「Nothing」と一致するもの

 これはマジ、すごい!!!
 かつてその音楽は怨歌と形容され、70年代の日本のアンダーグラウンドの脅威のひとつだった歌手、いまや欧州では裸のラリーズなみに評価の高い、JAP ROCKの巨匠、三上博と土生剛と二羽高次とのコラボレーションである!!

 『新世界』1周年記念スペシャルLIVEにて、弾き語りの巨人(ジャイアント)と呼ぶに相応しいリビングレジェンドが、西麻布「新世界」に遂に初登場!
現代詩が持つ調和無きジオメタリックを、シュールリアリズムとも称される東北の土着性で溶解し三上流の演歌=怨歌にまで昇華した巨人、三上寛。90年代を境に、演奏はエレキ・ギターとなり、歌はエモーション溢れる寛流のブルーズ/浄瑠璃に。詩はモノリスのような言葉へと変換。世紀をまたぎ、現在、その評価は国内に止まらず、欧州、中米、アジアにまで拡大飛び火中である。

 巨人に挑むは、リトル・テンポのバンマス、土生"TICO"剛(ときたけし)とブレスマーク=二羽高次(ふたばこうじ)から成る異色デュオ「たけしこうじ」。各々のルーティーンバンドの音楽性とは一線を画す、ディープな歌世界を探求。"巡礼"と称す神出鬼没な辺境ライブ活動で、波止場、田んぼ、盛り場、はたまた鎮守の森にまで!

三上 寛 (みかみ かん) プロフィール

 1950(昭和25)年青森県小泊村(現中泊町)出身。警察学校中退後、上京し、音楽活動を始める。71年、(21歳の時) レコードデビュー、アルバム『三上寛の世界』をリリース。同年の中津川フォーク・ジャンボリーで伝説的なライヴ・パフォーマンスを行い一躍脚光を浴びる。翌年、藤圭子のヒット曲『夢は夜ひらく』を三上寛流の演歌=怨歌に昇華。74年、山下洋輔トリオのメンバーやカットアップの手法なども取り入れた『BANG!』をリリース、78年には、"70'S三上寛スタイル"の完成をみた『負ける時もあるだろう』をリリース。それまでの活動に対して、本人は「これまでにオレの作詞方法は、現代詩から学んだ技術の延長上にあった。そこで言葉はデザイン化され、オレの『声質』がそれを細かく選択していく、とういう風に作られていったように思う。」と著書で語っている。

 79年には、処女詩集『お父さんが見た海』を発表。又、俳優としても活躍。寺山修司監督の『田園に死す』(1974年)を皮切りに、『新仁義なき戦い組長の首』(1975年/監督:深作欣二)、『戦場のメリークリスマス』(1983年/監督:大島渚)、『トパーズ』(1992年/監督:村上龍)、日活ロマンポルノ作品など20本近い映画やTVドラマに出演、映画音楽も手懸ける。ちなみに映画出演で親交を深めたピラニア軍団のアルバムもプロデュースしている。80年代は、2枚のアルバムをリリースするが、新曲のリリースは無く、82年を最後に8年もの間、レコーディング活動から遠ざかる事になる。この時期は、TVのレポーター、司会、コメンティーターとして繁栄に出演、役者として活動、エッセイの連載などで、新たなる才能が知れ渡るようになる。

 90年代に入り<PSF Records>から怒濤のリリース・ラッシュが開始される。自己のアルバムを毎年1枚ずつのペースでリリース。吉沢元治/灰野敬とのコラボレーション、石塚俊明/灰野敬二とのバンド「バサラ」でのリリースなど、80年代から一転して90年代は歌手・三上寛の改たな幕開けとなった。これまでの演奏、曲作り、歌い方とは違うスタイル~演奏はエレキ・ギターとなり、歌はエモーション溢れる寛流ブルーズに。詩はモノリスのような言葉が立ちはだかった。2000年には、音楽活動30周年記念の13枚組『三上寛ボックス』を発表、自伝の書籍『三上寛怨歌に生きる』も刊行する。

 2000年代も、その活動ペースは更なる加速が加わる。自己のアルバムの定期的なリリース。古沢良治郎/明田川之/林栄一/國中勝男/小山彰太/ JOJO広重/山本精一/辛恵英/佐藤通弘/沢田としき、とのコラボレーション。浦邊雅祥/石塚俊明とのバンド「三社」、そして「バサラ」のリリース。又2004年にはフランスのレーベルからもアルバムがリリースされ、海外でのライブ活動も繁栄化して行く~ 〇2004年/フランスツアー【パリ、ブレスト、ナント、リヨン、ジュネーブ、マルセイユ、メッツ】、〇2005年/イギリス【グラスゴー】、〇2006年/イギリス【ニューキャッスル】、〇2007年/ヨーロッパツアー【ブルックセル、リヨン、ジュネーブ、メッツ、ブレスト、パリ、マルセイユ】、〇2008年/ベルリン/ポーランド、/ イギリス【ロンドン】、/ヨーロッパツアー【パリ、リール、ナント、リヨン、ジュネーブ、オランダ、ベルギー、イギリス】、〇2009年/フランス【ニーム】、/イギリス【ロンドン】、〇2010年/キム・ドウス招聘~韓国【ソウル、テグ】、〇2011年/メキシコ、等。昨年、還暦を迎えるも、その音楽は止まる事を知らず、近年は寛流の浄瑠璃<語りもの音楽>といった方が判りやすい唯一無比なスタイルへと辿り着ている。別格な、声、言葉、ギターを三位一体に、前人未踏の荒野に足を踏み込んでいる、今の三上寛のブッ飛び方、半端ないっス!!

☆「新世界」HPにて、三上寛の最新インタヴューがUPされています、
滅茶苦茶面白いので、是非御覧下さい!
https://shinsekai9.jp/yorimichi/2011/10/03/mikami-interview/

たけしこうじ プロフィール

 波止場、田んぼ、盛り場、はたまた鎮守の森にまで!?
現在地、推定不能の巡礼活動。究極の唄ものを探求する、Little Tempoのバンマス土生"TICO"剛(ときたけし)とBREATH MARK=二羽高次(ふたばこうじ)の異色デュオ「たけしこうじ」。日本発、最高峰のレゲエ・インスト・バンド"LITTLE TEMPO"のバンマス、土生"TICO"剛と、ワン&オンリーな声と歌唱を持つシンガーソングライター"BREATH MARK"=二羽高次の夢のコラボレーション!
ルーティーンバンドのコンテンポラリー性とは一線を画す、そのディープな歌世界を引っさげ全国絶賛ドサまわり巡礼中!
愛に溢れる繊細な音色のスティール・パン!魂を鷲掴みにされる、圧倒的な唄声!フォークより無骨で、島唄のような懐かしさがタイムレスな感覚を誘う。日本人の心(ゲノム)を思い出させる、魂の唄の数々 (感動、泣けマス)
https://www.littletempo.com/
https://myspace.com/breathmarkofficial

●イベントタイトル:
『新世界』1周年記念スペシャルLIVE!
最高峰の"弾き語り・歌もの"クラッシュ!!

