「IR」と一致するもの

Chart - DISC SHOP ZERO 2012.11 - ele-king

この1年くらいで、所謂"ポスト・ダブステップ"を超越し「新入荷した時点ではどうにも説明できない」
サウンドが増えてきています。今回はそんなレコードの代表格を10枚紹介します。コメントにキーワードをちりばめたので、それらも要チェックで。

FIS - Duckdive EP (Samurai Horo)
ドラムンベースのレーベルとして知られるSamurai Musicのサブ・レーベルから、ニュージーランドのプロデューサー。何処に向かおうとしているのかさえわからないエクスペリメンタルな3曲と、トライバルなミニマル・ドラムンベースの4。このレーベルは全て要チェック。

ENA - Purported / Whereabouts (7even Recordings)
海外の精鋭たちとリンクしながら、リリース毎に「何処へ向かっているんだ?」度を上げている日本人Enaの最新作。今回も間違いありません!

AIRHEAD - Pyramid Lake (R&S)
James Blakeグループのギタリストとしても知られるプロデューサーの最新シングル。"ポスト"なダブステップよりも更に先、「ここからどこへ向かうんだ??」と思わずにいられない作品が数多く出始めてきた昨今のなかでも、本作はポップなセンスとその破壊力で群を抜いていると思います。

PANGAEA - Hex / Fatalist (Hemlock)
Ramadanman、Ben UFOと共にHessle Audioを運営するPangaeaによる、UntoldのHemlockからのシングル。両レーベルのキレキレの部分が露出したような(してしまった?!)「ヤバいよね~」としか言えない2曲。先日リリースのアルバムも素晴らしいです。

EGOLESS - Before/After EP (LoDubs)
クロアチアのプロデューサー2作目。前作に続くヴィンテージなキラー・ダブ1、ジャジーなブロークンビーツ2、そしてコロンブスの卵的なダブ・ガラージ3と、やっぱりヤバい!!!!

A MADE UP SOUND - Take The Plunge (A Made Up Sound)
2562別名義。1は、昨年末のHessle Audio日本ツアーでPangaeaがプレイし、そのクレイジーなビートにフロアも盛り上がった曲。ヒプノな感触もありつつ、ビートの根っこにはザックリした感じがしっかりあるのが◎。

STICKMAN - The Verge (Mindset)
マンチェスターのIndigoが運営するMindsetからの新鋭。ここ数年、ポスト~な流れからベース・ミュージックを追ってきた方々には、今まで「ヤバい!」と盛り上がってきた要素の多くがサラリとここで溶け合わされているという風に感じるんじゃないかと思います。レーベル他作はもちろん、Indigoも要注目。

VERSA - Shadow Movement (On The Edge)
そのIndigoやSynkroもリリースするマンチェスターのOn The Edgeから。ガラージを抜きに抜いたようなミニマルなテック・サウンドに、ザラザラとした上モノがBurialというよりはRhythm & Sound的に響く1ほかダブ好きテック派に大推薦の3曲。

CHAMPION - Crystal Meth / Speed (Butterz)
Blackdownが"Eskifunk"と名付ける、グライムとUKファンキーの突然変異体。全ての音がリズムとなって飛び回ります。

MORPHY & THE UNTOUCHABLES / FLATLINERS - Tread This Land / Raw Fi Dub (45Seven)
dBridgeのExitと、Boddika(Instra:mental)によるNonplusを中心としたAutonomicなど、ハーフステップのドラムンベースがここ数年面白いことになっていますが、その中でジャマイカ流のダブワイズに焦点を当てた新レーベルがこの45seven。ここから新しい流れが生まれるはず。

How To Dress Well - ele-king

こういう音楽が存在する 文:北中正和

E王 How To Dress Well
Total Loss

Weird World/ホステス

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 人間、元気なときは、出かけて他の人と接触するのが苦にならない。たとえひとりで過ごすとしても、前向きな気分でいられる。しかしときには、そうでないことだってある。そんなときは、出かけて人に会う気も起こらないし、何かを思い浮かべようとしても、考えが悪いほうに転がりやすい。
 『トータル・ロス』は、どちらかといえば、後者の気分にフィットしやすいアルバムではないだろうか。浮かない気分や冴えない考えのすきまにしみこんできて、痛みをわかちあい、凝った心を静かにほぐしてくれる音楽。
 ヴォーカルにはR&B的なファルセットの影響が感じられるが、"ラニング・バック"を除けば、一般的なR&Bとちがって、サウンドにビートやリズミカルなグルーヴがそれほど重視されているわけではない。曲はアンビエント的というか、ゆっくりと東の空が白んでいく様子を眺めているような穏やかな起伏をともなって進むように構成されている。サウンドはときには未来的で、ときには室内楽的。歌はメロディ重視で、"オーシャン・フロア・フォー・イヴニング"あたりでは、歌声が古い賛美歌めいて聴こえる部分もある。
 この種の音楽の歌は「こんなにかわいそうな私」「こんなに美しいぼく」の肯定のスパイラルに陥りがちだが、ハウ・トゥ・ドレス・ウェルの歌には人に向かって語りかけてくるところがある。トム・クレルのヴォーカルにも、感情を強調するのではなく、そっと取り出して置いて眺めているようなニュアンスがある。ぼくはこういう音楽が好きだが、いつも聴いていられるかというと、そうではない。しかしたとえ聴かなくても、こういう音楽が存在することを知っていることによって回避できるストレスがあることはまちがいないと思う。


文:北中正和

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性の揺らぎのR&B 文:木津 毅

E王 How To Dress Well
Total Loss

Weird World/ホステス

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 昨年の爆音映画祭の目玉、『THIS IS IT』の爆音上映を観に行くべきだったとつくづく後悔している。この世を去ったことによってスクリーンのなかで生き生きと華麗に踊ることを許されたマイケルが、立体的な音を手に入れたときに文字通り飛び出してくる様を目撃できたはずである。通常の上映を観た僕の記憶には、モニターで音を聴くのに慣れないマイケルが「いつも生の音を聴くように言われていたから」と説明するときの悲しい横顔があるばかりだ。マイケルの幽霊はしかしスクリーンのなかで踊り続け、時折そこから飛び出してくる。これからもそうだろう。

 ブリアルがR&Bの亡霊たちを呼び覚ました後、それらは後続のアーティストが生み出す様々な音にも憑依していったが、ノイズやドローンを出自とするハウ・トゥ・ドレス・ウェルのゴーストリーなR&Bはそれらと地続きでありながらも、ポップスへの関心を他のアーティストよりもちらつかせていたために新種の奇形として生み出されていた。彼、トム・クレルの新作『トータル・ロス』はそのポップス趣味をより前に出した作品になっており、得意のアトモスフェリックな音作りになっている"ランニング・バック"などはマイケル・ジャクソンの亡霊が漂っているようだ。
 ......が、たまげたのは続く"&イット・ワズ・U"である。指を鳴らす音がリズムを刻めば、ファルセットでクレルが妙に明るいメロディをシンコペートさせる。ダークウェイヴの霧は晴れている。そこに入ってくる、簡素なストンプ・ビート......下手したら、マライア・キャリーの生霊も取り憑いているのではないか。僕は思わず、必要以上にこのトラックばかりをリピートする......かつてMTVで「ヘビーローテーション」と呼ばれた行為のように。何しろクレルはここでダンスしているのである。それはフロアでのダンスでも、もちろん祭の踊りでもない。ステージの上でのダンスであり、80年代末から90年代半ばのMTVのPVのなかのそれである。
 とはいえ、『トータル・ロス』がクレルによるポップス解釈に終始しているかといえばそんなことはない。とくに前半に顕著なダークなその音には、たしかに彼が通ってきた場所の痕跡が残されているからだ。けれども『ラヴ・リメインズ』で過剰にまぶされていたノイズや音の割れは消えている。本作においてもっともストレートな成果は"コールド・ナイツ"のような、より音がクリアにゴージャスになった、ムーディなトラックに見て取るべきだろう。病的なモチーフも彼らしい??「きみの幽霊を連れて帰って一緒に休めば/君をもっと運命的存在にできる」。あるいは、前作の暗さが穏やかに消えていくことを印象づける"トーキング・トゥ・ユー"のとろけるようなトーチ・ソング以降の流れ、"シー・イット・ライト"の壮大な聖歌そして"オーシャン・フロア・フォー・エヴリシング"のアンビエント・ポップのスウィートな響きは、ハウ・トゥ・ドレス・ウェルのことをもはやウィッチ・ハウスなどといったタームでは説明できない領域にいることを鮮やかに証明している。『ラヴ・リメインズ』はホリー・アザー『ウィズ・U』の横に並べられただろう。が、本作と『ヘルド』の間にはかつてよりも微妙な距離が生じている。そんななか、"&イット・ワズ・ユー"は本作では......クレルのトラックでは、異色だと見なすのが妥当なのだろう。

