「AY」と一致するもの

Robbie & Mona - ele-king

 ロビー&モナの音楽は夜の匂いがする。日が沈み冷たくなった空気と人が消え音が少なくなった世界の暗がりのその匂い。建物の色も形も闇に覆い隠されて、木々の香りも昼間とはまた違って思えるようなそんな匂いが漂ってくる。

 ブリストルのサイケ・ポップ・バンド、ペット・シマーズのメンバーと元メンバー、ウィリアム・カーキートとエレノア・グレイによるプロジェクト、ロビー&モナ。2019年にはじまったこのプロジェクトのその名前はなんでもエレノア・グレイの飼っていた犬に由来するらしいが、そんな由来のプロジェクトがペット・シマーズと並行しておこなわれているのもなんとも面白い(ペット・シマーズも本当に素晴らしいバンドだ)。
 ふたつのプロジェクトが同時におこなわれているからこそどうしたって比較してその違いを考えてみたくなってしまうけど、カラフルな夢の中をステップを踏みながら滑るようにやってくるペット・シマーズの音楽に対してロビー&モナの音楽はもっと静かで大きな主張をしてこない。ロビー&モナの音楽を聞いて感じるのは上記のような夜の匂いで、かすかに漂う残り香がそこに誰かがいたということを感じさせムードを形作っていく。それがたまらなく魅惑的に響くのだ。

 2021年の1stアルバム『EW』はソーリーのようなラフさと重ねすぎない引き算のセンスをシンセサイザーの上で混ぜ合わせたアルバムで、広がりのない小さな部屋のDIYの感覚がそれゆえに特別な輝きを生み出していたような傑作だったが、この2023年の2ndアルバム『Tusky』はそれよりももっと洗練されていて柔らかな匂いを放っている。上品で滑らかな響き、それは「夜会」とも「舞踏会」とも表現したくなるようなもので、クラシカルな雰囲気の漂う白黒映画をいまの技術と感覚で再現したみたいな架空の映画のサウンドトラックのようにも聞こえてくる。
 ゆったりとしたピアノと電子音が組み合わせるオープニング・トラック “Sensation” はアルバムの世界への導入として完璧に機能していて、違うときを生きるヴァンパイアのようなエレノア・グレイとウィリアム・カーキーの小さなそのささやきが幽玄とその空気の中を漂い現実と隣り合った世界との境界線を曖昧にしていく。サックスが加えられジャズのエッセンスに触れられた “Flâneural” へと続くこの音楽は同じ雰囲気を保ったまま、ゆっくりと新たな軌跡を加えていく。その先にある “Sherry Prada” はジョニー・ジュエルが手がける〈Italians Do It Better〉のバンドたちのようにエレクトロニクスの要素をより強く出した美しく儚い夜の世界を表現したような曲だが、その中であってもエレノア・グレイの甘く漂うヴォーカルが柔らかな印象を連れてくる。

 あるいはエレノア・グレイの声と、生の楽器の音、電子音の組み合わせの妙こそが『Tusky』の最大の魅力なのかもしれない。この2ndアルバムはこれらの要素を組み合わせることによって近未来の古典のような、違う星で作られた昔の物語のような新鮮な感覚を生み出しているのだ。その感覚はアルバム後半で特に顕著になり、ストリングスと聖歌隊の声が歪められ、そしてけたたましい電子音のビートに吸収される “Dolphin” やピアノとエレノア・グレイの美しい歌声に浸り思いを巡らせている内にエレクトロニック・プロダクションに接続されて、気がつけばサウス・ロンドンのヒップホップ・グループ NUKULUK のモニカのラップを噛みしめているという不思議な感覚を何度も味わうことになる “Mildred” に繋がっていく。

 アルバム全体としても曲単位としてもロビー&モナは細かく小さく美しさと奇妙な感覚、そしてジャンルの間を行き来する。それらが単なるパッチワークのように思えないのはきっと同じムードで統一されているからなのだろう。その境目がはっきりとは見えない夜の、美しく不気味な物語。最終曲、“Always Gonna Be A Dead Man” に辿り着く頃には抜け出せなくなるくらいにどっぷりとこの奇妙な雰囲気の音楽に浸かり込んでしまっている。陰鬱だが美しい、ここには極上の夜の香りが漂っているのだ。

COMPUMA - ele-king

 昨年、ソロ・アルバム『A VIEW』を発表し、さざ波のようにその評判が広がったことは記憶に新しい。COMPUMAの、アルバム・リリース後に渋谷WWWにおいておこなわれた初ライヴの模様がDVDとして発売される。内田直之がさらにダブミキシングを加え、映像作家・住吉清隆がその世界の映像化を研ぎ澄ませる。注目しましょう。
 なお、『A VIEW』のアナログ盤もリリースされるようで、こちらは限定300枚。詳しくはレーベル・ブログをチェック

アーティスト:COMPUMA
タイトル:A VIEW MOVIES(LIVE DUB)
リリース日:2023年4月28(金)
レーベル:SOMETHING ABOUT
品番:SOMETHING ABOUT 006
フォーマット:DVD+Download Code
値段:2000円(税抜)
流通:SOMETHING ABOUT / ブリッジ

■LP
アーティスト:COMPUMA
タイトル:A VIEW
リリース日:2023年4月28(金)
レーベル:SOMETHING ABOUT
品番:SOMETHING ABOUT 005 LP
フォーマット:LP2枚組+Download Code
値段:4500円(税抜)
流通:SOMETHING ABOUT

■レーベル詳細URL(近日公開予定)
https://compuma.blogspot.com

African Head Charge - ele-king

 エイドリアン・シャーウッド主宰の〈On-U〉を代表するグループのひとつ、81年にパーカッショニストのボンジョ・アイヤビンギ・ノアとシャーウッドによって開始されたダブ・プロジェクト、アフリカン・ヘッド・チャージ。なんと『Voodoo Of The Godsent』(2011)以来となる、12年ぶりのオリジナル・アルバムが発売されることになった。ボンジョの暮らすガーナの都市名が冠された新作『ボルガタンガへの旅』は7月7日発売。現在新曲 “Microdosing” が公開されている。やはりかっこいい……
 そしてなんとなんと、おなじく12年ぶりに来日公演も決定!! 詳細は後日とのことだが、首を長くして待っていようではないか。

African Head Charge
ヤーマン!!!!
パーカッションの魔術師、ボンジョ、

パーカッション奏者のボンジョ・アイヤビンギ・ノアとUKダブのパイオニアとして知られるプロデューサーのエイドリアン・シャーウッドを中心に結成された〈On-U Sound〉の伝説的プロジェクト、アフリカン・ヘッド・チャージが12年ぶりの新作『Trip To Bolgatanga』を7月7日に発売することを発表、同時に新曲「Microdosing」をMVと共に解禁した。また、12年ぶりの来日も決定しており、後日詳細が発表される予定となっている。

African Head Charge - Microdosing
https://youtu.be/DELmBbsI0jM

アフリカン・ヘッド・チャージが、12年ぶりのニューアルバムとともに〈On-U Sound〉に帰ってきた。タイトルは『Trip To Bolgatanga』で、結成メンバーであるボンジョ・アイヤビンギ・ノアがレコーディングを主導し、彼の盟友でともにグループを動かしてきたエイドリアン・シャーウッドが再び制作の指揮に携わった。

アルバムの間隔が大きく空いたことに関して、ボンジョは次のように述べる。「12年という時間が経つ間、私はガーナで家族と過ごしていたけど、創作は続けていた。まだまだ自分には世に問うべきことがたくさんあるってことは、きっとわかってもらえるだろう。人生の中で、この時期は仕事もしたかったけど、家族との時間も大切にしたかった。毎日を愉快に過ごしながら、創作にも精を出した。何といっても幸せなことがあれば、いっそう創作に前向きになれるものだし、最大の幸福は家族といることなんだから」

