「R」と一致するもの

Tribute to Augustus Pablo - ele-king

 1999年5月18日に永眠したルーツ・レゲエの偉人、オーガスタス・パブロ。そのご子息であるADDIS PABLO が今週末から日本をツァーする。それに連動してADDIS PABLO PRESENTS “TRIBUTE TO AUGUSTUS PABLO”、「Rockers International 51st year anniversary pop up & photo exhibition & Additional」が7月15日より神泉の JULY TREE(ロゴは坂本慎太郎デザイン)にて開催される。
 Rockers InternationalやADDIS PABLO関連グッズ、音源の販売、カメラマン菊地昇、石田昌隆、仁礼博による往年のオーガスタス・パブロのポートレイト、さらに生前のパブロと親交の深かった石井“EC”志津男(OVERHEAT RECORDSプロデューサー、雑誌『Riddim』発行人)によるパブロゆかりの品々を展示。また、7月15日にはADDIS PABLOのサイン会とDJによるウエルカム・パーティ。7月19日にはADDIS PABLOほか、石井“EC”志津男、石田昌隆をゲストに招きトークショー、およびADDIS PABLOによるミニ・ライヴもあり。
 ちなみに、ただいま絶賛発売中の、早くも売り切れ店が出てきているele-king books刊行の『キング・タビー――ダブの創始者、そしてレゲエの中心にいた男』も会期中に JULY TREEにて販売されます。

■ADDIS PABLO:プロフィール
メロディカ・キーボード奏者でレゲエミュージシャン、作曲家でプロデューサーでもあるAddis Pablo。ルーツレゲエの代名詞の1人でダブの先駆者であるAugustus Pabloの息子である。 早くに夭折した父と過ごした日々の中で父の創作活動過程を目の当たりにしてきた事を基に、2005年に父親の作品を練習し始めてメロディカとキーボードにおいて自身の音楽スタイルを発見し始め、2010年にはそのキャリアをスタートさせた。 2013年からは多数のヨーロッパの主要フェス、日本を含めたアジア、アメリカ、メキシコやプエルトリコをツアーして、2014年にEarl 16などのベテランゲストアーティストを迎えて録音したデビューアルバム“In My Fathers House”をリリース。2022年5月にドロップした2枚目のアルバムLPの “Melodies from the House of Levi”は自身の成長と音楽的成長を示すものになった。 父、Augustus Pabloが創立したRockers International Labelの51周年である今年2024年は、 その歴史の新たな歩みを刻み始める為に父の誕生日である6月21日のロンドンの老舗クラブ Jazz Cafe でのAugustus Pablo Tribute Showを皮切りに アディスは日本でも7月13日のGEZANとの共演によるSUPERNOVA KAWASAKI でのB.O.B. (Blessings On Blessings) vol.2から父A.Pabloと録音、セッション経験がある日本人ラスタミュージシャンを中心メンバーにRockers Far East名義で活動するベテランバンドを従えてのフルバンドショーを中心とするツアーを予定している。 同バンドでのFUJI ROCK出演も決定している。

■展示情報
ADDIS PABLO PRESENTS
TRIBUTE TO AUGUSTUS PABLO
Rockers International 51st year anniversary
pop up & photo exhibition & Additional
会期:7月15日(月)〜7月25日(木)*予定
会場:JULY TREE(ジュライ・トゥリー)
*詳しい営業日等詳細はSNSをご参照下さい。

■イベント情報
2024.7.15(mon)サイン会+DJ
出演:ADDIS PABLO
START:18:00
ENTRANCE FEE:\1,500+1drink

2024.7.19(fri)TALK & MINI LIVE
出演:ADDIS PABLO
TALKゲスト:石井”EC”志津男、石田昌隆
START:19:00
ENTRANCE FEE:\2,000+1drink

お申込み方法:こちらのインスタグラムDMにてお名前と人数をお伝えください。
19日のみ定員20名予定となります。

■ライヴ情報

STANDARD WORKS CO. LTD.
presents
=B.O.B. (Blessings On Blessings) vol.2=
-Tribute to Augustus Pablo - Rockers International 51st year anniversary Japan Tour with ADDIS PABLO
associated with All Di Best Music
7/13(sat)
17:00-22:15
Ticket:
advance / 4,500yen
at door / 5,500yen
別途1ドリンク

-Live Act-
•ADDIS PABLO(from JAMAICA)
with ROCKERS FAR EAST
•GEZAN
Sound Engineer : 内田直之(NAOYUKI UCHIDA)
-Selector-
ITAK SHAGGY TOJO @itaktojo KEN-ROOTS @abyssinia_jah_rising RAS KOUSKE
-Soundsystem-
JAH RISING S.S

-Food-
JAMAICAN FOOD
RICE&PEAS

Live House
SUPERNOVA KAWASAKI
神奈川県川崎市幸区大宮町1-13,
1-13, Omiyacho, Saiwai-ku, Kawasaki-city, Kanagawa
@supernova_kawasaki

招聘:(株)錦コミュニケーションズ @nishikicommunications

〈店舗情報〉
JULY TREE(ジュライ・トゥリー)
住所:153-0042
東京都目黒区青葉台4-7-27 ロイヤルステージ01-1A
・HP: www.julytree.tokyo
・Instagram:@july_tree_tokyo
・Twitter:https://twitter.com/julytree2023
営業日: 基本月火休館13時~18時ではございますが不定期での営業となります。
*営業日等お問い合わせについてはJULY TREE 公式Instagram、Twitterにてお願いいたします。

High Llamas - ele-king

 相変らずショーン・オヘイガンが作る音楽は、誰にも似ていない。
 2003年の『Beat,Maize & Corn』においてショーン本人の言葉で、「じゃがいもの袋は変わったけれど、それでも中に入っているのはじゃがいもだ」とあったが、この変化に対しての冗談めいた意志表明(タイトルを訳すと『甜菜、とうもろこし、そして穀物』となる)は、『Hey Panda』を聴くと予言として機能していたのではないかとさえ思えてくる。いや、もちろん変わり続けてきたのがハイラマズで、90年代の初期ハイラマズから、98年『Cold and Bouncy』、99年『Snowbug』、2000年『Buzzle Bee』あたりのエレクトロニックに影響を受けたサウンドはわかりやすく変化として捉えることができたし、雰囲気はどこか初期に戻りつつも明らかにポップスとしての画角を押し広げた『Beat, Maize & Corn』、2006年『Can Cladders』、2011年『Talahomi Way』は、変化を感じさせる間もなく、驚くほど自然な形でリスナーをラマズの世界に引き込んだ。レコード屋のソフト・ロックのコーナーで偶然発見した『Hawaii』に衝撃を受け、初めてのリアルタイム・ラマズは『Talahomi Way』だった自分も、遡るにあたってエレクトロニックに影響を受けたアルバムに多少のハードルを感じた薄い記憶ならある。でも「これほどまでにハイ・ラマズの音楽に焦点を当て直したものはない」というのは事実だろう。問題作というインフォメーションにも頷ける。