 だが、アルバムを貫いているのはまさにハウ・トゥ・ドレス・ウェル、「華麗な着飾り方」という感覚であるように思う。去勢されたようなファルセット・ヴォイスと、セクシャリティの所在が曖昧なラヴ・ソング。"&イット・ワズ・ユー"で歌う相手は、フランク・オーシャンのそれと同じく「ボーイ」である。"トーキング・トゥ・ユー"で血管が切れそうな高音で歌うとき、人称は女性のものを借りている(「あなたは私を誰よりも愛してくれたわ、ぼうや」)。ただ、オーシャンのラヴ・ソングが切実な告白であったのに対し、クレルのそれはどこか衣装を借りてきているようなのである。ここにあるのは、クイアな感性である。クレルはジャネット・ジャクソンのバラッド"アゲイン"のカヴァーも披露しているが、それはアントニー・ハガティがビヨンセの"クレイジー・イン・ラヴ"をカヴァーするのと......は少し違うかもしれないが、ジェームズ・ブレイクがジョニ・ミッチェルを歌うのや、オーウェン・パレットがライヴで好んで(それこそ)マライア・キャリーの"ファンタジー"を演奏するのと、もしくはパフューム・ジーニアスが新しいヴィデオでアメフトのユニフォームとハイヒールを同時に身に着けているのと、そう遠くない振る舞いではないかと感じるられるのだ。そこにあるのは、男性性が消えていくことへの抗いがたい快感だ。
 ハウ・トゥ・ドレス・ウェルはここで、喉仏を失った男として恐ろしく感傷的なバラッドを歌い上げ、セクシャリティの非常にマージナルな地点へと肉薄している。なんて奇妙にねじれた、そして魅惑的なラヴ・ソング集なんだろう。自由と呼ばれるものの定義はさまざまだろうが、いち部の感性の鋭い男性アーティストは、自らに内在する性の揺らぎにそのヒントがあるのではないかと探っているように見える......これまでよりも、それは自然なやり方でなされている。そしてその鍵はいま、間違いなくR&Bにある。


僕らがエレグラに行く理由 - ele-king

竹内:エレクトラグライド2012〉、いよいよ開催がせまって参りました。とりあえず、木津さんのお目当ては?

木津:今年で言うと、アンドリュー・ウェザオールとコード9の親父ズかな。

竹内:それは見た目的な話ですか?(笑)

木津:それも込みで(笑)。ウェザオールはヒゲ生やして圧倒的にセクシーになったから......。トゥナイトも超楽しみ。竹内くんは?

竹内:僕はフライング・ロータスです。あとは電気(グルーヴ)。

木津:おお! すごくいいエレグラ参加者だ! ちょっと先にそっちの話からしよう。そもそも、竹内くんはエレグラ初めて?

竹内:初めてです。というか、この規模の会場でダンス音楽を聴くこと自体、初めてです(笑)。

木津:そうか、じゃあ2009年の〈ワープ〉20周年のイベントのときも行ってないってことやんね?

竹内:あのときはさすがに盛り上がりを感じていて、記念コンピレーションを買って家で聴いていました(笑)。LCDの"ダフト・パンク・イズ・プレイング・アット・マイ・ハウス"を地で行っている人間なわけです。

木津:へええ! じゃあ、今年参加するのはどうして?

竹内:カジュアルに言うと、今年からライヴをわりと見るようになって、「ライヴっていいもんだなあ」と素直に思えるようになったから、くらいのものなんですけど(笑)。クラブ音楽って、「この曲がどうしても聴きたい」っていうような目的性からは離れているわけですよね。つながった時間のまとまりを享受するという。それがこの規模になったときにどうなるのか、単純に興味があります。

木津:なるほど。じゃあ僕の話をすると、エレグラには何回も行っておりまして、フジロックのときに発表があったんだけど、すんなり「お! 行こう」という感じで。いま関西に住んでいて、ある程度ダンス・ミュージック好きだったら、オールナイト自体が貴重なので。

竹内:そうなると、多少、政治性を帯びる可能性もある?

木津:うん、今年はやっぱり少しはね。でも、みんな基本的には楽しみたいだけですよ。今年も大阪でも開催するし、みんなすごく楽しみにしていると思う。

竹内:なるほど。僕のことを言うと、「地方の因縁から離れて、誰も自分を知らない空間に逃避したい」というのがあります。暗い(笑)。

木津:いやあ、好き勝手に楽しめばいいんですよ!(笑) 以前も書いたけど、僕のオールナイト体験で、いちばん強烈だったのがオウテカのライヴで。

竹内:あらためて教えてください。

木津:フロントがLFOで最高に盛り上がった後、電気が全部消えて、真っ暗闇のなかであのビートの応酬っていう。

竹内:おお(笑)。

木津:あれは凄まじかった。で、2005年のエレグラでオウテカがやったときは、大きい会場だからそこまで真っ暗にはできないんだけど、彼らのことを全然知らなかったひともけっこう衝撃を受けたと思う。

竹内:なるほど。

木津:この規模のイベントの醍醐味はそういうところなんじゃないかな。

竹内:未知との遭遇ということですか?

木津:うん。〈ソナー〉のときに、スクエアプッシャーが観てみたいという、クラブに行ったことのない2こ下の男子を連れて行ったんだけど、アフリカ・ハイテックをすごく好きになってた。

竹内:いい話ですねー。

木津:電気だけを目当てで来たひとが、コード9にやられる可能性だってあるだろうしね。

竹内:ところで、ゼロ年代の後半にエレグラは沈黙を強いられたわけですよね。内部的な事情はともかく、この期間になにか文化事情的な意味はあると思いますか?

木津:うーん。まあ理由はいろいろあるんだろうけど、ダンス・アクトに大物が目立たなくなったということはあるのかなあ。だって、いつまでもアンダーワールドに頼るのもねえ。

竹内:その話は重要な気がします。当時の現実的でシニカルな若者は、本当はダンス・ミュージックを聴きたくても、たぶん「こんな単純な4/4に乗れるか!」とか思っていたんじゃないでしょうか。まあ、僕の話ですけど(笑)。

木津:ほお。

竹内:そこでいうと、やはりダブステップは大きいのかも。

木津:ダンス・ミュージックの本質がアンダーグラウンドに潜ったってこと?

竹内:快楽が形骸化した一面はあるのでは、みたいな感じです。

木津:なるほど。

竹内:その反発はジューク/フットワークにまでもつれ込むのだと思っていて。ダンス・ミュージックが新しいステップを踏むには、ある種のアングラにならざるを得なかったのかなあ、みたいな。

木津:まあ、〈ワープ〉の第一世代が完全にクラシックになったタイミングでもあるよね。だから、今年はフライング・ロータスがいちばんの顔になっているのはいいことじゃない?

