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FRICTION - ele-king

 日本のパンク/ポスト・パンクの開拓者、フリクションの初期2枚の7インチが復刻されることになった。1枚は、記念すべきデビュー7インチ「Crazy Dream」(1979)。もう1枚は『軋轢』と同時リリースされた「I Can Tell」(1980)。さらにこの復刻に合わせ、『79ライヴ』もCDでリイシューされる。ほか、長らく品切れとなっていたタイトルも一挙に追加生産されるとのことなのでチェックしておきたい。

 なお現在制作中の『別冊ele-king J-PUNK/NEW WAVE - 革命の記憶』は3月31日発売。お楽しみに。

日本のロック/パンク史を語る上で絶対に欠かすことのできない最重要バンド、フリクションの2枚の7インチ・レコードを完全復刻!長らく品切れとなっていた『79ライヴ』をはじめ、関連CDの再発&追加生産も決定!

フリクションが1979年にリリースした記念すべきデビュー・7インチ・EPと、傑作ファースト・アルバム『軋轢』(1980年)からのシングルとして同作と同時にリリースされた7インチ・シングルを完全復刻!

併せて、2005年にCD+DVDの形で再発された、レック自ら「奇跡の演奏」という『79ライヴ』(1980年)をCDのみの形でリイシュー!
さらに、長らく品切れとなっていたフリクション関連CDの追加生産が決定!
また、映画の公開に伴い、3月にJ-PUNK/NEW WAVEキャンペーンを実施予定!詳細は後日発表!

《リリース情報》

PASS NO PAST
アーティスト:フリクション
ARTIST: FRICTION
タイトル:Crazy Dream
Title: Crazy Dream
商品番号:SSAP-023
フォーマット:7インチ・EP
価格:定価:¥3,300(税抜¥3,000)
発売日:2026年3月25日(水)
初回生産限定盤

収録曲
A) Crazy Dream
B1) Big-S
B2) Kagayaki

日本のロック史に燦然と輝く名盤『軋轢』(80年)に先立つこと8ヶ月、79年8月にリリースされたフリクションの記念すべきデビュー・EPをオリジナルどおりのジャケット仕様で完全復刻!ファースト・アルバム『軋轢』であらためて取り上げる「Crazy Dream」と「Big-S」の2曲にくわえて、のちに『レプリカント・ウォーク』(88年)で正式に録音することになる「Kagayaki」の3曲を収録。ポスト・パンクの香りも漂う『軋轢』版よりも速いテンポで演奏される「Crazy Dream」と「Big-S」の2曲の疾走感がすばらしい。レック(b/vo)、チコ・ヒゲ(ds)、ツネマツ・マサトシ(g)のすさまじくテンションの高い演奏に圧倒される。『軋轢』未収録の「Kagayaki」のソリッドさも尋常ではない。このEPこそがフリクションという向きも多い無双の3曲。レックの希望により、オリジナル盤とは異なる赤黒ジャケットで再発。

PASS NO PAST
アーティスト:フリクション
ARTIST: FRICTION
タイトル:I Can Tell
Title: I Can Tell
商品番号:SSAP-024
フォーマット:7インチ・シングル
価格:定価:¥2,970(税抜¥2,700)
発売日:2026年3月25日(水)
初回生産限定盤

収録曲
A) I Can Tell
B) Pistol

日本のロック史に燦然と輝くフリクションの傑作ファースト・アルバム『軋轢』(1980年)からのシングル・カットとして同作と同時にリリースされた、ピストル人間ジャケットも最高にクールな7インチ・シングルをオリジナルどおりに復刻!チコ・ヒゲのソリッドなドラムに導かれて、グルーヴィにうねるレックのベースと切れ味鋭いツネマツ・マサトシのギターがクールに絡み合う「I Can Tell」。洗練されていながらもフリーキーなそのサウンドは、ニューヨークでノー・ウェイヴ・シーンを体験したレックとヒゲの二人がいたからこそ生み出しえたものだ。『軋轢』未収のカップリング曲「Pistol」は、荒々しくスピード感あふれる当時のフリクションのライヴでの姿をとらえたカセット・テープ一発録りによる破壊力あふれる一曲。

PASS NO PAST
アーティスト:フリクション
ARTIST: FRICTION
タイトル:79ライヴ
Title: 79 Live
SSAP-025
フォーマット:CD
価格:定価:¥2,750(税抜¥2,500)
発売日:2026年3月25日(水)

『軋轢』の4ヶ月前、あの3人は疾走していた
ジャパニーズ・パンク史に燦然と輝く傑作1stアルバム『軋轢』をリリースする4ヶ月前の1979年12月、京都・磔磔におけるフリクションのライヴ・パフォーマンスを捉えた『79ライヴ』。フリクションのベスト・パフォーマンスとして語られてきたこのライヴは、80年に私家盤10インチLPという形で発表された、ごくわずかのマニアのみが体験し得たもの。2005年に新たに発見されたテープを使用してCD+DVDの形で再発された、レック自ら「奇跡の演奏」というこの伝説のライヴをCDのみの形でリイシュー。『軋轢』リリースの数ヶ月前、頂点を迎えつつあったフリクションのおそろしくテンションの高い演奏が圧倒的だ。とくにレックのヴォーカルは、全編を通してすさまじいばかりの迫力。『軋轢』に未収録の「Pistol」「Kagayaki」を収録。フリクションを語る上で外すことのできない作品のひとつ。

《追加生産タイトル》

PASS NO PAST
アーティスト:フリクション
ARTIST: FRICTION
タイトル:軋轢
Title: Friction
商品番号:SSAP-003
フォーマット:CD
価格:定価:¥2,200(税抜¥2,000)

PASS NO PAST
アーティスト:フリクション
ARTIST: FRICTION
タイトル:ライヴ・イン・ローマ
Title: Live at "Ex Mattatoio" in Roma
商品番号:SSAP-010
フォーマット:CD
価格:定価:¥2,420(税抜¥2,200)

PASS NO PAST
アーティスト:フリクション
ARTIST: FRICTION
タイトル:マニアックス
Title: Maniacs
商品番号:SSAP-013/4
フォーマット:2CD
価格:定価:¥3,366(税抜¥3,333)

PASS NO PAST
アーティスト:フリクション
ARTIST: FRICTION
タイトル:ライヴ PASS TOUR '80
Title: Live - Pass Tour '80
商品番号:SSAP-016
フォーマット:CD
価格:定価:¥2,530(税抜¥2,300)

アーティスト:フリクション
ARTIST: FRICTION
タイトル:2013―ライヴ・フリクション
Title: 2013 - Live Friction
商品番号:PCD-18629/30
フォーマット:2CD
価格:定価:¥3,520(税抜¥3,200)

アーティスト:3/3
ARTIST: 3/3
タイトル:3/3
Title: 3/3
商品番号:PCD-18516/7
フォーマット:2CD
価格:定価:¥3,457(税抜¥3,143)

2月のジャズ - ele-king

Tigran Hamasyan
Manifeste

Naïve

自身の出目であるアルメニアの民謡から教会音楽やクラシック、ロックやヘヴィ・メタル、プログレ、ダブステップやビート・ミュージックなどエレクトリック・ミュージックの影響を受け、独自の活動を続けているティグラン・ハマシアン。2020年に発表した『The Call Within』は、20世紀初頭にオスマン帝国との民族紛争を逃れてアメリカに渡ったアルメニア移民についての楽曲があるように、アルメニアン・ディアスポラとしてのティグランの在り方を示す作品でもあった。その後はアメリカのジャズ・スタンダード集である『StandArt』(2022年)、アルメニアの国鳥である火の鳥を題材にアルメニアの民話に基づいた『Bird Of A Thousand Voices』(2024年)と、異なる色合いのアルバムをリリースしている。これらのレコーディング時期は大体2019年から2021年にかけてのもので、『The Call Within』については2019年の録音だったが、最新作の『Manifeste』は2023年から2025年にかけ、アルメニアの首都であるエレバンから、アテネ、モスクワ、ロサンゼルスと世界各地でおこなわれたレコーディングをまとめたものとなる。

 参加メンバーはマーク・カラペティアン(ベース)、エヴァン・マリネン(ベース)、ネイト・ウッド(ドラムス)、アーサー・ナーテク(ドラムス)といったこれまでも共演してきたメンバーはじめ、アルティョム・マヌキアン(チェロ、ベース)、アルマン・ムナツァカニャン(ドラムス)、ダニエル・メルコニャン(トランペット)などアルメニア人のミュージシャン、クリスティーナ・ヴォスカニャン指揮によるエレバン国立室内合唱団など。“Prelude for All Seekers”はクラシック的なピアノ演奏が精密なテクスチャーを導くなか、ビート感覚に溢れたリズム・セクションと交わるテクノ・ミーツ・ジャズというような作品。後半に向けてアグレッシヴに進むなか、エンディングに美しいピアノ・ソロが訪れる構成も秀逸である。“Ultradance”はダブステップにインスパイアされたダイナミックなビートを持つナンバーで、ビートの谷間に訪れる静穏なピアノ・フレーズとの対比が素晴らしい。アルメニア語で“悩みや悲しみを取り除いてくれる人やもの”という意味を持つ“Dardahan”は、シンセを通して変調されたヴォイスを交えたアルメニア特有のメロディを持つ。“One Body, One Blood”はエレバン国立室内合唱団による幽玄のようなコーラスをフィーチャーし、中世の教会音楽のような荘厳な世界とクリック・テクノのようなトラックが融合する。戦時下で生きる子どもたちに捧げられた“War Time Poem”には、プログレのような強烈なサウンドとレクイエムのように静かな悲しさを湛えた世界が交錯する。今作もティグランのアイデンティティが強く反映された独自の作品集となっている。


Momoko Gill
Momoko

Strut

 モモコ・ギルは日系英国人のドラマー/ヴォーカリストで、即興演奏から作曲/プロデュースもおこなうマルチ・アーティストである。オックスフォードで生まれ、京都、横浜、アメリカのサンタバーバラへと移り住みながら育ち、独学で学んだドラムをはじめキーボードなども操り、現在はロンドンを拠点に音楽活動をおこなう。ロンドンのジャズやインプロヴィゼイション・シーンからオルタナティヴ・シーンと縦横無尽に活動し、アラバスター・デプルーム、コビー・セイティルザなど幅広いアーティストと共演してきた。エレクトロニック・ミュージックの分野ではマシュー・ハーバートコラボ作『Clay』(2025年)が知られるところで、またラッパーの、ナディーム・ディン・ガビージと一緒にアン・エイリアン・コールド・ハーモニーというプロジェクトもおこなっている。そんなモモコ・ギルが満を持してソロ・アルバム『Momoko』をリリースした。

 セルフ・プロデュースとなる『Momoko』は、ロンドンのトータル・リフレシュメント・センターでレコーディングをおこない、マシュー・ハーバートがミックスを担当する。ドラム、キーボードはじめ楽器演奏などは基本的にモモコひとりによる多重録音がおこなわれ、彼女自身のヴォーカルのほかにシャバカ・ハッチングス、ソウェト・キンチ、アラバスター・デプルーム、コビー・セイ、マリーシア・オスーらが名を連ねた50名にも及ぶコーラス隊がフォローする。“No Others”は軽やかにシャッフルするリズムに乗って、モモコの伸びやかなヴォーカルが浮遊感に包まれたムードを作り出す。アルバムのなかでもっともジャズの要素が強い作品だ。“When Palestine Is Free”はコーラス隊とホーン・アンサンブル(クレジットはないが、おそらくシャバカ・ハッチングス、ソウェト・キンチ、アラバスター・デプルームらが演奏していると思われる)をフィーチャーした重厚な作品で、モモコのドラムはマーチング・ソングとブロークンビーツを混ぜたようなリズムを作り出す。そして、フィールド・レコーディングや環境音も取り入れた作曲がおこなわれている点は、コラボレーターでもあるマシュー・ハーバートの影響があるのかもしれない。


Amir Bresler
See What Happens

Raw Tapes

 イスラエルのジャズ・シーンで新世代ミュージシャンとして注目を集めるキーボード奏者/マルチ・ミュージシャン/プロデューサーのリジョイサーことユヴァル・ハヴキン。彼はいろいろなグループやプロジェクトをやっているが、そのなかのひとつである4人組グループのアピフェラや、ヒップホップとジャズのミクチャー・バンドのL.B.T.、ユヴァル周辺のミュージシャンが集まったタイム・グローヴでドラマーを務めるのがアミール・ブレスラーである。ほかにも世界的なベーシストのアヴィシャイ・コーエンのグループ、ピアニストのオメル・クレインのトリオ、サックス奏者のアミット・フリードマンのグループ、トランペット奏者のセフィ・ジスリング、キーボード奏者のノモックと組んだアフロ・ジャズ・バンドのリキッド・サルーン、フォーク・ロック・バンドのフォリー・トゥリーなどで活動するなど、現在のイスラエルを代表するミュージシャンのひとりである。ジャズ、ファンク、ロック、サイケ、プログレ、フォーク、オルタナ、R&Bなどいろいろな音楽に通じたヴァーサタイルなミュージシャンで、これまでソロ作品も『House Of Arches』(2022年)、『Tide & Time』(2024年)などを発表。これらの作品はリジョイサー、ノモック、ニタイ・ハーシュコビッツなど、日頃から一緒に演奏をしてきた仲間たちが参加しており、ジャズ、アフロ、ファンク、サイケなどが融合した内容となっている。