●出演
三上寛:Vocal & Guitar
VS
たけしこうじ
 土生"TICO"剛(リトルテンポ):Steel pan
 二羽高次(BREATH MARK):Vocal & Guitar

●公演日:
11月2日(水・祝日前)
開場:19:00 / 開演:20:00 / ☆限定100人

●会場:
西麻布「新世界」

●料金:
前売予約:¥2,800 (ドリンク別)
当日券: ¥3,300 (ドリンク別)

●インフォ・チケット予約・お問い合わせ先
西麻布「新世界 」 
https://shinsekai9.jp/
https://shinsekai9.jp/2011/11/02/mikami1/
TEL: 03-5772-6767 (15:00~19:00)
東京都港区西麻布1-8-4 三保谷硝子 B1F

Chart by JET SET 2011.10.24 - ele-king

Shop Chart


1

BORIS

BORIS BLACK ORIGINAL - REMIX EP »COMMENT GET MUSIC

2

HARVEY PRESENTS LOCUSSOLUS

HARVEY PRESENTS LOCUSSOLUS TAN SEDAN / THROWDOWN REMIXES »COMMENT GET MUSIC
Dr. Dunks & Com Truiseによる話題の2リミックスが遂に12"リリース!!DJ Harveyによる"Locussolus"プロジェクトの1stフル・アルバムから、先行カット第二弾として登場し爆発的なセールスを記録した人気タイトル"Tan Sedan / Throwdown"のリミキシーズ12"が限定500枚にてリリース。

3

PHIL WEEKS

PHIL WEEKS BY MY SIDE »COMMENT GET MUSIC
2000年設立以降、良質かつ即戦力のハウス・トラックをコンスタントに輩出してきたフレンチ・ハウスの代表レーベル"Robsoul Recordings"から、オーナーPhil Weeksによるカタログ100番が登場。

4

THEO PARRISH / BURNT FRIEDMAN

THEO PARRISH / BURNT FRIEDMAN MEET MANCINGELANI AND ZINJA HLUNGWANI »COMMENT GET MUSIC
南アフリカ発起の高速辺境ビートをコンパイルした奇天烈コンピ「Shangaan Electro」のリミキシーズ最新作。Oni AyhunやRicardo Villalobosらに続いて、Theo Parrish & Burnt Friedmanの重鎮コンビが参戦。

5

SOFT ROCKS

SOFT ROCKS WE HUNT BUFFALO NOW »COMMENT GET MUSIC
サイキック・ダブワイズ傑作が先行カット!!Andrew Weatherallによるキラー・リミックス収録!!Lovefingers主宰"ESP Institute"から、UKのハード・ディガー・ユニットSoft Rocksによるニュー・アルバム「Curse Of Soft Rock」からの第一弾先行シングル・カットが登場。

6

LARGE PROFESSOR

LARGE PROFESSOR KEY TO THE CITY »COMMENT GET MUSIC
新作が待たれるLarege教授の先行カットが登場! スクラッチにはRob Swift!全ヒップホップ・ヘッズ待望の新作12"は、Side-Bに別リミックスMad Scientist Remix、インスト、アカペラ収録の間違いない内容! *クリアー・バイナル、ダウンロード・カード付。

7

LORD ECHO

LORD ECHO MELODIES SAMPLER EP »COMMENT GET MUSIC
Reggae~DubバンドであるThe Black Seedsの核を担うギタリスト、Mike Fabulousの新プロジェクトがLord Echo。Wonderful Noiseからまたしても素晴らしいタイトルがリリース!

8

SHE & HIM

SHE & HIM A VERY SHE & HIM CHRISTMAS »COMMENT GET MUSIC
人気女優Zooey DeschanelとギタリストM. WardによるShe & Him。3枚目となるアルバムは、全曲クリスマス・ソングのカヴァーという素敵すぎる贈り物です!!

9

AEROPLANE

AEROPLANE IN FLIGHT ENTERTAINMENT SAMPLER 1 »COMMENT GET MUSIC
オフィシャル・ミックス"In Flight Entertainment"からのアナログ・サンプラー1/2!!エクスクルーシヴ音源のみで構成された話題のマンスリー・ミックス・シリーズ初のCD化に合わせ、収録4楽曲が抜粋されたアナログ・サンプラーが2作同時入荷。

10

KASHMERE STAGE BAND

KASHMERE STAGE BAND TEXAS THUNDER SOUL 1968-1974 (DELUXE EDITION) »COMMENT GET MUSIC
史上最強高校生ファンク・バンドのアンソロジーがデラックス・エディション新装版にて再登場!!Bonus LP + DVDを追加収録!!DJ Shadow"Holy Calamity"にてサンプリングされた"Kashmere"、Dennis Coffey"Scoripo"カヴァーなど、末恐ろしいレア音源満載のディープ・ファンク・クラシック!!

