんですけど、友だちがすごく黒人が好きで米軍の近くの横須賀のクラブに行ったときがあったんです。そこで、「めっちゃイケメンじゃん」と思った人がいて、それがディープライドだった。あのときはまわりの女がみんな敵に見えましたね。

ハハハ。シミラボは気づいたら出来上がっていた感じなんだね。

マリア:ほんとそうだよね。

オムスビーツ:やっちゃおうよって。

マリア:"WALKMAN"のPVもノリで撮ったしね。QNが「このパソコンでPV作れるぜ」って言ってて、じゃあやろっかってなったんだよね。

"WALKMAN"が話題になったことについてはどう思ってる?

オムスビーツ:もういいかなって(笑)。"WALKMAN"のイメージが付いちゃってるとイヤだ。他にもいろんなこともできるのに。

QN:逆にイメージ付いてるからそれを壊したときのインパクトがあるよ。

あれはいつ作ったんですか?

QN:去年の冬だからもうすぐ1年経つよね。

マリア:もう1年経ったよ!

どんな反応がいちばん多かった?

QN:ポンっといきなりアップされたから、まずこの人たちは誰? みたいな反応ですよね。

マリア:具だくさんだしさ。わけわかんない色が集まってるから、何系みたいな? ヒップホップなのはわかるけど、こいつら日本語話せちゃうんだって反応もあった。

QN:感想で「日本語でラップするガイジンのPV」みたいのがあった。

一同:ハハハハハッ!

英語は話せるの?

マリア:私しかしゃべれない。

自分のネイティヴの言語は日本語?

ディープライド:そうです。ネイティヴって意味ではマリアもそうかもしれないし。

マリア:日本語ですね。

オムスビーツ:英語が嫌いになりそうだよ。

ディープライド:恨んだこともあるよ。

オムスビーツ:あるある。

それは「英語を話せるんだろ」って見られるから?

オムスビーツ:そうそうそう。ガイジンにも日本人にもそう思われるから。

いちいち説明しなくちゃいけないよね。

オムスビーツ:そう、とにかくめんどくさかったですね。

マリア:やっぱりハーフとして生まれると英語が話せないってほんとにコンプレックスだよね。私ももともとも聴くぐらいしかできなくて、アメリカに行ってはじめて話せるようになった。

QN:それは純日本人のオレが見ても感じたね。ディープライドはとくにそういうのを意識してる部分があるし。

ディープライド:意識し過ぎちゃいました(笑)。

オムスビーツ:オレはそれも通り過ぎて、どうでもよくなっちゃった。

QN:そういう意味では開き直ってるオムスビーツと先に知り合ってたから、マリアやダン(ディープライド)と知り合ったときにぜんぜん違和感なく入っていけた。

マリア:だからよかったのかもね。

QN:オムスビーツなんてうちにはじめて遊びに来たときに......

オムスビーツ:納豆食ったもんね!

一同:ワハハハハハッ!!

QN:旨そうに納豆食ってるから、「あ、こいつ日本人なんだ」って。

[[SplitPage]]

オレは当時ウェッサイどっぷりだったから、横浜が多くて、都内なら六本木でした。高校時代はずっと昔のウェッサイばっかり聴いてたから。それ以外は音楽として興味ないぐらい。イージー・E、アイス・キューブ、スヌープ・ドッグ、ほんと西ばっかりでしたね。


DyyPRIDE

"WALKMAN"が話題になったとき、驚く反面、当然だろうなって気持ちもあった?


QN From SIMI LAB
THE SHELL

ファイルレコード

Amazon iTunes

オムスビーツ:まあね! みたいな。

QN:ぶっちゃけ、"WALKMAN"でこれだけ話題になって、「これでいいの?」っていうのはあった。

オムスビーツ:それはあったよね。

マリア:これからだよね。

QN:ぜんぜんまだスタートしてない。

「こいつら何者だ?」というのもあったけど、やっぱりトラックとラップが格好良かったからここまで評判になったんだと思いますよ。

マリア:それはQN様様だと思いますよ。はじめてあのトラックを聴いたとき、私はニヤニヤして帰ったもん。

オムスビーツ:ほんとにー?!

マリア:ほんとだよ。私はDJじゃないけど、それなりに幅広いジャンルを聴いてるし、ヒップホップはとくに深く聴いてるから、QNのあのトラックは間違いないと思った。

これまでとは違った何かを感じましたね。

マリア:タイム感ですかね。

:そうそうそう。

ディープライド:なにそれ?

マリア:なにそれじゃないよ。いまさら言うなよ!

オムスビーツ:マリア、説明して!