 最新アルバムの『See What Happens』は過去12年間に渡るレコーディング音源やセッションなどをまとめたものである。アミール・ブレスラーはドラム以外にギター、ベース、キーボード、パーカッションなどを演奏するマルチ・ミュージシャンぶりを発揮し、プログラミングなどトラック・メイクもおこなう。共演者にはリジョイサー、ノモック、セフィ・ジスリング、ニタイ・ハーシュコビッツ、ジェニー・ペンキン、ケレン・ダン、イツァーク・ヴァントーラなどイスラエル・シーンの仲間たちが名を連ねる。今回も彼のさまざまな音楽性が融合した内容だが、おすすめはケレン・ダンをフィーチャーした“See What Happens”と“Who Will Hold Your Hand”。ケレンはリジョイサー、ベノ・ヘンドラーとのバターリング・トリオで活躍し、L.B.T.のメンバーでもあるマルチ・ミュージシャン/シンガーであるが、今回はヴォーカリストとしてこの2曲に参加している。原初的でエキゾティックなグルーヴに包まれた“See What Happens”、変拍子による不思議なグルーヴを持つジャズ・ファンク“Who Will Hold Your Hand”と、フェアリーな魅力を持つケレン・ダンの歌声が生かされている。リジョイサーをフィーチャーした“Lesoto”など、アンビエントなフィーリングを持つ作品も印象的。


Joabe Reis
Drive Slow - A Última das Fantasias

Batuki

 ジョアベ・ヘイスはブラジルの新進トロンボーン奏者/作曲家で、ジャズ、ファンク、MPB、サンバ、ヒップホップなどを吸収してきた。1970年代から活動するベテランのキーボード奏者/作曲家のネルソン・アイレス率いるビッグ・バンドで演奏をしてきたほか、エルメート・パスコアール、エヂ・モッタなどブラジルのアーティストから、アメリカのロビン・ユーバンクス、マーシャル・ギルケス、メイシー・グレイなどとも共演してきた。自身のソロ作品としては2024年にファースト・アルバムとなる『028』をリリース。オリジナル曲のほかにジャヴァン、ジルベルト・ジル、アジムスとフローラ・プリムの楽曲をカヴァーしていて、そのアジムス/フローラ・プリムの“Partido Alto”ではイエロージャケッツなどの活動で有名なアメリカのサックス奏者のボブ・ミンツァーと共演している。

 新作の『Drive Slow - A Última das Fantasias』は、ダニエル・ピニェイロ(ドラムス)、デデ・シルヴァ(ドラムス)、アジェノール・デ・ロレンツィ(キーボード)、ジョシュア・ロペス(テナー・サックス)、シドマー・ヴィエイラ(トランペット)、マルチェロ・デ・ラマーレ(ギター)といった『028』でも演奏していた面々に加え、新進ピアニストとして注目を集めるエドゥアルド・ファリアスやベーシストのフレデリコ・エリオドロらがバックを固める。ほかにゲストでラッパーのズディジーラとシンガーのエオラ・オランダ、アメリカからトランペット奏者のシオ・クローカーも参加する。“Simbiose (Nefertiti)”は人力ブロークンビーツのようなビートでソリッドに展開するジャズ・ファンク。全体にエズラ・コレクティヴなどUKジャズに近い雰囲気を持ち、エドゥアルド・ファリアスのピアノもジョー・アーモン・ジョーンズあたりを彷彿とさせる。ジョアベ・ヘイスのトロンボーンをはじめとしたホーンの掛け合いもスリリングだ。“Baile Real”はサンバにブギーやファンクをミックスしたブラジルらしい楽曲で、かつてのバンダ・ブラック・リオあたりを思い起こさせる。

DJRUM - SUSTAIN-RELEASE x PACIFIC MODE - ele-king

 日中は新宿SPACEで雑食極まりない80分のDJセット。グルーヴを保ちつつ古今東西のレフトフィールドな作品を行き来する、という直近のムードを形にできた。明日への不安が強まったときの現場は気合が入る。出演を終え、渋谷のWOMBを目指す。今夜は〈SUSTAIN-RELEASE x PACIFIC MODE〉へ。

 説明不要かもしれないが、オーロラ・ハラル率いるUS最高峰のレイヴ・パーティと、日本人DJのHealthy氏による東京とNYを繋ぐパーティ・シリーズのコラボレーション。今回は、なんとプリオリ(Priori)のライヴセットとドラム(DjRUM、jは発音しないらしい)のDJセットを同時に招聘するという豪華な座組。真裏ではMIDNIGHT EASTにてObjekt×CCLの来日公演も開催中で、円安極まる世相はあれど東京のクラブ熱の高まりを感じる。WOMBに並ぶのもかなり久々のことだし、列を形成しているのがインバウンドだけというわけでもなく、少しはいい兆しもあるのかも。

 フロアにようやく入ると、4FオープナーのHue Rayが最後の曲をかけLil Mofo氏にパスを回すところだった。Hue RayというDJはE.O.UやVìs、Ryogoといった京都のクラブ・シーンと深い関わりを持つ新鋭で、現在は東京を拠点に活動。最近〈PACIFIC MODE〉に加入したようで、卓越したセンスをさらに開花させている。この4Fラウンジの構成が素晴らしく、Hue Ray / Lil Mofo / YELLOWHURU (FLATTOP)という、東京のアンダーグラウンド/ローカルに根ざした三者がロング・セットで空間に艶を与える内容。コラボレーション開催の意義深さを感じた。

 ふらっと訪れたわりに、とにかくさまざまな人に出会う。どちらかといえばプロパーなテクノの場であるにもかかわらず、日本のハイパーポップ・シーンに近しい若手や、K/A/T/O MASSACREを通じて知り合ったような人たちに。僕の主催する〈第四の道〉で長く一緒にやってきているDJ/プロデューサーのillequalTelematic Visionsとも合流。余談だが、〈Basic Channel〉に小学生の頃から親しんでいた2006年生まれのTelematic Visionsは、2月頭にようやく二十歳を迎え、こうしたパーティに堂々と入れるようになったばかり。乾杯できる日を5年以上待っていたぶん、ここで一緒に遊べるのは不思議な気持ち。

 それにしても、ここ数年で身の回りのモードが随分と変化していった。プロパーなクラブ・シーンにいる人たちからすれば、僕らのようなDJはあいかわらずよくわからないことをやっている傍流の存在に見えているのかもしれないけれど、いや、変わってきてますよ。少なくとも、少し前なら「プリオリ始まってる!」とメインフロアに駆け出していくような若者は、周りにはほとんどいなかったわけで。

 そんなプリオリのライヴ・セットを後半にかけて鑑賞。秩序と抑制を感じさせる深みのあるダブ・テクノ~ミニマル主体のサウンドに、ごくわずかな違和感を混入させていく重厚感あふれる内容だった。質実剛健、それでいてたおやかな姿勢は、作品とも同じ一貫性を感じさせる。

 その後、ドラムによる2時間のDJセットがスタート。昨年発表されたIDMとポスト・クラシカルが調和する名盤『Under Tangled Silence』の雰囲気を期待していた自分としては、ライヴを観てみたかったなあ、と発表時には思っていたものの、このDJセットが本当に圧巻だった。敷地内を徘徊する遊び方のほうが好きな自分は、2時間フルでメイン・フロアに釘付けにされること自体が久々で、あまり酒も飲まず最前列に押しかけ、熱狂しつつその手腕に舌を巻くばかりだった。

 「テクノ/ハウスの歴史とマナー」に沿ったこのパーティに奇襲をかけるように、まずはジャングルとIDMの嵐でフロアを圧倒。出音の迫力もすさまじい。そこからフェイントをかけるようにヤーマンなダブ、レフトフィールド・ベース、ポスト・ダブステップ、ゲットー・テック的エレクトロや怪しげなブート盤、マイクロ・ハウス、アシッド・テクノ、ブレイクコアなどを行ったり来たり。音像もBPMも目まぐるしく変動し続けるのに、謎の安定感が紙一重でグルーヴを支える。こうした綱渡り的なマルチ・ジャンルDJがいかに大変かは、雑食で目移りしやすい性分が選曲に直結している身として痛感していて、だからこそ目の前で展開されている営みがいかにとてつもないかがわかる。わかるからこそ、わからない。どうしてこんなDJができるんだろう、しかもあの作品を作れる人が……と、開いた口が塞がらない。

 ヴァイナル3台とは思えないほどビートマッチの精度・スピードも早く、リズムがブレそうになった途端にROLLエフェクトでデッキの役割をサンプラーに変換するなど、技術面だけを切り取っても一流そのもの。しかしながら、ドラムのDJセットの真価は選曲と展開のつくり方にあることが今回ハッキリとわかった。セレクターとして、もしかすると『Under Tangled Silence』の世界観よりも強い記名性を備えているのではないか。

 気づけば30分、60分、90分、と時間が溶ける。終盤、トラップのようにフットワークを一瞬聴かせる采配に、隣のillequalが見たことのない表情をしていた。最後のほうにマライア・キャリーの謎のエディットがかかり、その後R&Bなのか、トリップホップか、メロウな方面に着地。あれはいったいどういうレコードなんだろう? まだまだ全然音楽のことを知らないな……と最後まで打ちのめされっぱなしだった。テクノを求めるクラバーはマルチ・ジャンル極まる内容に引いていたかもしれないけれど、UKクラブ・カルチャーの懐の深さや多国籍的なセレクトに本当に感動した。すばらしいギグだった──人生最良とすら言えるほどの。

 ちなみに、ドラムのあとにはオーロラ・ハラルのロング・セットも控えていたのだけれど……彼のDJセットのあまりの内容に憔悴し、ふらふらと4Fラウンジへ移動。YELLOWHURU氏の陶酔感あふれる選曲に耳を傾けながらとりとめのない話に終始、映画館を出たあとに立ち寄る喫茶店のような過ごしかたでピークタイム後を棒に振ってしまった。ただ、ドラムによるフロアへのサジェストを引き継ぐことなく、ヌルっと四つ打ちにシフトして切り替わる流れには、目に見えない断絶を感じてしまい乗り切れず。プロパーなテクノの美学に100%乗り切れない自分の雑食さ、邪道さ、傍流趣味を改めて強く再確認。しかし誇らしい。「まあ、自分が好きなのはこれなんでね」という気持ちがコンプレックスや負い目なく自然と湧き上がるような、自由闊達な彼のDJセットに本当に勇気づけられた。がんばろう。

 夜明け前、Hue Rayたちに挨拶をしてWOMBを出ると、眼前には雪化粧の円山町が広がっていた。嘘みたいな静けさ。翌日の衆院選の暗澹たる結果を直視する前に、綺麗な景色を目に焼き付けて帰れたことがせめてもの救いか。忘れられない一夜となりました。

xiexie - ele-king

 xiexieを知らない人に紹介するのなら、まずアジアにおけるインディ・ロック・シーンの豊かな土壌について触れないわけにはいかない。

 台湾の落日飛車(Sunset Rollercoaster)、EVERFOR、打倒三明治(sandwich fail)などをはじめとして、東〜東南アジアの国と地域にはドリーム・ポップ、インディ・ポップ、AOR、チル、メロウ、浮遊感といった言葉で説明されるバンドが点在している。ここ10余年で顕在化した、非常に広い範囲に緩く共有されたひとつのシーンといえる。支配的というほどのシェアではないにせよ、アジアにはこうした音楽性のバンドを好意的に受け入れるマーケットが確かに存在しているのだ。

 2024年、台湾の野外フェスに出演したxiexieは、ネームヴァリューでも奇をてらったパフォーマンスでもなく、ただただ鳴らしている音楽のよさだけで存在を証明してみせた。
 ステージ間を移動中の観客たちが、立ち寄る予定のなかったステージの方角から漏れ聴こえるxiexieの演奏に足を止める。ひとりまたひとりと惹き寄せられ、xiexieは最終的に超満員の観客から喝采を浴びた。ロック・バンドのマジックを信じている人なら誰もが夢見る光景を実現させてしまったバンド、それがxiexieだ。

 その要因として、xiexieの淡く揺蕩うようなサウンドが、先述したいわゆる“ドリーミー”な音楽性を希求する土壌に“刺さった”ことが挙げられる。それは間違いないのだが、あくまで結果的に似たものを解釈しうるだけであって、彼らのオリジンはドリーム・ポップとは別のところにある。

 バンドの発起人である飛田興一は、xiexie結成当初のリファレンスとしてビッグ・シーフやリアル・エステートをはじめとした2010年代のUSインディを挙げている。
 それを踏まえてxiexieの音楽を聴けばぐっとピントが合うはずだ。ドリーム・ポップやAORからの影響よりも、まさしくビッグ・シーフやリアル・エステート由来のフォーキーなフレージングが土台に感じられるだろう。
 今回のリリースでもそうした部分は通底して感じられる。特に『ocean』のリフには当時のUSインディを想起させるノスタルジーや少しばかりの妖しさが匂い立つ。