HEXSTATIC - ele-king

 SBTRKTとアニマル・コレクティヴとホワイト・ストライプスとキッド・カディとアフリカ・ハイテックをミックスすDJがいるかって? いるんですよ。これ見て(https://vimeo.com/30103637)。
 UKの〈ニンジャ・チューン〉レーベルを主宰するコールドカットは、1987年にDJのミックス文化にウィリアム・S・バロウズのカットアップの手法を持ち込んで、そうした脈絡のないミックスを実現した。ヘックスタティックは、コールドカットの初心とも言えるミックス文化を継承するレーベルの映像チーム。そんな彼らのヴィデオ・ミックスが無料配信されている。くだんのリンクは、1時間にもおよぶ驚愕の映像音楽体験です。

 今週末、世界初披露となるHalloween Audio Visual Setを組み上げて〈エレクトロニック・トライブ〉(通称、エレトラ)に出演する! 彼ら御機嫌なパフォーマンスは祝祭にバッチリはまるはず。とくにハロウィーン好きは必聴で必見。パーティには他にも個性的な出演者が登場するので、詳しくはホームページをご参照ください。

【ELECTRONIC TRIBE HALLOWEEN PARTY 2011】

ELECTRONIC TRIBE HALLOWEEN PARTY 2011
ELECTRONIC TRIBE HALLOWEEN PARTY 2011

2011年10月29日(土) 23:00 開場/開演
@UNIT/SALOON/UNICE 
渋谷区恵比寿西1-34-17ザ・ハウスビルB1、B2、B3
HP: www.unit-tokyo.com

出演者
HEXSTATIC -Halloween Audio Visual Set- (Ninja Tune/UK)
O.N.O a.k.a. MACHINE LIVE (THA BLUE HERB/JPN)
80KIDZ (Kidz Rec./KSR/JPN)
DJ OLIVE (the Agriculture/USA)
KAORU INOUE (SEEDS AND GROUND/JPN)
DE DE MOUSE (JPN)
ALTZ (Flower of Life/Altzmusica/JPN)
NUMB (Revirth/JPN)
IAN O'BRIEN (Peacefrog/UK)
QUARTA330 (Hyperdub/Lo-bit Playground/JPN)
CALM (Music Conception/JPN)
VJ : SO IN THE HOUSE (JPN)

前売り券&W/F : ¥3,000、当日券: ¥3,500
仮装割引 : フル・コスチューム無料!、セミ・コスチューム ¥2,000!

www.electronic-tribe.com/hw

 

■HEXSTATIC (Ninja Tune/UK)

古くからNinja Tuneで映像部門の中枢にいたStuart Warren Hilと、グラフィック・デザイナー、DJのRobin Brunsonによるユニット。95年の結成以来、ヴィジュアル素材をコラージュ&マッシュアップする手法で、常に革新的なオーディオ・ビジュアル・エンターテイメントのフィールドを開拓し続けてきた。第1回目のBig Chillフェスティバルでの映像がきっかけでNinja Tuneの伝説的イベント"Stealth Night"に参加。レジデントVJとしてキャリアをスタートさせることになる。その後、彼らの映像作品は数々の賞を獲得し世界の主要フェスに出演するなど、現在オーディオ・ヴィジュアルの領域においては向かう所敵無しである。また映像だけでなく音楽面においてもコラージュ・センスを発揮。00年にUK初のオーディオ・ヴィジュアル・アルバムとして発表された『Rewind』や、3Dメガネをかけて立体映像が楽しめる2ndアルバム『Master View』、07年の3rdアルバム『When Robots Go Bad』などはクラブ・シーンのみならず芸術作品として多方面で評価されてきた。昨年も4thアルバム『Trailer Trax』を全曲無料ダウンロードでリリースし大きな話題を呼んだ。現在、Robin Brunsonのみでのライヴ活動を新たに始動させ、映像と音楽をシンクロさせた遊び心溢れるステージで世界中を賑わしている。.今回なんと4年振りの来日となるハロウィーンにあわせHalloween Audio Visual Setという特別なライヴをセッティング。観る者を虜にさせる御機嫌なパフォーマンスは必見だ。

Rangers - ele-king

 砂原良徳に遅れをとること13年。〈OESB〉から〈ノット・ノット・ファン〉に移ったジョー・ナイトの(カセットなどを除く)2作目は「パン・ナム」がテーマだった(ゴッドスピード・ユー~から分かれたフライ・パン・ナムというのもいましたね。砂原より先にマーク・ニルスンのパン・アメリカンや808ステイトにも"キュービック(パン・ナム・ミックス)"もあったり)。

 ......そのせいか、昨年のデビュー作よりも浮遊感をイメージさせる曲が増え、良くも悪くも抒情的に流れていく展開が目立つようになった。そこがまずは気になり、ロー・ファイ度も薄れ、洗練されたが故に失ったものがあるような気がするせいか、少し物足りなく思いつつも聴き進めていくと、アナログで2枚組みのヴォリウムを持たせるだけあって、曲調は予想外の広がりを見せはじめる。フェルトやドゥルッティ・コラムもかくやと思えるイントロに導かれて"ジェインズ・ウェル"では星屑のようなフラギリティを、リヴァーブをかけまくった"カンヴァセイションズ・オン・ザ・ジェット・ストリーム"では適度な艶やかさを、組曲形式の"ジークズ・ドリーム」ではマイク・オールドフィールドのような込み入った構成力を、さらには"ゾンビーズ(ナイト)"など4曲でパサパサついたヴォーカルまで披露。なるほど最終的にはいろんなところを旅したような気分を残してくれる(前作のタイトルも『サバーバン・ツアー』だし、人をどこかに連れていくのが好きなのだろう)。

 アンニュイというほど不機嫌(=サルク)ではなく、ただ単にレイジーで、どこか都会的なファンク・サウンドにロー・ファイというフィルターを通すというアイディアはどこから来ているのだろうか。70年代でいえば、ファンクからフュージョンへと移り変わるギリギリのところをしつこく掘り下げているといった印象で、山下達郎や南義孝がガレージで録ったデモ・テープだよとかなんとかいえば信じてしまう人もなかにはいるに違いない。あるいはスモーカーズ・ヴァージョンのジョン・トロペイ。ゆったりと陶酔的なギターを何本も重ね、稚拙なSEの処理は砂原の足元にも及ばない。つーか、そこまでやる気がない。すべてが適当にやっているとしか思えない。そのような投げ出し方がいい。方向転換に成功したオーガ・ユー・アスホール『ホームリー』にも一脈で通じるものがある(一脈どころじゃないかな?)。

 いわゆる「ギター弾きまくり」というやつではないのに、すべてはギターによって決定されている。それもスノッブな響きを否定するものではなく、短くカッティングを重ねている部分でも、独特のニュアンスに引き込まれ、いつの間にかギターとギターの隙間に挟まれてしまったような気がしてくるし、前作はもっとベースに存在感があったので、そのことは余計に際立って感じられる。ここからマーク・マッガイアーのソロ・ワークが描き出すような導線もありうるとは思うものの、そのような抽象度の高さに必ずしも強い興味があるわけでもないし、むしろ自分の心に忍び寄っているのはノスタルジーを強めたい衝動のような気さえする。これ以上はよくわからない。あー、なんか、ややこしい。