マリア:普通の人は普通に歩くじゃない。うちらはちょっとつまずいてる感じ。

上手い表現しますね。

ディープライド:みんな変わってるんだよね。すべての感覚が変わってる。そうとしか言いようがないよね。普通の人がラップしてもありがちなラップにしかならないけど、良くも悪くも変わってるんだと思いますよ。

QNくんは、ソロ・アルバムもそうだったけど、すごくオープンマインドな感覚で音楽を作ってますよね。アフロ・ファンク・テイストのトラックやソウルフルなR&Bテイストの曲やGファンク風の曲があったかと思えば、一方で"WALKMAN"みたいのも作るし。

オムスビーツ:QNに会うたびに、「これがヤバイんだよ!」ってCDを持って行ってたし、QNがうちに来たときはCDの山をごっそり貸してましたね。

QN:ごっそりね。

オムスビーツ:そういうのが何束かあるよね。

そこにはどんなCDがあったんですか?

QN:う~ん、なんだろう? たとえば、エドガー・アレン・フローとか。具体的には忘れちゃったけど、オムスビーツと知り合う前は「90年代がヤバイ!」ってずっとDJプレミアのビートとかばっかりにやられてて、最近のメインストリームなんてヒップホップじゃねぇって感じだった。

オムスビーツ:デム、マザーファッカー!

QN:っていう感じだったんですけど。オムスビーツがカンパニー・フロウとかリヴィング・レジェンズを聴かせてくれた。オムスビーツが「ヤバイ」って言ってるから、とりあえず、オレも「ヤバイ」って言うようにしてた。

ディープライド:ハッハッ!

オムスビーツ:「あぁ、知ってる、知ってる」って。

QN:こいつがヤバイって言ってるなら、聴きこもうっていうのはあった。マッドヴィレインもオムスビーツから教えてもらった。

マリア:"WALKMAN"に関しては、オープン......なんでしたっけ? 

オープンマインドですね。

マリア:そう。QNは決め付けることをしないで何でも聴くから。昭和のアニメのサントラを聴いてたり。

オムスビーツ:フォークも聴くしね。

マリア:ヒップホップの人があまりしない聴き方って言ったらおかしいかもしれないですけど、昭和の日本的なエッセンスも混ぜてるから、こういう妖しい雰囲気が出てくるんだと思う。

中古で昔のCDやレコードを買ったりもしてるんですか?

QN:ずっとしてますね。中学からDJやってたから。高校に入ったらみんなバイクとか車に興味を持つところなんですけど......

ディープライド:オレとかね。

QN:オレは、「そのマフラー、2スト? 4スト?」とかそれぐらいしかわからないから。

オムスビーツ:それぐらいわかれば十分でしょ。

QN:とりあえず、金があったらレコード買ってましたね。

音好きだったんだね。

QN:みんなと同じことをやりたくないっていうのがあったんです。

そこも天邪鬼だったんだ。シミラボがいまのシミラボとして精力的に活動し始めたのはここ1年ぐらいと考えていいのかな?

オムスビーツ:シミラボはとっくにあったけど......

ディープライド:いまの形で活動しはじめたのは1年ぐらい前っすね。

QN:そうだね。ここ1、2年だね。"WALKMAN"はマリアとダンがいてこそだよね。

オムスビーツ:絶対そうでしょ。

QN:最初のほうは「マリアとダンは最近入ったばかりで関係ないでしょ」みたいな感じだったけど。

ディープライド:そんなに!

QN:いや、ちょっといまの話は盛ったけどさ。いまとなってはマリアとダンがいなければ、あそこまで話題になってないよ。それはほんとに思う。この4人っていうのがやっぱりでかかった。

でも、まだまだいろんなメンバーがいるらしいですね。

QN:この3倍ぐらいはいますね。

マリア:いる。

オムスビーツ:いるいる。しかも強いよね。

なんかウータン・クランみたいな感じだね。

QN:最初はそんなことを考えてましたね。

オムスビーツ:2軍とか作りたいよねって。ウータンは3軍、4軍までいるからね。

マリア:へ~。

ところで、シミラボっていう名前の由来はなんですか?

QN:クルーとしても、音楽としても"染み渡る"という意味からきてますね。友だちだけでもないし、家族でもない。「just a simi lab」という感じですね。でも、家族ぐらいの絆なのかもしれないし。

ディープライド:結束しようとし過ぎてないからそこがいいと思いますね。

ラップや歌やトラックを作ったり、音楽をやるのはエネルギーのいることじゃないですか。表現欲求はどこから出てくるんですか?