 また、USインディ的な土台を包み込むようにかかった強めのリヴァーブがリファレンス2バンドとのわかりやすい相違点と言え、またこれこそが結果論として“ドリーミー”という見方に繋がったと推測できる。
 ただ、xiexieは“ドリーミー”をやろうとしてやっているわけではないのだ。どちらかといえばxiexieのリヴァーブは“サイケデリア”と形容すべき系譜のものでは、と思うところもある。
 今作でも1曲目の“sleeping in my car”から一貫してリヴァーブが前面に出ている。特にヴォーカルとギターへのかけ具合がちょうど同程度に感じられ、ひとかたまりの音像として向かってくる印象。リヴァーブは霧のようとかスモーキーとか喩えられることが多いが、今作の場合はしっかりと角が立つクリームのような厚みとふくよかさが感じられる。そうした音作りは、『zzz』というタイトル、ならびに「無意識をめぐるひとつの旅」という今作のテーマにぴったりだ。ボリュームのある羽毛布団に包まれて微睡むような充足感を想起させる。

 もうひとつ、xiexieの音楽性を形作る要素として見逃せない点がある。メンバーそれぞれがジャズ、ファンク、ボサノヴァ、アシッド・ジャズなど、横ノリの音楽を経てxiexieに参加している、その経歴だ。つまり“踊らせようと思えば踊らせられる”人たちなのだということ。
 飛田曰く自分にできるブラック・ミュージックはxiexieの前のバンドでやり尽くしたとのことだが、xiexieにもそうした“踊れる”フィーリングは着実に滲み出ている。
 今作で言えば“sleeping in my car”ではシェイカー(あるいはタンバリンか)、“ocean”のハンドパーカッションなど、横に揺れるリズムが強調されるトラックが印象的。
 発見だったのが、いわゆる“ダンス・ミュージック”ほどキレのいいリズムを聴かせるものではなく、ファジーに揺れる音像で自然と体を揺すらせるくらいの今作のような音楽のほうが、踊り慣れていないオーディエンスの多いこの国では結果的により“踊れる”のではないか、ということ。この点は、本人たちがかつてインタヴューで語った“USインディ的な音楽性は十分にオーヴァーグラウンドで通用するはずだ”という信念にも通ずる。xiexieの音楽はアジアの国と地域で支持されるにふさわしい価値を確かに持っているが、日本国内でこそより多くの大衆に評価される可能性を秘めている。

 ここ6〜7年の話だろうか、日本ではまだファンダムを確立しきっていなかったり、メジャーで活動した時期を経てインディーズに出戻ったり、なにせ現状あまり大きな箱で公演を打っていないバンドが、中国に招かれるとおよそShibuya WWW〜Zeppクラスの箱を回るツアーをソールドアウトにして帰ってくる、といった現象が起こっていた。過去形になったのはつい最近だ。高市首相の発言に端を発する日中間の緊張状態によって、こうした中国ツアーの動きはとんと鳴りを潜めてしまった。
 バンドにとって今後の活動を経験値の面でも金銭面でも下支えする貴重な機会が、社会情勢次第で突如として立ち消えてしまう。特に日本国外のアジアの国と地域で支持されているxiexieはこうした影響を大きく受ける可能性がある。そうした時節柄もあって、淡く揺蕩う『zzz』の音像を浴びながら、同じく淡く揺蕩う不確かな存在である現代のインディーズ音楽、またロック・バンドという文化そのものについて思いを馳せずにはいられなかった。音楽は、アートは、ぼうっとしているとある日突然もう二度と味わえなくなる。淡く揺蕩うものを味わうオーディエンスのひとりとして、その不確かさに誠実に向き合っていたいと思う。

キングギドラ - ele-king

 Kダブシャイン、Zeebra、DJ OASISによる日本語ラップ界の伝説的グループ・キングギドラによるデビュー・アルバムの特別盤『空からの力:30周年記念エディション』のインストゥルメンタル・ヴァージョンが、LP盤で4月25日に発売決定。2枚組・完全限定プレスの特別仕様となる。30周年記念盤にはトム・コインの手によりアップデートされたリマスタリング・ヴァージョンとなっており、そのインスト盤はファン垂涎の内容といえるだろう。

 また、『空からの力』発表の翌年となる1996年にリリースされたEP『影』も、30周年を祝して初のアナログ化が決定。『空からの力:30周年記念エディション - Instrumental Versions』との同時発売となる。お見逃しなく。

Artist: キングギドラ
Title: 空からの力:30周年記念エディション - Instrumental Versions
Label: P-VINE, Inc.
Format: LP (2枚組仕様/完全限定プレス)
Release Date: 2026.4.25
Number:PLP-8327/8
Price: ¥6,600
Pre-Order: https://anywherestore.p-vine.jp/products/plp-8327-8

<Tracklist>

SIDE A
1. 未確認飛行物体接近中 (急接近 Mix) (Instrumental)
2. 見まわそう (Instrumental)
3. 大掃除 (Instrumental)
4. コードナンバー 0117 (Instrumental)

SIDE B
1. フリースタイル・ダンジョン (Instrumental)
2. 空からの力 Part.2 (Instrumental)
3. 星の死阻止 (Instrumental)

SIDE C
1. スタア誕生 (Instrumental)
2. 行方不明 (Instrumental)
3. 真実の弾丸 (Instrumental)

SIDE D
1. 空からの力 (Mind Funk Remix) (Instrumental)
2. 行方不明 (DJ Kensei's Smooth Mix) (Instrumental)
3. 真実の弾丸 (Flute Mix) (Instrumental)

Artist: キングギドラ
Title:
Label: P-VINE, Inc.
Format: LP (帯付き仕様/完全限定プレス)
Release Date: 2026.4.25
Number: PLP-8326
Price: ¥4,950
Pre-Order: https://anywherestore.p-vine.jp/products/PLP-8326

<Tracklist>

SIDE A
1. 行方不明 (DJ Kensei's Smooth Mix)
2. 重要参考人が見た犯行現場
3. 真実の弾丸 (Flute Mix)

SIDE B
1. 地獄絵図 (AOZの視点)
2. 空からの力 (Mind Funk Remix)

Visible Cloaks - ele-king

 スペンサー・ドーランおよびライアン・カーライルから成るオレゴンはポートランドのデュオ、ヴィジブル・クロークス。彼らがひさびさのオリジナル・アルバムをリリースする。時代の流れを決定づけたともいえる前作『Reassemblage』が2017年だから、およそ9年ぶりのことだ(2019年には尾島由郎&柴野さつきとの共作もあり。彼らは今回の新作にもフィーチャーされている)。現在、モーション・グラフィックスが参加した先行シングルが公開中。アルバムの全貌を楽しみにしておこう。

Visible Cloaksがニュー・アルバム『Paradessence』をRVNG Intl.から5/22にリリース決定。Motion Graphicsをフィーチャーしたファースト・シングル「Disque」を公開。

Spencer DoranとRyan Carlileによるエレクトロニック・デュオ、Visible Cloaksがニュー・アルバム『Paradessence』をRVNG Intl.から5/22にリリースすることが決定。ファースト・シングルとして、Motion Graphicsをフィーチャーした「Disque」をMVと共に公開。

Visible Cloaksの3作目のフルアルバム『Paradessence』は、「出現」と「幻惑」をめぐる作品。全14曲は、うっすらと発光する夜の背景の上で、揺らぎ、うねり、きらめきながら移り変わっていく。そこは、自然界をまばらに、しかし極端にリアルに再現した表象によって形作られた、巨大な洞窟のような空間。アレンジは同時に壮大でありながら脆く、これまでの作品の反転であり総決算でもあり、そして彼らがこれまで作ってきた中でも最も冒険的なもののひとつでもある。

2014年にCloaksからVisible Cloaksへと変化して以来、Spencer DoranとRyan Carlileは、相反する概念の複雑なマトリクスを描き出してきた。オーガニックと人工、偶然と意図、本物と複製。2017年には、高い評価を受け、今やアイコニックとも言える2ndアルバム『Reassemblage』を発表。精緻に作り込まれたテクスチャー、開花し朽ちていくようなアレンジ、そして世界中の楽器が存在する想像上の世界を、豊潤に伝送する作品だった。続いて2019年には、アンビエントの先駆者Yoshio OjimaとSatsuki Shibanoとのコラボレーション・アルバム『serenitatem』をリリース。さらにこの2作の間に、Doranはグラミー賞にノミネートされたコンピレーション『Kankyō Ongaku: Japanese Ambient, Environmental & New Age Music 1980-1990』を編纂し、近年では瞑想的な探索ゲーム『SEASON: A letter to the future』のサウンドトラックも発表している。

新作タイトルは、作家Alex Shakarが「paradoxical(逆説的)」と「essence(本質)」を組み合わせた風刺的な造語から採られたもの。Visible Cloaksが抱え続けてきた相反概念を直接的に映し出している。消費財における「paradessence」とは、その欲望を生み出す「分裂した核(schismatic core)」のこと(Shakarの例では、コーヒーが“同時にリラックスさせ、かつ刺激もする”からこそ欲される、という具合)。『Paradessence』が見せる絶妙な均衡は、21世紀の生活が同じ緊張関係によって組み替えられていく中で、それらの要素をより切迫したものとして提示する。それは、変化し続ける形態によって、現在の「夢の現実」を抽象的に喚起するだけでなく、感情の襞まで繊細に織り込み、ときに恩寵の瞬間へと立ち上がる想像上の空間を築くエレクトロニック・ミュージックでもある。

『Paradessence』からの先行シングル「Disque」(Motion Graphics参加)は、次第に美しさを増していく一連の“吐息”のような作品。音の紡錘が枝分かれするように立ち上がり、広がりながらより多くの表面をつかみ取り、密度をわずかに増していく。上昇していく音やピアノのラインが、縫合の糸のように要所で曲をつなぎ合わせる。アレンジが静けさへと戻るたびに、それが再び立ち上がってくるのかどうかという緊張を感じる。やがて、それは立ち上がらない。残されるのは、長く細いリボンのように引き伸ばされたピアノの残滓だけ。

「Visible Cloaksとしての制作は、常に“トップダウン”よりも“ボトムアップ”だった」とDoranは言う。「完成した曲の明確なビジョンが最初からあって、それをスタジオでできるだけ忠実に実現しようとするのではなく、アイデアが立ち現れるための条件をいくつも設定する、という感じ。『Disque』のような曲は、そうした考え方を念頭に置いて構想する。長年の音楽実践の中で培ってきたさまざまな確率的(stochastic)手法を使い、最初のソースから段階的に抽象が展開していく連なりを作っていくんだ。」

「Disque」のビデオは、英国拠点のフォトグラメトリストGrade Eternaとの共同制作。ロンドンにある名もなき温室の「点群(point cloud)」を進み、歪ませ、ねじ曲げながら描かれる。3Dスキャンのツールで物理環境を空間上の点の地図へと変換し、それを使って空間の仮想モデルを生成。そのモデルをゲームエンジン内で可塑的(自在に変形可能)に扱っている。

今週Visible Cloaksは、「音・光・空間のための没入型キュレーション・プラットフォーム」を掲げるイベントシリーズ「Age of Reflections」の一環として、ポートランドとシアトルで2公演を行う。詳細は「Disque」ビデオのすぐ下に掲載されている。

Visible Cloaks new album “Paradessence” out on May 22, 2026.

