「R」と一致するもの

Honda Q - ele-king

 2003年に降神の1stアルバム『降神』へ参加し特異なスタイルで注目を集めたラッパー・本田Qが、2011年作『くしゃみ』以来13年ぶりとなる2ndソロ・アルバム『ことほぎ』を6月1日にリリース。デジタル・リリースながらA/B面をそれぞれ「言祝ぎ」「呪言」の2部構成とした、17曲入の大作に仕上がった。

 2020年より活動拠点を京都に移して以降、リリックに日本の古典をサンプリングするなど独自のスタイルを確立していった本田Q。コンシャスなラップを軸としつつ、和の文化とアンダーグラウンド・ヒップホップを接続するようなアプローチがとられた力作にはDJ KENSEIなども参加している。要チェックでしょう。

Artist : 本田Q
Title: ことほぎ
Release Date:2025.6.1
Label : SOFTRIBE
Format : Digital
Stream : https://linkco.re/3xx28Hbc

Tracklist:

A面 言祝ぎ
01 オトノナルホウヘ
Prod. by NaBTok
Mixed by NaBTok

02 ねぇ
Prod. by Shoichi Murakami
Mixed by KND

03 不孤
Feat. fuyuco.
Prod. by Bundead (NaBTok & Livingdead)
Mixed by SINKICHI

04 Stone
Prod. by COBA5000
Mixed by NaBTok

05 A Day
Prod. by alled
Mixed by KND

06 Anniversary
Prod. by NaBTok、猿吉
Mixed by NaBTok

07 他力本願
Feat. RHYDA
Prod. by Eiji Suzuki、SIMIZ、NaBTok
Mixed by KND

08 オトノナルホウヘ (Livingdead mix)  
Prod. by Livingdead
Mixed by Livingdead


B面 呪言
09 Wa-Yo  
Feat. KOKORO STAR
Prod. by COBA5000
Mixed by KND

10 落首
Prod. by 犬猿 (猿吉 & SIMIZ)
Mixed by Livingdead

11 イデオロギスト (Original Ver.)
Prod. by DJ KENSEI
Mixed by KND

12 Enough
Prod. by NaBTok
Mixed by NaBTok

13 Chrono
Prod. by GUINOMI (Livingdead & Earth Palette)
Mixed by Livingdead

14 警句
Prod. by Livingdead、Shoichi Murakami
Mixed by Livingdead

15 賣炭翁
Prod. by ジャッキーゲン
Mixed by SINKICHI

16 南無 (不惑ver.)
Prod. by NaBTok
Mixed by NaBTok

17 Wa-Yo (NaBTok mix)
Feat. KOKORO STAR
Prod. by NaBTok
Mixed by NaBTok

Mastered by KND
Painted by enter(ot29)
Caligraghy by Mahiro
Desighned by Toru Kurihara from SOFTRIBE

本田Qの13年ぶりの2ndソロアルバム。
「ことほぎ(言祝ぎ/呪言)」はAB面の2部構成となっている。A面では音を楽しむ音楽讃歌が、B面では先行シングル「イデオロギスト」の流れを汲むコンシャスな内容がうたわれている。
盟友NaBTokに加え京都から猿吉、Livingdead、ジャッキーゲンが、洛外からはDJ KENSEI、alled、COBA5000、Earth Paletteが参加。さらにSOFTのSIMIZ、DachamboのEiji Suzuki、Kobeta PianoのShoichi Murakamiといった様々なセッショニスト達がその独自のサウンドを寄せている。
フィーチャリング勢にもRHYDA、fuyuco.、KOKORO STARといった特色のあるボーカリストが並ぶ。

<コメント>

この祝福を喝ととるか、この喝を出口までの光ととるか、いずれにしても全て今等しく全員に起こっている目の前の事を、そのままスピットする今作はかなり魂削ったんじゃないかな。 これは赤いピルと青いピル両方飲んだ様な現実の中を生きる貴方へのアルバムです。本田Q渾身の魔作。 ──OMSB
オトノナルホウ そこは街の最深部 陰と陽 祝と呪 表裏一体 仲間と共に音と言葉を操り続け13年の時を経て世界を包み込む まさしくこれが 本田Q の音楽 ──JBM
京都にやって来て暫く。鬼才本田Qの感性が冴わたる。才能豊かな仲間たちとの深い繋がりが紡ぐ 心に灯りをともしてくれる タフで繊細 太古と未来 美しくも儚い 名曲目白押しのSci-Fi大絵巻物??? とにかく大興奮でオ ス ス メ!!! ──Daichi (Based on Kyoto)
今日のマジョリティは、明日のマイノリティ。民主主義が弱りきったこの時代に、もしあなたが音楽を大切に思うなら——まずはこの曲を、大切な人に送ってほしい。 ──中村眞大 (NPO法人School Liberty Network 共同代表)
本田Qの『ことほぎ』は、2025年のニッポンのコンシャス・ラップの重要作だ。ヤツは言いたいことが山ほどあるからラップする。この言葉の量と質に打ちのめされるしかない! ──二木信

〈本田Q Profile〉

2003年に降神の1stアルバムに参加し、その奇異なラップスタイルに注目が集まる。その後、WAQWADOMとして都内を中心に活動。2011年には1stソロアルバム「くしゃみ」を発表し、2018年に東横マッシブとして「Trip Travel Tour」の制作に携わる。
2020年から活動拠点を京都に移し、様々なセッションに参加する一方、DJ KENSEI、NaBTok、ジャッキーゲンがトラックを提供したソロEP「ぐうのね」を発表。日本の古典をサンプリングしたリリックが界隈で話題を呼ぶ。
MAD FLOOD、左京君、HATAKE JUNKIEとしても活動中。

N.E.R.O. presents borderless night - ele-king

 音楽とアートを軸に2010年に創刊され、インディペンデントな視点でカルチャーを追い続けたnero magazineの編集長・井上由紀子が、新たに立ち上げたメディア〈N.E.R.O.〉(エヌイーアールオー)。
 その第一弾として、新たなZINEをローンチ。それを記念したスペシャルパーティが6/19、渋谷WWWで開催。当日にはZINEも発売される。
 なお、以下に主催からのメッセージ。「新たなメディア〈N.E.R.O.〉誕生へ——その変化は、メディアの再起動であり、新しい時代の始まりの合図。過去と現在が交錯し、未来を照らすカルチャーの祝祭を、ぜひ目撃してほしい。今回の出演アーティストたちは、その“ボーダレス”なテーマにぴったりな革新的な才能を持つ、世界のニューカマーたちだ」

N .E .R.O. presents borderless night
2025.06.19 [thu]
Shibuya WWW
Open 18:00 / Start 19:00
ADV. 8500 (+1drink)
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▼e+
▼ZAIKO

HighSchool(メルボルン)
ゴシックなムードとポストパンクの冷たさが同居する、注目のバンド。シューゲイズやニューウェイヴの影響を受けつつ、現代的な感覚でアップデートされたサウンドが魅力。

POL(パリ)
詩的で繊細なサウンドを奏でるニューウェーブ・デュオ。ヨーロッパのアートシーンと強く結びついた美学と、感情の機微を音に落とし込む表現力で注目を集めている。