ディープライド:もちろんヒップホップをカッコイイと思ってたけど、2、3年ぐらいひきこもってたときにいろいろ書いてて、ラップはその延長ですね。ラップは自分のなかのものを吐き出す術ですね。どうせ紙に書いたものがあるなら、ヒップホップが好きだし、ラップをやろうと思いました。

マリア:私はもともとソウルとかロックも好きだったし、詩もよく見てたんです。自分も音楽で人を動かせたらいいなって気持ちが強い。それではじめたのが大きいです。とくにいまなんか仕事もバリバリやってるから、音楽をやるのはエネルギーがす~ごいいるんです。ちょっと仕事で疲れてるから、QNのところに行くの今日は止めておこうと思ってると自分はそのレヴェルで止まってしまって、まわりが成長していくっていう現状があって。でも、みんなと会うことで刺激を受けて、いいものを作ろうって思える。みんなのことをどんどん好きになれるし。仕事は大変ですけど、エネルギーを使う価値があると思ってます。

QN:フフフフフ。

マリア:なに笑ってんの! いますごいいい話してるのにさ!

QN:思い出し笑いしちゃった(笑)。「みんなのことをどんどん好きになれる」って言ったからさ。最初は、ジョーダンは超ブサイクだし、オレはぜんぜん愛想のないヤツみたいなことをマリアは言ってたから。

オムスビーツ:お前、そんなこと言ってたの!

マリア:アハハハハッ!

オムスビーツ:超ブサイクか~。

マリア:最初はしょうがないじゃん。

オムスビーツ:ああ、オレは超ブサイクだよ! あ~、泣ける。

マリア:それは表向きだけだよ。でも、なんか、みんなと会ってるうちに見慣れてきた。いまとなってはみんなめっちゃ好き!

[[SplitPage]]

最近、英語を勉強してて、再来年ぐらいから英語でラップしようと思ってますね。ディープライドと話したんだけど、日本語訛りの英語がカッコイイってヤツがいるかもしれないじゃんって。日本語訛りの英語のフロウがあっちでヤバイじゃんってなるかもしれないし。


DJ HI'SPEC

みんな仲が良いね(笑)。やっぱ、ヒップホップや音楽をやる悦びってみんなで集まって何かを作ることだったりする?


QN From SIMI LAB
THE SHELL

ファイルレコード

Amazon iTunes

マリア:それはすごいある。

オムスビーツ:でも、集まるけど、何かを作ろうってなかなかつながらないんだよ。

マリア:でも、いまは何かをやろうってなってるでしょ。

オムスビーツ:そうだね。ここ最近だよね。

遊びの延長線上でやっている感じ?

ディープライド:オレはそんなのないな。遊びじゃない。オレはさっきも言いましたけど、自分のなかから出てくる炸裂した脳細胞を処理していますね。他のみんなは違うかもしれないけどね。

『Mud Day』に入ってる"Madness Lab"のディープライドくんのラップで、「あっしの故郷はエイジアの極東/ジャパニーズ・ソサヤティ/(中略)こんな僕なんてほっといてちょうだい/さもなきゃ包丁から飛び出しナイフ」という歌詞があるじゃないですか。そこで表現しているのは疎外感ですか?

ディープライド:いや、劣等感ですね。

QN:第三者的にダンを見る限りだけど、ほんとに最初オレらと知り合ったときは、自分から言葉が漏れてくる感じがした。

ディープライド:そうだね。

QN:でも、ここ最近のラップを聴いてると、そこを脱してやっとラップっていうひとつの表現方法を楽しみはじめてる感じが伝わってくる。

ディープライド:前まで自分の腕を切ってたりしてて、「お前はもう死んだほうがいい」っていう声がずっと聞こえてた。

マリア:ほんとヤバかったよ。

ディープライド:そうなると、物とかがすべてゆがんで見えるんですよ。自分の意識が夢を見てるだけみたいな。そういうときに言葉しかなかったんですよ。

劣等感を感じてしまう理由はなんだったんですか?

ディープライド:それはさっきも話したけど、日本語しかしゃべれないことをバカにされることとか。あと、家族のなかでハーフが自分だけなんですよ。兄弟はいるけど、ハーフはオレだけで、自分が不自然な存在に思えるんです。なにが普通なのかがわからなくなったりしてた。劣等感はそういうところから来てるんでしょうね。どんなに真面目にやっててもお前は普通じゃないと言われるし。

QN:ダンがそういうこと言うのはほんとに冗談じゃないから。そういうことですごい共感しちゃう部分もあるし、ぜんぜんついていけない部分もある。

オムスビーツ:ダンの話を聞いてると、オレはそういうことを何も考えてなかったなって思う。

QN:いまはいっしょかもしれないけど、ぜんぜん違う世界を生きてきたんだなってことが伝わってくる。ダンはほんとに大変な思いをしてきたんだろうけど、ある意味僕らからしたら魅力的な経験をしてるとも思う。

