「W K」と一致するもの

Dum Dum Party 2012 - ele-king

 7月1日、〈河口湖ステラシアター〉で開かれた「Dum Dum Party 2012」は、ビッグ・フェスティヴァルが当たり前のこのご時世で、原点回帰をうながすような内容だった。

 Dum Dum Llpがヴァセリンズを呼んだ理由は、好きだからだ。2009年に設立されたこのイヴェント会社の名前は、ヴァセリンズの代表曲"Dum Dum"から取られている。「当初からいくつかバンドを呼びたいと思っていたけれど、まさかこんなに早く彼らを呼べると思っていなくて、早い段階で最終地点に着いてしまったような感じがしているね(笑)」と、今回の招聘について、Dum Dum Llp代表の富樫陸氏は話してくれた。
 今回のイヴェントのプロモーターでもあるOffice Glasgowの安永和俊氏はこう語る。「もちろん商業的に成功しなくてはいけない部分もあるけれど、まず企画する側が好きなバンドを呼んで、バンドを好きな人たちが会場に集まる。そして日本のことが好きなアーティストがライヴをする。ハッピーでしかないからね。当たり前のようだけど、それがいちばんでしょ」
 Corneliusの小山田圭吾氏は今回のイヴェントについて、富樫氏に向かいこう言ったそうだ。「これ、完全に富樫君のイヴェントだよね(笑)」

 日本の大きなイヴェント(フェスティヴァルなど)は、このようなシンプルなモチヴェーションを失ってはいないだろうか。ミュージック・フェスティヴァルとはそれを好きな人たちが好きな文化のためにはじめたもので、その主役は"音楽"と"リスナー"だったはずだ。
 僕も自分でイヴェントを開催したことがある。現在もいくつかのイヴェントのお手伝いをする機会があるので、企画する側の苦労などは(その規模によってかなり違うが)、ある程度は理解はしているつもりだ。自分が思っているようにアーティストは集まらないし、集客などはとても不安だった。経済的なリスクがつねにある。
 しかし、「イヴェントをなぜ企画するのか」というもっとも大切な命題にぶつかったとき、意外と答えは簡単に見つかる。好きだからやる。イヴェントは、その音楽を輝かせる手段、ルーティーンでは決して味わえない自由な空間を創造することなんだと僕は思う。
 ここ5年くらい、僕も毎年のようにいろいろなフェスティヴァルに出かけている。近年はそのイヴェントに「参加している/共有している」というよりも、「普段見れないアーティストを見に行っている」という感覚のほうがどうしても強い。いわゆるショーケースとして受け止めている。そういう意味で7月1日の「Dum Dum Party 2012」は、自分も忘れていたフェス的なものへの初期衝動を喚起させてくれたのだった。

 当日は、ヴァセリンズの"Dum Dum"と相対性理論の"Qkmac"が収録された、限定のスプリット 7インチ・シングルが発売されていた(もちろん即ゲット)。そうそう、この日出演者はスティーヴィー・ジャクソン、ヴァセリンズ、相対性理論、ゲストに小山田圭吾。流行やビッグネームに頼らない、企画側の愛情がわかる、面白い組み合わせだったと思う。だいたい平日の月曜を翌日に控えた日曜日の夕方から山中湖でやるイヴェントには、本気で好きな人しか来ないだろう(笑)。

 スティーヴィー・ジャクソンはベル・アンド・セバスチャンよりも内省的で、もの哀しくも、やさしく包み込むような歌声が良かった。山地特有の天候が独特の雰囲気を醸し出し、ちょっとグラスゴーの風景を空想してしまった。

 スティーヴィー・ジャクソンがリード・ギターとして入ったヴァセリンズは、フランシス・マーキーのチャーミングな赤いスカートが華々しかった。ところ"Oliver Twisted"で演奏がはじまると、そんな可愛い印象は一転。ファズのかかった挑発的なギター・サウンド、ユージン・ケリーとフランシス・マーキーによる男女ツイン・ヴォーカルに乗せられながら、ステージは矢継ぎ早に展開。"Molly's Lips"では小山田圭吾と安永和俊が登場、ホーンを演奏した。"Son of A Gun"あたりから座っていたリスナーも立ち上がり、踊りはじめた。"Dum Dum"を演奏する前のMCで、Dum Dum Llp関係者などに感謝の言葉を述べた。会場は拍手に包まれ、"Dying For It"がはじまった。

 相対性理論は、リヴァーヴのなかで溶け合うふたつのドラムが躍動的だった。ボサノヴァ風のアレンジや、やくしまるえつこのヴォーカリゼーションは魅惑的だった。小山田圭吾をギターに迎えたその日最後の曲、"ムーンライト銀河"は白眉だった。甘いノイズ・ギターは、どこまでも遠くへ続くようだった......。それは企画側の愛情のこもった気持ちの良いフェスティヴァルに相応しい幕引きだった......。