Luby Sparks(トーキョー)
日本のインディーシーンを代表する存在。UKインディー/シューゲイズを下地にしながら、透明感のあるメロディと現代的な感性で国内外から支持を得ている。

guest dj:
KENT from Lillies and Remains
Lillies and RemainsのVocal, Gt。2007年京都にて結成。デビューEP「Moralist S.S.」では日本人離れしたリアルなNew Wave、Post Punkサウンドを見事なまでに鳴らし、衝撃のデビューを飾る。

interview with caroline - ele-king

 ポケットに手を入れたまま、コンクリートの隙間から伸びる雑草をまたいで土手を歩く。川辺には、この季節に相応しく草は青々と茂っているが、向こう側には味気ないマンションが並んで、東京郊外のあいまいな田園地帯の境界をさらにぼかしている。それでもぼくは牧歌的なイメージに浸っている。『キャロライン2』を聴いているのだ。
 いま、これほどロマンティックに聞こえる音楽がほかにあるのだろうか。
 いまどき、8人組という大所帯のロック・バンドが新しく感じられるのはなぜだろう。
 彼ら彼女らは輪になって演奏する。バンドというよりはコレクティヴで、見た目は地味というか目立たないというか、どこかほのぼのしているが楽曲は挑戦的だ。作品の趣きたるや空想的で、陶酔的でもあるが英国風メランコリアも横溢している。フォーキーだがテクスチュアもあって、即興的な要素はバンドの相互作用に大胆な効果をもたらしもするが、総じてキャロラインの音楽は美しい。
 なぜ自分がかくもキャロラインを好きなのかわかっている。けど、その話——チャーリーと過剰消費、現代におけるイアン・マーティンにいわく「20世紀音楽の無限のリミックス状態」等々——をすると長くなるので止めておく。ただ、ぼくはこのバンドの新作を心待ちにしていたひとりであって、いまここで、『キャロライン2』は今年のもっとも素晴らしいアルバムの1枚になると断言しておきたい。1曲目の“Total euphoria”でぶっ飛ばされた。極めて21世紀的なポストモダニストのキャロライン・ポラチェックがゲストで歌う3曲目までは完璧だと思う(君もきっと賛同してくれるはず)。
 インタヴューに答えてくれたマイク・オーマリー(Mike O’Malley)は、キャスパー・ヒューズ(Casper Hughes)、ジャスパー・ルウェリン(Jasper Llewellyn)とともにバンドの中核を作ったひとりだ。2017年、この3人がマンチェスターの大学在学中にキャロラインは産声を上げている。


右で電話をかけているのがマイク。赤いポロシャツがジャスパー。前面に横たわっているのがキャスパー。順に右から左へ、アレックス・マッケンジー、オリヴァー・ハミルトン、マグダ・マクリーン、ヒュー・エインスリー。フレディ・ワーズ・ワース。

すべてのサウンドが調和して作用するのではなく、対立する要素が必要だと思っているんだ。さまざまな要素が対立していて、激しく聴こえるけれど、同時に美しくも聴こえる——その状態まで曲を持っていくまで曲は完成していないと思っている。

お時間ありがとうございます。新作を聴くのがずっと楽しみだったので、今回の取材がとても嬉しいです。

マイク(以下、M):素敵な言葉をありがとう!

古きものと新しきもの、静と動、生楽器とエレクトロニクスの混じったアルバムですね。アルバムの冒頭でやられました。ラフな質感や即興性もあるけど、前作以上に手の込んだ作品でもあると思います。

M:ふむふむ。

■レコーディングはいつからいつまでやっていたんですか?

M:このアルバムは長い時間をかけて作られたんだ。いま挙げられたようなディティールの判断も長い制作期間の途中にほどこされている。レコーディングをいつから開始したのかをはっきりと答えるのは難しい。音源を録音しているときは、まだそれがアルバムに使われることになると気づいていなかったりするからね。でも、アルバムに使われている音源を最初に録音したのはだいたい18ヶ月くらい前だったかもしれない。それくらいの時期から、レコーディングをはじめたり、みんなで音楽合宿をやって作曲をしたり、コンセプトについて話し合ったりしていたんだ。曲のアイデアについて話したり、今回のアルバムではどんなサウンドにして、どんなことをしたいのか——そういうことをみんなで決めていった。アルバムは今年の1月に完成したばかりなんだ。完成してからリリースまでの期間がとても短く感じられたよ。

通訳:その音楽合宿というのは、3人でスコットランドに行ったときのことですか?

M:そうだよ。それが最初の合宿だった。それ以前もロンドンでアイデアについて話し合ったりしていたんだけど、合宿に行ったときに、「これらのアイデアをなんとかまとめて、次のアルバムに使える素材として持って帰れるようにしよう」と初めて決めた。アルバムを作ろうという明確な意志が固まった段階だった。

2022年に『caroline』を出して、ぼくらも大好きでしたが、世界中の多くの人があのアルバムが好きで、そうしたリアクションで得た自信はあったと思います。アルバム制作に迷いはありませんでした? 「俺たちはもう、これしかないぜ!」みたいな方向性は定まっていました?

M:いい質問だね。迷いというものはなかったけれど、今回と前回のアルバムではまったく状況が違った。前回のアルバムを出したとき、キャロラインというバンドを知っている人はあまりいなかった。イギリスに何人かのファンはいたけれど、いまと比べたらずっと小規模だった。アルバムがリリースされて、各所で宣伝されて、ぼくたちの名前が広まった。そして(名が広まったという時点で)セカンド・アルバムを作るとなると、自意識過剰になったり、自分たちの活動に疑問を感じたりするかもしれないとは思っていた。制作に入る前は、どんなサウンドを追求するべきなのかがわからないときがあった。でも制作に入ってからは、何をすべきで何をすべきじゃないかということがわかってきた。制作の流れができてからは、自信を持って自分たちを疑うことなく制作に臨めたから、ぼくたちは幸運だったのかもしれない。セカンド・アルバムにプレッシャーはつきものとよく言うからね。ぼくにもそのプレッシャーはあったけれど、今回のアルバムの仕上がりには満足しているし、制作過程においても自分達のやっていることに自信を持って制作することができたと思う。

歌に関して、前作以上に意識的になっているように感じたのですが、あなたがたはどんな「歌」、どんな「歌手」がお好きなのでしょうか?

M:それもいい質問だね。好きな歌手か……これはぼく個人の答えになってしまうけれど、ぼくはアーサー・ラッセルがすごく好きなんだ。他にも好きな歌手はたくさんいるよ。でも、ぼくはある「歌手」に注目して音楽を聴くということをあまりやらないんだ。いろいろな種類の音楽を聴いているから、ある特定の歌手にフォーカスするということがとても稀なんだ。でも、例えばジャスパー(・ルウェリン)やマグダレーナ(・マクリーン)など、バンドメンバーで歌う機会が多い人たちには好きな歌手がいたり、参考にしている歌手がいると思う。ぼくは今回のアルバムではあんまり歌っていないからね。だから好きな歌手や歌についてはうまく答えられない。毎週好みが変わったりするから、特定の歌手に注目していることが少ないんだ。

クローザーの“Beautiful ending”も凝っていますが、ぼくは1曲目の“Total euphoria”に驚かされました。バンドにとって他の何かに似ていると言われるのはイヤだと思いますが、すいませんと謝りつつ、Still House Plants にちょっと近いアプローチを感じたんですよね。SHPはお好きですか?

M:好きだよ。彼らのライヴはロンドンで何度も観たことがある。“Total euphoria”を書いていたときに、とくに彼らのことを参考にしたわけではないけれど、スティル・ハウス・プランツと比較されるのも理解できる。リズム上で起きていることが似ているのかもしれない。すごくいいグループだと思うし、去年リリースされたアルバムは素晴らしかった。ライヴに何度も行ったことがあるけれど、彼らのライヴはいつ観てもすごくエキサイティングだよ。彼らの体制は完璧に整っていると思うんだ。そんなところが素晴らしいと思う。

“Song two”も魅力的な曲です。これもまた前作にはなかったタイプの曲ですが、曲作りは誰かひとりが作ってきたものをみんなで肉付けするんですか?

M:そうやって曲ができるときもあるけれど、曲によって作られ方は違うんだ。例えば、キャスパーが「最近よく弾いているコードで試してみたいものがある」と言って、みんなに聴かせて、そこからみんなで即興していくというパターンもある。こういう場合は、先にヴァースやコーラスのアイデアがあるというわけではないんだ。今回のアルバムには前回と比べて曲の構成がしっかりとしたものも多いけれど、最終的にそこまで構成がきちんとした曲にはならなかった。だから、いま話したようなパターンや、3人の即興からはじまるパターンなどがある。即興で歌ったり、即興のギター演奏やドラム演奏がたくさんおこなわれる。そうやって曲が作られていくことが多い。でも曲によって違うんだよ。曲のパートが気づいたら浮上していることもあって、それがどこから浮上してきたのかわからないけれど、いい感じのパートだから、それで進めてみる。そんな感じ。

caroline にとって曲はひとつの物語でしょうか?

