「ele-king」と一致するもの

Brandon Coleman - ele-king

 8月のソニックマニアをまえにし、俄然〈Brainfeeder〉が勢いづいております。ロス・フロム・フレンズ、ドリアン・コンセプトに続いて、ブランドン・コールマンが同レーベルと契約、9月14日に新作をリリースします。カマシ・ワシントンライアン・ポーターの作品でもおなじみの彼ですが、きたるリーダー作ではどんなサウンドを届けてくれるのか。先行公開された“Giant Feelings”を聴いて待っていましょう。

BRANDON COLEMAN
2018年型ファンク・オデッセイ!!!
LA新世代ジャズを牽引する鍵盤奏者が〈BRAINFEEDER〉と契約!
カマシ・ワシントンらLAジャズ集団WCGDメンバーも集結した
ブランドン・コールマン待望の最新アルバム
『Resistance』のリリースが決定!
リード・シングル「Giant Feelings」をMVと共に公開!

隠しディスクを含む3枚組CD(LPは5枚組)でリリースされたカマシ・ワシントンの超大作『Heaven & Earth』に続き、そのカマシ・ワシントン、サンダーキャットらと共にLA新世代ジャズ・シーンを牽引するメイン・プレイヤーにして、スティーヴィー・ワンダーやアース・ウィンド&ファイアといったレジェンドから、チャイルディッシュ・ガンビーノ、アリシア・キーズ、ベイビーフェイス、ケンドリック・ラマー、そしてもちろんフライング・ロータスまで、錚々たるアーティストに絶対不可欠なファンキー&グルーヴを注ぎ込む鍵盤奏者のブランドン・コールマンが、〈Brainfeeder〉と契約! カマシ・ワシントンやマイルス・モズレー、ライアン・ポーターらLAジャズ集団WCGD(ウェスト・コースト・ゲット・ダウン)のメンバーが集結した待望の最新アルバム『Resistance』を9月14日(金)に世界同時リリースする。アルバムの発表に合わせて、カマシ・ワシントンも参加したリード・シングル「Giant Feelings」がMVと共に公開された。本楽曲はもともと、カマシ、マイルス・モズレー、ロナルド・ブルーナー・ジュニア、サンダーキャットことスティーヴン・ブルーナーら、WCGDメンバーらとプレイすることを目的に書かれたという。

Brandon Coleman - Giant Feelings (feat. Patrice Quinn & Techdizzle)
https://www.youtube.com/watch?v=tgMHcBx_eKQ

本作『Resistance』では、パーラメント/ファンカデリックのジョージ・クリントンやザップから、ドクター・ドレー、DJクイック、デイム・ファンクにわたる、ファンク王朝の正統な後継作であると同時に、ブランドンにとってのヒーローたち、ハービー・ハンコック、ピーター・フランプトン、ロジャー・トラウトマンといった先駆者の自由と実験の精神を称え、ファンクの新時代の到来を高らかに告げる内容となっている。

カマシのバンド・メンバーでもあり、名作『The Epic』及び最新アルバム『Heaven & Earth』にも名を連ね、ほかにもフライング・ロータスの『You're Dead!』、ライアン・ポーターの『Spangle-Lang Lane』や『The Optimist』、クァンティック&ザ・ウェスタン・トランシエントの『A New Constellation』などLAジャズ周辺作品に参加する一方、ベイビーフェイス、アリシア・キーズなどR&B方面から、スタンリー・クラーク、マーカス・ミラー、ケニー・ギャレット、クリスチャン・マクブライド、ロイ・ハーグローヴら大物ジャズ・ミュージシャンに起用され、さらにスティーヴィー・ワンダー、アース・ウィンド&ファイアというレジェンダリーなアーティストとの共演も果たすなど、超一流のセッション・ミュージシャンとしての腕を磨いてきたブランドン。近年ではラッパー兼俳優のチャイルディッシュ・ガンビーノと共演し、グラミー賞授賞式のステージでバックを務めたことも話題を呼んだ。自身のソロ活動ではアルバム『Self Taught』を2013年にデシタル・リリース(2015年にCD化)している。

本作『Resistance』は、彼のマルチ・ミュージシャンぶりにさらに磨きをかけ、『Self Taught』での音楽性をより強固に、2018年の今にアップデート。主な録音メンバーには、カマシ・ワシントン(サックス)、ライアン・ポーター(トロンボーン)、ロバート・ミラー(ドラムス)、ミゲル・アトウッド・ファーガソン(ヴィオラ、ヴァイオリン)ほか、クリストファー・グレイ(トランペット)、ジーン・コイ(ドラムス)、オスカー・シートン(ドラムス)、ジェイムズ・アレン(パーカッション)、センミ・モウレイ・エルメーダウィ(ギター)らが参加。新たに新進女性ヴァイオリン奏者のイヴェット・ホルツヴァルトほか、コリー・メイソン(ドラムス)、ビリー・オドゥム(ギター)らセッション・ミュージシャンが脇を固め、カマシのバンドのリード・シンガーとして知られるパトリース・クイン、ゴスペルをルーツに持つネオ・ソウル系名シンガーのエンダンビほか、シーラ、ドミニック・シロー、トリシア・バッターニら多彩なヴォーカル陣が名を連ねている。

1980年代のブギー・ディスコ調のスタイルは、現代ならタキシードからデイム・ファンクなどに通じるもので、ジャズ以外の幅広い音楽ファンにもアピールする力を持っている。ハービー譲りのコズミックなメロウネス、スティーリー・ダン譲りのポップさも垣間見られる一方、LAの〈SOLARRecords〉、そしてPファンクやザップ、ロジャー・トラウトマンなどの流れも彷彿とさせる。ミディアム~スロー・ナンバーも秀逸だ。2017年を代表する名アルバムとなったサンダーキャットの『Drunk』と同じベクトルで、ジャズ、ファンク、ソウル、ブギー、AORなどのエッセンスをブレンドした現代のアーバン・ブラック・コンテンポラリー・サウンドが、ここに完成した。

ブランドン・コールマン待望の最新アルバム『Resistance』は9月14日(金)に世界同時リリース! 国内盤CDには、ボーナストラック“Dance with Me”が追加収録され、歌詞対訳と解説書、ステッカーが封入される。またiTunes Storeでアルバムを予約すると、公開された“Giant Feelings (feat. Patrice Quinn & Techdizzle)”がいち早くダウンロードできる。

label: BRAINFEEDER / BEAT RECORDS
artist: Brandon Coleman
title: Resistance

release date: 2018.09.14 FRI ON SALE

国内盤CD:BRC-573
ボーナストラック追加収録 / 解説書・歌詞対訳封入

[ご予約はこちら]
beatink.com: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9795
amazon: https://amzn.asia/2b5jAHm
Tower Records: https://bit.ly/2zLZQrl
HMV: https://bit.ly/2Lh9nuY

iTunes: https://apple.co/2NuAGPX
apple music: https://apple.co/2zQL8PD
Spotify: https://spoti.fi/2LsWI8t

[Tracklisting]
1. Live For Today
2. All Around The World
3. A Letter To My Buggers
4. Addiction (feat. Sheera)
5. Sexy
6. There’s No Turning Back
7. Resistance
8. Sundae (feat. N’Dambi)
9. Just Reach For The Stars
10. Love
11. Giant Feelings (feat. Patrice Quinn & Techdizzle)
12. Walk Free
13. Dance with Me (Bonus Track for Japan)

BRAINFEEDER XANNIVERSARY POP-UP SHOP
開催日程: 8/10 (金) - 8/12 (日)
場所: GALLERY X BY PARCO

フライング・ロータス主宰レーベル〈BRAINFEEDER〉の10周年を記念した日本初のポップアップ・ショップ開催決定!
8月10日~12日の三日間に渡って、渋谷スペイン坂のギャラリー X にて、日本初のポップアップ・ショップを開催! ここでしか手に入らない10周年記念グッズやレアな輸入グッ ズ、入手困難だった人気グッズの復刻、さらにアート作品の展示や〈BEAT RECOREDS〉のガレージセールなども同時開催! 初日にはDJイベントも!

詳細はこちら:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9778

SONICMANIAに〈BRAINFEEDER〉 ステージが登場!
今年設立10周年を迎えたフライング・ロータス主宰レーベル〈BRAINFEEDER〉。サマーソニックに引けを取らない強力な出演陣が大きな話題となっている今年のソニックマニアでは、フライン グ・ロータス、サンダーキャット、ジョージ・クリントン&パーラメント・ファンカデリックという最 高の布陣に加え、ドリアン・コンセプト、ジェームスズー、ロス・フロム・フレンズら、フライング・ ロータスが激推しする逸材が一挙集結!