オムスビーツ:毎日、そういうこと話されるのはいいけど、花金とかにあって、そういうこと話されるのは楽しい。

QN:たしかに毎日だと勘ぐるもんね。オレも精神的に病んでるときは、ダンが言った「普通なんてないよ」っていう言葉に1週間ぐらい考えさせられたりする。

マリア:だから、ラッパー・ネームがDyyPRIDEなんですよ。

たとえば、"WALKMAN"や"知らない先輩"にはいい意味で生意気な態度が出てると思ったんですよ。年功序列や世間の常識に媚びてないというか、媚びたくないっていう気持ちが強く出てるなって。

QN:シミラボのひとりひとりがマイノリティの世界で生きてきた人たちで、世界や社会を外から細かいところまで見てた人たちだと思うんです。絶対そうでしょ? ある意味冷たい部分もあったりするだろうし。この歳にしてはわかりきっちゃってる部分もある。もともとマイノリティだったものが集まって化学反応が起こったんだと思う。

マリア:ひとりひとりの家庭の事情もあったし。普通に育ってきたらマイノリティの考えなんて生まれなかったと思うんですよ。やっぱりそれなりにラフな道のりがあったから。人からいろんなことを言われたり、客観的に自分を見ることが多かった。

シミラボのHPのプロフィールやMVを観ると、観る側を煙に巻こうみたいな感じもするんだけど、あれは意識的にやってる?

QN:いや、HPに関して言えば、オムスとオレが遊びでやってるだけですね。

マリア:私も知らない。

QN:自分で自分の解析するのもあれですけど、オレはけっこう物わかりがいいんじゃないかなって思う。オレ自身、すごい人生を歩んできたわけではないし、こんなに変わった人たちといっしょに同じレヴェルで会話できたり、同じ遊びができるのは......。

ディープライド:でも、QNは天才バカボンだよね。バカと天才は紙一重って言うじゃないですか。スゲェ変な言葉使いをするし、右に行くと思ったら、左に行くような感じがある。人がわからないようなイメージを持ってて、立体映像を見ているような脳みその持ち主なんですよ。

シミラボってシリアスな部分とユーモアの部分のバランスがいいですよね。今日の話を聞いてても思ったけど。真面目にふざけてる感じがあるというか。

ディープライド:真面目にふざけてるっていい言葉ですね。

ところで、日本のヒップホップはそんなに聴いてきたわけではないんですか? やっぱ海外のもの?

マリア:私は洋楽が普通だったから、日本の曲はまじダセェって思ってました。カッコイイと思ったのはXジャパンぐらいだった(笑)。それもおかしな話なんですけど。やっぱりニップスにすごく影響されました。他にはジブラとかドラゴンアッシュとか。あと、スケボーキングのラップがすごい好きでよく聴いてました。どういう日本語のラップがカッコイイんだろうって観点で日本語ラップを聴いてました。

QN:オムスやオレやハイスペックは、敏感とまでは言えないけど、日本のヒップホップ・シーンにある程度アンテナを張っていて、マリアやディープライドがオレらの知らない音楽を持ってくる感じですね。

なるほど。これからの展望は何かありますか? 人生的にも音楽的にも。

QN:全体的に将来こうしようっていうのはあるのかな?

マリア:あんまりないかな。私、女だし。

オムスビーツ:意味わかんないよ。

QN:ハイスペックはどう? 今後どうしたいかいちばん訊いてみたいよ。

ディープライド:ハイスペック、YO!

QN:2年後は?

ハイスペック:日本だけじゃなくて、広い世界でやりたいとはほんとに思います。日本だけだと人も少ないし、世界で考えたら、オレらの音楽を気に入ってくれる人はもっとたくさんいるわけで。

QN:人によっては「なに言ってるんだよ!」っていう人もいるかもしれないけど、「見てろよ!」って感じですね。2011年はディープライド、アース・ノー・マッド、オレのEP、シミラボのアルバム、あとはハイスペック、オムスビーツ、アース・ノー・マッドのミックスCDを出すつもりです。日本でシミラボの地位をがっつり上げて、再来年ぐらいから本気で世界的なプロモーションができればなって。マリアは英語しゃべれるしね。

ディープライド:英語しゃべれちゃうしね!(笑)

マリア:六本木のガイジンに"WALKMAN"を聴かせたりすると、「オー、ナイスビーツ!」とか言うし。

オムスビーツ:ソー・クール・メ~ン!

