「IR」と一致するもの

空間現代 - ele-king

 空間現代が、Sunn O))) のスティーヴン・オマリー主宰のレーベル〈Ideologic Organ〉よりリリースした7年ぶりのオリジナル・アルバム『Palm』の発売を記念し、日本国内ツアーを、そして東京・渋谷WWW にてワンマン・ライヴを開催する。6月9日に自らが運営する京都のスタジオ/ライヴハウス「外」にて、盟友である YPY、行松陽介、oddeyes が出演するレコ発を皮切りに、日本各地を周るとのこと。ツアー最終日は8月14日、東京・渋谷WWW にて、空間現代のワンマン・ライヴが開催。音響に宋基文、照明に高田政義を迎える。東京公演の前売券は6月1日より発売中。ツアー詳細は下記より。

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空間現代『PALM』レコ発ツアー開催決定

ハテナ・フランセ 第20回 - ele-king

 みなさんボンジュール。5月25日に終了したカンヌ映画祭について。私自身が参加していたわけでも、インサイダー情報があるわけでもないが、カンヌの映像を見ていてぼんやり思ったことを。

 審査員賞を『Bacurau』と共に受賞した『Les Misérables』は、2008年のパリ郊外で起きた暴動事件を下敷きにしたLadj Ly(ラジ・リー)の初監督作品。5月15日に正式上映されたこの作品のレッド・カーペットと授賞式が個人的に非常に印象に残った。そこにはKourtrajmé(クートラジュメ。クー・メトラージュ=短編の逆さ言葉)の面々が顔を揃えていたからだ。Kourtrajméは、映画監督キム・シャピロン、同じく映画監督ロマン・ガヴラス、ラジ・リー、そして映像作家トゥマニ・サンガレによって96年に立ち上げられたアーティスト集団。所属するのは当時は駆け出しの映像作家、ラッパー、グラフィティ・アーティスト、ダンサーなど。それぞれの表現手段はさまざまながら、ヒップホップ色が強めだった。彼らは名前の通り短編映画をとにかく量産しまくっていた。内容は、内輪受けギャグ的なしょうもない&意味不明なものも多かった。だがとにかく衝動的に仲間とクリエイトする、ということを標榜していたのだと思う。当時のKourtrajméのなかでは、ラッパーたちが比較的知名度のある方だった。Kourtrajmé正式メンバーのモロッコ系兄弟2人によるLa Caution(ラ・コーション)はインディながら大きめでカッコいい〈ワーグラム〉レーベルと契約していた。また、当時〈ニンジャ・チューン〉傘下の〈ビッグ・ダダ〉と契約して話題となっていたTTCなどもゆるく繋がっていた(TTCのMVをキム・シャピロンが撮っている)。TTCのテキ・ラテックスは、彼らをフックアップするべく、キム・シャピロンやロマン・ガヴラスの名前を要チェックの映像作家としてインタヴューで当時よく挙げていた。2000年前後のパリでは、Kourtrajméは大変イケていたのだ。その後キム・シャピロンは2006年にいち早く初監督作品『変態村』を、ロマン・ガヴラスはジャスティスの超暴力的MV「Stress」で物議を醸した後、2008年に初監督作品『Notre jour viendra(日本未公開)』を発表する。さらに2012年にはジェイ・Zとカニエの「No Church in the Wild」も手がけている。そしてキムの初監督発表と同時期に、それぞれが個別のキャリアを築き始めたことで「Kourtrajméとしてできることは、やりつくした」として解散した。

 そもそも、70年代の伝説的グラフィック・アーティスト集団バズーカのメンバー、キキ・ピカソことクリスチャン・シャピロンとマチュー・カソヴィッツがお隣さんだったことから、Kourtrajméは始まったと言っていいだろう。クリスチャンの息子キムは子供の頃からカソヴィッツの撮影現場などに出入りし、その友人でもあり、監督2作目『憎しみ』の主演俳優でもあるヴァンサン・カッセルとも自然に親しくなったという(カッセルは『変態村』の主演も務めた)。95年にカンヌ映画祭で監督賞を受賞した『憎しみ』は、パリ郊外の移民系青年達の絶望的な状況を見事に描き切った傑作だ。だが、この作品の監督マチュー・カソヴィッツは、映画監督の父を持つ決して貧しいとはいえない家庭出身、主演のヴァンサン・カッセルは大物プロデューサーの息子。公開当初から作品そのものは非常に高い批評を得たが、なかにはブルジョワ出身であるカソヴィッツが、郊外のゲットー文化を我が物顔で語ることに疑問を呈する批評家もいた。

 そしてその疑問は『Les Misérables』のレッド・カーペットを見ながら私が抱いた「どうやったらラジ・リーとキム・シャピロンが繋がるんだろう」という素朴な疑問にも繋がるのかもしれない。パリ郊外モンフェルメイユのシテ(フランスのゲットー)でマリ人の両親の元、13人兄弟の中育ったラジ・リーと、当時のパリで相当イケていたであろう先鋭的グラフィック・アーティストの息子キム・シャピロンの行動範囲がどう重なったのかわからないのだ。だが、5月27日付の新聞『Le Parisien』のなかにその答えが見つかった。ラジ・リーの住むモンフェルメイユにあるエルジェのContre de Loisirs(ソントル・ドゥ・ロワジール=学校のバカンス中に子供を預けられる施設)で10代前半の2人は出会ったのだそう。この託児施設は、ラジ・リーの学区とは若干ずれていたが「親父がちょっと高くてもブルジョワの子供の行く施設の方が規律がしっかりしてるだろう」との判断で行くことになったそう。そして、キム・シャピロンは祖父母の瀟洒な家が近所だったということでバカンスの間、エルジェに行くことになったのだ。このように普段の生活の文脈から離れた場所で出会った、ブルジョワの子供と移民の子供が仲良くなったのだと想像する。

 今回のレッドカーペットでは当事者のラジ・リーはもちろん、Kourtrajmé創立メンバーに加え、今や売れっ子テレビ司会者(日本でいうと有吉弘行みたいな感じ)となっている、ムールード・アシュール、いつの間にかKourtrajméの一員になっていたストリート・アーティストで写真家のJR、Kourtrajméの一員というイメージではないポエティックで真面目系ラッパー、オキシモ・プッチーノ、そして創立当時からKourtrajméのゴッドファーザーであったマチュー・カソヴィッツやヴァンサン・カッセルまで、関わった作品がない限り簡単にスケジュールを押さえられないような超豪華なメンバーが総揃いした。おそらくそれほど彼らの繋がりは強いものなのだろう。主題的にも資金集めが簡単ではなかったはずのラジ・リーの初監督作品が、カンヌ映画祭の、しかも正式上映に選ばれたということは、Kourtrajméにとっては祭り以外の何物でもなかったのでは。受賞の際にもちろんラジ・リーは授賞式まで参加したKourtrajméの面々の名前を挙げ感謝を捧げた。