SONICMANIA 2018
www.sonicmania.jp

Ben Khan - ele-king

 トム・ミシュジェイミー・アイザックにと、エレクトロニック・ソウルの新世代たちがつぎつぎに頭角を現している昨今。先日ご紹介したカラムもその新たな息吹のひとつですが、ここへ来てさらなるニュー・カマーの登場です。彼の名はベン・カーン。これまでいくつかのシングルをリリースし注目を集めてきたエレクトロニック・ファンクの新鋭が、この8月、ファースト・アルバムを発表します。プロデューサーはフラッド。同作収録曲のライヴ映像が公開されていますので、まずはそちらをチェックしておきましょう。

・近未来エレクトロニック・ファンク! UK新鋭プロデューサー、ベン・カーンがデビュー作から“a.t.w. (against the wall)”のライヴ映像を公開!
・日本盤は8月29日(水)に発売決定!

英ロンドンを拠点に活動するエレクトロニックR&Bプロデューサー、ベン・カーン。敏腕プロデューサー、フラッド(デペッシュ・モード、スマッシング・パンプキンズ他)を迎えて制作されたセルフ・タイトルのデビュー・アルバムより“a.t.w. (against the wall)”のライヴ映像が公開された。カーン自身とライティング・デザイナーのトバイアス・ライランダー(FKAツイッグス、ドレイク、バレンシアガ他)が本映像を手掛けている。暗闇の中飛び交う無数のレーザーが近未来的な世界を表現している。

新曲“a.t.w. (against the wall)”のライブ映像はこちら
https://youtu.be/1Fzr8nuBNxM

収録曲“Do It Right”のMVはこちら
https://youtu.be/1qfhFaA6dr8

収録曲“2000 Angels”のMVはこちら
https://youtu.be/Rt7TxeZNs9Q

さらに、デビュー・アルバムの日本盤が8月29日(水)に発売されることが決定した! ダウンロード・ボーナストラックに加えて、歌詞対訳とライナーノーツが封入予定。ライナーノーツにはカーンによる1言楽曲解説も記載されているので、ぜひ日本盤を手にとってほしい。


■リリース情報
アーティスト名:Ben Khan (ベン・カーン)
タイトル:Ben Khan (ベン・カーン)
発売日:2018年8月29日(水)
品番:HSE-6836
レーベル:Dirty Hit / Hostess
価格:2,100円+税

※初回仕様限定:ボーナストラック・ダウンロードコード付ステッカー封入(フォーマット:mp3 / 発売日から1年間有効)。ライナーノーツ、歌詞対訳(予定)

Amazon / Tower / HMV / iTunes

[トラックリスト]
01. 2000 angels
02. do it right
03. monsoon daydream
04. ruby
05. a.t.w (against the wall)
06. fool for you
07. the green
08. soul into the sun
09. our father
10. love faded
11. dntwanturluv...
12. merchant prince
13. ruby1strecording
14. waterfall
15. warriors rose

新曲“a.t.w (against the wall)”含む4曲配信開始&アルバム予約受付中!
リンク:smarturl.it/j4398l

■ショート・バイオ
英ロンドンを拠点に活動するエレクトロニックR&Bプロデューサー。2013年にファースト・シングル「Drive (Part 1)」を SoundCloud に公開。同年に発表したセカンド・シングル「Eden」が Pitchfork にて「Best New Track」を獲得し、早耳リスナーを中心に一挙に注目を集める。2014年に「1992 EP」、翌年には「1000 EP」を発表。2018年8月、待望のデビュー・アルバムをリリースする。

 NYではガバナーズボールやパノラマなどビッグなバンドが出演する音楽フェスティヴァルが絶賛開催中だが、今回はペンシルヴェニア州のスプリング・ヒルファームへ、手作りの素敵なミュージック・フェスティヴァルに行った。NYから車で約3時間、ここは Mirah の家族が所有するファームである。

 Mirah は、マイクロフォーンズなど多くのバンドとコラボレートし、〈Kレコーズ〉から何枚も作品を出しているシンガーソングライター。今回の出演アーティストは Mirah の友だちがほとんどで、Tara Jane O’Neil、Rebecca Gates (ex. The Spinanes, Decemberists)、Kimya Dawson (ex. the Moldy Peaches)、Fleabite (mem. Aya Neko)、Diane Cluck、Lonesome Leash (ex. Dark dark dark, Hurray for the riff riff)、Death Vessel、TubaFresh などなど計17バンド。
 広い牧場には馬、鶏、羊などがいて、池では泳ぐこともできる。数々の簡易トイレが設置され、夜はキャンプ・ファイアがあり、バンドもお客さんもそれぞれテントで寝る。40歳以上と子供が多く、若者はほとんどいなかった。200人ほどの参加なので、3日間いると自然に顔も覚えてしまった。



 ファームで取れた果物や野菜などを使った、健康的な食事も朝昼夜と提供される(キヌア、ビーツサラダ、タイカレー、パンケーキなど)。アルコールはコンブチャとアップルサイダーで、他は持ち込み。
 皆さん大人なので、アルコールを飲んで大騒ぎをする人もいない。
 料理担当、掃除担当の人もいて、みんなでお皿を洗ったり、なんだか合宿みたいだった。
 昼は池で泳いだり、ハンモックで読書したり、ヨガをしたり、かなりのリラックスぶり。このフェスでは財布を持たなくていい。

 ライヴはアコースティック・セットが多く、最近のトレンドの逆行をいくインディ音楽好きのものだった。演奏中も長いテーブルはそのままで。座って見てもいいし、前でかぶりついてみるのも良し。
 Mirah は、フェスに来たみんなにお礼を言った。そして、彼女のお父さんが音楽を聞かせてくれたおかげでいまの自分があると語った。
 最後の“Energy”と言う曲では、Tara、Chanell (TubaFresh)、Maia がステージに上がり、一緒に演奏した。それが泣いているように聞こえたでの、後で聞くと、彼女のお父さんが危篤状態だったそうだ。数日前に意識が戻り、彼女のステージを見にきたという。彼は車椅子に乗って、ブランケットに包まれ、Mirah を見ていた。
 8回も日本に行っている Tara Jane O’neil は、余裕にウィットに富んでいて、ギターだけなのに、とても安定感があった。Shondes というバンドの Eli と一緒に、REMの“You Are The Everything”をカヴァーした。今後はトータスのドラマー、John Herndon とツアーを回るそうだ。
 ブルックリンの Fleabite は、Aya Neko のメンバーが被っていて、パンクでファジーなロックンロールを奏でた。Death Vessel は、バンドで見るのは初めてで、コントラバス、キーボード、美しいハーモニーなどが加わり、インディ・ブルーグラス風の曲がより光っていた。知ってるバンドもあらためて見ると、また印象が変わる。周りの環境と Mirah の人徳が、このフェスをスペシャルなものにしていた。

 音楽と自然に包まれ、コマーシャル感のまったくないフェス。キャンプファイアを見ながら、大切な物を感じた夜だった。


Mirah & Todd (主催者)

interview with Eiko ishibashi - ele-king






E王


石橋英子

The Dream My Bones Dream


felicity

ExperimentalSound CollageMinimalPop



Amazon

いまだとらえどころのない、石橋英子の過去作品を簡略して言い表すことはできないけれど、そのすべては決してアプローチしづらいものではない。ポップと呼べるかどうかはさておき、その多くには歌があり、リズミカルな旋律があり、ピアノは美しく響き、なんだかんだ言いながらも優美で、曲によってはかわいいメロディや爽やかさもあったのではないかと思う。それは敢えて描かれた、廃墟から見える青空なのか、あるいは自然に出てきたものなのか、ぼくにはわからないけれど、たとえ破壊的な何者かがその奥底でうごめいていたとしてもそうそう気が付かれないような、表面上の口当たりの良さはあった。シンガーソングライターと勘違いされるほどには。
新作はしかし、そういうわけにはいかない。そして同時に、ムシのいい話で恐縮だが、この作品こそぼくがこの異端者に求めていたものではないかとさえ思う。『The Dream My Bones Dream』は、彼女の新しい文体、新しい描写による新しい冒険だ。まっさらなカンバスに描かれる時間の旅行。遷移する「瞬間」の連続。それがある種のミニマル・ミュージックを呼び起こす。型にはまらない音楽をやることは簡単なことではないし、また、それがゆえに人がすぐに理解しうるものではないかもしれないけれど、この作品には、ゆえに生まれたであろう美しい何かがあると思う。それは難しい話ではない。ただ耳を開けば、聞こえてくるもの。『The Dream My Bones Dream』は素晴らしいアルバムだ。



聴こえてくる音と外の世界と心のなかを混ぜてひとつの方向にむかう。そういう行為を続けているだけかもしれないです。自分がどう世界を見るのか、どう対峙するかというときに、これしかできないからというのがあります。この歳になってますますそう思います。


いやー、素晴らしい作品ですね。

石橋:ありがとうございます。

まずこの作品は、これまでとは音楽に対するアプローチを変えている作品ですよね。4年ぶりのソロ・アルバムになるわけですけれど、この4年の間にカフカ鼾であるとか、公園兄弟とかあって、石橋さんとしてはいろんなチャレンジがあったと思うんですけど、しかし、石橋英子のソロ作品だけを追っている人からすれば、今作には驚きがありますよね。とくに『アイム・アームド』みたいな作品を「石橋英子」というふうに思っている人からみたら、「おや?」っていう感じになると思います。だって、今回のアルバムには、ある意味石橋作品のトレードマークであったピアノの演奏がないんですから!