MOVEMENTS Oneness Camp 2012"縄文と再生" - ele-king

 いや~、暑いっす。おまけにオリンピックのおかげで寝不足です。

 さて、DVD作品『Beyond』によって、彼なりの哲学で原発問題や沖縄の基地問題に切り込んだDJ/プロデューサーのムーチーが、8月の終わりに野外フェスティヴァルを主催する。題して......MOVEMENTS Oneness Camp 2012"縄文と再生"。
 出演者に関しては彼らのサイトをチェックしてもらういましょう。ムーチーの考えを租借すれば、取り返しがつかないほど混乱した日本の再生のヒントのひとつとして、そして共感できる自分たちの国の文化のひとつとしての「縄文」というもので、これはUKのアナーコ・パンクがストーンヘンジを抵抗のシンボルにしたり、あるいはUKのロックやテクノが何かとケルト文化を持ち出したりすることの日本ヴァージョンとも言える。8月末、FREE DOMMUNEが終わったら、君も縄文へのトリップを準備しようじゃないか!




長野、縄文、キャンプイン!
満月の夜からはじまる2泊3日の音楽フェスティヴァル!


日 程 2012月8月31日(金)満月 / 9月1日(土) / 9月2日(日)
開 場 8月31日(金) 11:00
閉 場 9月2日(日) 17:00
会 場 長門牧場(特設広場) 長野県小県郡長和町大門 3539-2

【チケット】
通し券 前売り 7,000 円 / 当日 8,000 円
*18歳未満入場無料(要保護者同伴 / 年齢のわかるものをご持参ください)
グループ券 前売りのみ 30,000 円 (5 名分の通し券 / イープラス限定)
一日券 当日のみ 5,000 円
テント券 前売り 1,000 円 / 当日 2,000 円
ファミリーキャンプ券 オートキャンプ券
*6歳未満のお子様連れの方のみ購入可能。限定枚数にて販売予定。
駐車券 当日 1,000 円 *出入り自由
*駐車場はありますが、数に限りがあります。乗り合いでのご来場をお願いします。

https://onenesscamp.org

Chart JET SET - ele-king

Shop Chart


1

Missing Linkx - So Happy (Philpot) /
SoulphictionとMkによるプロジェクトMissing Linkxによる最新作!Moodymannの作風に通ずるブラックネスを放つ"You Ain't Hip"が脳髄直撃!

2

Michel Cleis - Mir A Nero (Pampa) /
2012年サマーアンセム、最有力候補!Cadenza等から数々の傑作をリリースした事でもお馴染みスイスの気鋭プロデューサーMichel Cleisによる最新作!

3

Sunlightsquare - Heart's Desire (Sunlightsquare) /
超人気ラテン・バンドSunlightsquare、今回は、フリーソウルとしても再評価されたのあの曲です。B面はスピリチュアル・ジャズ・ファンク名曲カヴァー!!

4

Ondatropica - S.t. (Soundway) /
Flowering Inferno、Combo Barbaroでのアルバムや数々の過去音源発掘等でコロンビア~ラテン音楽の再評価を盛り上げてきたQuanticによる最終到達地点。

5

Large Professor - Professor @ Large (Fat Beats) /
Large Professorの新作が遂に全貌を現しました! 客演にはBusta, Lil Fame, Tragedy, Mic Geroinoのベテラン勢から、Action Bronson, Saigon, Roc Marcianoまで豪華メンツが参加!

6

Karriem Riggins - Alone (Stones Throw) /
プロデューサーとしてSlum VillageやErykah Baduの作品でも手腕を振るった氏のオール・インストゥルメンタル・アルバム!

7

Hazel - Lost Tapes (The Beat Down) /
Onra主宰レーベルからのデビュー12"が話題騒然となったクリエイターの新作アルバム!客演には若手筆頭株のDrakeや、Bbeからのリリースで知られるSlakah The Beatchildをフィーチャー!

8

J Rocc - Minimal Wave Edits Vol.1 (Stones Throw) /
ミニマル・シンセ・リイシューレーベルMinimal WaveとStones Throwが強力タッグ!プロデューサーとしての資質も一級の彼が、90'sカルト・シンセサウンドを再構築。

9

Moody - Why Do U Feel Ep (Kdj) /
Kenny Dixon Jr. A.k.a. Moodymann手掛けるセルフ・レーベル"Kdj"からの話題新作が遂に解禁。Pv公開と共に話題を集めた昨年リリースの傑作「I Got Werk」も収録されています!!

10

Oddisee - People Hear What They See (Mello Music Group) /
客演には旧知のDiamond Districtの面々や、同郷ワシントンD.c.のソウルスター・Olivier Daysoul、Bullionとのスプリット盤でも話題を呼んだTranqill等が参加した全12曲。