「ジレ・ジョーヌへの機動隊の暴行で注目が集まったけれど、彼らの暴力は今に始まったことじゃない。この作品は僕なりの警笛なんだ」という『Les Misérables(原題、邦題未定)』は日本でも公開予定だそう。

La Caution Thé à la menthe
Kourtrajméのメンバーも多数出演しているMV。ヴァンサン・カッセルが出演している『オーシャンズ12』の劇中で使用された。

TTC Je n'arrive pas à danser
キム・シャピロンによるTTCのMV。不条理なユーモアとKourtrajméのメンバーが満載。

Justice Stress
ロマン・ガヴラスによるジャスティスのMV。あまりの暴力描写にメディアで叩かれまくった。

『Les Misérables』のフランス公開予告

Technics 7th in Tokyo - ele-king

 ヴァイナルとターンテーブルを愛するすべての人たちに朗報だ。DJカルチャーに多大な功績を残しながらも9年前に製造終了となっていた Technics の名器 SL-1200MK シリーズ、たとえばテクノ好きのあいだではリッチー・ホウティンとジョン・アクアヴィヴァによって設立され、スピーディ・Jやケニー・ラーキンといった才能を送り出してきたウィンザーのレーベル〈Plus 8〉の名が、同シリーズのピッチ・コントローラーの値に由来することはちょっとした豆知識になっているけれど、なんと去る5月24日、同シリーズ11年ぶりの新モデル SL-1200MK7 が発売となった。
 これを記念し、明後日6月5日 DOMMUNE にてスペシャル・プログラムが緊急配信。アナログをメインとするDJたちが一挙に集結する。第1部のトーク・パートには宇川直宏、DUB MASTER X、Technics の開発担当者である三浦寛らが出演し、SL-1200MK7 の魅力を徹底的に解剖。第2部のDJパートでは MURO、DJ EMMA、Mighty Crown、DJ KOCO a.k.a.SHIMOKITA、Dazzle Drums と、錚々たる面子がプレイする予定となっている。しかも通常3時間のDJタイムがこの日は4時間とのことで、見逃すと後悔する一夜になりそうだ。詳細は下記よりご確認を。

https://www.dommune.com/reserve/2019/0605/

SL-1200MK7 発売記念!!
DOMMUNE にてスペシャル番組配信が決定!!

世界中のレコード・ファン、ターンテーブリスト達が絶大なる信頼を寄せるターンテーブルが Technics SL-1200MK シリーズ。このターンテーブルが Hip Hop、クラブシーンに果たしてきた役割と功績は見逃せない。まさにこの優れたターンテーブルがあったからこそDJカルチャーが隆盛したと言える、そんな名器なのだ。しかし2010年に製造終了となり、世界中のターンテーブル・ファンから再発売を熱望されていたが、ついに5月24日に新モデル SL-1200MK7 が発売となった。

この発売を記念して DOMMUNE でアナログをメインにしたDJたちが集結するスペシャル・プログラムの緊急配信が決定。

出演は、今年1月のラスベガスでのお披露目イベント「Technics7th」でもプレイし話題になった DJ KOCO A.K.A SHIMOKITA、レゲエ界からは世界ナンバー・ワンの Mighty Crown の Masta Simon と Sami-T の2人、King Of Diggin こと MURO、Nagi と Kei Sugano による注目の男女ユニット Dazzle Drums、DJとして長いキャリアを誇る DJ EMMA というこの夜でしか有りえないジャンルを超えて選ばれた超豪華DJ陣が登場する。しかもこの夜は、通常3時間がDJタイムだが、この夜は4時間枠。
つまり前半のトークセッションは1時間に短縮だが、逆に濃い内容となる。Technics のターンテーブル開発担当、三浦氏に加え、リミキサーやエンジニアとして様々な機材を使いこなす DUB MASTER X も登場し、発売された SL-1200MK7 を解剖、また今年1月にラスベガスのベラージオ・ホテルで行われ DOMMUNE と BOILER ROOM で全世界配信され話題となったパーティー「Technics7th」の数百枚の写真から選んだフォト・ドキュメントや映像を交えたリポートも行われる予定。

【番組概要】
■番組名:Technics 7th in Tokyo
■日時:6月5日(水)19:00-24:00
■出演
1部(トーク):宇川直宏、DUB MASTER X、三浦寛(Technics)、石井志津男ほか
2部(DJ PLAY):DJ KOCO a.k.a.SHIMOKITA、Mighty Crown、MURO、Dazzle Drums、DJ EMMA
■配信サイト:DOMMUNE(https://www.dommune.com
※配信時間にPC/スマートフォン等からURLにアクセス頂ければ無料でご覧いただけます。

MURO
日本が世界に誇る King Of Diggin' こと MURO。「世界一のDigger」としてプロデュース/DJでの活動の幅をアンダーグラウンドからメジャーまで、そしてワールドワイドに広げていく。現在もレーベルオフィシャルMIXを数多くリリースし、国内外において絶大な支持を得ている。新規レーベル〈TOKYO RECORDS〉のプロデューサーにも名を連ね、カバーアルバム『和音』をリリースするなど、多岐に渡るフィールドで最もその動向が注目されているアーティストである。
毎週水曜日25:30~ TOKYO FM MURO presents 「KING OF DIGGIN'」の中で、毎週新たなMIXを披露している。