Artist: Visible Cloaks
Title: Paradessence

Label: PLANCHA / RVNG Intl.
Cat#: ARTPL-254
Format: CD / Digital
Release Date: 2026.05.22
Price(CD): 2,200 yen + tax

※CDボーナス・トラック1曲収録
※解説付き予定

『Paradessence』において沈黙は重要な登場人物。音を彫刻する行為の中に感じられるだけでなく、あらゆるものに及ぼす圧力、そしてそこから現れるものにおいても感じられる。グループは建築理論家Christopher Alexanderの「ポジティブ・スペース(positive space)」という概念に影響を受けた。物体そのものを構築するのと同じくらいの配慮を、物体の周囲にある“空白(void)”の形にも向けられる、という考え方だ。ここでは、音が自らの沈黙を伴って運ばれていく様子が聴こえる。存在と非存在のあいだを振動し、微生物のようにライフサイクルをたどっていく。

『Paradessence』を下支えする楽器群には共同体性がある。風が葉の群れの上を漂い、動きが消えたことで空気が見えるようになる時のように、それらは群れのように動く。複数の種が同じ曲の中で共存し、数分のあいだに、せり出し、引っ込み、変容していく。「環境として水平に機能する作品を作るのではなく」とDoranは言う。「空間の中で変化していく“生きた素材”として捉え、絶えず流動しているものとして概念化したかった。」曲の形式はアンビエンスから離れ、純粋な抽象へと舵を切る。ユートピアニズムが周縁に漂う。想像上の未来との関係は、ナイーブでも、シニカルでも、ノスタルジックでもない。

Visible Cloaksが時間をかけて築いてきた世界は、しばしばコラボレーターによって物質的なかたちを与えられてきた。『Paradessence』では、その馴染み深い顔ぶれが再び戻ってくる。Motion Graphics(Joe Williams)は「合成木管(synthetic woodwinds)」で登場し、アルバムの共同ミックスも担当。彼特有の艶やかな質感で輪郭を整えている。連結した2曲「Shapes」と「Thinking」は、環境音楽の革新者Yoshio OjimaとSatsuki Shibanoとともに制作された。彼らはデュオが参加した世代横断のFRKWYSコラボ『serenitatem』でも共作した相手だ。後者の「Thinking」では、Ojimaが書いたスポークン・テキストが用いられ、Shibanoが日本語で、そして作曲家で長年の友人でもあるFélicia Atkinsonがフランス語で朗読している。

Doranの「不確定(indeterminate)な室内楽」プロジェクトComponium Ensemble(自動演奏するソフトウェア楽器群)が、「System」の基盤を提供する。それはPessoa的な異名性(heteronymity)の瞬間でもある。さらにアルバムには、ルーマニア出身の作曲家・ヴァイオリニストIoana Șelaruも参加し、「Intarsia」で声と弦の演奏を提供している。Doranはこのコラボを「幻影的な存在感(illusionary presence)の練習」と呼び、「彼女の実際の楽器演奏と仮想楽器を並置し、合成ストリングスと現実に存在するストリングスの境界をぼかす」というアイデアから共同で発展させたと語る。

「Intarsia」におけるȘelaruの緊迫したパフォーマンスは、『Paradessence』のドラマティックな核をはっきりと示す。それは切迫した彫刻的な仕事であり、ひとつの楽器と人間の声が、合成的な成長の海によって変調されていく。Doranは「この現実と仮想のあいだの滑り(slippage)は、まったく別の何か、奇妙で言葉にしがたい何かを捉えている」と説明する。「それは、オンラインでも現実の生活でも、デジタル・モダニティの中で生きることに固有の要素なんだ。」

Track List:

1. Apsis
2. Skylight
3. Disque (ft. Motion Graphics)
4. Balloon
5. Slippage
6. Telescoping
7. Shapes (ft. Yoshio Ojima and Satsuki Shibano)
8. Thinking (ft. Félicia Atkinson, Yoshio Ojima and Satsuki Shibano)
9. Zinna
10. Swirl
11. Steel
12. Intarsia (ft. Ioana Șelaru)
13. Capgras
14. System (ft. Componium Ensemble)
15. Hycean (CD Bonus Track: not Japan-only)

Visible Cloaks are Ryan Carlile and Spencer Doran

Mixed by Joe Williams and Spencer Doran at Gary’s Electric Studio and Dream Box Office​, except “Skylight,” “Shapes,” “Thinking,” and “Intarsia,” mixed by Spencer Doran at Secret Society

Joe Williams – Virtual woodwinds on “Disque”
Oona Doran – Balloon on “Balloon”
Félicia Atkinson – Voice (French) on “Thinking”
Yoshio Ojima – Processing, lyrics and additional arrangements on “Shapes” and “Thinking”
Satisuki Shibano – Piano and voice (Japanese) on “Shapes” and “Thinking”
Ioana Șelaru – Violin and voice on “Intarsia”

Ultrasonic insect sounds on “Telescoping” recorded in Aulus-les-bains, France in 2023

Mastered by Heba Kadry (Brooklyn, NY)
Cut by Josh Bonati for Bonati Mastering (Brooklyn, NY)
Original artwork by David Lisser
Design by WWFG

Visible Cloaks‘s new single “Disque (ft. Motion Graphics)” out now

Artist: Visible Cloaks
Title: Disque (ft. Motion Graphics)
Label: PLANCHA / RVNG Intl.
Format: Digital Single
Buy / Listen: https://orcd.co/jbgxnr8

Visible Cloaks – Disque (ft. Motion Graphics) (Official Video)
YouTube: https://www.youtube.com/watch?v=mzXMkCXfGoU

Directed by Grade Eterna and Spencer Doran
VFX and 3D Scanning by Grade Eterna

Visible Cloaks:

Visible Cloaksは、Spencer DoranとRyan Carlileによる米国ポートランド拠点のエレクトロニック・デュオ。プロジェクトは2010年にDoranのソロとして始動し、2014年にCarlileが合流してデュオとしてのVisible Cloaksへと発展した。セルフ・タイトルのデビュー作を経て、ニューヨークの名門RVNG Intl.へと契約。代表作『Reassemblage』は2017年2月にリリースされ、DoranとCarlileの共同プロデュースによって、ポストYMO以降の電子音楽的冒険に敬意を払いながらも、その系譜をなぞるのではなく別の方向へと踏み出した作品として位置づけられる。80年代半ばから90年代初頭にかけての日本やイタリアのエレクトロニック・ポップ/アンビエントが切り拓いた道筋から敢えて逸れ、合成的な“種”から育った樹木が深い音の樹冠をつくる森の中に、自分たちの陣地を築いていくような独自の音響世界を確立した。アルバム収録曲「Valve」にはdip in the poolの甲田益也子が参加し、「Terrazzo」にはMotion Graphicsが参加するなど、客演を含めて作品世界を拡張している点も特徴として刻まれている。サウンド面では、Doranが日本のニューエイジ/アンビエントや電子音楽への関心を背景に制作してきたことが各所で言及され、Yellow Magic Orchestraや坂本龍一の名が影響源として挙げられることもある。また制作プロセスについては、Doran本人がAbletonのインタビューで、システム的な発想にもとづくアプローチや音作りの方法論を語っている。2017年後半にはミニアルバム『Lex』を同年12月にリリースし、複数の方言やアクセントを連鎖させて翻訳ソフトに通すことで生成された“異星の言語”を音素材として取り込み、彫刻的なアレンジの網目に、意味へ回収されない静謐な発声を織り込んだコンセプト作品として提示した。ビジュアル面でも作品世界の統一が重視され、『Reassemblage』のアートワークや『Lex』期の短編映像でBrenna Murphyが関与している。さらに2019年には、尾島由郎と柴野さつきとの共作『serenitatem(FRKWYS Vol. 15)』を発表。初の日本ツアー終盤に両者と出会い、ヨーロッパ・ツアー中に録音した加工音のスケッチを尾島へ送り、加筆・編集された音を再び折り込みながらスタジオ・セッションへ持ち込むという往復運動の中で制作が進められた。そこで生まれた作品は、人間と機械の境界が縫い目としてほとんど見えないほど滑らかに結合されつつも、その気配が至るところで示唆される鋭利なレコードとして結実している。Visible Cloaksは、特定地域の音楽史、とりわけ日本の環境音楽/シンセサイザー音楽への参照を、単なる引用ではなく制作手法そのものの設計へと転換し、翻訳・変換・生成といった方法論を軸に、アルバムごとにコンセプトを更新しながら、RVNGを軸に音と視覚、コラボレーションを統合した作品群を展開してきた。

HELP(2) - ele-king

 1995年にブライアン・イーノ主導のもと誕生することとなった『Help』は、ボスニア戦争に巻きこまれた子どもたちを支援するためのチャリティ・アルバムだった。それから30年。どうやら人類はより悪い方向へと進んでいるようで、戦争の影響を受けている子どもたちの割合は当時の倍になっているという。かくしてここに『Help(2)』が誕生することとなった。
 当時も参加していたデーモン・アルバーンやグレアム・コクソン、あるいはジョニー・マー、デペッシュ・モードパルプベス・ギボンズベックといったヴェテランたちから、ヤング・ファーザーズキング・クルールエズラ・コレクティヴら2010年代のポップ・ミュージックを牽引してきた面々、さらにはブラック・カントリー・ニュー・ロードビッグ・シーフにと、そうそうたる面々が集結している。収益はすべて War Child UK に寄付されるとのこと。

HELP(2)
世界中の紛争で影響を受ける子どもたちへ
錚々たるアーティストが集結したチャリティ・アルバムが誕生

3月6日(金)のアルバム『HELP(2)』発売に先駆けて
デーモン・アルバーン x グリアン・チャッテン x ケイ・テンペスト
豪華コラボレーションが生んだ 2ndシングル「Flags」がリリース!



photo by Adama Jalloh

本作チャリティ・アルバム発表と同時に大きな反響を生んだ、アークティック・モンキーズによる約4年ぶりの新曲となった先行シングル「Opening Night」の余韻の中、アルバム『HELP(2)』発売に先駆けた 2ndシングルとなる「Flags」がヴィジュアライザーと共に公開された。本曲はアルバムに収録される楽曲の中でも特に象徴的なコラボレーション作品であり、デーモン・アルバーン(Blur/Gorillaz)、グリアン・チャッテン(Fontaines D.C.)、ケイ・テンペストによって制作されている。

本楽曲は内なる強さと他者との連帯の中で見出される “レジリエンス” を象徴した、力強いメッセージを放っている。印象的なピアノのモチーフに導かれながら、豪華なアーティスト陣が集結。ジョニー・マー、デイヴ・オクム(The Invisible)、エイドリアン・アトリー(Portishead)、セイ・アデレカン(Gorillaz)、フェミ・コレオソ(Ezra Collective)、そして43人編成の児童合唱団が本曲に参加している。

さらに、もうひとつの豪華オールスターによるコーラスが加わり、楽曲にさらなる厚みと広がりをもたらしている。 そのメンバーには、ジョニー・マーをはじめ、ジャーヴィス・コッカー(Pulp)、カール・バラー(The Libertines)、デクラン・マッケンナ、マリカ・ハックマン、ローザ・ウォルトン(Let’s Eat Grandma)、ナディア・カデックらに加え、イングリッシュ・ティーチャーとブラック・カントリー・ニュー・ロードがバンドとして名を連ねている。

Damon Albarn, Grian Chatten & Kae Tempest - Flags (Visualiser)
試聴リンク >>> https://warchildrecs.ffm.to/flags
YouTube >>> https://www.youtube.com/watch?v=EUdF5cPF8mk

『HELP(2)』は、1995年の記念碑的作品『HELP』に着想を得た新たなコラボレーション・アルバムであり、世界中の紛争の影響を受けた子どもたちへ緊急支援、教育、専門的なメンタルヘルス支援、保護を提供する団体であるWar Childの重要な活動を支援するため、国境を越えて音楽愛好家を巻き込むことを目的としている。この新作アルバム『HELP(2)』もまた、今日の世界的な人道状況の緊急性を訴えかけている。

2025年11月の驚異的で濃密な1週間を中心に、著名プロデューサーのジェームス・フォード指揮のもとレコーディングされた本作は、オリジナル作品と同様にAbbey Road Studiosでの即興的なレコーディング・プロセスと共に多くのコラボレーションが実現した。

参加アーティスト(アルファベット順)
アンナ・カルヴィ (Anna Calvi)
アークティック・モンキーズ (Arctic Monkeys)
アーロ・パークス (Arlo Parks)
アルージ・アフタブ (Arooj Aftab)
バット・フォー・ラッシーズ (Bat for Lashes)
ビーバドゥービー (Beabadoobee)
ベック (Beck)
ベス・ギボンズ (Beth Gibbons)
ビッグ・シーフ (Big Thief)
ブラック・カントリー・ニュー・ロード (Black Country, New Road)
キャメロン・ウィンター (Cameron Winter)
デーモン・アルバーン (Damon Albarn)
デペッシュ・モード (Depeche Mode)
ダヴ・エリス (Dave Ellis)
エリー・ロウゼル (Ellie Rowsell)
イングリッシュ・ティーチャー (English Teacher)
エズラ・コレクティヴ (Ezra Collective)
フォールズ (Foals)
フォンテインズ D.C. (Fontaines D.C.)
グレアム・コクソン (Graham Coxon)
グリーンティー・ペン (Greentea Peng)
グリアン・チャッテン (Grian Chatten)
ケイ・テンペスト (Kae Tempest)
キング・クルール (King Krule)
ニルファー・ヤンヤ (Nilufer Yanya)
オリヴィア・ロドリゴ (Olivia Rodrigo)
パルプ (Pulp)
サンファ (Sampha)
ザ・ラスト・ディナー・パーティー (The Last Dinner Party)
ウェット・レッグ (Wet Leg)
ヤング・ファーザーズ (Young Fathers)

ブライアン・イーノ主導のもと、1995年にたった1日で録音されたオリジナル・アルバム『HELP』は120万ポンド以上を調達し、ボスニア紛争に巻き込まれた数千人の子どもたちへの緊急支援を可能にした。 ところが、紛争の影響を受けていた子どもが世界全体の約10%だった『HELP』のリリース当時から現在までにその割合はほぼ倍増し、約5人に1人の子ども(実に5億2,000万人)が紛争の影響下に置かれている。これは第二次世界大戦以降、かつてない規模であり、紛争が激化し資金削減の影響も深刻化するなかで、War Childの活動もこれまで以上に切迫している。オリジナル・アルバムが体現していた「集団的行動」の精神が現代のアーティストたちへ引き継がれる必要性が、極めて重要な意味を持つ。

どんな子どもも、戦争の一部であってはならない。決して。

War Child によるチャリティ・アルバム『HELP(2)』は、2CD、2LP、デジタル/ストリーミングで2026年3月6日(金)に世界同時リリース。国内流通盤2CDには解説書が付属する。なお、本アルバムの収益はすべて War Child UK に寄付され、世界中の紛争地域で暮らす子どもたちの保護、教育、そして権利を守る活動に充てられる。

label : War Child Records / Beat Records
artist : V.A.
title : HELP(2)
release date: 2026.03.06
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15604