 このラインでは、春先のリリースに遡るけれど、サン・アローにレインジャーズを掛け合わせたようなエディブルズ『アザー・マインズ・ミーツ・イナー・スペース』(DNT)も面白い位置を見つけたといえ、サン・アローがアカデミックな方向へ軌道修正し、レインジャーズがこうなった以上は、彼らがどっちに向かって行くのか非常に興味のあるところ。

The Smiths - ele-king

蹴りを入れたい連中に向かって
どうして僕は微笑まなければならないんだろう "ヘヴン・ノウズ・アイム・ミゼラブル・ナウ"

 負の感情――報われない愛、貧困と失業、うまくいかなさ、社会に阻まれる夢、他人への不信、地元への嫌悪、持たざる者の惨めさ、自信の喪失、社会からはじかれる前科者、果てしない負の連鎖すなわち絶望感、そうした、おそらく多くの人が人生を送るうえであまり考えたくないようなもの、すなわち夜が明けても続く暗闇があるという認識を思慮深い言葉と美しいギターで表現したロック・バンドがザ・スミスだった。「このじめじめとした陰気な国にさようなら」、「酔っていたときは幸せだった」、「若死にしたいからタバコを吸う」、「学校で学んだ最良のことは学校を辞めること」、「この仕事を続けたら魂が腐りそう」、「君らとは分かち合いたくない」......、1983年にマンチェスターから登場して、1987年に解散したこのバンドは、ときにフィル・スペクターめいたポップのファンタジーを毒々しい態度で利用して、そして未来を夢見るポップとは真逆の、未来のなさを認識しながら生きる人たちの避難所となった。それは若き日の自分に突き刺さり、こうしていまふたたびびそれが容赦なく突き刺さる。いや~、参ったね。橋元優歩に嘲笑されようとかまわない。3.11以降、諸事情が重なり、僕はザ・スミスを25年ぶりに繰り返し聴いていたのである。

 思春期において、その言葉と音をほじくるように聴いていたリスナーが3.11以降に真っ先に思い出した曲は、チェルノブイリ原発事故の報道でパニックに陥るUKを描いていた"パニック"、そしてモリッシーの最初のソロ・アルバム収録の、核爆発後の人気のない浜辺の町を歌う"エヴリデイ・イズ・ライク・サンデー"の2曲だったことだろう。僕はそうだった(暴動に揺れ動くUKでは、"ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド・ユナイト"が蘇っているのだろうか......まさか"スウィート・アンド・テンダー・フーリガン"ではないと思うが......)。"アイ・ウォント・ザ・ワン・アイ・キャント・ハヴ"や"ゼア・イズ・ア・ライト・ザット・ネヴァー・ゴーズ・アウト"のような曲が描き出す希望のない人生のなかの小さな輝きは、若気のいたりとはいえ......というか若かったからこそ、それが発表された当時はずいぶんと深く、そしてバカみたいにハードに聴いていたけれど、よもやこの歳(48歳)になってまたしてもこの音楽を親身に聴くとは人生わからないものだ。最悪の時代を生きているという認識がザ・スミスに向かわせているというよりも、いまだこれに匹敵するほどのやりきれなさを引き受けている音楽を他に知らない......といったところが大きい。

 今月リリースされた『コンプリート』は、全アルバムのリマスター盤によるボックス・セットで、オリジナル・アルバムが4枚、ベスト盤が2枚、編集盤が1枚、ライヴ盤が1枚の計8枚が入っている。さすが3万5千円もするコレクターズ・セットには手を出せないけれど、このボックスのほうは我慢できずに買ってしまった。もしも、ある種の前向きさに居心地の悪さを感じている若い人がいたら、いまからおよそ25年前の、放射能汚染と冷酷な格差社会の脅威に翻弄されながら生きた、この美しくロマンティックな"負"の音楽を紹介したい。値段は張るが、言葉が素晴らしいので、歌詞が載っている日本盤をお薦めする(金がなければ、とりあえずディスクユニオンあたりで4枚のオリジナルと2枚のベストを中古で探せばいい。2枚だけ選ぶなら『ミート・イズ・マーダー』と『ザ・クイーン・イズ・デッド』)。

心の成長が身体のそれに追いついたとき
僕は手に入れることのできないものを欲しい
欲しくて欲しくて仕方がない
僕の顔に書いてあるだろう
ダブルベッド
心の通じ合った恋人
それが貧乏人の贅沢だ "アイ・ウォント・ザ・ワン・アイ・キャント・ハヴ"

Chart by Underground Gallery 2011.10.20 - ele-king

Shop Chart


1

ONUR ENGIN

ONUR ENGIN Edits 5 [Onur Engin/12inch] »COMMENT GET MUSIC
シカゴの[Plimsoll]からのリエディット作品も話題となった、トルコはイスタンブールのアーティスト ONUR ENGIN新作が、自身主宰レーベル[Onur Engin]から登場。何と言っても今作のオススメは Side-Aに収録された「Love Talkin'」で、先日のDommuneでもDANIEL WANGが一発目にプレイしていた「メリーゴーラウンド」や国内某アーティストによる「Blow」のリエディットなど、ここ数年多くのアーティストがDJプレイに取り込みつつある、山下達郎氏の音源をしようしたもの。この曲は、82年にリリースされた6枚目のアルバム「For You」に収録されていた作品で、作詞を手掛けているのは盟友 吉田美奈子!、原曲をピッチアップし、甘くアーバンな雰囲気はそのままに残した、文句のつけようがない、超フロアーキラーな仕上がりとなっています!!さらに Side-Bには、DJ HARVEYのプレイで知られる ROD STEWARTの名作「Do Ya Think I'm A Sexy」を、トルコの女性シンガー SENAYがディスコ・カヴァーした「Kent Yasami」をリエディット。こちらも原曲以上にパワフルで、ちょっとオリエンタルな雰囲気を感じさせて良いですね縲怐Bどちらもホントに最高です!!今回もリプレスなし、完全限定プレスでのリリースとなっていますので、絶対に買い逃しのないよう、お早目のチェックをオススメしますよ縲怐B間違いなく、下半期を代表するキラータイトルとなる事でしょう。大・大・大推薦!