石橋:トレードマーク(笑)? “To The East”という曲だけピアノを弾いています。あとは、ローズとかCPとかシンセですね。

言ってしまえば、ドローンとかミニマルとか、サウンド・コラージュというかミュージック・コンクレートみたいなものを大幅に導入しています。やっぱり石橋さんの作品のひとつの特徴は、ピアノの響きと変拍子であったり、転調であったり……なんかひとつの石橋作品の世界があると思うんですけど、今回はいまで構築してきたそういう自分の世界をいちどまっさらにして、まったく違うアプローチを見せているんですよね。

石橋:そう聴こえるかもしれませんね。

そういう意味では、大胆な変化に挑戦した作品ですね。歌われている歌詞は、日本語でも英語でもなく中国語であったりしますし。この大きな変化はどのようにして起きたのでしょうか?

石橋:自分ではいままでのそういう特徴といわれているものは、作る音楽にとって必要とされ、自然に出てきたことなので、そういう意味では今回も同じといえば同じなのです。4年の間に、もっと言えば6、7年くらいかな、バンドキャンプにいろいろ上げていた作品とかあるんです。フルートだけで作ったりとか、声だけで作ったりとか、シンセの作品など。
そういうものと、4年の間で自分のまわりに起きたこと、いろんな作品、例えばお芝居や映画の音楽を作ったりとか、ノイズの方と一緒にやったりとか。そういうものが全部出ていると思うんですよね。自分がそれを意識してこのような作品になっていったというよりは、ライヴとかレコーディングとかがないときに、4年間、毎日音を探した結果ではないかと思います。今回のアルバムができるまでの行程はひとりの作業が多かった分、その結果がいままでよりも前に出てきたのだと思います。

じゃあわりとごく自然に?

石橋:そうですね。だから、アプローチとかを変えていったというよりは、例えばこのアルバムにとって列車の音というのがひとつのキーになったので、曲によっては列車をイメージしたドラムのリズムから作っていきました。

2曲目“アグロー”とか、3曲目“アイロン・ヴェール”とか?

石橋:そうですね。ドラムのある曲は全部ドラムから作っていこうかなと思って。

この4年の間に秋田昌美さんとコラボレーションをしたり、海外ツアーに行かれたり。そして最近は地方に引っ越しもされて、東京から離れた。いろいろな経験があるなかで、もっとも大きな影響を与えているものは何ですか?

石橋:作品に直接反映させるつもりはあまりなかったのですが、こういう作品になったキッカケとして、あるとしたら父の死は大きいかもしれないですね。音的なことで言うと、引っ越しをしたこともすごく大きいですね。ドラムをずっと叩いても大丈夫というか、長い時間ドラムを叩いても誰も何も言わない環境(笑)。

それは大きいですね。

石橋:大きい音でスピーカーから音を出しながら音を作っていても誰も何も言わないというのはすごく大きいと思いますね。

いままでは都内で叩いていたんですよね?

石橋:都内で叩いていましたよ。雨戸を閉めて(笑)。いまはドラムが家のなかですごく良い感じに響くんですよね。叩いていてすごく楽しくって。響きで何倍もご飯いけるみたいな(笑)。

しかしドラムから作ったというのは意外ですね。

石橋:1曲目の“プロローグ:ハンズ・オン・ザ・マウス”は、実験的にエレクトリック・フルートでいろいろ音を重ねていくうちにできたり。曲によってアプロ―チが違うのですけど、ドラムのある曲はそうですね。実際の録音のドラムは山本達久さんとジョー・タリアさんに叩いてもらっています。ふたりの繊細なドラムの響きは今回のアルバムの大きな特徴です。“Tunnels To Nowhere”という曲はシンセとコラージュから作りました。

お父さんの死というのは石橋さんにとってはすごく個人的なことであり、リスナーに共有して欲しいということを望んでいるわけではないと思うんですけど。

石橋:はい、全然そこは望んでいないですね。

お父さんの死別みたいなものがこの作品にとってひとつキッカケというか何か方向性であるとか、そういうものを与えたとしたらどんなことですか?

石橋:父は生前に全然語りたがらなかったんですけど、満州の引き上げの人で、そのときの写真とかが出てきて。父の死の前後、母と喋ったり親戚から聞いたりして。やっぱりそのことが気分というか頭を支配していて、いろいろ自分なりに調べていったことが曲に反映されていったということがすごくあると思いますね。満州のことについてどういう状況だったのかとか。父はどうやって引き揚げてきてそのあとどうなったのかとか。どういう状況で暮らしていたのかとか。学校でもそのときの歴史をあまり学ぶことができないので、そんな昔のことではないのに、遠い過去の出来事のようになっていると思いました。外国に短い間だけしか存在しなかった国があり、自分の国の人びとがそこにユートピアを求めたという異常な出来事なのに。

満州国ですね。

石橋:満州国の成り立ちを調べていくうちにいまの日本が置かれている状況とあまり変わらないと思いました。だからといってそのことをテーマの中心に置くつもりはなかったのですが、自分はいまの時代と、昔と未来とがすごく繋がっている感じがします。そのことを考えているうちにできあがっていった音が今回のアルバムを構成していきました。

アルバムの途中に出てくる汽車の音がすごく印象的でした。ところで、今回のアルバムを聴いていて、初めて石橋さんの言葉が耳に入ってきたんですよね(笑)。日本語で歌われている曲の歌詞が。

石橋:面白い(笑)。

いままでは、歌は入ってくるのですが、言葉までクリアに耳に入ってきたのは今回が初めてです。

石橋:歌い方が変わったかもしれないですね。

ぼくだけかもしれませんが(笑)。ところで、いまの満州の話を聞いて、なぜ中国語で歌われたのかもわかりました。

石橋:ドラムで作りはじめたときは考えていませんでしたが、曲になるにつれ、どうしても中国語を必要とする曲になっていったのだと思います。

これはどなたかが中国語に訳しているのですか?

石橋:程璧(チェン・ビー)さんというシンガーソングライターの方に私が書いた詩を翻訳して頂いて、デモを歌ってもらいました。

ぼくは日本人なので、すごく興味深い感覚にとらわれますよね。中国という遠くて近い外国、日本との歴史、当事者でありながら、東アジアをどういう風に見たらいいのか、まだぼくたちはよくわかっていないところがあると思います。

石橋:私も中国に実際行ったことがないし、遠くに感じるときもあります。でも実際、身の回りや歴史を見渡すと私たちの生活やルーツに深く関係している国だし、未来のことを考えるときに避けては通れないと思います。

そうですね。ところで、今回はなぜピアノを全面には出さなかったのですか? ある意味では石橋印と言えるじゃないですか(笑)。

石橋:いやいやいや! 自分がそう思っていないからかもしれないですね。自分をピアニストだと思っていないということはあると思いますね。

『アイム・アームド』みたいなアルバムを出しておいて(笑)。

石橋:そうですね。あれは平川さん(※felicityのA&R氏)の希望で(笑)

あれがすごく好きだって人が多いよね(笑)。

石橋:私は残念な事にまだ自分を「◯◯の人」と言う事ができないんです。

いつも思うのですが、石橋さんの音楽はジャンル分けができないんですよね。

石橋:どこに行っても居心地が悪いですよね(笑)。

いまでも良く覚えているのは、石橋さんに最初にインタヴューをしたときに、自分は本当はステージに立ちたくないんだと仰っていたことです。ステージに立ちたくないし、ピアノも楽しくないと。それがすごく印象に残っています。いまでもそうなんですね。

石橋:そうです、そうです。

で、あのあとも思ったのですが、石橋さんはなぜ音楽を作っているのだろうって。すごく大きな話で失礼ですけれど、そういうふうに思ったんですよ。

石橋:それは私もいつも思います。聴いたことのない音、自分を別の場所に連れていくような不思議な響きを追い求めているだけかもしれないです。楽器はなんでも良くて。ライヴをやっていてもそうだし、作品を作っていてもそうだし。聴いたことがない、見たことがない、音の世界を探しているだけという感じはします。


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父の死の前後、母と喋ったり親戚から聞いたりして。やっぱりそのことが気分というか頭を支配していて、いろいろ自分なりに調べていったことが曲に反映されていったということがすごくあると思いますね。満州のことについてどういう状況だったのかとか。父はどうやって引き揚げてきてそのあとどうなったのかとか。






E王


石橋英子

The Dream My Bones Dream


felicity

ExperimentalSound CollageMinimalPop



Amazon


もうひとつよく覚えている話は、高校生のときに地方に居て、いちばん好きだったことは音楽を聴きながら自転車で徘徊をすることだったと仰っていたことです。それはヘッドホンをして?