・国内流通仕様盤2CD(解説書封入)
・輸入盤2CD
・輸入盤2LP

Tracklist
1. アークティック・モンキーズ - 「Opening Night」
2. デーモン・アルバーン、グリアン・チャッテン&ケイ・テンペスト - 「Flags」
3. ブラック・カントリー・ニュー・ロード - 「Strangers」
4. ザ・ラスト・ディナー・パーティー - 「Let’s Do It Again!」
5. ベス・ギボンズ - 「Sunday Morning」
6. アルージ・アフタブ&ベック - 「Lilac Wine」
7. キング・クルール - 「The 343 Loop」
8. デペッシュ・モード - 「Universal Soldier」
9. エズラ・コレクティヴ&グリーンティー・ペン - 「Helicopters」
10. アーロ・パークス - 「Nothing I Could Hide」
11. イングリッシュ・ティーチャー&グレアム・コクソン - 「Parasite」
12. ビーバドゥービー - 「Say Yes」
13. ビッグ・シーフ - 「Relive, Redie」
14. フォンテインズ D.C. - 「Black Boys on Mopeds」
15. キャメロン・ウィンター - 「Warning」
16. ヤング・ファーザーズ - 「Don’t Fight the Young」
17. パルプ - 「Begging for Change」
18. サンファ - 「Naboo」
19. ウェット・レッグ - 「Obvious」
20. フォールズ - 「When the War Is Finally Done」
21. バット・フォー・ラッシーズ - 「Carried My Girl」
22. アンナ・カルヴィ、エリー・ロウゼル、ニルファー・ヤンヤ&ダヴ・エリス -「Sunday Light」
23. オリヴィア・ロドリゴ - 「The Book of Love」

輸入盤2CD

輸入盤2LP

War Child UKについて
5つの資金調達拠点と14のプログラム・オフィスから成るグローバルな財団、War Child Allianceの一員であるWar Child UKは、戦争の影響を受けるすべての子どもに安全な未来を届けるという、ただひとつの目標のもとに活動している。War Childはパートナー団体とともに、アフリカ、アジア、中東、ラテンアメリカを含む世界14か国で、欠かすことのできない支援活動を展開し、30年にわたる経験と実証済みの手法を活かし、紛争から可能な限り迅速に子どもたちへ支援を届け、メディアの注目が去ったあとも長く寄り添いながら、回復までを支え続けている。

heykazma - ele-king

 ミレニアル世代、Z世代が音楽文化を一変させていったのがここ十数年のこと。次はいよいよ、10年代生まれのアルファ世代が華々しいデビューを飾る時代を迎えたようだ。

 ele-kingでもレギュラー・コラム(https://www.ele-king.net/columns/regulars/heykazma/)を連載中の2010年生まれ、アルファ世代の新星DJ・ヘイカズマがデビューEP『15』を〈U/M/A/A〉からリリース。以下、作品詳細と、北村蕗、食品まつり、山辺圭司(LOS APSON?)などによる関係者コメント。期待の新星の今後に注目だ。

Artist: heykazma
Title: 15
Label: U/M/A/A
Format: Digital
Release Date: 2026.2.2
Buy / Stream : https://lnk.to/heykazma_15

Tracklist:
1. 15
2. Pre Pariiiiiiiiiiiiiiin
3. Pariiiiiiiiiiiiiiin
4. Cat Power
5. Acid Noise

Credit:
Maiya Toyama(illiomote) - Bass(Track 1)
Case Wang - Mix&Mastering
ALi(anttkc)- MV Director
Yuki Kawamura - Produce

写真:飯田エリカ
デザイン:Manami Masuda
hair&make:hitomi andoh
Costume cooperation:miku moritake, Chiiika., chichiiiiichichi, ALIGHT
from 「Eternal Girl Meets Mermaid」


「heykazmaと書いて未来と読む」

3歳で音楽やカルチャーに開眼、幼少期より自発的に親同伴のもと震災や風営法摘発以降に増加した未成年入場可のデイイベントやパーティに通い詰め、15歳で音楽系の高校入学と共に仙台から上京。その後は学業の傍ら、都内を中心に東北各地や北海道までジャンルの枠を飛び越えて、カルチャー愛に溢れる現場でのDJを展開!エレクトロニックミュージックの中でもテクノを中心に、ノイズからフットワークまでをミックスアップする自由な感性と、類まれなファッションセンスが、既に各地のリスナーや関係者の間で話題を呼んでいる。

2026年2月に16歳の誕生日を迎えるZ世代の次「アルファ世代の新星DJ」が、満を持して5曲入りデビューEPを配信リリース。エクスペリメンタルからジュークまで豊富な音楽経験値を活かした一筋縄ではいかないオリジナルのダンスミュージック!自身によるポエムコアやラップをフィーチャーした新しい世代の幕開けを宣言するかのような「15」に始まり、DTMを覚えたての中学生の頃に作った楽曲を再構築した「Cat Power」では幼少期より共に育った愛猫への想いをビートに乗せて。アーティストのシシヤマザキのお絵かき教室に参加していた経緯から、アトリエを訪ねる際に立ち寄った益子焼の工房での皿が割れる音の鮮やかさに着眼し、15年間の思い出が弾ける瞬間の音に準えた「Pariiiiiiiiiiiiiiin」、目を瞑って聴けばドープすぎて作者の年齢とか関係なくなるほどに衝撃的なノイズトラック「Acid Noise」など、未来への希望とディストピアの存在が混在する2025年らしい作品に仕上がっている。

タイトルの「15 EP」とは、heykazma自身が育ってきた15年を総括した音楽たちを此処に刻むという意味を込めて付けられた。すべてのトラックは自身で作成し、ミックスはレーベルメイトであるWang OneのCase Wang氏が担当。荒削りながらも確固たる生命力を感じる作品たちは、先ず先入観を取っ払って一聴をおすすめする。

コメント:

EPリリースおめでとう!!
DJ、パーティーオーガナイザー、コラムニストなど、様々な視点からカルチャーを俯瞰している。その中で自由な泳ぎ方を見せている。決して誰かを強制したり、価値観を押しつけているわけではなく、私はあくまでこうあり続けるという一つの個として音楽を表現しているように感じる。その異色でありながら、色彩を選び抜く力というものは、オーガナイザーとしても培った、出会うことを知らない引力を、引き合わせる力を持ち合わせているからこそ生まれてくるものだと思う。 これからまだ見ぬ化学反応を起こしてくれることでしょう。
それを目撃し続けたいです。(北村蕗)
ビートのバリエーションの豊富さ、サウンドもトライバル感ありつつ、フィールドレコーディング的なサウンドも織り交ぜて音響的にもめちゃくちゃヤバいepです (食品まつり a.k.a FOODMAN)
ここにエレクトロニック・ミュージック界の新星、耳を澄ませ! (野田努 / ele-king 編集長)
最初の輝きはいつまでも色あせない――期待の原石がついに転がりはじめた (小林拓音 / ele-king 編集部)
衝撃の15歳!!! 1st EPリリースおめでとうございます!!!
この年齢で、ここまで自分の世界観と音を持っているなんて、可能性しか感じません!!!
これからどんな景色を見せてくれるのか、どんな進化をしていくのか、今から楽しみすぎます!!!
心からのリスペクトと応援を込めて。🔥🎶
(もりたみどり / WAIFU)
ついにこの時が来た!!!hey様の、踊りながら飛び出してくるような立体的な躍動エネルギーを、世界が、浴びたがっている!!!!
(ShiShi Yamazaki)
高円寺のあれこれレコードショップLOS APSON?周辺にて勃興するイベント、DDMメンバーとしても登場してもらっている高一エクスペリメンタル妖怪系クリエイター!?heykazmaが、新しいEPをリリースするというので聴いてみたっ!!! 現代のテンポ感で刻まれる鳴りの良いフレッシュダンサブルサウンドと、ライトなコラージュ感覚で、ポジティブなバイブスを無限に放っています!
(山辺圭司 / LOS APSON?)
heyちゃんの楽曲でベースを弾きました!
オファーをもらった時にえ、ベース!?
となったんですがheykazmaの頼み断るわけがない!みんなを新しい世界に引き込んでしまうようなheyちゃんにいつもパワーをもらっているし、こうした形で大きなスタートに関われて嬉しいです。ありがとう。
未来でしかない!EPリリース本当におめでとう。
(Maiya Toyama / illiomote)
素晴らしいスタートライン!ポップなフットワークビートも、エクスペリメンタルなノイズも、heykazmaの血肉となって通過した痕跡を残し、めちゃくちゃエネルギッシュ!heykazmaが本格的にプロデューサーとして活動を始めたことは、これからのテクノの希望でしかない˚. ✦
(壱タカシ )

interview with Autechre - ele-king

 真っ暗闇が最高の照明であるという逆説は、何回体験しても心地よいものだ。贅沢な闇に包まれながら、オウテカのマシン・ミュージックにおけるその驚異的な乱雑さ、マキシマリズム的特性には、懐古的な匂いはなく、たしかに現代的かもしれない、と思った。これは孤立したサウンドではないのだ。ソフィーやイグルーゴースト、フットワークやジャージー・クラブといった今世紀のエレクトロニック・ミュージックとどこかで共鳴しているモノを感じたし、その解放感がぼくの考え方を拡張しくれたこともわかっている。長いあいだオウテカのような音楽は、禁欲的で、男性的で、パートナーがいないときに男がひとりで没入する、肉体不在の前衛音楽だと考えられてきたとしたら……しかしながらいまぼくが挙げた例には、多かれ少なかれエロティシズムがある。時代は変わっているのだ。会場には多くの男性以外の姿があった。
 今回の取材、場所はZepp DiverCityの楽屋、ときは2月4日の夕方、ライヴの本番前に時間をもらった。楽屋に入ってお互い挨拶しながら、そして質問に入るわけだが、何度も取材しているので、はっきりと言えることがある。オウテカはつねにリスナーと真摯に向き合っている、ということだ。ショーンとロブから、有名人にありがちな傲慢さを感じたことはいちどもない。
 また、以下の話を読んでいただければわかることだが、彼らの大衆文化を尊重する態度も一貫している。面白いのは、これだけ実験的な音楽をやっていながら、なぜか彼らは、人間的な温かさを高潔な思想ないしは実験性という虚勢や、自分たちは●●とかよりも優れているという盲目的な確信で隠そうとなどは決してしない。抽象的なサウンドかもしれないが、オウテカのどこかにエロティックなファンタジーを感じるとしたら、その音楽の出自には、ボディ・ソニックなダンス・カルチャーがあるからだろう(なにせその出発点はマントロニクスなのだからね!)。
 さて、能書きはここまでにしよう。我らがオウテカ──30年以上もエレクトロニック・ミュージックと向き合ってきた人たちの奥行きのある言葉をお楽しみください。

昨夜は眠れましたか?

ロブ(以下、R):いや、ぼくたち2人とも眠れなかったんだ。

昨日はオフだったんですよね?

R:一応はね。でも身体は休息が取れていない状態だったね。

ショーン(以下、S):その前の日は飛行機で3時間くらい寝て、夜6時間くらい寝られたんだけど、昨夜は全然眠れなくてね。少しはウトウトしたのかもしれないけど、頭が全然休まらなくて。

R:食事も取れないし、体内時計がめちゃくちゃになっちゃって。昨夜は11時頃に遅い食事を取ったんだけど、食欲もあまりないし、食後にベッドに入って休んでみたものの、2時間半くらいで起きちゃって、それからは全然眠れなかった。いまが今日なのか何なのか、ずっとフラストレーションが溜まっている感じだよ。

S:でもまあ、今夜プレイできるくらいには生きているから大丈夫(笑)。

それは良かった。とにかく、久しぶりに会えて嬉しいです。最後に直接会って話したのは、2018年だったかな……。

R:ぼくも会えて嬉しいよ。

ただ、歳を取るとどんどん時間の感覚もわからなくなってきて、5年前っていつだっけとか(笑)。

R:ぼくもつい最近来たような気がしていたよ。時々、続けざまに来ることもあれば、かなり長い期間が空いてから来ることもあるからね。前回の取材は何年だっけ? 

2020年、『Sign』をリリースしたあとぐらいにもやっているんですけど、そのときは坂本麻里子さん通しての取材で(『ele-king vol.26』に掲載)、直接会って話すのは2018年以来ですかね。

R:そうかそうか。

カラオケでは、ぼくは前回モーターヘッド。(ロブ)
ぼくはストーン・ローゼズの“Fools Gold”を歌ったね。(ショーン)

日本に来たときの楽しみってあるんですか?