 散々語られている通り、現行 R&B やヒップホップからインスピレーションを得たということも、仮にハイラマズの作品だと知らずに聴いたとして、これはハイラマズだろうということも、一聴してわかる。今作にも参加しているフライヤーズ、レイ・モリス、ボニー“プリンス”ビリーとの仕事や、ロックダウン中に家の中で子供たちが聴いていたというSZAやソランジュ、ノーネーム、スティーヴ・レイシー、エズラ・コレクティヴ等々から影響を受けたそうだ。2000年代に感銘を受けたというJ Dillaへの思いが時を経て伏流水のように湧き上がったロマンもある。
 第一印象は、サブベースやトラップぽいビート、オートチューンに多少の驚きを感じつつも、ラマズらしいストリングスやピアノ、シンセの響きに耳を傾けると鳴らしっぱなしにされているというよりは細かい単位で配置されながら曲が展開されていくことに気付いてくる。たしかに新しい魅力だと感じた。それでいて、全然煽られる瞬間がなくて、むしろ展開に対してとても豊かな時間の流れがアルバム全体に通底している印象を受けた。BPMがゆったりなこともあるが、現行のプロダクションを抑制をよく効かせながら深く取り込みつつ、やはりハイラマズのポップスとして聴かせるショーンの手腕は流石であるということまではわかった。「僕は、毎日巨大なニンジンを食べるパンダのTikTokファンとして、ロックダウンと回復を過ごした。とても幸せだった。」となんとも言えない安堵感を誘うコメントから察するに、ロックダウンの束の間の豊かな時間も反映されていそうと思ってしまうが、深読みだろうか。

 ところで、この機会でハイラマズを久しぶりに聴きなおしてみると、よく覚えていることに自分自身驚いた。アウトロで次の曲のイントロが脳裏に浮かぶあれだ。思っていたよりもよく聴いたのだろう。いまよりも時間の流れがゆっくりだったのかもしれない。ハイラマズ以降そういうアルバムが何枚あるだろうか。わざわざレコードで買った新譜の何枚を2回以上聴いただろうか。問題作は自分自身だった。
 レーベル〈Drag City〉のインスタグラムには、「現代のポップ・ミュージックの魅惑的な錬金術で幕を開けた『Hey Panda』は、定義が時間とともにどのように変化するかを多角的なレベルで反映した素晴らしい曲集です。喜びを広げ、自信をかき立てることを目的としたアルバムで、若くて勇敢な世界へのラヴレターです」とあった。リスナーもまた時間と共に、楽しみながらラマズの変化を感じていけばよいというか、そうするしかないというか、なんとも楽観的で核を突くメッセージを受け取りました。
 いや、アルバムは相変わらずのポップ・センスを充分に湛えていて、これからの季節にぴったりだと思うし、素直に飛び込んでくる作品だとも思います。ただ、偏屈な僕にはありがたい棘が少し残りました。ラスト・トラック“La Masse”は南米の香りが感じられる(個人的にはエドワルド・マテオを想起した)必ず救われるキラーチューンだし、アウトロのらしいコーラスワークからのフェイドアウトは、まだまだハイラマズは続くという暗示を感じます。レコードは買う。

Kinnara : Desi La - ele-king

 最近はアリス・コルトレーンアンドレ3000ミルフォード・グレイヴスのレヴューなど、ele-kingに寄稿している在日のアフリカ系アメリカ人アーティストのKinnara : Desi Laが7月23日夕方以降のみの高円寺にてイベントを開催します。音楽だけではなく、彼のアート、テクノロジー、ファッションも展示され、販売されます。ぜひ足を運んでみてください。デジさんは日本語も流暢なので、話しかけてましょう。

 3Dメディアアーティスト / エレクトロニックミュージシャン / グラフィックデザイナーであるKinnara : Desi Laが、7月23日午後5時から10時まで、東京・高円寺のAMP CAFE(https://ampcafe.jp/)でSPHERE OBJEKTSポップアップを開催します。これはアート、テクノロジー、音楽、ファッションが融合した一夜限りの特別なイベントであり、Kinnara : Desi Laにとって6年ぶりのポップアップとなります。

 SPHERE OBJEKTSは、もともと2021年にメタバースのNFTとして構想され、複雑な3D建築庭園オブジェクトの革新的なシリーズであり、キメラのようにきらめきます。各オブジェクトは、仏教の黄金、環境瞑想、自然と金属の建築融合の小宇宙です。いくつかのSphere Objektsは、銀座で開催された人気のShinwa Digital Art Week 2022で初めて展示されました。現在、このシリーズはさらに多くのオブジェクト、空間3Dゲーム、そしてユニークなオーディオ体験へと大幅に拡大しています。

 このテクノロジー満載のマルチメディアの夜には、イベント限定で入手可能な新しいカセットリリース、遊べる空間ARビジュアル、Desi LaのBeautiful Machine衣料品ブランドの新商品、そしてDesi Laの最新オーデイオビジュアルパフォーマンスSPHERE OBJEKTSを初めて体験する機会が提供されます。地元で人気のVloqeeがDJサポートを務めます。

John Carroll Kirby - ele-king

 2010年代後半、ニューエイジとジャズのあわいを行く作風で徐々にその名を広めていったジョン・キャロル・カービーソランジュのプロデュースからコーネリアスのリミックスまで幅広く手がけるこのLAの鍵盤奏者、近年は〈Stones Throw〉から着々とリリースを重ねている彼の単独来日公演が決定した。しかもバンド・セットと聞けば、どんなパフォーマンスが披露されるのか気になってしかたがなくなる。《朝霧JAM 2024》への出演を控える10月11日、渋谷WWW Xでそのステージを目撃しよう。

ジャズ、ソウル、アンビエントからエレクトロニックまで横断するメロウなサウンドに、どこか癖になる不思議な魅力を携え注目を集めるJohn Carroll Kirby。フルバンドセットでは初となる単独公演が10/11(金)東京・WWW Xにて決定!