今回のアルバムのサウンドによって『My Life In A Hole In The Ground』や『Songs Of Praise』といったアフリカン・ヘッド・チャージの往年の名作が思い起こされるのは確かだが、だからといって彼らの音楽がすでに進化を止めていると思い込むのは誤りだ。名パーカッション奏者の彼は言葉を続ける。「ドラム演奏にしても、詠唱するようなチャントの歌唱にしても、できるまでには時間がかかる。私はひたすらガーナ全土に赴いてドラム奏者たちに会ってきた。ファンテ、アキム、ガー、ボルガタンガといったあらゆる部族が、それぞれに異なるドラムの文化を持っている。僕はできる限り多くを学び、組み合わせてひとつの形にしようと模索している。これは料理に似ている。すべての材料、例えばヤム(ヤマイモ)、バナナ、カボチャを混ぜ合わせると、そこに施す最終的な味付けが肝心だ。私は音楽をそういうふうに捉えている。さまざまな要素を集め、それを味わえば『いいね、これはいい味付けだ。いいね、これはいいサウンドだ』という言葉が出てくる。これこそがアフリカン・ヘッド・チャージの存在意義なんだ。ありとあらゆる組み合わせを追求して、それをエイドリアンのところに持って行けば、さらに新しいものを作るために彼が力を貸してくれる」

プロデューサーを務めるエイドリアン・シャーウッドも同じ意見だ。「アフリカン・ヘッド・チャージにふさわしい素材を選び抜き、それからオーバーダビングやミキシングを楽しみながら完璧なものに仕上げていくということをずっとやっている。これまで常にいい関係で仕事を続けてきたけれど、今回のアルバムで自分たちは史上最高の結果を出せたと思う」

グループが40年以上に渡って活動してきた中でも、今回のアルバムは、音楽の本質を共有する大家族のようなメンバーたちが現場に戻ってきた印象がある。マルチな楽器奏者のスキップ・マクドナルドと、彼とタックヘッドでともに活動するダグ・ウィンビッシュのふたりは、さまざまなトラックに参加してその力を発揮している。かつて90年代初めにアフリカン・ヘッド・チャージに関わっていたドラムのペリー・メリウスが、正統派の重厚なリズムを3つの楽曲に加えている。ここに新鮮な顔ぶれが数多く加わっていることも見逃せない。管楽器やリード楽器は、ポール・ブース、リチャード・ロズウェル、デイヴィッド・フルウッドが務める。キーボードにはラス・マンレンジとサミュエル・ベルグリッター。ギターはヴィンス・ブラック。さらにはシャドゥ・ロック・アドゥ、メンサ・アカ、アカヌオエ・アンジェラ、エマニュエル・オキネらによるパーカッション、イヴァン・“チェロマン”・ハシーによるストリングス、ゲットー・プリーストによる力強い歌声が加わる。そして特別ゲストとして、伝統楽器コロゴの名手キング・アイソバがボーカルで参加するとともに伝統的な2弦リュートの巧みな演奏を披露している。

過去のアルバムでは世界各地から集めたエッセンスを一緒くたに混ぜ合わせていたのに対し、ニューアルバムにおいてアフリカン・ヘッド・チャージはただひとつの場所を念頭に置いている。『A Trip To Bolgatanga』とは、ボンジョにとって現在の生活拠点であるガーナ北部を巡る音楽の旅だ。これは幻想的な旅路の記録であり、そこに現れる風景を象徴する、さまざまなハンドパーカッションや人々が唱和するチャントの歌声を補強するように、轟くベース音、変化を加えた管楽器、余分な音をカットするエフェクト、騒々しいワウペダルの効果、何かにとりつかれたようなブードゥー教のダンスミュージック、合成されたうねりのサウンド、コンガのリズム、何層にも入り乱れる電子楽器のエフェクト、ブルースの影響を感じさせる木管楽器、ファンキーなオルガンの音などが加わっている。〈On-U Sound〉の作品がすべてそうであるように、何度繰り返し聴いてもその度に細かいディテールに関する新たな発見がある。このサウンドは大がかりな音響システムで聴かなければ、その真価を理解することはできないだろうし、そうなった暁には、いかなる相手が競合しようとも太刀打ちできずに叩きのめされることだろう。

アフリカン・ヘッド・チャージの最新作は7月7日にデジタル、CD、LPで7月7日に発売!国内盤CDにはボーナストラックが追加収録され、歌詞対訳と解説書が封入される。LPは通常盤(ブラック・ヴァイナル)に加え、限定盤(蓄光ヴァイナル)、日本語帯付き仕様盤(蓄光ヴァイナル、歌詞対訳・解説書付)で発売される。さらに、国内盤CDと日本語帯付き仕様盤LPは、数量限定のTシャツセットでも発売される。

label: On-U Sound
artist: African Head Charge
title: A Trip To Bolgatanga
release: 2023.07.07

BEATINK.COM: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13353

国内盤CD Tracklist
01. A Bad Attitude
02. Accra Electronica
03. Push Me Pull You
04. I Chant Too
05. Asalatua
06. Passing Clouds
07. I’m A Winner
08. A Trip To Bolgatanga
09. Never Regret A Day
10. Microdosing
11. Flim 18 (Bonus Track)


蓄光ヴァイナル

蓄光ヴァイナル(暗闇ではこのように光ります。)

イタリアン・ホラーの帝王、その鮮血の美学の核心に迫る

『サスペリア』で知られるイタリアン・ホラー/サスペンス映画の巨匠、ダリオ・アルジェント監督による10年ぶりの新作『ダークグラス』の公開が決定!

ヨーロッパに伝わる魔女伝説をモチーフに、独自の色彩感覚にこだわった耽美的な描写で一世を風靡した『サスペリア』、そして工夫を凝らした残酷シーンと、意外すぎるトリックでミステリファンをも驚嘆させた『サスペリア PART2』。
イタリア映画界にとどまらずハリウッドにも進出、当時人気絶頂のジェニファー・コネリー主演『フェノミナ』や、華麗なる流血表現でカルト的人気を誇る『オペラ座 血の喝采』などの傑作を連発。
ジョージ・A・ロメロ監督『ゾンビ』や『デモンズ』シリーズなどプロデューサーとしても活躍。
『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督による18年の『サスペリア』リメイクの大ヒットも記憶に新しい。
いまなお、ジェームズ・ワン、クエンティン・タランティーノ、エドガー・ライトら名だたる監督たちが影響を口にする巨匠、ダリオ・アルジェント。
待望の新作『ダークグラス』の公開も決定し、改めて注目の集まるホラー/サスペンス映画の鬼才の全貌を紹介、さらにはアルジェントを生んだイタリアのサスペンス映画「ジャッロ」の入門特集も掲載!

執筆:伊東美和、宇波拓、片刃、上條葉月、児嶋都、児玉美月、後藤護、高橋ヨシキ、ナマニク、はるひさ、ヒロシニコフ、真魚八重子、森本在臣、山崎圭司

目次

クロスレビュー『ダークグラス』(真魚八重子、高橋ヨシキ)
ダリオ・アルジェント・バイオグラフィー(山崎圭司)
イラストコラム(児嶋都)
フィルモグラフィー
アルジェントがアルジェントであるために作られた監督デビュー作──『歓びの毒牙』(ナマニク)
宙吊りの連続──『わたしは目撃者』(上條葉月)
アルジェントが唯一挑んだ「ホモエロティシズム」映画──『4匹の蝿』(ナマニク)
無産階級から見た革命を描く──『ビッグ・ファイブ・デイ』(はるひさ)
恐怖のアルジェント・マシーン──自動人形・エレベーター・マネキンとの別世界通信『サスペリアPART2』(後藤護)
奇妙な世界をサヴァイヴし、その扉から出ていくとき──『サスペリア』(児玉美月)
デタラメのなかの美意識──『インフェルノ』(上條葉月)
暗闇の領域──『シャドー』(山崎圭司)
美少女と鮮血──『フェノミナ』(真魚八重子)
殺戮の創意──『オペラ座 血の喝采』(真魚八重子)
娘アーシアを本格的に女優として開眼させた、フェィッシュな首チョンパ映画──『トラウマ/鮮血の叫び』(ナマニク)
繰り返される大文字のアートへの接近──『スタンダール・シンドローム』(高橋ヨシキ)
新説──『オペラ座の怪人』(はるひさ)
アルジェントによるジャッロの「再発見」──『スリープレス』(高橋ヨシキ)
アルジェント流デスゲーム──『デス・サイト』(片刃)
ヒッチコックとの共通項とは──『ドゥー・ユー・ライク・ヒッチコック?』(高橋ヨシキ)
汚くエグい中にも爽快感──『サスペリア・テルザ 最後の魔女』(片刃)
ただ、黄色であるというだけ──『ジャーロ』(はるひさ)
カマキリの神話学 祈りと邪眼──『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』(後藤護)
これでもかというポーの「美味しいところ乗せ」『マスターズ・オブ・ホラー/悪夢の狂宴「黒猫」』(片刃)
力みすぎない中にもハードな描写『マスターズ・オブ・ホラー』(真魚八重子)
プロデューサーとしてのアルジェント(伊東美和)
ドキュメンタリー『ダリオ・アルジェント 鮮血の魔術師』(森本在臣)
インタヴュー 吉本ばなな
対談:「アルジェントはお好き?」(山崎圭司・ヒロシニコフ)
コラム
アルジェントと音楽(宇波拓)
最高のパートナーにして魔女の血族──ダリア・ニコロディ(森本在臣)
アーシア・アルジェント──銀幕とその裏側(片刃)
「ぶっ殺し」と「ぶっ壊し」──アルジェントに影響を受けた新世代の映像作家たち(ヒロシニコフ)
小特集 ジャッロ入門
概説「ジャッロ映画」とは(山崎圭司)
おすすめジャッロ30選(ヒロシニコフ+森本在臣)
コラム それはジャッロであり、ジャッロではない──ホラー映画の新たなる潮流「ネオ・ジャッロ」(ヒロシニコフ)