竹内:ですね。そこでいうと、今回フライング・ロータス(〈ワープ〉の新たな顔役)とコード9(〈ハイパーダブ〉代表)が来るのは大きい。ハドソン・モホークとルナイスが組んだトゥナイトもですね。

木津:フォー・テットも最近、かなりフロア・ミュージックになってるしねえ。

竹内:出所はエレクトロニカですもんね。それでいうと、ロータスはヒップホップですよ。やはり、どこかのタイミングでダンスへの再接近があったと。フォー・テットもブリアルとやっていますね。あれは凄まじかった。

木津:うん。わりと最近ライヴ観たときはかなりダンサブルだったよ。とまあ、今年は本当に「ダンス」のあり方が多様でいいと思う。

竹内:ですよね。これまでの話とまったく逆をたどれば、クラブのオリジナル世代からしたらダンスと呼びたくないようなものまで、もしかしたら入っているかもしれない。

木津:そっか。でも、DJクラッシュやDJケンタロウのようなベテランもいるし。

竹内:ですね。年長組で言うと、木津さんはアンドリュー・ウェザオール? ファック・ボタンズのセカンドで名前を聴きましたね。

木津:うん、ソロではロカビリーをやったりするんだけど、DJのときはしっかりハウスのときがけっこう多いかな。あとオールドスクールのエレクトロ。でも、新しい音もけっこうかけるのかなあ。

竹内:どうでしょうかね。僕はやっぱり、電気が観てみたい。ライヴの間くらい、馬鹿になるのが目標なので(笑)。

木津:はっはっは。このラインアップに電気がいるのは、けっこう面白いよね。ある意味、いちばん浮いてる。

竹内:ですよね。それだけ、信頼が厚いと?

木津:そうなのかな。いちばん、変な感じになりそうやけど(笑)。

竹内:楽しみです(笑)。あと、視覚を活かしたアーティストが何組かいますね。

木津:それで言うと、まずはアモン・トビンでしょう! 前作の『アイサム』のときのフィールド・レコーディングのコンセプトを、ライヴで具現化したものになる......らしい。この前のDVD作品もすごく評判だけど、ライヴだとパワー・アップするでしょう。これが観たいので、僕は大阪から幕張に行きます(笑)。映像ものはクリス・カニンガムのときもすごく盛り上がったけど、大きいイベントならではやね。スクエアプッシャーは〈ソナー〉のときにLEDヴィジョンを使ってたんだけど、今回はそれに加えてベースもプレイするとか。

竹内:ほお。それはフィジカルな。

木津:スクエアプッシャー最近、妙に元気やんね。ライヴに燃えてる。

竹内:オービタルは?

木津:僕は、2004年でいったん活動やめるっていうからその年の〈WIRE〉に観に行ったよ! 往復青春18きっぷで(笑)。

竹内:愛だ!(笑)

木津:だから、最近ふつうに再活動しててちょっと納得がいかない(笑)。でも、あの大らかなテクノは大バコに映えるでしょうな。

竹内:他のイベントとの差別化って、どんなところにあるんでしょう?

木津:エレグラは〈ワープ〉周辺がとくに好きなひとに訴えるような作りになっている気がするなー。いち時期、LCDとか!!!とかも出てたんだけど、そういう意味ではインディ・ロック好きにもちょっと寄ってるし。普段クラブ・ミュージックは聴かないけどフライング・ロータスは聴くってひともけっこういるんじゃない?

竹内:ですね。どんなプレイ・セットになるのかなあ。

木津:前回観たときは生ベースがあったりで、かなりグルーヴィーだった。

竹内:アルバムからいくと、また今回は違った雰囲気かもしれないですね。

木津:もうちょっとチルな感じなのかなあ。でも、そのときはドラゴンボールのコスプレで「カメハメハー!」って言ってたよ(笑)。

竹内:うわああ(笑)。

木津:いやいや、でも今回の顔なのは間違いないでしょう!

竹内:でしょう!

木津:でも、2ステージに分かれてこれだけアクトが揃ってると、ほんとにそれぞれ好きに楽しめそうやね。

竹内:ですね。「しばらくクラブから遠ざかってたけど、さすがに今回のエレグラは行くかなあ」なんて声も聞きました。

木津:おお、いいことですなあ。それは特定のアクト目当てで?

竹内:というより、ダンス・ミュージックに再燃の兆しを認めている感じかもしれません。

木津:お! でもたしかにそういう説得力のあるラインアップですよ。

竹内:どんと来いと(笑)! 「僕がエレグラに行った理由」を、みんなでぜひ語り合いましょう!

木津:そうやね。じゃあ、最後にお互いイチオシを挙げときましょうか。僕はウェザオールとコード9......としつこく言いたいところだけど、アモン・トビンとTNGHTで。

竹内:僕はいろいろあるけど、フォー・テットで。ゼロ年代インディ以降の代表格が見つけたダンス・ミュージックを生で聴いてみたい。彼のキャリアの軌跡って、いまの若いリスナーが通った道ともかなり近い気がするんですよね。

木津:うん、フォー・テットのいまのモードは、シーンのモードだと思うよ。それはともかく、飲まされすぎないようにしないと、僕はトイレが近いので......。〈ソナー〉のときも、ひたすら飲まされ続けたからなあー。

竹内:ははは、今回は各自楽しみましょう(笑)。

木津:そうやね(笑)。

竹内:願わくは、レポのことなんて気にしないで......。馬鹿になりましょう!(笑)


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Orbital / Wonky

2000年のエレクトラグライドでヘッドライナーを、翌年のフジロックでもホワイト・ステージの大トリをつとめるなど日本でも絶大な支持を得てきた「テクノ四天王」オービタル。2004年の『Blue Album』発表時に活動休止を宣言して以降、シーンへのカム・バック作となる2012年の通算8作目。

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TNGHT / TNGHT

〈ワープ〉の新世代を象徴するアンファン・テリブル、ハドソン・モホークが盟友ルナイスと組んだコラボレーション・プロジェクト、トゥナイトの5曲入りEP。それぞれのレーベル〈ワープ〉と〈ラッキーミー〉からリリースされた2012年作だ。ミニマルかつエクストリームなウォンキー良盤。

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Flying Lotus / Until the Quiet Comes

『コズモグランマ』から2年。マシューデイヴィッドやマーティン、ライアット、ジェレマイア・ジェイなど、〈ブレインフィーダー〉レーベルにおける活動もますます興味深いものとなっているなかで発表され、自身が「神秘的事象、夢、眠り、子守唄のコラージュ」と呼ぶ本年重要作。

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Squarepusher / Ufabulum

〈ワープ〉を代表し、エレクトロニック・ミュージックにとどまらず広範な影響を与えてきたトム・ジェンキンソンが「最近あらためてピュアなエレクトロニック・ミュージックのことを考え始めたんだ。とてもメロディックで、とても攻撃的なものをね」と語る2012年作。

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Four Tet / Pink

ポストロックを代表するフリッジのギタリストであり、最近ではフォークトロニカとダンス・ミュージックとを鮮やかに縫い合わせているかに見えるフォー・テットことキエラン・ヘブデンの最新作。60分を超える大作である反面、フロアに映えるようなダンス・ナンバーも増えている。

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Amon Tobin / ISAM

フィールド・レコーディングを駆使して構築され、気鋭の若手アーティスト、テッサ・ファーマーとのコラボレーションによって完成したキャリア集大成とも言える大作。自然や生命の繊細さと大胆さを洗練されたテクニックと鋭敏な感性でとらえた美しくも挑戦的な2011年作。

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The Asphodells(Andrew Weatherall) / Ruled By Passion, Destroyed By Lust

25年にわたって第一線での存在感を保ちつづけてきたプロデューサー、アンドリュー・ウェザオールの最新プロジェクト、ジ・アスフォデルスのデビュー作。ヨーロッパで頭角を現し、名門クラブでのDJプレイで活躍するティモシー・J・フェアプレイとのコンビで編まれたエレクトロニック回帰作。

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Kode9 & The Spaceape / Memories of The Future

ブリアルの発掘を機に世界的なインディ・レーベルへと成長し、狭義のダブステップの境界を超えて刺激的な作品を発掘しつづけている〈ハイパーダブ〉の主宰者、コード9。 本作はブリアルの処女作と並ぶ、レーベル最重要作品のひとつ。

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https://www.electraglide.info/

セオ・パリッシュJAPANツアー決定 - ele-king

 古いやつだとお思いでしょうが、わたしは1NIGHT-1DJというスタイルが大好きである。気の合ったDJ同士が織りなすひと晩のプレイも悪くはないが、ひとりのDJとしてそのひと晩をどのように演出してくれるのか、前者のほうがその力量がハッキリと出る。もちろんそれには確かな技量、知識、経験、情熱、そして興行としての成否もあり、名の知れた箱でそれを許されるのはある意味「選ばれし者」だけが得ることのできる名誉と言っても過言ではないと思っている。