SolangeやFrank Oceanのコラボレーターとしても注目され、多くのソロ作を世に送り出し、多方面の音楽ファンやミュージシャンから愛される音楽家・John Carroll Kirby。今年、USではKhruangbinのツアーサポートを務めライブパフォーマンスの実力を示し、またYMOのメンバー細野晴臣のトリビュート企画への参加や、高円寺の街中で撮影したミュージックビデオの公開で話題を呼ぶなど、日本のシーンとの交流も窺える中での待望の来日公演が決定した。昨年のフジロック出演以来の来日となり、フルバンドセットでの初の単独公演となる。

出演が予定されている朝霧JAM 2024直前となる10月11日(金)、東京・WWW Xにて開催。チケットはただいまより抽選先行予約の受付を開始。

John Carroll Kirby
出演:John Carroll Kirby (Band Set)
日程:2024年10月11日(金)
会場:WWW X https://www-shibuya.jp/
時間:open 18:30 / start 19:30
料金:前売 ¥7,800(税込/ドリンク代別/オールスタンディング)

<<チケット>>
先行受付(抽選)
受付期間:7月9日(火)17:00~7月15日(月祝)23:59
受付URL:https://eplus.jp/johncarrollkirby/

一般発売:7月20日(土)10:00-
e+ https://eplus.jp/johncarrollkirby/
Zaiko https://wwwwwwx.zaiko.io/e/johncarrollkirby (English available)

主催:WWW X
協力:SMASH / STONES THROW

お問い合せ:WWW X 03-5458-7688
公演詳細:https://www-shibuya.jp/schedule/018045.php


John Carroll Kirby(ジョン キャロル カービー)
LA出身の鍵盤奏者/プロデューサー/作曲家のジョン・キャロル・カービー。
これまでR&B界のイノベーターでもあるソランジュやフランク・オーシャンとのコラボ、多作のソロ作品リリース、2023年フジロックの出演、クルアンビンとのUSツアーなどで、ジャズ~ソウル/R&B~アンビエント~ニューエイジ~エレクトロニックなど多方面の音楽リスナーから大注目のアーティストの一人である。
2020年、LAの優良レーベルStones Throwからデビューアルバム“My Garden”をリリース。メロウでドリ-ミーなサウンド、ジャズからアンビエントまで飲み込んだこれまでにないフレッシュなスタイルで大きな話題を呼んだ。その後も不思議な魅力に溢れたバンドサウンドや、独創的なエレクトロニックなど、様々なスタイルを取り入れたアルバムやサウンドトラックを次々と発表。現在、6作の作品がリリースされている。2023年には、各方面から称賛されたエディ・チャコンの最新アルバムのトータルプロデュースを行ったほか、自身の最新アルバム”Blowout”も立て続けにリリース。本作はインディー音楽界のグラミー賞と呼ばれる「A2IM Libera Awards」で、Best of Jazz Albumを受賞し高く評価された。2024年にはYMOの細野晴臣氏のトリビュート企画に参加し、カバー曲をリリースしたばかりだ。

Spotify
Apple Music

"Rainmaker"
"Sun Go Down"
"Mates"
"Oropendola"
"Blueberry Beads"

John Carroll Kirby - Fuku Wa Uchi Oni Wa Soto (feat. The Mizuhara Sisters)
*Haruomi Hosono cover song 細野晴臣トリビュート企画 カバー曲
https://youtu.be/TLxa-jEgAgY?feature=shared

The Stalin - ele-king

 70年代にJamやHEAVENといった雑誌をサポートしていた群雄社という出版社があり(84年に倒産。ニューアカで有名な冬樹社が表なら、こちらが仮に裏とでも思って下さい)、そこで出版部長を務めていたYさんから「ミチロウがテクノに興味を持っていて、彼のスタッフから連絡が行くと思う。電話があったら相談にのってあげてくれ」と言われたことがある。ラフィン・ノーズのYOSU-KOとPONがCOW COWというハウス・ユニットを始めた頃で、パンクからハウスへの変化は必然だったと彼らから聞いていたこともあり、ミチロウがテクノというのもありえない話でもないのかなとは思ったものの、結局、スタッフから電話がかかってくることはなく、次の年にはテクノどころか「遠藤ミチロウがギター一本で全国ツアー」みたいな告知文を目にすることとなった。ザがつかないスターリン解散直後のことで、ミチロウが次に何をやろうか迷っていたなかに何パーセントかはテクノという可能性もあったのかなと(スタッフの勘違いでなければ)。

 遠藤ミチロウは何度か音楽性を変えていて、『Fish Inn』はそのことが最初に議論を呼んだアルバムだった。『TRASH』から『虫』までザ・スターリンはずっとパンクだったし、その次に出た『ベトナム伝説』はソロで、しかもカセットだったから、音楽性が変わってもそういうこともあるだろうぐらいの感じだったから、変わったことに関してはザ・スターリン名義でリリースされた『Fish Inn』に議論は集中した。『Fish Inn』が変わったといっても歌詞に大きな変化があったとは思わなかった。サウンドは勢いがなくなった。もしくは重くなったというのが最初に出てくる感想だろう。客席に臓物やゴミをブチまけるステージが評判になり始めた頃、ミチロウが「音楽誌は最後でいい」とコメントしていたのが印象的で、社会と対峙するのがパンク・ロックだからまずは一般紙誌で取り上げられることが目標だったと。そして、それはすぐに達成され、いよいよ音楽誌がスターリンに裁定を下すという段階で『Fish Inn』が俎上に上げられた。批評に熱があったとは思わないし、そもそも自分の気持ちもよくわからなかった。ミチロウやザ・スターリンについて決定的な言葉というのを読んだ記憶がなく、なるほどと思える批評に出会わなかったことで自分の気持ちもどこかへ散ってしまったままになった。パンク・ロックが音楽性を変えてしまうことはすでに前例がたくさんあり、ジョン・ライドンがセックス・ピストルズからPILになり、ポール・ウェラーがザ・ジャムからスタイル・カウンシルになるなど驚くようなことは出尽くしていた感があったので、ザ・スターリンがどう変わろうと驚くことはなかっただろうし、むしろ驚かせてみろという気持ちだったかもしれない。そういう意味では『Fish Inn』の変化は中途半端で、『TRASH』のスタジオ・サイドに収められていたラストの “溺愛” だとか、同じく『虫』のタイトル曲など既視感がなかったわけではない。人がいうほどの変化ではなかったというか、『虫』までの演奏でPIL『Metal Box』も随所で取り入れられていたから、『Fish Inn』はもしかすると最初はザ・スターリンからパンクを差し引いたら何が残るかという実験だったのかもしれない(といいつつ、ソニック・ユースやカスパー・ブロッツマン・マサカーのようなポスト・パンクはどうしても思い出す)。もしくはザ・スターリンはその前に自閉体と名乗り、自衛隊がディフェンスに徹している様をうまくとらえた名義を使っていたということだったので、外よりもうちへ向かうエネルギーに集中したという解釈は可能かなと思ったり。『虫』に収められていた “アザラシ” ですでに無力感は訴えていたので、それもまったくの新しい局面ということではなく、 “T-Legs” で「お前は空白 落ち込むことさえできない」とさらに追い打ちをかけることに。それでも外にエネルギーは漏れ出してしまったというか、基本的な力強さという意味ではなかなか並ぶもののない存在だった。