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Cantaro Ihara - ele-king

 いよいよ新作フルレングスの登場だ。70年代以降のソウルやAORなどからの影響をベースにしつつ、現代的な感覚で新たなサウンドを探求するシンガー・ソングライター、イハラカンタロウ。昨年からウェルドン・アーヴィン日本語カヴァーや “つむぐように (Twiny)” といったシングルで注目を集めてきた彼が、ついにセカンド・アルバムを送り出す。メロウかつ上品、どこまでもグルーヴィーなサウンドと練られた日本語詞の融合に期待しよう。

70年代からのソウル〜AORマナーやシティ・ポップの系譜を踏襲したメロウなフィーリング、そして国内外のDJからフックアップされるグルーヴィーなサウンドで注目を集めるイハラカンタロウ待望の最新アルバムがリリース決定!

ジャンルやカテゴリにとらわれない膨大な音楽知識や造形の深さでFM番組やWEBメディアでの海外アーティスト解説やイベント、DJ BARでのミュージックセレクターなどミュージシャンのみならず多方面で活躍するイハラカンタロウが、前作『C』から2年を越える歳月を費やした渾身のフルアルバムをついに完成!

世界的なDJ、プロデューサーとしても知られるジャイルス・ピーターソンのBBCプレイリストにも入るなど海外、国内ラジオ局でのヘヴィ・プレイから即完&争奪戦となったWeldon Irvineによるレア・グルーヴ〜フリー・ソウルクラシック「I Love You」(M7)日本語カバーや、サウスロンドンのプロデューサーedblによるremixも話題となったスタイリッシュ・メロウ・ソウル「つむぐように (Twiny)」(M2)といった先行シングルに加えて、新進気鋭のトランペッター “佐瀬悠輔” が艶やかなホーンを聴かせるオーセンティックなソウルナンバー「Baby So in Love」(M3)、現在進行形のルーツ・ミュージックを体現する“いーはとーゔ”の菊地芳将(Bass)、簗島瞬(Keyboards)らが臨場感溢れるパフォーマンスを披露した極上のグルーヴィー・チューン「アーケードには今朝の秋」(M4)、そして自身のユニット “Bialystocks” でも華々しい活躍を続ける菊池剛(Keyboard)が琴線に触れるメロディーを奏でる「夜の流れ」(M6)など同世代の才能あるミュージシャン達が参加した新たな楽曲も多数収録!

イハラカンタロウ『Portray』ティザー
https://youtu.be/RyE9RtDsohk


[リリース情報]
アーティスト:イハラカンタロウ
タイトル:Portray
フォーマット:CD / LP / Digital
発売日:CD / Digital 2023年4月28日 LP:2023年7月19日
品番:CD PCD-25363 / LP PLP7625
定価:CD ¥2,750(税抜¥2,500)/ LP ¥3,850(税抜¥3,500)
レーベル:P-VINE

[Track List]
01. Overture
02. つむぐように (Twiny)
03. Baby So in Love
04. アーケードには今朝の秋
05. Cue #1
06. 夜の流れ
07. I Love You
08. ありあまる色調
09. You Are Right
10. Cue #2
11. Sway Me

[Musician]
Pf./Key.:菊池剛(Bialystocks)/簗島瞬(いーはとーゔ)
E.Guitar:Tuppin(Nelko)/三輪卓也(アポンタイム)
E.Bass:toyo/菊地芳将(いーはとーゔ)
Drums:小島光季(Auks)/中西和音(ボタニカルな暮らし。/大聖堂)
Tp./F.Hr.:佐瀬悠輔

[特典情報]
タワーレコード限定特典:未発表弾き語り音源収録CD-R

[Pre-order / Streaming / Download]
https://p-vine.lnk.to/1NYBzJ

[イハラカンタロウ]
1992年7月9日生まれ。70年代からのソウル〜AORマナーやシティ・ポップの系譜を踏襲したメロウなフィーリングにグルーヴィーなサウンドで作詞作曲からアレンジ、歌唱、演奏、ミックス、マスタリングまで 手がけるミュージシャン。都内でのライヴ活動を中心にキャリアを積み2020年4月に1stアルバム『C』(配信限定)を発表、“琴線に触れる” メロディ、洗練されたアレンジやコードワークといったソングライティング能力の高さで徐々に注目を集めると、同年12月にはアルバムからの7インチシングル「gypsy/rhapsody」、そして2022年2月には「I Love You/You Are Right」(7インチ/配信)をリリース、さらには12月にサウスロンドンで注目を集めるプロデューサーedblによるリミックスを収録した「つむぐように (Twiny)」(7インチ/配信)をリリースし、数多くのラジオ局でパワープレイとして公開され各方面から高い評価を受ける。またライヴや作品リリースだけでなく、ラジオ番組や音楽メディアで他アーティストの作品や楽曲制作にまつわる解説をしたり、ミュージックセレクターとしてDJ BARへの出演やTPOに合わせたプレイリストの楽曲セレクターなどへのオファーも多く、深い音楽への造詣をもってマルチな活動を行なっている。2023年2月には「I Love You (DJ Mitsu The Beats Remix)」(7インチ/配信)をリリース、春には待望の2ndアルバムのリリースを予定している。

Twitter:https://twitter.com/cantaro_ihara
Instagram:https://www.instagram.com/cantaro_ihara/

Red Hot + Ra - ele-king

 レッド・ホットといえば、カルチャーをつうじてエイズなどの感染症と闘うことを目的とする、ニューヨーク拠点の非営利組織。ボサノヴァをテーマにした『Red Hot + Rio』やフェラ・クティを称える『Red Hot + Riot』など、これまでたびたびトリビュート企画盤をリリースしてきた。そんな彼らが新たに手がけることになったのが、サン・ラーのトリビュート・アルバム・シリーズ「Red Hot + Ra」だ。
 第一弾は「Nuclear War: A Tribute to Sun Ra: Volume 1」と題され、サン・ラー1982年の楽曲 “Nuclear War” のカヴァーや再解釈が収録される。
 チェルノブイリ以前に発表されたオリジナル曲は、1979年のスリー・マイル島の事故を受け、制御不能の原子力エネルギーにたいする懸念を表明した楽曲で、ポップ・グループやピッグバッグ、マキシマム・ジョイなどを出していたロンドンの〈Y〉から12インチでリリース。サン・ラー評伝の著者によれば、「プロテスト・ラップの最初の実例のひとつ」になった曲だ。
 発売は5月26日。先行シングルとしてLAのジョージア・アン・マルドロウによる “Nuke's Blues” が公開中だが、ほかに〈International Anthem〉から作品を発表している作曲家エンジェル・バット・デイウィッドや、ムーア・マザーもその一員であるフリー・ジャズ・コレクティヴ、イリヴァーシブル・エンタングルメンツなどが参加している。これは見過ごせない1枚だ。

artist: Various
title: Red Hot + Ra: Nuclear War: A Tribute to Sun Ra: Volume 1
label: Red Hot Org
release: 26 May 2023

tracklist:
1. Georgia Anne Muldrow - Nuke's Blues (Feat. Josef Leimberg)
2. Angel Bat Dawid - Part 1 - The Cosmic Bypass
3. Angel Bat Dawid - Part 2 - Nuclear War!
4. Angel Bat Dawid - Part 3 - Kiss Yo Ass Goodbye
5. Malcolm Jiyane Tree-o - We're Not Buying It (Feat. Grandmaster CAP)
6. Irreversible Entanglements - Nuclear War

