「AY」と一致するもの

Shintaro Sakamoto - ele-king

 『物語のように』から“ある日のこと”のミュージック・ヴィデオが公開された。これは、坂本慎太郎が作画、編集まで手がけた究極のDIY手描きアニメーション。コピー用紙に鉛筆とマーカーで描いた約650枚の絵をスキャンし、PhotoshopとPremire Proで編集して作ったという。必見です! 

ある日のこと (One Day) / 坂本慎太郎 (Official Music Video)

 なお、9月30日には国内盤LP『物語のように』リリース、10月26日からは国内ツアーも開始する。

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Shintaro Sakamoto LIVE2022 "Like A Fable” TOUR

10月26日 (水): 昭和女子大学人見記念講堂 (東京)
11月15日 (火): Zepp Namba (大阪)
11月16日 (水): クラブ月世界 (神戸)
12月05日 (月): キャバレーニュー白馬 (熊本/八代市)
12月07日 (水): 桜坂セントラル (沖縄)

●Official Web: https://l-tike.com/shintarosakamoto

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Dry Cleaning - ele-king

 メロディアスなギター、静かに語りかけるようなヴォーカルに、高い文学性を備えたリリック。突き抜けるようなポストパンク・サウンドで大いに称賛を浴びている4人組、ドライ・クリーニングがついに日本にやってくる! 東京と大阪の2公演で、11月30日(水)は恵比寿 LIQUIDROOMにて、12月1日(木)は梅田 CLUB QUATTROにて開催。10月21日に発売されるニュー・アルバム『Stumpwork』のリリース直後という、絶好のタイミングでもある。これを逃す手はないでしょう。売り切れる前に急げ。

DRY CLEANING
待ちに待ったドライ・クリーニングの初来日公演、詳細決定!
最新作『Stumpwork』は 10月21日発売!

新進気鋭バンドがひしめき合うサウス・ロンドンのシーンでも 80~90s の US ニュー・ウェーヴ / オルタナ の芳香を纏ったアートな佇まいで、多くの音楽ファンを魅了し、 デビュー・アルバムがいきなり全英チャートを4位まで駆け上がった4人組バンド、ドライ・クリーニングの初来日公演が決定!

デビュー・アルバム『New Long Leg』は、全英アルバム・チャートで4位を獲得、2021年のベスト・アルバムの一つとしても選定され高い評価を得た(The New York Times、Pitchfork、SPIN、The Atlantic、The Ringerが、その年のトップ10アルバムに選出)。ここ日本でも音楽専門誌からファション誌まで幅広いメディアに取り上げられ、大絶賛を浴びた。

今回の初来日に先駆け10月21日には最新アルバム『Stumpwork』が発売される! このアルバムを聴けば、彼らの勇気ある挑戦を感じるに違いない。最新作でも、巧みで複雑なリフにしっかりと絡みつくヴォーカル、フローレンス・ショウのシュールな歌詞は、様々なテーマに渡り感受性も強めていて、激しくソリッドなオルタナ・ロックやポストパンクのアンセム感とジャングルやアンビエント・ノイズとが融合したバンドの鋭くも豊かな音楽性、アート感が作品全体に漲っている。これは、完全にドライ・クリーニング独自のものであり、同世代のバンドとは一線を画す、刺激的なサウンドである。
ディーヴォからソニック・ユースまでを彷彿とさせる個性的なサウンドを放つに要注目バンドの初来日公演、これは見逃せない!

東京  11月30日(水) LIQUIDROOM
大阪  12月1日(木) 梅田 CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 / START 19:00
前売¥6,000(スタンディング、ドリンク別 )
INFO: BEATINK [www.beatink.com], SMASH [smash-jpn.com]

●TICKET INFORMATION
オフィシャル先行受付*外国語受付有り
受付期間:9月13日 18:00~9月19日(月)23:59
日本語受付: https://eplus.jp/dry-cleaning22-official/
For Foreign languages: https://ib.eplus.jp/drycleaning

●最速プレオーダー
受付期間: 9月20日 12:00~9月25日 23:59
受付URL: https://eplus.jp/dry-cleaning/

●一般チケット発売 *外国語受付有り
10月1日(土) 10:00~
東京:e+ 、ぴあ(227-390)、ローソン(73557)
大阪:e+ 、ぴあ(227-258)、ローソン(55648)
For Foreign languages : https://ib.eplus.jp/drycleaning

チケットに関しての注意事項
・先行予約・一般発売共に1回の申込に付き4枚まで購入可能
・電子チケットのみの取り扱い。(発券は公演2週間前になります。)
・チケット購入者は購入時に個人情報の入力が必要になります。
 複数枚購入の場合は、チケット分配時に同行者の方の個人情報の入力をお願いします。
・小学生以上はチケットが必要となります。
・保護者1名同伴につき、未就学児童1名まで入場可能。
・未就学児は同行の保護者の座席の範囲内で観覧可能。

企画/制作:SMASH/BEATINK
INFO:SMASH [smash-jpn.com] / BEATINK [www.beatink.com]

10月21日に世界同時発売となる新作『Stumpwork』の日本盤CDには解説および歌詞対訳が封入され、ボーナス・トラックを追加収録される。なお、限定ブラック・ヴァイナルには購入者先着特典としてシングル「Don't Press Me」とアルバム未収録曲をカップリングした特典7インチ(レッド・ヴァイナル)をプレゼント。通常アナログ盤はホワイト・ヴァイナル仕様でのリリースとなり、どちらも初回限定日本語帯付仕様となる。現在各店にて絶賛予約受付中。

label: 4AD / Beat Records
artist: Dry Cleaning
title: Stumpwork
release: 2022.10.21 FRI ON SALE

国内盤CD
4AD0504CDJP(解説・歌詞対訳付/ボーナス・トラック追加収録/先着特典タオル)¥2,200+税

LP限定盤
4AD0504LPE(限定ブラック/初回日本語帯付仕様/先着特典7インチ)¥3,850+税

LP輸入盤
4AD0504LP(通常ホワイト/初回日本語帯付仕様)¥3,850+税

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12859

TRACKLISTING
01. Anna Calls From The Arctic
02. Kwenchy Kups
03. Gary Ashby
04. Driver's Story
05. Hot Penny Day
06. Stumpwork
07. No Decent Shoes For Rain
08. Don't Press Me
09. Conservative Hell
10. Liberty Log
11. Icebergs
12. Sombre Two *Bonus Track for Japan
13. Swampy *Bonus Track for Japan

Moor Mother - ele-king

 1960年代後半から1970年代初頭にかけて、ドラマーのアーサー・テイラーは、当時を代表するジャズ・ミュージシャンたちにインタヴューを行い、後に著書『Notes and Tones』にまとめた。ジャズが商業的な影響力を失いはじめた時代を捉え、シーンにおける政治的な力学から、当時は「フリーダム・ミュージック」と呼ばれていた音楽の様式的な刷新に至るまでのさまざまな議論が交わされているわけだが、なかでももっとも論争を引き起こしたのは、ジャズという言葉そのもので、アート・ブレイキーがたいした問題ではないと主張した一方、マックス・ローチなどはニューオーリンズの売春宿を起源とし、文脈によっては“クソ”と同義的に使われることもある言葉を自分たちの音楽に押し付けられたことに不快感を示した。ニーナ・シモンはこの問いかけに異なる角度からアプローチし、テイラーに「ジャズはただ音楽であるというだけでなく、生き様であり、在り方であり、物の考え方。それは、アフロ・アメリカ系の黒人を定義するものだ」と語った。
 『Jazz Codes』を聴きながら、私はこのことを思い出した。ムーア・マザーの最新ソロ・アルバムは、亡き詩人アミリ・バラカの精神にのっとって、過去と現在(彼女の言うところの「パッド(メモ帳)とペンで瞑想する)」のジャズ・ミュージシャンたちのリズムをリフにすると同時に、音楽を埋め込まれた記憶や奥深い真実として、異界の領域への入り口のように扱っている。2020年の『Circuit City』では、「タイムトラベルや 内外の次元を追求することは不可能‏‏/フリー・ジャズなしには」と宣言している。また、アルバムと同じぐらいの長さのビリー・ウッズとのコラボレーション作「Brass」では、「ブルースは、国が忘れてしまった全てのことを覚えている」と注目曲のひとつで書いている。