 わたしが2度めの東京生活をはじめた以降も心に残る名場面がいくつかあり、LOOPでのNORIさんの30時間セットを筆頭に、同じくLOOPでのDJ CHIDA君、マイクロオフィスでのMOODMAN、最近ではリキッドルームでのDJ NOBU君の7時間セットも記憶に新しい。

 とくに近年はお客さんも短時間で簡単に判断してしまう傾向が強く、ひと晩その人の叙事詩をじっくり愛でるといった遊び方が少し敬遠される向きがあり、こういった思い切った興行が少なくなったのもさびしいところだ。何百何千の人をフォローして140文字のタイムラインを眺めるのも結構だが、タマには大家の長編小説をじっくり腰を据えて読んでみてほしい! といったところでしょうか。

 さてさてそんなことを思っていた折も折、恵比寿に移って以降めでたく8周年を迎えたリキッドルームがまたまたやってくれます。前述のDJ NOBU君のOPEN - LASTを終えて以降、メインフロアのスピーカーを一新して初の「OPEN - LAST」に指名されたのは、やはりセオ・パリッシュでした。ご存知の方も多いとは思うが、セオはあのフロアにとてもよく似合う。「デトロイトのやんちゃ坊主」といった感じもすでに過去の話で、リキッドルームで見る彼の姿はすでに風格さえ漂う。

 余談だが12インチばかりでなくLPも多用する彼のスタイルがリキッドルームの新しいスピーカーでどのように響くのか? という個人的な楽しみもある。えっちゃんの粘土を使ったフライヤーも最高だ!!!

 ぜひぜひ皆さんお誘いあわせの上、セオ・パリッシュ一晩の叙事詩をじっくり楽しんで朝方ゾンビ顔で再会しましょう!!

五十嵐慎太郎


Theo Parrish Japan Tour 2012

■11.16(FRI) Fukuoka @Kieth Flack
DJ: Theo Parrish, DJ Saita(Back To Basic)
Groove Drops Lounge
DJ: Osaki, Shibata, Ikeda, MANTIS(3rd Stone)

open 19:00 - close 1:00
Advanced 3000yen
Door 3500yen

INFO: KIETH FLACK https://www.kiethflack.net
TEL 092-762-7733
福岡県福岡市中央区舞鶴1-8-28 マジックスクウェアビル 1F/2F

■11.17(SAT) Tokyo Ebisu @LIQUIDROOM
- BLACK EMPIRE feat.THEO PARRISH -

DJ: Theo Parrish(open-last set)

open/start: 23:00
Door 3500yen
With Flyer 3000yen

INFO: LIQUIDROOM http:/www.liquidroom.net
TEL 03-5464-0800
東京都渋谷区東3-16-6

20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため、顔写真付きの公的身分証明書をご持参ください。You must be 20 and over with photo ID.

■11.22(THU) Nagoya @Club Mago
- AUDI.-

Guest DJ: Theo Parrish
DJ: Sonic Weapon, Jaguar P
Lighting: Kool Kat

Advanced 3000yen
With Flyer 3500yen
Door 4000yen

INFO: Club Mago https://club-mago.co.jp
TEL 052-243-1818
名古屋市中区新栄2-1-9 雲竜フレックスビル西館B2F

■11.23(FRI/祝日) Akita @JAMHOUSE
- TIME&SPACE -

Guest DJ: Theo Parrish
DJ: SOU(codomoproduction), DOVE CREW

open/start 21:00
Door 3000yen
INFO: JAMHOUSE http:/www.jamhouse-akita.com
TEL 090-7796-9608
秋田県秋田市中通4-5-9

■11.24(SAT) Kobe @troopcafe
- Deep Sessions -

Special Guest: Theo Parrish
Act: Telly, Mituo Shiomi

open/start 23:00
With Flyer MB 3000yen with 1Drink
Door MB 3500yen with 1Drink

INFO: troopcafe https://troopcafe.tumblr.com
TEL 078-321-3130
兵庫県神戸市中央区北長狭通2-11-5

TOTAL TOUR INFO: AHB Production www.ahbproduction.com
TEL 06-6212-2587



Theo Parrish (Sound Signature)

デトロイトに拠点をおくプロデューサー、DJ。ワシントンDCに生まれ、年少期をシカゴで育つ。またその後カンザスシティー、Kansas City Art InstituteではSound Sculpture(音の彫刻)を専攻。1994年、デトロイトに移住。1997年、レ-ベルSound Signatureを立ち上げ、常に新しい発想と自由な表現で次々に作品を世に送り出す。現在Plastic People(London)にて毎月第一土曜日のレギュラーパーティーをもつ。

"Love of the music should be the driving force of any producer,performer or DJ. Everything else stems from that core, that love. With that love, sampling can become a method of tasteful assembly, collage, as opposed to a creative crutch, plagiarism. Using this same understanding openly & respectfully, can turn DJing into spiritual participation. It can turn a few hours of selection into essential history, necessary listening through movement."(Theo Parrish)

「音楽への愛」こそがプロデューサー、パフォーマー、DJたちの原動力であるべきだ。この想いがあれば、サンプリングという方法は、盗作でもなく、音作りへの近道でもなく、個性ある音のコラージュになる。それと同じ理解と想いを持つことにより、DJもまたスピリチュアルな行為となり得る。数時間分の選曲が、本質を伴った歴史の物語となり、動きを伴った音楽体験となる。
(セオ パリッシュ  訳: Yuko Asanuma)

WIRE - ele-king

 ワイアーは、UKにおけるポスト・パンクの最高のバンドである。
 コリン・ニューマンとブルース・ギルバートを中心と彼らが残した最初の3枚のアルバムは、パンク・ロックがいかにロックのクリシェを捨てて音楽的に発展したのかを示す、優れたドキュメントとなっている。PiLはダブとクラウトロックを参照したが、彼らは独自の方法論で、彼らのぱっと聴いたところシンプルだが、よく深く聴いてみると機械の内部のように細かいスタイルを発明した。コリン・ニューマンとブルース・ギルバートは、それぞれソロ活動としても身を見張る成果を残している。
 惜しくもブルース・ギルバートは脱退したが、2011年の最新アルバム『Red Barked Tree』では、その健在ぶりを証明している。そして、同年7月に開催された代官山UNITの7周年イヴェントにもメイン・ゲストとして出演、新旧織り交ぜたセットを披露し喝采を博した。
 なお、対バンには、今年の5月に約四半世紀振りの復活を遂げ大きな話題となったEP-4の佐藤薫とBANANA-UGによるエレクトロニクス・ノイズ・ユニット、EP-4 unit3 の出演も決定!
 おまえ誰だ! ワイヤー!

■2012/11/12(MON)
代官山UNIT
OPEN 18:30 START 19:30
ADVANCE ¥3,500(DRINK 別)

DAIKANYAMA UNIT EVENT INFORMATION
MORE INFORMATION : UNIT/TEL 03-5459-8630 www.unit-tokyo.com
ADVANCE TICKETS 一般発売 : 10/20 (SAT) 10:00~
LAWSON TICKET(L:77341), e+, 代官山UNIT 店頭にて発売

WIRE
guest : EP-4 unit3


■大阪公演 11/14(木)
東心斎橋LIVE SPACE CONPASS

” EXTRA III ” supported by neutralnation - WIRE (UK) JAPAN TOUR -

OPEN 19:00/START 19:30 前売¥3,500(ドリンク代別途)
info. 06-6243-1666 (CONPASS


■"NEUTRALNATION 2012" 11/11(日)
新木場STUDIO COAST

出演アーティスト:WIRE (UK)、DE DE MOUSE + Drumrolls、toe、mouse on the keys、LITE、にせんねんもんだい、ペトロールズ、eli walks、UHNELLYS、jemapur、Quarta330 and more