 後年になって知ったのは『Fish Inn』は「ザ・スターリンを終わらせる」というコンセプトを持っていたということ。なるほど。これで終わりという気持ちは確かに感じられる。整地された空き地のような落ち着きがあって、どこへ飛んでいくのかわからない無邪気さは皆無。「ザ・スターリンを終わらせる」とは、しかし、どういうことか。ザ・スターリンは最初からインパクトがあって、ソリッドな演奏と暴力的な言葉遣いが魅力だった。言葉が汚ならしいだけでなく、立て看でしか見たことがない言い回しや「コミュニスト」とか「インテリゲンチャ」といった思想家を罵倒する言葉の使われ方が新鮮で、佐野元春やダウンタウン・ブギ・ウギ・バンド、あるいはパンタ&HALが社会全体に風刺の言葉を向けたり、漠然と世の中全体に文句を言うのではなく、社会について何か考えを持っている人に攻撃の矛先を向けたということに興味を掻き立てられた。いま思うと “ロマンチスト” などは俗流の構造主義解釈で、当時の流行りだった相対主義に落ち着いただけなのに、何か思想を持つことに対する否定的な感情というだけでものすごい感じがしたものである。ミチロウ本人が自分自身に向けた言葉も多かったのだろうけれど、なんというか、ユース・カルチャーが政治性を失い、「敵が誰だかわからない」という常套句がまかり通っていた時代に攻撃対象が明確にあるというだけで他とは決定的に違っていた。 “玉ねぎ畑” “解剖室” “アレルギーβ” “虫” と忘れられない曲は多く、 “Stop Girl ” の「おまえは帰るとこがない だからここにいる オレは行くべきとこがない だからここにいる」という歌詞もなぜか好きだった。「ザ・スターリンを終わらせる」というのは、だから、ザ・スターリンもついに攻撃対象を見失ったということではないだろうか。たとえば “メシ食わせろ” で「おまえらの貧しさに乾杯!」と歌っても80年代後半に意味するビンボーはもはや集団就職や全共闘時代のそれではなく、ザ・スターリンが想定する対立点はことごとく、そして巧妙に隠蔽されるようになっていた。実際には原発労働や国鉄民営化など労働問題はむしろ重厚さを増していたのに、それは「おいしい生活」(©︎糸井重里)という認識の変換がすっかり見えないものにしてしまった。ザ・スターリンが、もしくは遠藤ミチロウが政治運動ではなく、ポップ・カルチャーに止まり続けるにはスタンスを変える必要があり、実際、『Fish Inn』後にミチロウが取るスタイルはニュー・グロテスク・ポップと名付けられたレトロ・フューチャー感覚で、寺山修司の表現を手掛かりとし、歌詞に政治色はなく、セックスを連呼するような不道徳路線がメイン、曲調はリズム・ギター全開の60s回帰だったり、プリンスを思わせるファンク・ビートやビートルズのダムド風カヴァーなどだった(そして、ブルーハーツが “リンダ リンダ” をヒットさせた2年後にザがつかないスターリンとして復活し、和光大学の卒業試験で行ったデビュー・ライヴによって再び新聞沙汰に)。

 『Fish Inn』は2年後にビル・ラズウェルによるリミックス盤がリリースされ、05年にCD化されたものはアナログ起こしだったそうで、今回が初めてマスターテープからのCD化。オープニングの “廃魚” が「腐った魚が食いたくて」という歌い出しだったので、東北大震災が起きた4ヶ月後の真夏に気仙沼に行き、屋根の上まで腐った魚で埋め尽くされていたことを思い出した。あの凄まじい悪臭のかたまりをステージからぶちまけられたら……(ちなみにスターリンというバンド名だと中国では発売禁止だそうです。みんなで風船にCDをくくりつけて中国に向けて飛ばそう!)。

KRM & KMRU - ele-king

 荒廃した都市の深淵から深く、そして重厚に響く強烈な音響。アンビエント、ドローン、ノイズ、ヴォイス、工業地帯の音、いわばインダストリアル・サウンド、そしてエコー。それらが渾然一体となって、崩壊する世界の序曲のようなディストピアなムードを醸し出している。このアルバムにおいて、ふたりの才能に溢れたアーティストが放つ音は渾然一体となり、さながら都市の黙示録とでもいうべき圧倒的な音世界が展開されていく……。

 といささか煽り気味に書いてしまったが、このアルバムの聴き応えはそれほどのものであった。ザ・バグことケヴィン・リチャード・マーティン(KRM)と、〈Dagoretti〉、〈Editions Mego〉、〈Other Power〉などの先鋭レーベルからリリーするナイロビのアンビエント・アーティトのジョセフ・カマル(KMRU)によるコラボレーション・アルバム、KRM & KMRU『Disconnect』のことである。