2

AFRIKAN SCIENCES

AFRIKAN SCIENCES Means & Ways [Deepblak Recordings / 12inch] »COMMENT GET MUSIC
新世代アフロ・トライバル・ハウス超推薦盤!ここ最近欧州では急激に評価が高まってきている注目黒人ハウサーAYBEEが主宰する[Deepblak Recordings]の新作はかなりヤバめのトライバル・チューンでオススメ! THEO PARRISHのリズムの打ち込みにも通じるような、独特のつんのめり感のある、パーカッションの組み上げ方が、凄まじくカッコイイ、新感覚のアフロ・トライバル・ハウスのB1がヤバい!その他にも、ドリーミーなシンセ音がタームワープするかのように、捩れながら上昇していく、ドラッギーなテック・チューンのA1、デトロイティシュな空間シンセを響かせたディープ・トラックのA2など、全てがキラー!DJ的にもかなりアクセントとなりそうなトラックばかりなので、上手く使って頂きたい一枚です!スタッフ推薦盤!

3

SOFT ROCKS

SOFT ROCKS We Hunt Buffalo No [ESP Institute / 12inch] »COMMENT GET MUSIC
UKのハードディガー・ユニットSOFT ROCKSによる70's UK Reggae/Dubマナーなオリジナルを、ANDREW WEATHERFALLが男気溢れる[On-U]ライクなロッキン・ダブへリミックス!COS/MESやTIAGOらのリリースで話題を集めた LOVEFINGERS主宰の超人気レーベル[ESP Institutes]新作は、UKのハードディガー・ユニット SOFT ROCKS。PATRICK COWLEY作品を手掛けたり、INDOOR LIFEのヴォーカリストとしても活躍していたJORGE SOCARRASを起用した今作、まず Side-AにはTIM SWENNYも Beats In Spaceでプレイしていた、70'sパンクやNew-Wave、Dub/Reggaeを巧く昇華した ぶっ飛びまくった ドープ・パンキー・ダブ、オリジナル。そしてSide-Bには、UKの超大御所 ANDREW WEATHERALLが不良感溢れるロッキンなリミックス。どちらもとにかく間違いありません!これは何がなんでもゲットしておいて下さい。UGスタッフ 超オススメの1枚!

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ANSWER CODE REQUEST

ANSWER CODE REQUEST Subway Into [Answer Code Request / 12inch] »COMMENT GET MUSIC
HARDWAXが送る期待の新レーベル!ANSWER CODE REQUESTなる謎のアーティストによる、デトロイト、IDM、UKG/ダブステップのハイブリッドとも言える、強力盤! この所、リリースペースが落ちていたベルリンHARDWAX関連の作品ですが、久々にリリースされた今作は、 ここ数年のハイブリッド・サウンドの集大成と言えそうな、ダブステップ/UKG、エレクトロニカ、デトロイト・テクノなどの要素が詰まった、流石の地下サウンドを披露!トライバルハウスともUKファンキーともリンクするバウンシーなビートを軸に、デトロイティシュに色ついていくB2「Reflected」、エレクトロニカ的な硬質ビートと、ダークアンビエンスなシンセの絡みが緊張感を生み出しているA2「Escape Myself 」など、4トラックを収録!

5

BOMBAY BICYCLE CIRCLE

BOMBAY BICYCLE CIRCLE Shuffle - Leo Zero Remix - [Let'S Get Lost / 12inch] »COMMENT GET MUSIC
A MOUNTAIN OF ONEのリード・オブ・マン LEO ZERO リミックス!トビの効いたパーカッションを鳴らした、北欧の天才 RUNE LINDBAEKとの共作、Side-Bが一押し!! KZA氏、[Mule Musiq]共同主宰[Let's Get Lost]第10弾は、同シリーズ初登場となる A MOUNTAIN OF ONEの DJ LEO ZERO。今回は、2009年にデヴューを果たした UKの若き4人組みロックバンド BOMBAY BICYCLE CIRCLEの 3rdアルバム「Different Kind of Fix」に収録された「Shuffle」をリミックス。原曲のポップメランコリーなギターリフを巧く残しながら、よりディスコ/ダンスフロアー仕様へと昇華させた、ナイスなバレアリック・リミックス Side-A、Side-Bでは LEO ZEROのリミックスに、トビの効いたパーカッションなどを鳴らしながら、展開させていった RUNE LINDBAELによるリエディットを収録。バレアリック方面の方は要チェック!

6

V.A

V.A Vibe 2 Compilation [Future Times / 12inch] »COMMENT GET MUSIC
NYCのアンダーグラウンド、要注目レーベル[Future Times]新作は、現在、シーンのド真ん中で活躍するアーティスト、総勢 9組が参加した、超豪華 12"×2 EP!!NINA SIMONEの楽曲をネタにしていると思われる、デトロイトスタイルなビートダウン・ハウス A1を筆頭に、80年代のアーバンでソウルフルなディスコサウンドを彷彿とさせる TOM NOBLE手掛ける A2、AAX DONNELL & ERIC MALONEの人気クラシック「Golden Cage」的なリズムと[Island]的なトビ感が◎なエレクトロ・ダブ・ディスコ CONFUZED HOUSEの B1、バレアリックフィールなシンセ音とアシッドテイストなグルーブが見事に絡みあう JUJU & JORDASHの C1、浮遊感のあるシンセが印象的な STEVE MOOREのスローモートラック C2など、本当に捨て曲なしなキラートラック 全9トラックを収録!!是非お見逃しなく!

7

HOT BURRITO

HOT BURRITO Hot Burrito #1 [M1 Sessions / 12inch] »COMMENT GET MUSIC
デトロイトのディストリビューター兼、レコード・ショップ"FIT"(実はSubmergeと同じ建物の中にあるらしいです...)が送り出す、謎多きデトロイトの新レーベル[M1 Sessions]から、DAVID SHETTLERなる人物による、粘り具合ばっちりなディープ・テック・ハウスがリリース! 粘るようにうねる、中音域のシンセ・シークエンスが、巧みな変化を繰り返グルーヴのヘビー・ベースの効いたディスコ・ライクなグルーヴの上で、軽やかに反復するA面、音フェチの方へもオススメ出来る、アナロジカルな電子音が、グチュグチュと変化しながら不規則に動く、ドープなビートダウン・ハウスのB面、共に、かなり個性的なカッコイイです!今後、どんな展開を魅せるのか楽しみなレーベルが誕生です!要チェック!