OPEN 12:00 START 13:00 前売¥5,000 円
more info : https://neutralnation.net/

Avalanche - ele-king

 書かなければ、と思っている間に2ヵ月が経ってしまった! ああぁぁ、記憶は、やはり薄らいでいる。まったく、自分の怠惰を呪いたくなる。しかし、いまからでも遅くはない。それだけ素晴らしく充実したライヴ・イヴェントだった。去る8月26日、僕はインディ・ヒップホップ・レーベル〈サミット〉が主催する〈アバランチ2〉に行った。〈サミット〉はいち早くPSGやシミ・ラボに注目して契約を交わしたレーベルで、僕はこのレーベルの"嗅覚"というものを信じている。〈アバランチ2〉のラインナップを見たとき、絶対観に行こうと決意した。

 シミ・ラボやパンピー、キエるマキュウやエラも観ることができる。あの瑞々しい"Pool"のミュージック・ヴィデオ一本で巷の話題をさらった新星、ザ・オトギバナシズも出演する。僕は彼らのライヴを、その前の週に青山の〈オース〉という小さなDJバーで観ていた。やけのはらやパンピーという人気者がいながら、オーディエンスの熱い視線はザ・オトギバナシズの3人に注がれていた。彼らは少し戸惑っているように見えたが、その状況を乗り切るだけの気迫と若さがあった。フロントのふたりがアグレッシヴな態度でラップする姿が印象的で、僕は〈ユニット〉規模のステージで改めて彼らのライヴを観たいと思った。

 イヴェントは夕方4時から始まり、僕が会場に到着した直後、ちょうどザ・オトギバナシズがステージに姿を現した。3人は堂々というよりも飄々としていた。インターネットを通じて、彼らのスタイリッシュな映像や"チルウェイヴ以降"の音、その抑制の効いたラップだけを聴いている人は、もしかしたらチャーミングな彼らの、とくにビムの強気なステージングに戸惑うかもしれない。"Pool"と、その日会場で販売していた『Avalanche 2 Bonus CD-R』に収められた"Kemuri"、"Closet"、どの楽曲もたしかに現実逃避的で、幻惑的であるのだけれど、ライヴではそこに生々しい感情が込められていく。そのどこかちぐはぐな感じが、彼らの現在の瑞々しさであり、魅力だと思う。

 会場を見渡すと、男も女もシュッとしたおしゃれな人が多い。夜中のクラブにはない、爽やかな雰囲気が漂っている。そのフロアにD.J.エイプリルは、ジュークを次々と投下し、フットワークのダンサーは扇動者となって輪を作り、ダンスの渦を巻き起こしていった。みんな笑顔で、手足をアクロバティックに動かしている。フットワークというダンスには、人の奥底にある何かを解放する陽性の魔力があるようだった。僕はといえば、スピーカーの前に陣取って、腰をくねくねしながら、はじめて大音量で聴くジュークを堪能していた。ソウル・シンガーのヴォーカルがずたずたに切り裂かれ、ベースはうなりをあげ、キックとスネアとハイハットがびゅんびゅん飛び交っていた。身も蓋もないが、「こりゃ、すごい! ジュークには黒人音楽のすべてが詰まっている!」、そう感じて熱くなった。はじめてムーディーマンの黒さに魅了されたときのような興奮を覚えた。

 ジュークの嵐のあと、エラがステージに颯爽と現れ、いい感じに脱力したメロウでルードなパフォーマンスを見せた。エラのあの渋い声とスペーシーなトラックが会場に響くだけで充分だった。ラウ・デフとゲストとして登場したQNの人を食ったような、挑発的な態度から繰り出すラップは、ラッパーとしてのスキルの裏づけがあるからこそ成立する鋭い芸当だった。ふたりは現在、ミュータンテイナーズ(ミュータントとエンターテイナーを掛け合わせた造語)の活動をスタートさせている。

 そして、僕ははじめて観るキエるマキュウのライヴがどんなものなのかと期待しながら、待った。ソウルやファンクの定番ネタを惜しみなく引っ張り出した彼らの9年ぶりの新作『Hakoniwa』はサンプリング・アートとしてのヒップホップがいまも未来を切り拓けることを証明し、フェティシズムとダンディズムの美学を追及したマキ・ザ・マジックとCQのラップは、感動的なほどナンセンスで、下世話で、ファンキーだった。
 誰もが正しいことを言おうとする時代に、彼らは徹底して正しさを拒絶した。それは言ってしまえば、Pファンク的であり、ふたりのラップはゴーストフェイス・キラーとレイクウォンのコンビを連想させた。僕はこのアルバムを聴きながら、笑いながら泣いた。
 彼らのライヴに期待していたのは僕だけではなった。多くの人が期待していた。イリシット・ツボイは、ブースの前でスタンバイすると、唐突にCDJをステージの床に置き、会場を爆笑に包む支離滅裂な言葉を吐き、クラウドを激しく煽った。そして、ビートが鳴り響いた瞬間、僕はその音の太さに一瞬にして痺れた。マキ・ザ・マジックとCQのラップは、上手さではなく、味わいで勝負していた。まさにベテランの凄みと粋だった。
 マキ・ザ・マジックはよく喋り、イリシット・ツボイと絡み合う謎の身体パフォーマンスを見せた。会場からは終始笑いが起こり、僕の後ろで観ていた女性は、「なに、あれ、意味不明、自由過ぎる! アハハハハ」と笑っていたが、僕もその通りだと思った。彼らは昨今なかなかお目にかかることのない最高のアホで、素晴らしく自由だった。その時点で、この日のMVPはキエるマキュウだと確信した。

 一息つこうとぶらぶらしていると、会う人、会う人、キエるマキュウのライヴを賞賛している。ある人はエラが良いと言っていた。いろんな意見があった。その後すかさず始まったDJのセックス山口とサイドMCのゼン・ラ・ロックのショータイムは、サービス精神の塊だった。セックス山口は、僕がパフュームの曲の中で唯一大好きな"マカロニ"のイントロを執拗にループさせたかと思えば、マイケル・ジャクソンの"ビート・イット"をスピンした。こんなにベースがかっこいい曲だったのか、と思った。セックス山口のDJには、誰もが知っている有名曲の新鮮な魅力を引き出す面白さがあった。大きな眼鏡をかけ、奇抜なファッションをしたゼン・ラ・ロックは体を激しくバウンスさせて、フロアのダンサーたちを煽り、女の子をきゃあきゃあ言わせていた。その流れでのパンピーのソロ・ライヴも大盛り上がりだった。パンピーは生涯2回目(だったか?)というソロ・ライヴを大いに楽しんでいるようだった。PSGと曽我部恵一が共作したサマー・チューン「サマーシンフォニーver.2」のイントロが流れた瞬間、フロアの盛り上がりはピークに達し、その日いちばんの黄色い歓声があがった。あの曲は、完璧にアンセム化していた。パンピーは今年こそソロ・アルバムを出すとMCで語っていたから期待しよう。

 パンピーやゼン・ラ・ロック、シミ・ラボといった面々の功績も大きいのだろうが、いま、ラッパーやヒップホップのDJがちょっと意外なところに呼ばれることもあるようだ。アイドルとブッキングされるとか、そういう話もちらほらと聞く。
 〈アバランチ2〉から数週間後の9月15日、QNとロウパスのギヴン、ビムが出演するという噂を聞きつけ、下北沢で早朝近くまで飲んだあとに、〈トランプルーム〉という渋谷のタワーレコードの近くのビルの一角にあるスペースで開かれるパーティに行って、驚いたことがある。
 足を踏み入れた瞬間に僕は、その熱気に大きな衝撃を受けた。身動きできないほどの人の多さと西洋の貴族の屋敷を思わせるゴージャスの内装にも驚いたが、まるで仮装パーティのように着飾った男女の豪奢なファッションに圧倒された。べらぼうに高価な服というわけではないのだろうが、それぞれに独自の個性があり、男も女もセクシーで若く、尖がっていた。僕は赤いパンツを履いていたのにもかかわらず、「こんな地味な格好で来て、しまったな~」と気まずくなった。ビールが500円だったのにはほっとした。
 さらに僕を興奮させたのは、5、6割が外国人だったことだ。白人もいれば、黒人もいれば、ラテン系やアジア系もいる。そして、その場はとにかく底抜けにエネルギッシュだった。僕はファッション事情にはまったく疎いし、そのパーティの背景も実はよくわからない。レディ・ガガは日本に来ると、原宿あたりの服屋で大量に服を買っていくらしいという噂はよく耳にするが、そのあたりの文化圏につながっている雰囲気をなんとなく嗅ぎ取ることはできた。〈トランプルーム〉も元々もは服屋だったそうだ。
 たまたま酒を飲み交わしたフランス人は不服そうな顔をして、「スノッブだ」とこぼしたが、僕は、おしゃれに着飾ったいろんな人種や国籍の若者が入り乱れながらパワフルに踊る光景を見て、〈KAWAII TOKYO〉と銘打たれたこの開放的なパーティにQNとギヴン、ザ・オトギバナシズのような新世代のラップ・アーティストが呼ばれていることに、なんだか明るい未来を感じた。

