「W K」と一致するもの

world’s end girlfriend - ele-king

 去る6月13日、world’s end girlfriendの新曲 “Helix of frequency, Phenomenon of Love and Void (feat. Jessica)” がリリースされているのだが、なんとも興味深い試みが為されている。

https://virginbabylonrecords.bandcamp.com/track/helix-of-frequency-phenomenon-of-love-and-void

 作詞・作曲はworld’s end girlfriend。アートワークには山田優アントニの作品を使用。ヴォーカルにJessica、コーラスにMON/KU、ヴァイオリンにkumi takahara、チェロにSeigen Tokuzawaを迎えた同曲は、無料でダウンロードできるかわりに、聴き手はあるルールを遵守しなければならない。そのルールとは――
 曲を聴きながら以下のメッセージに目を通して、world’s end girlfriendがなにを思い今回のリリースを決断したのか、考えてみよう。

この楽曲は無料(または任意の価格)でダウンロードが可能ですが、
聴くものには以下のルールが課されます。

以下、ルール表記とコメント。
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この楽曲を聴かれる方は、以下のルールを遵守してください。
If you listen to this song, please follow the rules below.

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ルール:
The Rules:
*この楽曲は、無料または任意の価格を設定してダウンロードすることができます。
**This song can be downloaded for free or at an arbitrary price.

*この楽曲を聴いたその日から、「1年間、生きる」というルールがあなたに課されます。
(ルールを拒否し楽曲を聴かないという選択もできます)
**From the day you listen to this song, a rule is imposed upon you: "Live for one year."
(You may also choose to reject these rules and not listen to this song.)

*この楽曲は、個人間で自由に受け渡すことが可能です。
ただし、その場合も同じルールが受け取った方に課されます。
**This song can be freely transferred between individuals. However, the same rule will be imposed on the recipient in that case.

*YouTubeやSNSなど不特定多数が視聴できる場での楽曲の公開・配信は禁止とします。
**Public sharing or distribution of the song on platforms accessible to an unspecified number of people, such as YouTube or SNS, is prohibited.
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これは楽曲に約束が付随し、あなたが自分自身とそして私と約束(または優しい呪い)を交わすようなもので、あなたと楽曲との関係性はどうなるのかの実験です。
This is an experiment to see how your relationship with this song evolves, as it comes with a promise(or a gentle curse), like you are making a commitment to yourself and to me.

お楽しみください。
Please enjoy.

world’s end girlfriend

R.I.P.:Sly Stone - ele-king

1968年にオレが真剣になって聴いていたのは、ジェームズ・ブラウン、ジミ・ヘンドリックス、“ダンス・トゥ・ザ・ミュージック”をヒットさせたばかりのスライ&ザ・ファミリー・ストーンだった。スライの音楽には、ありとあらゆる種類のファンキーな要素が詰まっていて、そりゃあすごいものだった。 ——マイルス・デイヴィス*

衣装はロック史上もっとも奔放なものだった。並外れたショウマンであり、そのスタイルはラリって頭のいかれたフィルモア地区のぽんびきと同じようにいかれているあのフィルモア公会堂的楽天主義とを故意に組み合わせものだった。(…)スライ&ザ・ファミリー・ストーンは、かつて誰も聴いたことのない音楽を作った。 ——グリール・マーカス**

 映画『サマー・オブ・ソウル』におけるスライ&ザ・ファミリー・ストーンは別格だった。ぼくのような後追い世代がジミ・ヘンドリックスを別格に思えたのと同じようにそのすべてが別次元で、サウンドはさることながら、バンド編成それ自体も20年先をいっていた。白黒男女混合、しかも黒いグルーヴを叩くドラマーは白人男性、トランペットは黒人女性、マーカスにいわく「第一級の文化策士」たるこの集団は、サマー・オブ・ラヴが白人中心主義でしかなかったというその矛盾を余裕で克服すると同時に、60年代後半、音楽的にはマンネリズムに陥っていた黒人音楽を、いや、ポップ・ミュージックをまったく新しいところに導いてしまった。そして、では、それがどんなところだったのか——たとえばマーク・フィッシャーは2016年に次のように書いている。

スライ&ザ・ファミリー・ストーンはすべてを手にしているように思えた。どこかで荒々しく、即興的で、それでいてしんみりと踊れるようなサウンド、感傷的でもなく、かといって聖人ぶってもいない、ユーモラスであり、それと同時に極めて真剣でもあったその音楽で。(…)スライ&ザ・ファミリー・ストーンが体現した戯けた自由と大胆さ。それらは、ある種の前衛集団による活躍だったかもしれないが、エリートに限定される必然性はなかった。むしろ反対に、ラジオやテレビに登場した彼らの存在は、「このようなボヘミアは誰にでも開かれるべきではないのか?」という問いを絶えず投げかけるのであった。***

 2025年6月12日、つまり昨晩、新宿のブルックリンパーラーで、DJヨーグルトはお馴染みの名曲を7インチのドーナッツ盤と12インチのアルバムからかけていた。“ダンス・トゥ・ザ・ミュージック”“アイ・ウォント・トゥ・テイク・ユー・ハイアー”“スタンド!”“エヴリデイ・ピープル”“エブリバディ・イズ・ア・スター”……もっともふざけた曲“スペース・カウボーイ”をかけなかったが“サンキュー”はかけてくれたし、彼はセットの後半にはブライアン・ウィルソンへの追悼もしなければならなかったから、まあ、ヨシとするか。

 スライのそうした曲のほとんどは、よく言われるように、サマー・オブ・ラヴの前向きなエネルギーの熱量をほかのどんな音楽よりも強烈に反映させていた。また同時に、彼ら彼女らは、ワシントン大行進以降の理想主義への情熱をも思う存分に充満させていた。ジェイムズ・ブラウンのファンクやサム・クックのソウル、ゴスペル、ビートルズ、ボブ・ディラン、ビーチ・ボーイズ、サイケデリック・ロックなどなどを混合しスケールを拡大させたその音楽が、興奮を抑えきれない当時の若者たちに、これがみんなをひとつにしてくれる音楽なんだと思わせたことは、いまでも容易に納得できる。そう、『サマー・オブ・ソウル』やウッドストックの映画を観れば、あの時代の頂点がなんだったのかが一目瞭然だ。それから、リッキー・ヴィンセントが言うように「EW&F、Pファンク、マイケル・ジャクソン、プリンスの豪華絢爛な舞台は、すべてスライ・ストーンが豪華で馴染みやすい雰囲気にまとめあげたファンクの延長上にある」****。またヴィンセントは、ジェイムズ・ブラウン以上に、当時スライの音楽がリスナーたちに人種問題の話題をうながしたことも書いている。まあ、「俺をニガーと呼ぶな、白んぼめ」などとも歌ったわけだし。
 ぼくがスライがすごいと思うのは、彼がやったことが、過去の出来事に収まってはいないという事実に関してである。サウンド面でもそうだが、コンセプトにおいても。その一例として、フィッシャーの引用をしている。あの、いかにも狡猾な面構えのスライ、マークスがスッタガリー神話になぞって論じた文字通りのトリックスター、自由というものの複雑さを表現したスライ……。
 
 スライ&ザ・ファミリー・ストーンには『暴動』という、ポップス史上指折りの問題作がある。スライは、2023年に上梓した彼の回想録『サンキュー』のなかで、これはマーヴィン・ゲイの『ホワッツ・ゴーイング・オン』へのアンサーだと語っている。「いったい何が起きているんだい?」「暴動が起きているんだ(There's a Riot Goin' On)」というわけだ。この言葉だけを見たらいかにも威勢の良さそうな『暴動』を連想してしまいそうだが、周知のように『暴動』は、まったくそんな作品ではない。全体的にダークだし、なにせクレジットされているタイトル・トラックは0分0秒、つまり無である。ドラムマシンを導入し、オーヴァーダビングの果てに生まれた、天真爛漫さとは真逆のこのアルバムを、「もっとも荒涼としてぶっきらぼうな、革命後の世代におけるPTSD(心的外傷後ストレス障害)のさながら心電図測定値」*****、このように表現したのはグレッグ・テイトだった。あるいは、スライは自分の絶望には意味があることを示した、こう書いたのはマーカスだ。ニクソンが大統領に就任して2年後、政治史で言えば、新自由主義が起動しはじめたときにこのアルバムを生まれた。黒人の活動家たちが次から次へと暗殺され、強まる社会的プレッシャーのなかで、そしてそこに逃避するかのようにスライはドラッグに溺れに溺れた。