マリア:向こうのみんなにも受け入れられるものがあると思う。実際、日本人も洋楽の意味ってわかってなかったりするから、日本語が他の国の人にわからなくてもいいものができれば浸透していくと思うし。

QN:最近、英語を勉強してて、再来年ぐらいから英語でラップしようと思ってますね。ディープライドと話したんだけど、日本語訛りの英語がカッコイイってヤツがいるかもしれないじゃんって。日本語訛りの英語のフロウがあっちでヤバイじゃんってなるかもしれないし。

マリア:そうだよ。

QN:フィリピン人がUSでデビューしたり、韓国人だって英語でラップしてるじゃん。

ファー・イースト・ムーヴメントなんていまアメリカで凄いでしょ。

マリア:ヤバイっすよね。

QN:日本っていう環境でほとんど英語が話せないのもすごいまずいことだし、英語で言いたいことを表現できれば、地球規模の音楽として評価されることもあるだろうし。そこらへんはオムスビーツのビートにしても、マリアの歌にしても、ディープライドの表現にしても、ガイジンに劣ってるかって言ったら、通用する自信はかなりあるので。

マリア:自信があったからここまでやってこれたしね。

ディープライド:オレは他にもやりたいことがいっぱいありますね。映画を撮りたいと思ってるし、自分自身の本も書きたい。

ディープライドくんにとってラップは表現方法のひとつなんですね。表現欲求がまずさきに溢れ出てくる感じだ。

ディープライド:そうですね。言葉でつながっていきたい。

QN:じゃあ、ハイスペック最後に一言!

ハイスペック:トラックも作っていきたいっすね。そこをどんどん前に出していきたい。みんなのライヴをしやすいように、バックDJもやっていきますけど。

ディープライド:自分もちゃんと目立ってくれないとね!

マリア:そうだよ。

オムスビーツ:脱ぐぐらいしないと!

BITCHFORK - ele-king

 『ゼロ年代の音楽――ビッチフォーク編』がいよいよ発売されます。ビッチとは何者か? ――女とポップ・ミュージックの抵抗をめぐる冒険の書......というつもりで作りました。以下、目次を載せますので、どうぞよろしくお願いします!


photo by Yasuhiro Ohara

■contents

02 Foreword
そんなビッチ殺っちまえよ――本書はいかにして生まれたか    
野田 努

07 Bitch Talk 01
もうひとつの、しかし極めて重要な物語――ボヘミアン・ガールの系譜
五所純子×水越真紀×田中宗一郎×野田努 (司会・構成 三田格)

46 Column 01
私たちの革命――ライオット・ガールというムーヴメント
大垣有香

54 Column 02
強きもの、汝の名は弱さ――ジンライムのお月さまは「ひどい乗り方」を許していたんだ
水越真紀

57 Bitch Talk 02
ノー・ウーマン、ノー・クライム―― ヒップホップ文化に見る性について
RUMI×磯部涼×二木信  
オブザーバー 水越真紀(司会・構成 野田努)

83 Column 03
ビッチの領分――ミソジニー論争への一考察
新田啓子

91 Column 04
Bガールの逆襲 Return Of The B-GIRL
二木 信

95 Bitch Talk 03
コギャルの出て来た日 ――消費社会がもたらす女性の変化
湯山玲子×三田格  オブザーバー 野田努 (司会・構成 松村正人)

120 Interview  戸川純、インタヴュー
たぶん、女にしか書けないことを、と思ったんじゃないかな。「バーバラ」にしても女にしか出来ないことと思った。(取材:水越真紀)

128 Column 05
安室奈美恵はいつ死んだのだろう
五所純子

135 BITCHFORK DISC REVIEW
CLASSIC 1955-1999/00'S 2000-2010
(磯部涼、大垣有香、野田努、橋元優歩、二木信、松村正人、水越真紀、三田格)

188  Column 05
律はビッチ!
三田 格

DJ DUCT (THINKREC.) - ele-king

2010年ベストディスク


1
Erykah Badu- New Amerykah Part Two: Return of the Ankh - Motown

2
Mochilla Presents Timeless - Suite for Ma Dukes - Mochilla

3
Moody - Ol' Dirty Vinyl - KDJ

4
Black Milk - Album Of The Year - Fat Beats

5
Nick Speed - Speed of Sound - Underground Resistance

6
Flying Lotus - Cosmogramma - Warp Records

7
Jeff Mills - The Drummer Part2,3 - Purpose Maker

8
9dw - rmx - ENE / CATUNE

9
Soft vs DJ Duct - Loop Segundo - NNNF

10
DJ Duct - Backyard Edit Pt.2,3 - THINKREC.

#9:Flashback 2010 - ele-king

 先日『NME』が20もの音楽メディアによるアルバム・オブ・ザ・イヤーの集計を発表した。対象となったのは『NME』をはじめ『ピッチフォーク』、『ガーディアン』、『ローリング・ストーン』、『スピン』、『Q』、『モジョ』、『アンカット』ほか、ブルックリンで圧倒的に支持されている『ステレオガム』やUKのウェブマガジン『ドローンド・イン・サウンズ』、あるいは超メジャーの『MTV』などなど、主にロック系のメディア。

