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僕らがエレグラに行く理由

僕らがエレグラに行く理由

――electraglide 2012、フライング・ロータス? オービタル? それとも電気グルーヴ? 2ステージを楽しみつくせ!

文:木津毅、竹内正太郎 Nov 05,2012 UP

竹内:エレクトラグライド2012〉、いよいよ開催がせまって参りました。とりあえず、木津さんのお目当ては?

木津:今年で言うと、アンドリュー・ウェザオールとコード9の親父ズかな。

竹内:それは見た目的な話ですか?(笑)

木津:それも込みで(笑)。ウェザオールはヒゲ生やして圧倒的にセクシーになったから......。トゥナイトも超楽しみ。竹内くんは?

竹内:僕はフライング・ロータスです。あとは電気(グルーヴ)。

木津:おお! すごくいいエレグラ参加者だ! ちょっと先にそっちの話からしよう。そもそも、竹内くんはエレグラ初めて?

竹内:初めてです。というか、この規模の会場でダンス音楽を聴くこと自体、初めてです(笑)。

木津:そうか、じゃあ2009年の〈ワープ〉20周年のイベントのときも行ってないってことやんね?

竹内:あのときはさすがに盛り上がりを感じていて、記念コンピレーションを買って家で聴いていました(笑)。LCDの"ダフト・パンク・イズ・プレイング・アット・マイ・ハウス"を地で行っている人間なわけです。

木津:へええ! じゃあ、今年参加するのはどうして?

竹内:カジュアルに言うと、今年からライヴをわりと見るようになって、「ライヴっていいもんだなあ」と素直に思えるようになったから、くらいのものなんですけど(笑)。クラブ音楽って、「この曲がどうしても聴きたい」っていうような目的性からは離れているわけですよね。つながった時間のまとまりを享受するという。それがこの規模になったときにどうなるのか、単純に興味があります。

木津:なるほど。じゃあ僕の話をすると、エレグラには何回も行っておりまして、フジロックのときに発表があったんだけど、すんなり「お! 行こう」という感じで。いま関西に住んでいて、ある程度ダンス・ミュージック好きだったら、オールナイト自体が貴重なので。

竹内:そうなると、多少、政治性を帯びる可能性もある?

木津:うん、今年はやっぱり少しはね。でも、みんな基本的には楽しみたいだけですよ。今年も大阪でも開催するし、みんなすごく楽しみにしていると思う。

竹内:なるほど。僕のことを言うと、「地方の因縁から離れて、誰も自分を知らない空間に逃避したい」というのがあります。暗い(笑)。

木津:いやあ、好き勝手に楽しめばいいんですよ!(笑) 以前も書いたけど、僕のオールナイト体験で、いちばん強烈だったのがオウテカのライヴで。

竹内:あらためて教えてください。

木津:フロントがLFOで最高に盛り上がった後、電気が全部消えて、真っ暗闇のなかであのビートの応酬っていう。

竹内:おお(笑)。

木津:あれは凄まじかった。で、2005年のエレグラでオウテカがやったときは、大きい会場だからそこまで真っ暗にはできないんだけど、彼らのことを全然知らなかったひともけっこう衝撃を受けたと思う。

竹内:なるほど。

木津:この規模のイベントの醍醐味はそういうところなんじゃないかな。

竹内:未知との遭遇ということですか?

木津:うん。〈ソナー〉のときに、スクエアプッシャーが観てみたいという、クラブに行ったことのない2こ下の男子を連れて行ったんだけど、アフリカ・ハイテックをすごく好きになってた。

竹内:いい話ですねー。

木津:電気だけを目当てで来たひとが、コード9にやられる可能性だってあるだろうしね。

竹内:ところで、ゼロ年代の後半にエレグラは沈黙を強いられたわけですよね。内部的な事情はともかく、この期間になにか文化事情的な意味はあると思いますか?

木津:うーん。まあ理由はいろいろあるんだろうけど、ダンス・アクトに大物が目立たなくなったということはあるのかなあ。だって、いつまでもアンダーワールドに頼るのもねえ。

竹内:その話は重要な気がします。当時の現実的でシニカルな若者は、本当はダンス・ミュージックを聴きたくても、たぶん「こんな単純な4/4に乗れるか!」とか思っていたんじゃないでしょうか。まあ、僕の話ですけど(笑)。

木津:ほお。

竹内:そこでいうと、やはりダブステップは大きいのかも。

木津:ダンス・ミュージックの本質がアンダーグラウンドに潜ったってこと?

竹内:快楽が形骸化した一面はあるのでは、みたいな感じです。

木津:なるほど。

竹内:その反発はジューク/フットワークにまでもつれ込むのだと思っていて。ダンス・ミュージックが新しいステップを踏むには、ある種のアングラにならざるを得なかったのかなあ、みたいな。

木津:まあ、〈ワープ〉の第一世代が完全にクラシックになったタイミングでもあるよね。だから、今年はフライング・ロータスがいちばんの顔になっているのはいいことじゃない?