Kindness - ele-king

 サファイア・スロウズは、彼女のLAツアーの記録において、アマンダ・ブラウン(LAヴァンパイアズ)の家に行って、「将来こんなふうに生活したいよね.....(略)。かっこいいことしてるかっこいい人たちがかっこいい家に住んでてよかった」と、素直な感想を述べているが、日本に住んでいる限り彼らと同じような生活はほまず無理だろう。
 これはインディ・シーンや音楽文化の質の問題ではない。より大きな問題だ。そもそも日本の建築物、こと住居に関する建築物の考え方そのものが欧米と日本とでは違う。欧米では、たとえば集合住宅の部屋を買う場合、土地ではなく、その建築物に金を払う。ニューヨークやロンドンなどの場合、必ずしもそうとは言えないだろうけれど、伝統的にはそう考えている。つまり、日本とは逆。だから、建築物がしっかりしていないと売れない。デトロイトでもベルリンでも、緯度が高いところに位置する都市部では、だから保温はその建物全体でおこなう。遮音や配管に関してもしっかりしている。ところが日本は、土地が資産となっている。ゆえに地価が高く、ゆえにその上に建てる建造物へのコストはカットされ、ゆえに世界のスタンダードで言えば、先進国でありながら平均的な人たちはスラム街並みの狭い空間で暮らしている。国土が狭いからそうなったわけではない。国のシステムや考え方に依拠している。
 このように、日本の外から日本を見ると悲しくなることが多々ある。今日の民主党+元民主党の無責任ぶりを見れば外に出なくてもそのとんでもなさはわかるだろうが......。

 しかし「思い込み」というのは恐ろしいもので、80年代まで、日本人の多くは自分たちは経済大国に住んでいるんだし、欧米人並みの暮らしをしているんだと錯覚していた。信じられない話だが、自分たちは白人だと勘違いしていた人も少なくない。
 土地を株券のように売り、価値を与えたのは日本政府だ。税収が増えるし、資産として運用できる。それがゆえにバブル経済が起きたわけだが、結局のところ間違った「思い込み」に気づかされたのが80年代の日本だった。
 だいたい平均的な大学生の暮らしは、地方から上京してきた場合など、男も女も風呂なしの木造アパートが当たり前だった。しかし、80年代の生まれの橋元優歩は、あの時代の日本では多くの若者がYMOに表象される「トーキョー」に酔っていたと思い込んでいる。ある種ヴァーチュアルなノスタルジーに支配されているのだ。

 今年の3月に店頭に並んだカインドネスのデビュー・アルバムをいまさらレヴューしたのはふたつの理由がある。ひとつは三田格によるピュリティ・リングのレヴュー。彼は「チルウェイヴもいい加減、ディスコ・リズムからは離れて16ビートを意識したようなものになっていくか」と書いているが、僕が知っているだけでもチルウェイヴは1年以上前から16ビートを意識している。トロ・イ・モアが昨年の2月に発表した『アンダーミース・ザ・パイン』の、たとえば"Go With You"を聴いてもらえればわかる。トロ・イ・モアはその年の12インチ「フリーキング・アウト」でもブラコン的な16ビート路線を追求している。また、〈4AD〉のインクにもそのあたりのセンスがプリンス・リヴァイヴァルのなかで受け継がれている。

 カインドネスの『ワールド、ユー・ニード・ア・チェンジ・オブ・マインド』という、もっともらしい題名のアルバムは、アートワークが物語っているように、何のことはない、スタイリッシュなトロ・イ・モアといったところである。
 ラ・ファンク・モブもモーターベースも聴いていない世代がカインドネスにいち目置くのは無理もない、ラ・ファンク・モブが出てきたとき、君たちはまだ小学生だったかもしれないのだ。僕がこのアルバムを手にした理由は、プロデューサーがフィリップ・ズダールだったからだけれど、カシアス以降のズダールは中途半端にビジネスを意識していて、いまひとつ冴えがない。それでもまあ、経験豊富なフランス人がチルウェイヴをどういう風に料理するのか興味があったし、彼はトロ・イ・モア以降の流れをそれなりにうまくまとめてはいる。16ビートを基調としながら、ディスコ(80年代)からハウス(90年代)へと、じょじょにだが移りゆくモードも捉えている。80年代風のテクスチャー(ディスコ、ブルーアイド・ソウル、AOR......等々)も残しつつ、新しい衣装を同時に見せている。

 80年代からはじまった「スタイル文化」の背後では、アーバン・ルネッサンス計画に沿って、この都市の殺伐とした景観がかたち作られている。そんな80年代の日本において、たとえばルインズ(廃墟)やボアダムス(倦怠)を名乗った音楽が、その後のブルックリン(ブラック・ダイスやアニマル・コレクティヴ)へと伝播されている。それなのに橋元優歩ときたら......。
 たしかに言われてみれば、いまよりもお花畑の若者は多かったかもしれない......けれど、80年代とは「日本ってやっぱダメだったんだな」と気づかされた時代だった。不思議国でも何でもない。
 周知のように、新自由主義がはじまったのも80年代だ。百歩譲ってそれにはそれなりの良さがあったとしよう。だが、日本で公営が民営化されたと言っても、結局そのトップは官僚のままだったりする。そのことと「チルウェイヴは16ビートですよ」という実に些細なことを言いたかっただけなのに、こんなにも書いてしまった。風呂に入ろう。stay loose, play funk and write reviews...