 スライの物語が難しいのはそこだ。音楽を変えたこの男の全盛期は、20代で終わっている。『暴動』のときは28歳、次作『フレッシュ』が30歳だ。そこから先のスライは、ドラッグの巣窟と化した自宅で、ほとんど毎日キマリ、ただだらだらと過ごしていたわけではないが、やがて本人いわく「新たな記録」というほどいろんな理由で何度も逮捕された。自叙伝では、彼が星よりもまぶしかった最初の30年の人生のあとの、さんざんだった50年の出来事も克明に語られている。つねに親身になってくれたジョージ・クリントンといっしょにツアーをしたりハイになったりした日々も綴られている。スライは一生懸命にカムバックの努力をしたのだろうが、それは簡単ではなかった。ドラッグが原因で4回入院し、彼は4回目の入院でようやくドラッグを断った。
 2025年6月9日、スライ・ストーンことSylvester Stewartはロサンゼルスで息を引き取った。82歳。あまりにも若くして音楽を変え、そして若くして音楽シーンから消えてしまったかのように見えていたスライ。白人が(おそらく日本人も)もっとも知りたくない黒人の表情をじつに巧妙に見せたアーティスト。アルバム『暴動』は、アナログ盤で聴かなければ意味がないのは、A面の最後にクレジットされた、針がレコードの溝の内側をぐるぐるまわりはじめるその手前の瞬間ではじまって終わる“There's a Riot Goin' on”があるからだ。チリノイズのなかの声なき反乱。聴こえない音に耳を澄ませと彼は言っているのだろう。
 なお、全米黒人地位向上協会は、rest in peaceではなく、rest in powerと彼の死を悼んだ。

  悪魔を見て、銃を見てにやける
  指が震えて、俺は走り出す

  俺はかつて頂点にいた
  ありがとう、もういちど俺らしくしてくれて

——スライ・ストーン“Thank You”(1970)

* マイルス・デイビス、クインシー・トループ 著/中山康樹 訳『マイルス・デイビス自叙伝Ⅱ』p131
** グリール・マーカス 著/三井徹 訳『ミストリー・トレイン』p137
*** マーク・フィッシャー 著/河南瑠莉 訳『アシッド・コミュニズム』p243
**** リッキー・ヴィンセント 著/宇井千史 訳『ファンク』P132
**** グレッグ・テイト 著/山本昭宏ほか 訳『フライボーイ2』p208

※スライ・ストーン 著/新井崇嗣 訳『サンキュー(またおれでいられることに)——スライ・ストーン自叙伝』はele-king booksより7月30日に刊行予定。

*6/16追記:内容に一部誤りがありましたので訂正しました。

Tramhaus - ele-king

 近年はオランダからさまざまなインディ・バンドが登場してきている。昨秋デビュー・アルバム『The First Exit』を発表したばかりのロッテルダムのトラムハウス、彼らもまた注目しておきたい一組だ。
 そんな彼らの来日公演が、村田タケル氏の主催・企画により実現することになった。7月1日@福岡UTEROを皮切りに、7月3日@大阪SOCORE FACTORY、7月8日@⻘山月見ル君想フの3か所を巡回、福岡公演にはaldo van eyck、大阪公演にはRedhair Rosy、東京公演にはDYGLも出演。DJとして、村田タケル(東京・大阪)、ナカシマセイジ(大阪)、NOBODY Crewのashira、yabu(福岡)らが各公演に花を添える。
 以下、Casanova S.氏による来日直前インタヴューをお届けしよう。

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 いまオランダで何か面白いことが起こっている、ここ数年ずっとそれを感じていた。「俺たちよりペイヴメントに似ているバンドを発見したんだ!」ライヴを見てそう言ったスポーツ・チームが興奮し、彼ら自身のレーベルからリリースしたアムステルダムのパーソナル・トレーナーに、〈Heavenly〉から3枚のアルバムを出しているピップ・ブロム。もう少しアンダーグラウンドなバンドだとア・フンガスにリアル・ファーマーがいるし、今年出たグローバル・チャーミングの2ndアルバムも素晴らしかった。ロッテルダムにはネイバーズ・バーニング・ネイバーズが存在し、そして何よりどんなメディアのこれから来るバンド・リストと比べても勝るとも劣らないラインナップを誇るインディ・バンドのショーケース・フェス、Left of the Dialがある。

 だけどもUKやUSのレーベル経由でなければその外になかなか情報が届くことはない(歯がゆくもあるけれど、インターネット時代であろうとも伝わるルートやスペースというのは限られているのだ)。だからその良さや興奮はもっぱらライブを目撃した人の口コミで広がっていく。上記のパーソナル・トレーナーの話がその良い例だろう。

 そんな中、2年前の2023年の秋にロッテルダムのポスト・パンク・バンド・トラムハウスを見ることができたのは本当に幸運だった。サウスロンドンのシェイム、あるいは初期のフォンテインズD.C. の名前が頭に浮かぶような、 ルーカス・ヤンセン(Vo)ナジャ・ヴァン・オスナブリュッヘ(Gt) ジム・ルイテン(Dr)ミシャ・ザート (Gt)ジュリア・ヴローグ(Ba)からなる5人組トラムハウス。このバンドはステージの上で自身から発せられるエネルギーを形作り観客を巻き込むように広げていって、その姿がたまらなく魅力的に映ったのだ。

 この世界には素晴らしいバンドがたくさん存在する。心に同じ炎を抱く非なるもの、その熱を伝えるべくトラムハウスは世界を回る。UKツアーを終え、ヨーロッパ、アジア、そして再び日本へと。バンドは1stアルバム『The First Exit』を手にして2回目の来日公演を迎える。その直前、ヴォーカルのルーカス・ヤンセンにロッテルダムの音楽事情、そして現在のトラムハウスについて話を聞いた。(Casanova.S)


2023年に続き、再び日本でライブを見られることをとても嬉しく思います。前回の来日公演では、デビュー・アルバムがまだリリースされる前だったというのにも関わらず、大盛り上がりでライヴ・バンドとしてトラムハウスの力を感じました。あの時のショーで、特に印象に残っている瞬間はありますか?