 『Jazz Codes』では、ムーア・マザーの最近のソロ・ミュージックの瑞々しさというトレンドが引き継がれ、2020年のロックダウン時にリリースされた『Clepsydra』や『ANTHOLOGIA 01』、そして昨年の『Black Encyclopedia of the Air』で紡いだ糸を繋いでいる。彼女は再びスウェーデンのプロデューサーでインストゥルメンタリストのオロフ・メランダーと組み、ある種の明晰夢の状態にあるイリュージョン(幻影)と暗示の音楽を呼び起こしている。いくつかの曲は小品に過ぎないが、これらは人を酔わせる、宇宙的な作品だ。

 いちばん長く、人を惑わせるような“Meditation Rag”では、サン・ラからジェリー・ロール・モートン、フィスク・ジュビリー・シンガーズといったアーティストの名前を挙げながら、そのまわりをアリャ・アル=スルターニのソプラノのヴォーカルが分散する光のように浮遊し、まるで降霊術の会の様相を呈している。他では、ジェイソン・モラン、メアリー・ラティモアにアイワのインリヴァーシブル・エンタングルメンツのバンド仲間がインストゥルメンタルで貢献し、R&Bヴォーカルのフックやサイケデリックな煌めきや、不明瞭なトリップ・ホップのリズムを紡ぐ。コラボレーションの多いこのようなアルバム制作では、あえてフォアグラウンド(前景)とバックグラウンドを分けていない事が多く、重なり合うヴォイスのなかからリスナー自身が、どれに焦点を当てて聴くのかを選ぶことを任される。
 クロージング・トラック“Thomas Stanley Jazzcodes Outro”では、作家でアーティストのトマス・スタンリーがテイラーの著書のテーマを拾い上げている。

  多くの評者たちが
  ジャズはかつてセックスを意味したと言っている
  そしておそらく、
  ジャズはセックスを意味するものに
  戻る必要があるだろう
  性行為や交尾、
  ハイパー・クリエイティヴィティ、
  繁殖力、
  そして誕生と同一視されるように。

 『Jazz Codes』の気だるいグルーヴは、アイワがイリヴァーシブル・エンタングルメンツとともに披露する扇情的なフリー・ジャズとは別世界のように思えるが、どちらも音楽が解放の源となり得るという鋭い認識を共有している。

 それはまた、彼女と同じフィラデルフィア在住のDJハラムとのデュオ、700 Blissの『Nothing To Declare』でもときどき響いている。このアルバムは、ムーア・マザーの作品のなかでも、2016年の『Fetish Bones』に代表されるようなより挑戦的な側面が好きなファンには即座に魅力的に映るだろうが、ここではサウンドと怒りがある種の無頓着なユーモアのセンスによって抑制されている。
 とくにアルバムの前半は、〈Hyperdub〉レーベル・メイトのアヤ(ピッチシフトを好む傾向を含めて)と共通する何かがあり、後半ではクラブから遠くへ離れ、ときには毒気の少ないファルマコンにも似た趣となる。アイワの歌詞は徹底的にルーズで、歌うような韻と言葉のフィジカリティを楽しんでいるように聞こえる。“Bless Grips”で彼女がデス・グリップスのフロントマン、MCライドのリズムを真似る様子をチェックしてほしい。まるでコメディの寸劇のような“Easyjet”では、700 Blissをあきれ顔で批判する二人組をデュオが演じている(おいおい、これはそもそも音楽と言えるのか?)
 しかし、より深いところまで切り込んでいるのは、傑出した曲たちだ。“Capitol”でのアイワの冒頭のヴァースは、血で書かれた一般教書演説で(夢の成分をすすりたい/私たちを奴隷にした奴らの喉を切り裂きたい)、何時間でも没頭できる。ほぼインダストリアル・テクノのような“Anthology”では、20世紀半ばに人類学に基ずき振付を芸術に変えた〝ラック・ダンスの女家長〟として活躍したキャサリン・ダナムにオマージュを捧げている。
 さらに、数年前にリリースされた“Sixteen”は、このデュオのこれまでの最高傑作といえるかもしれない。アイワは、「もう戯言にはうんざりだ、世界はとても暴力的だ/自分だけの島が欲しい。でも奴らが気候を破壊した」と激しく非難し、ダンスフロアに自らを解き放つ前に「私はただ踊って汗をかきたい/踊って忘れてしまいたいだけ」と歌う。それは、世界がどれほどひどい場所かというのを無視することではなく、生き残るためのツールを見つけることだ。それは音楽であるというだけでなく、生き様や物の考え方のひとつなのだから。


by James Hadfield

In the late 1960s and early 1970s, the drummer Arthur Taylor conducted a series of interviews with some of the day’s leading jazz musicians, later collected in his book “Notes and Tones.” It captured a period when jazz was losing its commercial clout, while debates raged over topics from scene politics to the stylistic innovations of what was then still called “freedom music.” But one of the most contentious issues was the word itself: jazz. While Art Blakey insisted it was no big deal, others, such as Max Roach, were upset that their music had been lumbered with a term that originated in the brothels of New Orleans, and in some contexts could be used interchangeably with “shit.”

Nina Simone approached the question from a different angle. “Jazz is not just music, it’s a way of life, it’s a way of being, a way of thinking,” she told Taylor. “It’s the definition of the Afro-American black.”
I was reminded of this while listening to “Jazz Codes.” Moor Mother’s latest solo album finds her working in the spirit of the late poet Amiri Baraka, riffing on the rhythms of jazz musicians past and present (“meditatin′ with the pad and the pen,” as she puts it), but also treating the music as a source of embedded memories and deeper truths—a portal to other realms. As she declared on 2020’s “Circuit City”: “You can’t time travel / Seek inner and outer dimensions / Without free jazz.” Or, in the words of one of the standout tracks from “BRASS,” her album-length collaboration with billy woods: “The blues remembers everything the country forgot.”

“Jazz Codes” continues the recent trend in Moor Mother’s solo music towards lushness, picking up the thread from her 2020 lockdown releases “Clepsydra” and “ANTHOLOGIA 01,” and last year’s “Black Encyclopedia of the Air.” Once again, she works with Swedish producer and instrumentalist Olof Melander to conjure a sort of lucid-dream state: a music of illusions and allusions. Even though some of the tracks are barely more than vignettes, this is heady, cosmic stuff.
On “Meditation Rag,” one of the longest and most transporting songs, she seems to be staging a seance, name-checking artists from Sun Ra to Jelly Roll Morton to the Fisk Jubilee Singers as the soprano vocals of Alya Al-Sultani float spectrally around her. Elsewhere, instrumental contributions—including by Jason Moran, Mary Lattimore and Ayewa’s bandmates from Irreversible Entanglements—weave together with R&B vocal hooks, psychedelic shimmer and slurred trip-hop rhythms. In an album heavy on collaborations, the production often doesn’t distinguish between foreground and background, leaving listeners to decide which of the overlapping voices to focus on.
On the closing track, “Thomas Stanley Jazzcodes Outro,” author and artist Thomas Stanley picks up on a theme from Taylor’s book:

“Many observers have told us that jazz used to mean sex
And maybe it needs to go back to meaning sex:
To being identified with coitus and copulation,
Hyper-creativity, fecundity and birth.”