DJ EMMA
1985年よりDJを始め、東京各所のナイトクラブで数々のパーティーを成功させる。1994 年に「GOLD」と契約。クローズするまでレジデンスとして活躍、そのアグレッシブなプレイによって土曜日をまとめあげ、東京中の遊び人(ナイトリスト)たちに決定的な存在感を知らしめた。1995年にはDJプレイに留まらず音楽制作を開始。川内タロウと共に「MALAWI ROCKS」を結成する。同年〈NIGHTGROOVE〉より発売された12inchシングル「Music Is My Flower」が世界的ヒットを果たす。同じく1995年から発売され、日本を代表するMIX CDとなった『EMMA HOUSE』は、24bitマスタリングというMIX CDの枠を超えた徹底的な音作りとダンスフロアの雰囲気を閉じ込めた作品として好セールスを記録。2014年新たな活動を始めた〈NITELIST MUSIC〉から、日本発のACID HOUSE 『ACID CITY』を発売。〈HEARTBEAT〉から2年連続リリースとなったMIX CD 『MIXED BY DJEMMA vol.2』と共にダブルリリースツアーを全国15ヶ所で行う。常にダンスフロアと HOUSE MUSIC を中心に新しい音楽を最高の技術でプレイし続けるスタイルは KING OF HOUSE と呼ばれる。
2016年には活動30周年を記念した『EMMA HOUSE XX~30th Anniversary~』を〈ユニバーサルミュージック〉よりリリース。
2017年、プロデュースユニット NUDE 名義で「NO PICTURE (ON MY PHONE) feat. ZEEBRA」をリリースし、さらには最新作『ACID CITY3』を10月にリリースするなど、DJ及びプロデューサーとして精力的に活躍中。

Mighty Crown
1991年横浜で結成され、今では日本代表のみならず世界のレゲエアンバサダー/カルチャーアイコンとして活躍するダンスホールレゲエサウンド。
2017年11月にはボブマーリーファミリーの主催するカリブクルーズ船上でのサウンドクラッシュで3連覇を果たし、18年7月にはサウンド界のチャンピオンズリーグともいえるジャマイカでの世界大会 WORLD CLASH 20th Anniversarry で優勝を果たす。これまでに8つの世界タイトル、11回の優勝経験をもつ唯一無二の存在である。
観客を煽るMCと、曲をプレイする SELECTOR (いわゆるDJ)からなるチームとして、曲のメッセージ、音楽のパワーを倍増させてフロアに伝える彼らのスキルは随一。選曲やMCの妙で誰が一番観客を盛り上げるかを競う「サウンドクラッシュ」という音の戦いにおいても、早くから国内外で積極的に取り組み、1999年NYで行われた「WORLD CLASH in New York」で優勝。アジア人初のサウンドクラッシュ世界一の称号を勝ち取った。
以降は単に日本代表というだけでなく世界屈指のサウンドとして北米、カリブ諸島、ヨーロッパなど、海外各地を沸かし続けてきた。11個の世界タイトルを獲得し、トロフィーの数だけでなく、世界中にファンとリスペクトを増やし続けている。レゲエのメッカ、ジャマイカにおいても、サウンド文化の貢献者として表彰されるなどその存在と功績はジャンルを越え評価されている。
メンバーは設立からのメンバーである MASTA SIMON と SAMI-T の兄弟に加え、SAMI-T のNY修業時代に知り合い MIGHTY CROWN に加入したファンデーション担当の COJIE、そして MIGHTY CROWN 第二の拠点であるNY在住の NINJA。それぞれの得意分野を生かして単独でも活躍している。
国内外のクラブプレイ、レゲエフェスなどへの出演の他に、“信念とスタイル、そしてスキル”を持つアーティストとして、ジャンルを超え、ハイ・スタンダード主催の《AIR JAM》やモンゴル800 主催の《What A Wonderful World》などロックフェスのクラウドをもレゲエサウンドの手法と MIGHTY CROWN のスキルを活かして盛り上げている。また、人気ドラマ『HiGH&LOW』のサントラや般若、ANARCHY といった HIP HOP アーティストの作品にアーティストとして参加、イベント、レーベル、ブランドプロデューサーなどその進化はとどまることを知らない。

DJ KOCO a.k.a. SHIMOKITA
世界中のバイナルディガー達を圧倒させる選曲と、時折魅せるスリリングなテクニックで、オーディエンスを魅了する。これまでに、7インチのみでのライブミックスなど、数々のMIX作品を出し続けている現在進行形のヒップホップDJ。ファンク、ソウル、ディスコ、レゲエなど様々なジャンルの45'sを使い、ヒップホップ的な解釈で見せる彼のプレイは海外DJ達からも高い評価を受ける。現在、アジアでも活躍しながら、DJ Scratch がブルックリンから配信するDJパフォーマンスのストリーミングサイトで、「ScratchVision Tokyo」と題して定期に出演している。

Dazzle Drums
Nagi と Kei Sugano の2人組ユニット。それぞれが90年代からDJ活動を開始。ダンス/ハウスクラシックスを軸に幅広い選曲で新譜を織り交ぜプレイする。
2005年より楽曲制作を開始。〈King Street Sounds〉、〈Centric Music〉、〈Tony Records〉、〈Nulu Electronic〉、〈Tribe Records〉、〈BBE Music〉などこれまで数多くの海外レーベルからリリースを重ね、Danny Krivit、Joaquin Joe Claussell、Louie Vega、Tony Humphries、DJ Nori、DJ Emma や Tim Sweeney らがプレイし、幅広いDJからの評価を獲得。2010年、自主レーベル〈Green Parrot Recording〉を始動。2014年、1stアルバム『Rise From The Shadows』をリリース。2016年、Louie Vega ファミリー Anane Vega のレーベル〈Nulu Electronic〉から2ndアルバム『Concrete Jungle』をリリース。同年7月 Gilles Peterson 主宰、南フランス Sete で開催される《Worldwide Festival》に出演、12月 Ray-Ban x Boiler Room に出演。2017年、Mix & Compilation CD 『Music Of Many Colours』をリリース、同名のパーティーを Contact で始動。同年7月ヨーロッパツアー、10月アムステルダム ADE 出演。2018年7月2度目の《Worldwide Festival》出演を皮切りにヨーロッパ5ヶ国6都市をDJツアー。レギュラーパーティーは毎月第二日曜日夕方開催 Block Party @ 0 Zero。