 とにもかくにも、〈アバランチ2〉には、豪華な面子が集まっていた。そして、彼らは素晴らしいパフォーマンスを見せた。僕は途中まで、キエるマキュウがこの日のMVPを持っていったと思っていた。が、その日のトリを飾ったシミ・ラボがひっくり返した。彼らは間違いなくその日のベスト・アクトだった。マリア、ジュマ、オムスビーツ、ウソワ、ディープライド、DJハイスペックの6人の凄まじい気迫がこもったライヴは、僕がこれまで観た中でも最高のパフォーマンスだったと思う。彼らは相変わらずファニーで、ファンキーだったが、シリアスな態度も忘れなかった。彼らはジョークを言いながらも、主張することは主張した。オムスビーツとジュマは、スピーカーの上に乗って、激しく体を揺らし、ラップした。マリアとディープライドは彼らのソロ曲を披露し、オムスビーツは、「いろんな意見があるだろうし、自分も本当は言いたくはないけれど、言わせてくれ」というような主旨の前置きをしてから、「ファック・ザ・ポリス!」と職質に対する不満を痛烈な言葉にして吐き出した。それはリアルに心に響く言葉だった。シミ・ラボの新曲"We Just"のたたみかける怒涛のビートと5人の隙のないマイク・リレーも圧巻だった。彼らは見るたびにラップのキレが増している。ライヴとはアーティストの変化を楽しむものでもある。

 オムスビーツは数日前にファースト・ソロ・アルバム『Mr. "All Bad" Jordan』をリリースした。不覚ながら、僕はまだ聴けていないが、ユニークな作品に仕上がっているに違いない。聴くのが楽しみだ。11月3日には町田で彼のリリース・パーティがある。ザ・オトギバナシズは、〈サミット〉とディールを交わすことをこの日のステージで宣言していた。『Avalanche 2 Bonus CD-R』にはエラとパンピーの共演曲も収められていた。とにかく、僕がここで伝えたいのは、2ヶ月経ってしまっていようが、レポートを書く意義を感じるほど、〈アバランチ2〉はライヴ・イヴェントとして充実していたということだ。次も僕はきっと行くだろう。

(special thanks to 増田さん@summmit)

Kaoru Inoue - ele-king

9/12に個人名義では3枚目になるアルバム「A Missing Myth」と、10/24にギタリスト小島大介とのユニット"Aurora Acoustic"の新作「Harmony of the Spheres」とベスト盤「The Light Chronicles」を、全て自主レーベル「Seeds And Ground」よりリリースしました。「A Missing Myth」のCD盤は限定生産とはいえ一ヶ月強で在庫がなくなるという、自分でも驚くべき結果となりました。真摯に音楽を作ることで応えてくれる人々がどんな時代状況でもいるという、もしかしたら当たり前のことに改めて気づかされ勇気づけられました。来年に向けさらなる制作もプランしつつ、今後もDJやライブをやり続けます。

11/3 @ Vision 1st Anniversary
11/4 Life Music @ Time Out Cafe & Diner
11/10 "A Missing Myth" Release Party @ Nattsu (Takamatsu)
11/17 "A Missing Myth" Release Party @ Troop Cafe (Kobe)
11/24 Komamo 2012 @ 東京大学駒場際
11/24 Blafma @ eleven (Aurora Acoustic)
12/1 Groundrhythm 10th Anniversary @ AIR
12/8 "A Missing Myth" Release Party @ Labo Underground (Miyazaki)
12/15 "A Missing Myth" Release Party @ Add (Sendai)
12/21 "A Missing Myth" Release Party @ Orb (Nagasaki)
12/23 "A Missing Myth" Release Party @ Yebisu Ya Pro (Okayama)

https://www.seedsandground.com
https://soundcloud.com/kaoru324

CHART


1
Mungolian Jetset - Smells Like Gasoline - Smalltown Supersound

2
Kaoru Inoue - Etenraku - Seeds And Ground

3
Kaoru Inoue - Ground Rhythm (The Backwoods Remix) - Seeds And Ground

4
Awane - Atom - Seeds And Ground

5
Secret Circuit - Jungle Bones (Prins Thomas Bonus Beat) - Internasjonal

6
Tornado Wallace - Rainbow Road (Lewie's Bowser Castle Remix) - Instruments of Rapture

7
Bepu N'Gali - I Travel To You - International Feel

8
Den Ishu - High U Gonna Feel - Supernature

9
Chymera - Death by Misadventure (Album) - Connaisseur

10
Kaoru Inoue - Malam - Seeds And Ground

Chart JET SET 2012.10.29 - ele-king

Shop Chart


1

Greg Foat Group - Girl And Robot With Flowers (Jazzman)
11年のシングル、アルバムは一瞬で完売。エレガントでサイケデリックでグルーヴィーな独自の世界を進化させた話題の新作が登場です。即完売必至の1000枚限定プレス!!

2

Frank Ocean - Thinking About You (Unknown)
2012年にアルバム『Channel Orange』で公式デビューを果たしたR&bシーンの注目株Frank Oceanによる"Thinking About You"の5リミキシーズ! どれも原曲を生かしたナイスな仕上がり!

3

Martha High & Speedometer - Soul Overdue (Freestyle)
Vicki Andersonをカヴァーした大ヒット・シングル続く待望のアルバムは、ソウル/ファンク名曲の数々をカヴァー。

4

Egyptian Hip Hop - Syh (R&s)
鮮烈なデビューから早くも2年。遂に出たアルバムから500枚限定の7インチが登場!!

5

Kendrick Lamar - Good Kid, M.a.a.d City
玄人をも唸らせるフリースタイル・スキルを持つ若手ラッパーが、Cd/mp3音源でのリリースやDrake, 9th Wonder等の客演を経て、遂にAftermathからメジャー1stアルバムが投下されました!

6

Stepkids - Sweet Salvation (Stones Throw)
2011年の1st.アルバムが高い評価を得た西海岸の腕利きトリオ、Stepkids。年明けリリース予定のセカンド『Troubadour』からの先行12インチが到着です!!

7

Enzo Elia - Balearic Gabba Edits 3 (Hell Yeah)
Enzo Elia自身の主宰する要注目のイタリアン・レーベルから、ヴァイナル・オンリーで展開される大人気シリーズ"Barearic Gabba Edits"第三弾!

8

Beauty Room - Beauty Room ll (Far Out)
A.o.r.、ブルーアイド・ソウル、ソフトロックまで取り込んだ、洗練を極めた究極の都市型音楽が誕生!!

9

La Vampires With Maria Minerva - Integration Lp (Not Not Fun)
ごぞんじ100% silk主宰者Amanda Brownのソロ名義、La Vampires。当店超ヒットのItal、Octo Octaに続くコラボ盤は、ロンドンの女性クリエイターMaria Minervaがお相手です!!

10

Sir Stephen - House Of Regalia (100% Silk)
12"「By Design」が最高だったニュー・オーリンズの鬼才クリエイターによる8曲入りアルバム。アシッド・ハウス~ヒップ・ハウス~アーリー・90's・ハウスを極めた入魂の全8トラック!!