 これは単なる顔合わせ的な共作ではないと断言したい。われわれ現代人の聴覚=感覚をハックするようなサウンドスケープを形成し、インダストリアルとアンビエントとダブが混合する有無を言わせぬ迫力に満ちた音世界を縦横無尽に展開しているのだ。まさに世代の異なる天才的アーティストの遭遇によって生まれた作品といえよう。
 リリースはイギリスはブライトンを拠点とするエクスペリメンタル・ミュージック・レーベル〈Phantom Limb〉から。ケヴィン・リチャード・マーティンは2021年に『Return To Solaris』をこのレーベルから発表している。
 アンビエント・アーティスト KMRU が手がけたコラボレーション作品といえば2022年にブリストルの〈Subtext〉からリリースされた Aho Ssan との『Limen』があった。これもなかなかのアルバムで、惑星的終末論のような壮大なSF的ムードを生成するドローン作品である。いっぽう本作『Disconnect』は『Limen』とはかなり異なる雰囲気だ。「惑星から都市へ」とでもいうべきか。荒廃した都市のサウンドトラックのような音響を展開しているのだ。
 やはりコラボレーターによる変化は大きい。今回はケヴィン・リチャード・マーティンのカラーも反映されているといってもよい。じじつ、どうやらケヴィン・リチャード・マーティンが KMRU のドキュメンタリー映像を観たことが本作の創作の発端だったようだ。そこで KMRU の「声」の魅力に気がついたケヴィン・リチャード・マーティンは、コラボレーションを持ちかけたとき、ジョセフ・カマルに彼のヴォーカルを用いたいと申し出た。アンビエント作家の「声」とはさすがの着眼点である。
 そうして完成した本作は両者の個性が交錯し、錯綜し、その結果、まるで都市を覆う神経系統のような、もしくは断線したネットワーク回線のような、それとも荒廃した都市に鳴り響く不穏な工事音とような不穏なサウンドとなった。アンビエントからインダストリアル、そしてダブの要素が交錯するサウンドスケープはじつに刺激的だ。

 1曲目 “Differences” から共作の成果は存分に出ている。楽曲全体をジョセフ・カマルの声が読経のように響きわたり、聴く者の精神を深く鎮静へと導く。同時にベースの動きをする低音部分、深いエコーがダブのような重層的な音響空間を生成・構築し、それが薄暗い不穏感覚を演出していく。まさに鎮静と不安の混合体のようなサウンドだ。もしくは崩壊と蘇生とでもいうべきか。とにかく灰色の質感に満ちたディストピアなムードがたまらない。この音像はケヴィン・リチャード・マーティンと KMRU のアンビエンスの交錯から生まれたものに違いない。そこに一種の「主演俳優」のようにジョセフ・カマルの声がレイヤーされる。見事な「演出」だと思う。
 2曲目 “Arkives” はカマルの声と透明なアンビエンス、ケヴィン・リチャード・マーティンによるダーク・ダブ・インダストリアルな音像が地響きのように展開する曲。3曲目 “Difference” ではビートが加わり、まるで作品世界を方向するような音響的展開を聴かせてくれる。そこにカマルのヴォイスがまたもレイヤーされていくわけである。
 やがてビートが静かに消え去り、4曲目 “Ark” がはじまる。ノイズの周期的なループにカマルの声の反復が重なる。それが列車の音の進行のように進み、いつしか雨のような音と反復音のみが残る。5曲目 “Differ” ではその荒廃したムードを受け継ぎつつ、周期的なリズムが刻まれていくトラックだ。ここではカマルの声もほんの少しだけ希望の兆しを感じもする。
 そしてクライマックスであるアルバム最終曲6曲目 “Arcs” に行き着く。反復するノイズ、パチパチしたノイズ、加工された声のレイヤー、アルバムで展開されてきたいくつもの要素が統合され、アルバムの終局である音世界を鳴らす。やがて鐘のような音が世界に警告を鳴らし、静まり返った世界に降り注ぐ雨の音のようなノイズでアルバムは幕を閉じるのだ……。

 アルバムは全6曲にわたり、都市の終焉と世界の再生のように不穏と希望のインダストリアル・アンビエントを展開するだろう。ときにビートも織り交ぜながら、交響曲のように展開するさまは、どちらかといえばケヴィン・リチャード・マーティンの個性によるものかもしれない。一方でジョセフ・カマルの「声」が啓示のように響く。まさにレクイエムのようなインダストリアル・アンビエントだ。
 いずれにせよ『Disconnect』において、ケヴィン・リチャード・マーティンとジョセフ・カマルは相互に深い影響を与えつつ、それぞれが別の逃走=闘争線を引くように生成変化を遂げている点が重要だ。お互いの個性が明確に鳴り響いていても、しかし全体としては未知の音になっている。コラボレーション・アルバムは数あれど、これほどの相互作用が生まれた作品も稀であろう。

 私はこれまでも KMRU の音楽を追いかけてきたが、本作は彼のディスコグラフィのなかでも異質にして特別な仕上がりになっていると思う。彼はケヴィン・リチャード・マーティンという圧倒的個性を前にして、ナチュラルな姿勢で対峙し、音と音の新たな交錯を実現した。これはもはやコラボレーションではなく「KRM & KMRU」というユニットの音楽といえるのではないか。まったく新しいインダストリアル・アンビエント・アルバムの誕生を祝福したい。

Cornelius - ele-king

 これを待っていた。コーネリアスによるアンビエントをフィーチャーした作品集である。昨今は日本のロック・ミュージシャンがアンビエントに挑むケースも見受けられるようになったけれど、もともと少なめの音数で特異かつ高度な音響を構築してきたコーネリアスだ。相性が悪かろうはずもなく、凡庸の罠にからめとられることもありえない。

 布石はあった。ひとりの音楽家として大きな曲がり角を迎えたあとの、重要な1枚。影と光、そのいずれをも表現した復帰作『夢中夢 -Dream In Dream-』は、全体としては彼のルーツを再確認させるようなギター・サウンドに彩られていたわけだけれど、終盤には穏やかなインストゥルメンタル曲が配置されていたのだった。アルバム・タイトルと関連深い曲名を授けられ、アルバム中もっとも長い尺を与えられた “霧中夢”。それは、ここ10年くらいの欧米のアンビエント/ニューエイジの動きにたいする、コーネリアスからの応答だった。じっさい、リリース時のインタヴューで彼はジョゼフ・シャバソンや〈Leaving〉、ケイトリン・アウレリア・スミスといったエレクトロニック・ミュージックを聴いていたことを明かしている。近年断片的に発表してきたアンビエント寄りの楽曲のコレクションたる『Ethereal Essence』は、だから、出るべくして出た作品といえよう。
 もちろん、彼がアンビエントへと関心を向けはじめたのは最近のことではない。独自の音響に到達した『Point』の制作時、小山田はよくアンビエントを聴いていたという(当時のお気に入りはザ・KLFイーノだったそうだ)。たしかに、『Point』や『Sensuous』などに収録された一部のエレクトロニカは、こんにちの多様化したアンビエントの観点から眺めれば、そうタグづけされたとしてもなんら不思議はない。『夢中夢』の軸が原点を振り返ることにあったのだとしたら、今回は長年にわたるそうした関心を集約、一気に解放してみせた作品と位置づけられる。