M:曲には、物語のなかから切り取った断片のようなものがあるかもしれないね。ある行動の詳細や環境、ある出来事など。でも、曲を通して物語が語られるということはあまりない。歌詞に関して言うと、ジャスパーは別に物語を語っているわけではないと思う。彼の頭のなかで何が起こっているのかはわからないけれど、物語というよりは、意識の流れみたいなものだと思う。彼が歌詞や歌のパートを書くときは、即興の歌からはじめることが多いんだ。メロディやサウンドからはじまって、それがじょじょに歌詞としての形を帯びてくる。だから抽象的な意識の流れみたいなものなんだ。でも些細な瞬間や物語を行ったり来たりしているときもたしかにある。ぼくが思うに、歌詞とは、言葉を扱うソングライティングの一種であって、はじまりがあって終わりがあるという直線的なものではなく、大きなボウルにさまざまな要素がたくさん入っている感じに近いと思っている。


中央にいるピンク系のドレスを着ているのがゲストのキャロライン・ポラチェック。

8人で輪になって演奏すると、すごく支えられている感じがする。一体感や支えられているということを強く実感できる体験なんだよ。

歌詞に、社会や政治は関係していますか?[*前作の“Good Morning (Red)”は、2017年のジェレミー・コービンの社会主義労働党運動の台頭と、それにともなう楽観主義の波にインスピレーションを受けたとピッチフォークの取材では語っている] 

M:社会や政治に関する明確な言及はしていないと思う。(ぼくは歌詞を書いていないから)歌詞の由来を答えることはできないけれど、歌詞が生まれる瞬間はぼくもその場にいた。歌詞を聴いていると、無意識にいろいろなものが思い出されたり、感じられたりすると思う。でも、ぼくが知る限り、それが何らかの具体的な説明だったり、社会や政治に関する意見ではない。歌詞にはぼくたちが生きる時代について歌っている内容もあるけれど、そこに批判や強い意見があるというわけではない。現代の生活をほのめかす要素はあるけれど、とても抽象的なものとしてぼくには感じられるね。

3曲目や5曲目のようなフォーキーな響きは、前作にもありましたが、今回はとくに印象的に思います。英国にはフォークに関する歴史が綿々とありますが、そういうことは意識されましたか? 

M:バンドで使用されている楽器がフォークのものに近いということはときどきあると思う。それらはキャロラインのサウンドを形成する要素のひとつだと思うし、ファースト・アルバムでもそういうサウンドは色濃かったと思う。でも使っている楽器だけでフォークとは言い切れないと思う。キャロラインはアコースティック・ギターやフィドルを使っているけれど、それをすごくフォークっぽい演奏方法で扱っているわけではなくて、むしろぼくたちの関心や嗜好や演奏方法に、フォーク的な要素があるということだと思う。それが無意識に曲に表れてくるのだと思う。バンドとして「こういう風に演奏しよう」とみんなで話し合って、決めたことではないんだ。でもみんなで演奏していると、そこにフォークの響きがあることは暗黙の了解で感じられる。ただし、それはフォークの表面的なサウンドというだけなんだ。ぼくたちの音楽にはフォークの伝統と似通った要素はまったく見当たらないと思うから。また、フォーク音楽をやっている人たちの根本的な理由も、ぼくたちのバントとは関連性のないものだと思うから。でも、ぼくたちのアルバムを聴くと、その節々にフォーク・ミュージックのようなサウンドが含まれているのはたしかだね。

また、レトロでフォーキーな響きのなかにオートチューンを入れることで、どんな効果を狙っているのですか? たんに音響的な面白さなのか、それとも、そこには意味があるのか?

M:深い意味があるかはどうかわからないけれど、ぼくたちは昔から、可能な限り極端なジャクスタポジション(対比)をしたいと思っていて、今回のアルバムではそれをさらに押し進めることができたと思う。ぼくたちが書く曲においては、すべてのサウンドが調和して作用するのではなく、対立する要素が必要だと思っているんだ。さまざまな要素が対立していて、激しく聴こえるけれど、同時に美しくも聴こえる——その状態まで曲を持っていくまで、曲は完成していないと思っている。その要素たちの関係性が自然なものに感じられなければいけないんだ。対立する要素を無理矢理あわせた感じはあるけれど、あえて聴くのに耐えられない対立を探るのではなく、その組み合わせを聴いたら魅力的だと感じられる。そういうバランスを求めている。根本的に異なったスタイルやサウンドを合わせるということが、今回の曲における大きなテーマだった。ふたつやそれ以上の対立した要素を組み合わせるということ。

ちょっとめんどくさい質問で申し訳ないのですが、“Two riders down”はクレシェンドで、じょじょに盛り上がる曲ですが、あの高揚感は何を意味しているのでしょう? アルバムのなかであの曲が直球な盛り上がりを見せているので、気になっています。

M:それは嬉しいね! 何を意味しているか……ストレートな答えを出すのは難しい。というのも、ぼくたちは曲を作っている時の90%は直感でそれをやっているから。それにぼくたちには演奏においてクライマックスに向かっていくという傾向がある。あの曲では、音が常に拡張しては縮小していくということに重点を置いていたから、お互いに覆いかぶさってくるレイヤーがあった。ぼくたちは、最終的な目標(ゴール)を共有して作曲していたと思うけれど、その目標が何なのかという話を具体的にしたわけではないんだ。この曲がまとまったのはアルバム制作の終盤だったんだけど、メンバーみんなが本質的に、この曲で何をやろうとしていたのかわかっていたと思う。終わりのない勢いで突き進んでいくような感じで、常に拡張しては縮小していく曲を作るというのが目標だったと思う。それから当初、表現しようとした感じがあったんだけど、最終的にその感じは少し控えになった。それは、曲を聴くとわかると思うんだけど、ふたつの部屋があって、各部屋では曲が演奏されているということ。つまり、ふたつの部屋から同時に曲が演奏されているという状態。曲を通して、そのふたつの部屋のバランスが崩れてくる。ひとつの部屋では弦楽器のセクションがあって、シンフォニーのような音がするけれど、もうひとつの部屋では騒がしいロック・バンドで、そのふたつのバランスが崩れたり、偏ったりする。この曲では、そういうことを狙いとしていたんだけど、最終的には控えめな響きになったね。

アルバムのタイトルが意味していることは?

M:「セルフタイトル・アルバムから先に進んだ」ということを意味するアルバム名を考えていたんだ。これはぼくたちの2枚目のアルバムだから、そういう意味では『caroline 2』は適したタイトルだと思う。それに、みんなが満場一致でピンときたタイトルが『caroline 2』だったというのもある。すごく壮大で大袈裟。それに自己主張が強いようにも聞こえる。そういう意味で面白いタイトルかなと思ったんだ。とても重要な作品のようなタイトルに聞こえるところが面白いと思った。うまく説明できないけど、『caroline 2』がフィットして気に入ったんだ。

それにしても、メンバーが8人もいると練習もツアーもたいへんですよね。リハーサル・スタジオの広くなきゃいけないし、ツアー中にバスに乗るのもレストランに入るのもたいへんだと思うんですけど、8人いることで良かった、素晴らしい、最高だと思ったことはありますか?