Although the languid grooves of “Jazz Codes” may seem a world apart from the incendiary free-jazz that Ayewa serves up with Irreversible Entanglements, both share a keen awareness of how music can be a source of liberation.
That’s echoed occasionally on “Nothing to Declare” by 700 Bliss, her duo with fellow Philadelphia resident DJ Haram. It’s an album that will instantly appeal to fans of the more confrontational side of Moor Mother’s work, typified by 2016’s “Fetish Bones,” though here the sound and fury is tempered by an insouciant sense of humour.

Especially during its first half, the album has something in common with Hyperdub label-mate Aya (including a penchant for pitch-shifted vocals); later on, it drifts further from the club, at times resembling a slightly less bilious Pharmakon. On many of the tracks, Ayewa’s lyrics sound downright loose, happy to delight in sing-song rhymes and the physicality of words; check the way she seems to mimic the cadences of Death Grips frontman MC Ride on “Bless Grips.” There’s even a comedy skit, “Easyjet,” in which the duo play a pair of eye-rolling naysayers talking smack about 700 Bliss (“I mean, come on, is this even music?”).
However, the standout tracks are the ones that cut a little deeper. You could spend hours picking apart Ayewa’s opening verse in “Capitol,” a state-of-the-nation address written in blood (“I wanna sip what dreams are made of / I wanna slice the throat of those who enslaved us”). On “Anthology”—over a track that’s practically industrial techno—she pays tribute to Katherine Dunham, the “matriarch of Black dance,” whose pioneering anthropology transformed artistic choreography during the mid-20th century.

Then there’s “Sixteen,” first released a couple of years ago, which may just be the best thing the duo has done so far. “I'm tired of the bullshit, the world's so violеnt / I just want my own island, but they destroyed thе climate,” Ayewa declaims, before finding her release on the dancefloor: “I just wanna dance and sweat / I just wanna dance and forget.” It’s not about ignoring what a fucked-up place the world is, but finding the tools to survive. It’s not just about the music: it’s a way of being, a way of thinking.

Kamui - ele-king

「この世界の色を塗り替える/できないなんて思ったことねえぜ/stay young 正解はない/俺は疾風/誰よりも先走る」(“疾風” より)

 『YC2.5』は、スピードに対する偏執が垣間見える作品だ。数々の乗り物や速度を表すモチーフ、それらに命を吹き込み駆動させるSEや効果音、ダッシュするビートとラップ。走ること、運動することによって変化する景色、視界を巡る色彩、肌を切りつける風。

 Kamui は名古屋出身、現在は東京を拠点に活動するラッパーである。ダメ元で送ったというデモテープにプロデューサー/エンジニアの illicit Tsuboi が惚れこみ、2016年に『Yandel City』でアルバム・デビュー。その後なかむらみなみと結成した TENG GANG STARR や若手ラッパーをフックアップし組んだ MUDOLLY RANGERS での活動、THE ORAL CIGARETTES とのコラボレーション、そしてソロ活動で積み上げているカッティング・エッジな作品がアンダーグラウンドでつねに話題を呼んできた。『YC2.5』は2020年にリリースしたものの配信を取り下げることになった『YC2』のデラックス・ヴァージョンとして、クラウドファンディングで制作された最新作。「本作の完成度に大きく寄与するのは全曲のフック(hook)、つまりサビに掛かってるといっても過言ではないだろう」(※)と言及されていることからもわかるが、『YC2』ならびに『YC2.5』は過去作と比較し一段とフックのキャッチーさが際立っている。

 けれども、アルバム終盤の “疾風” と題された象徴的な曲で表現されている通り、『YC2.5』はそのビートとラップでもってキャッチーに/滑らかに疾走するだけの作品ではないことも明らかだ。過去にもポエトリーラップ的手法で過剰な量のリリックをぶちまけヒップホップのリズムを大いに乱してきた Kamui は、颯爽と駆け抜けなければならないはずの曲──少なくとも「疾風」というタイトルからはそのようにうかがえる──でさえ、「stay young」と「正解はない」、「疾風」と「走る」で律儀すぎるくらいに韻を踏み、スピードを減速させて躓きを生む。そもそもこれまでも変則的なフロウが表出するしかなかった Kamui というラッパーのいびつな実存だが、サイバーパンク的SFを構築した架空と現実が入り乱れるような世界観をさらに推し進めた本作においても、彼のラップはゆがみ、捻じれ、やはり躓いている。

 日本語ラップ史における「スピード」をモチーフにした作品というと Shurkn Pap の数々の曲が想起されるが、たとえばその運動性が極まった傑作 “ミハエルシューマッハ feat. Jinmenusagi” と比較しても、Kamui の特異さは際立っているだろう。一直線に走り抜ける「ミハエルシューマッハ」と対極にある価値軸を際立たせる『YC2.5』は、多彩なビートやめくるめくフロウによって細やかな情景を想起させながらも、それら各シーンをコマ送りするなかで、立ち上がってきた運動自体に Kamui の「蛇行する身体」が異質の文法を導入している。

──「未来はいち方向だけに進んでいるわけじゃないわ。私たちにも選べる未来があるはずよ」

 冒頭の “Runtime Error” で告げられる台詞は、そのまま次の曲 “ZMZM” に繋がりながら、ここでも一方向だけにスムースに進まず躓いてしまう Kamui のいびつさを明らかにする。「MAZDA ZMZMZM」というフックが一聴するとキャッチーなようにも聴こえる本曲は、しかしながらマツダを飛ばしつつ振り絞る「ZM」の反復が、アクセルを踏んだ次の瞬間に弛めざるをえない凸凹の身体感覚を浮き彫りにさせる。そもそも、『YC2.5』は近未来を描きながらも無機質な電動マシーンがただただ加速し動いていくという姿が想起されづらい。むしろ、排気ガスを噴出しながら、アクセルとブレーキを人体の不自由さに委ねるしかない旧来的などうしようもなさが終始渦巻いている。Kamui のオルターエゴであるボーカロイド・キャラクター suimee やピーナッツくんなどが随所で前面に立ちながらも、ゆえに、SFにありがちな冷淡さは退けられ、街や人に体温が通っている。そう、本作においてはSFが運動を規定するのではなく、運動がSFを形作っているのだ。たとえば『I am Special』(2019年)を支配していた音割れに向かうブリブリのベースラインも、シングル曲 “東京CyberPunkness” (2020年)の各小節内で散らかる花火のようなサウンドの破片も、最新作『YC2.5』ではある程度まで過剰さが抑制されている。しかし、いや、だからこそ、それでも整理整頓しきれずにそこかしこに飛び散る Kamui の肉体の破片が際立っている。思えば、デビュー・アルバム『Yandel City』からインダストリアルなビートの導入を徹底することで自らの体温を際立たせていた彼のことだ。

 あるいは、“BAD FEELING feat. 荘子it” のドラッギーなスピード感は格別とも言えるだろう。1:09からスピットする Kamui のラップは音節の区切りが交錯し、リリックにある通り、まさに痙攣と眩暈を喚起するような未聴感を届ける。Kamui の蛇行による異物感がクライマックスを迎えたところで入る荘子it のヴァースも抜群にキレている。重いラップの演出! 重々しい自らの実存をどうにか持ち上げて駆動させていくような、スピードと重量の引っ張り合いが破裂しそうではないか。「リストカットまみれのナオンとネオン/律動過多のパオンが振り切るレッドゾーンのエンジン音(ぶおおおん)」というラインではエンジンをふかす騒々しい音とともにネオン輝く歌舞伎町の情景がアクロバティックに描写される。リストカットまみれのぴえん系女子が「ぴえん超えてぱおん」と呟きながらたたずむ、それら生と死が漂うシーンを振り切って駆け抜けるのは、車と一体化しつつ実存を懸けて死ぬまで生ききる「重々しい」ラッパーの姿だ。(昨年末に荘子it に取材した際、彼は最近初めてハマったというバイクのスピード、そこで風とともに路上にさらされる自らの身体の加速について熱心に語ってくれた。おそらく、彼のなかでスピードと実存というものは昨年末から大きなテーマになっているのではないだろうか)