1. Arcade Fire - The Suburbs
2. Kanye West - My Beautiful Dark Twisted Fantasy
3. LCD Soundsytem - This Is Happening
4. The National - High Violet
5. Beach House - Teen Dream
6. Vampire Weekend - Contra
7. These New Puritans - Hidden
8. Deerhunter - Halcyon Digest
9. Big Boi - Sir Lucious Left Foot: The Son Of Chico Dusty
10. The Black Keys - Brothers
11. Robyn - Body Talk
12. Yeasayer - Odd Blood
13. Caribou - Swim
14. John Grant - Queen of Denmark
15. Joanna Newsom - Have One On Me
16. Sufjan Stevens - The Age Of Adz
17. Janelle Monae - The ArchAndroid
18. Drake - Thank Me Later
19. Sleigh Bells - Treats
20. Ariel Pink's Haunted Graffiti - Before Today

 自分の好みはさておき、まあ納得のいく20枚だ。ちなみに僕の個人的なトップ10は以下の通り。

1. Beach House -Teen Dream
2. Darkstar - North
3. 神聖かまってちゃん-みんな死ね
4. Gold Panda - Lucky Shiner
5. Emeralds - Does It Look Like I'm Here?
6. Oneohtrix Point Never - Returnal
7. Factory Floor - Lying / A Wooden Box
8. M.I.A. - /\/\/\Y/\
9. Gayngs - Related
10. Mount Kimbie - Crooks & Lovers

 ビーチ・ハウス以外は『NME』が集計した20枚に入っていないけれど、好みで言えば、ビッグ・ボーイ、ドレイク、ジャネール・モネイ、カリブー......ジョアンナ・ニューサムとディアハンターとアリエル・ピンクに関しては今作がとくにずば抜けているとも思えなかったけれど、もちろん嫌いなわけではない。アーケイド・ファイアーの3枚目は実は最近になってようやく聴けたが、過去の2枚に顕著だった重さはなく、いままででもっとも親しみやすい音楽性だと感じられた。このバンドに関して言えば、対イラク戦争の真っ直なかに発表した反ネオコンの決定版とも言える『ネオン・バイブル』によって、音楽と社会との関わりを重視する欧米での評価を確固たるものにしている。こういうバンドがいまでも一目置かれるのは、欧米の音楽ジャーナリズムが音楽に何を期待しているかの表れである。
 そう、アルバム・オブ・ザ・イヤーとは、その作品の価値や誰かのセンスを主張するものではなく、ジャーナリズムがいまどこに期待しているのか、という観点で読むと面白い。そのセンで言えば、僕にとって2010年に興味深いのはカニエ・ウェストとジーズ・ニュー・ピューリタンズだ。どちらも個人的には好みではないけれど、僕がふだん読んでいるメディアではどこも評価している。おかしなもので、LCDサウンドシステムがいくら評価されても気にもとめないというのに、気にくわないと感じているカニエ・ウェストとジーズ・ニュー・ピューリタンズが高評価だと気になるのだ。
 以下、『ピッチフォーク』、『NME』、『ガーディアン』のトップ10を並べてみよう。

Pitchfork
1. Kanye West - My Beautiful Dark Twisted Fantasy
2. LCD Soundsystem - This is Happening
3. Deerhunter - Halcyon Digest
4. Big Boi - Sir Lucious Left Foot: The Son of Chico Dusty
5. Beach House - Teen Dream
6. Vampire Weekend - Contra
7. Joanna Newsom - Have One on Me
8. James Blake - The Bells Sketch EP/ CMYK EP/ Klavierwerke EP
9. Ariel Pink's Haunted Graffiti - Before Today
10. Titus Andronicus - The Monitor

NME
1. These New Puritans - Hidden
2. Arcade Fire - The Suburbs
3. Beach House - Teen Dream
4. LCD Soundsytem - This Is Happening
5. Laura Marling -I Speak Because I Can
6. Foals - Total Life Forever
7. Zola Jesus -Stridulum II
8. Salem - King Night
9. Liars - Sisterworld
10.The Drums - The Drums

The Guardian
1. Janelle Monae- The ArchAndroid
2. Kanye West - My Beautiful Dark Twisted Fantasy
3. Hot Chip - One Life Stand
4. Arcade Fire - The Suburbs
5. These New Puritans - Hidden
6. Robyn - Body Talk
7. Caribou - Swim
8. Laura Marling - I Speak Because I can
9. Ariel Pink's Haunted Graffiti - Before Today
10.John Grant - Queen of Denmark