DUB MASTER X
一発で彼の音と分る個性的な音作りをするが、そのバランス感覚は絶妙で、歌謡曲からクラブのフロアーを揺るがす音作りまで何でもこなすサウンド・エンジニア&DJ&クリエイター。ごく初期の Mute Beat 時代からダブ・エンジニアとして参加し、全ての作品に参加。Mute Beat 解散後は Remixer やレコーディング・ライブミックスエンジニア、DJとして活躍。「Dub Wa Crazy」シリーズで7インチ・シングルを10枚リリース(のちに全曲を収録した同名の2枚組CDをリリース)。92年にはファースト・アルバム『Dub Master X』を皮切りに『Dub Master X II』『Side Job』をリリース。また藤原ヒロシとの Luv Master X 名義のアルバム『L.M.X』も93年にリリース。Dub wa Self Remix シリーズを始めアンダーグラウンドでの活動をしながら00年には『Dub's Music boX』を、2009年には『Dub Summer Pop』をリリース。2010年には鬼才リミキサーユニット Moonbug に加入。2015年、盟友朝本浩文の事故をきっかけに集まった仲間達と DUBFORCE を結成。
リミックス・ワークとして浜崎あゆみ、倖田來未、Every Little Thing、globe、鈴木亜美、Do As Infinity、華原朋美などの〈エイベックス〉作品を多く手掛ける傍ら、ヤン富田、いとうせいこう、Pizzicato Five、ムーンライダーズ、The Blue Hearts、コレクターズ、キリンジといった玄人好みのミュージシャンの作品も多数制作。既に本人でさえ数え切れないほどの作品に関わっている。
PAエンジニア・レコーディングエンジニア・リミックス・プロデュース・アレンジ・プログラミング・DJ・舞台音響等々、アーティストサイドとスタッフサイドの両方を理解する希有な存在でもある。
2010 年頃より初心に立ち返り気持ちの良い音を探求すべくライブPAエンジニアを主戦場として活動中。Deftech、SUGIZO、柴咲コウ、m-flo、かせきさいだぁ、小島麻由美、MORE THE MAN、SOUR、KanekoNobuaki、POLARIS、柴田聡子、BASSONS、木根尚人等のFOH を担当している。

Kevin Richard Martin - ele-king

 現在、「世界」は極寒の只中にある。真夏に冬? いきなり大きな主語で恐縮だが、例えば2030年に到来すると言われている「ミニ氷河期」は世界を冬の時代に変化させてしまう可能性があるし、なにより21世紀以降、巨大化の一途を辿るグローバル資本主義の本質は人間の外部にある巨大なデータの集積(金銭の層)ともいえるのだから、そこにあるのは「雪」のような冷たい結晶の層と運動ではないかとも思ってしまう。ともあれ雪とお金は似ている。貯まるときは貯まるが、少し熱量が上ると溶けて消えてしまう。

 氷河期へと回帰する地球と真夜中に降り続ける雪のようにデータ化された金銭が結晶化する世界。私たちはそんなJ・G・バラード的な「冷たい」結晶世界/時代を生きている。
 では、そのような時代、われわれが「ヒト」ではなく「人間」であることの意味はどこに見いだすべきか。資本主義に骨の髄まで染まったわれわれはエコノミック・アニマルのなれの果てか。巣を失った雪男のように虚無に吠えるしかできないのか。それとも言語の真の意味を捉え直し、改めて「怒り」を表出する必要があるのか。
 ひとつ言えることは、そのような時代、イメージに恐怖が侵食する。そしてレコードはそんな世界の無意識を表象する「商品/芸術」でもある。2010年代の音楽の一角にダークなアートワーク(もちろん音も)が現れたのは偶然ではない。セカイが不穏だから音楽も暗くなる(反動で空虚なバカ騒ぎも起きる)。そしてその不穏さによって音楽は一種の心理的セラピー効果を高めもする。つまり真の「癒し」は逆説によって生れる。ダーク・セラピー・サウンド?

 現代写真家・横田大輔による印象的な作品を用いたアートワークでリリースされたキング・ミダス・サウンドの新譜『Solitude』(https://kingmidassoundmusic.bandcamp.com/album/solitude)も、そんな「真冬・極寒の時代」のムードを象徴するようなアルバムだった。キング・ミダス・サウンドは、UKレフトフィールド・サウンドにおいてその名を知らしめているザ・バグのケヴィン・リチャード・マーティンらによるプロジェクトである。
 その新作『Solitude』は、ダークなエクスペリメンタル・サウンドとRoger Robinsonのポエトリー・リーディングが濃厚なメランコリアを醸し出し、なんとも不穏なムードを生成していたが、ある種の救済の感覚が息づいてもいた(リリース・レーベルは、ミカ・ヴァイニオ関連のリリースでも知られる〈Cosmo Rhythmatic〉)。闇夜の果てにある微かな光。

 今回取り上げる『Sirens』は、キング・ミダス・サウンド、ザ・バグなど複数のユニット・名義を使い分けてきたケヴィン・リチャード・マーティンが初めて本人名義を冠したアルバムである。リリースはローレンス・イングリッシュが主宰するエクスペリメンタル・ミュージック・レーベル〈Room40〉。
 その内容たるや圧倒的であった。キング・ミダス・サウンド『Solitude』における音響空間をさらにパーソナルにムードで研ぎ澄ましたような現代的なアンビエント/ドローンを存分に展開し、凄まじい音響空間を生成していたのだ。『Solitude』からポエトリー・リーディングをミュートしたようなトラックともいえるが、よりパーソナルなサウンドにも感じられた(どこか『Solitude』と『Sirens』は兄弟のようなアルバムではないかと想像する)。

 本作の元となっている音源は、2015年にベルグハインで開催された「CTM Festival」におけるライヴ・パフォーマンスで披露されたものだ。そもそも「Sirens」は、ケヴィン・リチャード・マーティンによる新しいアンビエント・プロジェクトの名としてスタートした。2014年頃、彼の友人でもあるベルリンのアーティストNick Nowakの展示とショーにつける音楽を依頼されたことがプロジェクトの始まりなのだ。その「Sirens」のショーは、スモークとストロボによって会場全体を覆う一種のインスタレーションに近いパフォーマンス/空間だったらしい。
 以降、「Sirens」は、ドイツのハイデルベルク、ロサンゼルス、ハンガリーのブダペスト、東ロンドンなどで継続的にパフォーマンスされ、その音響は完成の域に近づいていった。以前から彼のファンであったローレンス・イングリッシュは、「CTM Festival」のライヴの直後に音源リリースの話を直談判し、ケヴィン・リチャード・マーティンから快諾を得たという。
 とはいえ、すべてが順風満帆のプロジェクトだったわけではない。「Sirens」制作中、ケヴィン・リチャード・マーティンは、その人生において最もハードな時期を迎えていたのだ。というのも彼の妻は、息子を生んだあとすぐに、集中治療室に入り、その命を失いかけていた(このインタヴューに詳しい)。
 そんなケヴィン・リチャード・マーティンの人生の局面に訪れた極めてハードな事態に呼応・象徴するかのように、『Sirens』の音響は、極寒地帯における豪雪のように厳しく、しかし生命の誕生そのものを象徴するように「崇高さ」へと生成変化を遂げていく。