8

KAHUUN : ARTO

KAHUUN : ARTO Batteri : Midi Sync [Sex Tags Ufo / TOTALLY / 12inch] »COMMENT GET MUSIC
まさに"カルト"という言葉が相応しい、ノルウェー秘境レーベル[Sex Tags Mania]傘下[Sex Tags UFO]の第3弾は、かなりキラー!!その昔UKの[Paper]からも作品をリリースしていた地元ノルウェーのDJ、KAHUUNと、詳細不明のARTOなるアーティストのスプリット12インチ!01年に[Hi Fi Terapi]からリリースしていたA面、KAHUUN「Batteri」は、最近ありそうでないジャズ・ファンク・ライクな、ブレイクビーツハウスを展開!MOODYMANNの傑作の「Black Mahogany」を思い出させる傑作です! ARTOによるTR-808+ピアノな、オールドスクールハウスも◎!

9

FLOATING POINTS

FLOATING POINTS Danger [Eglo Records/ 12inch] »COMMENT GET MUSIC
もはや説明不要の存在、FLOATING POINTS の新作は7インチでのリリース! TR-808ビートとメカニカルでピプノティックなアルペジオシンセで展開していく、かなり個性的なテック・チューン!これはお手上げです...。ベースも低い位置でしっかりと鳴っています!中盤でパッドシンセが迫り上がって来た後の展開に痺れますよ!!

10

FARBEN

FARBEN Xango [Fatiche/ 12inch] »COMMENT GET MUSIC
90年代後半、[Klang]や[Scape]と言った名門から、数多くの傑作を世に送り出してきたミニマル/クリック・ハウスのパイオニアJAN JELINEK aka FARBENが、待望の新作12インチを発表!FARBENらしい、フカフカした手触りと、アナロジカルな空気感は健在!

Mark McGuire - ele-king

 2011年、マーク・マッガイアは彼の過去の大量のアーカイヴからの編集盤『A Young Person's Guide To Mark McGuire』を〈エディションズ・メゴ〉からCD2枚組で発表している。パッケージには、収録元の過去のCDRないしはカセットの作品名とその枚数(75個限定だとか130枚限定だとか200枚限定だとか)が細かく記され、また過去のCDRないしはカセットのアートワークを並べたポスターが封入されている。ポスターの裏側では、フェンダーのテレキャスター、そしてギブソンのレスポール・ジュニアとともにマッガイアが部屋に座っている。牧歌的な『リヴィング・ウィズ・ユアセルフ』や既発のアンビエント作のレコード盤『タイディングス/アメシスト・ウェイヴス』、あるいはアコギ演奏による"VDSQ - Solo Acoustic"シリーズ作など、2010年のエメラルズへの評価と比例して発表された諸作が好評だったこともあって、ソロ・アーティストとしての存在感が急速に増した感じである。
 マニュエル・ゲッチング直系のループ(ミニマリズム)を現代的なドローンの感性で再解釈した『タイディングス/アメシスト・ウェイヴス』、『リヴィング・ウィズ・ユアセルフ』で言えば"Brain Storm"のような瞑想的な曲、それから『VDSQ』や『リヴィング・ウィズ・ユアセルフ』の前半で見せたレイドック気味のコード・ストロークの響きを活かしたメロウな曲、あるいはごくまれに出てくるノイズ・ギター、そうしたものの自由な組み合わせのなかでマッガイアの音楽は鳴っている。『ゲット・ロスト』は『リヴィング・ウィズ・ユアセルフ』以来1年ぶりの新録によるアルバムで、おおよそギターの多重録音という制約がある音楽において、リスナーの期待をうわまる作品だと言える。

 このアルバムがレコード店の視聴機にあったら3曲目の"Alma"から聴くことをお薦めする。透き通るように牧歌的なアコギの反復、そしてメロディ、そしてマッガイアは歌っている。それはおかしな喩えだが、青年になったパンダ・ベアのようなヴォーカリゼーションである。そう、つまり、アニマル・コレクティヴが『サング・トングス』を最後に失ったものがこの曲には、さらに前進したものとしてある。それはホントに、予期せぬ美しいものに出会ったときの感動をもたらす。"Alma"は、5曲目でも繰り返されている。
 素晴らしいチルアウトとトリップを約束する"When You're Somewhere"や"Firefly Constellations"も捨てがたい。"Another Dead End"もマッガイアらしい瞑想的な曲だ。『ゲット・ロスト』には"Brain Storm"や"The Passing Of The Road Chief"を上回る曲がある。しかし何よりも、『サング・トングス』以降というものに出会えたことが嬉しいです。

Welder - ele-king

 エレクトロニック・ミュージックのシーンにおいて〈ワープ〉と〈ニンジャ・チューン〉、そして〈プラネット・ミュー〉は、そのリスナーならびにプロデューサーにとっていまだ憧れのレーベルだ。サンフランシスコで暮らしているブレンダン・アンジェリデは、2年ほど前からエスクモ名義によってその3つのレーベルから作品を発表している。エスクモはグリッチやダブステップといった最新のモードを彼なりに咀嚼した作品をリリースすると、そして2010年に〈ニンジャ・チューン〉からリリースされたアルバムではグリッチを入口としながらも、ある意味ではベースヘッズの期待を裏切るように、なかばシャーマニックな、壮麗かつメランコリックな彼自身のIDMサウンドを展開した。ウェルダー(溶接工)とはそのようにUKのベース・ミュージックに共感しながらも、その本性を安売りしないブレンダンにとっての、エクスモとは別のもうひとつの顔である。

 そのアルバム『フロレセンス(花時)』は、彼自身のレーベル〈Ancestor(祖先)〉から先月の末、配信によってリリースされている。「最新の音(カレント・サウンド)とは関わりを持たない音楽であること、それは音楽産業のゲームのいっさいに参加しないこと」、そして「溶接工というメタファーが暗示するのは熱を持って異なるものを接合すること、ならびにミステリーとその裏に隠された穏やかさにある」と本人はコンセプトについて説明してくれたが、たしかにこれはタイトルが言うようにアンビエント・フィーリングをもって花が成長していくかのような美しい作品で、エスクモのようにベースにフォーカスされてはいない。
 エスクモのハイファイ・サウンドに対して『フロレセンス』はいわばローファイだ。ローファイ・アンビエントと言えばエイフェックス・ツインの『アンビエント・ワークス』が思い出されるが、『フロレセンス』にはハウスからの影響はまずない。どちらかと言えばポスト・ロック的で、ピアノの音、ストリングスの音、控えめなビート、時折挿入される歌声......それら美しい音はおおよそ花のために鳴っているように思える("日本"という曲もある)。
 この物静かな青年はエスクモのアルバムにおいても北カリフォルニアのスギの木に影響されたことを明かしていたし、サンフランシスコに移住した理由もその原生林にあると話していたが、本当に植物が好きなのだろう。アートワークにある溶接工のマスクと花との組み合わせは、ビョークが打ち出すテクノロジーと自然との共生を思わせるが、『フロレセンス』のほうがロマン主義的で、彼が好きだという横田進の作品により近い。その控えめな美しさは自身のレーベルから人知れずひっそりとリリースされてこそさらに意味があるのだ。