ルーカス・ヤンセン(Lukas Jansen、以下LJ):また日本に戻って来られることを、僕たちも本当に嬉しく思っています。前回は人生で最高の時間を過ごしました!特に忘れられないのは、東京の下北沢Basement Barでの2回目のライブです。その1週間前に行った最初の日本公演では、正直、会場はあまり埋まっていませんでした。初めての来日公演だったので当然ですね。でも、君も観に来てくれた2回目のライブでは会場がパンパンになって、観客が本当に熱狂的で。あれには心底驚かされました。

前回の来日時には日本を観光する時間もあったそうですね。印象に残っている場所やエピソードがあれば教えてください。

LJ:少し時間があったので観光もできました。東京や大阪はもちろん、京都にも行って、とても素敵な体験ができました。でも一番印象に残っているのは、ある夜に東京でファミリーマートからファミリーマートへ、居酒屋からセブンイレブンへ、また居酒屋、そしてまたファミリーマートへ……と飲み歩いた夜ですね(笑)。それぞれの場所で一杯飲んで、ちょっとつまんで、気づけば朝方まで歩いていました。

トラムハウスのサウンドには、ソリッドで荒々しいポスト・ポンクだけではなく、ユーモアと遊び心のあるアレンジが随所に施されていて、そこがとても独自のものとして魅力的に感じられます。このサウンドはどのようにして生まれたのでしょう?音楽に限らず、影響を受けたものがあれば教えてください。

LJ:僕たちは全員が異なる音楽に親しんで育ったことが、君のいう「独自のもの」に繋がったのだと思います。たとえばバッド・ブレインズ、ターンスタイル、トラッシュ・トークのようなハードコアやパンクを聴いて育ったメンバーもいれば、スロウダイヴマイ・ブラッディ・ヴァレンタインといったシューゲイズに夢中だったメンバーもいますし、インディ系をたくさん聴いてきたメンバーもいます。ツアーで、1年のうち何ヶ月も何時間も一緒のバンで移動して、お互いに聴いている音楽をシェアする機会が多いので、自然と触れる機会の少なかった音楽ジャンルへの理解も深まっていきました。それが、新しい音楽の発見の仕方や、曲作りにも影響していると思います。僕たちの音楽を“遊び心がある”と表現してもらえたのは初めてですが、自分たちでも「それ、けっこう当たってるかも」って思いました(笑)。

今回はデビュー・アルバムがリリースされた後のライブとなります。既存の曲を収録せずに新曲のみの構成となったこの1stアルバムでは何を表現しようとしたのでしょうか?

LJ:僕たちはこれまでEPや7インチで多くの曲をリリースしてきました。それらの曲をフルアルバムに再録して欲しいという声もありましたが、ファンや自分たちにとってこのレコードは完全に新しい曲で構成するのがベストだと思ったのです。それで、リハーサルスタジオにこもって、2週間ほどでこのアルバムを書き上げました。このアルバムは、トラムハウスがバンドとしてどういう存在なのか、そして 「僕らの 」サウンドとは何なのかを最もよく表している作品だと思います。激しくて怒りに満ちた曲もあれば、スロウで内省的な曲もあります。一つの曲の中でも、重さと軽さの間を行き来するような構成になっています。

デビュー・アルバムをリリースした前と後で変わった点があるとすればそれはどのような部分でしょうか?

LJ:今こうしている間にも、私たちは新しいサウンドを書き、変化し続けています。そう、僕たちのバンドは常に変わり続けているんです。初期に作った曲を今でも演奏していますが、新しいセットリストに合うようにアレンジを変えたり、他の曲とのつなぎ方を工夫したりしていて、常に進化を続けているんです。

オランダの音楽シーンについて教えてください。UKやUS の影響を受けながらも国内の音楽の影響も混じって独自のものが出来上がる印象で、日本の音楽シーンにも通じている印象です。実際のところオランダやロッテルダムのバンドシーンに特徴的なことはあるでしょうか?

LJ:オランダの音楽シーンは、国と同じように小さく、つながりが強いです。ミュージシャンも、アーティストも、プロモーターも、だいたい知り合いです。その点がすごく好きですが、ときどき“新しさ”を求めたくなることもあります。UKやUSからの影響は避けられませんが、ヨーロッパ各地を回ってみて、僕らの国には素晴らしい音楽がたくさんあると実感しました。ただ、そうした音楽でも過小評価されていると感じることも多いことが残念ですね。

アムステルダムとロッテルダムは東京と大阪の関係に似ているという話を聞いたことがあります。あなたたちの視点からだと、それぞれどんな違いがあると思いますか?ロッテルダムがどんな街なのかも教えてください。

LJ:ロッテルダムはオランダ第二の都市で、首都であるアムステルダムは第一の都市です。それが「カリメロ・コンプレックス」って言われる要因になっていて、ロッテルダムの人たちは、自分たちの街に対して正当であれ不当であれ、すごく誇りを持っているんです。最近、妹と話していて「ロッテルダムって街としてはブサイクだよね」って言っていて、僕もその意見には一票を投じたいんだけど、そのブサイクさこそが、この街のユニークな魅力でもあるんです。ちょっと説明をさせてもらうと、ロッテルダムは第二次世界大戦で爆撃されて、以降「未来の都市」を目指して再建されたので、建築家たちが好き勝手にクレイジーなデザインの建物を志向するようになったんです。とはいえ、好き嫌いはあると思いますが、オランダの中でロッテルダムのような街は他にはありません。初めて来る人にとっては、賑やかでちょっと荒っぽくて、いろんなことが起きている街。でも、時々すごくきれいな瞬間もあります。「それを見つけるには相当掘らないとダメだけどね」と言う人もいると思いますが(笑)。ええ、妹は間違いなくそう言っていました(笑)。

そんなロッテルダムでは、世界中のインディ・バンドが集まるショーケースフェスティバル「Left of the Dial」も開催していますよね。以前UK・ノッティンガムのバンド、オタラにインタビューした時に「こんなに待遇が良かったことはなかったし、こんなに好きなバンドを見られるチャンスがあったこともなかった」 とこのフェスのことを話していたことが印象に残っているのですが、地元のあなたたちの目から見たこのフェスはどのようなものなのか教えてください。

LJ:Left of the Dialは、ここ最近のロッテルダムで起きた中でも最高の出来事です。とにかく最高の週末で、今年の開催も待ちきれません。実は今これを書いているときも、Left of the DialのTシャツを着ています(笑)。このフェスは本当に誠実で、主催者の思いがちゃんと伝わってくるんです。バンドにとっても本当に大きな支えになっていて、結成したばかりの頃でも出演させてもらえましたし、その後も大きなステージに呼んでもらいました。本当に大好きなフェスです。

オランダ国内外に関わらず、同世代で注目しているバンドがあれば教えてください。

LJ:ヨーロッパ圏でいうと、北マケドニアのルフトハンザや、フランスのサーヴォ。どちらも素晴らしいバンドで、人としてもすごく素敵です。

デビュー・アルバムのリリース後、UK、US、ヨーロッパと幅広い地域をツアーしてきました。それぞれの街の音楽文化や空気など、違いを感じた部分や、新たに意識した部分はありますか?

LJ:本当に、どこに行っても観客の反応が全然違って、それがツアーの醍醐味の一つです。毎回たくさんのことを学んでいます。同じヨーロッパ内でも文化や社交のスタンダードが大きく違っていて、それがすごく面白いんです。すぐに言葉にはしにくいですが、ツアーを終えるたびに、出会った人々から大きな刺激を受けています。

2023年の来日公演でもそうでしたが、トラムハウスはステージ上で生まれる熱を押し広げて会場全体に一体感を生み出すようなステージングが印象的でした。ライヴ・パフォーマンスをする上で意識しているところがありましたら教えてください。

LJ:“エネルギー”に集中するようにしていて、それを広げることができたらいいなと思っています。ただ、それもあえて意識してやっているわけではなく、楽しく演奏すること、自分たちの音楽をしっかり届けることを第一に考えています。あとは自然と出てくるものですね。

現在、2枚目のアルバム制作にも取り組まれているそうですね。新たなインスピレーションや方向性など、お話できることがあれば教えてください。

LJ:新しいインスピレーションもあって、前作とは少し違ったサウンドにもなると思います。今はまだすべてがデモ段階で、歌詞もほとんど書かれていませんし、曲もまだ下書きのような状態です。でも、確実に前に進んでいます。

今回の日本公演では、新曲を披露する予定はありますか?

LJ:それができたら本当に嬉しいんですが、残念ながら間に合わないかもしれません。でも、あと数週間あるので、1〜2曲仕上げて試せたらいいなと思っています。あくまで「かもしれない」ですけど(笑)。

ありがとうございます。最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

LJ:前回の来日公演が終わってからずっと、「また日本に行きたいね」と話していました。それがまた実現して、めちゃくちゃワクワクしています。みなさんに会えるのを本当に楽しみにしています!