 ここでサウンド面の考察に戻ろう。ザ・バグ、テクノ・アニマルなどの複数の名義を使い分ける彼のエクスペリメンタル方面といえば、キング・ミダス・サウンドのほかにも、ソニック・ブームとケヴィン・シールズらによるはエクスペリメンタル・オーディオ・リサーチの活動を思い浮かべてしまう方もいるだろう。
 本作の特徴は極めて10年代な音響空間を生成している点にある。多層的な電子音響のレイヤー/持続が繊細かつダイナミックに変化を遂げつつ、まるで嵐の中に身を浸すかのような音の壮大な蠢きを生成していくのだ。このミクロとマクロを往復するようなサウンドは10年代以降の音だ。キング・ミダス・サウンドでフェネスとコラボレーションした『Edition 1』(2015)の追求・実験・実践が、本作に強い影響を与えているのではないかとも想像してしまった。
 アルバムには全14曲が収録されているが、どのトラックも統一的なムードを保持しながらも、それぞれが微細にサウンドのトーンを変えており、まるで映画のサウンドトラックのように進行する。特に2曲めから5曲めまでの変化は強烈な聴取体験をもたらすだろう。その変化は繊細であり、しかしダイナミックでもあり、メランコリックですらあり、ドラマチックでもある。
 使われている音は「フォグホーン、ダブ・サイレン、ドローン・ベース、ホワイト・ノイズ、エフェクト」というが、音の層が重なりつつ、音響空間が拡張してくようなサウンドは、アンビエント/ドローンによる受難曲のように響く瞬間があった。聴き手の心理状態をトレースしていくかのように音響は進み、変化する。
 本作『Sirens』には「受難」と「祈り」、そして「救い」への希求が、静謐な電子音響の表面に、内奥に、その向こうに、確かに、微かに、強く、弱く、しかし意志を持って息づいているように感じられた。加えて8曲めなど、ドローンであっても低音部分の強調が見事であり、その鈍い響きはまるで心臓の鼓動のように聴こえもした。
 つまり本作はドローン化したベース・ミュージックという側面も少なからずあると思うのだが、いかがだろうか(キーは低音=心臓の鼓動だ)。となればできうる限り爆音で聴取をする必要があるだろう。小さな音で「流しては」だめなのだ。もともとサウンド・パフォーマンスとして発表されたこともそれと無縁ではあるまい。音に深く没入する必要がある。

 特に9曲め以降、ノイズのトーンに微かな明るさが宿ってきている点に注目してほしい。12曲めからラストの14曲めまでは本作の音響が絶頂を迎える瞬間が記録されており、文字どおりクライマックスだ。音の繊細さ、過剰さ、ミニマル、ダイナミック、持続、拡張は、ケヴィン・リチャード・マーティン個人の受難を浄化し、聴き手の心も昇華する。徹底的な没入的聴取の結果、サウンドが一種のセラピーのように心身に「効く」とでもいうべきか。音による救済の感覚。
 そんな誇大妄想的な感想すら持ってしまいそうなほどのアルバムである。「雪」のように冷たい結晶によって世界が構成されているこの現代において、人の心の奥底に蠢く光のようなノイズ・ドローン・アンビエントを聴くこと、聴覚と感覚の新たな可能性を示してもいる。このアルバムの暗い音を聴くことは「希望の聴取」なのだ。

Smany - ele-king

 これまで world's end girlfriend と Vampillia‬ のスプリット盤に参加したり、ネット・レーベル〈分解系レコーズ〉からアルバムを発表してきたエレクトロニカ・アーティストの Smany(エスメニー)が、初のフィジカル盤となる4作目『to lie latent』を〈PROGRESSIVE FOrM〉より発売する。同作はこれまで〈分解系レコーズ〉からリリースしてきた3作『komoriuta』『polyphenic』『kotoba』のなかからセレクトされた曲に、未発表曲などを加えた構成となっているとのこと(タブラ奏者の U-zhaanをフィーチャーした曲も)。繊細なヴォーカルと電子音の交錯に耳をそばだてよう。

Smany
to lie latent

2013年にオンライン・レーベルの雄である〈分解系レコーズ〉よりリリースした1stアルバム『komoriuta』以降、2014年の2ndアルバム『polyphenic』、2017年の3rdアルバム『kotoba』とコンスタントにリリースを重ねながら国内外問わず数多くのアーティストともコラボレーションを続け非常に高い評価を得てきたアーティスト Smany、本作は〈分解系レコーズ〉よりリリースした3枚のアルバムよりセレクトされたベストテイクをベースに、名曲の誉れ高い“2113”の2019ヴァージョンや未発表曲“夜間飛行”、タブラ奏者の‪ U-zhaan ‬をフィーチャンリングした“・A・”といった魅力たっぷりの楽曲から構成された4枚目のアルバムとなる待望の初フィジカル作品!

潜在的なという意味のアルバム・タイトル「to lie latent」と冠された本作を聴くにつれ、改めてコンポーザーとしての Smany というアーティストの魅力、また音域が広く素晴らしい声質や表現力の多彩さかつ繊細さといったヴォーカリストとしての才能を感じざるをえない。
それは冒頭でも触れた名曲“2113”、壮大な情景を描いた“静かな嵐は過ぎ去って”、深い精神性を感じさせる“・A・ feat.U-zhaan”のみならず、オープニングを飾り ‪Sigur Rós ‬を彷彿とさせるインストゥルメンタル“The Cycles Of Life”、軽快なリズムがポップなダンスチューン“Music”、感傷と風景が交差するエンディングの“あれから”をはじめ、様々な世界観を表現できうる幅広いバックグランドを感じさせながら、アルバムが一重の糸によって紡がれそっと包み込まれる感覚は、Smany という人物の深く豊かなアーティスト性を色濃く写し出している。

本作は、これまでにエレクトロニックとアコースティックが芳醇な潤いを繋いできたサウンドにおけるヴォーカル作品として、2010年代を総括するアルバム、また先を見据える2020年代という未来をも明示する可能性を存分に秘めたアルバムと言えよう。
それはこれまで Smany に触れてきた人々にとっても、そうではない人々にとっても、優しい光が差し込むがごとく人々を心を照らすだろう。

アートワークは、シュールレアリズムの手法、デペイズマンの影響を強く受け、ユーモアのあるデザイン、根拠のあるデザイン、ターゲティングされたデザインを制作する事を信念とし評価の高いグラフィックデザイナー兼写真家 ISAMYU / YUKI MOTEGI が担当。
マスタリングはミュージシャン/アレンジャー/レコーディング・エンジニア/作曲家/ライターとしても定評の中村公輔が担当。