 洋楽聴くと売れなくなるぞ、売れたきゃバンプだけ聴いてろぉと業界では言われているとかいないとか......、そんな話がまとこしやかに囁かれている今日の邦楽で、たとえ無意識であろうとシーンのガラパゴス化に抵抗し、音楽という想像力に意識的なアーティストたちのリリースが相次ぐ。
とはいえ、ほんとうにつまらない音楽ばかりなのかといえばそうでもない。無名の才能たちを拾い上げることができなくなってしまった痩せて力ない音楽業界を、彼ら先達者たちやわれわれリスナーが揺さぶらなければならない。投票だと仮想してみようではないか。あなたはどの票でもって意思を表明するだろう? 全部買ってもいい。しかしどれもそれに値しないかもしれない。あなたの期待の作品を、どうぞコメントしてください!

 8月8日の七尾旅人『リトルメロディ』は、前作『ビリオン・ヴォイシズ』発表以降全国を行脚し、とりわけ震災以降の福島へいち早く赴くなかで受けた大きなインスピレーションが止められている。ツイッター上のコミュニケーションを制作に援用したり、多くの個性的な奏者たちを交えるレコーディング・スタイルをとったりと、七尾らしい取り組みも健在だ。また、昨今のSSWブームの火付け役でもある。
詳細 https://tavito.net/

 9月5日のコーネリアスは、これまでに手がけたリミックスやミックス作品のコンピレーション「CMシリーズ」の第4弾。1995年から2012年まで、国の内外を問わずオファーを受けた作品を一挙収録している。こちらは残念ながらオリジナル・アルバムではないが、定評ある小山田圭吾のリミックス作品をまとめて聴けるのは嬉しい。MGMT、相対性理論、アート、リンゼイ、小野洋子、布袋寅泰、三波春夫......などなどの曲のコーネリアス・リミックスが収録される。"赤とんぼ"のリミックスは必聴。

 同日のトクマルシューゴは約2年半ぶりのリリースとなる。予定されているフル・アルバムに先駆けたシングルだ。タイトルは『デコレート』。CDやデジタル・フォーマットのほかにソノシートも予定されているところにインディ・シーンの時流がとらえられているようにもみえる。ご存知バグルスの名曲"ヴィデオ・キルド・レディオ・スター"カヴァーなどはアルバムへは収録されない注目トラックだ。
詳細 https://blog.shugotokumaru.com/?eid=1030256

 9月19日はオウガ・ユー・アスホール。演奏力もさることながら、若いバンドのなかではダントツに多種多様なレコードを買い、探求をつづける志高きバンドでもある。物事が移りかわったり終わったりしていくことは、悪いことではない......『ホームリー』とは真逆のチルな境地を目指しつつ、ポップ・センスも注がれている『100年後』には、そうした意味もこめられているようだ。
詳細 https://www.ogreyouasshole.com/news.html

石野卓球 - ele-king

 YMOとクラフトワークとアンディ・ウェザオールとパレ・シャンブルグを聴いた後、という非常にヘヴィな状況で、もう帰ろうと思っていたんだけど、石野卓球がDJをはじめた途端にどんどんひとがフロアから出て行くという滅多にない光景を見てしまったものだから、それまでのすし詰め状態から自由に踊るくらいの余裕ができたダンス・フロアのど真んなかにわざわざおりていったら、卓球の繰り出す魔術的なビートに絡めとられて、しばらく踊り念仏と化してしまった。以前はほんとにしょっちゅう聴いていた彼のDJだけど、最近は本当にごぶさたしていて、それでなのか懐かしいようなとてもフレッシュなような、いろんな感覚がぐるぐると渦巻いた。