M:素晴らしい質問だね。たしかに8人だとメンバーの移動や予定管理も大変だし、みんなの予定をずっと前から決めて計画しないといけない。でもそれだけの価値はあって、いつでもそれが実感できるよ。ぼくたちはすごく仲が良くて、お互いを大切に思っている。小さなグループに分かれることもあって、それはそれで良いことなんだ。常に大人数のグループでいる必要はないから、小さなグループに分かれる。するといろんな人たちと時間を過ごしていろいろな体験ができる。バンドにはいろいろな人たちがたくさんいるからね(笑)。それに8人で輪になって演奏すると、すごく支えられている感じがする。一体感や支えられているということを強く実感できる体験なんだよ。一緒に演奏していると、みんなで共有した、あるひとつの目標に向かって進んでいる感覚があって、それが8人ともなると、たとえば4人のグループよりも、さらに人と人との交流や交渉がおこなわれるから、その感覚もさらに強いものになる。

それではせっかくの機会なので、最後に、過去でも現在でも、英国のバンドで共感しているバンドがあれば教えてください。

M:これもいい質問だね。どうだろう? ぼくたちみんなが好きなのは、ライフ・ウィズアウト・ビルディングス。グラスゴーのバンドで活動期間は短かったんだけど、キャロラインの活動において大きなインスピレーションになっている存在だ。あと他に英国のバンドだと誰だろう? 他にもたくさんいるけれど、ライフ・ウィズアウト・ビルディングスには大きな影響を受けたから、それをぼくの答えとしたい。とても美しい、蛇行するような音楽。ロック・バンドなんだけど、エモとかスロウコア時代のギターで、ヴォーカリストのスー・トンプキンズがマントラのような歌い方をする。即興の歌い方みたいなんだけど、本当はちゃんと書かれたものだと思う。楽しくて、弾むようなエネルギーがあって本当に最高なんだ。そして本当に美しい。いろいろな要素が美しく組み合わさっている。 

Four Tet - ele-king

 フォー・テットが、本名のキーラン・ヘブデン名義でナッシュヴィル在住のフォーク・ミュージシャン、ウィリアム・タイラー(4年前のマリサ・アンダーソンとの共作は名作でしたね)との新アルバム『41 Longfield Street Late '80s』を発表。9月19日のリリースを予定しているとのこと。リード・トラックとしてカントリー歌手のライル・ラヴェットの楽曲” If I Had A Boat”のカヴァーが公開中。

 ヘブデンとタイラーは2023年に2曲入のEP「Darkness, Darkness / No Services」を発表しており、今回のアルバムはその続編にあたる。80年代のカントリーとフォークから受けた影響を時間をかけて新しいサウンドへと転化していくような内容になるようだ。

Artist : Kieran Hebden (Four Tet) + William Tyler
Title:41 Longfield Street Late '80s
Release Date:2025.9.19
Label : Eat Your Own Ears Recordings / Temporary Residence Ltd.
Format : Digital / LP / CD
Pre-Order : https://fourtet.bandcamp.com/album/41-longfield-street-late-80s

Tracklist:
1. If I Had a Boat
2. Spider Ballad
3. I Want an Antenna
4. When It Rains
5. Timber
6. Loretta Guides My Hands Through the Radio
7. Secret City

DJ Haram - ele-king

 ニュージャージー出身で現在はニューヨークのブルックリンを拠点とするアーティスト・DJハラムが、デビューアルバム『Beside Myself』を7月18日に〈Hyperdub〉からリリース。
 共同プロデューサーにオーガスト・ファノンを迎え、ハラムのヒップホップ/ノイズユニット・700 Blissの相方としても知られるムーア・マザーのほか、アーマンド・ハマー(billy woods + ELUCID)、ベイビィ・ムタ、シャ・レイ、Dakn、エジプトのエル・コンテッサ、「ジャージー・クラブ・クイーン」として知られるケイ・ドリズ、トランペッターのアキレス・ナバーロ、ギタリストのアブドゥル・ハキム・ビラルを招いている。

 『Beside Myself』はハラムのルーツである中東圏の音楽を土台にしつつ、そこにジャージー・クラブ、パンク、ノイズといった要素を加え、それらを電子音響的な楽器とサンプリング、タンバリン、シェイカー、ダルブッカ、ヴァイオリンといったエッセンスで補完するような、折衷的な内容となるとのこと。恍惚的なレイヴ・シンセ、壁のような808ベース、うごめくような低音で埋め尽くされた注目作、ぜひともチェックしておきたい。

Artist : DJ Haram
Title:Beside Myself
Release Date:2025.7.18
Label : Hyperdub
Format : Digital / LP / CD / Casette
Pre-Order : https://djharam.bandcamp.com/album/beside-myself

Tracklist:
1. Walking Memory
2. Remaining ft. Dakn & Aquilles Navarro
3. Fishnets ft. Bbymutha & Sha Ray & August Fanon
4. Lifelike ft. Moor Mother & 700 Bliss
5. Voyeur
6. Do u Love me ft. Kayy Drizz
7. Stenography ft. Armand Hammer
8. IDGAF ft. Abdul Hakim Bilal
9. Badass ft. Carmen Nebula
10. Loneliness Epidemic
11. Sahel ft. El Kontessa
12. Distress Tolerance
13. Who Needs Enemies When These Are You Allies?
14. Deep Breath (An Ending)

Lucrecia Dalt - ele-king

 今年1月にまさかのデイヴィッド・シルヴィアンをフィーチャーしたシングル “cosa rara” を発表し、一部で注目を集めていたルクレシア・ダルト。単曲でのコラボかと思いきや、なんとアルバム1枚まるごといっしょにつくっていたようです。高い評価を得た前作『¡ay!』から早3年、共同プロヂュースということで期待の高まるニュー・アルバム『A Danger to Ourselves』は、〈RVNG Intl.〉より9月5日にリリース。現在、新曲 “divina” が公開中です。

前作がThe Wireの年間ベスト1位に輝いたLucrecia Daltのデヴィッド・シルヴィアンを共同プロデューサーに迎えた新作『A Danger to Ourselves』が9/5にリリース決定
先行1stシングル「divina」がMVと共に公開

2022年にリリースした『¡Ay!』が英The Wireで年間ベスト1位を獲得し、MUSIC MAGAZINE誌でもロック(ヨーロッパほか)で年間ベストに選出されるなど注目を集めさらに評価が高まる中、待望の新作アルバム『A Danger to Ourselves』がRVNG Intl.から9月5日にリリース決定。本作はデヴィッド・シルヴィアンを共同プロデューサーに迎え(1曲ゲスト・ヴォーカルも)、フアナ・モリーナやCamille Mandoki等も参加し、集大成であると同時に出発点とも言える作品。本日先行ファースト・シングルとして「divina」がミュージック・ビデオと共に公開。

『A Danger to Ourselves』は、人間関係の複雑さをありのままに描き出した、大胆な作品。近年のアルバムに見られる虚構の物語を削ぎ落とし、本作は真摯な感情の表出を体現している。深く個人的な対話のように響き渡るサウンドの中で、ダルトの歌声は力強く前面に押し出され、豊かなアコースティック・オーケストレーションとプロセッシング、コラージュされたパーカッション・パターン、そして豪華絢爛な共演者たちの力強いサポートが彩りを添えている。

ファースト・シングル「divina」はダルトが創り上げる多面的なサウンド・コレオグラフィーを見せている。その本質は型破りなドゥーワップ・ラブソング。スペイン語と英語が行き交う中、スタッカートのピアノの音とフィンガー・スナップが、カスケードするエレキギターにグルーヴ感を添える。「divina」は、炎、冥界、そして愛の告白といったイメージの中を舞う、まるで割れた鏡のように、反射が現れては消え、曲全体を通して意味が揺らめき、変化していく。

同時に公開されたミュージック・ビデオは、ルクレシアがコンセプトを手掛け、サウスウェスタン出身の映画監督で、2012年のドキュメンタリー映画『ICON EYE』も記憶に新しいTony Loweが監督を務めている。このミュージック・ビデオでは、ルクレシアとマルチディシプリナリー・アーティスト、Lucia Maher-Tatarが共演する。