Laurent Garnier - ele-king

 先日ひさびさの来日を果たし、すばらしいDJセットで踊らせてくれたロラン・ガルニエ。さらに嬉しい知らせの到着だ。
 じつに8年ぶり、2015年の『La Home Box』以来となるアルバムがリリースされる。『33 Tours Et Puis S'en Vont』なるタイトルで彼自身のレーベル〈COD3 QR〉から5月25日にリリース。
 テクノ、ドラムンベース、ヒップホップ、パンクの要素がとりいれられているらしいが、なんと故アラン・ヴェガのヴォーカルもフィーチャーされている。この2年間の最高到達点であると同時に、自身のルーツへと立ち返るアルバムでもあり、「ダンスフロアとテクノへのトリビュート」でもあるとのこと。
 またこの新作の発表と同時にガルニエは、2024年末をもって、ツアーからは一歩退く考えであることを明かしてもいる。「ほこりをかぶった古臭いジュークボックス」になるのを避けるため、というのがその理由だそうだ。とはいえDJをやめるつもりは毛頭ないようで、生涯DJをつづけることを強調してもいる。
 バンドキャンプはこちら

artist: Laurent Garnier
title: 33 Tours Et Puis S'en Vont
label: COD3 QR
release: May 26 2023

tracklist:
01. Tales From The Real World (feat.Alan Watts) (vocal version)
02. Liebe Grüße Aus Cucuron
03. Let The People Faire La Fête
04. Give Me Some Sulfites
05. In Your Phase feat. 22Carbone
06. Granulator Bordelum
07. Reviens la Nuit
08. On the REcorD (part 3)
09. Saturn Drive Triplex (feat. Alan Vega)
10. Sado Miso
11. Closer to You (feat. Scan X)
12. Au Clair De Ta Lune
13. Cinq O'Clock In Le Matin
14. Le Swing Du Pouletto
15. Sake Stars Fever
16. Multiple Tributes [to multiple people, for multiple reasons]
17. ...Et Puis S’en Va!
18. Tales From The Real World (version instumentale)

Jungle - ele-king

 ジョシュ・ロイド=ワトスンとトム・マクファーランドからなるロンドンのエレクトロニック・ダンス・デュオ、ジャングル。総ストリーム数が約10億にものぼり、大型フェスではヘッドライナーを任されるほどの人気を誇る彼らが、4枚目のアルバム『Volcano』を8月11日にリリースする。
 多様な歌声をとりいれることが狙いだったというその新作には、ルーツ・マヌーヴァなどのゲストが参加。現在、ブルックリンのヒップホップ・グループ、フラットブッシュ・ゾンビーズのエリック・ジ・アーキテクトをフィーチャーした新曲 “Candle Flame” が公開中だ。「愛や人間関係における浮き沈み」をテーマにしているという同曲、MVも印象的なので視聴しておきたい。

ノエル・ギャラガー、ジャミロクワイ、ジャスティン・ティンバーレイクら大物ミュージシャンがこぞって大絶賛!!
極上のフューチャー・ディスコ・ユニット、ジャングルが帰還!
ニューアルバム『VOLCANO』8月11日リリース決定!

Radio 1【HOTTEST RECORD】選出の新曲「CANDLE FLAME FEAT. ERICK THE ARCHITECT」が先行解禁!
日本限定で数量限定トートバッグセットと日本語帯付きLPも同時発売!

マーキュリー賞にもノミネートされたデビュー・アルバム『JUNGLE』が、UKで9ヶ月に渡ってチャートインを記録する超ロング・セラーとなり、総ストリーミング数は10億以上、今や大型フェスのヘッドライナーも務めるフューチャー・ディスコ・ユニット、ジャングルが、8月11日に最新アルバム『VOLCANO』をリリース決定! アルバムからRadio 1【HOTTEST RECORD】にも選ばれた先行シングル「Candle Flame (feat. Erick the Architect)」を解禁した。

Jungle - Candle Flame (Ft. Erick The Architect) (Official Video)
https://youtu.be/esqRBsVumrw

デビュー以来、ノエル・ギャラガー、ジャミロクワイ、ジャスティン・ティンバーレイクら大物ミュージシャンが賞賛し、ダフト・パンク不在のダンス・ミュージックにおいて、今やシーンを牽引する存在にまで成長を遂げたジャングル。前作『Loving In Stereo』は、全英チャート初登場3位を記録し、米ビルボードのダンス・アルバム・チャートでは見事1位を記録。ビリー・アイリッシュのアリーナ公演にもゲストとして出演し、テイラー・スフィフトのリミックスも手掛けるなど、ポップ・ミュージックのファンからも注目を集める存在となった。そんな飛躍を遂げた前作以来、4枚目のスタジオ・アルバムが今作『VOLCANO』だ。時代を超えたディスコ、ソウル、ヒップホップの要素を、ジャングルらしい未来志向のプロダクションで見事にまとめ上げた新曲「Candle Flame」は、彼らのライブセットで披露した瞬間にオーディエンスの心を奪うであろう、大胆かつ情熱的なエネルギーを放つトラックだ。

俺たちは「Candle Flame」をすごく誇りに思ってる。パーソナルで親しみやすく、愛や人間関係における浮き沈みを、詩的で真に迫る方法で探求したかったんだ。エリック・ザ・アーキテクトと一緒に仕事をするのは本当に楽しかったよ。彼のユニークな視点と才能が、この曲にさらなる深みと豊かさを加えた。「Candle Flame」は、俺たちがバンドとして支持するもの、すなわち創造性や情熱、そしてファンの心を動かす音楽を作るというコミットメントをすべて表しています。この曲をみんなに聴いてもらうのが待ち遠しいよ。この曲が聴く人すべてに喜びとインスピレーションをもたらすことを願っている。
- Jungle

『VOLCANO』を駆け抜ける自由奔放なエネルギーが、本作がいかに自然に完成したかを物語っている。ジョシュ・ロイドとトム・マクファーランドは、レコーディングに入る前のツアー中にLAのAirbnbで大部分の曲を書いたという。その後ロンドンに戻り、二人のお気に入りという【Metropolis Studios】のStudio Bでアルバムは完成した。今回二人が求めたのは、より多種多様な歌声をアルバムに取り入れること。先行シングルに参加したラッパー、エリック・ザ・アーキテクト (フラットブッシュ・ゾンビーズ) 以外にも、前作収録曲「Romeo」やFKJとのコラボでも知られるバス (Bas)、UKを代表するMC、ルーツ・マヌーヴァ、コンプトン出身のアーティスト/プロデューサー、チャンネル・トレス、ロンドンの気鋭シンガーソングライター、JNRウィリアムズらがアルバムにフィーチャーされている。

『VOLCANO』のジャケットは、デビュー作から続くミニマルな美学を継承し、ユニット名のロゴを中心に添えつつ、アルバムのサウンド・スタイルを反映させた夏を感じさせる明るく鮮やかな背景となっている。

ジャングルは、8月26日にはロンドンの人気音楽フェスティバル『All Points East』にヘッドライナーとして出演し、その後には北米/ヨーロッパ・ツアーを行う予定。トータルで20万人近いオーディエンスに向けて最新セットを披露する。