 初回から昨年まで、13年分の〈WIRE〉コンピに収録された卓球の曲を古い順に並べた今回の企画盤は、たぶん初回からずっと〈WIRE〉に通い詰めているようなオールド・ファンに同じような感覚をもたらすんじゃないかと思う。本作に関連したインタヴューでもアルバム収録の本人解説でも語っているように、初期の頃にはこのフェスの顔になるような、アンセム的な曲をオーガナイザー自ら提供している感じで、実際会場でも何度も耳にしてすごく記憶に残っているトラックが多い。途中からそういう意識が変わって、〈WIRE〉でのプレイ中に使うわけでもない、コンピの中の一曲というものになったという。当然、後半にいくに従っていわゆるオオバコ映えする派手なトラックからBPMも下がって、地味で実験的な曲が増えていくんだが、だからといって卓球らしさというか、「味」みたいな部分が減退しているかというとそんなこともなくて、むしろ歳を取るにつれてそのひとの本性が顕わになるみたいなところもある。
 去年のコンピからの収録曲"Five Fingers"は5拍子で、イントロからしばらくは普通の4/4のストレートな曲からは感じえない妙なきもちわるさがある。だんだんと音数が増えるとその異物感も緩和されて、卓球の持ち味のひとつであるトランシーな上物が輝き出すと、あっという間にその世界に引き込まれる。去年、WIREコンピを入手した後すぐループで聴いていて、この曲がすごく耳に残ったのを覚えている。そのときは5拍子だからっていうのはパッとわからなかったけど、いっぽうで彼が昔Mijk Van Dijkと作ってヨーロッパ中でヒットしたUltra-Takkyu vs Mijk-O-Zilla名義のトラックとよく似たハマリ系のトランシーさを持っていて、ずっと変わらない本質的な快楽原則を追求した部分と、そのチャレンジングな冒険とがこんな具合にブレンドされるのはすげえなと思ったのだ。しかも、それ1回では飽きたらず、今年のWIREコンピでも、今度は7/4拍子というまたも「変」なリズムを探求するという筋金入りの変態っぷりを披露している。
 毎年欠かさず〈WIRE〉に遊びに行っているロートルとしては、当時小学生だったリアル・キッズがいまや成人して堂々とオールナイトで酒飲んで大暴れできる年齢になってると改めて考えると衝撃を受けるが、そういう人たちがこのアルバムで石野卓球の〈WIRE〉における変遷をはじめて振り返るとどういう風に聞こえるのかは結構興味がある。おじさんは、懐かしさもあるから初期の曲にはもちろんかなり思い入れもあるし、いまでも全然かっこいいと思うんだけど、いまの耳で聴くならこっちかなというのは07年の"St. Petersburg"とか09年の"Slaughter & Dog"とか、もしくはボーナス・ディスクに入ってる10年の"Carrie"あたり。でも、こないだShin Nishimuraくんと、若いクラバーは、パンチの効いた往年の"ザ・テクノ"みたいなノリはあまり体験してないから、そういうのが逆に新鮮なんじゃないかと話していて、実際彼が自分のパーティに石野をゲストに呼んで「クラシック」をテーマにオーガナイズした晩も、どう見ても20代前半の若いお客さんが、10~20年前の曲でガンガンに盛りあがっていた。たぶん、90年代に一般化した編集/DJ的な聴き方や、00年代のiPod的シャッフル感すら遠くの過去のものにする感性を、彼らはもっているに違いない。

 歌謡曲でもロックでも、購買力があって思い入れが強いのは中高年のファンだから、そういう人たちに向けて再結成や懐メロ的な展開して一稼ぎっていうのはもうどこでもあたりまえの光景になってしまったけど、年代的にもキャリア的にもそろそろそういう部類に入りそうな卓球が、こういう「思い出を振り返る1枚」みたいな装いの企画をこなしながらも実際はまったく明後日の方向へひょいひょいと走ってることは感動的ですらある。

Dennis Bovell - ele-king

 露天商を営むバスブーサと呼ばれた青年がチュニジア政府への抗議行動として焼身自殺をしたのは、2010年12月17日のことだった。これがジャスミン革命の引き金となった。それは反政府デモをうながし、結果、「アラブの春」と呼ばれる大規模な民主化運動をもたらしている。デニス・ボーヴェルの『メイク・イット・ラン』の1曲目のサブタイトルは"ダブ・フォー・バスブーサ"、この1~2年で中東や北アフリカ諸国へと急速に拡大した歴史的な変革の発端となった青年に捧げられている。
 今年はボブ・マーリーの映画が上映されるが、ルーツ・レゲエは骨董品ではなく、いまもなお動いていることを証明するかのようだ。"ダブ・フォー・バスブーサ"に続くのが"ラン・ラスタ・ラン"。デニス・ボーヴェルの息子、ボビー・ボーヴェルは2011年に『ジ・エマージェント・エクレクティック』というゴスペル・アルバムを出している。その作品の主題はエジプトのムバラク政権の崩壊で、そのアルバムのトラックの元ネタになったという曲"アフター・ザ・ストーム"が『メイク・イット・ラン』のクローザーとなっている。ほかにも興味深い曲がたくさんある。"アフリーカン"は、ヒュー・マンデルの有名な"アフリカ・マスト・ビー・フリー・バイ・1983"へのアンサーとして1984年にI・ロイが吹き込んだ曲だが、1979年に1983年を予言した曲に対する回答を1984年にするのは良くないと考えたボーヴェルが曲を編集し直している(しかも、実に格好良いミリタント・ビートの進化型)。

 デニス・ボーヴェルといえば、UKレゲエにおけるゴッドファーザー的な存在として(マトゥンビのベーシストとして)、ポスト・パンクにおける重要なバンド、ザ・ポップ・グループやザ・スリッツのプロデューサーとして、多大な功績を残している。『メイク・イット・ラン』は、彼が1978年から1986年に録音したアナログ音源を、マッド・プロフェッサーのアリワ・スタジオで高周波数のデジタル音源へと変換させ、あらたにダブ処理した曲のコンピレーション・アルバムである。多くの曲では当時マトゥンビとツアーしたI ・ロイが参加している。ステッパーズ・スタイルを基調としたリディムも塗り替えられ、驚くほど新鮮に感じる。元ネタはヴェンテージだが、仕上がりは真新しい。先述した"アフリーカン"、もしくはフルートが美しさがたまらない"ダブ・コード"、もちろん"アフター・ザ・ストーム"や"ダブ・フォー・バスブーサ"......、これらのうちのどれかを聴くためだけでも価値がある。
 つまりこれは、レゲエにありがちな、いわゆる未発表曲集、レア・ヴァージョン集といった類のものではない。過去の伝説にしがみついているエルダー・ロックとは訳が違う。そして、自分で自分のことを「オヤジ」「おさん」と繰り返す自意識は(ここの部分に関しては僕も人のことを言えないが)、デニス・ボーヴェルに学ぶといいだろう。冒頭の"ダブ・フォー・バスブーサ"がその良い例であるように、これは現在音楽なのだ(スティーヴ・ベイカーのライナーも秀逸で、彼の解説を読むためだけでも日本盤をオススメしたい)。