 アンビエント寄りといってもノンビートの曲ばかりで埋めつくされているわけではない。ザ・ドゥルッティ・コラムを想起させる “Sketch For Spring” はしかしサマーでもウィンターでもなく、過ぎ去った春の陽気をありありと思い出させてくれる。湿気に圧殺されそうないまこそ聴くのにぴったりの曲だけど、波のごとくギターが左右に揺れ動く “Melting Moment” もおなじタイプの心地よさを提供してくれている。
 中盤の “サウナ好きすぎ、より深く” や最後の坂本龍一のカヴァー “Thatness And Thereness” のようなヴォーカル入りの曲はいいアクセントになっていて、本作がたんなる寄せ集めではなく、構成の練られたひとつの作品であることを示している。音響上の冒険としては、リンゴをかじるような音を水中音のように聴かせる “Forbidden Apple” がベストだろうか。
 異色なのは、谷川俊太郎の詩の朗読を電子音でトレースする “ここ” だ。この曲だけはまったり聴き流すことができなくて、どうしてもコーネリアスが「ここ(=アンビエント)こそがいまの自分の居場所だ」と主張しているように思えてしまう。もしかしたらぼくたちはいま、新しい──そして初めから大きな──アンビエント作家の誕生の瞬間を目のあたりにしているのかもしれない。

 コーネリアスのようにすでにみずからの音楽性を確立しているアーティストがアンビエントの世界に参入していくことの意味は小さくない。音楽家のなかには「アンビエントなんてだれでもつくれる」と考えているひともいる。パンデミック以降アンビエントのリリースが増え、玉石混交の念を抱くリスナーがいることはうなずけるけれど、そうした軽視や狂騒めいた状況にコーネリアスは、その質とオリジナリティでもって一石を投じているのではないか。
 だから、いつかコーネリアスによる、すべて新曲の本格的なアンビエント・アルバムが登場する。いろんなアイディアが詰めこまれたこの『Ethereal Essence』を聴いてそう確信した。これはきっとその助走なのだ。

『情熱が人の心を動かす』 - ele-king

Pヴァインのファウンダー、日暮泰文氏が、2024年5月30日(木)75歳にて永眠いたしました。
日暮泰文氏はPヴァインの前身となるブルース・インターアクションズを1975年に設立して以来、ブルースからソウル、ワールド・ミュージック、そしてヒップホップに至るまで、インディー・レーベルとしてのオルタナティヴな観点から様々な音楽をCDやレコード、書物を通じて紹介し、日本におけるブラック・ミュージック愛好の歴史を大きく切り拓いてきた開拓者の一人でした。今回、VGAではその軌跡の一部を紹介しつつ、日暮泰文氏が生き抜いた時代と現代の違いについて対談しました。

山崎:これ全部、日暮さんが書いてるんですかね?

水谷:これは日暮さんの字ですね。

山崎:ガリ版で印刷されていてすごいですね。

水谷:便利なものがないと熱くなるんでしょうね。情熱が感じられますね。

山崎:これはいつ頃のものなのでしょうか?

水谷:ブルース愛好会の発足は1968年ですね。その翌々年の1970年には『ザ・ブルース』(日暮泰文氏が刊行したブルース愛好会の機関誌を発展させた雑誌。その後ブラック・ミュージック専門誌『ブラック・ミュージック・レビュー』へとリニューアルする)の第一号が出るんですよ。まさに我が社のルーツですね。

山崎:1968年だと日本にはまだアメリカのブルースやソウルの情報があまり入ってきていないんじゃないでしょうか?

水谷:様々なブラック・ミュージックが日本でも少しずつ認知されてきたくらいの時代だと思います。先日とある場所にある、日暮さんとそのお仲間の方々が集っていた部屋にお邪魔する機会があったのですが、そこに『JAZZ RECORDS』っていう本(デンマークのジャーナリスト/ジャズ作家のヨルゲン・グルネット・イェプセン編集による、戦後初となるジャズのディスコグラフィー本)がシリーズでずらっと置いてあったんですよ。
それはジャケット写真なんか一切ない、テキストしか書いてないひたすらデータだけが掲載された辞書のような本で、一冊取り出してページをめくってみるとそれにたくさん赤線が引いてありました。

山崎:1960年代ではかなり重要な情報源だったらしいですね。これは当時、日本で入手するのは難しかったのではないでしょうか。

水谷:この本がとても気になったので日暮さんと共にブルース愛好会を立ち上げた鈴木啓志さんにお聞きしたのですが、みんな当時はジャズの本なのに、一部掲載されているブルースをそこから探していたらしいんですね。
で、その後、68年に初めてブルースのディスコグラフィー本が出るんですが(イギリスの作家、マイク・リードビターとニール・スレイヴンによる初の画期的なブルース・ディスコグラフィ『Blues Records 1943-1966』)、それまでは本当にコアなブルースの情報が『JAZZ RECORDS』でしか、なかなか手に入らなかったらしいです。

山崎:当時はブルースもジャズの括りで捉えられている部分もあったんでしょうね。その本はルーツ的なブラック・ミュージック全般って感じだったのかもしれません。

水谷:それとは別の話なのですが、先日、20代くらいの若い人とお話しする機会がありまして、彼はヒップホップを作っていてサンプリングをしていると。で、具体的に何をサンプリングしてトラックメイキングをしているのかを尋ねたんですが、彼は曲名どころかアーティスト名も覚えていないんですよ。一つも覚えていなくて。サブスクで出てきた曲を良いと思ったらひたすらブックマークしてプレイリストに入れているだけだと言っておりました。