 躓き、蛇行、重さ──。それら運動は、本作におけるスピードを一筋縄ではいかない、非常に興味深い試行錯誤として成立させている。だからこそ、Kamuiは、その変化球のスピードで世の中の先を進む。『Cramfree.90』(2018年)とトラヴィス・スコット『ASTROWORLD』(2018年)、『MUDOLLY RANGERS』(2019年)とリル・アーロン『ROCK$TAR FAMOUS』(2018年)、『I am Special』(2019)とプレイボーイ・カーティ『Whole Lotta Red』(2020年)──それらは共鳴しているに違いない。もはや2022年のヒップホップがトラップとブーンバップの範疇を超えてあらゆるリズムやニュアンスを吸収していることと同様に、『YC2.5』は四つ打ちやドラムンベースなど多彩なビートと Kamui の肉体の破片を飛び散らせながら、最後の曲 “Hello, can you hear me” で空っぽな空洞のようなトラックのなか、手を差し伸べて「君」を確かめる。これは希望だろうか──開始から1分56秒で、相変わらず躓いたリズムを響かせながら。

「頭ん中ぐちゃぐちゃになったけど/死ぬことをやめました/壊れたものは元には治らない/だから花火を天に打ち上げよう」
「遠のく記憶の先で/君の声が聞こえたよ/目が覚めたならもういないよ/手を差し伸べて/俺は君を確かめた/思い出になる前に/消えてしまう前に」

※万能初歩【Album Review】 Kamui, 《YC2》 (2020)
https://note.com/allroundnovice/n/n5337c1c2638e?magazine_key=m0a82010e3a19

Tom Skinner - ele-king

 これは待望の、と言っていいだろう。サンズ・オブ・ケメットの元一員、最近ではザ・スマイルのメンバーとしてのほうが有名かもしれないが、UKジャズ・シーンを支える俊英ドラマーが初のソロ・アルバム『Voices of Bishara』をリリースする(ちなみにハロー・スキニー名義ではすでに2枚アルバムを発表済み)。レーベルは〈Brownswood〉で11月4日発売。
 ちなみに、『Voices of Bishara』というタイトルは先日亡くなったチェリスト、アブドゥル・ワドゥドの77年のファースト・アルバム『By Myself』にちなんでいる(レーベル名が〈Bisharra Records〉)。やはり彼の影響力は大きいのですな。
 この秋注目の1枚、チェックしておきましょう。

Tom Skinner

トム・スキナーが自身名義では初となる
アルバム作品『Voices of Bishara』を発表

レディオヘッドのトム・ヨークとジョニー・グリーンウッドと
共に組んだバンド、ザ・スマイルやシャバカ・ハッチングスの
サンズ・オブ・ケメットでの活動でも知られる鬼才ドラマー!!

このレコードは、不正直さと偽情報が増加する時代に、コラボレーションとコミュニティを通して、何か真実のものを世に送り出す試みである。"Bishara" とは良い知らせをもたらす者であり、このアルバムに参加するミュージシャンは、私にとって非常に大切な存在で、この考えを尊重し、集団で暗闇が広がるところに光を広げるのである。 ──Tom Skinner

ドラマーでありプロデューサーでもあるトム・スキナー。レディオヘッドのトム・ヨークとジョニー・グリーンウッドと共に組んだバンド、ザ・スマイルやUKジャズの最高峰と言われるロンドンを拠点に活動するテナー・サックス奏者シャバカ・ハッチングスのサンズ・オブ・ケメットでの活動でも知られる鬼才が、トム・スキナー名義では初となるアルバム『Voices of Bishara』を発表! 新曲 “Bishra” が公開されている。

Tom Skinner - Bishara
https://youtu.be/B5CbxJu2cAY

本作は星の数ほどあるレコーディング・セッションを編集し、タフで魅力的な新しいサウンドを実現した無駄のない美しいアルバムだ。タイトルは、スキナーが隔離期間に繰り返し聴いていたチェリスト、故アブドゥル・ワドゥドの超レアな1978年のソロ・アルバム『By Myself』にちなんでいる。ワドゥドのアルバムは彼自身のレーベル〈Bisharra〉から自主リリースされたもので、スキナーの作品タイトルではアラビア語の綴りを使用しているが、どちらも同じ意図、意味を持っている。それは「良い知らせ」または「良い知らせのもたらす者」と訳される。

『Voices of Bishara」はトム・スキナーがロンドンのブリリアント・コーナーズで行われたセッションにミュージシャンの友人たちを誘ったところから始まった。このレギュラーイベントは、クラシック作品をフル再生し、それに対して即興で応えるというシンプルな形式をとっている。その夜は、ドラマーのトニー・ウィリアムスが1964年にリリースした作品『Life Time』に焦点を当てて行われ、彼と彼の友人たちが作り出した音楽は、Skinnerにアルバム1枚分の新曲を書かせるほど特別なものとなった。

スキナーは、チェロ奏者、ベース奏者、サックス奏者2人とともに、全員が同じ部屋にいる、クラシックなスタイルで録音を行った。彼はその音楽を家に持ち帰り、他の多くのプロジェクトの合間に編集を行った。その後スタジオ録音の段階へ移行し、その崇高な特質を際立たせながら、徐々に新しいアルバムの形が現れ始めた。

ハサミを自由に使って、楽器間の編集を徹底的にやり始めた。そうすると、音楽に新しい命が吹き込まれたんだ。私は、セオ・パリッシュのように、曲を切り刻んだり、セクションをループさせたりする偉大なディスコのリエディットからヒントを得たんだ。私は純粋主義者ではない。過去にとらわれたくないんだ。音楽をいじくりまわして、何が起こるか見るのは本当に力になった。それが正しいことだと感じたんだ。 ──Tom Skinner

結果として、タイトでヒプノティック、そして唯一無二な音楽が完成した。『Voices of Bishara』は、時代を超越した深く感情的な音楽で構成されており、卓越したハーモニーの深みと質感を備えている。チェロとベースが織りなす深いハーモニーに支えられ、豊かな音世界の中を舞い上がる。もちろん、グレース・ジョーンズからジョニー・グリーンウッドまで様々なアーティストが賞賛を送るトム・スキナーのパーカッシブなマジックも収められている。

私たちは個々の声であり、集合的に集まっている。このアイデアは、私たちが集合することで、よりポジティブな何かをもたらすことができるというものだった。何かの始まりなんだ。 ──Tom Skinner

トム・スキナー名義での初となるアルバム『Voices of Bishara』は帯付きの日本流通仕様盤のCDと輸入盤CD、そして輸入盤LPとデジタルで11月4日に発売!


label: Brownswood Recordings
artist: Tom Skinner
title: Voices of Bishara
release: 2022.11.04
BEATINK.COM: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13009