石橋:そうですね。ウォークマンとかで聴いていました。

いまの話を聞いて、それとリンクした話なのかなと思いました。

石橋:そうですね。聴こえてくる音と外の世界と心の中を混ぜてひとつの方向にむかう。そういう行為を続けているだけかもしれないです。自分がどう世界を見るのか、どう対峙するかというときに、これしかできないからというのがあります。この歳になってますますそう思います。

どんどん円熟を極めているじゃないですか。

石橋:どうかなあ。

高校生のときにヘッドホンをしながら自転車で徘徊をすることが好きだったということは、当時の石橋さんにとって音楽というものは、シェルターみたいなものだったのですか?

石橋:そうですね。うん。

生々しい日常みたいなものから離れられるもの?

石橋:というよりも、生々しい日常をどう見るかというフィルターみたいなもの。

『キャラペイス』を作ったときもインタヴューをしたと思うんですけれど、『キャラペイス』は甲羅という意味だから、自分は殻に閉じこもるということ。

石橋:そうですね。子供のときも家の部屋でラジオとかを大きな音でかけるとすごく怒られました。でもラジオっ子だったし、音楽を聴くことがすごく好きだったので布団のなかに潜って聴いていたんですよ。だからそういうのもあるかもしれないですね。

石橋さんは子供の頃からというか、思春期の頃からひとりでいても平気なタイプだったんじゃないのかなという気がします。

石橋:平気かどうかはわからないけれど、ひとりでいないといけない時間があったと言ったほうが正しいのかな(笑)。人と何かを共有したい気持ちはあったとは思うのですが、子供の頃は自分の気持ちをちゃんと話せるタイプではなかったので、共有できない事と決めていた方が楽だったのでしょうね。本当は人と共有できていたことなのかもしれないですけどね。

でもそうやすやすと共有させたくないという気持ちが石橋さんの音楽にはあるじゃないですか。

石橋:どうでしょう。そういう気持ちはないですが、ひとりで部屋にこもって日々つくっているものを、わりとそのまま作品にしているわけですから、難しいとは思います。共有したいという気持ちがあっても。

そうでしょうね。作っている以上は。なんだろう、それは僕の質問の仕方がおかしかったんですけど、例えば、音楽のなかで、語られる物語がいろいろあるとしたら、わりと安易に人と人が出会うじゃないですか。そういう音楽ではないんじゃないかと?

石橋:うんうん。そうですね。そういうものに自分は惹かれていないかもしれないですね。やっぱり自分も何回も何回も同じ音楽を聴くことが好きだし、そうやって聴いていくなかで見えてくるものを探したいと思っているし、自分もそういうふうにしか音楽を聴かないのでやっぱりそういうふうに聴いて欲しいなとは思います。

なんとなく共同体意識を持つんだったら、ひとりで居る方が良いくらいな感じ?

石橋:そうですね。人と人が出会うということは同時に別れていることも含まれているから、共同体意識というのはそもそも幻想でしかないと思います。たとえば私が小さな所でライヴをやるとお客さんがひとりでフラッとやってきて、所在なさげにひとりで帰っていくんです。私も所在なく機材を片付けて帰る……でも何かは共有している、そういうのが好きです。


また全然別の話で、こっちの話はもうどうでもいいとは思っているのですが……一昨年にニューキャッスルのフェスに出たときに、即興演奏で共演する予定だった方は私のことをネットで調べ「シンガーソングライター」だと定義し、即興をできない、あるいはやらない人だと思ったそうです。また逆のこともあるのです。どこに行っても端っこですね(笑)。

つい最近、ele-kingでイアン・マーティンがジムさんにインタヴューをさせてもらって。すごく面白かったのですが、石橋さんとジムさんは似ているところがあるなと思ったんですよね。例えば、こないだ松村と一緒にやったインタヴューであれはちょっと失礼な質問だったかなと思ったのは、なんで前野健太さんと一緒にやっているんですか? みたいな質問をしたんですよ。

石橋:いまなぜか私も前野さんのことを思いました!

たとえば、ジムさんって、アカデミックな教養もあるから、ちょっとマニアックな現代音楽家の名前や理論が出てくるんですね。それで「さすがジムさん」みたいなノリがネット上で起きたりするわけです(笑)。
しかし、ジムさんにおいて重要なのは、リュック・フェラーリやローランド・カインのような人のことを並列して、真顔で『L.A.大捜査線/狼たちの街』のことやコメディの下ネタの話までしていることですよね? 現音系をありがたがってしまう人には下ネタは入ってこないんでしょうね(笑)。ちょっと昔の言い方でたとえると、ジムさんは決してハイカルチャーじゃないんですよね。

石橋:全然! 全然!

ローカルチャーと言ったら前野さんに失礼だけど、要するにそういったものを転覆したいから、あのように言っているわけで。石橋さんのなかにも、そこは同じような転覆があるんじゃないかと思います。そこがまた、ある種石橋さんのわかりづらさというものというか……。

石橋:私のなかでは、たぶんジムさんにとっても、ローランド・カインも、前野さんも、フリードキンも全部つながっているので、ハイカルチャーとかローカルチャーとかよくわかりませんが、わかりづらさといえば、前野さんの作品をこの前プロデュースしたときに実感したことがありました。私と岡田(拓郎)さんと、武藤(星児)さんと荒内(佑)君という4人でプロデュースをして。アルバム全体ではなく何曲かだけプロデュースというのは難しいなと思いながら、前野さんの歌がとても素敵なのでチャレンジしてみることにしました。歌の向かう場所を探してアレンジし、演奏の熱量をそのまま音にしたことは古いやり方かもしれませんが、そのやり方がいいと思いました。しかしあのアルバムのなかにあって、パッと聴いた感じは決して聴きやすくはない、と実感しました。前野さんの歌のなかに深く潜りたかった、でもそれがいいのか悪いのかはまた別なのではないかといまでも葛藤しています。
また全然別の話で、こっちの話はもうどうでもいいとは思っているのですが……一昨年にニューキャッスルのフェスに出たときに、即興演奏で共演する予定だった方は私のことをネットで調べ「シンガーソングライター」だと定義し、即興をできない、あるいはやらない人だと思ったそうです。また逆のこともあるのです。どこに行っても端っこですね(笑)。

異端ではあると思いますね。じゃあ何が主流なのか? という話でもあるんですよ。

石橋:そうですね。わかりませんね。

だから石橋さんとか、ジムさんみたいな人は逆にいえば作り甲斐があるんじゃないですか? つまり、それが普通にこれがドローンやミニマルやミュージック・コンクレートだけの作品だったら、それこそピエール・シェフェールとか昔のミニマリストたちの名前をあげて説明をすれば良いだけの話だけど、それでは完結できない何かがあるからこそ歌われたりしているんだろうし。そこがすごく新しいんじゃないかなと思うんですよね。

石橋:シンプルにはみえない。

でもそのシンプルさに対抗をしているわけじゃないですか。

石橋:対抗するつもりはなかったんですけど、こうなっちゃった(笑)。でも対抗するつもりはなかったんです。なんでこうなっちゃったんだろう(笑)。教えてください(笑)。

はははは。でも今回は聴き易いです。逆に言うとドローンとか、ミニマルとかミニマリズムとかそういうものを導入していると言っちゃわない方がむしろ良いのかなと感じます。音のテクスチャーはぜんぜん違いますけど、コンセプト的にはイーノの『ビフォアー・アンド・アフター・サイエンス』とか『アナザー・グリーン・ワールド』とかにもリンクするんじゃかって。だから、聴きづらいとはまったく思わなかったですし、むしろ入りやすかったですよね。

石橋:私のなかですごく繋がっているから、今回変えたぜ! みたいな感じではないんですけど、聴きやすいと言われます。

そりゃそうですよ! ピアノがないんだもん(笑)。ピアノがないし、あぁいういつもある転調とかがないし、根幹にあるのはミニマリズムだしね。でもだからと言って、これがわかりやすいミニマムのアルバムとして着地をしていないんですよ。そこがやっぱり良いんじゃないですかね。

石橋:やっぱり、良い意味でも悪い意味でも正直にしか作品を作れないんだなというふうに思いますね。アルバムを作るにあたってたくさんの音や言葉のメモがあるのですが、これから作品として出すのかどうかは別として、終わってからもしばらくこのテーマがまだ続いている感じがあるんですよね。いつも作品が終わったら、大体いろんなデータとかを消してしまうんですけど。でも今回は消さないでいます。

“サイレント・スクラップブック”からタイトル曲にいく流れがすごく最高でした。 “ゴースト・イン・ア・トレイン”もすごく好きな曲。このタイトルってどういう意味?