ジャングルの最新アルバム『VOLCANO』は8月11日(金)にCD、LP、デジタル/ストリーミング配信で世界同時リリース! 国内盤CDにはボーナストラックが追加収録され、歌詞対訳と解説書が封入される。LPは通常盤(ブラック・ヴァイナル)に加え、限定盤(スプラッター・オレンジ/クリア・ヴァイナル)、BEATINK限定盤(オレンジ/ホワイト・ツートーン・ヴァイナル)、日本語帯付き仕様盤(歌詞対訳・解説書付)で発売される。さらに、国内盤CDと各種日本語帯付き仕様盤LPは、日本限定のトートバッグセットでも発売される。

label: BEAT RECORDS / CAIOLA RECORDS
artist: JUNGLE
title: VOLCANO
release: 2023.08.11 FRI ON SALE

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13338

Tracklist
01. Us Against The World
02. Holding On
03. Candle Flame (Feat. Erick the Architect)
04. Dominoes
05. I've Been In Love (Feat. Channel Tres)
06. Back On 74
07. You Ain't No Celebrity (Feat. Roots Manuva)
08. Coming Back
09. Don't Play (Feat. Mood Talk)
10. Every Night
11. Problemz
12. Good At Breaking Hearts (Feat. JNR Williams & 33.3)
13. Palm Trees
14. Pretty Little Thing (Feat. Bas)
+ (Bonus track)

輸入盤LP

BEATINK.COM限定LP

インディー限定LP

Optimo Music - ele-king

 昨年は日本の実験的な音楽のコンピレーションを手がけていた〈オプティモ〉の創設者JDトゥウィッチだが、今度はアナーコ・パンクの伝説クリス・ロウとタッグを組み、まさにアナーコ・パンクのコンピを編纂している。題して『Cease & Resist - Sonic Subversion & Anarcho Punk In The UK 1979​-​86』、クラスやチャンバワンバ、ポイズン・ガールズ、オランダのジ・エックスなど18曲を収録。2LP使用で、詳細なライナーノートやエッセイなどを含む6ページのポスターが付属するとのこと。
 すべての収益はスコットランドの海軍基地ゲートで反核の運動を実践しているファスレーン・ピース・キャンプ、およびスコットランド核軍縮キャンペーン(Scottish CND)に寄付される。リリースは5月12日だが、一部のヴァイナルは4月7日に先行販売されるようなので、バンドキャンプをチェックしておきましょう。

artist: Various
title: Cease & Resist - Sonic Subversion & Anarcho Punk In The UK 1979​-​86
label: Optimo Music
release: May 12th 2023

tracklist:
01. Zounds - Can't Cheat Karma
02. Honey Bane - Girl On The Run
03. Crass - Bloody Revolutions
04. Annie Anxiety - Hello Horror
05. Flux Of Pink Indians - Tube Disasters
06. Andy T - Death Is Big Business
07. Poison Girls - Underbitch
08. Alternative - Anti-Christ
09. The Cravats - Rub Me Out
10. The Apostles - Mob Violence (unreleased original studio version)
11. Lack Of Knowledge - We're Looking For People
12. The Hit Parade - Here's What You Find In Any Prison
13. Hagar The Womb - Idolisation
14. Alternative TV - The Force Is Blind
15. Chumbawamba - Revolution
16. The Ex - Ay Carmela
17. D&V - Conscious (Pilot)
18. The Mob - No Doves Fly Here (unreleased original studio version)

interview with Lankum - ele-king

 ノイズもエレクトロもアンビエントもヒップホップも現代音楽も飲み込んだ21世紀型アイリッシュ・フォーク・シーンの最前線に立つランクム。通算4作目となる3年半ぶりの新作『False Lankum』に感嘆すると同時に、これほどの傑作が日本では発売されないと聞いて驚いている。欧米メディアで大絶賛された2019年の前作『The Livelong Day』も素晴らしかったが、この新作では自分たちの音作りの特徴──強力なドローン、深い陰影、繊細なノイズ等々を活かしつつ、音楽的洗練度が格段にレヴェルアップしているのだ。
 全12曲は、5曲のトラッド・ソング、2曲のカヴァ、3つのインスト小曲を含む5曲のオリジナル曲という構成になっており、アルバム全体で大きな物語を描いているような印象。ドラマティックである。

 日本ではまだほとんど無名なので、改めて簡単にバンドを紹介しておこう。ランクムは、ダブリン出身のイアン・リンチ(Ian Lynch:イリアン・パイプス/ティン・ホイッスル/ヴォーカル)、ダラグ・リンチ(Daragh Lynch:ギター/ヴォーカル)のリンチ兄弟と、コーマック・マクディアーマダ(Cormac MacDiarmada:フィドル/ヴォーカル)、そして紅一点レイディ・ピート(Radie Peat:コンサーティーナ他/ヴォーカル)から成る4人組。2000年代前半からリンチ兄弟がやっていたパンク&サイケ・テイスト溢れるフォーク・デュオ、リンチド(Lynched)に伝統音楽シーンで腕を磨いてきたコーマックとレイディが加わった14年にランクムへとバンド名を変え、アイルランドのトラディショナル・フォークに本格的に取り組むようになった。
 これまでにリンチドとして『Where Did We Go Wrong ?!』(04年)と『Cold Old Fire』(14年)、ランクムとして『Between The Earth And Sky』(17年)③と『The Livelong Day』(19年)をリリースしてきたが、リンチドの2枚目『Cold Old Fire』にはコーマックとレイディが既に参加しており、実質的にはこれがランクムの1作目とみなされてきた。

 コロナ禍のロックダウン期間中にじっくりと時間をかけて制作されたというこの新作について、リーダーのイアン・リンチに詳しく語ってもらった。
 なお、過去の原稿では彼らのバンド名を「ランカム」と表記してきたが、今回から「ランクム」に変えさせていただく。

DIYパンク・シーンで活動してきたという背景があるから、巨大レーベルやメインストリームな音楽業界に対する不信感が十分に培われているんだよ。そして年齢を重ねるごとに、それはすべて実際その通りだということがわかってきた。

新作の素晴らしさに感嘆しました。音作りに関して、あなたたちの頭の中にはどのようなヴィジョンやコンセプトがあったのですか?

イアン・リンチ(Ian Lynch、以下IL):アルバムの制作開始時にあった唯一の考えは、前作『The Livelong Day』のサウンドを拡張しようということだった。つまり、ダークな部分はよりダークに、綺麗な部分はより綺麗に、繊細な部分はより繊細にというように、『The Livelong Day』のサウンドのあらゆる側面を押し広げようとしたんだ。俺たちは、あのアルバムのサウンドにとても満足していたから、過去10年間に描いてきた軌道に乗ったまま、サウンドの拡張を続けようとしたんだ。作業が進むにつれ、それ以外のアイデアも色々と出てきたけれど、アルバム制作に向けた最大のコンセプトはサウンドを拡張するということだった。最終的にどんなアルバムができるかは、やってみないと自分たちでもわからなかった。

アルバム・タイトルの『False Lankum』に込められた意図について説明してください。

IL:俺たちのバンド名であるランクムの由来は古いバラッドで、そのタイトルが「False Lankum」というんだ。だから自分の頭の中には常にその言葉があった。2014年にバンド名をリンチド(Lynched)からランクムに変えたときも、当初のアイデアでは「False Lankum」にしたいと思っていたんだよ。とても気に入っているタイトルだからね。今回、アルバム・タイトルを『False Lankum』にしたのは、少し曖昧というか不明瞭な感じを持たせたかったからなんだ。俺たちの過去のアルバムのタイトルはすべて、曲の一部からの引用だったけど、今回のアルバム・タイトルは、人々が疑問に思うような、よくわからない感じにしたかった。「False Lankum(=虚偽のランクム)」とは何だろう? 「False Lankum」があるということは、「True Lankum(=真実のランクム)」もあるのだろうか? ……という疑問をリスナーに抱かせたかったんだ。俺たちがランクムとして表現していることは、俺たちの真の形、全体像ではないのかもしれない……そんな疑問。たとえば今回のアルバムの曲に “The New York Trader” というのがあるんだけど、それは、いままでの人生で悪事ばかり働いてきたジョナという名の奴が船に乗っていて、彼のせいで、船全体が危機的状況に陥ってしまい、船員たちは自分たちの命を救うために彼を船から追放しなければいけないという話なんだ。つまり、もしそれ(=ジョナ)が俺たちだったら? ということ。ランクムはアイルランドの伝統音楽を救うためにいるのではなく、破壊するためにいて、ジョナのように俺たちが船から追放されるべき存在だったらどうする? そんなことを考えていたんだ。まあ、あまり言葉で説明したくないんだけど(笑)、意図としてはそういうことだよ。

前作『The Livelong Day』はメディアでの評価が非常に高かったから、今回はプレッシャーが大きかったのではないですか?