YYU - ele-king

 「Can I watch you?」という言葉が、プレイヤーが故障でスキップしたかのように「I watch you」に短縮され、こだまする。この気味の悪い演出で締めくくられるにも関わらず、このカセット・テープは通して聴いても不気味な印象はなく、鬱屈していながらも不思議と爽やかでさえある。ジェームス・ブレイクは「愛の限界」をつきつけられ悲哀のポルターガイストを引き起こしていたが、YYUことベン・シュトラウスによる『タイムタイムタイム&タイム』は、決して贅沢ではないアパートの一室において、雨の降る町を横目に歌う地縛霊/背後霊めいたアヴァン・フォークのカセット・テープ作品である。

 タイニー・ミックス・テープスはこの作品のスタイルを「vaporwave, post-dubstep, avant-folk, wonky, footwork」と形容している。うさんくさいと思われるかもしれないが、ヴェイパーウェイヴ以外は納得のいくところだ。実際、僕もそれらを思い浮かべた。基本的にフィーチャーされているのはYYU自身と思われるフォーク風の弾き語りなのだが、エディットのされ方には、ジュークのBPMと細かいカットアップと、拍を把握しづらいポスト・ダブステップ的なリズムなんかがたしかに息づいている。そして、それが自慢げに披露されるわけでもなく、なにげなくさらっと聴くことができてしまう調合の妙には驚いた。クラシック・ギターとIDMの組み合わせとしてはローリー・モンクリーフを思い出したが、ローリーがあくまでトラックのうえに自らの歌を乗せていたのに対し、YYUは自らの弾き語りそれ自体をカットアップの対象のひとつと捉えている。さらには、今作にはアンビエント/ドローンの下敷きがそれとなく挟み込まれている。

 「vaporwave」というタグづけに関しては......とにかくタイニー・ミックス・テープがその語を言いたかったんだろう。ここには、正直なところレトロ・フューチャリスティックなヴィジュアルもなければ、ニュー・エイジを嘲るような舞台演出も、資本主義のもとでテクノロジーだけが現在進行形で果てもなく加速することへの懐疑的な戯れもない。あるのは、めまぐるしく毎日がすぎるのを感じている生活者の呻きのような歌である。そういう意味では、これはヴァーチャル・プラザから帰宅した、なんとなく肩こりを感じる生活者の歌とも言えるかもしれないね、タイニー・ミックス・テープス。
 ピッチが上がっていたり下がっていたりしてどれが地声なのか判断し難いほどだが、なんにせよ、声は疲れている。発語しているのはわかるが、滑舌はうやむやにされており、言葉はなかなかききとれない。明るいようでもあれば、哀しいようでもあるが、そのどちらをも悟らせないかのように、上手なヴォーカルはその内面を語らない。しかし、がむしゃらなフィンガー・ピッキングでクラシック・ギターの弦が弾き倒される音が、ときに叩きつけられるビートが、そしてそのジュークやポスト・ダブステップを思わせる複雑なリズムが、平坦に聴こえるヴォーカルの奥底に切迫したエモーションが胎動しているのを示唆しているようでもある。 

 この作品にはYYUなりにコンセプトがあるようだ。それはタイトルを見てもらえばなんとなく感じられるだろう。ボっとしていたらあっという間に過ぎ経っていってしまう「とき」をつかまえようとしており、そのための手がかりとして「反復」が試みられているようだ。今作でのカットアップ&ループは、ヒップホップのサンプリングのようなスムースなループではない。先述したスタイルで並べられたタグが示唆するとおり、不自然なタイミングでカットされ、ときにポリリズムを用いて、リスナーをつまづかせるようにループしている。ある数秒の「とき」が決して平坦に流れることなくたえず不自然に「反復」され、その「とき」と時間軸とを引き剥がすことによってその両方の存在をリスナーに印象づけてつかまえさせる。そしてエディットはやはり繊細になされている。

 オープニングから「タイム」という語がサンプラーの連打で繰り返される。ピッチの下げられた声が「&」「&」と繰り返す"&&&&"。えんぴつでリビングのテーブルを叩いたかのようなビートの"yyyy"。メランコリックな音色のオルゴールの節をタイトルで視覚化した"ll l l l"ののち、カセット・テープは長い沈黙を経て、B面へと続く。この沈黙でさえ、音楽を聴取することで逆に忘れられてしまう可能性のある「とき」という概念をはっきりと聴き手に認識させようとするものであるかのように思える。
 B面は、自らの弾き語りを途中からカットアップしピッチを変えリズムを変え「タイム」を反復させる"&time"で始まる。つぎの"4.55am-aloneholdingmybreath"つまり「午前4:55―ひとり自分の息を止めている」......夜もふけ朝になろうとするころにまだ眠りにつけない生活者が描写されている。ここには歌はなく、誰かの意味不明な歌の節がカットアップされ、休まらない頭のなかで絶えず反響してしまっている(それこそメディアファイアードのように)。ジュークの高速ハイハットを思わせるリズムは、日常の記憶(「とき」)の駆け巡るっているようで、睡眠中に脳が記憶の整理をしているという話を想起させる。あるいは眠りにつけないまま意識が過剰に働いてしまっているかのようでもある。いずれにしろ、ここにはタイトル通りに、痛々しく、息(生き)苦しい気分が閉じ込められている。高速のギターが印象的な"when you said that"ののち、センチメンタルなピアノと動悸のようなフロアタムの音、そしてまたやってくる高速BPMのリズムが印象的な"11pm breakfast sandwich"――「午後11:00 朝食 サンドイッチ」が、バイオリズム(体内時計)が狂ってしまった生活者の「とき」の経過を示唆する。「どこで」「あんた」という意味不明な日本語がサンプリングされ、日本のバンドtoeを思わせる激しいドラミングとアナログ・シンセがフューチャーされた"(((*~*~ under that"を経て、冒頭でも挙げた、女性的なピッチのヴォーカルが「Can I watch you?」と歌う"i haven't left"――「私は......離れてない」でカセット・テープはA面へ戻る。

 YYUは過去作品からすでに自らのフォークをIDM風にカットアップする試みをしていたようだが、今作『タイムタイムタイム&タイム』はジュークやポスト・ダブステップという複雑なリズムのベース・ミュージックを取り込んだ。それが狙ったのか偶然なのか分からないが、いや、おそらく狙ったのだろう、結果的には注目されうる要素として機能している。おまけに、スクリュー的な加工やエコーやカットアップおよびスムースでない不自然なループ、そしてNew Dreams Ltd.(ニュードリームス株式会社。いや、「新しい夢限られた」か)の「関連会社」の作品が話題を呼んだ〈ビア・オン・ザ・ラグ〉からのリリースということで、ヴェイパーウェイヴの波にも脇道で乗ることになった。メディアファイアードのレヴューではあえて言及しなかったが、同レーベルはそもそもヴェイパーウェイヴ専門レーベルというわけではないし、今作もあくまで非常に人間的な生活感やエモーションが表れている点において、ヴェイパーウェイヴの夢想的な態度とは真逆の性格をもつ作品である。しかし、情報デスクVIRTUALのバズののちに、それとは真逆のこういったフォーク作品をリリースをしかける〈ビア・オン・ザ・ラグ〉の、ヴェイパーウェイヴに頭を悩ます批評家たちを喰ったような姿勢はこれからも注目を集めるだろう。タイニー・ミックス・テープスはまんまとハメられてしまったわけだ。なにに? しかし、それはあくまで、ヴェイパーウェイヴに、なのだった。

 最後に、YYU自身からの日本語によるメッセージを紹介しよう。

 「私の床の上に音楽終日たくさんのとたくさん遊ばせてみましょう」。
 YYUは無邪気な音楽なのであって、ヴェイパーウェイヴのようなポップ・アートのテロリズム(?)と混同する必要はまるでない。しかし、彼は今作で「とき」を捉まえることができたのだろうか。この亡霊のような生活者は満足(成仏)できたのだろうか。彼が出した結論は、「あなたを見てる」ということだけ。ちょっと背筋がくすぐったい。