山崎:今の時代っぽいですね。最近、DJもサブスクだったりするようで。それってもはやDJ(ディスク・ジョッキー)じゃないですよね。SJ(サブスク・ジョッキー)って呼んだ方がいいんじゃないですか?(笑)でもアナログよりもサブスクの方がとても情報が早く的確に捉えるので我々アナログ・ユーザーからしたらSJを見習いたい部分はあるんですけど。

水谷:確かに。的確なデータをもとにデータ音源をかけている。これはデータ・ジョッキーなので「デー・ジェー」ですね(笑)。
冗談はさておき、話を戻しますが、日暮さんは1948年生まれなので、先ほどのチラシを作ったのは20歳ということになります。かたや、その若者はネット上に無限にある情報の中でサンプリングソースを探すためにディグるけどアーティスト名すら覚えていない。この2つの出来事がちょうど同じ時期だったので、ショックというか考えさせられました。

山崎:僕らの若かりし時代も限られた情報の中で探すってありましたね。80〜90年代初頭はレコード屋さんでは試聴もできなくて最初は買っては失敗しての繰り返し。なかなか良いレコードに巡り合わないからレコード屋の店員に菓子折り持って情報を聞きに行ってましたよ。それくらい良い情報を得ることが難しかったです。でもその分、情報に飢えていましたね。

水谷:先ほど話しました若い人を悪く言うつもりは全くありません。それが今の世の中ですし、その分いろいろなスピードは早くなっていると思うのですが、前述の『JAZZ RECORDS』の赤線を見たときに、タフさと凄まじさを感じました。そしてPヴァインが50年(2025年で50周年)続けてこれた『しぶとさ』の根幹はここにあるんだなと改めて実感しました。

山崎:まだ日本で知られていないブルースを開拓してもっと広めていこうという強い情熱を感じますね。でも、今ってタフさや『情熱』だけではダメだという風潮がある気がします。もっと賢く、要領良くやっている人の方が成功している例が多いというか。先ほどのサンプリングの話で言うと今は、情報過多の中でなんでも選べて機材も進化しているから作るスピードも早いし、簡単。アーティスト名なんていちいち覚えないで、サクサク作って数打ったほうがいいのかもしれません。90年代のアーティストはやっとの思いで探し出した1曲を、サンプラーに取り込んでスタジオでミックスしてってなるのでどうしても時間も手間もかかっていました。

水谷:僕も昔は良かったなんていうつもりもありません。Pヴァインは本格的すぎる「重さ」、「野暮ったさ」みたいなのが社風にあって、周りのお洒落だったり洗練されたイメージの会社とは違って、我が社は古臭いなってコンプレックスではないですが僕も思っていた時期はありました。でも今、振り返ってみると、そういうトレンドに向いていたインディーレーベルは、CD不況を乗り切るのは大変で、時代の変化の波にのまれていったレーベルもありました。

山崎:音楽一本で勝負しているインディーの会社でデータ/サブスク化によって起こってしまった音楽不況を乗り越えて、今も安定して残っているのは、ちゃんと地に足がついているところばかりかもしれません。

水谷:流行りに乗るなとは思っていなくて、時代を読む力っていうのはとても重要だと思います。現に日暮さんも先見の明に長けた人でした。

山崎:そうですね、大事なのは流行に振り回されすぎない強さ、そして決めた道を根気良く進み続ける情熱だと思います。
でも今の時代は情報が多いのでどうしても迷いが出てくるのかもしれません。一つのものを極めようという気にはならないですよ。

水谷:昔の人って得意分野はこれっていうのが明確に見えました。何か一つに絞って極めようとすることで、その本質に触れ豊かな体験をすることができる気がします。

山崎:あとは景気の先行きが読めない中で、仕事や売り上げほしさに多くの情報を追いかけてしまう傾向がある気がします。焦らないで根気よく、一つのものに『情熱』を注ぐことが一番の近道だということを僕らは次世代に伝えなければいけないのかもしれません。

水谷:いまの時代、情報は簡単に手に入るのですが、それが罠だったりもしますから。情報に泳がされないように上手くネットと付き合う事でより豊かなミュージック・ライフが送れるようになる気がします。一方で、我々世代も完全にレコード=物に支配されていて物量の多さに身動きが取れなくなってますので、そこもバランスよく収集していくのが、肝だったりしますね。日暮さんの自宅にもお邪魔しましたが、部屋を見てレコードは言わずもがな、音楽に限らない様々な書籍が棚にきちんと整頓されていて、文化的にとても豊かな生活を送っていたのだなぁと思いました。

山崎:今回もやはり少々説教臭い老害トークになってしまいましたね。でもYONCEの「説教くさいおっさんのルンバ」じゃないですが、オヤジの説教に耐えられない若者が多すぎるのでは?べつに言う事を聞かなくてもいいので、バネにしてもらわないと。『情熱』はストレスからのカウンターで生まれるんですよ。

水谷:そうですね、ミシシッピの綿花畑で黒人労働者がストレス・フルな重労働のなか歌って生まれたのがブルースの起源ですから。あっ、「説教くさいおっさんのルンバ」のPVで説教くさそうな男性を演じてる方は、リアル僕の若い頃の上司(ホント)でした。
なので、僕も見習って頑張ろうと思います(笑)。

VINYL GOES AROUND - ele-king

 このサブスク時代、アナログ・レコードにまつわるさまざまな試みを展開し、「レコード・カルチャーの再定義」をコンセプトに活動している「VINYL GOES AROUND」。同プロジェクトが監修と選曲を手がけたコンピレーション『How We Walk on the Moon』がリリースされることになった。テーマは「静かな夜」とのことで、アンビエントやジャズをはじめ、ソウル、ライブラリー・ミュージックなどからメロウで美しい曲が選び抜かれた1枚となっている。仕様もこだわり抜かれていて、「ORIGAMI」なるまったく新しいタイプのオビを使用。CDは発売済み、LPは8月7日発売です。
 なお同作の制作のきっかけになったというミックス音源も公開されているので、ぜひそちらもチェックを。

 https://anywherestore.p-vine.jp/en/products/plp-7443

VINYL GOES AROUND Presents
V.A. / ハウ・ウィー・ウォーク・オン・ザ・ムーン
V.A. ‒ How We Walk on the Moon