Lankum『The Livelong Day』

IL:いや、あまりプレッシャーはなかったよ。まあ、アルバムを作るたびにある程度のプレッシャーはあるだろう。特に、前作のできが良いと、次の作品にも前作と同じくらいの期待がかけられる。そういう外部からのプレッシャーはあるけれど、俺たちは、音楽を作っているこの4人の身内サークル内にそういったプレッシャーは持ち込まないようにしている。というか、あまり意識していない。俺たちにとって大切なのは、アルバムの音を誰よりも先に聴いて、自分たちがその音に満足し、それを誇りに感じられるということだから。いままでもそういう意識でアルバムを作ってきた。前作も、音源をマスタリングに出す前の状態で、俺たちは自分たちが作り上げたものにとても満足していた。今回のアルバム制作には約2年という長い時間をかけた。すべてにおいて自分たちが100%納得するまでは外に出さない。そして、外に出す時点で俺たちは、他の人がアルバムについてどう思うのかということは気にしていない。今回のアルバムに関しては、長年のファンの中にはこれを気に入ってくれない人もいるかもしれないと思ったけれど、それは仕方のないことだと単純に思えた。たとえそうなっても、俺たちまったく気にしないよ。

今回の制作にあたり、〈ラフ・トレイド〉からは何か注文や要望はありましたか?

IL:俺が知っている範囲ではないし、あったとしても、俺自身は何も言われていない。レーベルがマネジャーに色々と注文していて、マネジャーが密かに俺たちの脳にアイデアの種を植えたり洗脳したりしているのかもしれないけど……いや、それも多分ないと思う(笑)。〈ラフ・トレイド〉と仕事ができるのはとても素晴らしいことだよ。メジャー・レーベルと契約したバンドからは酷い話をよく聞くからね。そもそも俺には、DIYパンク・シーンで活動してきたという背景があるから、巨大レーベルやメインストリームな音楽業界に対する不信感が十分に培われているんだよ。そして年齢を重ねるごとに、それはすべて実際その通りだということがわかってきた。でも、俺たちと〈ラフ・トレイド〉の関係はとても良好だ。俺たちの音楽的ヴィジョンを自由に追求させ、それを応援してくれる。彼らのアプローチもライトというか、あまり介入してこない。本当に素晴らしいと思うよ。同じようなアプローチでやっているレーベルは他にあまりないと思うから、そういう意味では非常に恵まれていると思うな。

ある曲の中には、セロリが育つ音がピッチダウンされた状態でどこかに忍ばせてあるんだよ。そういう細かいことをたくさんやったから、今回のアルバムではどの曲も、ものすごい数のレイヤーが含まれている。

前作『The Livelong Day』に対する反応で、特に嬉しかったもの、印象深かったものはどういったこと(言葉や事象)でしたか?

IL:アルバムに対する嬉しい反応やコメントはたくさんあったよ。特に感激したのは、ノルウェーのバンド、ウルヴェル(Ulver)の反応だった。彼らが90年代にリリースしたブラック・メタルのアルバムの何枚かは俺がとりわけ好きな作品で、彼らはその後も素晴らしいエレクロトニック音楽を作り続けていた。そんな彼らがランクムのヴィデオ・クリップをSNSにアップしてくれたんだ。「オーマイガッド!!!」と感激したよ。それからアメリカのロード・アイランド州プロヴィデンス出身のアーティスト、リングア・イグノタ(Lingua Ignota)がランクムもやっているトラッド・ソング “Katie Cruel” のカヴァーを発表したときに、インスピレイション源としてランクムの名を挙げてくれたんだ。彼女の音楽は大好きだからすごく嬉しかった。


Lingua Ignota “Katie Cruel”

 あと、イギリスのザ・バグ(The Bug=ケヴィン・マーティン)も俺たちのアルバムを高く評価してくれて感激した。俺たちが大好きな音楽を作るアーティストや尊敬するアーティストにランクムの音楽がようやく届くようになったということがすごく嬉しかった。仲間というか、同じような活動をしている人たちや自分が尊敬している人たちからのポジティヴな反応ほど嬉しいものはない。新聞や雑誌のレヴューで高く評価されるのも嬉しいけれど、やはり、自分が尊敬しているミュージシャンから評価されるのはまったく違う嬉しさがある。

前作『The Livelong Day』からこの新作までの約3年の間で、バンド内、あるいはバンド周辺で何か変化はありましたか?

IL:変化はたくさんあったよ。パーソナルなものからアーティスティックなものまで。一番大きな変化はコンサーティーナのレイディ・ピートに赤ちゃんが生まれたことだね。それはとても良い変化だった。その一方で、みんなの精神衛生面が悪くなってしまったり、健康面での問題もあった。ロックダウンにも大きな影響を受けたけど、そのせいで逆に、俺たちは各自のソロ・プロジェクトやアルバムに専念することができた。だから悪い時期ではなかったと思う。この数年間で俺たちは各自の成長を遂げることができた。コロナという状況を最大限に活かすことができたと思う。このアルバムもその期間内に作ることができたし、各メンバーもそれぞれの変化を体験して、進化していった。3年前に比べると、バンドのランドスケープ(=置かれている状況や環境)がまったく違うものになったと感じられるね。

コロナ禍が本作に及ぼした影響について、もっと具体的に語ってもらえますか。

IL:影響は大きかったね。俺がいまいるこの大きな部屋は、ダブリン南部にある築200年くらいの塔なんだ。ロックダウン中にこの塔の所有者が俺に連絡をくれて、「自分はこの塔を所有していて、管理してくれる人を探している」と言うので、しばらく塔で暮らすのも悪くないなと思い、承諾した。しかも、バンドを連れてきて、ここで作業してもいいと所有者は言ってくれたんだ。ちょうどアルバムの制作にとりかかるいいタイミングだった。ロックダウン中で、お互いに会いに行ったりすることができない状況だったから、バンド・メンバー全員がこの塔に来て、みんなで一緒に暮らすことにしたんだ。とても良い体験だったよ。この塔からは海が見渡せるんだ。屋上からダブリンの町全体も見える。確か1803年か1804年、ナポレオン率いるフランス軍の侵略を恐れていたイギリスが、ダブリンの湾岸に沿って建てたんだよ。

軍事的見張り塔だったんですね。

IL:うん。その環境が無意識にアルバムの内容に反映されていったのだと思う。今作に「海」や「海軍」的な要素が多く含まれているのもそのせいだと思う。ほとんどの収録曲が「海」と何らかの関係があるんだ。もしも状況が違っていたら、まったく違うアルバムができていたと思うよ。俺たちはそれまでの数年間、結構ハードなツアー活動をやってきていて、ロックダウンになる前は、かなり疲弊していた。ツアー中は、アルバムに向けて新しい曲を作っていくのが難しい。前作の評判がすごく良くて、ようやく俺たちにも道が開けてきた! と思っていたところに、コロナ禍ですべてが急停止してしまったわけだが、もしロックダウンになっていなかったら、この新作の内容がどうなっていたか想像もつかないね。

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特に伝統的な曲をアレンジする場合は、映画音楽を作っているようなイメージなんだ。つまり、曲の感情的な部分を、ときには絶妙に、また、あるときには強烈に引き出したいと考えている。映画音楽を制作するということは、映画監督が描くストーリーを表現する手助けをしているということだ。そこには、観衆を絶妙に導いていく役目があり、観衆がどう感じるべきかをダイレクトに主張するのとは違う。物語を優しく語る手助けをする。

今回も、ジョン “スパッド” マーフィー(John ‘Spud’ Murphy)がエンジニアを務めていますが、ランクムにおけるスパッドの立ち位置や役割について、具体的に説明してください。私には、彼はほとんど第5のメンバーのように思えます。