Sacred Tapestry - ele-king

Vektroid=Polygon WizardVektordrum=LASERDISC VISIONS=MACINTOSH PLUS=情報デスクVIRTUAL=FUJI GRID TV=INITIATION TAPE=ESC不在
 が与えられたとき、
Vektroid=〈NEW DREAMS LTD.
 が成り立つので、
〈NEW DREAMS LTD.〉=New Age-Psychedelic-Chillwave=Vaporwave
 であることより、
Vektroid=Vaporwave
 が言える。

 そう、ヴェイパーウェイヴとは、Vektroidを名乗る、アメリカ在住と思しき謎の人物による自作自演行為である。これが確かであるなら、ヴェイパーウェイヴは同時代の現象とはとても呼べないばかりか、小規模なアンダーグラウンド・コレクティヴでさえない。いわば偽装、詐術である。人がウェブ上に人格を持ちこんで以来、いわゆる「ネカマ」を標榜するユーザーが常に一定数、存在しているが、最初はそのような悪戯心からはじまったのであろうヴェイパーウェイヴも、少しずつ自らの意味付けを重くしていき、おそらくは自然な呼吸ができなくなってしまったのだろうと想像される。電子音楽史的には、ソロ活動者の伝統的な変名活動の一種と見るかもしれないが、この尋常ではないアカウント数は、ちょうどSNS上でサブ・アカウントや裏アカウントを取得し、陰口やエゴ・サーチ(ウェブ上自己検索)に耽る現代人の奇妙な分裂性、そしてそれを生む抑圧の構造に似ている。

 彼(彼女?)への追跡は、いまのところふたつの作品で行き詰まる。ひとつは、今年の5月に本人名義(Vektroid)でリリースされている『Color Ocean Road』で、同作のBandcamp上でのタグが、Vektroid(ヴェイパーウェイヴ)に関するほぼすべてのネタバレになっているが意味深だ。そして、いまさら隠すまでもないのか、最初からVektroid のSacred Tapestry名義であることが明記され、8月にSoundcloud上でのストリーミング・リリースとなった本作『Shader』が、〈NEW DREAMS LTD.〉という擬似レーベルの一応の区切りらしいのである。いわゆる「なかの人」であったVektroidが、このような撤退の素振りを見せている理由はいくつも推測される。悪ふざけでやっていたことが発見され、無視できない規模に広がってしまってビビッてしまったとか、単純に(超ニッチな規模とは言え)有名になってしまってウザくなったとか。もちろん、翻弄される私たちを見て、いまごろベッドの上で笑い転げている可能性もあるが......。

 この音楽に今日まで手を出さなかった人のために最低限のことを確認しておくと、ひと昔前の企業紹介ヴィデオの人畜無害なBGMを悪意でリミックスし、その残滓を無国籍でグロテスクなオフィス・カームとしてグチャグチャに混ぜ合わせたような産物だと思ってもらえばいい。ピッチ操作(スクリュー)された日本語音声や、意味が含まれているのか判断できない漢字の無作為なカット&ペースト、あるいは、使い古されたテレビ・コマーシャルの背景や古いコンピュータの起動音を引用したような痕跡も散見される。本作はその集大成とも言える内容だ。
 冒頭、日本の航空会社(?)のコマーシャル・ナレーションをスクリュー・ループさせた" LD・VHD "からはじまり、本作をヴェイパーウェイヴの作品と認識することが可能になる。だが、以降の曲でVektroid はそこを離れていく。続く"花こう岩 Cosmorama"では、動物の声や環境音などを散りばめつつ、"ドリーミー"以降、"移住"、"新たな夢 Spirited Child"では、最終的にはアンビエントに、互いに曲の区別がつかないくらい抽象的に、テンポ・ダウンしながらドロドロと覚醒していく。いわば前掲したタグのうち、new ageとpsychedelicがひたすら強調されていると言える。本作をヴェイパーウェイヴの終わり、そしてポスト・ヴェイパーウェイヴの始まりとするなら、その先にはさらに際どい世界への接近が待っているのかもしれない。
 ラストとなる"凍傷"は、ヴォイス・サンプルの操作という、一見、ヴェイパーウェイヴ的手法を悪乗りさせただけの音で、しかし私たちはそのような音でどこまでトリップできるのか、試しているようでもある(曲の後半部は凄まじい距離をゆらゆらと飛んでいく)。 かつてのヒッピーが目を付けた東洋の神秘主義と直結するのか、しないのか、分からないが、本作のサイケ趣味は相当の深度を行っていると言える。初期の活動で優先させていた、ある種のリラクゼーション・ミュージックとしての効用は、ここではサイケデリックの快楽主義に逸れているが、ロー・アートとしてのカウンター精神は引き継がれている。

 こうしたネタバレが済んだためか、「ヴェーパーウェイヴは終わった」と『Tiny Mix Tapes』が報じているが、これにはそれなりの根拠がある。2011年の11月以降、Polygon WizardとしてのYouTubeへのアップロードは途絶えているし、これ以降、〈Beer on the Rug〉からの有料配信/フィジカル・リリースが増えている一方で、本当に悪ノリしていたころのZIPファイルの削除がはじまっているのだ。目下、もっとも怪しいのはMEDIAFIREDやMIDNIGHT TELEVISION、COMPUTER DREAMSなどの「いかにも」な名義のアーティストだが、これらがどこまで繋がっているかは分からない。Vektroidの別名義かもしれないし、単なるフォロワーかもしれない。もっとも、ここまでやればどれだけ疑われても仕方がないとも言え、わざわざロシアのSNSであるvkにアカウントを取得した░▒▓マインドCTRL▓▒░が、今年の6月からヴェイパーウェイヴのネタバレ的投稿を続けているのも気にかかる。
 
 すべては気まぐれの愉快犯だったのだろうか? いか、仮にそうだとしても、ごく個人的な自己相対化の体験として、ヴェイパーウェイヴに出会って以降、それまで聴いていた音楽の聴こえ方がまったく違うものになってしまったことは強調しておきたい。ゼロ年代後期に『Pitchfork』が中心となって盛り立てたUSインディの音楽が、オルタナティブと呼ばれつつもどこか形骸化してしまったことを強引に暴き立てるような、問答無用の暴力性をそこに含意として感じたのだ。いわば、旧来の音楽環境が「本当に」荒廃したあと、つまり『Pitchfork』的なインディ音楽でさえも存続が危ぶまれるような季節が到来したときに、どのような音楽が立ち上がるのか、その最悪のシミュレーションを見せられているようなのだ。また、90年代の前半的な価値観に注がれる視線の向こうには、科学がまだギリギリのところで無邪気に、未来への希望として信じられていた頃の記憶を掘り起し、それをあえてディストピア的な反論として突き付け返しているようでもある。
 
 まったく......自分で書いておきながら、本当に妙な時代になったものだ。ヴェイパーウェイヴ----ウェブをシーンの中心に据えた最初の、小さな、そして本格的なこのアンダーグラウンド音楽は、ゼロ年代以降に生じた星の数ほどのマイクロ・ジャンル(音楽の部分的な傾向に依拠した曖昧な細分化カテゴリー)をめぐる2010年代以降の可能性、その示唆を多分に含んだ最初の衝撃(アンダーグラウンド2.0)だったと言える。
 残された〈Beer on the Rug〉を中心としたポスト・ヴェイパーウェイヴはこれからも展開していくにしても、同時代のムーヴメントやそれに代わる何かがどのように提起されるか、私はその一端を見た気がした。つまり、ある新しい音楽が「現象として面白い」という以前に、「本当に現象なのかどうかさえ分からないから面白い」ことがあり得るのだということを!
 もっとも、ヴェイパーウェイヴは多くの音源が2011年に流通し、その起源は音楽的にはJames Ferraroではないかと言われている。そうした文脈を踏まえた上での体系的な研究結果は、斎藤辰也君がいつか発表してくれるだろうが、個人的にはむしろ、本作におけるnew ageとpsychedelicの拡張路線の延長に立つ存在として、〈AMDISCS〉というレーベルに注目しているが、その話はまた今度。いまはただ、この悪趣味なサイケデリック・ミュージックの奥底に沈んでいたい。どこまでも、もっともっと深く。すべての音が溶け、その意味を失くしてしまうまで----。

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