Tracklist
1. Bishara
2. Red 2
3. The Journey
4. The Day After Tomorrow
5. Voices (of the Past)
6. Quiet as it's kept

interview with Jockstrap - ele-king

 男性用下着を名乗る彼らが最初に注目を集めたのは、2018年のEP「Love Is The Key To The City」だった。ストリングスを効かせたラウンジ・ミュージックとグリッチという、ある意味で対極のものを融合させるアイディアは、現在の彼らの音楽性にも通じている。すなわち、ある既存の音楽をもとの文脈から切り離し、自分たちの感性に引きつけて再構築すること。いわばメタ的なポップ・ミュージックである。それを理屈優先ではなく、自然にやってのけているところがジョックストラップの強みだろう。
 ともにギルドホール音楽演劇学校に通っていたふたり、ヴォーカリストでありヴァイオリニストでもあるジョージア・エラリーと、プログラミング担当のテイラー・スカイから成るロンドンのデュオは、その後〈Warp〉と契約。「Wicked City」など2枚のEPを送り出したのち〈Rough Trade〉へと移籍、このたびめでたくファースト・アルバムのリリースとあいなった。
 初のアルバムではほとんどの曲にヴァイオリン隊がフィーチャーされている一方、多くの曲で電子ノイズやパーカッションなどが単調さを遠くに退けている。先行シングル “Concrete Over Water” に顕著なように、展開の読めなさもまた彼らの武器だろう。
 ときにシュールでときにロマンティックなエラリーの詞にも注目しておきたい。そもそもジョックストラップなるバンド名がそうなわけだが、「自分に触れると/いつだってわかる」(“Glasgow”)のマスターベーションのように、通常「(女性がそれを)公言するのは好ましくない」とされるセクシュアルな表現を遠慮することもない。“Greatest Hits” では「想像して 私はマドンナ」と歌われている。飾らずに官能をさらけだすスタンスも、本作の魅力のひとつだ。
 クラシカル、ジャズ、ハウス、ダブステップなどなどの小さな断片が違和感なく調和した、このみずみずしいエレクトロニック・ポップがどのように生み出されたのか、BCNRの一員として来日していたジョージア・エラリーに話を聞いた。

ダブステップはとてもエモーショナルだし、音の幅を広げるというか、どこまで動物的でモンスターみたいな音にできるか、みたいなおもしろさがあると思います。

今回はジョックストラップの取材ですが、先ほどBCNRのチャーリー・ウェインとメイ・カーショウの取材に立ち会ってきました。フジロックはどうでしたか?

ジョージア・エラリー(Georgia Ellery、以下GE):環境もいいし、お客さんもじっくり聴いてくれたし、ステージのセットアップもよくて最高でした。

日本は初めてですか? どこか行かれましたか?

GE:素晴らしいですね。東京大好きです。こんなに熱帯的でトロピカルとは思っていませんでしたけど、暑いのは好きだから。街も刺戟的で、ファッションもとてもすてき。

いまイングランドも熱波到来でめちゃくちゃ暑いですよね。

GE:湿気は向こうのほうが少ないんですが、暑いといろいろ故障しちゃったりするんです。暑すぎて電車が走らないとか。古い線路だと、一定以上の温度になると危ないみたいで。最近はコーティングをして熱対応にしているみたい。すごく不便ですね。

暑さでライヴに支障が出たりはしないんでしょうか? 曲順がトんだりとか。

GE:(フジの)ステージ上はちょっと暑かったけど、それほど大変ではなくて。ちょうどわたしたちの出番のときに曇ってきたから大丈夫でした。虫が楽器に止まったりして良かったです。

ジョックストラップの結成は2017年です。バンド名が一風変わっていますが、どのようなコンセプトではじまったプロジェクトなのですか?

GE:じつはバンド自体よりも先に、名前が決まっていたんです。ヘヴィ・メタルのバンド名が大好きで、「ジョックストラップ」ってどこかアイアン・メイデンみたいにエロティックな感じもあるし、ハードコアな感じもあるから。もともとわたしが考えていたコンセプトがあって、テイラー(・スカイ)に「こういう名前で考えているんだけど、一緒にやらない?」って聞いたら「いいんじゃない?」ってすぐOKしてくれました。おかしな話だけど(笑)。でも母親は「え!?」って。「なんでそんな名前にしたの」みたいな(笑)。でもスポティファイにもそんな名前のひとはいなかったし、いいかなって。

どういう音楽性のバンドにするかも決まっていたんですか?

GE:初めはどういうサウンドになるかぜんぜんわかりませんでした。わたしがつくったデモをもとに、テイラーがプロダクションを加えるかたちで。彼のプロダクションがどういうものか、フェイスブックにクリップみたいなものを上げていたから、だいたいはわかっていたけど、それらが融合したときにどういうものができるかは、そこまでよくわかっていなかった。

エラリーさんが作詞・作曲、スカイさんがプロデュースの担当ですが、作詞・作曲を済ませたあとは彼に任せる流れですか?

GE:最初は個別でつくるんですが、テイラーのつくってきたプロダクションを聴かせてもらって、ふたりとも気に入ったものがあった場合はそれを追求していく。それからふたりでエディットしながらいいものへと仕上げていくんです。互いが互いの作詞・作曲、プロダクションに興味があるから、ふたりでゴールを定めて共同作業していく感じかな。

先にトラックがあって、それに味つけしていくというパターンもあるのですか?

GE:今回のアルバムではそういう順番でつくったものが何曲かあって、“50/50” って曲なんかはテイラーのトラックの上にわたしが重ねていく、という手法をとりました。

いま話に出た “50/50” は「アー、エー、ウー、イー、アー」と母音で歌い上げるのが印象的です。これにはなにか参照元などがあったのでしょうか?

GE:彼が聴かせてくれたサンプルがあったんですが、それにたいするわたしの解釈が母音みたいだなと思ったから。

リリックはどのようなプロセスで書くのでしょうか?

GE:リリックを書くときはいつも、詩みたいに短い感じで書きます。内容としては、自分が個人的に体験したこと……自伝って言うのかな、そこで生まれた感情を受け入れたいときに、詩的に書く。それがリリックのベースになっていますね。

リリックを書くうえで、小説や詩など文学を参照することはありますか?

GE:シルヴィア・プラスというアメリカの詩人。彼女はシュールなイメージの自伝的なものを書いています。あと、おなじくアメリカの作家の、キャシー・アッカー。スリルのある近代的なライティング・スタイルで、散文やストーリーを書くひとです。

今回リリックでもっとも苦労した曲はどれですか?

GE:“Debra”。これも最初にトラックがあって、それにリリックを載せていきました。ビートがかっこよかったから、その要素に合わせていい歌詞を書きたいと頑張っていたんだけど、すごく難しくて。結局、ゲームの『あつまれ どうぶつの森』の内容についての歌詞になりました(笑)。

わたしたちは1曲1曲がヒット曲みたいなものをつくりたい

『あつ森』はふだんからけっこうプレイしているんですか?

GE:かなりね(笑)。

『あつ森』もその一種に数えられることがありますが、最近はメタヴァースが話題です。そういった仮想空間でアヴァターを介してコミュニケイションをとることについては、どう思っていますか?

GE:わたしはあまりほかのひとと一緒にはやらずに、ひとりでやることが多いんですが、やっぱりその空間は完璧なヴァーチャル・ワールドで、とても心地いい。一種の逃避ですね。インスタグラムのヴァージョンでフォロウするのが楽しくて、よくやっています。

もし『マトリックス』の世界のようにテクノロジーが発展したら、そちら側の世界で暮らしてみたいと思いますか?

GE:バランスが重要ですよね。難しいことにも直面するだろうし。

これはスカイさんに訊くべき質問かもしれませんが、ほとんどの曲に変わった音だったりノイズだったりが入っていますし、展開がまったく読めなかったり、実験的であろうと努めているのがわかります。ただ気持ちのいいポップ・ソングをつくるのではなく、実験的であろうとするのはなぜでしょう?

GE:テイラーはつねに新鮮なサウンドを求めていて、そこに刺激を感じるひとなんです。いままで聴いたことのあるものだとつまらないと感じるタイプだから、いつもじぶんの限界に挑戦して、聴いたことのない音を追求していますね。彼は11歳のころからプロダクションをやっていて、自分のスタイルに磨きをかけているひとだから、非常に独特な方法で(サウンドを)追求しているし、そんな彼を尊敬しています。

彼はどういった音楽から影響を受けたのでしょうか?

GE:確実にダブステップだと思う。わたしもそうなんだけど、そこからいちばん影響を受けているかな。ダブステップはとてもエモーショナルだし、音の幅を広げるというか、どこまで動物的でモンスターみたいな音にできるか、みたいなおもしろさがあると思います。あと、ブロステップやハウスからも影響を受けていますね。

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ダブステップのアーティストだとだれが好きですか?