Lucrecia Dalt New Single “divina” out now

Artist: Lucrecia Dalt
Title: divina
Label: PLANCHA / RVNG Intl.
Format: Digital Single
Listen / Buy: https://orcd.co/ar7rq3r

Lucrecia Dalt – divina [Official Video]
YouTube: https://www.youtube.com/watch?v=r23tegbbCDw

Featuring Lucrecia Dalt and Lucia Maher-Tatar
Directed by Tony Lowe

Lucrecia Dalt New Album “A Danger to Ourselves”
Available September 5, 2025

Artist: Lucrecia Dalt
Title: A Danger to Ourselves
Label: PLANCHA / RVNG Intl.
Cat#: ARTPL-238
Format: CD / Digital

※日本盤ボーナス・トラック収録予定
※解説・歌詞・対訳付き

Release Date: 2025.09.05
Price(CD): 2,200 yen + tax

2022年にリリースした『¡Ay!』が英『The Wire』で年間ベスト1位を獲得し、MUSIC MAGAZINE誌でもロック(ヨーロッパほか)で年間ベストに選出されるなど一躍注目を集めたコロンビア出身、ドイツはベルリンをベースに活動しているエクスペリメンタル・アーティスト、Lucrecia Daltの待望の新作アルバム。
デヴィッド・シルヴィアンを共同プロデューサーに迎え、フアナ・モリーナやCamille Mandoki等豪華ゲスト陣も参加し、集大成であると同時に出発点とも言える新たな傑作が完成。

コロンビアのペレイラで生まれたルクレシア・ダルトは、音楽愛好家の家庭で育ち、9歳のときにギターを手にするよう勧められた。ダルトはこの創造的な衝動に従い、コンピュータを使った制作に魅了され、土木技師としての急成長のキャリアを捨て、メデジンからバルセロナ、そして最終的にはベルリンへと移り住み、そこで自身の独特で冒険的なサウンドを発展させた。彼女の作品は、RVNGに移籍してから『Anticlines』(2018年)、『No era sólida』(2020年)、そして2022年に発表した特筆すべき画期的なSFボレロ・アルバム『¡Ay!』の3作をリリースし、その過程で、『On Becoming a Guinea Fowl』(2024年)、HBOのシリーズ『The Baby』(2022年)、そして近日公開のサイコホラー『Rabbit Trap』などの映画音楽制作にも活動の幅を広げ、サウンド・インスタレーションやパフォーマンスでは、彼女の光り輝く転調と独特で進化するヴォーカル・アプローチを披露している。

このたびリリースとなる『A Danger to Ourselves」は、ダルトが『¡Ay!』のツアー中の生活や新しい人間関係の形成期に書き留めた断片的な宣言から生まれた。彼女は2024年1月に、これらの親密な断片を音楽的な構成に結晶化させ始め、目的のある曲群を徐々に形にしていった。アルバムのサウンド構成は、コラボレーターのAlex Lázaroが提供するダイナミックなドラム・ループを基盤としており、そのパーカッシヴなバックボーンは、『¡Ay!』と同様、ダルトの重層的なヴォーカルのキャンバスとなった。従来のメロディックな構造に従うのではなく、このアルバムはベース・ライン、リズム、作曲デザインの相互作用によって音楽性を生み出している。大胆なプロダクションの選択と緻密なレコーディング・テクニックによって、声と楽器が新たな深みと輝きをもって調和する、ダルトの妥協のない音の明瞭さへの探求を明らかにしている。

明確に反コンセプチュアルな『A Danger to Ourselves』は、ダルトが音楽そのものに遮るもののない集中を導く詩的な本能であり、楽曲の枠組みを超越するボーカルと、原始的でロマンチックなスリルのきらめく響きを探求している。ダルトの細部への明晰なこだわりは、あらゆる小節に感じられ、献身的な姿勢が同心円を描きながら、個人的なものと霊的なものを統合する場を形成している。直感的な実験から生まれたこのアルバムは、シンプルなジェスチャーと複雑な構成を用いて、スペイン語と英語の間を伸縮自在なサウンドスケープと魅惑的な聴覚コラージュを通して行き来する「divina」のように、彷徨うようなラインを織り成している。

アルバム・タイトルは、デヴィッド・シルヴィアンの歌詞「cosa rara」から生まれたもので、人生の儚さ、愛の揺らぎ、奇跡への憧れを象徴的に映し出している。『A Danger to Ourselves』は、こうした超越的な状態を映し出し、人間の複雑な絡み合い、より啓示的な内面世界へ向かうドーパミン・スパイラルや一般的な経路からの解放への願望を屈折させている。高名なアーティストが多数参加したコラボレーションのコラージュであり、シルヴィアン自身も『A Danger to Ourselves』で共同プロデューサーとミュージシャンの二役を演じた。また、フアナ・モリーナが「the common reader」で共同作曲と演奏を、Camille Mandokiが「caes」でヴォーカルを、Cyrus Campbellがエレクトリック・ベースとアップライト・ベースの基礎を、Eliana Joy が複数のトラックでバッキング・ヴォーカルとストリングス・アレンジを担当している。

『A Danger to Ourselves』の光り輝く深淵において、ダルトは、音の錬金術を通して個人的なものが普遍的なものとなる深遠な変容を演出している。このアルバムは、集大成であると同時に出発点でもあり、彼女のこれまでの実験的な旅が、驚くほど親密でありながら広大なものへと収束する入り口でもある。感情的な啓示が網の目のように張り巡らされており、各曲は、ダルトの歌声が新たなハーモニーの領域を超えて啓示を体現する、脆弱性の的確に示している。従来の境界を超えた直感の生きた記録を創り上げ、音楽が鏡となり窓となる世界へと導いている。

TRACK LIST:

01. cosa rara (ft. david sylvian)
02. amorcito caradura
03. no death no danger
04. caes (ft. camille mandoki)
05. agüita con sal
06. hasta el final
07. divina
08. acéphale
09. mala sangre
10. the common reader (ft. juana molina)
11. stelliformia
12. el exceso según cs
13. covenstead blues

+ボーナス・トラック収録予定

Concept by Lucrecia Dalt
Music by Lucrecia Dalt and Alex Lazaro
Produced by Lucrecia Dalt and David Sylvian
Mixed by David Sylvian
Mastered by Heba Kadry, NYC
Lacquers cut by Josh Bonati *Vinyl only credit
Cover photo by Yuka Fujii
Photo retouching by Louie Perea
Design by Will Work For Good

Lyrics and vocals by Lucrecia Dalt except “cosa rara” by Lucrecia Dalt and David Sylvian; and “the common reader” by Lucrecia Dalt and Juana Molina
Vocals on “the common reader” by Lucrecia Dalt and Juana Molina
Vocals on “caes” by Lucrecia Dalt and Camille Mandoki
Backing vocals on “amorcito caradura”, “no death no danger” and “covenstead blues” by Eliana Joy
Backing vocals and howls on “divina” by Alex Lazaro

All instruments performed by Lucrecia Dalt except:
Percussion by Alex Lazaro
Feedback guitar on “cosa rara” by David Sylvian
Electric guitar solo on “covenstead blues” by David Sylvian
Electric guitar on “stelliformia” by Alex Lazaro
Electric bass and contrabass by Cyrus Campbell except
Electric bass on “mala sangre” by William Fuller
Soprano and tenor saxophone by Chris Jonas
Violin by Carla Kountoupes and Karina Wilson
Cello by Amanda Laborete
Palms and finger snaps by David Sylvian and Alex Lazaro

All instruments and vocals recorded by Lucrecia Dalt except strings recorded by Marc Whitmore and vocals by David Sylvian, Camille Mandoki and Juana Molina by the artists themselves.
String arrangements in “hasta el final” by Lucrecia Dalt and Eliana Joy

dublab.jp - ele-king

 1999年にLAで立ち上がった非営利インターネット・ラジオ局のdublab。2012年にその日本支部として発足したのがdublab.jpだ。LAと深い関わりをもつ彼らが、今年1月に発生した当地の大規模な山火事被災者たちの支援を目的として、チャリティ・コンピレーション・アルバムをリリースする。