S:今回は1日オフがあるんだけど。いや、2日か。正確には昨日はオフだったけど、体調を整える日という感じだったからね。このあともう1日オフがあるけど、とくに何も予定はないよ。たぶんショッピングにでも行くかな。つまらない答えだけど、いつもだいたいショッピングして終わる感じだからね。イギリスでは手に入らないものがたくさんあるし、しかも安い。ぼくはパートナーからカメラのレンズを入手するように言われてるから、それを探しに行こうと思って。他にはとくに予定はないかな。

R:ぼくに関して言えば、日本に来たことのある友人や、しばらく滞在したことのある親戚から「これをやるといいよ」っていうおすすめをたくさん聞いて来たよ。どれも面白そうなことばかりで。でも、今回のようなライヴの前後は、何週間も準備期間があって、そのあと移動があって、さらに公演の前後に少しオフがある、みたいな流れになるよね。そういう状況だと、「せっかくだから特別なことをしなくちゃ」と無理に駆け足で何かをやろうとする感じになる。でもそれって、あまり意味がないと思う。むしろ、いつかまた改めて日本に来て、1週間くらいがっつり滞在して、きちんと時間をかけて楽しむ方がいいんじゃないかな。

S:さっきも話してたんだけど、次に来るときは、東京の中心じゃなくて郊外か、いっそ東京の外にホテルを取って、1週間くらい滞在する方がいいんじゃないかと思って。そうすれば、まず時差ボケの問題を解消出来るし、それに普段はあまり見ることのない日本の違った一面も見られるかもしれないしね。もちろん東京にいるとはいえ、渋谷とか、今回のこのエリアにいるだけだと、東京という街の中でも本当にごく一部をかすめているに過ぎないし、ましてや日本全体を象徴するようなエリアでもないと思うから。以前にもう少し遠出をして日本を廻ったこともあるんだけど、少なくともぼくにとっては、東京の外に出た途端にすごく面白くなるんだよね。

R:うん、北海道にも行ってみたいし、南のビーチも見てみたいね。いままでとは全然違うタイプの日本を体験してみたい。でも、そうするにはやっぱり時間がかかるし、本来は面白くて、しかもゆったり出来る旅になるはずなのに、これまで一度もそこまでの時間が取れたことがないんだ。結局いつも、サッと来てサッと何かを済ませるだけ、みたいな感じになってしまって。それだと上手くいかないんだよね。だから、また別の機会を狙うよ。

カラオケとか行ったりしないんですか?

S:今回は行ってないけど、前回来たときに何回か行ったよ。小さなバーが何軒もずらっと並んでいるエリアがあるでしょ。東京のどこだったかな。思い出せないんだけど……とにか、小さなバーがものすごくたくさん並んでる通り。

通訳:新宿のゴールデン街ですかね?

S:いや、渋谷だ。渋谷駅の近くだったよ。小さな通りで、すごくちっちゃなバーが並んでいて。

R:3人か4人入れば満員になってしまうような小さなバーで、カラオケが置いてあって。そこに何度か行ったね。まあ、カラオケを歌うにはめちゃめちゃ酔っ払っている必要があるんだけど(笑)。

何を歌うんですか?

R:ぼくは前回モーターヘッドの“Ace of Spades”を歌ったよ(笑)。

(笑)

R:悪くないでしょ(笑)。

S:ぼくはストーン・ローゼズの“Fools Gold”を歌ったね。

数年前にソニックマニアに出演したんだけど、あれは実質ポップ寄りのフェスだよね? 正直、ちょっと驚きだったよ。出番前は少し緊張してたんだ。自分たちの客層とは違う、いわゆるポップ寄りの観客が多いだろうと思っていたから。

ハハハハ。ところで、いまここに来るとき、すでにお客さんが階段に並んでましたね。チケットもすぐにソールドアウトになったし、相変わらず人気あるなと思いました。これまでにとくに思い出に残っているライヴというと何になりますか。

S:日本でのライヴは、いつでもとても良い体験になっていると思う。曖昧な意味で言っているわけではなくて、本当にそう感じているよ。ぼくはつねに観客の反応を気にかけているけど、日本のオーディエンスは基本的にすごく静かで礼儀正しくて、ぼくたちの音楽に対するリスペクトがある。でも、最後には大きな歓声をくれるし、ちゃんと届いているように感じられるんだ。
数年前にソニックマニアに出演したんだけど、あれは実質ポップ寄りのフェスだよね? 正直、ちょっと驚きだったよ。出番前は少し緊張してたんだ。自分たちの客層とは違う、いわゆるポップ寄りの観客が多いだろうと思っていたから。ぼくたちの後には違うタイプのGrimesも出ていたし、正直このイベントに自分たちが合っているのかな? という感覚もあった。でも、その観客に向けてやってみたいと思って出演したら、結果的にすごく上手い具合にいったんだ。だから、日本の観客に対してがっかりしたことは一度もないよ。もちろん、リキッド・ルームみたいな会場だとやりやすいよね。ある程度、自分たちのことを知っている人たちが足を運んでいることがわかっているから。

R:リキッド・ルームでも何度かやったし、初期の頃はもっと大きなヴェニューでやったりもしたから、いろいろだね。

S:とにかく、カルチャー的にはリキッド・ルームのようなヴェニューはすごく安心するというか。タイコクラブとかエレクトラグライドみたいなフェスだと、観客は基本的にテクノ寄りの人たちが多いんだけど、日本ではそれなりに作品も聴かれていたから、大体どんなことをやるのかわかって来てくれていることが多いんだ。少なくとも何が起こるのかわからない、という感じにはならない。でも、あのソニックマニアは驚きだったし、すごく嬉しい経験でもあったね。いわゆるポップ系の観客と自分たちがちゃんと繋がれた、というのは不思議な感覚だったよ。
どこでもあっても、そういうことが起こると毎回ちょっと信じられない感じはするんだけど。最近だと、ヘルシンキでも同じようなことがあって。フロー・フェスティバルに出演したんだけど、そこもかなりポップ寄りの観客が多かったんだ。出演者の多くはポップ系で、少なくともぼくたちよりずっと知名度のある人たちばかりだったしね。

R:それに、かなり商業的だったよね。

S:そうそう。そういう場でも、ぼくたちはいつも通りのセットをそのままやる。わざわざポップな音楽に寄せて、観客に合わせる必要はないと思っているんだよ。変な風に聞こえないといいんだけど、ここ最近は音楽シーン全体が、少しずつぼくたちに近づいてきている部分もあるんじゃないかと思うんだ。たとえばSOPHIEとかCharli XCXみたいなアーティストが出てきたりしてね。もちろん、ぼくたちの音楽が彼女たちに似ているわけではまったくないんだけど、どこかに影響を感じさせる細い糸のようなものがあって、それを通してぼくたちの音楽と繋がる人がいるのかもしれない。そういう変化みたいなものは、ぼくたちにとってもとても良いことだと思うんだよね。

R:日本は、ぼくたちにとって常にiTunesでの最大市場のひとつなんだ。実際、記憶にある限りずっと、日本はニューヨークやロンドンと並ぶ最強の都市のひとつで、東京はほぼいつもトップクラスに入っている。うん、日本ではよりアンダーグラウンドというか、マニアックなアーティストのほうが、むしろしっかり紹介されているように感じるよね。

S:日本は、海外のものを受け入れる際にとても選別的だ、という感覚がずっとあるよ。というのも、シーン全体がそのまま入ってくるわけではなくて、すべてが紹介されるわけじゃない。でも、たとえばジェフ・ミルズのような存在はちゃんと入ってきているよね。つまり、あらゆるテクノやエレクトロニック・ミュージックが紹介されているわけではないけれど、選ばれているもののセンスがとてもいい。ちゃんと良いものを見極めている感じがするんだ。そういう意味で、ぼくらの感覚や美意識は、日本のオーディエンスの感性とかなり合っていると思う。自惚れに聞こえたら申し訳ないけど(笑)、少なくともある程度は本当だと思っているよ。

R:ひとつ補足しておくと、ぼくがiTunesと言っているのは、実際には彼らが教えてくれる Shazamのヒット数のことなんだ。Shazamは流れている音楽を認識するアプリなんだけど、東京では、そのShazamの数値がいつも非常に高い。ロンドンやニューヨークが1位を争うこともあるけど、東京はほぼ常にトップにいるんだ(笑)。iTunesではアーティストごとの統計データが見られるし、Shazamは東京の状況をすごくわかりやすく示してくれる指標だよ。それで、Shazamのデータを見ると、少なくとも2つ、もしかしたら3つのことがわかる。ひとつは、人びとがサンプリングされたものを耳にして、「これは何だろう?」と調べた結果。もうひとつは、そもそもぼくたちの楽曲がどこかで流れている、という事実だね。お店やラジオ、あるいは街中のどこかで流れていなければ、Shazamされることはない。だから、どういう経路で広がっているのかを正確に把握するのは難しいけれど、確実に起きている、ということだけははっきり見えるんだ。

クラブでもDJがかける曲をShazamでチェックしてる人が多いかもしれない(笑)。

R:街中にもビルボードがたくさんあるから、3〜4曲同時にチェックしてる人もいるかもしれないね(笑)。

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松永コーヘイはすばらしいアーティストだね!

今回の来日でひとつ嬉しかったのは、Kohei Mastunagaをブッキングしてくれたことだったんですね。彼は非常に良いアーティストなんですけど、日本では不当な評価を受けているアーティストのひとりなんです。本当にこのライヴにブッキングしてくれてありがとうと言いたいです。

S:それが今回彼をブッキングした理由なんだけど、もうかれこれ20〜25年くらいになるかな、とにかく長い付き合いなんだ。2000年代初頭のことをいまでもよく覚えているけど、当時から彼の作品が本当に大好きだった。彼はとにかく驚異的なアーティストだと思う。ものすごく多作だし、しかもクオリティがつねに異常なほど高い。とても短いトラックをたくさん作るんだけど、そのひとつひとつに込められているアイデアやグルーヴが、本当に息をのむほど素晴らしいんだ。ぼくにとっては、間違いなく最高峰のアーティストのひとりだし、これまでにも何度か、さまざまな形で一緒にコラボレーションしてきたんだよ。人としてもすごく気が合うし、純粋に彼の音楽が大好きだから、今回のブッキングは僕らにとってはごく自然で、迷いのない選択だった。それに、日本でもっと多くの人に彼の音楽が届くきっかけになれば、それは素晴らしいことだと思っている。日本での彼のオーディエンスがどんな規模なのかは正直わからないけれど、ただ、彼にその機会を提供したかったんだ。もちろん、彼はぼくらの助けなんて本当は必要ないくらいの存在だけどね。それでも、ぼくたちにできることがあるなら、それをやるだけさ。

R:彼は、ぼくらのより広い音楽的嗜好をそのまま体現してくれる存在でもあって、その点でも本当に素晴らしい例だと思う。だから、今回こうして同じ場所で一緒にプレイできるというのは、ぼくらにとってはある種の贅沢なんだ。これまでにも、ベルリンやイギリスで彼のプレイを観てきたけれど、実は最初に一緒に演奏したのは大阪だった。そのときぼくらを引き合わせてくれたのが、Russell Haswellだったんだ。その後、たしか彼はかなり早い段階でドイツに拠点を移して、そこからずっとヨーロッパで活動してきたんだよね。だから今回、ぼくらがこうして来日するタイミングで、また彼と日本で再会できたのは、本当に嬉しいことだよ。

同世代の友人たちは「このハイパーポップってやつ、変だよね」って言う。でも、ぼくたちは「いや、すごく良いからちゃんと聴いてみて」って感じなんだ。

ちょっと話が変わりますが、チャーリーXCXがブリット・アワードを受賞したとき、スピーチで自分の影響源を、ソフィー(SOPHIE) 、エイフェックス・ツイン、オウテカと言っているんですよ。そのことは当然ご存知ですよね?

S:正直に言うと、知らなかったんだ。でも、発言があった直後にすぐ周りから「見た?」ってメールがたくさん来たよ。ぼくらがああいう文脈で名前を挙げられることって、かなり珍しいんだよね。
 ただ、プロデューサーのA.G. Cookについては、彼がぼくらのファンだということはかなり前から知っていた。〈PC Music〉を運営している人物とぼくが知り合いだったという縁もあってね。たしか、彼らの存在を最初に耳にしたのは2014年頃だったと思う。それ以来、AGやソフィーがぼくらの大ファンだということは聞いていたんだ。
 とくにソフィーの作品については、音を聴けばなるほどと思えるような影響が感じられて、ぼくにとってはわりとわかりやすかった。一方で、A.G. Cookの方はもう少し人工的というか、すごくクリーンなポップ・ミュージックの方向性で、影響の出方は少し違うように感じていたよ。ただ、彼の作品のテクスチャーには、個人的にかなり惹かれるものがあるんだ。
 いずれにしても、今回こうして言及してもらえたのは素直に嬉しいし、こちらからもその賛辞を返したい気持ちがあるよ。彼らは本当に優れたポップ・ミュージックを作っていると思うし、正直に言って、ぼくらが彼らに影響を与えていることが一目瞭然だとは思っていない。それでも、彼らのやっていることは本当に良いと思う。何かしら共鳴するものがあるんだよね。ただ、それが具体的に何なのかを言葉で説明するのは少し難しいな。結局のところ、ある種の感覚や好みの問題だと思うから。

R:あの場で彼女がああいう発言をしたのは、本当に大きな驚きだったよ。若い娘がいる友人たちがちょうどブリット・アワードを生で観ていて、いっせいに20件くらいメッセージが届いたんだ。「あれって、パパの友だちなんだよ」って子どもに言ったら、「じゃあ結構いい感じの人たちなんだね」みたいな反応があったみたいで(笑)。それに、家族ぐるみで付き合いのある友人の子どもたちとか、個人的に知り合いの若い世代の人たちからの反応もあった。
 ショーンがA.G. Cookについて解説してくれたけど、背景やソフィーの影響力や活動の規模まで含めて、あそこまで広い文脈で説明する必要は彼女にはなかったかもしれない。それでも、あの場でオウテカの名前を口にしたというのは、彼女にとっても大きな一歩だったのかもしれないね。

S:そもそも、ヴォーカリストがああいった場所で、あのような発言をすること自体がかなり異例なんだよね。とても驚いたよ。

R:本当にそうだよね。

彼女に代表されるハイパーポップと呼ばれる新ジャンルがありますよね。あのスタイルに、オウテカの影響があると感じますか?