GE:スクリレックスかな。あとトータリー・イノーマス・エクスティンクト・ダイナソーズ。ハウスにエモいヴォーカルが入っている感じで。ジェイムス・ブレイクが出てきたときも、そのポスト・ダブステップにとても感銘を受けました。彼はソングライティングもすばらしいから、そこからも大きな影響を受けていますね。あとはジェイミー・エックスエックス。エモーショナルかつダンス・ミュージックで、そのふたつの要素の融合に惹かれますね。

では、ダンス・ミュージック以外で影響を受けた音楽はありますか?

GE:70年代のジョニ・ミッチェルとか、80年代のコクトー・ツインズとか。80年代のオルタナティヴなミュージック・ライティングとかが好きですね。

そのあたりはリアルタイムではないと思いますが、どのようにして発見したのでしょう?

GE:ジョニ・ミッチェルやボブ・ディランは両親からの影響で……似たようなテイストがわたしにも引き継がれているのかも(笑)。テイラーの場合は、両親が実験的な音楽が好きだったから、父親がジェイムス・ブレイクのアルバムを聴かせてくれたり、母親がスクリレックスのライヴに連れていってくれたりしたみたい。

バイオグラフィーによると、クラシック音楽を聴いて育ったのですよね? そちらの道に進まなかったのはなぜですか?

GE:テイラーは12歳ぐらいのときにコンピューターを手に入れてから、じぶんで音楽ができることに気づいて、電子音楽のプロダクションにのめりこんだんだと思う。わたしの場合は、そこまでクラシックの演奏が上手じゃなかったし、オーケストラに参加するのもいやで、もっとちがうことがしたいと思ってジャズを専攻することにしました。

ヴァイオリンを習っていたそうですね。じつはわたしもかつて習っていたことがあるのですが、ヴァイオリンをやっていてつまらないと感じたのはどんなときですか?

GE:あなたも! つまらなかったというわけじゃなくて、弾くのは好きでした。オーケストラとかもね。ただちょっと堅いというか、世界が狭いというか。やっぱりわたしはダンス・ミュージックも実験的な音楽も好きだったから、ヴァイオリンだとクラシック向きすぎて、じぶんの作曲には合いませんでした。わたしはもっといろいろな道を探求したいから。あと、わたしってけっこうまじめなほうだと思うんですが、プロだと1日9時間くらい練習するんです。それはちょっと無理かなって。ほかにやりたいことがたくさんあるし。

本作のほとんどの曲にストリングスが入っていますね。やはりヴァイオリンの音を入れたかった?

GE:EPをつくったときに初めてストリングスのオーケストラを導入したんですが、そのときわたしたちの独特なサウンドがまとまった感じがしたから、アルバムをつくるとしたら入れようと思っていて、そうなりました。じぶんたちの持っているスキルの活用ですね。

ジョックストラップの作品に、あなたの出身地であるコーンウォールの要素は入っていると思いますか?

GE:意識的には、ないかな。むしろロンドンという都会の街の要素のほうが強いし、歌詞にもそういった部分は出ていると思います。

ちなみにBCNRとジョックストラップとで、もっとも異なっている点はどこでしょう?

GE:BCNRだと、みんなでリハーサル・ルームに集まって演奏しながら作曲して、ライヴを経て曲が完成していくんですが、ジョックストラップの場合はテイラーのベッドルームで集中的に作業して、曲を完成させてから初めてライヴで披露します。だから作曲のプロセスがいちばんちがう部分かな。

「ハイパーポップ」ということばがあります。ジョックストラップはそれと同時代に属しながら、それが持つある種の過剰さや空虚さとは異なる方位を向いている印象を受けます。

GE:たしかにハイパーポップから影響は受けていると思う。とくにソフィーにはね。彼女はすごく独特なスタイルだし、彼女にしか表現できない音楽のランゲージが存在する。テイラーにもそういう部分があると思うから、ハイパーポップとの共通性はあるかもしれません。とくに前回のEPはハイパーポップに近いものだったかも。

今回は初のアルバムです。流れがあり、それをしっかりと聴かせようという意思を感じました。

GE:アルバムにするってなったとき、曲順を考えなきゃいけないから通して聴いていたんですが、それまではあまり意識していませんでしたね。すべてがそうというわけではないけど、曲は時系列順だったり部類順に並べていて、EPも時系列順に並べています。1曲1曲のサウンドが大きくちがうから、曲順を考えるのはかなり難しかった。ひとによっては “Glasgow” を1曲目に持ってくるべきだって意見もあったんですが、最近つくった曲だから最後のほうに持っていって。そうすることで、わたしたちの進化の過程を表現したかったんです。ほかのアイディアとしては、ダンスっぽいトラックを前半に、アコースティックなものを後半にしようという案もありましたけど、それもなんかちがうなと。

マスタリングしていないヴァージョンをラジオに送って、一度かけてもらったことがあるんですが、それを録音してマスタリングすることで、ラジオの周波数の音が出せました。“Greatest Hits” はラジオのヒット曲についての曲だから

ほかのアーティストの音楽を聴くときは、アルバムを通して聴きますか?

GE:アルバムを通して聴くものもあります。アルバムの曲順によって流れがある作品もすごく好き。でもわたしたちは1曲1曲がヒット曲みたいなものをつくりたいから、そういった曲を並べるという作業がすごく難しくて。カニエ・ウェストもトラックリストを考えるのには苦労しているんじゃないかな(笑)。全曲ノリノリのアッパーチューンだと、べつに流れとかはないと思うから。

三曲目のタイトルはまさに “Greatest Hits” ですが、これがまさにそういった感覚をあらわしているのでしょうか? マドンナのようなヒット・ソングをつくってみたいという曲ですよね。

GE:“Greatest Hits” をアルバム・タイトルにしようというアイディアもあったんです。でも、すべてが “Greatest Hits” にはならなかったから(笑)。この曲はけっこうつくるのが大変で、マドンナっぽいサウンドもあるんですが、やっぱりテイラーはワンアクション加えたかったみたいで。OPN とザ・ウィークエンドのようなテープっぽい音を入れたくて、サンプリングを多用していますね。あとは、マスタリングしていないヴァージョンをラジオに送って、一度かけてもらったことがあるんですが、それを録音してマスタリングすることで、ラジオの周波数の音が出せました。“Greatest Hits” はラジオのヒット曲についての曲だから、そういったプロダクションをしたかったんです。

いまは2032年だと仮定します。10年前にこのデビュー・アルバムが出た意味とは、なんだったと思いますか?

GE:テイラーにとっては、新鮮味のないものかも。古いからもうダメ、みたいな(笑)。でもやっぱりヒット曲というか、バンガーであってほしいですね。名曲は変わらず名曲だから。

JOCKSTRAP x WAVE

いよいよ今週9/9にデビュー作をリリース!
ジョックストラップ 、WAVEとのコラボ・アイテムを同時発売へ!