発売日:2019年6月12日(水)
アーティスト:Smany(エスメニー)
タイトル:to lie latent(トゥー・ライ・レイタントゥ)
発売元:PROGRESSIVE FOrM
販売元:ULTRA-VYBE, INC.
規格番号:PFCD89
価格(CD):税抜本体価格¥2,200
収録曲数:11曲
JAN:4526180482376

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Tracklisting

01. The Cycles Of Life
02. Music (Hypo77 Arrange Ver)
03. 2113 (2019 Ver)
04. Maboroshi
05. 砂の城
06. 静かな嵐は過ぎ去って
07. Utakata
08. Himeshi-Lucy feat. Smany (yuichi NAGAO remix)
09. ・A・ feat. U-zhaan
10. 夜間飛行
11. あれから

■ Smany(えすめにー)

東京在住の作曲家、ヴォーカリスト、パフォーマー。
幼少期より家族の影響でクラシック、洋楽、邦楽と音楽の溢れる環境で育つ。
5才から12才までクラシックバレエを習う。
中学時代は合唱部、高校時代は軽音楽部とダンス部に所属。
2003年、テクノロックバンドのフロントマン S-many としてパフォーマンス、電子楽器、VJ等を担当。
2005年、バンドの活動休止と同時にソロでの楽曲制作を始める。
2013年、〈分解系レコーズ〉より1stアルバム『komoriuta』をリリース、OUT OF DOTS、Red Bull Music Academy Weekender EMAF TOKYO 2013 等のイベントに出演。
2014年、〈分解系レコーズ〉より2ndアルバム『polyphenic』をリリース
2015年、world's end girlfriend、‪Vampillia‬、中原中也のスプリット・アルバム『在りし日の声』に朗読者として参加。
2017年、3rdアルバム『kotoba』をリリース。
2017年9月 バンド "えすめにーと愉快なにゃんにゃんオーケストラ" を結成。
その他、ベルリン在住の Yu Miyashita、タブラ奏者の ‪U-zhaan‬、yuichi NAGAO、LLLL、アメリカのエレクトロポップバンド、ビリンダブッチャーズ、フランス〈kitsuné〉所属の Manast LL' 等、国内外問わず数多くのアーティストとコラボレーションしている。
そして2019年6月、初のフィジカル盤となる4thアルバム『to lie latent』を〈PROGRESSIVE FOrM〉よりリリースする。

Vampire Weekend - ele-king

 前作『Modern Vampires of the City』から6年もの時を経て届けられたヴァンパイア・ウィークエンドの新作『Father of the Bride』を繰り返し聞きながら、ぼくは複雑な気持ちになっていた。なんだかノれない。いや、正確にいうと、今年1月にリリースされた最初のシングル、“Harmony Hall”と“2021”を聴いたときからそうだった。次のシングルである“Sunflower”と“Big Blue”、そして“This Life”と“Unbearably White”を聞き、ますますその思いは深まっていった。これらの楽曲からは、ある種の音楽的な保守性を感じていた。鮮烈な2008年の『Vampire Weekend』とそれに続く2010年の『Contra』、そして悩ましげな2013年の『Modern Vampires』をそれぞれ初めて聴いたときの驚き、“A-Punk”や“White Sky”、“Step”や“Ya Hey”の力強さは、そこにはなかったと言っていい。6年前に沈鬱な面持ちでニューヨーク・シティを眺めていた吸血鬼たちの姿は消え、代わりに見えてきたのは、陽光が降り注ぐLAでにっこりと笑ってわが子を抱えたエズラ・クーニグの姿だった。そう、クーニグ自身が語るように、「人生は進む」。後ろに進んだら大変だからだ。

 “Harmony Hall”のシンコペーションするピアノやクワイア、コンガの響きからはローリング・ストーンズの“無情の世界(You Can't Always Get What You Want)”を、あるいはそれを意識的になぞったプライマル・スクリームの“Loaded”や“Come Together”を思い出した。そして、スティーヴ・レイシーとの“Sunflower”や“This Life”のギターの音色(『Father of the Bride』はギターのアルバムでもある)からは、一貫してバンドの音楽にインスピレーションを与え続けきたアフリカのポップ・ミュージックにおけるそれを想起した。つまりそこから聞こえてくるのは、驚きや鮮やかさというよりは、ある種の安心感をともなった既視感、既聴感。ぼくは『Father of the Bride』を聞いて、西アフリカのザイールを代表するギター・ヒーロー、フランコのCDを引っ張り出してみたり、持っていなかった彼の作品をいくつか買い足したりした。それから、大陸南部にあたるジンバブエの、トーマス・マプフーモのミニマルで陶酔的だが同時に戦闘的なチムレンガに思いを馳せたり、キューバ音楽からの影響が色濃いギニアのベンベヤ・ジャズ・ナシオナルをランダムに聞いてみたりもした。そんなことをしながら、〈シラール・レコーズ〉のファウンダーであるイブラヒマ・シラの娘、ファンタ・シラが書いた記事「ヴァンパイア・ウィークエンドに父の遺産を聞いて」を興味深く読んだ。

 〈シラール・レコーズ(Syllart Records)〉は1981年に設立されたパリのアフリカ音楽レーベルで、セネガルのユッスー・ンドゥールやマリのサリフ・ケイタを西欧世界に送り出し、1980年代から1990年代の、いわゆるワールド・ミュージックという市場の確立、その興隆に一役買った(忘れられがちなことだが、北・西・中央アフリカに多くの領地を持っていたフランスは、ワールド・ミュージック市場の要地だった)。その設立者の娘、ファンタは姉から手渡されたヴァンパイア・ウィークエンドのファースト・アルバムを聞いたとき、そこに父が紹介した音楽からの影響を見て取って、誇らしい気持ちになったという。セネガルのンバラ、コンゴレーズ・ルンバやスークース、ズーク・マンディング、コール・アンド・レスポンス……。コロンビア大学の学生たちによる無邪気で知的なアフロポップ風のインディ・サウンドは、「文化の盗用」という以上に植民地主義的だったが、そこにもっとも自覚的になれるはずのシラ自身にとっても問題は複雑だった。彼女はヴァンパイア・ウィークエンドの音楽が好きだったし、大切なものにも感じていたからだ。だが同時に、批判をまぬがれえないともシラは考える。彼ら自身がつけたバンドの見事なコピー「アッパー・ウェスト・サイド・ソウェト」も、スークースやルンバから影響を受けている彼らの音楽にはふさわしいものでなく、ナイーヴだとすら彼女は感じる。どうしてコンゴのキンシャサじゃなくて、南アフリカのソウェトなのか? シラはそう問いかける。