IL:まさにその通りなんだ! スパッドはアレンジからプロダクション、その他の作業でも、俺たちと同じくらいの役割を果たしているからね。今作では、彼が中心的役割を担った箇所もある。たとえば、曲と曲の間にあるインストの「フーガ」3曲(“Fugue I”~“Fugue III”)はすべて彼のアレンジによるものだ。彼がアレンジしたものを俺たちに聴かせて、そこに俺たちが手を加え、また彼に戻したりしていた。他の曲に関しても、自分たちでは思いつかないような素晴らしいアイデアをたくさん提案してくれた。彼は音楽に対する耳が非常に良くて、音階を完全に理解している。エンジニアの達人だよ。スパッドはまさに第5のメンバーだ。彼がいなかったらこれはまったく別のプロジェクトになっていた。
 スパッドと初めて一緒に仕事をしたのは、2015年に「パーラー(The Parlour)」という音楽番組で演奏し、その中の1曲 “Rosie Riley” のヴィデオを作るときだった。スパッドはそのヴィデオのサウンド・エンジニアを担当したんだけど、そのときに、ランクムに欠けていた低音域の音をうまく引き出してくれたんだ。


Lankum “Rosie Reilly” [Live at The Parlour]

 当時の俺たちは、扱っている楽器がシンプルだったということもあって、みんなそれぞれひとつかふたつくらいの楽器しか演奏していなかった。いまではみんな10種類くらいの楽器を各人が扱っているけどね。当時の俺たちはそんなミニマルな編成だったわけだが、スパッドはその音を聴いて、ベース音を引き出したり、それ以外の素敵な要素を引き出し、EQで音質の補正をおこない、完璧なサウンドにしてくれた。そのことがあって以来、俺たちのサウンドは急速に良くなり、ドローンや低音域のサウンド、サブベース音などを追求するようになった。俺たちはいまでもその旅路を続けているのだと思う。スパッドの存在なしでは不可能だったことだ。彼はいまでは俺たちのライヴ音響もやっているんだよ。スパッドに頼む前までは他の人にやってもらっていたんだけど、彼のように明確なヴィジョンを持っている人はあまりいなかったと思う。他の人は「あるバンドのためにライヴ音響をやっている」という普通のお仕事スタンスだったけれど、スパッドが担当になったときは、「ランクムのサウンドはこういうものだ」というヴィジョンが彼の中にすでにあった。そして幸運なことに、そのヴィジョンは俺たちが描いているものと同じだった。彼と一緒にこのような旅路ができていることを嬉しく思うよ。

今作では、初めてジャケットにメンバーの写真が使われていますね。しかも撮影は、あのスティーヴ・ガリック(Steve Gullick)で。

IL:ハハッ、そうなんだよ、なぜだろうな(照れ笑い)。確かにバント・メンバーの写真を使ったのは今回が初めてだね。俺たちがティーンエイジャーの頃は、彼が撮ったニルヴァーナやブリーダーズといったバンドの写真を自分たちの部屋に貼っていたんだ。だから今回彼が撮影してくれることになったときは、素晴らしい機会だと思った。アルバム・ジャケットのコンセプトとしては、スティーヴ・ガリックが撮った写真と、ギュスターヴ・ドレによるイラストを使うということだった。スティーヴ・ガリックの写真はアイコニックだし、イラストも含めて全体的にとても良い感じに仕上がったと思う。撮影当日、彼はどんな写真を撮るかということについて、色々なアイデアを提案してくれたけれど、スティーヴ・ガリックが撮るなら絶対にかっこいいものになると信じていたから、俺たちからは特に何も伝えなかったよ。そして彼は期待通り、かっこいい写真を撮ってくれた。このアルバム・ジャケットからは、グランジ・バンドのような、90年代初頭っぽいテイストが感じられる。俺自身が当時のグランジ・ロックに目がなくて、特に12歳から14歳くらいの頃はそういう音楽を熱心に聴いていたということもあり、あの時代の美的感覚がたまらなく好きなんだよ。

スティーヴ・ガリックが撮影したジャケット例
https://www.discogs.com/ja/master/18393-Nick-Cave-The-Bad-Seeds-The-Boatmans-Call
https://www.discogs.com/ja/master/611610-Gallon-Drunk-Black-Milk
https://www.discogs.com/ja/master/178891-The-Waterboys-A-Rock-In-The-Weary-Land
https://www.discogs.com/ja/master/77388-Richard-Ashcroft-Alone-With-Everybody
https://www.discogs.com/ja/master/166975-Mercury-Rev-Little-Rhymes
https://www.discogs.com/ja/master/8066-Bonnie-Prince-Billy-Master-And-Everyone

海のような潮の満ち引きが感じられるようにしたかった。だから意図的に、ダークで強烈な曲の次には、波が引くようにリラックスした曲を配置し、その次は、また強烈な感じの曲にするという構成にしたんだ。

今回ゲスト参加したミュージシャンについて具体的に教えてください。

IL:ゲスト・ミュージシャンは何人かいるが、特に印象的だったのはアイルランド人コンサーティーナ奏者のコーマック・ベグリー(Cormac Begley)だね。彼はソロ・アルバムも数枚出している。様々な種類のコンサーティーナを持っていて、大型のベースのようなコンサーティーナをよく使っている。彼はリズムに対する感覚が特に素晴らしいんだ。④“Master Crowley's” では、コーマックとレイディ、レイディの妹のサイド・ピートが3人一緒にコンサーティーナを演奏している。あとこれも身内の繋がりなんだが、フィドルのコーマック・マクディアーマダの兄のジョン・ダーモンディが数曲でドラムとパーカッションを演奏している。実は俺は1996年くらいに、ジョンとパンク・バンドを一緒にやっていたんだ。だから彼がアルバムに参加してくれたのはとてもクールだった。


Cormac Begley “O'Neill's March”

 それから、アメリカのノースカロライナ州在住のシンガー・ソングライター、アンディー・ザ・ドアバム(Andy the Doorbum)にもゲスト・ヴォーカルで参加してもらった。彼の音源データをアメリカから送ってもらったんだけどね。俺たちは長い間、彼の音楽の大ファンだったんだ。ランクムが前回アメリカをツアーしたときは、彼も同行し、移動の運転を引き受けてくれたり、ライヴにも参加してくれたんだ。


Andy the Doorbum “Wolf Ceremony and the Howling”

楽器や機材の点で、これまでと違う新しい試みは何かありましたか?

IL:新しい試みや実験的なことは今回たくさんやったよ。前作で使われていた基本的な楽器は、ギター、フィドル、ヴィオラ、コンサーティーナ、アコーディオン、イリアン・パイプスだったけれど、今回は、パーカッションやダルシマーを多くの曲で使用したり、俺がハーディ・ガーディを多用したりもした。バンジョーやギターのボウイング奏法も多くやったね。それからイリアン・パイプスにマイクを入れて、それをペダルボードにつなげて、ディストーションやディレイやリヴァーブのエフェクトを実験的に加えたりもした。その他、タスカムの4トラックのカセット・マシーンを使ってテープ・ループ機能で実験し、その素材でアンビエントなテクスチャーを作ったし、フィドルの弓でピアノの弦を擦って音を出してみたりもした。こんな感じで、楽器を変則的に扱って実験的な音遊びを続けていたから、スタジオの所有者が中に入ってきたときに、慌ててピアノの中のフィドルの弓を隠したなんてこともあったよ(笑)。あと、部屋で歌っているときの共鳴音を、ピアノの弦からのみ録音したりとか。ファウンドサウンド(自然音などのサンプル集)の音源を使うこともやった。ある曲の中には、セロリが育つ音がピッチダウンされた状態でどこかに忍ばせてあるんだよ。そういう細かいことをたくさんやったから、今回のアルバムではどの曲も、ものすごい数のレイヤーが含まれている。だからこそ、スパッドの細部にこだわる性格にはとても助けられた。俺たちはとにかく色々なことを試しては、トラックを次々に録っていっただけだったからね。たとえば、俺はハーディ・ガーディで20の異なるトラックを1日で録音したりした。弦のチューニングを上から順に動かしてやったり、1本の弦だけをずっと弾いてみたりも。そんな音源をスパッドは整理して、俺たちが録音した荒素材からトラックを作っていってくれたのさ。とにかく自分たちが持っている楽器とスタジオで使える楽器すべてを録音したいという思いがあった。俺が一番楽しいと感じられる瞬間だったね。色々な楽器のサウンドやノイズに没頭して迷い込む……そういうことに瞑想的な効果を感じるんだ。たとえば、パイプのドローン音を2時間くらいずっと録音し続ける。ただそこに座ってパイプのドローンだけに没頭するんだ。俺が一番好きな午後の時間の過ごし方さ。そういうのが大好きなんだ。