ロンドンを拠点とする新生オルタナティブ・ポップ・デュオ、ジョックストラップの待望のデビュー・アルバム『I Love You Jennifer B』の世界同時リリースに合わせてWAVEとのコラボレーション・アイテムを発売することが決定した。

今回アルバムに使用されたアートワークを配したロングスリーブTシャツ、Tシャツの2型をリリース。9月9日(金)からWAVEオンラインストアとSOFTHYPHENにて発売する。

WAVE (ウェイヴ) ONLINE STORE www.wavetokyo.com
INSTAGRAM @wave_tokyo

80〜90年代を中心に “音と映像の新しい空間” としてカルチャーの発信基地のように様々な文化を発信する存在だったレコードショップWAVEの新しいプロジェクト。音楽、ファッションだけにとどまらない様々なカルチャーミックスをベースに情報を発信。

LONG SLEEVE TEE ¥8,800 (TAX IN)

TEE ¥7,150 (TAX IN)

名門ギルドホール音楽演劇学校で出会い、ブラック・カントリー・ニュー・ロードのメンバーでもあるジョージア・エラリーとテイラー・スカイが2017年に結成したジョックストラップ。既存のスタイルを解体し、それを巧妙に組み直して全く新たなジャンルを生み出すような時間的そして空間的に激しく混乱した形のポップ・ミュージックを作り出すことで注目を集めている。また、先行シングル「50/50」はシャネルのキャンペーン・ビデオやステラ・マッカートニーのランウェイショーに使用されるなど音楽の領域を超えた話題も提供している。

2022年のカオス、喜び、不確実性、陰謀、痛み、ロマンスを他にはない形で表現しているジョックストラップの待望のデビュー・アルバム『I Love You Jennifer B』は、9/9世界同時発売。本作の日本盤CDには解説および歌詞対訳のDLコードが封入され、ボーナス・トラックを追加収録する。輸入盤は通常LPに加え、数量限定グリーン・ヴァイナルが同時発売される。

label: Rough Trade / Beat Records
artist: Jockstrap
title: I Love You Jennifer B
release: 2022.09.09 FRI ON SALE

国内流通仕様盤CD RT0329CDJP ¥2,200+tax
 解説+歌詞対訳冊子
輸入盤CD RT0329CD
輸入盤1LP (通常ブラック) RT0329LP
輸入盤1LP (グリーン・ヴァイナル) RT0329LPE

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12868

JAZZ BEYOND TOKYO Vol.1 - ele-king

 9月3日、渋谷WWW Xで「JAZZ BEYOND TOKYO Vol.1」と題したイベントが開催された。東京から現在進行形のジャズを発信するショーケース・フェスティバルの第1弾だそうで、今回は3組が出演。それぞれ約40分のパフォーマンスを披露し、その模様はオンラインでも配信された*。事前のアナウンスによれば「いまとその先のジャズ」がひとつのテーマとなっているが、実際のイベントではジャズという枠組みに留まらず、ジャンルで括ることのできない同時代の音楽としか言いようのないものまで、わずか3組ながら幅広いバリエーションの音楽を聴かせてくれた。

 一番手で登場したのはピアニストの桑原あい。スインギーなオリジナル曲 “Somehow It's Been a Rough Day” から幕を開けると、続けて即興で2曲を演奏。即興とはいえ、いわゆるフリー・インプロヴィゼーション然としたものではなく、あくまでもジャズのフォーマットに基づいた演奏だ。ときにピアノから身を乗り出して鍵盤を叩く姿からは音楽の楽しさも感じられる。その後、スランプを脱出するきっかけになったというバラード “The Back” をしっとりと奏でると、最後は報道番組のオープニング・テーマにも起用された “Dear Family” で爽やかに締め括った。

 続いてステージには、7月にデュオ作『Song for the Sun』をリリースし、翌8月からレコ発ツアーをおこなってきた渡辺翔太(ピアノ)とマーティ・ホロベック(ベース)が登場。アルバムの収録曲を中心に、ツアー終盤ということもあってか息がピッタリと合ったインタープレイを繰り広げた。印象深かったのはホロベックが作曲した “B Shouga” の演奏で——タイトルは「紅生姜」を意味するらしい——、ピアノとベースがユニゾンで辿る幾何学的なメロディとその後の即興的でフリーな展開が、緻密さと自由さを行き来するダイナミックなサウンドを生み出した。

 トリを飾ったのはサックス奏者・松丸契のリーダー・プロジェクト、blank manifestoだった。これまで様々な編成でライヴをおこなってきたプロジェクトだが、この日はジム・オルーク(ギター)、石橋英子(ピアノ/フルート)、山本達久(ドラムス)、波多野敦子(ヴィオラ)、マーティ・ホロベック(ベース)を迎えたセクステット編成で、松丸の作曲作品——彼がこの日のために用意した作品——を40分にわたって切れ目なく演奏。リアルタイムでの電子エフェクトや多重録音をも駆使したアンサンブルは、様々な色合いのサウンドが重なり合って時間経過とともに緩やかに移り変わり、あたかも一編の映画のような、あるいは壮大な音響絵巻ともいうべき、もはやジャズという一言では表すことのできない現代曲へと仕上がっていた。

 blank manifestoで出演した各メンバーは譜面を目の前に置き、時には松丸が指揮をすることでシーンが切り替わる。リズムやメロディといった記号化し得る要素よりも、滲むような音色の繊細なテクスチャーやアンフォルメルな変化が特徴的だ。それはアンビエント・ミュージックの落ち着きを想起させるが、シーンによっては各プレイヤーならではのアグレッシヴで即興的なサウンドも飛び出す。終盤にかけては激しい盛り上がりも聴かせた。それらの器楽的な演奏性に溢れたサウンドがしかし、火花を散らしてぶつかり合うのではなく、あくまでも空間に溶け込むように浸透して独自のハーモニーを生み出していく。その意味でこの作曲作品は、譜面に還元できるものではなく、ジム・オルークをはじめとした参加メンバーたちの個性と関係性、およびWWW Xという場所を抜きにしては成立し得ない音楽でもあっただろう**。

 こうした現代曲を単にジャズと括ってしまうことはできない。ただし、一般にジャズの文脈で知られるミュージシャンのなかには、これまでもジャズと言い切れないような音楽的実験を試みてきた人物が数多くおり、そして広義のジャズはそれらの雑多な音楽をも許容してしまうところがひとつの魅力だった。そう考えるなら、身ひとつでスインギーなピアノをサラリと奏でることも、共演を重ねて絶妙なインタープレイを聴かせることも、そして実験精神に溢れたコンポジションに挑むことも、同じイベントで並べて聴くことには十分な意義がある。それらをあらためてジャズと呼ぶべきかどうかはともかく、いま、東京で起きている音楽の新しい動きに触れる機会として、ジャズを手掛かりにその枠組みを超えたラインナップを揃えた「JAZZ BEYOND TOKYO」には、今後も注目しておく価値がありそうだ。

* 配信はZaikoで9月6日までチケット購入/アーカイヴ視聴が可能。https://zaiko.io/event/350647
** blank manifestoは当初水谷浩章が出演する予定だったが、新型コロナウイルス陽性のため、急遽マーティ・ホロベックが代役を務めた。予定通り水谷が出演していたらまた異なるサウンドを生んだかもしれないが、他のメンバーとの共演経験が豊富なホロベックも適任で、単なる代役以上の役割を果たしたように思う。

Quelle Chris - ele-king

 テレンス・マッケナはドラッグの伝道者だと思われているけれど、本業は植物学者で、植物が人類を進化させてきたという思想がその核をなしていた。植物は酸素や食べ物を生物に与えてきただけでなく、最近では木陰をつくり出したことで生物が海から陸に上がれる手がかりをつくったのではないかということも言われている。そして、植物(とくにキノコ)がつくり出す幻覚物質が人類の脳を発達させてきたというのがマッケナの仮説で、セカンド・サマー・オブ・ラヴの時期になるとスペースタイム・コンティニウムやイート・スタティックと組んで彼は自説をレイヴァーたちに説いて回った。なかでもインパクト大だったコラボレーションがコリン・アンガスとミスター・Cによるシェイメンとの“Re: Evolution”で、ドラッグと音楽が結びついたカルチャーが世界を一変させるという誇大妄想がここまで肥大した例は珍しかった。シェイメンは元はロック・グループで、セカンド・サマー・オブ・ラヴの到来とともにフォームを変えていくものの、音楽性が貧しかったからか、同じようなトランスフォームを経験したハッピー・マンデーズやプライマル・スクリームほどは後世に語り継がれる存在にはならず、往時を知る人たちのノスタルジックなアイテムにとどまっている。とはいえ、セカンド・サマー・オブ・ラヴによって世界が変わると信じ込んだ彼らの信念は“Re: Evolution”だけでなく、同じ6thアルバム『Boss Drum』から最大のヒットとなった“Ebeneezer Goode”で最高潮に達していく。♪E、最高~、E、気持ちいい~と、あまりにMDMA讃歌が過ぎるという理由で放送禁止となり、TV出演の際は歌詞を変えて演奏しなくてはならなかった同曲は当時でもコマーシャルすぎてどうでもいい曲だったこともあり、イギリスやアイルランドで1位、ヨーロッパ総合でも4位という記録を叩き出す。彼らがそこまで多幸感を抱き、世界が変わることを信じた原動力はそして、なんだったのか。それはおそらくソヴィエト崩壊である。シェイメンがまだロック・バンドだった時期にリリースされたサード・アルバムは『In Gorbachev We Trust(英語の慣用句「神に誓って」のパロディ)』と題され、ジャケット・デザインには茨の冠を頭にのせたミハイル・ゴルバチョフの肖像が描かれている。マーガレット・サッチャーがいち早く評価したゴルバチョフは冷戦を終結させた“西側のヒーロー”ではあったものの、その後はどん底を這いずり回ることとなったロシアからプーチンが現れ、ロシアを立て直した過程を知っている僕たちにとって、ゴルバチョフの評価というものがあまりに一面的な価値観のものでしかなかったことはゴルバチョフの訃報に反応するのがやはり西側諸国であり、ロシアでは冷たいムードに覆われているという報道でも確認できる通り。