(質問:Casanova.S)

TRAMHAUS JAPAN TOUR 2025

7月1日(火)福岡 UTERO
with aldo van eyck | DJ ashira / yabu

7月3日(木)大阪 Socore Factory
with Redhair Rosy | DJ ナカシマセイジ / 村田タケル

7月8日(火)東京 月見ル君想フ
with DYGL | DJ 村田タケル

チケット情報
https://lit.link/tramhausJapantour2025

These New Puritans - ele-king

 2025年現在において、ジーズ・ニュー・ピューリタンズが発表した5枚のアルバムの中で最も異なっているアルバムは2008年の最初のアルバム『Beat Pyramid』であるというのは確かなことのように思える。せき立てるような手数の多いドラムにジャキジャキとした輪郭を持ったギター、直線的なベースにシンセの鼓動、そう、エセックスの双子の兄弟ジャック・バーネットとジョージ・バーネットが友人たちと組んだバンドはザ・フォールの曲名から名前を取ったというエピソードが指し示すようにポスト・パンク・バンドだったのだ。いまの彼らの音楽のイメージと直接的に結びつくことはないかもしれないが、異彩を放つこの1stが素晴らしいアルバムだというのもまた間違いない。定期的に繰り返されるポスト・パンクのリヴァイヴァルの中で若き日の彼らは鋭くクールに気を吐いて世界を震わせた(その中のひとりにエディ・スリマンがいて、デビュー前の彼らの曲をショーに使用したというは有名な話だが、現在も彼がピューリタンズの写真を撮っているというのもまた象徴的なエピソードだろう)。
 そこからもっと大胆にアート/ゴシック方向に舵を切り、管楽器とプログラミングを駆使した10年の2nd『Hidden』、暗く美しい不条理映画のサウンドトラックのような現代音楽の影響を感じる13年の3rd『Field of Reeds』、デカダンでゴシックな要素を強めた19年の4th『Inside the Rose』と進んでいくわけだが、しかし彼らのアート的なその嗜好は最初の時点からずっとそこに存在していた。輪郭のはっきりとしたギターとドラムのポスト・パンクのフォーマットの中で、数と色彩の魔術に取りつかれ “Numerology (a.k.a. Numbers)”や“Colours”のような曲を書くバンドはそうはいない。16世紀の占星術師ジョン・ディーをインスピレーションにした冷たいビートのポスト・パンクというのはある種不釣り合いですらあった。

 しかしこの感覚が彼らを特別にする。そう、このいくつかの対立しかねない要素が混じり合い同時に存在する感覚こそがジーズ・ニュー・ピューリタンズの魅力なのだ。2025年の5枚目のアルバム『Crooked Wing』を聞いてその思いを改めて深めた。パイプ・オルガンにベル、ヴィブラフォン、管楽器にピアノ、フィールド・レコーディング、果ては聖歌を唄う合唱団の少年の声まで、神秘的で、それでいて退廃的な雰囲気に包まれたこのアルバムの音楽はまさにジーズ・ニュー・ピューリタンズの集大成だ。2ndと3rdをプロデュースしたグラハム・サットンを再び招き入れた本作はそれらのアルバムの狭間に存在する空間に潜り込む。栄華を極めた人類が消え去った廃虚の街の建造物の冷たさと、デジタルの表記に囲まれる前、草の匂いが香る19世紀の村の教会に通う人々の暮らしが隣り合わせに存在するような世界、それがひとつの景色として目の前に提示され、その中に潜む美を見出すような、これはそんな音楽なのだ。
 ヴィブラフォンとピアノが織りなす星空の中に吸い込まれるような“Bells”は『Field Of Reeds』のその先にあり、冷徹なビートがはびこるインダストリアルな地獄の季節“A Season In Hell”に『Hidden』を、キャロライン・ポラチェックが参加した“Industrial Love Song”(あぁこの曲はなんと建設現場のクレーンの視点から書いたラヴ・ソングなのだという)の深い霧の中に潜っていくような感覚に『Inside the Rose』を思う。厳かな少年の声の“Waiting”にはじまり、同じメロディで最初に返ることが示唆される “Return”で締めくくられるアルバムの様相は「私はこれを二度言う」という謎めいた言葉に挟まれた最初のアルバム『Beat Pyramid』の円環構造そのものだ。聞けば聞くほどにこのアルバムにはジーズ・ニュー・ピューリタンズのこれまでの軌跡の全てが詰まっているように思えてくる。年を重ね、楽器のパレットが変わっても、ピューリタンズの内に秘めた美への探求心は変わることなく受け継がれているのだ。

 そして明らかな変化もある。『Crooked Wing』でのジャック・バーネットの歌声は過去のどのアルバムよりも優しく、まるで幻想的な物語を子供に読み聞かせるように柔らかに響くのだ。厳かで神秘性を帯びた、デカダンなトラックの中でのそれはやはり不釣り合いのようにも思えるのだけど、しかしその声は溶け込むようにして流れ出す。あるいは逆にこの柔らかな歌声の外にこそ世界は広がっているのかもしれない(物語が言葉によって受け継がれてきたのと同様に)。これほどまでに緊張感のある音楽にもかかわらず、聞きやすくスゥと入ってくるのはこれがヴォーカルを中心にしたアルバムだからなのだろう。手招きをするように滑らかな糸を垂らすジャック・バーネットの声を頼りに深いところに潜っていくような、そんな感覚に包まれるのだ。

 厳かで幻想的な景色が広がる。光と闇、自然物と人工物、過去と未来、それらが境目なく混在する地続きの世界、ありえない光景があるがままにさらされる。陶酔感と恍惚感に包まれた、ジーズ・ニュー・ピューリタンズがこれまで送り出した4枚のアルバムの全ての過程を経てたどり着いたようなこの音楽は彼らの集大成、記念碑的なアルバムなのかもしれない。しかしそれは同時にここから新たに始まるという気配が漂うものでもある。“Waiting”、“Return”、このピューリタンズの輪の中にいつまでも漂っていたいという思いに駆られる。

Ches Smith - ele-king

 メアリー・ハルヴォーソン(g)の〈ノンサッチ〉からのソロ作は確かに非の打ちどころのない傑作だった。だが、NY前衛シーンの要人チェス・スミス(ds)率いるカルテットの一員としてギターを弾く彼女の前では、その傑作すらかすんでしまう。彼女をグループの一員としてここまでうまく機能させた例も珍しいのではないだろうか。これは大言でも誇張でもない。チェス・スミス『Clone Row』は2025年を代表するアルバムのひとつである。
 カルテット編成の本作では、メアリーとリバティ・エルマンがギターを弾いているのだが、このふたりの不即不離のつばぜりあいこそが要となっている。エルマンはヴィジェイ・アイヤー、ルドレシュ・マハンサッパらと共演し、ピューリツァー賞を受賞したヘンリー・スレッギル『In for a Penny, In for a Pound』(2015)でも的確なサポートぶりを見せた。知名度こそ低いがハルヴァーソンとしては相手にとって不足なしだっただろう。
 そのふたりのギターを束ねあげるのが、作曲家としても名を馳せるチェス・スミス(ds)。彼はマーク・リーボウ率いるセラミック・ドッグでガレージ・パンクとフリー・ジャズを接ぎ木したようなサウンドの推進力として、苛烈なグルーヴを放っていた。2015年には現代音楽寄りの静謐なサウンドが印象的な『The Bell』を〈ECM〉から発表。またつい先日、〈ツァディック〉からひとりで様々な打楽器を操るソロ・アルバム『Self』をリリースしたばかりで、打楽器奏者として非凡なところを見せつけた。ベースはこれまたNY前衛畑のニック・ダンストン。底辺を確実に支えながら、時折大きくうねるようなグルーヴも聴かせる。
 2本のギターのラインを追うだけでも聴き応えのある作品だ。対位法やユニゾンを駆使するのはもちろん、絡み合い、もつれあい、交差/交錯し、時に調子っぱずれな不協和音も醸し出す。例えば、かつてのソニック・ユースにおけるサーストン・ムーアとリー・ラナルドという両ギタリストの関係を、より複雑精緻に、そして大胆に発展させたような趣きもある。あるいは、テレヴィジョンのファースト『マーキー・ムーン』における、トム・ヴァーラインとリチャード・ロイドのハーモニーを思い出す、という人もいるだろう。
 奇矯なポリリズムに乗せてヴィブラフォンが鳴り渡る“Ready Beat”、グレン・ブランカのギター・アンサンブルの創造的乗り越えを計ったような“Clone Row”、長いリフの繰り返しでリズムが自在に伸縮する“Town Down”、チャーミングでトイ・ポップ然とした“Heart Breakthrough”、彼らなりのミニマル・ミュージックとでも呼ぶべき“Sustain Nightmare”、デレク・ベイリーばりに禁欲的なソロが続く“Play Bell (For Nick)”など、その音楽的な射程は実に長い。全体的にポスト・パンクやノイズの要素も含み、ロック的なダイナミズムも失っていない。むろん、即興の割合が高くジャズの要素もあるのだが、形骸化したジャズの型や形式を内側から喰い破るような獰猛さこそに剋目すべきだろう。
 繰り返すが、2本のギターの重なり合いとすれ違いに耳を澄ませてほしい。メアリー・ハルヴォーソンのギターとバディ・エルマンのギター。このふたつが単なる足し算でも掛け算でもなく、お互いのポテンシャルを引き出すことによって、無限にエントロピーを増大させてゆく。ハルヴォーソンを契機にジャズに興味を覚えたようなリスナーにこそ届く訴求力を宿した逸品だ。当然、ギタリストは全員必聴である。