S:かなり繊細でかすかな影響は見て取れると思う。それは音の選び方、サウンドの感覚みたいなところに関わっているんじゃないかな。もちろん、音楽の形式としては完全に“ポップ”だと思うし、K-POPや日本のポップ・ミュージックからの影響もとても大きいと思う。コードの感覚や、使われているメロディやハーモニーにも、独特の感触があるよね。一方で、プロダクション自体は少しだけラディカルなんだ。本当にちょうどいいところを突いている感じ。やり過ぎるとポップじゃなくなってしまうからね。
 とくにSOPHIEが素晴らしかったのは、僕たちだけではなく、同世代のいろいろなアーティストから受け取ったサウンドの嗜好性や音のパレットを……かなり大雑把に言えばだけど、理解した上で、それがポップの文脈でも使える、と示した点にあると思う。それは、正直に言ってぼくたちだったら様々な理由から絶対にやらないことだから。でも、彼女たちはそれを本当に見事にやってのけたんだ。気が付いたら、ぼくは完全なファンになっていたよ。
 それってすごく不思議なことでもあるけどね。同世代の友人たちのなかには「このハイパーポップってやつ、変だよね」って言う人もいる。でも、僕たちは「いや、すごく良いからちゃんと聴いてみて」って感じなんだ。単純に、ものすごく美しく作られているからね。
 ぼくは基本的に、ポップとアンダーグラウンド・ミュージックを区別して聴いたりはしない。ただ、良く出来ている音楽が好きなだけで。そういう意味では、彼らは本当に素晴らしいものを作っていたと思う。しかも、それは明確にメインストリーム向けに作られていて、その文脈のなかでしっかり成功も収めている。だから、彼らが成し遂げたことは本当に見事だったと思うんだ。アンダーグラウンドのアーティストが、自分たちの音楽がメインストリームに吸収された、と感じることはよくあるけれど、このケースはそれとは少し違っていたと思う。彼らは、ある意味で“外部の人間”としてポップ・ミュージックを捉えていた。もぼくがポップを創るとしたら、きっと同じ立ち位置を取ると思うけど、ぼく自身は一度もそういうことをやろうとしたことはない。彼らは、それを見事にやり遂げたし、だからこそ、ぼくはおそらく今後もポップを作ることはないだろうね。彼らがそこまでやってしまったから。そういったアイデアをあそこまで押し進めたことに、心から敬意を払っているよ。

R:ぼくたちが子どもの頃からスタジオでトラックを作ってきたなかで、時々すごくポップというか、とてもキャッチーな音が自然に生まれる瞬間があるんだ。短いフレーズやセクションがふっと立ち上がって、そこからいっきに展開していく。理論的には、そういう瞬間を切り取って、それを核にポップ・トラックを組み立てることも十分可能だろうね。実際、そうしたアイデアの断片を組み合わせれば、ポップは作れる。でも、ぼくたちはそれをしない。というのも、ぼくらは変化していくことや、別の場所へと向かう旅の方を選びたいからなんだ。ひとつの要素を何度も反復して強調することには、あまり興味がない。だからこそ、彼らの音楽のなかに、ぼくたちとの繋がりを感じる瞬間があるのも理解できるんだ。そういうリンクみたいなものは、何度も、いろいろな面で垣間見えると思うよ。

S:ある意味で、自由の種類が違うんだろうね。ぼくたちにとっての自由は、ただ自分たちが自分たちであり続ける、という自由なんだ。彼らも、基本的には同じことをしていると思う。ただ、ぼくたちよりずっと若いし、さっき言ったように、K-POPをはじめとする東洋の音楽からの影響も多大に受けているよね。そうした要素をどんどん貼り合わせるように音楽を作っていったんじゃないかな。でも、それはぼくたちが辿ることのない道だし、追いかけようとも思わない旅なんだ。ぼくたちには、ぼくたち自身のアイデアがあるからね。もちろん、制作の途中でこの瞬間を切り取ったら、別の文脈ではすごく良かったかもしれない、と思うことはあるよ。でも、ぼくたちはそこに落ち着こうとはしない。ぼくたちはポップ・ミュージックが好きで育ってきたし、デペッシュ・モードやヒップホップ、ラップも聴いてきた。だから、そういう音楽を作る能力がないわけではないと思う。ただ、それを自分たちの仕事にしたいかと言われると、やっぱり違うんだよね。それはぼくたちの興味の向かう先ではないし、彼らのように上手くやれるとも思ってないから。

R:思っているほど簡単なことじゃないと思うよ。

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『Untilted』は、たくさんのハードウェアを使ってはいるものの意図的にシーケンスされた作品なんだ。96〜97年頃からはじまった、構成をどんどん緻密にしていく長い章の、いわば最後の部分だった。『Quaristice』は、そこから再び自由さへと戻っていく動きを反映した作品だった。それはいまのぼくたちにも繋がっているよ。

昨年、『Untilted』と『Quaristice』というアルバムがリイシューされました。どちらも2000年代の力作なんですけれど、あらためて現在の視点から、これら二作にどういった感想をお持ちでしょうか。

S:かなり違う感じの2枚だよね。『Untilted』を作った頃は、個人的にかなりつらい時期だったんだ。父が亡くなった直後でね。その頃は、ものすごく細部まで作り込むタイプの制作をしていて、ドラムマシンを大量に使っている時期だった。ちょうどElektronのドラムマシンを使いはじめた頃で、そうしたハードウェアをどう使うか、いろいろな方法を探っていた。ぼくは、感情的にかなり厳しい時期にいるときほど、すごくテクニカルな作業に没頭する傾向があって、それが自分にとっては救いになるんだよね。注意を別のところに向けるという、ある種の対処法みたいなものなんじゃないかな。だから、『Untilted』にはそうした要素が詰め込まれていると思う。
 一方で、『Quaristice』は、全然違うレコードになった。あれだけ長い時間を掛けて、ああいった制作をしたことへの反動のような作品だと思うんだ。それに加えて、ぼく自身の生活にもいろいろな変化があった。引っ越しをして、新しい場所でしばらくぶりに一人で暮らすようになって。ちゃんとしたスタジオも持っていなかったから、ライヴ用の機材をそのままテーブルの上に並べて、ライヴでやっているのと同じやり方でトラックを作っていったんだ。実は、そこがいまのぼくたちに繋がる起点になったと思う。その時点で、ぼくたちがライヴでやっていたことが、少なくともレコードとしてリリースしてきた作品と同じくらいには完成度が高い、という点に気付いたんだ。それで、『Quaristice』ではその境界線を意図的に曖昧にしたいと思ったんだよね。2008年にアルバムに合わせて制作したライヴセットをツアーに持ち出したとき、観客から「アルバムよりライヴの方がいいね」と言われてしまって。それが、ぼくたちが自分たちのやり方を少し違った角度から考えはじめるきっかけになった。ある意味で、『Quaristice』は、1990年代前半から1996年くらいまでぼくたちがやっていたことへの回帰でもある。当時は、すべてがライヴで、一発録りだったからね。マシンのなかにパターンを入れて、それをライヴで走らせて、パターンの切り替えもミックスも音の微調整も、すべてリアルタイムでやっていたんだ。これはDAWのようなデジタル・オーディオ・ワークステーションが登場する前の話だね。だから、その場で一発で録音するしかなかった。『Quaristice』は、かなりそのやり方に寄せた作品なんだ。もちろん編集はしているけれど、ライヴ的な作業が非常に多い作品だったよ。


『Untilted』


『Quaristice』

S: それに対して『Untilted』は、たくさんのハードウェアを使ってはいるものの、非常に意図的にシーケンスされた作品なんだ。だから、『Untilted』は、’96〜’97年頃からはじまった、構成をどんどん緻密にしていく長い章の、いわば最後の部分だったと言えるんじゃないかな。『Quaristice』は、そこから再び自由さへと戻っていく動きを反映した作品だった。それは、いまのぼくたちにも繋がっているよ。
 いまでも僕たちは、何がライヴで何がリアルタイムで、何が自発的な即興なのか、その境界が曖昧な領域を探り続けている。現代のテクノロジーによって生まれる、そうした不思議な“どこでもない空間”にとても興味があるよ。作曲と即興が同時に成立するような状態にね。
 最近ようやく理解しはじめたのは、作曲というものには明確な始点があるわけじゃない、ということなんだ。多くの場合、最初は即興的なアイデアからはじまるよね。たとえ紙に音符を書くとしても、そこには必ず即興性が含まれている。それを認識することが、ぼくたちにとっては本当に大きいことだったんだ。以前から薄々はわかっていたけれど、初期の頃は技術的な選択肢がなかったから、敢えて問い直すこともしなかった。でも、いまはDAWが普及して、極端に意図的な制作方法が当たり前になっている。だからこそぼくは、ラフさや即興性、未加工の生々しさにより強く惹かれるようになったんだ。物事があるがままに起こる感じ、そのことにとても興味があるよ。コンピュータというのは、どうしても人を意図的な思考へと導いてしまう。
 ぼくたちが自分たちでソフトウェアを作っている理由もそれだ。DAWをまったく使わないわけではないけれど、ぼくが本当に興味があるのは瞬間を捉えることだから。瞬間というのは、とても貴重なものだ。それが年齢のせいかどうかはわからないけどね。昔の作品を聴き返すと、ああした一回限りの、風変わりな選択の瞬間が聴こえてくる。ほとんど再現不可能な出来事がたまたま起きて、それを記録出来た感じだよ。そのことは、本当に価値のあることだと思っている。『Quaristice』は、そうした瞬間を、技術的な制約にとらわれず、意図的に選んでやった作品なんだ。その後のアルバムほど成功したとは言えないかもしれないけれど、間違いなく正しい方向へ進む第一歩だったと思うね。

R:うんうん。実質的には“ランタイム無制限”みたいなものだよね。面白いのは、タイトルがほとんど同じに見えることなんだ。トラック同士も、ちょっと似たような感じがあるし。だから、誰かがどのヴァージョンの話をしているのか、聞き間違えたり読み間違えたりして、混乱することもあると思う。でも、それで良いというか、むしろそういう状態を楽しんでいるんだよね。たとえば、一箇所を聴いていて、「あれ? こっちは9分あるけど、自分のは4分しかないぞ」って気付いたりする。すると、ところどころは正確にわかるんだけど、「ああ、こう来るのか、なるほど」みたいな。そういう聴き方やその感覚自体を、ぼくたちは面白がっているんだよ。

S:その頃、ぼくはアート・オブ・ノイズのことを考えていたんだ。’80年代にすごく好きだったし、彼らがやっていたこと……とくにトレヴァー・ホーンがグループに関わっていた時期の作品には、かなり影響を受けていると思うんだよね。後期の作品にも言えることだけど、とくにその時期のアート・オブ・ノイズのトラックには、ものすごくたくさんのオーバーラップするヴァージョンがあったんだ。たとえば“Moments in Love“”なんて、合計したら90分くらいの別ヴァージョンがあるんじゃないかな。あまりに数が多いから、いま自分が聴いているのがどのヴァージョンなのか、正確に判断するのが難しいくらい。違いはほんの些細な部分だけ、という場合も多くて。
 でも、ぼくはそういう状況がとても好きなんだ。聴き手が少し混乱する感じ。いまどの地点にいるのか、どの展開に入ったのかがはっきりわからないような感覚。聴き手が次はこう進むはずだ、と思っていた方向とは、ほんの少し違う展開をする。そういうことが起こるのが、ぼくは面白いんじゃないかと思っているんだ。物事が反復的で、しかも決定版が存在しない、という考え方が好きだから。ひとつの正解のヴァージョンがあるわけじゃなくて、ただたくさんの異なるヴァリエーションがある。それは、たとえば同じ出来事を目撃した複数の人が、それぞれ違う証言をすることに少し似ているね。みんなが、自分なりのヴァージョンを持っている、という感じかな。

AIに欠けている要素というのは、思いついたことを試して、すぐに録音することで生まれる生々しさだよ。

AIの問題をどうお考えですか? BandcampがAI作品を排除することを公表しましたが、あなた方は現時点でAIというものをどう考えているのか教えてください。

S:えっと、あとどれくらい時間残ってる(笑)? 