 カニエ・ウェストのアルバムでまずはっきりしているのは、それがヒップホップのフォーマットから離れていること。「イントローヴァースーフックーヴァースーフックーアウトロ」といった公式をチャラにして、膨大なサンプル(60年代のサイケデリックからゴスペルまで)によって新しい何かを生み出そうとしている......ある種のプログレッシヴな音楽と言えよう(実際プログレだろ、あれは......と僕は思ってしまったのだが)。僕や二木信のような保守的なブラック・ミュージック・リスナーの裏をかいているアルバムとも言えるし、そしてこれはジーズ・ニュー・ピューリタンズへの評価とも重なることなのだが、欧米の音楽ジャーナリズムが知的興奮を知らないチンピラにはもう期待していないということでもある。そしてそれでも(カニエ・ウェストの対極とも言える)ビッグ・ボーイが愛されているのは、暴力性というものに何のロマンスも見てはいないということでもある。まあ、要するにそれだけマッチョイズムと暴力性を日常的に身近に感じているからだろう。

 日本の音楽シーンに関しては、2010年は面白かったと思っている。それはポップ・フィールドにおける相対性理論と神聖かまってちゃんのふたつに象徴されるだろう。どちらもインテレクチュアルなポップで、2010年の日本に対する両極端の、際だった態度表明と言える。つまり、かたやナンセンスでかたやパンク、かたや"あえて抵抗しない"でかたや"とりあえず抵抗してみる"というか......そして好むと好まざるとに関わらず、時代は更新される。僕にとって興味深かったのは、神聖かまってちゃんへの表には出ない嫌悪感だった。それは僕が中学生のときに見てきたセックス・ピストルズやパンクに寄せられた嫌悪感、RCサクセションに寄せられた嫌悪感と見事にオーヴァーラップする。何か、自分の理解や価値観の範疇からはみ出したものが世のなかの文化的な勢力として強くなろうとするとき、それを受け入れる人と拒絶する人にはっきり分かれるものだが、同じことがいま起きているようだ。そして、気にくわないというのは、それだけ気にしているということでもある。(笑)

 エメラルズに関しては、面白いことに『ドローンド・イン・サウンズ』が1位にしている。こうしたチャートの見方というのは、「ではエメラルズを1位にするようなメディアは2位以下を何にするのだろうか」という点にもあるのだが、2位がザ・ナショナルで3位がデフトーンズというのはがっかりした。シューゲイザー好きな編集部のなかの偏執的な編集長があるときエメラルズで壮大なトリップをしてしまったのかもしれない。もちろん、多くの場合は個人的な経験が大切であって、『ガーディアン』の読者が言うように「メディアが選ぶトップ20をわれわれが聴かなければならないという義務はない」わけだが、話のネタとしては大いにアリなのだ。その年何が良かったのかについて話すことは、音楽ファンにとっては楽しみのひとつである。

#3 "アガる音を求めて" - ele-king

2010/11/20
Soundcrash Presents
"プラッド vs レッド・スナッパー"@KOKO, London

 〈ワープ〉の重鎮、プラッドとレッド・スナッパーをヘッドラ イナーに据えたパーティにて、サポート・アクトのひとりとして出演しました。
 この日トップバッターとして出演したのは、〈ニンジャ・チューン〉から 1stフルアルバム を発表したばかりのエスクモ。レーベルメイトであるアモン・トビンを彷彿とさせるグリッチサウンドを基軸としながらも、ダブステップやウォンキーといった、現在のUKアンダーグラウンドシーンにも共鳴するビートを鳴らす彼の音楽は、ここロンドンでも多くのリスナーの耳を惹きつけはじめています。彼のパフォーマンスはその音楽性に負けず劣らず個性的なもので、 ラップトップをメインにしながらも、マイクを通してその歌声を惜しげもなく披露したり、缶ジュースの開栓音やペットボトルを握りつぶす音をその場でサンプリングしてループさせるなど、ライブならではの演出がたくさん用意されていて、彼を観るために早い時間から来場していた大勢のオーディエンスを 湧かせていました。


来日も果たしたエスクモ

 続いて登場したのは、来年2月に同じく〈ニンジャ・チューン〉から 2ndアルバムの発表が予定されているリーズ出身のバンド、ステイトレス。かつてのトリップホップを彷彿とさせるビートに、美麗なメロディ が絡むそのスタイルはDJシャドウをして「過去数年に耳にしたもののなかで、もっとも完璧に近い音のひとつ」と言わしめ、ヴォーカリストであるChris Jamesは実際にDJシャドウの3rd アルバム『The Outsider』の数曲で、その歌声を披露しています。当日はギター/ヴォーカル、ベース、ドラム、そしてラップトップの4ピースバンドとして出演し、先行シングル「Ariel」を含む、来るフル・アルバムに収録され る楽曲の数々を披露していました。グリッチーでダークでありながらも、ロック・バンドとしてのダイナ ミックなサウンドも同時に期待できる彼らのサウンドは、今年20周年を迎えた〈ニンジャ・チューン〉が提示する、新たな方向性を象徴していると言えるかも知れません。