Mars89 - ele-king

 Mars89が主宰する〈Nocturnal Technology〉が初となるレーベル・ナイト「Nocturnal Technology presents NIGHT-001」を7月5日(土)に渋谷・WWWβにて開催。本年1月に同レーベルから発表された、Albino Soundとの「ボディーホラー」をテーマにしたアルバム『ORGANS』のリリース・ライヴを披露する。

 ワルシャワのレーベル〈Brutaż〉を主宰し自身も名店〈HARDWAX〉の運営に関わるDJ・RRRKRTAによるオール・ヴァイナル・セットを迎え、ローカル・アクトとしてハウスを主軸にレフトフィールドなアプローチを続ける音楽家Yoshinori Hayashi、大塚のアンダーグラウンドなヴェニュー〈地底〉を拠点に活躍する新鋭RE:COが出演。

 直訳すると「夜行性の技術」といった意味合いになるだろうか、〈Nocturnal Technology〉という名を体現した、夜を愛してやまないMars89の哲学を存分に体験できる一夜となることだろう。

Nocturnal Technology presents NIGHT-001

2025/07/05 SAT 23:00 at WWWβ
U23 ¥2,000 / ADV ¥2,500 / DOOR ¥3,000
TICKET https://t.livepocket.jp/e/20250705wwwb

Albino Sound & Mars89 ORGANS Release LIVE
RRRKRTA [Brutaż / Warsaw]
RE:CO
Yoshinori Hayashi

Over 20 only・Photo ID required / 20歳未満入場不可・要顔写真付ID

*当日映像の撮影を予定しています。顔などが鮮明に映らないよう配慮しておりますが、あらかじめご了承ください。
*本プログラムはRRRKRTAの渡航費の一部としてポーランドのAdam Mickiewicz Instituteからサポートをサポートを受けています。

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 Mars89主宰のレーベルNocturnal Technologyが、そのアティチュードを体現する夜会を開催する。同レーベルからボディーホラーをテーマにしたアルバム『ORGANS』をリリースしたAlbino SoundとMars89が、初のセッションライヴパフォーマンスを披露する。そして、レフトフィールドなダンスミュージックをリリースし続けているワルシャワのレーベル「Brutaż」のボスであり、ベルリンの名門レコードストアHARD WAXの裏方も務めるRRRKRTAが大量のレコードと共に初来日を果たす。国内からは、同じくレフトフィールドなダンスミュージックを探求し、ノルウェーの〈SMALLTOWN SUPERSOUND〉からアルバムをリリース、レコード・フリーク達を唸らせてきたDJでもあるカルト電子作家Yoshinori Hayashiと、若手ながらもスキルフルにダブやテクノを横断、大塚地底のCALDERAよりRE:COが登場する。

 Nocturnal Technologyは、東京を拠点に活動するDJ/プロデューサーのMars89による、夜をテーマにしたエレクトロニック・サウンドのレーベルである。レーベル名の「Nocturnal Technology(夜行性の技術)」は、クラブカルチャーの技術が夜間に活気づくことを意味している。レーベルのロゴは、音を使って暗闇で行動する動物であるコウモリへのオマージュである。

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David Byrne - ele-king

 近年ではコンサート映画『アメリカン・ユートピア』が日本でもヒットしたデイヴィッド・バーン(監督はスパイク・リー)。そのもととなった同名ツアーへと発展するアルバム『American Utopia』以来、7年ぶりの新作が9月5日にリリースされる。題して『Who Is The Sky?』。『American Utopia』を発展させた内容になっているようで、彼らしく尖った要素と親しみやすい要素をあわせもつ作品に仕上がっている模様。ニューヨークという街からインスパイアされたと思しき新曲“Everybody Laughs”が公開中です。

トーキング・ヘッズのリーダーとして知られるデヴィッド・バーンが、最新アルバム『Who Is The Sky?』を〈Matador Records〉より9月5日にリリースすることを発表した。アルバムのプロデュースを手がけたのは、グラミー賞受賞プロデューサーのキッド・ハープーン(ハリー・スタイルズ、マイリー・サイラス)。収録された12曲のアレンジは、ニューヨークを拠点とする室内楽アンサンブル、ゴースト・トレイン・オーケストラのメンバーが担当した。

2018年のグラミー賞ノミネート作『アメリカン・ユートピア』以来となる本作には、古くからの仲間から新たな音楽仲間まで幅広いゲストが参加しており、セイント・ヴィンセント、パラモアのヘイリー・ウィリアムス、ザ・スマイルのドラマーであるトム・スキナー、そして『アメリカン・ユートピア』にも参加したパーカッショニストのマウロ・レフォスコといった面々が名を連ねている。リード・シングルとなる「Everybody Laughs」は、キャッチーな魅力でアルバムを象徴する1曲となっており、あわせて公開されたミュージック・ビデオは、マルチメディア・アーティストのガブリエル・バルシア・コロンボが監督を務めている。 

David Byrne - "Everybody Laughs" (Official Music Video)
https://www.youtube.com/watch?v=YM-BTJKIz0Q
配信リンク >>> https://davidbyrne.mat-r.co/everybodylaughs

知り合いの誰かにこう言われたんだ。
「デヴィッド、あなたは “everybody(みんな)” という言葉をよく使うよね」って。
たしかにそうかもしれない。
ニューヨークという場所での人生を人類学的な視点で描き出すために、そうしているのかもしれないね。
- David Byrne

「みんな生きて、死んで、笑って、泣いて、眠って、天井を見つめる。みんな他の誰かの靴を履いている ― そんなことしない人もいるけど、僕はやったことがある。そんな色々なことを、グルーヴやメロディに支えられた高揚感を感じられるような形で歌にしようとした。曲の終盤で、セイント・ヴィンセントと僕が一緒に叫んだり歌ったりしているところは特にそんな感じだよ。音楽は、相反するものを同時に抱え込むことができるんだ。今年の初めにロビンと一緒に歌ったとき、それを実感したよ。彼女の曲はしばしば悲しいけれど、音楽自体はとても喜びに満ちているんだ」とデヴィッド・バーンは語る。