 その『dublab.jp presents A Charity Compilation in Aid of the 2025 LA Wildfires -resilience-』は計38曲ものトラックをフィーチャー。岡田拓郎、食品まつり a.k.a. FoodmanやBUSHMIND、Daisuke Tanabe、Albino Sound & Daigos (D.A.N)、SUGAI KEN、優河、Ramza×hotaru、TAMTAM、嶺川貴子、白石隆之などなど、おもに日本の有志たちによる楽曲が収録されている(カール・ストーンも参加)。収益は全額、被災者に寄付されます。この試みが少しでもLAのアーティストやDJ、被害に見舞われた人びとの助けとならんことを願って。

https://dublabjp.bandcamp.com/album/a-charity-compilation-in-aid-of-the-2025-la-wildfires-resilience

Artist : V.A.
Title:dublab.jp presents A Charity Compilation in Aid of the 2025 LA Wildfires -resilience-
Release Date:2025.6.7(予定)
Label : dublab.jp
Format : Digital
Buy : https://dublab.jp/show/resilience/
Tracklist:

1. BLUEVALLEY: own -minimal mix-
2. BUSHMIND: Sunbright
3. Carl Stone: The Fiery Crab
4. Daisuke Tanabe: for the twin (masutomi edition)
5. Dekai Fune|でかい船: K0
6. DJ Dreamboy: Beyond A Dream
7. DJ Pigeon: Echo Chamber Recovery
8. "Dungeoneering -Albino Sound&Daigos(D.A.N)- “: Hua Jiao
9. Endurance: Jonesy
10. Final Drop: ASAKURU
11. Foodman|食品祭り: sunflower
12. Fujimoto Tetsuro: Akashi
13. Kankyo (Yu Arauchi + Hiroki Chiba)|王睘 土竟(荒内佑 + 千葉広樹): Yuku
14. Leakman: When I was 8、I drank orange juice、in LA
15. mamekx: UTOPIA
16. methodd: Adaptive Radiation
17. Metome: Toucan
18. Ramza×hotaru: kagashima,kodomo mikoshi#3
19. RGL: Echoes for the West
20. RLP: Memories
21. Sakura Tsuruta: MB
22. Shöka: Polaris
23. SUGAI KEN: れじりえんす
24. SUISHOU NO FUNE. |水晶の舟: Cherry Appears in a Dream|夢に現れた"チェリー
25. SUNNOVA: 救
26. suzuki keita: contingency
27. Suzuki-33rpm-Masao|鈴木33回転正夫: Yattokame Biscuit
28. Takako Minekawa|嶺川貴子: みんなへ
29. Takayuki Shiraishi|白石隆之: Kōsen-ga
30. Takuro Okada, Aska Mori, Kazuhiko Masumura: Valley
31. TAMTAM|花を一輪 - Hana Wo Ichirin
32. TARO NOHARA: AIR
33. Tidal: Nagi
34. YAMAAN: LAKE
35. yohei: Home For Now
36. Yoshio Ojima & Satsuki Shibano: Germinatio
37. Yosi Horikawa: Second hand
38. Yuga. |優河: 愛を Session at the Hut

Compile and Produce: Yuki Tamai, Hi-Ray, mamekx
Mastering: AZZURRO
Production Management: Yusuke Ono
Advisory: Masaaki Hara
PR Support: Kunihiro Miki
Design: Kohei Nakazawa

2025年1月7日、ロサンゼルスを襲った広範囲かつ長期にわたる山火事は、多くの住民の生活を一変させました。
家を失い、大切なものを奪われた人々の中には、我々のdublabの仲間であるアーティストやDJたちも含まれています。

あれから5ヶ月が経とうとしている現在、日本国内はもちろん、現地でも報道されることは少なくなっていますが、被災者たちの困難な状況は今なお続いています。

それでも、ロサンゼルスのコミュニティは力強く結束し、復興に向けたさまざまな活動を行っています。特にdublabを中心とした音楽コミュニティは、支え合いながら歩みを進めています。

インフラの完全な復旧には莫大な資金と、長期的な支援が必要です。
災害復興は短距離走ではなく、マラソンであるとも例えられます。私たちは今こそ、音楽を通じた持続的なサポートのかたちを考えるべき時だと感じています。

そして、その一環として、私たちはチャリティ・コンピレーションアルバムを制作しました。
このアルバムには、ロサンゼルスの音楽文化に影響を受けてきた日本のクリエイターたちが、リスペクトと共感を込めて参加しています。

驚くほど幅広いサウンドが詰まったこの作品は、ロサンゼルスの多様で豊かな音楽文化そのものであるといえ、その文化に敬意を表し、それを今に繋いでいるコミュニティを、音楽を通して支援していただければ幸いです。

本アルバムの収益は全額、ロサンゼルスのdublabを通じて被災者へ寄付されます。

*ENG

On January 7, 2025, a widespread and prolonged wildfire struck Los Angeles, drastically changing the lives of many residents. Among those who lost their homes and cherished possessions were artists and DJs who are part of our dublab community.

Nearly five months have passed since the disaster. While media coverage has declined both in Japan and locally, the affected individuals continue to face challenging circumstances.

Still, the Los Angeles community remains resilient and united, actively engaging in various recovery efforts. In particular, the music community centered around dublab is moving forward by supporting one another.

Full restoration of infrastructure will require substantial funding and long-term assistance. Disaster recovery is often likened not to a sprint, but to a marathon. We believe now is the time to consider sustainable forms of support through music.

As part of that effort, we have created a charity compilation album. This album features Japanese creators who have been influenced by Los Angeles’ musical culture, participating with deep respect and solidarity.

Packed with an astonishingly wide range of sounds, this project embodies the diverse and rich musical culture of Los Angeles. We hope that through music, you can help support the community that honors and continues this cultural legacy.

All proceeds from this album will be donated to the victims of the wildfire through dublab in Los Angeles.

5月のジャズ - ele-king

Emma-Jean Thackray
Weirdo

Brownswood Recordings / Parlophone

 トランペットやキーボードなどを操るマルチ演奏家/作曲家にしてシンガーでもあるエマ・ジーン・サックレイが、2021年のデビュー・アルバム『Yellow』以来となる新作『Weirdo』を発表した。女性ミュージシャンが多く活躍するロンドンの中でも極めて多彩かつユニークな才能を有するエマは、多くのミュージシャンが通ってきたトゥモローズ・ウォリアーズの出身者とはまた異なる個性を持つ。クラシックに始まり、インディ・ポップやグランジ、フリー・インプロヴィゼイションやジャズ/フュージョン、ソウルやファンク、ゴスペルやアフロなどさまざまな音楽の影響を受けてきたエマだが、『Yellow』はそうした影響や多様性が融合したもので、世間からも高い評価をもって受け入れられた。個人的な印象では思いのほかにダンサブルなサウンド・カラーを感じさせる部分があり、ディープ・ハウスやブロークンビーツ的なアプローチを感じさせるところもあったわけだが、彼女自身がダンス・サウンドやグルーヴィーな音楽が好きで、そうした方向性の作品もアルバムに収録したかったからということだった。ゴスペルもそうだが、ダンス・ミュージックは強いパワーを周囲の人と共有したいというエナジーから生まれるもので、エマの楽曲にはそうしたパワーが備わっている。2023年にエマは長年のパートナー亡くしていて、そのときに制作途中だった『Weirdo』は方向性の変更を余儀なくされた。深い絶望の淵にいたエマを救うべく、『Weirdo』は再生や生存のパワーを持つ作品となっていった。『Yellow』にあった生命力のパワーを、さらに強く感じさせるアルバムとなっている。