石橋:アルバムタイトルですか? そのタイトル曲を弾き語りで作っているときに自然に出てきた言葉だったんです。自分が直接体験してなくても、あるいは話を聞かなくても、あれは、私だったかもしれないと想像する力、あるいはDNAレヴェルで伝わるものがあるということがあるのではないかと思ってそのタイトルにしました。

最後の曲、“エピローグ”はイェイツの詩からとっているんですよね?

石橋:「Innisfree」というサブタイトルはイェイツの詩からとりましたが、歌詞は私が書きました。ジョイスやイェイツの、生きている人と死んでいる人がつながっている世界観に子供の頃にすごく影響を受けたと思います。

“プロローグ”のオーケストラはコラージュですか?

石橋:2本くらいトランペットが入っていますけど、それ以外はフルートを加工してトランペットやホルンやチューバの音にして実際に吹いて作りました。歌は船のなかで歌っている子供のニュアンスを出したくて、タバコのケースのビニールを使いました。

ちなみに録音はいつからいつまで? 構想を含めるとやっぱりお父さんが亡くなられてから? 

石橋:構想を含めたら、3年前くらいからはじまった感じかな? 実際にバンドの方たちにお願いしたのは去年ですね。ドラムの録音をやったりとか、ストリングスの録音をやったりとかは去年ですね。その後、半年くらいひとりの作業と、ジムさんとのミックスについてのやりとりが続きましたね。

とく時間がかかったのって何?

石橋:もちろん曲の土台作りは全部時間がかかっていますが、自分の作業以外だと、ジムさんのミックスじゃないかな。自分の作業はそれぞれ全部に時間がかかっているから……。フルートもたくさんかさねました。

どのくらい重ねたんですか?

石橋:たくさん重ねましたが最終的には20本くらいですね。短波ラジオや汽車の音のコラージュなども結構時間がかかったなぁ。

フルートを録るだけでも相当時間が掛かっていますよね。

石橋:そうですね。

汽車の音はフィールド・レコーディングをしたんですか?

石橋:資料として、当時満州で流れていたであろう昔のロシアの歌のレコードや日本の歌などのレコードなどを集めていて、その中に蒸気機関車のレコードもあり、それは満州の蒸気機関車の音ではなかったのですがそのレコードから録音しました。

それ以外は全部演奏したもの? ミックスしたり、コラージュしたりとか。

石橋:そうですね。あとは短波ラジオの音も録音しました。

短波ラジオはジムさんのアルバムでも楽器として使ったと言っていましたよね。

石橋:そうですね。私も去年ハードオフで見つけて。ジョンさんとツアーをしたのが大きかったかもしれないですね。私もジムさんも。元々ジョンさんが短波ラジオで音源とかを作っていて。ジョン・ダンカンさんのツアーで私たちも短波ラジオモードになりました(笑)。

短波ラジオってどうやって使うんですか?

石橋:短波ラジオはこうやって動かしながら、それにマイクを当てて、そこでかかっているオペラの様な音楽やニュース、雑音やチューニングの音も全部録音して、曲のイメージのなかに置き換えて解釈してコラージュしました。

石橋さんは自分の内面みたいなものを音にはしようと思わないんですか?

石橋:どうなんだろう。

以前、セシル・テイラーがすごく好きだって仰っていましたね。ジャズの人というのはわりと自分の内面を音で表現したりするものじゃないですか。

石橋:内面は出そうとするものじゃなくて、どうしても出てしまうものなので、けっこう自分ではこれでもエモいと思います(笑)。

そうなんですね(笑)。僕が誤解していたな。もっとすごくストイックに作っているのかなと。

石橋:そぎ落としはします。内面を音にしているからこそ、ストイックにならなければと思っています。

いまでもヘッドホンをして自転車で音楽を聴いたりとかはしているんですか? 

石橋:いまは車ですね。車で暗闇のなかを(笑)。音楽を聴きながら車を走らせていますね。暗い夜道を。

あ、もう東京じゃないから。

石橋:暗―いですよ。電灯とかも無いから。暗―い夜道を音楽を聴きながら。

どんな音楽を聴くんですか?

石橋:うーん。いろいろ。いまは車のなかでZ'EVがかかっている。オウテカ、イングラム・マーシャルも車のなかにいっぱいあります。

それを暗闇のなかで聴いて交通事故を起こさないで下さね(笑)。

石橋:はい、気を付けます(笑)。

Jamie Isaac - ele-king

 深夜のチルアウト。彼は午前1時過ぎの深い時間が大好き。ひとりで、ときには友人を誘って、ときには煙をくゆらせながら真夜中に音楽ばかり聴いている。自堕落かつロマンティックな時間帯。なんの生産性もないが幸せな時間帯。そんなときに似合う音楽とは、最近の例で言えば、Burialであり、ザ・XXであり、ジェイムス・ブレイクであり……、そしてジェイミー・アイザックの本作もそうだ。いま売れているトム・ミッシュと同じカテゴリー(南ロンドン出身/ソウル・ジャズ系SSW)にも括られる23歳の若者だが、不眠症に合うのは間違いなくこちら。孤独な音楽。午前4時30分の怠け者。この10年顕著なひとつの潮流=悲しみの男の子たち。

 とはいえ、カリフォルニアで書かれてロンドンで録音されたこのセカンド・アルバムは、ボサノヴァのリズムからはじまる。“Wings”という曲、これがなかなか洒脱で、ごくごく初期のエヴリシング・バット・ザ・ガールとジェイムス・ブレイク世代との出会いというか、じつにスタイリッシュにまとめられている。日本独自のサブジャンル「ネオアコ」的感性にも訴えそうだ。“Slurp”という曲にもブラジルからの影響が聞こえる。(その曲もぼくは気に入っている)
 ジャジーでポップな“Maybe”は、シャーデーとジョー・アーモン・ジョンズとの溝を埋めるかのようだが、しかし歌は終始一貫してか細く、クレッシェンドすることもない。ダブステップ以降のビート感、アトモスフィア、空間的音響、チルアウト、そして夜の世界に見事にマッチしている。それは夏の大三角形のはるか下の、ベッドルームで揺れる蝋燭の炎と共振するかのようだ。曲の主題は、表題曲は不眠症ともリンクしているそうだが、あらかたラヴ・ソングの体をとっている。
 
 猛暑の夜のメランコリー。地球温暖化と異常気象、地震への恐怖、腐敗した政治家たち、暗黒郷と化す街並み。豊かにならない生活……こんな時代でも、いやどんな時代でもか、深夜にひとり、好きな人のことを考えている時間帯は幸せなんだと。まあたしかにね。

Gaika - ele-king

 昨年の来日公演で強烈なパフォーマンスを見せてくれたガイカ、オルタナティヴなダンスホール・サウンドを聴かせる異才が、ソフィーと共同で作り上げた新曲“Immigrant Sons (Pesos & Gas)”のMVを公開しました。この曲は7月27日にデジタルで配信されるデビュー・アルバム『Basic Volume』収録曲で、同アルバムは9月28日にフィジカル盤もリリースされます。これは楽しみ。

ジャム・シティも参加したニューアルバム『Basic Volume』より、
ソフィーと共同プロデュースをした楽曲、
“Immigrant Sons (Pesos & Gas)”のミュージック・ビデオを公開!
また『Basic Volume』のフィジカル・リリースも9月28日(金)に決定!