「すぐにはわからなかったけれど、これらは明らかにデヴィッドの個人的な物語であり、同時に彼独自の世界の捉え方が色濃く反映されている楽曲だと思った」とキッド・ハープーンは加える。「ニューヨークの街を歩きながら”Everybody Laughs”のデモを聴いていたときは、本当に幸せな気分になったよ。僕らはみんな同じなんだって思うことができたから。誰だって笑うし、泣くし、歌う。デヴィッドが多くの人の心をつかむのは、たぶん、彼自身もそのジョークの一部になっているからだと思う。彼はこの世界のバカバカしさをちゃんとわかっていて、それを踏まえたうえで、個人的な観察を通じて独自の視点を差し出しているんだよ」。

2023年、アルバム・ツアーとして始まり、絶賛されたブロードウェイ公演、さらにはスパイク・リー監督によるHBOの映画作品へと発展した『アメリカン・ユートピア』の時代が幕を閉じる頃、彼は少しずつ、グルーヴやコード、メロディの断片をしばらくぶりに書き留めはじめていた。その直前の3年間は混乱に満ちていたが、そんな中で、歌詞のアイデアやフレーズも書き溜めていたという。「いざ制作を始めるときに、少しでもストックがある方が始めやすいということに気づいたんだ。そして、気づけば結構たまっていた。アコースティック・ギターを弾きながら、ループやビートに合わせて歌う、そんなごくシンプルな曲たちが少しずつ生まれはじめたんだ」。世界が、そして『アメリカン・ユートピア』のブロードウェイ公演が中断を余儀なくされたなか、彼もまた多くの人々と同じように、自らに問いかける時間を得ることになった。「自分がやっていることは、本当に好きなことなのか? どうして曲を書いているんだろう? どうしてこの仕事をしているんだろう? そもそも、そこに意味はあるのか?」

その重い問いに対する彼なりの答えが詰まっているのが最新作『Who Is The Sky?』であり、この作品は、『アメリカン・ユートピア』とそのツアー、そしてグラミー賞を受賞したブロードウェイ公演および映画で明確に提示された「楽観的なテーマ」をさらに発展させた内容となっている。彼はこの作品を通じて、人と人とのつながり、そして混沌とした世界の中における社会的な連帯の可能性を追い求め続けている。『Who Is The Sky?』は、とてもシネマティックで、ユーモアに富み、喜びに満ちた作品でありながら、しばしばメッセージも含まれている。「愛は説明できるものではない」「悟りの意味は人それぞれ違う」「たとえ翌朝の肌が赤ちゃんのようであってもそうでなくても、保湿はしておくに越したことはない」そして何より、このアルバムでは、前衛性とポップの親しみやすさを紙一重で共存させるデヴィッド・バーンの類まれなセンスが改めて際立っている。

彼によると、『Who Is The Sky?』には「これまで以上に『ストーリー性のある楽曲』が多く含まれている」という。いずれも「個人的な体験に基づいたミニ・ストーリー」のような構成になっており、たとえば次のような楽曲が挙げられる:
「She Explains Things to Me」(どうして彼女には全部そんなに明白なんだろう?)
「A Door Called No」(彼がキスを受けたことで、不思議とその扉が開く)
「My Apartment Is My Friend」(最悪な姿も見せてきたのに/僕らはいつも仲良しなんだ)
「I Met the Buddha at a Downtown Party」(かつての精神的指導者が、神格化されることよりも不健康なデザートに夢中になっているパーティの一幕)など。

「グルーヴにはうるさい」と自他ともに認めるデヴィッド・バーンは、制作の終盤にトム・スキナーや、30年以上にわたって共にレコーディングやツアーを行ってきたブラジル人パーカッショニストのマウロ・レフォスコからの貢献を歓迎した。ミックスはマーク・ “スパイク” ・ステント、マスタリングはエミリー・ラザールが手がけており、完成した作品は、彼自身の言葉を借りれば、「隠すことと、さらけ出すことの両方が詰まっている」。「このアルバムは、誰もが内に秘めている『神話的な存在』になるための機会でもあり、現実を抜け出して、もうひとつの世界に足を踏み入れるチャンス。つまり、『自己』という牢獄から超越し、逃れるための試みなんだ」。こうしたコンセプトは、『Who Is The Sky?』のアルバム・パッケージ全体にも色濃く反映されている。アートワークはシラ・インバーが手がけ、デヴィッド・バーンの姿は放射状のカラーパターンと、ベルギーのアーティスト、トム・ファン・デル・ボルフトによるサイケデリックで棘のような衣装に包まれ、ほとんど見えないほどに覆い尽くされている。また、今年後半には『Who Is The Sky?』のツアーが予定されており、バンドは13名編成(ミュージシャン、シンガー、ダンサー)で、『アメリカン・ユートピア』のメンバーも含まれ、全員がステージ上を自由に動き回る構成になる。

デヴィッド・バーン待望の新作『Who Is The Sky?』は、CD、LP、デジタル/ストリーミングで9月5日(金)に世界同時リリース。国内盤CDには歌詞対訳・解説書が封入される。LPは輸入盤LP(ブラック・ヴァイナル)に加え、通常盤LP(レモン・イエロー・ヴァイナル)、限定盤LP(アップル・グリーン・ヴァイナル)、日本語帯付きLP(日本語帯付き/歌詞対訳・解説書付き/アップル・グリーン・ヴァイナル)が発売される。また、タワーレコード限定盤(日本語帯付き/歌詞対訳・解説書付き/オレンジ&ピンク・ヴァイナル)も発売される。なお、Tシャツ付きセットに関しては後日発表される。

label: Matador Records / Beat Records
artist: David Byrne
title: Who Is The Sky?
release date: 2025.09.05
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15136

・国内盤CD(解説書・歌詞対訳付き)
・輸入盤CD
・輸入盤LP(ブラック)
・通常盤LP(レモン・イエロー)
・限定盤LP(アップル・グリーン)
・日本語帯付きLP(日本語帯付き/歌詞対訳・解説書付き/アップル・グリーン)
・タワーレコード限定盤LP(日本語帯付き/歌詞対訳・解説書付き/オレンジ&ピンク)
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Tracklist
01. Everybody Laughs
02. When We Are Singing
03. My Apartment Is My Friend
04. A Door Called No
05. What Is The Reason For It?
06. I Met The Buddha at a Downtown Party
07. Don't Be Like That
08. The Avant Garde
09. Moisturizing Thing
10. I'm an Outsider
11. She Explains Things To Me
12. The Trut

MOODYMANN JAPAN TOUR 2025 - ele-king

 7月に来日のムーディーマン、すでに東京公演はソールドアウトしておりますが、大阪はまだチケットあります。彼のDJを聴かずしてハウスは語れない、そのくらい素晴らしいDJです。しかも毎回そのミックスや選曲には驚きがあります。ブラック・ミュージックの最高のDJで、関西も盛り上がりましょう!