 まとめ。デニス・ボーヴェルの『メイク・イット・ラン』は、二木信がそろそろ書いてくれるはずのリクル・マイの強力なソロ・アルバム『ダブ・イズ・ザ・ユニヴァース』とも精神的には同盟の、明快な意見表明と前向きな気持ちの入った素晴らしいルーツ・アルバムである。

Moritz Von Oswald Trio - ele-king

 パレ・シャンブルグの再結成――東京公演を楽しみしていた私は前の週は気もそぞろだったのに、なぜか当日にはすっかり忘れ、幕張から代官山をハシゴする「オヤジ殺し」はまぬがれたものの、忘却という(かボケというか)別の意味のオヤジ殺しにわが家でくつろぎながら苛まれていたことにさえ気づかない有様だったが――に参加しなかったモーリッツ・フォン・オズワルドに、ヴラディスラヴ・ディレイ名義のサス・リッパティとサン・エレクトリックのマックス・ローダーバウアーとを加えたトリオの3作目。『Fetch(フェッチ)』とは「連れて来る」の意で、派生的に「(聴衆などを)魅了する」という語意を含む(『ジーニアス英和辞典』)が、ファーストの『Vertical Ascent』(2009年)、昨年の『Horizontal Structure』に続く本作でも、長尺のきわめて抽象的なアンサンブルを聴かせるトリオの基本路線に異同はない。つまるところ、ジャズのスタイルを借りたテクノをダブで再生したミニマル・ミュージック。ゼロ年代ダンス・カルチャーの共通言語のひとつであったベーシック・チャンネルの方法論を展開した、ほとんど至高の職人芸ともいえる細部を味わえるかいなか、そこにこのアルバムを聴く醍醐味がある、と書くと、またぞろオヤジ殺しかよ、とかいわれそうだが、とはいっても、まるで耳の毛細血管を流れる血の音を聴くように細かく脈動する、聴くことの楽しみを鼓舞する音楽を無視する道理はない。

 たとえば、冒頭の"Jam"にはトランペットをフィーチャーしている。ところがそれはジャズでいうソロイストの役目を担わない。MVOTは唯一のメロディ楽器を煙幕の向こうに追いやり、フューチャー・ジャズ的な構成要素と、パーカッション、シンセサイザー、ノイズ、エレクトリック・ベースのハーモニクスなどとの位置関係を転倒(ダブ)させることで、簡単にそこに収斂させはしない。さきほど、「ジャズのスタイル」と書いたが、援用されているのは即興の方法論と合奏の形態であり形式ではない。ここでは、リズムの磁場/重力に対置されたワウモノすべてがスポンテイニアスにソロをリレーしていく。その縦軸の力に対する横軸の運動はダンスミュージックそのものであるばかりでなく、ジャズの、とくにプレ・フュージョン期からフューチャー・ジャズまでの底流ともいえるエレクトリック期以後のマイルスのモーダルな手法を彷彿させる。つまり、演奏は自由に展開する(ようにみえるが)グルーヴとモードが舫となる。その綱引きこそファンクネスである。MVOTはテクノでありミニマルでありダブであるが、いずれにも偏らず、むしろその綜合として、ジャズやファンクの"原理"に接近していったのは、人名をグループ名に冠するというジャズ的な(と断定することができないけれども)命名であらかじめ表明されていた......というか、私はここでようやく思い出したが、そんなことは"Vertical Ascent(垂直上昇)""Horizontal Structure(水平構造)"といったタイトルにとっくに掲げていたのでした。

 だったら『Fetch』はどうなのかといえば、言葉の意味は前段に書いた通り。ところが、"Pattern""Structure"(『ライヴ・イン・ニューヨーク』では"Nothing")に番号を振っただけのそっけなかった曲目には『Fetch』では"Jam""Dark""Club""Yangissa"と、テーマないしは情景を思わせるタイトルが付されている。"Jam"はジャム・セッションを、"Dark"はヘヴィなグルーヴがとぐろを巻く曲のムードを指すのだろうし、四つ打ちの"Club"はタイトルの通りのクラブ仕様。三連符のボトムと打楽器の刻みと遠くに鳴るホーンがエキゾチックな幕引きの"Yangissa"はMVOTがこれまでも試みてきた(『Vertical~』の"Pattern 3"など)ワールドミュージック的手法の拡張版だが、ヴィラロボスやジョン・ハッセルを思わせる(とすると、"Jam"のハーモニクスの使い方はどう考えても『Possible Music』あたりのパーシー・ジョーンズを意識しているとしか思えない)ムードにはしかし、ここではないどこかに向かう浮ついたところはない。むしろ、すべての要素を繋留するリズムこそ彼らの真骨頂であり、MVOTの磁場が「連れて来た」記号はその上をゴースト・ノートとして彷徨するのである。
 そういえば、"Fetch"には「生き霊」の意味もあったのだった。
 Rhythm & Fetch...