① “Go Dig My Grave” はアメリカのアパラチアン・フォーク・シンガー、ジーン・リッチー(Jean Ritchie)の音源を参考にしたそうですが、他4つのトラッド・ソング④⑤⑧⑨の参照出典を教えてください。また、それらの原典の中で、特に思い入れのある作品/楽曲/ミュージシャンと自分との関わりについて、何か面白いエピソードがあったら、教えてください。


Lankum “Go Dig My Grave”

IL:⑧ “The New York Trader” は俺が知っていた曲で、ルーク・チーヴァーズ(Luke Cheevers)というアイルランドのトラッド・シンガーが歌った音源を参考にしている。俺たちは彼の音源を聴いて、曲を学んだんだ。いまでは彼と交友関係にあるけれど、彼が実際に歌っているところを見たことはなくて、1980年代に彼がパブのセッションで歌っている音源しか聴いたことがない。俺たちは、その音源が昔から好きだったんだ。この曲は制作初期にできた曲で、レコーディング開始の最初の週に完成させた。


Lankum “The New York Trader”

 ⑨ “Lord Abore and Mary Flynn” ではフィドルのコーマックがリード・ヴォーカルをとっているが、俺も以前は歌っていた。この曲は、イングランドやスコットランド由来の古い歌を集めた『チャイルド・バラッド(The Child Ballads)』という本(アメリカの文献学者フランシス・ジェイムズ・チャイルドが19世紀後半にまとめた民謡集)に収録されている。ブリテン諸島やアメリカなどでは伝統として残らず、民俗学者たちはもう継承されていないと思っていたんだけど、70年代初めにトム・モドリーというソング・コレクターが、この曲をダブリンのパブで誰かが歌っているのを聴いて衝撃を受けたらしい。それが唯一録音されている伝統的なヴァージョンだそうだ。だからこの曲はダブリンとも関連がある。母親が自分の息子と彼のガールフレンドに嫉妬して、息子を毒殺してしまうというとても悲しくて美しい物語歌だ。


Lankum “Lord Abore and Mary Flynn”

 ④ “Master Crowley's” はレイディ・ピートが幼い頃、コンサーティーナ奏者のノエル・ヒル(Noel Hill)から直接教わったものだ。この先生は、クレア州出身の非常に有名なコンサーティーナ奏者だよ。


Lankum “Master Crowley's”

 そして⑤ “Newcastle” は弟のダラグがルームメイトから教わった曲だ。彼の名はショーン・フィッツジェラルド(Sean Fitzgerald)といって、デッドリアンズ(The Deadlians)というダブリンのフォーク・ロック・バンドで活動している。数年前にショーンがこの曲を録音して、ダラグがそれを気に入ったんだ。


“Newcastle” を収録した The Deadlians『Ruskavellas』

 実は最初はダラグが歌ったものを録音したんだけど、レイディが歌った方がいい感じだったからレイディの声を採用した。俺たちはいつも、「誰が何をやるべきか」ということにこだわりすぎないで、音にすべてを委ねて、一番良いと思うサウンドを目指している。誰がどの曲を歌うとか誰かの見せ場を作るとかは重要視していない。それがランクムの良いところだと思っている。個人のエゴが音楽の邪魔をしないというか、「俺はこれがやりたい」とか「これは私がやる」というよりも、みんながバンドにとって最適なサウンドを求めているんだ。


Lankum “Newcastle”

⑧ “The New York Trader” は途中で一度途切れ、後半でよりロック的なサウンドになりますが、こういう構造にした理由、目論見について教えてください。

IL:これは自分でも最近よく考えていることなんだけど、俺たちのアレンジの仕方、特に伝統的な曲をアレンジする場合は、映画音楽を作っているようなイメージなんだ。つまり、曲の感情的な部分を、ときには絶妙に、また、あるときには強烈に引き出したいと考えている。映画音楽を制作するということは、映画監督が描くストーリーを表現する手助けをしているということだ。そこには、観衆を絶妙に導いていく役目があり、観衆がどう感じるべきかをダイレクトに主張するのとは違う。物語を優しく語る手助けをする。俺たちが伝統的な曲をアレンジする時は、そういうアプローチに近いものがあると思うんだ。“New York Trader” が一度中断し、途中からヘヴィーな感じになる箇所は、海で嵐に巻き込まれている様子を再現しようとしたんだ。曲の中で起こっている事柄に音楽の感じを合わせるようにしたのさ。

つなぎの3つのインスト曲 “Fugue” を含め、アルバム全体の構成と流れがかなり緻密ですが、この点についてはかなり意識したんでしょうね。

IL:俺たちは、アルバムというひとつの作品として機能するものを作りたいと思っている。最近の若い人たちはアルバムを通しで聴かずに、ストリーミング・サービスで自分が聴きたい曲しか聴かないなどとよく言われているから、そういう意味ではランクムは古風なのかもしれない。でも俺たちがアルバムを作るときは、やはりひとつのアルバムとして完結しているものを作りたいと思うんだ。ひとつの旅路のようなアルバムというか。今回のアルバムのコンセプトとして念頭にあったのは、「海」のようなものにしたいということだった。先ほども「海」との関連性について触れたけど、アルバム全体で海のような潮の満ち引きが感じられるようにしたかった。だから意図的に、ダークで強烈な曲の次には、波が引くようにリラックスした曲を配置し、その次は、また強烈な感じの曲にするという構成にしたんだ。あと、どの順番がいい流れに聴こえるかということも重要だった。だから、今回録音した曲の中にはアルバムの枠組みに収まらなかったものもいくつかあったから、アルバムから外すという選択をした。曲単体としては非常に良いものでも全体の構成に合わないものはアルバムに含めないで、またの機会に使うことにしたんだ。

ランクムと並ぶ、現在のアイリッシュ・フォークの新しい旗手たち──イェ・ヴァガボンズ(Ye Vagabonds)、ジュニア・ブラザー(Junior Brother)、リサ・オニール(Lisa O'Neill)が最近立て続けに新作を発表しました。こういった他ミュージシャンたちとの連帯意識と、実際の活動状況(共演とか)について教えてください。

IL:俺たちは、いま、挙げられたイェ・ヴァガボンズともジュニア・ブラザーともリサ・オニールともダブリンのセッションを通して仲良くなったからみんな友だちだよ。俺たちはみんなアイルランドの伝統に魅力を感じ、大なり小なりのインスピレイションを受けているという点においては共通していると思う。けれど共通しているのはその点だけで、バンドとしてのアウトプットはそれぞれとても違うものなんだ。音楽に対するそれぞれの嗜好や感性もかなり違うと思うし。彼らとの共通点は、アイルランドの伝統を扱っているということだけだね。もしイェ・ヴァガボンズを街のセッションで見かけたら、一緒に曲を歌ったり演奏したりすることはあると思うけれど、俺たちがアルバムで表現したいことや、バンドとしてやっていきたいことは、彼らのそれとはまったく違うことだと思うんだ。だからこれらのバンドが何らかのシーンを形成しているというよりも、そこには、友人同士のゆるいつながりがあって、それは音楽的というよりも社交的なつながりという感じがするな。

この新作に自分でキャッチ・コピーを付けるとすれば?

IL:そんなことはしないよ(笑)。俺は、自分が作った音楽を言葉で説明するのが好きではないというか、そもそも苦手だし。俺はとにかくノイズを出して音に迷い込んでいたい。ただそれだけなんだ。その音楽をどのように説明するか、どのようにカテゴライズするのかは他の人に任せたい。俺にはできないから。俺は様々な音楽やジャンルからインスピレイションを受けたり、色々なアイデアを思いついたりするけれど、それをいちいち切り離して、ひとつずつ理解しようとはしないんだ。様々な要素がごちゃ混ぜになった自分の音楽を作り、「はい、できあがり! めちゃくちゃだけど俺はこれに納得してるからそれでいい」、そんな感じなんだ。いつか日本に行く機会があればと願っているよ!

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