LP : PLP-7443 / Release: 2024年8月7日 4,500円 + 税

サブスク時代における "レコード・カルチャーの再定義" をコンセプトに活動するプロジェクト「VINYL GOES AROUND」が選曲・監修を手がけた新しいコンピレーション・シリーズの第1弾『How We Walk on the Moon』は “静かな夜” をテーマにしたアルバムです。ヒーリング/イージーリスニングに寄りすぎず、美しい緊張感と、ピュアでメロウなムードに浸る、月明かりの下で聴きたくなるような幻想的なサウンドスケープが環境に溶け込みます。

アンビエントやジャズはもちろん、ソウル、ライブラリー、オルタナティヴなど、種々のジャンルから美しいピースを選りすぐって編み上げた選曲は、敷居を高く感じている人も多い「アンビエント」へのポップ・サイドからの入門としても役目を果たすであろう、すべての音楽ファンに聴いてもらいたい内容です。

また、LPは「VINYL GOES AROUND」が監修した『ORIGAMI/折り紙』と名付けられた全くの新しいタイプの帯を添え付けました。アルバムの世界観を更に深めるような、こだわりのデザインとなっています。

収録曲は、スウェーデン・グラミー賞2024のJAZZ部門にノミネートされた気鋭のアーティスト、スヴェン・ワンダーによる7インチ・オンリーの楽曲「Harmonica and...」や、舐達麻やNujabes、ビョークにも引用されたジジ・マシンの「Clouds」、2000年代以降、数多くの楽曲にサンプリングされたウェルドン・アーヴィンの人気曲「Morning Sunrise」などを収録。DJユースとしても重宝するであろう、従来のヒーリング/アンビエント系コンピレーションとは一線を画する面子が揃います。

このレコードと夜を過ごすことがとても贅沢に感じられるような、心が自由な旅へと解き放たれるひとときを味わえる、そんな1枚です。

スヴェン・ワンダーからのコメント

It is an honor to be included in this compilation alongside so many other talented artists who
have been an important part of my musical journey and hold a special place in my heart.
私の音楽遍歴の大切な「ひとかけら」であり、心の中で特別な位置を占めている才能のあるアーティストと同じアルバムに収録されたことを光栄に思います。
SVEN WUNDER

LP収録曲

SIDE A
1. yanaco - Arriving
2. Chassol - Wersailles (Planeur)
3. Brian Bennett & Alan Hawkshaw - Alto Glide
4. Sven Wunder - Harmonica and...
5. Ditto ‒ Pop
6. 新津章夫 ‒ リヨン

SIDE B
1. Lemon Quartet - Hyper for Love
2. Gigi Masin ‒ Clouds
3. Johanna Billing - This Is How We Walk On The Moon (It's Clearing Up Again, Radio Edit)
4. Weldon Irvine - Morning Sunrise
5. Shigeo Sekito ‒ The Word II

https://anywherestore.p-vine.jp/en/products/plp-7443

Li Yilei Japan Tour 2024 - ele-king

 2021年にリリースした『之 / OF』がロングセラーとなり、今年リリースした最新アルバム『NONAGE / 垂髫』で日本デビューも果たした、ロンドンを拠点とする中国人サウンドアーティスト/作曲家 Li Yileiの初来日ツアーの開催が8月に決定しました。
 京都、東京、和歌山、名古屋の全4公演他、8/30(金)には都内某所にてLi Yileiとausのサウンド・インスタレーションも予定しています。

京都・外
日程:8/21 (水)
会場:外(京都市左京区鹿ケ谷法然院西町18) http://soto-kyoto.jp/
時間:OPEN 18:00 / START 19:00
料金:ADV ¥2,500 / DOOR ¥3,000 / 23歳以下 ¥2,000
出演:Li Yilei、Kazumichi Komatsu & more
予約:外 http://soto-kyoto.jp/

東京 大森・成田山圓能寺
日程:8/24 (土)
会場:成田山圓能寺(大田区山王1-6-30)http://ennoji.or.jp/
時間:OPEN 13:00 / START 13:30
料金:ADV ¥3,500 / DOOR ¥4,000
出演:Li Yilei、aus、iu takahashi
PA:Fly sound
協力:PLANCHA
予約:FLAU https://flau.stores.jp/items/668489a324fa03132d97dd79

和歌山・あしべ屋妹背別荘
日程:8/25 (日)
冥丁『古風』完結編 Tour 〜瑪瑙〜和歌山公演
会場:あしべ屋妹背別荘(和歌山市和歌浦中3-4-28)
時間:OPEN 17:00 / START 18:00 /
料金:ADV ¥4,000 / DOOR ¥4,500
出演:冥丁 - 暮 set -、Li Yilei
予約:Pass Market https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02yjdmguw5t31.html
主催:お還りなさい、中谷 一陽 (和歌山EXPO)

名古屋・K.D japon

日程:8/28 (水)
会場:K.D japon(名古屋市中区千代田5-12-7)
時間:OPEN 18:30 / START 19:00
料金:ADV ¥3,500 / DOOR ¥4,000 + 1D
出演:Li Yilei、marucoporoporo, CazU-23
予約:メール予約 https://docs.google.com/

東京
日程:8/30 (金)
詳細:TBA

■ ツアー詳細:
https://flau.jp/event/li-yilei-japan-tour-2024/

Li Yilei
 中国出身で現在はロンドンを拠点に活動しているコンポーザー/マルチ・インストゥルメンタリスト。また、ロンドンのアーティスト・コレクティヴNON DUAL(無二行動)のファウンダーでもある。アスペルガー症候群を持つノンバイナリーのアーティストであり、その経験は混沌と、時には痛みを伴う静寂の間を変動し、存在と実存のさまざまな状態を反映している。
 2021年にMétron Recordsからリリースされたアルバム『之 / OF』は、パンデミックの混乱の中、中国へ戻り自身と向き合う中で、宋王朝の芸術をインスピレーション源に作り上げ、2020年代のアンビエントの傑作のひとつとして高い評価を得てロングセラーとなった。そして2024年に、過去の自己と記憶が現在と出会う瞑想的な転生の瞬間を音像化した傑作『NONAGE / 垂髫』(https://www.ele-king.net/review/album/011245/)を再びMétron Recordsからリリース。PLANCHAからCD化もされ、日本デビューも果たす。
 アジア的エッセンスも感じさせるアンビエントとエレクトロニカを横断するようなサウンドが各所から注目を集める中、リミックスをして交流を深めたausのレーベルFLAUの企画により初来日ツアーが決定。

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