100% Silk x Diskotopia - ele-king

 オイは生まれてはじめてミラーボールば見たんばい......筆者は生まれてはじめてミラー・ボールをこの目に見た。ききかじりの長崎弁もどきをつかうのは、そうストレートに告白するのがしのびないからである。はずかしながら、このように4つ打ちがとどろく場所に来たことがなく、押すのか引くのかわからない重い扉を開けてものすごい音の波動が押し寄せてきたとき、筆者はほんとうに驚いた。前日に諸先輩方から「外国にも行きたくない、クラブにも行かない、××もやったことがない、それではいかんというか異常。」というような説教を受けてきたが、じつのところオールナイトも初めてで、いろんな先入観からやや腰が重かった。だが、緊張しながらも筆者は仮眠をとり、尋常に準備をととのえ、24時過ぎに人の群れを逆行して渋谷へたどりついたのである。おお、免許証がいるのか。後ろのひと大変すみません。初めてなもので......と、受付に見知った担当者の方の顔をみつけてほっとしながら、ご挨拶もそこそこに混みあったロビーに足を踏み入れると、ビールを手に入れるのもひと苦労なほどの人の入りようだ。〈100%シルク〉というから、マーク・マグワイヤのときのようなムードや客層を漠然と思い描いていたのだが、それはくだんの音圧とともに吹き飛んだ。同じように混んでいるが雰囲気は真逆である。たぶん、シルクが何なのか知らないできている人もいる。だが、ジュリア・ホルターが来ていたならともかく、彼らのプレイはその客層にうまく機能していた。マグワイヤには(そしておそらくジュリア・ホルターやアマンダ・ブラウンなどにも)ステージへの集中があったが、ここには発散がある。ここはダンスをするところだ。なるほど思ってもみないところに来てしまった。そのときはじまっていたマジック・タッチがなにか特別に優れていたり目立っていたりしたわけではないと思うのだが、とにかくバキバキに4つ打ちで、「パワー」というより「フォース」というに近いその音圧には意外なほどわくわくした。なにか、人生で初の部類のことに触れようとしていたのだ。明確にそう直感された。よって、ここまでお読みくださって苦笑されているみなさんも、どうかそんなおぼこいやつの体験記としてあたたかくお目こぼしいただければと思います。

 ただ、そのときたまたまうしろのモニターが摩天楼の夜景をレトロなタッチで映し出していたのにはすこし笑った。まさに幻想のエイティーズというか、ヘリからの空撮といった趣でゴージャスに、なかばアイロニカルに街が輝いている。そして時おりシルクのロゴがひらめく。オーソドックスで制圧的な力にみちたマジック・タッチに似合っていた。それに比して、概して隙間の多めの音響構築、ウラ拍とズレをいかしたマーク・バートルズのほうは、最大の盛り上がりポイントでVJがいい仕事をして盛り上がった。温泉・カラオケ・大人数宴会やその他設備を盛ったスーパー旅館のCMが用いられていて、人々の髪型や大写しになったすきやきの色合いや画質などから、これまた失われし80年代への、そして80年代ノスタルジーじたいへのシニカルなオマージュがうかがわれる。タイミングは完全に偶然なのかもしれないが、それならば彼は偶然をうまく引き寄せた。

 小さい前ならえほどのスペースをあけて人々が踊りあっている空間は居ごこちがよかった。みなよく相手の耳もとに大きな声で話しかけていたが、ちっともうるさいと感じなかった。そこでは自分もただ大勢のなかのひとりで、音が互いの距離をほどよく遮蔽している。そして暗さがやさしく意識をまもってくれる。ビートと音量が圧倒的で、あまりなにも気にしなくてよくなる。自我や自意識を相対化されるというか、インディ・ロックを聴きにいくときの一種独特の緊張感からは自由であった(その緊張感も大事なものであるが)。ぼーっとしている人もいる。スポーツ観戦に近いのかもしれない。ある瞬間には一体感が訪れる。さまざまな例外はあるものの、ロックの場合、たとえみんなで合唱したとしても一体感はステージ側との1:1の関係で生まれる精神的なものであることが多いのではないだろうか。ここに時おり生まれる一体感とは、もっと動物的な、たとえば一羽のカモが方向を変えるといっせいにみなついていくというような種類のものであるように思われた。