 ブレンダンはエスクモ名義でもつい最近リミックス・シングル「ウィ・ガット・モア/ムーヴィング・グロウストリーム」を発表している。アモン・トビン、スラガベッド、スローイング・スノウをはじいめとする6人のリミキサーによるリミックスを収録したこちらでは、『フロレセンス』とは違って、まさに最新の音が聴けるわけだが、そのなかでもアモン・トビンとスラガベッドがずば抜けて面白い。アモン・トビンは例によって音のサーカスのような、圧倒的なIDMサウンドで耳を楽しませてくれる。スラガベッドはまだシングルしかリリースしていないダブステップ系のプロデューサーだが、〈プラネット・ミュー〉そして〈ランプ・レコーディングス〉といった人気レーベルからのリリースを経て〈ニンジャ・チューン〉が契約を交わした期待のひとりである。

James Blake - ele-king

 ブリアルの『アントゥルー』において、デジタル処理され歪められたR&Bヴォーカルは「幽霊のような声」だと評されたが、あれは本当に幽霊の声だったのだと思う。歌と言うよりは、悲鳴や泣き声のようにさえ聞こえたおどろおどろしく物悲しいその声たち。"ニア・ダーク"、"ゴースト・ハードウェア"、"ドッグ・シェルター"、それに"ホームレス"といったタイトル......。生霊なのか死者の霊なのか、シャマランや黒沢清が描いたような都市の内側のすぐそばで漂う幽霊たちの悲鳴を、あのアルバムは拾っていたのだろう。いまでこそダブステップはあらゆる方向に広がりを見せているが、ヴァリアス・プロダクションやブリアルの名によってそのジャンルが広まったとき、こんな風に呼ばれていたのをいまでも思い出す――「レクイエム・フォー・レイヴ・カルチャー」と。
 ジェイムス・ブレイクの"CMYK"で漂っていた声は、完全にそこから地続きで響いたものだった。けれどもそのトラックはケリスとアリーヤを「ネタ」にしていたことが後で話題になり、それらはメインストリームのR&Bが冒険的だった時代の記憶をも「亡きもの」に仕立てたという意味でより複雑な様相を示していた。そしてデビュー・アルバムでブレイクはよりシンガーソングライター的なアプローチで彼自身の歌とエモーションを披露したが、それでもそこにあった「声」は......『アントゥルー』の世界の住人のひとりになりすますかのように加工され、その個体性をぼやかしていたのだった。

 東京はソールドアウトになったというジェイムス・ブレイクの来日公演。大阪では豪華なアーティスト陣が顔を揃えたイヴェント、SATURNのいちアクトとして登場することになった。
 ふたりのメンバーを連れてステージに登場したジェイムス・ブレイクは、写真で見る以上に線の細い、いまだ大学生風情の青年だった。だがシンセの前に座ってその口を開けば、そこからアントニー・ハガティのような深く穏やかなソウル・ヴォーカルが漏れ出してくる。すぐにそこに加わる、生ドラムの打撃を機械に通して増幅されるビート......"アンラック"だ。低域の音圧が想像以上に強く、曲のビートは音源よりも強烈に叩きつけられる。ミニマルでありつつ、ランダムにも聞こえる複雑なパーカッションが、腹にずしずしと直接的にぶつかってくる。だが、恐らくそこにいた誰もが息を呑まずにいられなかったのは、彼自身の声だ。中性的でいてアンニュイで、独特のヴィブラートがかかることでどこか不安定に震えるその声。続く"アイ・ネヴァー・ラント・トゥ・シェア"では冒頭その場でサンプリングされた歌がループされ、彼自身によってコーラスが奏でられたが、それは湧き上がった歓声を押し黙らせるような迫力と緊張感を孕んでいた。だがその声は例によって極端なまでに加工されて歪められ、重々しい低音が少ない音数で地鳴りのように響くなかを浮遊する。ダブステップ譲りのへヴィなビートと、機械と人間の間を行き来しつつ発声される物悲しげなヴォーカル。それは本当に初めて体験する音楽だった。
 その音楽の幅を見せつけたのが中盤だ。"リンディスファーネ"は、孤独に震えるような歌声がそれでもギターの優しげな調べと寄り添い、ライヴ中もっとも穏やかな時間をもたらした。そして単音のシークエンスが繰り返されるとひときわ大きな歓声が上がる。"CMYK"だ! ビートは音源よりもはるかに強調され、驚くほどダンサブルでパワフルなものとして再現される。ケリスのヴォーカル・サンプルだけでなくブレイク自身の歌もそこに加わり、終盤は紛れもなくダンス・ミュージックとしての高揚を生み出していた。"リミット・トゥ・ユア・ラヴ"ではメランコリックなメロディを存分に歌い上げた後、そこにいる誰の腕も上がらないような暗く重たいダブに突入する。"クラヴィアヴェルク"はそのおどろおどろしさや禍々しさでこそ、オーディエンスを引き込む――低音が地を這う。
 ライヴはあっという間に終わりを迎える。素朴に感謝の言葉を述べたあと、最後に披露された曲は"ザ・ウィルヘルム・スクリーム"だった。メロウなメロディが繰り返され、曲が進むにしたがってパーカッションのリヴァーブは深くなり、シンセの和音が重なっていく――水中に深く潜っていくように。「僕は、僕の愛なんて知らない」――ビートがやんだ時に感じられた眩しさは、たしかにゴスペルのそれだった。