Scanner & Nurse with Wound - ele-king

 スキャナーとナース・ウィズ・ウーンドのコラボレーション・アルバム『Contrary Motion』がリリースされた。一見すると意外な組み合わせにも思えるが、サウンドは両者の音が見事に融合したダーク・アンビエントに仕上がっていた。電子音とノイズと具体音が幽玄な音空間の中で融解し交錯する音響には、聴き手を深く没入させる力がある。リリースは、ナース・ウィズ・ウーンドが作品を発表してきた自主レーベル〈United Dairies〉から。

 スキャナーは、ロビン・デイヴィッド・ランボーによる英国のサウンド・アート・プロジェクトである。彼は1993年、英国の実験音楽レーベル〈Ash International〉の初期にいくつかの作品を残し、その後はベルギーの実験音楽レーベル〈Sub Rosa〉などから、150〜160作とも言われる膨大な数のアルバムをリリースしている。環境音や電子音を組み合わせるという、今日のエクスペリメンタル・ミュージックの基本手法を、90年代初頭から実践してきたこの分野の巨匠である。個人的には、映画作家デレク・ジャーマンにオマージュを捧げ、ロビン・デイヴィッド・ランボー名義でリリースされた『The Garden Is Full of Metal』(1997)に強く惹かれたことをおぼえている。

 一方、ナース・ウィズ・ウーンドは、英国に拠点を置くノイズ・コラージュ集団である。彼らはノイズ/インダストリアル・ムーヴメントやポスト・パンクの文脈において論じられることもあるが、その創作活動の根幹には、ダダイスムおよびシュルレアリスムの思想と方法論を継承する姿勢が認められる。加えて、彼らは一貫してインディペンデントな制作体制を堅持しており、その点でも特異な存在である。現在のメンバーはスティーヴン・ステイプルトンとコリン・ポッター。とはいえ、彼らについて私などが語ることはできない。まずはなにより平山悠氏の著書『ナース・ウィズ・ウーンド評伝──パンク育ちのシュルレアリスト・ミュージック』を読んでいただきたい。この本には、彼らにとって大切なことがほぼすべて書かれているからだ。私が知っている範囲で彼らのアルバムで好きな作品はハードコアなドローン作品である『Soliloquy for Lilith』(1988)である。

 本作『Contrary Motion』は、ナース・ウィズ・ウーンドのスティーヴン・ステイプルトンとスキャナーのコラボレーション作品だ(もちろん初の共作である)。二人の、いかにも英国的なシュールリアリズム感覚とセンスが遺憾なく発揮されているアルバムだ。スキャナーの公式サイトには、本作の制作経緯が詳しく記されている(https://scannerdot.com/the-making-of-contrary-motion-with-nurse-with-wound/)。ロビンとスティーヴンは何年も前にドイツで出会い、以後、共にライブを行い、音楽・芸術・人生についてさまざまな対話を重ねてきたという。このプロジェクトの発端は数年前。スティーヴンがロビンに共作を提案したことから始まった。ちなみに印象的なアートワークは、スティーヴン・ステイプルトンの妻、サラ・ステイプルトンによるものである。

 使用されている音は、ライヴエレクトロニクス、電話音、加工された声、謎の電子機器、軋むギター、エコーする音など多岐にわたる。これらが緻密かつ大胆に交錯し、ダークなムードのアンビエントを構築していく。聴き手の聴覚をじわじわとハックするような魅力に満ちたアルバムだ(全6曲収録)。最初はこの二人の共演に意外性を感じたが、実際に音を聴くと、その相性の良さに驚かされる。どのトラックもノイズとノイズ、音と音が緻密にコラージュされ、現実と非現実の境界を彷徨うように展開する。

 本作はまずスティーヴンの方から、1時間におよぶベースとなる録音が共有された。そこにロビンが手を加え、アルバムの基本的な構造を作り上げ、録音全体をいくつかのセクションに分割していった。おそらくこの時点で、ロビン独自のエレクトロニック・アンビエントが加えられていったのだろう。そこに無数のノイズを重ねていく手腕には、ステイプルトンとの共同作業の強い印象が残る。実際、ロビンはステイプルトンのノイズに対し、自身の膨大なサウンド・アーカイヴを用いたと語っている。彼のオリジナルのモジュラー・シンセも使用され、アルバム全体の電子音を特徴づけている。

 アルバムは、メタリックな持続音が響く1曲目“Causticum”から幕を開ける。メタリックなドローンに加工された声によるナレーションや、どこか鳥の鳴き声のような音が重ねられていく。どこか不穏で冷たいサウンドが、アルバムの開幕にふさわしいムードを演出している。続く2曲目“Conium Maculatum”は、アンビエント/エレクトロニック色が強く、おそらくスキャナーの色合いが濃いトラック。だが、レイヤーの重ね方にはステイプルトンの手腕も感じられ、見事な融合を見せている。

 アルバム中盤の3曲目“Cocculus”では、ドローンを基調とした薄暗い音像の中にモールス信号のような音や微細なノイズが交錯する。使用されたシンセはEllitone Farm Detective Ultrarollzとのことだが、これが曲全体のざらついた質感を際立たせている。4曲目“Cicuta Virosa”は最も深い余韻を残す一曲だ。静謐さと微細なざわめきが、聴き手を不可視の空間へと導く。再び「声」が現れる5曲目“Tartaricum”は、シネマティックなムードが印象的だ。最終曲にして6曲目“Mezereum”では、霧のような持続音と夜の物音のようなノイズが交錯し、静寂の中に沈み込むような音世界が広がる。途中から加わる加工声は、人間と冥界を繋ぐ電波のようにも聴こえる。

 以上、全6曲。どの曲も、幽玄な電子音に、細やかな音=ノイズが大胆かつ緻密に交錯している。両者のファンであれば、各曲にちりばめられた音の断片から、それぞれの「音」への連想が働くかもしれない。しかし、この作品が優れている最大の理由は、単なる合作ではなく、現代のダーク・アンビエント・アルバムして確かな完成度を備えている点にある。現実の喧噪から距離を取りたいとき、深淵な音の迷宮に沈みたいとき、このシュールリアリズムとダダの精神を受けつぐダーク・アンビエント『Contrary Motion』を聴いてほしい。

Swans - ele-king

 ロックの歴史において、炎に焼かれ灰となり、そこから甦るというフェニックスの神話をこれほどまでに体現したバンドが他にあるだろうか——スワンズをおいて。1998年、バンドは文字通り「死」を迎える。最終作のタイトルは、まぎれもなく『Swans are Dead』。これ以上ない明快さ。「これで本当に終わり」と公言するバンドは数あれど、実際に姿を消す者は稀だった。そして彼らは、本当に消えた。
 1982年の結成以来バンドを率いてきたマイケル・ジラも、当時の活動を肯定的に語ることはなく、2000年代のアメリカにおける新たなフォーク・ムーヴメントのなかで、Angels of Lightやソロ名義でフォーク・ミュージックへと舵を切っていった。だが、スワンズが『The Great Annihilator』(1995)で踏み出したあの時代は、いま振り返っても尋常ではなかった。『Holy Money』(1986)の時期の金槌のような打楽器による暴力的ミニマリズムと同等の強度をもちながらも、そこにはより物語性に富んだ、儀式的なノイズの瞑想が展開されていた。なかでも『Soundtracks for the Blind』(1996)は、音の探求として驚異的な達成を示す作品であり、もっと多くの人に発見されるべきアルバムである。
 スワンズは死んだ——そうマイケル・ジラが宣言したとき、それを疑う理由はどこにもなかった。だが2010年、誰も予想しえなかった再生の瞬間が訪れる。スワンズは再び目を覚ましたのだ。
 復活後最初の作品『My Father Will Guide Me Up a Rope to the Sky』(冗長なタイトルが物語るように)は、たしかな可能性を感じさせながらもやや肩すかしだった。その音楽的へその緒はまだ、Angels of Lightのフォーク的世界にしっかりと繋がれていたからだ。年齢を重ねれば創造性は失われていく——そんな西洋に根づく通念が、作品の背後にちらついていたのも否めない。
 しかし、すべてが変わったのは2012年。『The Seer』のリリースによって、誰も予測できなかった新たな激烈の時代が幕を開けた。ジラは、初期スワンズの打撃的なサウンドを再び受け入れつつ、それをまったく新たな文脈に落とし込んでいった。その音楽は、過去と現在を弧を描くようにつなぎ、バンドの新たな自己像を浮かび上がらせたのだ。スワンズというバンドは、その歩みを時代ごとに明確に区切っていく存在であり、それを決定し、宣言することをジラ自身もまた好んでいる。

