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あまりにも自分たちの住んでる場所と違うし、雰囲気も最高だから、俺は日本に住みたいくらいだね。(ジョージ)
■前作よりも、作りたかった作品を作れたと言えますか?
ジャック:(即座に)うん、そう言えるかもしれないね。
■自分達の音楽における「新しさ」と「過去」の関係については、どんな風に考えていますか?
ジャック:このバンドはすごく変わりやすいし、その速度が速いと思う。
ジョージ:変わるっていうことが自分たちにとってすごく自然なんだよね。だって、3年ぶりに会った友だちが3年前とまったく同じだったらそれもちょっと不思議でしょ? 変わるっていうことは、誰にだって自然だと言えると俺は思うんだ。
ジャック:僕としても、自分たちの初期の音楽を聴くとすごく古い写真を見ている気がして、違和感とまでは言わないんだけど、やっぱり何か不思議な感じがするんだ。だから変わることは確かに自然と言えるんだけれど、でも、かといって、新しいものを常に求めることも僕は違うと思うんだ。「新しさ」を求めると、やったことが時代遅れになる危険性があるよね。だから変わることに動機を求めているわけではなくて、自分たちのなかで自然に変わっていくことがベストだと思う。
■あなたたちが最初に出てきたときは、いわゆるポスト・パンクを含めた、80年代的なものを当時の空気にうまくチューニングしていたと思うんですが、今作はミニマル・ハウスやインダストリアル的な、90年代のムードへとシフトしている気がしました。90年代的なサウンドを鳴らしている意識、みたいなものはありましたか?
ジョージ:実際に若い頃90年代の音楽をたくさん聴いてたよ。でも、だから逆にいまの俺らのサウンドがポスト・パンクって言われることはかなり違和感があるし、ちょっとイラっとするんだよね。
ジャック:確かに90年代のサウンドを参照するムーヴメントがいま起きていると僕も思う。実際に、僕たちも90年代のエレクトロニック・ミュージックがすごい好きで、いちばん最初に曲を作るうえで影響を受けたのはエイフェックス・ツインとかだったんだ。でもサウンドというよりも、サウンドの構築の仕方に影響を受けている気がする。
■全体を通して、柔らかいものとか、穏やかなものっていうよりも、硬質で無機質な世界に音を鳴らしたいですか?
ジャック:最近に関しては逆だと思うな。
ジョージ:とくに新作は親密感のあるサウンドだし、逆だと言えるね。でも君が言う、そういった研ぎすまされた音が鳴り響く瞬間はあるし、俺たちは陰と陽の対比を取り入れるのが好きなんだ。
■では、あなたが思う、音楽における実験ってなんだと思いますか?
ジョージ:いい質問だけど、それについては俺も知りたいところだな(笑)。ジャックはどう思う?
ジャック:僕が思うに、いろんな人にとって、実験的であるっていうことが音楽を作るうえでの出発点になっていることが多いと思うんだ。でも自分たちの場合は逆で、音楽に導かれた結果、そこに必要なものを得るために実験を行っているんだよね。例えば、今作のアルバムにはガラスが割れる音のサンプリングを入れているけど、さっきも言ったように結局あくまでも音楽が先にあるんだ。曲を書いているときに、ここのクライマックスの部分にこういう音を入れたい、じゃあ、ガラスの割れる音にしよう、じゃあ、それはどういうガラスの割れる音なんだ、どういうふうにそれを録音したらいいんだって、一日かけていろんなガラスを割って録ってみて、考えるんだよ。僕たちはその結果を求めて実験を行っているんだよね。
■例えば、ベンジャミン・ブリテンなどは、生活の一部を違う場所に移すことによって、開放的な空間のなかで、新しいアイデアを模索したとも言われています。もしあなたに、好きなだけの時間と場所を選べる権利が与えられたとしたら、あなたはどんな場所に行きたいと思いますか?
ジョージ:それについてはよくみんなで話し合うんだけど、実用的な意味ではLAだね(笑)。
ジャック:個人的には西インド諸島に行きたいな。原住民がいる、いわゆる文明に犯されていない場所がいい。ベンジャミン・ブリテンは日本に来て能なんかに影響を受けてるんだよね。タイトルは忘れちゃったんだけど、日本の舞台に影響を受けている作品があって、その作品で僕は彼が開眼したと思うし、実際、その作品以降の彼の作品が大好きなんだ。
ジョージ:実際に日本についても話し合ったことがあるよ。あまりにも自分たちの住んでる場所と違うし、雰囲気も最高だから、俺は日本に住みたいくらいだね。
取材:菊地佑樹(2013年6月27日)
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