 『Yellow』ではほかのミュージシャンとのライヴ・セッションの素材を、自宅スタジオで彼女が演奏した素材などを交えて編集した内容だったが、『Weirdo』はほぼ彼女ひとりで演奏・録音・編集をおこなっており、トランペットはじめ管楽器、鍵盤楽器、ギター、ベース、ドラムス、パーカッションやヴォーカルと全てを担当する。例外的にアメリカからエマと同じマルチ・ミュージシャンのカッサ・オーヴァーオールと、俳優/コメディアンでラッパー/ヒューマン・ビートボクサーとして知られるレジー・ワッツがゲスト参加。そのレジー・ワッツのヴォーカルをフィーチャーした “Black Hole” は、『Yellow』でも見られたファンカデリック・スタイルのパワフルなファンク・ナンバー。ファンカデリックのアフロ・フューチャリズムを投影したような楽曲で、彼女自身は黒人ではないのだが、黒人以上にブラックネスやファンクネスに溢れている。『Weirdo』は『Yellow』以上にヴォーカルの比重が高くなっており、ネオ・ソウル調の “Stay” などは彼女のシンガーとしての成熟度を物語る。ディープ・ハウス調の “Thank You For The Day”、ほのかにアフロビートを取り入れた “Save Me” にしても、基調となるのはエマのソウルフルなフィーリングで、彼女のシンガーとしての資質にうまく目を向けたアルバムと言えよう。


Chiminyo
NRG 4

NRG Discs

 サウス・ロンドンのジャズ・シーンを中心に、マイシャやシカーダなどのグループでも演奏してきたドラマー/パーカッション奏者のティム・ドイル。彼のソロ・プロジェクトであるチミニョは、2019年にEPの『I Am Chiminyo』でデビューし、2020年にはファースト・アルバムの『I Am Panda』をリリースしている。チミニョにおいては生演奏とエレクトロニクスの融合が顕著で、ダブステップ、ベース・ミュージック、ビート・ミュージックなどとジャズやエクスペリメンタル・ミュージック、インプロヴィゼーションを結び付けたユニークなサウンドを展開する。『I Am Panda』においても自身でドラムやパーカッションのほかに、ピアノとヴォーカル、そしてエレクトロニック・プロダクション全般も手掛け、ゲスト・ミュージシャンでストリングスや民族楽器の演奏家らも交え、アフリカ、中央アジア、東南アジア、東ヨーロッパなどのエスニックなサウンドを取り入れた独特の世界を表現していた。『I Am Panda』以後は自主レーベルの〈NRGディスクス〉を主宰し、『NRG』というアルバムを定期的にリリースしている。これまで第3集まで発表してきたが、それぞれ構成メンバーは異なるもののシンセ類を交えたエレクトロニックな作品集となっている。ロンドンにおけるフューチャリスティックなジャズにおいては、ザ・コメット・イズ・カミングと双璧と言えるような内容だ。

 そして、この度『NRG』の第4集がリリースされたが、今回はロンドンのジャズ・クラブの名門であるロニー・スコッツでのライヴ録音となる。サウス・ロンドン・シーンを支えるベーシストのダニエル・カシミールほか、ヌバイア・ガルシア、エマ・ジーン・サックレイ、ザラ・マクファーレンらと共演してきたキーボード奏者のライル・バートンなどが伴奏し、ライヴ・エレクトロニクスも参加する。“Into The Storm” でチミニョはドラムンベース的なビートを叩き出し、緊迫感を煽るジェイムズ・エイカーズのサックスやSEが絡み、後半へ向けて爆発していくコズミック・ジャズとなっている。“Chrysalis” はダブステップ調の楽曲で、ダブ・エフェクトが霧のように立ち込めて幻想性を際立たせる。“Luminescence” はブロークンビーツ調のビートの上で、ジェイムズ・エイカーズのディープなサックスとライル・バートンのきらめくキーボードが交わり、エレクトロニクスによるエフェクティヴな音響が全体を包み込んでいく。“Sonder” はダブを取り入れたミスティカルな楽曲で、アラビックな音階が幻想性を高めていく。“Nightfall” でチミニョはヴォーカルをとり、シンセによる音響空間の中で深くエモーショナルな歌声を披露する。


Luke Titus
From What Was Will Grow A Flower

Sooper

 ルーク・タイタスはシカゴ出身のプロデューサー/ドラマー/マルチ・ミュージシャンで、同郷のラッパーのノーネームや、R&Bシンガーのレイヴン・レネイなどの作品に参加したこともあり、どちらかと言えばヒップホップ/R&Bの文脈から注目を集めるようになった。2020年の『Plasma』はレイヴン・レネイ、セン・モリモト、ブライアン・サンボーンといったゲストを招きつつ、ルーク自身はドラムスのほかにギター、ベース、キーボードなど各種楽器を演奏し、作詞・作曲・歌唱を行うシンガー・ソングライター的な立ち位置を見せるものとなっていた。DIY的なアルバムではあるが、その演奏技術はかなり高いもので、楽曲によってはサンダーキャットなどを彷彿とさせるものも。ヒップホップやR&B的な部分もあるが、全体的にはジャズやオルタナティヴな要素も強く、ロンドン勢で比較するならトム・ミッシュオスカー・ジェロームあたりと比較すべき人材に思ったものだ。

 それから5年後のニュー・アルバム『From What Was Will Grow A Flower』は、アーロ・シムズ、ジョナサン・フーバー、イライジャ・フォックス、マイク・ハルデマンらと共同で作曲をおこない、シカゴ、ニューヨーク、ロサンゼルスの音楽仲間の中からミゲル・アットウッド・ファーガソンなどがレコーディングに参加している。ヴォーカル曲の印象が強い彼だが、インスト曲の“Lotus Leaf” を聴くと、彼のジャズ・ミュージシャンとしての資質が逆に鮮明になる。ドラムはドラムンベース的な小刻みなビートを叩き出し、コズミックな空間を作り出すキーボードにメロディアスなサックスが絡んでいくという、非常に繊細で美しい楽曲。ロサンゼルスのキーファーと、マンチェスターのゴーゴー・ペンギンが合体したような楽曲だ。ヴォーカル作品を見ると “What Am I – Radio Tower” はドリーミーなフォーキー・ワルツで、ニック・ハキムあたりに通じるオルタナティヴなムードを感じさせる。“Sideline” や “Up In The Stars”、“Above Us” はJディラ譲りのズレたビートを持ちつつ、70年代から続くフォーキー・ソウルやAORの伝統的なエッセンスも感じさせ、それこそトム・ミッシュやオスカー・ジェロームのグルーヴ感に繋がる楽曲だ。


Lauri Kallio
Turtles, Cats and Other Creatures

Mustik Motel

 ローリー・カリオはフィンランドで活動するギタリスト、およびマルチ・ミュージシャンで、作曲やヴォーカルまでおこなう。これまでヒップホップ系バンドのソウル・ヴァルピオ・バンドや、エレクトロニック・ジャズ/フュージョン・バンドのウニヤ、ドリーム・ポップ・デュオのパンビカリオなどで活動してきており、ジャンルにとらわれない多彩な音楽性を持つ。ソロ・アルバムとしては2020年に『Rusko』を発表しており、ジャズ、アンビエント、実験音楽などを交えた作品だった。それから5年ぶりの新作『Turtles, Cats and Other Creatures』は、前作に比べてポップな要素が増えつつも、彼ならではの多様な音楽要素が折衷した内容となっている。

 そうした折衷的な音楽要素を手助けする人物として、フィンランドの奇才であるジミ・テナーの参加が大きい。フルート、サックス、シンセの演奏として4曲に参加しているが、そのうちの1曲である “Spiralling Down” はエコウマニアのヴォーカルをフィーチャーしたアフロビート×ジャズで、かつてジミがドイツのアフロビート・バンドのカブ・カブと共演して作ったアルバム群を思い起こさせる。実際のところエコウマニアことエコウ・アラビ・サヴェージは、ガーナ出身のドラマー/シンガーで、カブ・カブのメンバーでもあった。ジミのフルートとシンセをフィーチャーした “Forgetting Things” にもエコウはパーカッションで参加していて、フォークロアな風味のジャズ・ファンクとなっている。同じくふたりが参加した“Meirami (The World Awaits)” は、ハープシコードを用いたレトロでサイケな風合いのジャズ・ファンクで、映画音楽やライブラリーに近いような雰囲気。ドリーム・ポップなども作ってきたローリーの才が生かされた作品だ。