 デトロイトのヒップホップ・プロデューサー、クエール・クリスのソロ7作目は『Deathfame』と題されている。「死に装束」ならぬ「死に名声」とでも訳せばいいだろうか。J・ディラに見初められ、ダニー・ブラウンの初期作に名を連ねてきたギャビン・クリストファー・テニールは2011年にソロ・デビューし、オルタナティヴなサウンドにこだわりつつ、デトロイト・マナーの硬いビートを持続する。全体にストイックなジャズ・フィーリングが畳み掛けられるなか、タイトル曲では音楽産業との確執が語られ、死と引き換えに名声を手に入れるかどうかという葛藤へと踏み込んでいく。「どんなハグにも傷つけられ、殴られれば着想がわく」と苦境を客観視しつつ、「誰かほかの人間になりたい」と泣き言をリフレイン。元々、作風は一貫してダークで、スカしたところはあっても希望にあふれるサウンドとはとても言いがたかったものの、不協和音が織りなす意外性だったり、独特の遊び心や実験精神がもたらす抜け道のような爽快さに救われていたものがここへきて完全に八方塞がりとなった印象を与えるサウンドへと固まり出し、ついに閉塞感情から抜け出られなくなったかと思わせる一方、その徹底ぶりと凝縮度から過去最高の完成度という声も出ている。各曲のタイトルもストレートで、“Help I’m Dead”、“Alive Ain’t Always Living(ただ生きているだけ)”、”Die Happy Knowing They’ll Care(彼らが気にかけていると分かればハッピーに死ねる)”と婉曲表現ですらない。こうした主観の表明に説得力を与えているのが重くならないスモーキーなベースラインや奇妙なスネア、そしてネイヴィー・ブルーの多彩なピアノ・ワーク。ベースラインの自由度を差してか、「アンダーグラウンド・レジスタンスとは似ていないが工業都市デトロイトの歴史に当てはまるサウンドで、マッドリブと同様にアクトレスも想起させる(大意)」と見るピッチフォークのレヴューも面白い。レジデンツとマッシヴ・アタックが出会ったような“King In Black”、サイプレス・ヒルとDJプレミアが鉢合わせした“The Agency Of The Future”、あるいはクライマックスに置かれた“The Sky Is Blue Because The Sunset Is Red”ではデビュー当初のヴィンス・ステイプルズも呼び戻される。「死と名声」といえば広告塔として統一教会に利用された安倍晋三は山上容疑者にも逆の意味で広告塔として利用され、それで終わりかと思ったら、さらに岸田内閣にも広告塔として理由されるというではありませんか。ないがしろに近いゴルバチョフとは対照的な扱いで、しかし、さすがに3回目ともなると品がない(費用は麻生のポケットマネーでいいんじゃないかな。理屈じゃないみたいだし。でも、それじゃ国葬じゃなくて麻葬になっちゃうか)。


 ちなみにクエール・クリスが4年前にジーン・グレイと組んだ『Everything's Fine』は彼のキャリアとはまた違ったユニークな内容で、全体にサイケデリック色が強く、暗い時代のデ・ラ・ソウルといったところ。可能ならこちらを先に聴くことをオススメします(2人は共同作業を経てそのまま結婚。ジーン・グレイはジャズ・ピアニスト、ダラー・ブランドの娘で、90年代にはナチュラル・リソース、00年代はブルックリン・アカデミーのメンバーとして活動し、ソロ作も多いMC)。

オルタナティヴはあのとき、ここではじまった

グランジ、オルタナ、ポストロックから音響派へ
USインディ・シーン激動の10年をたどる550枚のアルバムガイド

特別インタヴュー:EY∃(ボアダムス)、出戸学(オウガ・ユー・アスホール)

執筆:アート倉持、天井潤之介、天野龍太郎、岩渕亜衣、木津毅、澤田裕介、寺町知秀、村尾泰郎、畠中実、松村正人

前書き

Early 90s 1990-1993 90年代初期

Interview EY∃(ボアダムス) 90年代とオルタナティヴの極私的背景

Mid 90s 1994-1996 90年代中期

Late 90s 1997-1999 90年代後期

Interview 出戸学 2000年代以後の観点から考察する90年代USオルタナティヴの諸相

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この楽しみを知らないのはもったいない!
最前線を切り拓くユニークな名作たちをテーマ別に紹介

独創的な想像力を発揮し、多くの魅力的なタイトルを生み出してきたインディ・ゲーム。
そのなかからぜひともプレイしておきたい名作を9つのテーマのもとに厳選、気鋭の執筆者たちによる深いレヴューとともに紹介する。
インディ・ゲームがどのように現実社会を映し出してきたかもわかる、画期的ガイドブック。

執筆陣:
田中 “hally” 治久/今井晋
徳岡正肇/洋ナシ/櫛引茉莉子/木津毅/松永伸司/葛西祝/藤田祥平
近藤銀河/野村光/古嶋誉幸/山田集佳

田中 “hally” 治久 (たなか・はりー・はるひさ)
ゲーム史/ゲーム音楽史研究家。作編曲家。主著/監修に『チップチューンのすべて』『ゲーム音楽ディスクガイド』『インディ・ゲーム名作選』。ゲーム音楽では『ブラスターマスターゼロ』等に参加。レトロ好きなのにノスタルジー嫌いという面倒くさいインディ者。

今井晋 (いまい・しん)
IGN JAPAN 副編集長。2010年頃からゲームジャーナリスト、パブリッシャー、リサーチャーとして活動。世界各国のインディーゲームの取材・インタビュー・イベントの審査員を務める。

目次

序文(田中 “hally” 治久)

第1章 戦争 (キュレイター:徳岡正肇)
第2章 インターネットと現代社会 (キュレイター:洋ナシ)

[コラム]現実の社会や政治を “想像” させるインディーゲームたち(葛西祝)

第3章 歴史 (キュレイター:徳岡正肇)
第4章 フェミニズム (キュレイター:櫛引茉莉子)
第5章 LGBTQ+ (キュレイター:木津毅)

[コラム]インディーゲームにおけるDIY精神とトキシックなコンテンツの関係(今井晋)

第6章 音楽 (キュレイター:田中 “hally” 治久)

[コラム]インターネットの音楽から影響を受けたインディーゲームの世界観(葛西祝)

第7章 アート (キュレイター:松永伸司)
第8章 アニメ (キュレイター:葛西祝)
第9章 文学 (キュレイター:藤田祥平)

[コラム]近年のゲームが持つローカル・アイデンティティ──地域性に根ざした多様な表現(徳岡正肇)

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