盛りあがるオーディエンス

 午後11時30分、僕は3番手として出演しました。今回はとくにゲストを迎えず、基本のスタイルであるソロとして演奏しました。よくも悪くも、僕はどのイヴェントに出演しても、音楽的にアウトサイダーになることが多く、前後の出演者との流れを考えてセットリストを組むことが多いのですが、この日は文字通りの異種混合ラインナップで、とくにそういった必要がなかったため、個人的にいま現在モチベーションの高い曲のみをチョイスして演奏しました。必然的にミニマルをテーマにした新曲群が大半を占めたのですが、フロアからの好意的なリアクションに、大きな手応えを感じました。


いつものように熱演するアンカーソング

 ヘッドライナーとして先陣を切ったのはレッド・スナッパー。かつてはいかにも〈ワープ〉のアーティストらしい、ミニ マルでエレクトロニックな音楽性を標榜していた彼らですが、現在はウッドベース、サックス、ギター、ドラム、エレクトロニクスという5人編成のバンドとして活動しており、音楽的にはテクノというよりは、プログレッシブなジャズに近いと言えます。メンバーの平均年齢は40代前半~後半といったところです が、彼らの若干渋めの演奏に対しても、フロアを埋め尽くした若いオーディエンスはとても素直に反応していました。


ダブルベースが目印のレッド・スナッパー

 深夜1時半、もう一組のヘッドライナー、プラッドの登場。アンディ・ターナー、エド・ハンドレイのふたりによるユニットは、10年以上に渡って〈ワープ〉から作品を発表し続けているほか、メンバーがそれぞれ他名義で方向性の異なる作品を発表したり、日本でも2006年に『鉄コン筋クリート』にサウンドトラックを提供したりと、その活動は多岐に渡ります。当日は巨大なデジタル・コンソールをステージに持ち込み、それを2台のラップトップでコントロールするという大がかりなものでしたが、セット内容はフロアを意識したミニマルなテクノに終始し、最 高潮を迎えたフロアのオーディエンスは一心不乱に踊り続けていました。


つねに最高のエレクトロニック・ミュージックを演奏するプラッド

 そしてこの日のトリを飾ったのはルーク・ヴァイバート。別名儀のワゴン・クライストとしての作品を含め、非常に多作なこ とで知られる彼は、〈ワープ〉と〈ニンジャ・チューン〉の両方から作品を発表している数少ないアーティストのひとりです。かのエイフェックス・ツインをして、「尊敬できる数少ないアーティストのひとり」と言わしめたりと、少しインテリジェント気味のテクノやブレイクビーツをトレードマークとしている彼ですが、当日はすっ かり酔いが回ったオーディエンスの気分を察してか、自身の曲はいっさい披露せず、ミニマルなテクノにベタベタのサンプリングネタを絡ませるという、いかにも明け方のクラバーたちが喜びそうなセットで、大いに盛り 上げていました。


貫禄充分のルーク・ヴァイバート

 音楽性という面では、一見あまり一貫性のないラインナップでは あったものの、蓋を開けてみれば興行的には大盛況で、耳の肥えた週末のロンドンっこの間では、音楽性うんぬんよりも、「アゲてくれる音ならなんでもいい」という、とても健康的でオー プンマインドな姿勢が共有されているのだということを、改めて気付かせてくれた夜でした。

NOOLIO a.k.a. Norio Shimizu (PART2STYLE) - ele-king

SKA & SHUFFLE 十選


1
Mungo's Hi Fi and Marina P - Divorce A L'italienne - Scotch Bonnet

2
Soothsayers Horns - Ganja Free - Universal Roots

3
Longsy D - This Is Ska (Rydem Wiv Acid Mix) - Warlock

4
Mule Train - Devil's Shack - Lamb Star Records

5
The Tchiky's - Oide - Rudiments

6
Natacha Atlas - Hayati Inta (Mickey Moonlight Remix) - Mo'Zik Records

7
Stevie Wonder - Higher Ground - Motown

8
Cirillo Pres. Trio Dubbales - Shalla Balla - White

9
Thomas Fehlmann - The Road - Kompakt

10
Dub Insurgent - Caballo Bounce - Near & Far Records
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130