 ここにあるのは、大陸のそこここで独自の文化と様式を持ち、発展している多様なアフリカ音楽の一面化やステレオタイプ化の問題だ。ビザの問題で自国外へのツアーが困難になっているアフリカの音楽家たちを思いながら、シラは「アフロポップ」、「アフロビーツ」、「トロピカル」、そして「ワールド・ミュージック」という曖昧なタームに疑問を投げかけている。彼女のテキストを意訳するならば、アフリカの音楽やミュージシャンたちには(自国でそうされているように)尊敬とともに適切な名が与えられることが必要だということだろう。「アフロポップ」や「ワールド・ミュージック」といった定義の定まらない、ふわっとした言葉をあてがうのではなく、ましてや西アフリカの音楽から影響を受けたニューヨークのバンドを「アッパー・ウェスト・サイド・ソウェト」と呼んでしまうのではなく。

 コンゴ民主共和国の複雑な歴史性とアイデンティティを反映したルンバ/スークースの影響下から離れたとき、バンドは新しい道筋を描き出すだろうとシラは結論づけている。しかしヴァンパイア・ウィークエンド=エズラ・クーニグは、『Modern Vampires』で一度手放したかのように思えた西アフリカの音楽の要素を『Father of the Bride』で自覚的に、再び呼び戻したかのように思える。もちろん、このアルバムを構成しているものはそれだけではないとはいえ、“Rich Man”ではシエラレオネのギタリスト、S.E.・ロジーの“Please Go Easy With Me”がサンプリングされており、先の“This Life”や“Flower Moon”はフランコのギターの音色や音楽を連想させる。クーニグはこのアルバムをインスパイアしたものとして、セガのテレビゲームや三宅一生、ガンダムのポスター、ノースフェイスのテント……といったものを挙げているが、そういったものを並べあげる前に、『Father of the Bride』を音楽的にインスパイアしたものをあきらかにするべきなのではないかと、ぼくは正直にいってそう思った。

 アメリカを憂いながらもクーニグが自身の人生と新たな生命、そして伴侶を祝福するこのアルバムを、だからといって聞く価値がないものだと切り捨てるつもりはない。特にクーニグの言葉には、これまで以上の鋭さや詩的な熱を感じさせるものがたしかにある。たとえば、「怒りは声を求め、声は歌を求める/やがて何も聞こえなくなるまで、歌い手たちはハーモニーを響かせる」(“Harmony Hall”)という詞はエコー・チェンバーの描写として見事だと思ったし、「ベイビー、憎しみは常に門の前で待ち構えている/朝出かけるときには鍵をかけたはずだったけれど」(“This Life”)というラインからは、ヘイトを外部にあるものとして一面的に遠ざけるのではなく、内在し、逃れえない感情として向き合う姿を感じさせる。

 吸血鬼たちのビルドゥングスロマンとしても聞くことができる三部作を経て、ひとつのフェーズを終え、役割をまっとうしたヴァンパイア・ウィークエンドというバンドは、『Father of the Bride』で新しい展開を見せている。クーニグがカニエ・ウェストのレコーディングに参加した経験を念頭に、一曲ごとに複数のミュージシャンを関わらせた制作手法やソングライティングは、これまでにない試みだろう。きっと、ここがバンドの新たな始点になる。ピッチフォークのマイク・パウエルはこのアルバムをボブ・ディランの『セルフ・ポートレイト』や『新しい夜明け』にたとえているけれど、そのアナロジーをじぶんなりに言い換えれば、『血の轍』や、あの苛烈な『欲望』とローリング・サンダー・レヴューはこのあとにやってくるということ。ぼくはヴァンパイア・ウィークエンドの音楽にもう一度驚かせてもらえると、そう信じている。

Actress - ele-king

 先日、シュトックハウゼンの再解釈公演が話題となったアクトレスですが、ニュー・アルバムの情報をツイッターにて明かしています。今年10月に〈Ninja Tune〉よりリリース予定の新作は、『Karma and Desire』というタイトルで、「ケイオスIII」なる何者かによってミックスされているとのこと。ケイオスIII、いったい何者なんだ。もしや新しいA.I.なんて可能性も……。ともあれ、秋が楽しみです。

grooveman Spot - ele-king

 仙台を拠点に活動するDJ/プロデューサー、grooveman Spot によるビート・アルバム『Resynthesis』シリーズの第三弾である本作。ここ1年だけでも向井太一や iri といった人気シンガーや、ラッパーである ZORN のプロデュース、あるいは THE BLUE HEARTS のリミックス・アルバムなど、grooveman Spot はその幅広い音楽性を武器に様々なプロジェクトを手がけている。そして、ソロ・アーティストとしては、2014年にリリースされた『Supernatural』まで通算6枚のソロ・アルバムをリリースし、ヒップホップやR&Bだけでなく、ブギー、ファンク、ハウス、テクノ、アフリカなど、様々なダンス・ミュージックのスタイルをミックスさせ、自らのスタイルを作り上げてきた。その一方で、これまで『Resynthesis (Red)』(2016年)、『Resynthesis (Green)』(2018年)とリリースを重ねてきた、この『Resynthesis』シリーズに関しては、彼のルーツであるヒップホップに軸が置かれており、ソロ・アルバムとはまた別のカラーを持った、良い意味で非常に尖った作品になっている。

 これまでの『Resynthesis』シリーズと同様に、今回の『Resynthesis (Purple)』で表現しているサウンドは、個人的には90年代後半から2000年代にかけてのアンダーグラウンド・ヒップホップがときおり思い出される。しかも、それはどちらかと言えば、あの当時のアンダーグラウンド・ヒップホップの中でも亜流と言われるような、ダークでノイジーなヒップホップの中にエレクトロニカやブレイクビーツといった要素がミックスされたようなサウンドであり、日本で言えば、INDOPEPSYCHICS(インドープサイキックス)がやっていたようなことにも近い感触だ。ただ、それはこのアルバムにノスタルジーを感じているからというわけではなく、むしろその逆で、2000年以降の様々なスタイルのヒップホップを内包した上での、1歩も2歩も先を行く、未来のサウンドが本作には詰まっている。ちなみに“Pegasus”という曲に関しては、明らかにJ・ディラへのオマージュとして作られているのだが、もし、J・ディラがいまも生きていたら、あの名盤『Donuts』の続編として、こんなアルバムを作ったのでは?とも、勝手な想像さえも膨らんでしまう。

 もともと、grooveman Spot 自身がダンサー出身ということもあるだろうが、この『Resynthesis』シリーズはヒップホップ・ダンサーにも人気が高い。サンプリングだけでなく、おそらくヴィンテージのシンセサイザーなども駆使して、直感的でありながらも、実に複雑に絡んでいくエッジの効きまくったビートに、ダンスという表現方法が見事にピッタリとハマるのは納得できる。ただ、ないものねだりであるが、このスタイルのビートだけで構築された、ラッパーやシンガーをフィーチャーした作品も、個人的には聴いてみたいとも思ったりもする。ジャジスポさん、いかがでしょうか?