代名詞であるゴシック・ダンスホールとインダストリアル・エレクトロニックの融合が一つの到達点に達した作品となっている、ガイカのデビュー・アルバム『Basic Volume』。その中から新たに“Immigrant Sons (Pesos & Gas)”のミュージック・ビデオが公開された。

MV「Immigrant Sons (Pesos & Gas)」
https://youtu.be/1zesioegOY0

今回公開された“Immigrant Sons (Pesos & Gas)”はガイカとソフィーが共同プロデュースを行っており、ガイカがガイカたる所以である、彼特有のエッジーなサウンドを保ちつつも新たにメロディアスな領域に彼自身を突入させた一曲となっている。
また、映像は先日公開された“Crown & Key”と同じ、Paco Ratertaによって製作されたビデオとなっており、撮影はフィリピンで行われた。
スモーク、廃墟、ギャング等々、荒廃した景色を映し出す中、集団の中でリーダーのように振る舞うガイカ本人が暴力的かつどこか神秘的な感じも漂わせる映像に、ガイカのキャリア史上一番ポップで感情を揺さぶるような楽曲が乗り、まさにガイカ・ワールド炸裂といった内容に仕上がっている。

また、待望のデビュー・アルバムとなる『BASIC VOLUME』は、7月27日(金)にデジタル配信で世界同時リリースが決まっていたが、9月28日(金)にフィジカルでもリリースされることが決まった。

label: Warp Records
artist: GAIKA
title: BASIC VOLUME

release date: 2018.09.28 Fri On Sale

[ご予約はこちら]
BEATINK: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9780

digital release date: 2018.07.27 Fri
iTunes: https://apple.co/2xTIA2b
Apple Music: https://apple.co/2HtiXVy

[TRACKLISTING]
01. Basic Volume
02. Hackers & Jackers
03. Seven Churches For St Jude
04. Ruby
05. Born Thieves
06. 36 Oaths
07. Black Empire (Killmonger Riddim)
08. Grip
09. Clouds, Chemists And The Angel Gabriel
10. Immigrant Sons (Pesos & Gas)
11. Close To The Root
12. Yard
13. Crown & Key
14. Warlord Shoes
15. Spectacular Anthem

PSYCHEDELIC FLOATERS - ele-king

 不肖柴崎の監修により新たなリイシュー・シリーズがスタートします。その名も「PSYCHEDELIC FLOATERS(サイケデリック・フローターズ)」。

 「サイケデリック」というと、その語自体が伝統的なロック・ミュージック観と分かちがたく結びいている故に、1967年のサマー・オブ・ラヴ、ヒッピー、LSD、ティモシー・リアリー、サイケデリック・アート、ジェファーソン・エアプレイン、……という連想を反射的に起こさせるものだったし、そういった理解がいまだ一般的なものだろう。ドラッグ・カルチャーと変革の時代が生んだ徒花的存在として、その徒花性が故に「あの時代を彷彿とさせる」アイコニックなカルチャーとしてその後も生きながらえてきた。70年代にはアンダーグラウンドに潜伏しながらもオーセンティックなサイケデリック・ロックを演奏するバンド群は根強く存在していたし、80年代にはオルタナティヴ・ロックの胚珠として「ペイズリー・アンダーグラウンド」なるリヴァイヴァルも勃興し、90年代以降も特定のテイストとして都度アーティストたちに取り入れられる一要素として「サイケデリック」という意匠は生き長らえてきた。

 しかし、本来この「サイケデリック」には、そうした単線的な視点・史観のみでは捉えきれない複層的な空間が広がっている。幻夢的な酩酊感、あるいは静的覚醒感。そういった、サイケデリックから抽出される特有の質感を「浮遊感=フロートする感覚」として捉え直すことで、大きく視野が切り拓かれることになる。快楽性とテクスチャーにフォーカスして音楽を捉え直すという感覚は、90年代に、かつてのソウル観に対する概念として「フリー・ソウル」というタームが出現したときのそれに近しいと言えるかも知れない。そう、ドアーズやエレクトリック・プルーンズ、ブルー・チアー(も素晴らしいけど)ではなく、後期ヴェルヴェット・アンダーグラウンドやカン、マニュエル・ゲッチング、ウェルドン・アーヴィン、ピーター・アイヴァース、ネッド・ドヒニー、ヨ・ラ・テンゴ、アンノウン・モータル・オーケストラフランク・オーシャン……。それらから共通して抽出されるタームこそを「サイケデリック・フローターズ」と呼びたい。

 そして、昨今のポスト・ヴェイパーウェイブ的趨勢の中、ニュー・エイジ、アンビエント、バレアリック、あるいはシティ・ポップやヨット・ロックが次々と注目・再発見されていく流れにあって、「サイケデリック・フローターズ」という切り口をそこに加えることで、いまこそ再び聴きたい(聴かれるべき)多くの隠れた名作が浮かび上がってくるのだった。これまで「サイケデリック」という文脈では一般的に語られることのなかった幅広いジャンルに存在する「無自覚なサイケデリック」とでも言うべき作品を発掘し、これまでのリイシュー・シリーズとは一線を画した視点で数々のタイトルを紹介していくつもりだ。

 では、今週7/18にリリースとなる第一弾の2作品を紹介しよう。

Jack Adkins / American Sunset

 米ウェストバージニア州出身のシンガー・ソングライターによる84年作の世界初CD化。
 少年期よりガレージ・ロック・バンドで演奏活動を始め、その後も全米サーキットで音楽活動を続けてきたジャック・アドキンス。80年代に入りマイアミに移住しその地の風景に心を打たれたことをきっかけに、北米各地の夕暮れ(Sunset)の風景を歌い綴ったアルバムを制作することにした。歌とギター、リンドラム、そしてシンセサイザー(ローランドジュピター8)を中心に、ほぼ全ての楽器を自身で演奏し録音されたこのレコードは、当時はごく少数のみプレスの超激レア作。
 まさに知る人ぞ知る存在だったこの盤の存在が知られるきっかけは、ダニー・マクレウィンとトム・コベニーというハードなディガーふたりによるユニット PSYCHEMAGIK が選曲を担当したヴァイナル・コンピレーション『PSYCHEMAGIK PRESENTS MAGIK SUNSET PART 1』(2015年)に、アルバム・タイトル曲が収録されたことだった。
 ジュピター8の独特の音色に80’s的風情を強く吹き込むリンドラムの響き、そしてジャック・アドキンス本人のマンダムな歌唱が融合した世界は、まるでルー・リードとアーサー・ラッセルが邂逅したかのような至高のニューエイジ・フォーク作となっている。キラキラと海を照らすオレンジ色の黄昏のような音楽に、バレアリックな哀切が掻きてられる。

Jack Adkins - American Sunset
Boink Records / Pヴァイン

Amazon Tower HMV


Chuck Senrick / Dreamin’

 米ミネソタ州出身のジャズ系シンガー・ソングライター、チャック・センリックによる唯一作(76年作)の世界初CD化。
 地元のバー・ピアニストとして演奏活動をおこなっていた彼が、愛する新妻との結婚生活を綴ろうと制作した作品で、自身のヴォーカルとフェンダー・ローズ、そしてKORG社製のリズムボックス「ドンカマチック」を伴い、友人宅のリヴィング・ルームでひっそりと録音されたものだ。マイケル・フランクスやケニー・ランキンといったヴォーカリストを思わせる切々としたクルーナー・ヴォイスに、透明感のあるローズの響き、そしてキッチュとも言えるドンカマのリズムが融合し、シンプルながらも不可思議な酩酊感を湛えた世界が(ささやかに)繰り広げられる。
 ヨット・ロックのブームを決定づけることになった米〈Numero〉からリリースされたコンピレーション『SEAFARING STRANGERS: PRIVATE YACHT』(2017年作)に、本作から“ドント・ビー・ソー・ナイス”が収録されたことでも一部ファンの注目を集めていた。そういったAOR再評価の最深部的作品としても実に味わい深いが、やはり注目すべきはその幸福な浮遊感に満ちたイノセントかつナイーヴな肌触りだろう。
 これぞまさしくアンコンシャス(無意識的)なサイケデリック・ミュージックの最良の例だと言えるだろう。

Chuck Senrick - Dreamin'
A Peach Production / Pヴァイン

Amazon Tower HMV


 「サイケデリック」についてあれやこれや考察するよりも、あるいは「いまっぽい」という視点ばかりに拘泥するよりも、何よりもまずはその浮揚するサウンドスケープに耳を委ねてみるのが良い。
皆さんのリスニング・ライフに少しの刺激と安らぎを与えてくれるであろう本シリーズ、今後も様々な知られざるレア作や埋もれた名作のリリースを予定していますので、是非ご愛顧のほど宜しくお願いします。