Iglooghost & Minna-no-kimochi - ele-king

 台湾のアンダーグラウンド電子音楽シーンを代表するヴェニュー、台北FINALを拠点とするパーティ・シリーズ〈PURE G〉が5周年を迎える。それを記念して、渋谷・WWW+WWWβにて6月28日(土)に「PURE G 5 YRS TOKYO -Iglooghost + Minna-no-kimochi-
」を開催。
 ヘッドライナーとして、UKよりイグルーゴーストを招聘する。昨年話題となったアルバム『Tidal Memory Exo』の世界観をポストパンク的に拡張した最新EP『ᮜ˚』にまつわるセットが披露されるとのこと。

 日本からは世界中から注目を集めるトランス・カルトみんなのきもち、スロベニアに出自を持つLuna Woelle、イラストレーターとしても活躍するJun Inagawaなど、東京とアジアの地下シーンを支えるプレイヤーがローカル・アクトとして出演。ほか〈PURE G〉と縁深い全メンバーが参加する。
 なお、アーリー・バード・チケットはすでにソールドアウト、一般前売の販売がスタートしている。イグルーゴーストはもちろん、日本と台湾、そしてアジア全域にわたる昨今の電子音楽シーンの最先端を感じられる日になることだろう。

6/28 (sat)

PURE G 5 YRS TOKYO -Iglooghost + Minna-no-kimochi-
at WWW / WWWβ
OPEN/START 23:30
ADV ¥4,000 / DOOR ¥4,500
Ticket : https://t.livepocket.jp/e/20250628www

-WWW-
Iglooghost LIVE A/V
みんなのきもち
Sandy's Trace Hybrid Set
Luna Woelle

VJ: Kim Laughton

-WWWβ-
Jun Inagawa
Sulk
KUAN
KATRINA

Pop-Up: GB MOUTH
artwork: Kristyna Kulikova

※Over 20 only・Photo ID required / 20歳未満入場不可・要顔写真付ID

Rashad Becker - ele-king

 前作『Traditional Music of Notional Species Vol. II』(2016/〈PAN〉)から、じつに9年。現代エクスペリメンタル・ミュージックのマスタリング職人として知られるラシャド・ベッカーが、新作『The Incident』を自身の新レーベル〈Clunk〉から発表した。名エンジニアとしての多忙ぶりから、もはやアーティストとしての新作は望めないのではという見方もあった。実際、アンビエント作家シュテファン・マシューのように、創作活動を停止したエンジニアも少なくない。

 そんな中、自らのスタジオ名を冠したレーベルからの突如のリリースは、われわれリスナーにとって意外性に満ちた出来事だった。2010年代以降の尖端音楽を追ってきた者にとって、ラシャド・ベッカーはもはや “伝説” の部類に属する存在である。2025年にその新作を耳にできるという事実は、僥倖と言うほかない。しかも、そのサウンドは『Vol. II』後半からまるで自然に接続されるかのような連続性を感じさせる。彼はこの9年間、マスタリング業務の傍らでも、音に対する実験と探求を一度も手放さなかったのだ。音の実験とは、断絶ではなく連続なのだという事実を、彼は改めて示してみせた。

 不確定で非反復的な音の運動を主軸とした『Vol. I』(2013/〈PAN〉)、そこに繰り返しのリズムやモチーフが加わった『Vol. II』――そして本作『The Incident』では、再び不定形な音のうねりに、より強固な反復構造が交錯する。結果として現れる音響空間は、デヴィッド・チュードアの電子音楽『Rainforest』と、未知なる民族音楽とが交差するかのような、既視感と未視感がせめぎ合う音の迷宮だ。既知でありながら未知、馴染みがありながら異様、その矛盾を孕んだ連鎖こそが、『The Incident』の鮮烈さの核心である。

 全11曲構成の本作は、4部構成をなしているとされる。レーベル資料によれば、第1部は「情報化時代の終焉」に関する音的考察。ノイズと音が混じり合い、現実が情報によって書き換えられていく様相を音響で描くという。第2部は「言語と場所」が我々の理解に与える影響、第3部では「反響(repercussions)」をテーマに、鈍く増幅された “無関心” の状態を描写。第4部は「群衆によるドキュメンタリー・フィクション作品」を想定しているという。

 こうした主題は極めて抽象的であり、音からそれを読み取るのは難しい。しかし、SNSにおけるフェイク・ニュースや炎上といった現代社会の歪みに対し、ベッカーが問題意識を抱いていることは想像に難くない。彼にとってノイズは、情報の洪水に巻き込まれずに抵抗するためのオルタナティヴなのではないか。逸脱と闘争、そして反復――それらは現代の情報社会における “逃走線” を描く行為として響いてくる。

 以下、楽曲を順に見ていこう。まず1曲目 “Busy Ready What, Corroborators” は、軽快なリズムの反復で幕を開ける。跳ねるような電子音と歪んだノイズが交錯し、自然現象のように複雑で不思議な電子音楽が生成されていく。続く2曲目 “A Supposition Darkly” は、静謐なムードへと転じる。反復される乾いたビートが、あたかも未知の儀式を想起させる。3曲目 “Of Permanent Advent” はより厳粛な雰囲気をたたえ、架空の民族音楽のような趣を帯びる。音の間(ま)が深く、聴き進めるほどに没入感が高まる。

 4曲目 “All You Need To Know About Confusion” では音がさらに抽象化し、ミニマルな響きと微細なノイズがドローン手前の密度を形成。5曲目 “Zero Hour” はそのムードを引き継ぎつつ、中盤からリズミックな要素が加わり、音の輪郭が変容する。6曲目 “L’heure H” は、まるで自然の営みのようなノイズによる音響風景。カラカラと乾いた音が背後で心地よく響く。

 7曲目 “Stunde Null” もまた、乾いたメタリックなサウンドが打ち込まれる実験的な一曲だ。そして8曲目 “Sāʿatu Alṣṣufri” では、中東風の旋律断片がふと浮かび上がる。アルバムのハイライトともいえるこの楽曲は、儀式的ムードと圧倒的な音響空間で聴き手を包み込む。9曲目 “A Puttering Purgation” は、先の情熱的高まりを鎮めるように、再び静謐な音響へと移行する。

 10曲目 “Deadlock” ではアンビエントの要素が前景化し、インダストリアル風味の乾いた響きが漂う。そして、ラストとなる11曲目 “What Really Happened” は、本作最長の18分40秒。内的空間へと深く潜り込むような構成で、まさに「儀式音楽」とも呼ぶべき音の旅路が展開される。

 ラシャド・ベッカーのノイズはときに、現代社会における新たな「儀式」や「祝祭」の音楽として響く。筆者がふと連想したのは、意外にも灰野敬二である。音そのものは異なるが、ノイズを儀式化し、反復によって生成するという構造には、どこか通底するものを感じる。あるいは、〈モナド〉時代の細野晴臣、たとえば『Paradise View』(1985)の乾いたパーカッションや、架空の民族音楽的ムードとも共鳴する瞬間があった(もちろん、これは筆者の妄想にすぎない)。

 いずれにせよ、本作『The Incident』には、「実験音楽の先にある音の儀式」というテーマが刻まれているように思えてならない。ノイズを鳴らし、構築し、揺らぎを与え、反復させ、音楽へと昇華する。そのプロセス自体が、「ここ」でしか起こり得ない “事件=Incident” なのだ。音そのものの儀式化と、空想の民族音楽的リズムの再構築。その二重螺旋構造が生み出す、結晶のような音響作品。それが、『The Incident』なのである。

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