Jamie 3:26 - ele-king

 故Frankie Knucklesと双璧をなす伝説のDJ、Ron Hardyがレジデントを務めたクラブ「MUSIC BOX」。シカゴの326 Lower North Michigan通りに面したこのヴェニューで、ダンス・ミュージックとは何か? を学び、今ではRonの意思を継ぐ現役最後のDJとも称されるJamie 3:26。
 彼を知るアーティストの仲間やプロモーターの誰もが「Jamieは特別」と口を揃え、圧倒的なキャラクター、そしてDJの姿勢からはハウスミュージックへの愛とリスペクトが心の底から伝わってくる。
 そんなJamie 3:26が2年越しに日本へカムバック!!
 東京、盛岡、名古屋、神戸と4都市をまたぐジャパン・ツアーを開催。
 全てのダンスフロアに極上の多幸感と熱量をもたらす唯一無二の存在。
 全公演VIBES ONLYでお届け、お見逃しなく!!!!

øjeRum - ele-king

 デンマークのコペンハーゲンを拠点とするダーク・アンビエント・アーティスト øjeRum の新作『On the Swollen Lips of the Horizon』が、音響作家リチャード・シャルティエが主宰する音響系レーベルの老舗的存在の〈LINE〉からリリースされた。
 このニュースを知ったとき øjeRum をリリースするというレーベルの審美眼に唸ってしまった。いっけん意外なキュレーションだが、音響レーベルの老舗〈LINE〉が送り出す必然性があるように思えたからだ。彼の音楽/音響にはエクスペリメンタル、アンビエントにおける2010年代後期的な「何か」がある。ダーク/ゴシックな感覚とでもいうべきか。これは極めて現代的なセンスである。

 øjeRum、本名はポウ・グラボウスキー(Paw Grabowski)という。2007年頃にフランスの〈Rain Music〉から音響フォーク『There Is A Flaw In My Iris』という作品をリリースしているが、現在のようなダーク・アンビエントへと変化を遂げ、大量のリリースを実践するのは、2014年に『He Remembers There Were Gardens』をセルフリリースしてからのことだ。以降、『Sange Til Døende』(2014)、『The Blossoming Of The Nothingness Trees』(2016)、『Needleshaped Silence』(2017)『Sometimes I See Myself Sleeping In A Stone Of Falling Eyes』(2018)、『Træerne & Intetheden』などのアルバムやEP、カセット、CDや7インチ盤の超限定盤リリースを膨大におこなってきたわけだ。
 くわえてヴィジュアル・アーティストでもある彼によるアートワークも美麗で、ゴシックな美意識で統一されている。CD-Rとアート写真をセットにした『A Certain Grief』(2018) のように75部しかコピーしないような私家盤に近い作品もあり、コレクションへの欲望を喚起してきた。ちなみにフランスのレンヌにあるギャラリー「Le Bon Accueil - Lieu d'arts sonores」において個展が開催されるなどヴィジュアル・アーティストとしての評価も高い。

 彼の膨大な作品の中で、2017年に発表された『Skygge』はCD作品であり、多くの耳に触れられる機会のあったアルバムである。美しい悪夢のようなゴシックなサウンドスケープがまとまったコンポジションで展開しており、「øjeRum の膨大なディスコグラフィの中で最初に聴くべきアルバムはどれか」と問われたら、「これまで」ならば『Skygge』と答えたであろう。
 この『Skygge』も含めて、øjeRum のフィジカルはほぼ売り切れとなっているものの、その多くは bandcamp などで聴くことができる。2019年もすでに『Silent Figure With Landscape』、『Syv Segl』、『Sange Til Døende {Pladeselvskab Reissue}』、『Nattesne』、『There Is A Flaw In My Iris』、『Don't Worry Mother, Everything Is Going To Be Okay』などの作品を送りだしてしているが、〈LINE〉にピックアップされたことで、さらに多くのアンビエント・音響マニアの耳に届くことになるのではないか。
 むろん著名レーベルからのデジタル・リリース作品だからといって、これまでの彼の作風となんら変わっているわけではない。そのサウンドは、闇夜で祈るかのごとき「崇高さ」を感じさせるアンビエンスだが、『On the Swollen Lips of the Horizon』も「ゴシック・ノスタルジア・アンビエント」とでも形容したいサウンドに仕上がっていた。〈LINE〉は、彼の作品・楽曲を「手書きのコラージュの視覚的な対応物を用いて、大気中および感情的に帯電した環境記録を作成する」とインフォメーションしているが、まさにそのとおりの音といえる。デイヴィッド・トゥープの語る「エーテルトーク」のようなアンビエントだ。
 アルバムには30分に及ぶ“on the swollen lips...”、22分35秒にわたる“...of the horizon”の長尺2曲と5分8秒ほどの“on the swollen lips... (excerpt)”が収録されている。ドローン、電子音、環境音が交錯し、まるで記憶にのみ存在する映画の音響空間のように霞んだ質感のサウンドスケープを生成していく。レーベルは「ウィリアム・バシンスキーとセラーのファンのための催眠的な周期的感情ジェスチャー」と書いているが、確かにバシンスキーセラーのように記憶を融解させてしまうような音響的質感を感じた。深いノスタルジアが、エーテルのように漂っているとでもいうべきか。記憶の夢、夢の記憶。夢幻のサウンドスケープ。そのアンビエンス、アンビエント……。

 本年2019年はザ・ケアテイカー、ザ・フューチャー・イヴ・フィーチャリング・ロバート・ワイアット、ヤン・ノヴァク、フェネス、サンO)))、ティム・ヘッカーの新作など、個性は違えどもアンビエントやドローンの傑作が多くリリースされているが、本作も負けず劣らず重要なアルバムだ。『Skygge』に次ぐ øjeRum の新たな代表作がここに生まれた。

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