 初めて直に聴くその歌声は、まるで救いを求めるように悲しい響きをしていた。そしてそれは機械を通して加工されることで、目の前でジェイムス・ブレイクその人の元すら離れて、孤独な、忘れられた魂がすすり泣く声になっていく。もしこれを、ダブステップの後に来るべき現代のゴスペル、ソウル・ミュージックだと呼ぶのなら――それは、鎮魂歌だ。
 ブリアル以降の最良の成果がジェイムス・ブレイクであり、彼のあまりに特別な才能を目の当たりにする体験であったことは間違いない。けれどもそれは同時に、彼を通してたくさんの幽霊たちの魂と交信するような、そんな畏れを覚える夜でもあった。

(※写真は10月12日の恵比寿リキッドルームでのライヴ模様です)

Bjork - ele-king

 「アメリカのロックンロール産業はアイスランドの電気工組合にくらべてずっと保守的」と言ってのけたのが、もう10年以上昔のビョーク・グズムンスドッティルだ。「電気職人はとにかくで適応が大事。毎年新しい器具が出てきて、いちど電工になったら最後、新しい動きについていくためにいつもいつも研修を受けに行かなきゃならない」※

 今日のUSインディ・シーンにおいて、ラップトップを使った女性アーティスト(ジュリアンナ・バーウィックグルーパー、U.S.ガールズ、グライムス......そしてアマンダ・ブラウンマリア・ミネルヴァなどなど)が大勢出てきたことの契機のひとつとなったのは、まあ、間違いなくビョークだろう。『ホモジェニック』以降の彼女の音楽、そしてひょっとしたら彼女のa way of lifeもそれを促しているかもしれない。16歳でシングルマザーとなって、アナーキスト・バンドのクラスに会いに行くために角砂糖をなめながら旅費を貯め、2ヶ月も風呂に入らずアイスランドからベルリンまで車中で過ごしたような経験を持っている女性が、やがてアイドル的に華々しくソロ・デビューを果たし、そして最初に売り上げが下がったアルバム『ホモジェニック』において用いた方法論――つまりラップトップによるIDMサウンドをその後の自らの基盤としたビョークの活動の軌跡は、性別に関係なく触発されるものだ。彼女が"ハンター"で歌ったように、「旅の途中で家を見つけたとしても、私はそこにとどまらない」とは真実なのだ。

 僕はいま『EYESCREAM』誌の連載コラムで『バイオフィリア』について書き終えて、そのノリのなかでこのレヴューを書いている(これはそのコラムの補足のようなものです)。『バイオフィリア』は"自然科学"をモチーフとしたアルバムだが、コラム原稿のなかで、彼女がエレクトロニクスを用いて"自然"を描いた最初の名曲が"ヨーガ"であると僕は書いている。"ヨーガ"は、3.11を経験している我々がいま聴いたら重たい曲かもしれない。何故なら彼女が表現する自然とはオーガニック系が好むところの豊かな緑と暖かい海に囲まれたそれではなく、地底でマグマがうごめき、灰色の岩々が空に突き出た、荒涼とした大地が広がる自然なのだ。それは心象風景でもあるが、間違いなく自然そのものでもある(そしてその曲には、アレック・エンパイアによるさらに荒涼としたヴァージョンが3つもある)。あるいはまた、彼女は『ホモジェニック』に収録された"アラーム・コール"では、長持ちする電池とカセットを持って山頂に登って、愉快な音楽を流して人類を苦しみから解放することの夢想を歌っている。彼女は自然も愛しているが、同時にテクノロジー(科学)への評価も忘れない。

 ......と、偉そうなことを書いているが、正直なところ僕はビョークに関してはなかばミーハーなので、先行リリースされた12インチも4枚買ったし、今作の話題のひとつ、曲ごとのiPhone用のアプリもすべて購入した。もっとも僕はタッチスクリーン操作が彼女ほど好きではないので、電車のなかでちょっと触ってみるぐらいだが、まあ簡単に言えば、学研の『科学』の付録のようなものである。「科学とアートはかつて同じところにいたのよ。21世紀になって、その両者はふたたび結ばれるんじゃないかしら」と、彼女は『ガーディアン』が企画した読者からの質問に答えている。
 とはいえ、ビョークは科学者ではなく音楽家だ。かつて自分の音楽を「本能的」と形容した彼女の本質が変わっているとも思えない。理性を失っているわけではないが、ディオニソス的である。アルバムのなかのベスト・ソング"クリスタライン"は、結晶=鉱物を曲のテーマにしている。稲垣足穂めいた美意識を持ったこの曲には、いまでも「ナーディなダブステップや2ステップ、ミニマル・テクノのCDを買っている」という彼女らしい躍動的なブレイクビートの素晴らしい展開がある。いまでも僕は『ホモジェニック』を愛しているが、ストリングスを多用したあのアルバムのメランコリーに比べて『バイオフィリア』には"クリスタライン"に代表されるシンプルさと前向きさがある。"コモスゴニー(宇宙発生論)"も白眉のひとつで、この曲には『ホモジェニック』ならびに『ヴェスパタイン』とより近い叙情的なエレクトロニックな響きがある。サブベースを擁した"ウィルス"、ハーブのシンプルな音と歌のみで構成される"ソルスティス"もまた、IDM時代のオルゴールのようである。
 それぞれの曲には自然科学から引用したコンセプト(DNA構造をリズムに置き換えたり、重力や月の周期をリズムの反復に置き換えたり......)があるが、こうしたヨーロッパ音楽における数学的な論理ないしは天体の動きを譜面化するような試みは、それこそ彼女も言うようにギリシャ時代からあるもので(たとえばジョスリン・ゴドウィン著『星界の音楽』参照)、彼女が非宗教的な"科学"をモチーフにしたことは注目に値すると思うが、僕は『バイオフィリア』においてそのコンセプトの内容までは深追いはしない。 それよりも"自然"というテーマと直面としたときに生楽器の使用しかアイデアの浮かばないような音楽家とは100万光年離れたビョークの多様な音色と音階が織りなすエレクトロニック・ミュージックの面白さをまずは楽しみたい。『ピッチフォーク』は「革新者としての彼女はいまだ力強いが、ソングライターとしての彼女は疲弊している」などと書いているが、ソングライターとしての彼女は『ヴォルタ』のときよりも魅力を増し、音数は少なく表現として豊かで(サブベースは、現代的な威力を発揮している)、ところどころ陽気に僕には思える。まあ何にせよ、科学が金銭欲と結びつくよりも芸術と結ばれることを強く願っているのは、日本で暮らしている我々であろう。

※エヴェリン マクドネル (著)、栩木 玲子 (翻訳) 『ビョークが行く』 (新潮社)

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