追記:
「サイケデリック・フローターズ」をより楽しんでいただけるように、Apple Music と Spotify 上にプレイリストを作成しました。是非併せてお楽しみください。

AppleMusic

Spotify

※配信曲有無の関係で、AppleMusic と Spotify で若干プレイリスト内容が異なります。


Krrum
Honeymoon

37 Adventures / ホステス

SoulElectronic

Amazon Tower HMV iTunes

 2017年のアップル・ウォッチのCMを見た人はいるだろうか? 「ゴー・スウィム」というシリーズの第2弾で、時計をつけたままプールで泳ぐというフィルムなのだが、そのバックに流れていたのがカラム(綴りはKrrumで、発音的にはクラムが近い)というアーティストの“イーヴル・ツイン”という曲である。近年のアップル社のCM曲に起用されたUK勢には、ハドソン・モホーク、サム・スミス、ムラ・マサなどがいるのだが、旬の人だったり、またはこれからブレイクしそうな人だったりと、人選がいいところをついている。これらCM曲は、エレクトリックな佇まいを感じさせながらも、どこかソウルフルで人間的、温かみだったり、可愛らしさだったりを感じさせる作品が多いのだが、カラムの“イーヴル・トウィン”もそうした1曲である。なお、この“イーヴル・ツイン”のミュージック・ヴィデオもあって、何かのオーディション会場にマイケル・ジャクソン、ボーイ・ジョージ、ニッキー・ミナージュ、ブリトニー・スピアーズのソックリさんが現れるのだが、彼らはみな年季の入った太めのLGBTという感じで、重たそうな体でキレのないダンスを繰り広げるコミカルなものだ。そして、カラム自身も審査員役で登場している。

 カラムはプロデューサー/シンガー・ソングライターのアレックス・キャリーによるプロジェクトで、英国のリーズを活動拠点とする。長い山羊髭に黒縁のロイド眼鏡と、ファッションもなかなかユニークでキャラが立っている。彼はダービーシャー州のダーク・ピークスという田舎町出身で、13才の頃から作曲を始め、地元のスカ・バンドでトランペットを演奏していた。その後、リーズの大学に進学して音楽制作を学び、その頃にゴリラズからボン・イヴェールなどいろいろな音楽の影響を受け、吸収していった。2016年1月に同じアパートに住む友人のハリソン・ウォークと“モルヒネ”というシングルを発表し、この曲や“イーヴル・ツイン”を含む初EPを同年3月にリリース。Shazamやハイプ・マシーンのチャートを賑わせた後、前述のように“イーヴル・ツイン”がアップルCMに使用され、さらに話題を呼んだのである。その後、楽曲制作と並行してピッチフォークやBBCなどが主催するフェスティヴァルにも参加し、人気を伸ばしていったカラム。そして、“イーヴル・ツイン”ほか、“ハード・オン・ユー” “スティル・ラヴ” “ムーン”などのシングル曲を含むファースト・アルバム『ハネムーン』が満を持して発表された。盟友のハリソン・ウォークがソング・ライティングで参加しているが、彼もギタリスト兼シンガー・ソングライターで、ニック・マーフィー(元チェット・フェイカー)を彷彿させる味のあるヴォーカルだ。基本的にアレックスがトラックを作り、ハリソンが歌うというのがカラムのスタイルである。そして、ミキサーにはアデル、ベック、アルバート・ハモンド・ジュニアなどの作品に携わるベン・バプティ、そしてトゥー・ドア・シネマ・クラブ、ムラ・マサなどを手掛けるティム・ローキンソンが参加。また、コリーヌ・ベイリー・レイの楽曲を手掛けたジョン・ベックとスティーヴ・クリサントゥが、それぞれ“フェーズ”と“ハニー、アイ・フィール・ライク・シンニング”でソング・ライティングに加わっている。

 カラムは『ハネムーン』について、ややシニカルな見方をしている。「たいていハネムーンというと、ポジティヴなとらえ方をする人が多いけど、その反面、子供でいることや自由であることが終わりを迎えたという時期を意味するのではないのかな」ということで、このタイトルをつけたそうだ。物事に対して客観的で斜に構えた見方をしており、たとえばラヴ・ソングの“スティル・ラヴ”も「恋愛関係を前進させたい思いが強いけれど、踏みとどまってしまう自分がいる。なぜなら直感的に、その関係より先に進めなくてもいい、妄想で終わらせてもいいと思っている自分がいるから」という思いを表現している。“フェーズ”は「あなたは私の人生の通りすがりの男だから」と、自らを言い聞かせて関係を断ち切るという切ないラヴ・ソング。“ムーン”は「好きな人と関係性を結ぶためには、通らなくてはいけない告白という儀式がある。でも、その引き金を引くと、自分が思いもよらなかった結果が待ち受けていることがある」という具合に、彼の歌にはどこか鬱屈した感情が見受けられる。“アイ・ソート・アイ・マーダード・ユー”や“ハニー、アイ・フィール・ライク・シンニング”などの曲名も意味深だ。このように屈折したフィーリングをデジタル・プロダクション主体のサウンドに乗せるスタイルで、基本的にはエレクトリック・ソウル~オルタナR&B系のシンガー・ソングライターと位置づけられるだろう。そして、シニカルでクールに物事を俯瞰する視線は、とてもイギリス人らしいと言えそうだ。

 ジェイムズ・ブレイクやサム・スミスの成功以降、UKの男性シンガー・ソングライターにはジェイミー・ウーン、クワーブス、クウェズ、サンファなど逸材が多い。今年ブレイクした筆頭のトム・ミッシュほか、ジェイミー・アイザックやプーマ・ブルーなど、若く才能のあるシンガー・ソングライターが続々と登場している。カラムもこうした中のひとりであるが、たとえばトム・ミッシュあたりと比較するとプロダクションはずっとエレクトリック寄りである。トム・ミッシュがギター・サウンドを主体とするのに対し、カラムの軸となるのはシンセ・サウンドで、そこにホーン・サンプルとオート・チューンなどで加工したコーラスを加えていく。“イーヴル・ツイン” “ウェイヴズ” “スティル・ラヴ”がこうしたプロダクションの代表で、“アイ・ソート・アイ・マーダード・ユー”あたりに顕著だが、全体的に1980年代風のエレクトロ・テイストを感じさる点も特徴だ。“ユー・アー・ソー・クール”のようにポップで爽快感を感じさせる曲も魅力的だが、“ブレッシング・イン・ア・ドレス”や“ドーム・イズ・ザ・ムード・アイム・イン”などヘヴィーなヒップホップ系ビートの骨太の曲、“イフ・ザッツ・ハウ・ユー・フィール”のようにオルタナ感満載のベース・ミュージック寄りの曲と、いろいろとヴァラエティにも富んでいる。そして、どの曲からもポップなセンスが感じられる。アップル繋がりではないけれど、ムラ・マサの楽曲や、そのアルバムにも参加していたジェイミー・リデルの作品に通じるところも見受けられるし、クワーブス、ソン(SOHN)あたりに近い部分も感じさせる、というのがカラムの印象だ。“ハード・オン・ユー”のようにソウルフルなフィーリングとエレクトリック・サウンドの融合が、彼の真骨頂と言えるだろう。


GONNO×MASUMURA トリプルファイヤー - ele-king

 たしかいまから3ヶ月ほど前、OLD DAYS TAILORのレコーディングのために大分から東京に出てきていた増村君とひょんなことから吉祥寺で飲むことになった。その時、GONNO×MASUMURAのレコ発の話になって、さらには、対バンは誰が良いかな~というような話になったのだった。安い焼酎が数杯入って無責任な精神になっていた私は、単純に自分が観たいだけという理由で、トリプルファイヤーが良いよ! と提案したのだった。まあ全然ファン層も違うし却下されるだろうな、と思っていたら本当に決まってしまっていた(告知で知った)。

 アルバム『In Circles』のレヴューでも書いたが、GONNO×MASUMURAのリズムへの意識の鋭敏さは、改めて言うまでもなくすごい。生ドラムと打ち込みという相互関係が表出する揺らめきまでも含め、国内で今ここまで自覚的にリズムへ対して取り組むアーティストは稀有であると思っていた。そして、トリプルファイヤーも(その特異な立ち姿や「面白い」歌詞世界に幻惑されてしまいがちであるが)同じくリズムに対して鋭敏な視点を持っている稀有なバンドである。アフロビートや変拍子を取り入れながらも極めて沈着、しかし、そこに内在する熱は、ずっと触れ続けていると知らぬうちに低温火傷を起こしそうなほどに豊か。一見ミスマッチな組み合わせに思えるかも知れないけれど、だからこそこの両者が相まみえる面白さは格別だ。