竹内:ですね。そこでいうと、今回フライング・ロータス(〈ワープ〉の新たな顔役)とコード9(〈ハイパーダブ〉代表)が来るのは大きい。ハドソン・モホークとルナイスが組んだトゥナイトもですね。

木津:フォー・テットも最近、かなりフロア・ミュージックになってるしねえ。

竹内:出所はエレクトロニカですもんね。それでいうと、ロータスはヒップホップですよ。やはり、どこかのタイミングでダンスへの再接近があったと。フォー・テットもブリアルとやっていますね。あれは凄まじかった。

木津:うん。わりと最近ライヴ観たときはかなりダンサブルだったよ。とまあ、今年は本当に「ダンス」のあり方が多様でいいと思う。

竹内:ですよね。これまでの話とまったく逆をたどれば、クラブのオリジナル世代からしたらダンスと呼びたくないようなものまで、もしかしたら入っているかもしれない。

木津:そっか。でも、DJクラッシュやDJケンタロウのようなベテランもいるし。

竹内:ですね。年長組で言うと、木津さんはアンドリュー・ウェザオール? ファック・ボタンズのセカンドで名前を聴きましたね。

木津:うん、ソロではロカビリーをやったりするんだけど、DJのときはしっかりハウスのときがけっこう多いかな。あとオールドスクールのエレクトロ。でも、新しい音もけっこうかけるのかなあ。

竹内:どうでしょうかね。僕はやっぱり、電気が観てみたい。ライヴの間くらい、馬鹿になるのが目標なので(笑)。

木津:はっはっは。このラインアップに電気がいるのは、けっこう面白いよね。ある意味、いちばん浮いてる。

竹内:ですよね。それだけ、信頼が厚いと?

木津:そうなのかな。いちばん、変な感じになりそうやけど(笑)。

竹内:楽しみです(笑)。あと、視覚を活かしたアーティストが何組かいますね。

木津:それで言うと、まずはアモン・トビンでしょう! 前作の『アイサム』のときのフィールド・レコーディングのコンセプトを、ライヴで具現化したものになる......らしい。この前のDVD作品もすごく評判だけど、ライヴだとパワー・アップするでしょう。これが観たいので、僕は大阪から幕張に行きます(笑)。映像ものはクリス・カニンガムのときもすごく盛り上がったけど、大きいイベントならではやね。スクエアプッシャーは〈ソナー〉のときにLEDヴィジョンを使ってたんだけど、今回はそれに加えてベースもプレイするとか。

竹内:ほお。それはフィジカルな。

木津:スクエアプッシャー最近、妙に元気やんね。ライヴに燃えてる。

竹内:オービタルは?

木津:僕は、2004年でいったん活動やめるっていうからその年の〈WIRE〉に観に行ったよ! 往復青春18きっぷで(笑)。

竹内:愛だ!(笑)

木津:だから、最近ふつうに再活動しててちょっと納得がいかない(笑)。でも、あの大らかなテクノは大バコに映えるでしょうな。

竹内:他のイベントとの差別化って、どんなところにあるんでしょう?

木津:エレグラは〈ワープ〉周辺がとくに好きなひとに訴えるような作りになっている気がするなー。いち時期、LCDとか!!!とかも出てたんだけど、そういう意味ではインディ・ロック好きにもちょっと寄ってるし。普段クラブ・ミュージックは聴かないけどフライング・ロータスは聴くってひともけっこういるんじゃない?

竹内:ですね。どんなプレイ・セットになるのかなあ。

木津:前回観たときは生ベースがあったりで、かなりグルーヴィーだった。

竹内:アルバムからいくと、また今回は違った雰囲気かもしれないですね。

木津:もうちょっとチルな感じなのかなあ。でも、そのときはドラゴンボールのコスプレで「カメハメハー!」って言ってたよ(笑)。

竹内:うわああ(笑)。

木津:いやいや、でも今回の顔なのは間違いないでしょう!

竹内:でしょう!

木津:でも、2ステージに分かれてこれだけアクトが揃ってると、ほんとにそれぞれ好きに楽しめそうやね。

竹内:ですね。「しばらくクラブから遠ざかってたけど、さすがに今回のエレグラは行くかなあ」なんて声も聞きました。

木津:おお、いいことですなあ。それは特定のアクト目当てで?

竹内:というより、ダンス・ミュージックに再燃の兆しを認めている感じかもしれません。

木津:お! でもたしかにそういう説得力のあるラインアップですよ。

竹内:どんと来いと(笑)! 「僕がエレグラに行った理由」を、みんなでぜひ語り合いましょう!

木津:そうやね。じゃあ、最後にお互いイチオシを挙げときましょうか。僕はウェザオールとコード9......としつこく言いたいところだけど、アモン・トビンとTNGHTで。

竹内:僕はいろいろあるけど、フォー・テットで。ゼロ年代インディ以降の代表格が見つけたダンス・ミュージックを生で聴いてみたい。彼のキャリアの軌跡って、いまの若いリスナーが通った道ともかなり近い気がするんですよね。

木津:うん、フォー・テットのいまのモードは、シーンのモードだと思うよ。それはともかく、飲まされすぎないようにしないと、僕はトイレが近いので......。〈ソナー〉のときも、ひたすら飲まされ続けたからなあー。

竹内:ははは、今回は各自楽しみましょう(笑)。

木津:そうやね(笑)。

竹内:願わくは、レポのことなんて気にしないで......。馬鹿になりましょう!(笑)


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Profile

木津 毅木津 毅/Tsuyoshi Kizu
ライター。1984年大阪生まれ。2011年web版ele-kingで執筆活動を始め、以降、各メディアに音楽、映画、ゲイ・カルチャーを中心に寄稿している。著書に『ニュー・ダッド あたらしい時代のあたらしいおっさん』(筑摩書房)、編書に田亀源五郎『ゲイ・カルチャーの未来へ』(ele-king books)がある。

Profile

竹内正太郎竹内正太郎/Masataro Takeuchi
1986年新潟県生まれ。大学在籍時より、ブログで音楽について執筆。現在、第二の故郷である群馬県に在住。荒廃していく郊外を見つめている。 http://atlas2011.wordpress.com/

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