 2025年に発表されたスワンズの第17作『Birthing』は、まさに記念碑的な作品であり、またしても「これが最後の〈ビッグ・サウンド〉作品になる」との宣言とともに世に放たれた。極限までの追求を信条とするマイケル・ジラらしく、本作でもその姿勢は貫かれている。全7曲ながら収録時間は2時間近くにおよび、かつて『Soundtracks for the Blind』が「一線」を画したように、『Birthing』もまたひとつの終わり——どれほど決定的な終止符であるかは定かでないにせよ——を示しているかもしれない。
 『Birthing』を語るうえで不可欠なのは、スワンズというバンドがグレン・ブランカの「使徒たち」であるという事実を理解することだ。今日では徐々に記憶から遠ざけられつつあるが、ブランカはスワンズのみならずSonic Youth、さらには80年代NYアヴァン・シーン全体に多大な影響を与えた存在である。
 巨大なノイズ・ギター交響曲の先駆者であったブランカは、10本以上のエレクトリック・ギターとアンプが一斉に耳をつんざく音量で鳴らされ、アコースティック楽器では決して得られないような〈うなり〉や〈幽霊音〉を呼び起こすという音響実験を通じて、演奏者に「強度」のすべてを教え込んだ。その場にはジラも、ソニック・ユースのサーストン・ムーアも身を置いていたのだ。皮肉なのは、ジラがあの「音」に本格的に再び取り組んだのが、それからおよそ20年を経てのことだったという点だ。時間とは、まさに相対的なものなのだ。
 『Birthing』は、メシア的なドローン——ほぼすべての楽曲に通底する、力の限りに引き伸ばされた音のうねり——と、説教師のような呼びかけ(“I am a Tower”)を行き来しながら、氷河のように冷たい音響の炎をひとつに束ねるような、ミニマル・フォークの哀歌を内包している。アンサンブルによる暴力的な歓迎は、リスナーに険しい音の山を登らせるが、アルバムの多くのパートはむしろ内省的で、どこか悲しげで繊細ですらある。
 冒頭の“The Healers”は、全員男性メンバーによるバンドとは思えないほどフェミニンな楽曲であり、浮遊するような音の抱擁が広がっている。その柔らかさは、ラストにかけて続く記念碑的なエクスタシーと鮮やかな対照をなす。この「静から動への振幅」、あるいは個々の楽曲を超えた巨大な音響構造は、まさにグレン・ブランカの手法を思わせるものであり、2時間という時間のなかで幾度となく繰り返される。そのため、本作は個々の楽曲というよりも、一続きの大作として体験されるべきものとなっている。
 最終的に、この構造から逃れることは難しい。ボアダムスのように、かつて同じ道を選んだバンドたちがそうであったように、この形式に祝福された者たちは、たとえ曲が分かれていても、必然的にマントラ的な「ひとつの音」に回帰していく運命にあるのだ。繰り返すことは、神をより深く知ることに通じる。だが、30年以上にわたるヴィジョンを貫いてきたマイケル・ジラは、決して時代を繰り返さない。ゆえに、『Birthing』が何らかの「別れ」を告げる作品であることは間違いない。しかし、いくつかのことを忘れずにいたい。
 まず第一に、スワンズの啓示は常にツアーとともにもたらされるということ。願わくば、読者であるあなたにも彼らのライヴを体験してほしい。彼らは過去に二度、日本に来ている。願いを込めて指を交差させれば、もしかするともう一度──本当に最後の一度──来日してくれるかもしれない。
 第二に、スワンズのフィジカル・リリースは、単なるアルバムではなく「遺産」として設計されているということ。芸術作品として保存されるべきものとして、クオリティに優れた盤を手に入れた者には、その価値は限りなく高い。
 第三に、マイケル・ジラは現在71歳という、なお鮮烈な生命力をもつ人物であるということ。残された時間は、すでに歩んできた道のりより短いかもしれない。完璧ではないかもしれないが、『Birthing』は、そんな彼が世界に贈った驚くべき贈与であり、妥協なき、そして深い愛に満ちたヴィジョンの結晶である。だからこそ、この作品を単にダウンロードして済ませてはいけない。ぜひフィジカルで手に入れ、一生大切にしてほしい。
 「I am the best fucking Fuck that you never will have.(俺はきみがかつて見たことのない最高のクソ野郎)」


There is no band in rock history whose trajectory has reflected the myth of the Phoenix, one destined to burn in fire and then resurrect itself like SWANS. The band literally died in 1997, their “last” album sincerely entitled SWANS ARE DEAD. It doesn`t get any clearer than that. How many bands jump up and down to say never more? And gone they were. Founder Michael Gira didn`t speak positively of his days fronting the band from 1982 while he moved on to folk music in the midst of the American new folk scene of the 2000`s with new band Angels of Light and solo efforts. Still that era, begun with “The Great Annihilator” was formidable intense cinematic music that mirrored in intensity with the Holy Money era of hammer percussion, instead evolved to narrative based ritualistic noisy meditation.”Soundtracks of the Blind” is an incredible achievement in sound that begs to be discovered more.
When he said SWANS was dead, no one had any reason to disbelieve him but come 2010, a rebirth was witnessed. SWANS reawakened. The keenly promising but somewhat underwhelming first release “My Father Will Guide Me Up a Rope to the Sky” with its unnecessary long title was definitely a suggestion of what could be but didn’t go far enough with its umbilical cord still tightly connected to Angels of Light folkdom. The commonly held western belief that the older one gets the less creative one is could be felt in the background. But all changed in 2012 with “The Seer,” officially starting an intense new era no one could have forecast. Gira had embraced again the pummeling sound of the early songs in a new context that drew an arc from their beginnings to their new found self. SWANS is a band of clearly marked eras which Gira is very found of deciding and announcing.
2025`s monumental release “Birthing,” SWANS` 17th release, is no different, attached to yet another announcement that it would be the last “big sound” release. Gira known for pushing to the extreme has definitely done so here. With just 7 tracks, the album is just a hair under 2 hours and may mark another end (how definitively is anyones guess) in the same way that “Soundtracks of the Blind” was a line in the sand.
To properly talk of “Birthing,” it`s vital to comprehend that SWANS are the disciples of Glenn Branca, a name that is progressively being forgotten in time despite his massive influence on SWANS and Sonic Youth and the NYC avant scene of the 80`s. Branca, the first composer of titanic noise guitar symphonies provided a learning ground for musicians (both Gira and Thurston Moore were participating musicians) to soak in the intensity of 10 or more electric guitars with amps strumming simultaneously at earsplitting volumes summoning humming ghost tones impossible with acoustic instruments. It is incredibly ironic that Gira didn`t embrace “that sound” again til 20 years later. Time is indeed relative.
“Birthing” wades between messianic near-power drones (almost every song), preacher callings (“I am a Tower”), minimalist folk dirges which hold all of the flames of glacier sound together. Though the welcoming violence of the ensemble creates stark mountains to climb for the listener, many parts of the album remain meditative, almost mournful and delicate. The beginning “The Healers” is a very feminine song coming from an all male band. That floating aural embrace is directly contrasted with the continuous monumental euphoria of the end. This Branca pattern occurs often through the 2 hours making parts of the total experience at times feel less like individual songs and more like one long work. Ultimately this can`t be escaped as any band that choses this road like the Boredoms for example before them, often repeats themselves in separate songs because the blessing of their formation is christened by a mantra sound. To repeat is to know God better.
Gira, in his 30 plus year vision does not repeat eras so this is definitely a goodbye of some kind but let us keep some things in mind. One, SWANS revelations always come with a tour and I hope you the reader gets to see them. They have come twice to Japan, and if we cross our fingers, maybe they will come one last time. Two, SWANS physical releases are legacy works designed to be art, to be preserved as art. Highly valuable when bought with commendable quality. Three, Michael Gira is a vibrant 71 year old man. There is less ahead than behind so though “Birthing” is not perfect, it is an amazing gift to the world by a man with a vision uncompromising and loving. Do not just download this. Buy a physical copy and keep it forever.
“I am the best fucking Fuck that you never will have”

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