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These New Puritans Field of Reeds Infectious Music / ホステス |
「ゴスなニュー・ウェーヴ」。これまでジーズ・ニュー・ピューリタンズを表面的なイメージだけでそんなふうに簡単に切り捨ててしまっていた方がいたら、約3年ぶりに届けられた彼らの3枚めのニュー・アルバム、『フィールド・オブ・リーズ』を聴いてもういちどその考えを改めてもらえたらと思っている。なぜなら、この最新作はこれまでの彼らの作品を超える最高傑作であり、彼らの自信作だからだ。
これまでは、ザ・フォールやジョイ・ディヴィジョンを手本にし、英国16世紀の錬金術師ジョン・ディーを崇拝するというようなコンセプチュアルなアプローチをあざとく感じてしまう部分もあったが、そうしたやや自意識過剰なバンドの自己陶酔の深さは今作において影を潜めたと言える。なぜなら、このアルバムにはそうしたイメージに勝る、息をのむほど繊細でセンシティヴな音響感覚と、絶妙なサウンド構築があるからだ。
生楽器とさまざまなサンプリングを巧みに組み合わせ、静寂と喧噪とをダイナミックに行き来する狭間には、これまでの彼らの作品には見えなかったドリーミーな美しさがある。とくに“フラグメント・トゥー”や、“オルガン・エターナル”はどこか優しげで、ミニマルな持続音とメロディーはあたたかく心地よい。しかし、全体を通して張りつめる緊張感があるのもこのアルバムの素晴らしいところだ。そして、インダストリアル、ドローン、ミニマル・ハウス、アンビエントなどの影響を感じるが、このアルバムにあるのは、ただ既存の音楽スタイルをなぞってこと足れりとする安直な姿勢ではなく、ジーズ・ニュー・ピューリタンズとしての表現世界を貫徹するためにありとあらゆるものを利用し、妥協なく追い込んでいく“貪欲さ”だ。そうした姿勢に僕は素直に感動したし、彼らがこのアルバムで示したモチヴェーションは、新作をレコーディング中のクラクソンズやザ・ホラーズなどの同期バンドたちや、UKの新人若手に少なからずの影響を与えることだろう。少なくともいま、イギリスの若手バンドにおいて、これほどまでに刺激的で冒険的なサウンドを鳴らすグループを僕は知らない。
ゲスト・ヴォーカルにsalyuを招いた〈ホステス・クラブ・ウィークエンダー〉でのライヴも、ギターを除外するなどバンドとしての新しいスタイルが反映されていて素晴らしかった。 以下は、イヴェントの2日後に行われた、ジーズ・ニュー・ピューリタンズのジャックとジョージ(双子)によるインタヴューです。それではどうぞ。
「新しさ」を求めると、やったことが時代遅れになる危険性があるよね。だから変わることに動機を求めているわけではなくて、自分たちのなかで自然に変わっていくことがベストだと思う。(ジャック)
■今作『フィールド・オブ・リーズ』を聴いて、ジーズ・ニュー・ピューリタンズがいったいどんなコンセプトを持ったバンドなのか、あらためてお訊きしたいと思いました。
ジャック:バンドをはじめた頃は、僕たちとしては音楽だけじゃなくて、バンドとして、例えばアートワークや映像っていうもので音楽にさらに付加価値をつけることをコンセプトに活動してた。だから音楽以上の作品を作ってるっていう自覚を持ってやってきたんだ。ただ、今作に関しては、そういったコンセプトはほとんどないと言えるね。でも、映像やアートワークが音楽にひとつの層を加えてるっていう気持ちはいまでも強いし、なにより、ジーズ・ニュー・ピューリタンズっていうバンドは、僕ら兄弟ふたりが本能的に感じ合ったものを表現しているバンドなんだ。だから今作『フィールド・オブ・リーズ』も、曲を作るうえでそういったものを核に据えて、音を次から次へと加えて、それがどこに導いてくれるかっていうことに身を任せて作ったんだよね。
■あなたたちのサウンドの特徴のひとつとして、ミニマリスティックなリズムがありますが、今作はどんな音楽的要素にもっともフォーカスしましたか?
ジョージ:前作『ヒドゥン』がリズムにフォーカスしたアルバムだったのに対して、今作はよりメロディーに焦点を当てたんだ。
ジャック:曲作りをピアノで行ったっていうことが影響してると思う。とはいえ、リズムをまったく無視してるわけじゃなくて、結果的に、スペースが少ないぶん、例えばそこにリズムが入ってくることによって曲が強調されるし、リズムそのものにも大きな意味を持たせることができたとも思う。
■例えば、サウンドにおける質感という点で、前作では映画のサウンド・トラックがインスピレーションになったと言っていましたが、今作はどのようなものにインスパイアされましたか?
ジョージ:昔の古いサントラを聴いてたってことを昔インタヴューで答えたのは確かに覚えてるんだけど......、ジャック、実際にそれってサウンドに影響あったんだっけ?
ジャック:えーと、映画っていう話に関しては、今作のトランペットの音を作る際に『チャイナ・タウン』っていう映画の音楽に影響を受けたことが挙げられるかな。プレート・リヴァーヴっていう、大きい鉄板を使ってリヴァーヴを効かせる手法があるんだけど、それを使ってトランペットの音を作ったんだよね。でも、他にはどうかな、外から影響を受けるっていうより、自分たちのなかから出てくる音楽にフォーカスしたと思う。
■前作同様に、ピアノや、幻想的なブラス・セクション、斬新なサンプリングが今作にも導入されていますが、あなたたちが感じるそれらの魅力って何ですか?
ジャック:僕としては、曲を書いているときに、「あっ、ここにこの楽器のこういう音が欲しいな」っていうものを素直に入れるんだ。だから、基本にあるのは、「曲が何を求めてるいるか」なんだよね。
■あなたは前作について、「ブリトニー・スピアーズの力強いポップ・サウンドと、金管や木管アンサンブルから得られるメランコリー、そのふたつの形式の間を行き来しているサウンドを表現したかった」とおっしゃっていましたが、そうした比喩に倣えば、本作におけるあなたの興味は、どんなふたつの極の間のスペクトラムに存在していたと思いますか?
ジャック:いい質問だね。
ジョージ:今回のアルバムは、俺たちのすごくパーソナルな世界にみんなを招待している作品なんだ。前作は外からの影響を意識的に自分たちのサウンドと融合するような作品を作るうえでのアプローチがあったけど、今回は自分のなかから湧き出る感情に素直に従って曲作りをしたんだよ。
ジャック:前作は、ひょっとしたら自分の本質と音楽との間に距離があったのかもしれない。でも、今作はそういった距離を縮めて、そのギャップが0になるところまで近づけることができた気がする。それと同時に、すごく説明するのが難しい作品で、人に聴かれても、どこから手をつけて、どこから説明していいのか自分でもわからない作品であるとも思う。
取材:菊地佑樹(2013年6月27日)
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