 はじめに登場したトリプルファイヤーは、パーカッション担当のシマダボーイをサポートに迎えた4人体制。このところの演奏の充実ぶりを伺わせる盤石のライヴで、トリッキーだが統御の行き届いた硬質(なのに靭やかな)グルーヴ。おそらくGONNNOのファンと思われるお客さんがその演奏にじわじわ魅入られていくのを横目で見ながら、ビールを一杯、二杯。途中ボーカルの吉田がMC(僕はいつもライヴ演奏と同じくらいこれを楽しみにしている)で「今日は呼んでもらってありがとうございます……今日は音楽的な現場で……なんかすごく……(突然大声で)今日は音楽的に凄い人たちとやってまーす!」と言い、私は爆笑してしまったのだけど、あまり他に笑っている人がいなく少し気まずい思いで回りを見渡していたら、微笑を浮かべるGONNO×MASUMURAの二人がいた。
 この日のトリプルファイヤーは新曲を織り交ぜたセットリスト。私は体を揺らしながらも、リズムやリフなどそれぞれの曲の構造を把握すべく頭の中を整理しようとするのだけど、そこへ歌声が次々と鮮烈な意味を注入してくるので、忙しく、そして楽しい。あっという間に終わってしまったような感覚。搬入バイトを終えて現地解散する人たちのように楽屋に戻っていくメンバーの様が格好良い。

 ステージ上、ごっそりとセットチェンジが行われる間、主役目当てのお客さん達も徐々に増えてきたようで、自然とフロアにも熱気が篭ってくる。
 いつの間に会場へ到着したのか野田編集長が客席下手スピーカー前の柵に寄りかかって近距離から増村のセッティングを凝視している。「いやあ、二人とも緊張しているね」そう、実はGONNO×MASUMURAとしてライヴを行うのは今回がたった二度目のことなのだという。だからこそ、今ライヴを観ることに価値がある。
 ラップトップやミキサー卓などの機材の山を前にしたGONNOが徐々に電子音を響き渡らせ始め、それに呼応するように増村のドラムが静かに交わっていく。時折アイコンタクトを織り交ぜながら繰り広げられていく演奏は、決まり事があるようでいて無いようでもある、インプロヴィゼーションと非インプロヴィゼーションの境界を内部から溶かしていくようなスリルを帯びる。GONNNOのDJイングは精密でありながら大胆で、増村もそれに煽られるように即妙のフレーズを叩き込んでいく。
 ポップ・ミュージックにおける一般的なドラミングでは、リズムキープとフィルという要素が繰り返させることにより、曲自体の構造が釘打ちされ建築物としての楽曲構成が立ち上がってくるものだが、ここではそういったプレイ上の境界も溶かされ、電子音と相克しながらまるでパルス的鼓動の如く空間をリズムで満たしていく。GONNOのプレイも、テクノ・ミュージック一般におけるマシーン的反復性の快楽を携えながらも、生ドラムが叩き出すリズムのしなりに焚き付けられるように、変幻していく。
 最初のうちは緊張感の漂っていたフロアも、気づけば思い思いに体を躍動している。体感音量はどんどんと上がっていき、ステージ上のふたりもプレイ前のこわばりが嘘のように自らの奏でる音楽に身を委ねる。アルバム終曲を飾る「Ineffable」でライヴはついにクライマックスに達し、その天上的アフロ・バレアリックとでも呼ぶべき世界が昂まりと静けさを同時に召喚する。
 ダブル・アンコールを欲するオーディエンスの前に三度現れたGONNOと増村が、「もっと演りたいんですけど、演れる曲がありません(笑)」と口下手に言ってみせると、空間に充満した音楽がフッと発散されるように辺りに笑みが広がり、幕は穏やかに閉じられた。

 それにしてもこの日、トリプルファイヤーとGONNO×MASUMURAの二組の創出した空間の差異、それこそがライヴイベントの醍醐味というべきものだった。二組は、個的なリズムフォルムへの拘り・固執という点では志を共有しつつも、そのリズムを楽曲構成の中でどう位置づけ、そしてライヴ演奏の場でどのように実践するかという方法論においては全く違った行き方を取っている。本来そういった方法論が演奏集団によって十者十様であるという(自明すぎてむしろあまり顧みられることの少ない)音楽を楽しむにあたっての重要な視点が、これほどまでに鮮烈に提供された空間は稀だったかもしれない。
 音楽は共通言語として(観客含め)いかようにも共有されうるが、コンテクストの差異を味わうことは、その共有と理解に更なるダイナミズムを与えることが出来る。いわゆる「客層」判断上のマーケティング的視点からの躊躇や、一定ファンへの「配慮」などから、なかなかそうしたキャスティングが難しい状況もあるだろうが、こういったイベントがどんどん増えて欲しいと思う。

Brainfeeder - ele-king

 8月17日に開催されるソニックマニアにてオールスターの集結がアナウンスされている〈ブレインフィーダー〉ですが、それに先がけ、8月10日~12日の3日間、同レーベルの日本初となるポップアップ・ショップが展開されます。また、8月18日から1週間限定で、フライング・ロータスが監督を務めた映画『KUSO』も上映されるとのこと。さすが10周年、てんこ盛りです。これはもう祭りと言っていいでしょう。この夏は思いっきり〈ブレインフィーダー〉に染まるべし。

フライング・ロータス主宰レーベル
〈BRAINFEEDER〉の10周年を記念した
日本初のポップアップ・ショップ開催決定!

         
フライング・ロータス初長編監督作品
『KUSO』の1週間限定上映も決定!

今年設立10周年を迎えたフライング・ロータス主宰レーベル〈BRAINFEEDER〉。サマーソニックに引けを取らない強力な出演陣が大きな話題となっている今年のソニックマニアでは、フライング・ロータス、サンダーキャット、ジョージ・クリントン&パーラメント・ファンカデリックという最高の布陣に加え、ドリアン・コンセプト、ジェームスズー、ロス・フロム・フレンズら、フライング・ロータスが激推しする逸材も集結させ、ステージのひとつを完全にジャック! そんな話題沸騰中の彼らから、新たなニュースが到着! ソニックマニア1週間前となる8月10日~12日の三日間に渡って、渋谷スペイン坂のギャラリー Xにて、日本初のポップアップ・ショップの開催を発表! ここでしか手に入らない10周年記念グッズやレアな輸入グッズ、入手困難だった人気グッズの復刻、さらにアート作品の展示や〈BEAT RECOREDS〉のガレージセールなども同時開催! 初日にはDJイベントも!


BRAINFEEDER X
ANNIVERSARY POP-UP SHOP

開催日程:8/10 (金) - 8/12 (日)
8/10 (金) 18:00-23:00
8/11 (土) 12:00-20:00
8/12 (日) 12:00-18:00

場所: GALLERY X BY PARCO

企画/制作: BEATINK Inc. / PARCO CO.,LTD.

BRAINFEEDER SPECIAL GOODS
10 周年記念グッズや限定輸入グッズなど、BRAINFEEDER グッズの販売

BRAINFEEDER ART EXHIBITION
BRAINFEEDER 関連のアート作品展示

BEAT RECORDS GARAGE SALE
BRAINFEEDER ほか、BEAT RECORDS 関連作品のガレージセールやグッズ販売

『KUSO』PREVIEW BOOTH
フライング・ロータス監督映画作品『KUSO』の一部映像解禁!

DJ EVENT
開催初日の夜にはオープニング・パーティを開催。BRAINFEEDER 好きのDJ がスペシャル・セットを披露

さらに、奇才フライング・ロータス初長編監督作品『KUSO』が、2018年8月18日(土)より渋谷・シネクイントにて1週間限定レイトショー上映決定! “史上最もグロテスクな映画”とも称され、サンダンス映画祭にて退席者続出の問題作、遂に日本公開!

※チケットは 各鑑賞日の2日前より発売予定。詳しくはシネクイント公式 HPをご覧下さい。
www.cinequinto.com/shibuya

BRAINFEEDER NIGHT IN SONICMANIA
featuring
FLYING LOTUS
THUNDERCAT
GEORGE CLINTON
DORIAN CONCEPT
ROSS FROM FRIENDS
JAMESZOO

08.17 FRI MAKUHARI MESSE
www.sonicmania.jp

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