(笑)

S:かなり壮大な話題だからね(笑)。えー、まず、当然だけど、盗用は良くない。テック系の連中が、他人の作品を片っ端から盗用しているようなケースは明らかに問題だし、それについてはわざわざ言うまでもないね。Bandcampがああいう判断を下した理由も、そこにあると思う。ただ、それだけではなくて、もっと深い議題がいくつもあると思うんだ。ぼくにとって、AIに関する最大の問題は、既存の作品を学習データにしているという点だ。つまり、AIは探索的ではなく、参照的なんだよね。それ以上のことはしていない。その意味で、正直あまり面白いものじゃないと思う。
 とはいえ、誤解して欲しくないのは、機械学習(マシーン・ラーニング)やそれに近い技術の使い方には、いまテック野郎たちがやっていることとはまったく異なる、正当で創造的な道筋もあるということだよ。そうした使い方のなかには、将来的に実りのあるものも存在すると思う。実際、ぼくたち自身もこの15年くらい、文脈は違うけれど断続的に機械学習を使ってきた。いま主流になっているTransformerモデルが登場する前から、コンピュータ・ミュージックの世界には、機械学習を使う幾つかの方法が存在していたんだ。でも、いまみたいにどこかにログインして「こんな感じのトラックが欲しい」と入力したら、他人の音楽の寄せ集めみたいなトラックが返ってくる——そういうものには、僕はまったく興味がないね。
 それからもうひとつ重要なのは、AIが多くのアーティストの生計を脅かしているという点だ。これは決して軽い気持ちで言っているわけじゃなくて、非常に大きな問題だと思っているよ。ただ、ぼくたち自身に関して言えば、恐らくそこまで深刻な問題にはならないと思っているんだ。僕たちの仕事は、基本的に探求的で、これまでに聴いたことのないものを試してみて、それを自分たちが好きかどうか判断する、というところにある。その好みや判断の要素が、Transformerモデルには完全に欠けているんだ。だから、ぼくたちは今後も、これまでと同じようにやっていけると思う。但し、影響が出るとすれば、誰かがぼくたちの音楽に辿り着く可能性の方だろうね。とにかく大量の音楽が溢れかえることになるから、それは誰にとっても問題になるだろう。
 皮肉なことに、AIに欠けている要素というのは、まさにこの10年……15年、いや20年くらい、ぼくたちが意識的に取り組んで来たことなんだよね。それは粗さや即興性、思いついたことを試して、すぐに録音することで生まれる生々しさのことだよ。そういう、制作のダイナミクスは、僕たちが自然に辿り着いたものだけれど、結果的にそれは、大規模な言語モデルが音楽を作るやり方とはほぼ真逆に位置している。だから、ある意味では、ぼくたちはかなり運が良い立場にいるとも言えるね。ただ、AIという言葉は、あまりにも広域過ぎる。Transformerモデルの話に限るなら、あれ自体に本当に問題が多いし、ひどく参照的で、聴く気にもならない音楽を大量に生み出すことになる。そういうものがストリーミング・サービスや、ヨガ用のプレイリストなんかを占拠することになるだろう。でも、そこはぼくvの居場所じゃない。そういう世界が存在していることは理解しているけどね。だからまあ、ぼくたちはヨガのプレイリストのリスナーを多少は失うことになるかもしれないけど(笑)、正直、そう言う人たちは音楽そのものを気にしているわけじゃないだろうから。結局のところ、ぼくたちのやっていることにほとんど影響はないだろうね。
 一方で、もっと広い意味では、AIは有用なツールにもなり得ると思っているんだ。特定の用途に於いてはね。データのなかのパターンや類似性を見つけることには向いているし、音のカタログ化や、DJミックスの中で相性の良いトラックを見つける、といった使い方も出来るよね。あるいは、大量の音楽を学習させて、ひとつのトラックのなかからレイヤーを分離するなんていう用途もあって、実際にそうした使い方はすでに増えている。慎重に使えば、機械学習はとても強力なツールになり得るんだ。でも、いまの億万長者のテック連中は、全然慎重な使い方をしていない。考え得る限り、いちばん雑で無責任な使い方をしているよ。結局のところ、問題は技術そのものじゃなくて、それを使っている人間と、その使い方なんだ。

『Confield』は、いまでは発売当時ほど過激な作品ではなくなっているけれど、それでも音楽でここまでやれる、という可能性を垣間見せてくれるアルバムだと思う。


『Confield』

では、最後の質問です。前回インタヴューしたときに、「15歳の若者にオウテカのアルバムをプレゼントするとしたら何にしますか?」という質問をしました。そのときの答えは、ファースト・アルバムの『Incunabula』と当時の最新アルバムの『Sign』でした。いま、同じ質問をしたらどれになりますか?

S:良い質問だね。いまだったら、そうだな……正直、前回とは同じ答えにはならないかもしれないね。う〜ん……『Confield』かな。15歳くらいの若者には、もう少し背伸びしてもらってもいいんじゃないかと思うんだ。『Confield』は、いまではぼくたちにとっての転換点として語られることが多いアルバムだけど、当時の僕たち自身は、そこまで意識して作っていたわけじゃなかった。でも、なぜいまそういう語られ方をしているのかは理解できるよ。いまのメインストリーム文化も、たしかにいろいろな刺激や挑戦を提供してはいるけれど、必ずしも正しい種類の挑戦ばかりではないと思うんだ。だからこそ、『Confield』は、彼らのとっての良い入り口になるかもしれない。発表から十分に時間が経ったいまでは、当時ほど過激な作品ではなくなっているけれど、それでも音楽でここまでやれる、という可能性を垣間見せてくれるアルバムだと思う。25年前に作られた作品だということを考えると、さおさらだね。あのアルバムは本当に、まったく異なる時代の産物だったんだ。

R:うん、それでいいと思う。ぼくもその意見に賛成だね。仮にあのアルバムがひとつの転換点だとするなら、過去を振り返りながら同時に未来を見渡すのに、これ以上相応しい作品はないんじゃないかな。

S:そうそう、ちょうど蝶番みたいなものだね。

R:そう、ちょうどその言葉を使おうと思っていたんだ。でも、当時はそういう瞬間だなんて気付かないものなんだよね。

Flying Lotus - ele-king

 フライング・ロータスが新たなEP「BIG MAMA」を送り出す。今回はなんと自身が設立した〈Brainfeeder〉からのリリースで、同レーベルからフライング・ロータス名義の作品が発表されるのは初めて。EPとしては(ハウスに挑戦した “Ajhussi” と “Ingo Swann” を含む)2024年の「Spirit Box」以来の作品となるが、ティーザーを聴くかぎりこたびもまた新たな方向性にチャレンジしているようで、目が離せない。

FLYING LOTUS

自らが主宰する〈Brainfeeder〉からフライング・ロータス名義として
正式リリースとなる記念すべき第一弾作品
待望の最新EP『BIG MAMA』を発表!
3月6日リリース!

コルトレーン一族の末裔であり、2000年代後半にその独創的なビートで世界をリードしたビート・ミュージック・シーン最重要アーティスト、今では電子音楽界を代表する鬼才、フライング・ロータスが最新EP『BIG MAMA』を3月6日にリリースすることを発表した。本作は、フライング・ロータスことスティーヴ・エリソンが、自ら設立したロサンゼルス拠点のレーベル〈Brainfeeder〉から発表する初の正式リリース作品となる。〈Brainfeeder〉は約20年前にエリソンが設立し、これまでにサンダーキャット、カマシ・ワシントン、ルイス・コール、ハイエイタス・カイヨーテなど、数多くの名だたるアーティストの作品を世に送り出してきた重要レーベルだ。

『BIG MAMA』は、フライング・ロータスが衝動と勢いに突き動かされた瞬間を捉えた作品だ。無数のサウンド、リズム、エフェクトが高密度に詰め込まれた本作は、彼自身の言葉を借りれば「実験的で、マキシマリストで、超高速なエレクトロニック・エネルギーの爆発」。全7曲はひと続きの構成として展開され、一切のループを用いず、すべての小節が異なるという大胆なアプローチが取られている。

大砲から撃ち出されたみたいな感覚にしたかった。
ただただ爆発的で、予測不能なエネルギー。
完全にバグったコンピューターみたいな、正気を失った機械のような感じだね。
- Flying Lotus

Flying Lotus - BIG MAMA
予約リンク https://flyinglotus.lnk.to/bigmama

本作は、最新長編映画『Ash』の監督・作曲を務めた後の、ある種の“隔離期間”を経て制作された。ニュージーランドで、ラップトップとコントローラーだけを使い、ほぼ一人で映画音楽を完成させるという原始的な制作環境が、彼を原点回帰へと導いた。

ひとりで丸ごとサウンドトラックを作るという、大げさに拡張された時間感覚の中にいた感じだった。その反動で、直前にやっていたこととはまったく違うことがしたくなった。このプロジェクトを始めて、内側に溜まっていたカオスを吐き出せる場所を見つけたような解放感があった
- Flying Lotus

制作期間は約2か月。従来の“曲単位”の制作ではなく、まず金属的で複雑な音色や、変化し続ける音の質感を探求するソフトウェア・シンセや、中古のドラムマシンを駆使し、音そのもののアイデアを書き留めるスケッチブックを作ることからスタートした。その後、1日に10~15秒分の音楽を丹念に積み重ね、最終的に13分に及ぶ、テンポやジャンルに縛られない意識の奔流のような作品へと結実させている。

自由で、生きている感じにしたかった。サウンドデザインとして考えて、予測不能で圧倒的な密度を持つものを作りたかったんだ。音楽がどんどん“完璧”で無菌的になっていく中で、電子音楽における“人間らしさ”をどう残すか、それを考え続けたい
- Flying Lotus

アートワークは、イラストレーターのクリストファー・イアン・マクファーレンが担当。フライング・ロータスは、幼少期に親しんだカートゥーンへの共通の愛を通じて彼と意気投合したという。

『レンとスティンピー』とか、サタデー・ナイト・ニコロデオン(SNICK)みたいな感じ。
俺と同世代なら分かるはず(笑)。とにかく才能ある人で、ずっと一緒に仕事したかったんだ。
- Flying Lotus

このいたずら心に満ちたカートゥーン的美学は、フライング・ロータス自身が敬愛する『ザ・シンプソンズ』の影響とも共鳴し、『BIG MAMA』を2010年作『Pattern+Grid World EP』の精神的続編とも言える作品へと位置づけている。ブレイクコアとIDMを自在に横断する、フライング・ロータスならではのダンサブルで遊び心あふれる側面が前面に押し出された一作だ。

さらに本作『BIG MAMA』は、フライング・ロータス名義として初めて〈Brainfeeder〉からフルリリースされる記念碑的作品でもある。

自分が作ったレーベルと、もっと近い距離で一緒にやるタイミングだと思った。
グラミーにも何度も行ったし、大きな作品とも肩を並べてきた。
いい環境を築けたと思うし、もう十分その時が来たんじゃないかな
- Flying Lotus

『BIG MAMA』は、3月6日(金)に12inch(ブルー・ヴァイナル)、デジタル配信で発売。12inchは数量限定・日本語帯付き仕様でも展開される。

フライング・ロータス|Flying Lotus
ロサンゼルス出身のスティーヴ・エリソンことフライング・ロータス(別名キャプテン・マーフィー)は、この20年にわたり21世紀音楽の形を決定づけてきた重要人物の一人だ。アリス・コルトレーンやマリリン・マクロードといった音楽的レジェンドを家族に持ち、ビートメイキングからアニメまで幅広い影響を受けながら育った。
2000年代後半には、ジャズ、ヒップホップ、未来的サウンドを融合させた独自の表現でLAの【Low End Theory】を中心に注目を集め、〈Warp Records〉からリリースされたアルバムにはケンドリック・ラマーやデヴィッド・リンチ、サンダーキャット、エリカ・バドゥら錚々たる面々が参加。ケンドリック・ラマー『To Pimp A Butterfly』へのプロデュース参加など、現代音楽史に残る作品を数多く手がけてきた。
音楽のみならず映像表現にも強いこだわりを持ち、立体映像やアヴァンギャルドな照明を用いたライブ演出でも高い評価を獲得。近年は映画・アニメ分野へも活動を拡張し、『V/H/S 99』への参加や、主演アーロン・ポール、エイザ・ゴンザレス出演の映画『Ash』では監督・作曲を兼任。Netflixアニメ『Yasuke』やのNBAのレジェンド、マジック・ジョンソンのドキュメンタリー「マジックと呼ばれる男(原題:They Call Me Magic)の音楽も手がけている。
2024年秋には、ドーン・リチャードとシッド・スリラムを迎えたハウス寄りのEP『Spirit Box』を発表。ジャンルや表現手法に縛られない、予測不能な創作姿勢は今なお進化を続けている。

label : BEAT RECORDS / Brainfeeder
artist : Flying Lotus
title : BIG MAMA
release:2026.3.6
TRACKLISTING:
01. BIG MAMA
02. CAPTAIN KERNEL
03. ANTELOPE ONIGIRI
04. IN THE FOREST - DAY
05. BROBOBASHER
06. HORSE NUKE
07. PINK DREAM
商品ページ: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15637
配信: https://flyinglotus.lnk.to/bigmama

12inch(ブルー・ヴァイナル/片面スクリーンプリント)

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