 さて、2杯めのビールの調達に手間どっているあいだにサファイア・スロウズがはじまってしまっていた。先のふたりの手練とはちがい、音圧がうすく、出音はやや平面的な印象であったが、彼女は果敢に、その場にライヴを取り戻した。あれだけガンガンと4つ打ちに支配されていたフロアには、いまやメランコリックにピアノの旋律が響いている。生演奏による単純なメロディが、一瞬は場違いにも思われた。目の前のふたり連れが「なんだ、ただのライヴじゃん」と言っていたが、そうした当初の当惑を、彼女はじつに堂々と変えていった。マイクをつかみ、ハイ・プレイシズナイト・ジュエルのあいだを縫うような感覚で反復するフレーズを丁寧に歌いつづけ、繊細なエレクトロニカは叙情をやめようとしない、そうしているうちにすっかり会場が説得されてしまった。ほとんどの人が踊りをやめていたが、ゆるやかに音に身をもたせて、最後はとてもよい雰囲気で終わった。マジック・タッチとの共作というトラックを披露して幕。非常に勇気のあるステージだったと思う。

 さあ、そしてアイタルの独壇場がはじまる。あたまから唐突に、半端なくナルシスティックでわがままで横暴な高音ヴォーカルがすさまじいノイズとともに押しつけられ、なんというか完全に場が異化された。これはなにかが違う。と誰もが感じるのを、またしてもカモの一羽のように察知した。間髪をいれずモニターにはきのこ雲......これも偶然なのか。激しいドンツクの上に、満ち潮のようにノイズが這い上がってきて、そのある一点をとらえ、海鳥のように鋭い彼の鳴き声が滑降する。まさにブラック・アイズが、しかし思ってもみなかったところで重なった。異様なくらいに彼という人間のエネルギーがほとばしっている。ちょっとのあいだ、言葉を失うほどにかっこよかった。インダストリアル風の音もじつにエモーショナルに取り込んでいたと思う。ローファイなテクスチャーも生きていた。なぜ、これがこんなふうにパッケージされないのか? CD作品とのあいだには深い乖離を感じずにはいられない。間違いなく、CDやアナログのメディアに落とし込まれた段階で、彼の中心のエネルギーは20パーセントくらいに削られてしまっている。背景にはきのこ雲を茂らせた木々が動き、星の夜空がまわる。ほとんどシューゲイズと呼べる展開をみせ、突如としてケトルばりの叙情性がはさみこまれてまもなく、大興奮につつまれてアイタルはライヴを終えた。つづくBD1982はすこしかわいそうだった。ナードで落ち着いた趣向をみせたが、みんな外に出て行ってしまって。みんな、どこへ行ったんだろうか。この間、ちょうど2、3人の知人にバタバタと出会ったが、そのうちのひとりはこれから寝ようと思っていたとのことだ。寝る、どこで? ここで? ワイルドだ。

 つづくミ・アミにむけて、よい場所を取っておくことにした。ケータイで写真も撮らなければならない。筆者のようにひとりで突っ立ってとくに踊りもせずにいる人間は、ぶつかられたり何だか不明な水沫を浴びたりすることになるのだ。ということも学習した。ステージが収まる写真など、いい場所じゃないと撮れないにきまっている。べつに、それでまったく腹も立たないのがこの空間の不思議さだ。

 そしてミ・アミもまたすばらしかった。マジック・タッチとアイタルは、デュオでの立ち姿もとんでもなくきまっている。彼らには華がある。アイタルのノイズ感は薄れてタイトな印象のステージだったが、ビートが入るとともにまたしてもブラック・アイズなハイ・トーンの機関銃ヴォーカルにあおられ、足元と脳が揺れた。地面にはいつくばってペダルやツマミをいじりながら叫びまくるというスタイルもいいだろうが、卓とサンプラーやミキサー一式のむこうで直立してマイクを握ってさけぶのもいい。叫びながらも手元をするどく見つめてせわしく音を調節し、またときどき言葉を交わしてなにごとか確認しあう、その動作ひとつひとつがわれわれを惹きつけた。ラストは先のアイタルと同様にエモーショナルな展開をみせ、ひと刷毛のメランコリーが加えられた。オーディエンスの動物的な神経はいつしか精神の琴線へと抜き替えられ、微量のものがなしさを含んだコード感と、身体のなかに残存する昂揚感を、迎えつつある夜明けのけだるさのなかに迎え入れた。非常に充実したライヴだった。その後はぼちぼち始発の時間で、知的でミニマルなプレイをするア・トウト・ラインの途中で筆者も出てきてしまった。4割ほどの人たちが思い思いに休んだり話したり、あるいはまだ中で踊ったりしている。
こうして初のオールナイトはつつがなく楽しんだ。ちなみにミラー・ボールはいちども回っていない。最後に驚いたのは、早朝の渋谷にこんなにも帰路につく人々がいるのか、ということでした。

The Orb feat. Lee Perry - ele-king

 いやー、暑い、暑いっす。この暑さのなか、ご機嫌な曲をお届けしましょう。ジ・オーブとリー・スクラッチ・ペリーによる待望のアルバムから先行で発表されている"Golden Clouds"です。あの名曲"リトル・フラッフィー・クラウド"でサンプリングされたフレーズ(スティーヴ・ライヒの曲です)がミキシングされています。アルバム『ジ・オーブ・フィーチャリング・リー・スクラッチ・ペリー・プレゼント・ジ・オーブザーバー・イン・ザ・スターハウス』の発売は8月8日。アレックス・パターソンへのインタヴューは8月のなかばにはアップされる予定です。



 
 

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