「!K7」と一致するもの

Kwjaz - ele-king

 「雨の日に帰宅するとくだらないジャズを聴いたりする」というフレーズをいつか三田格氏の口からもれ聞いた記憶があって、おそらくそれは「イージーリスニング的なジャズ」を聴くという意味のなにげない発言なのだが、そのくだらないとかイージーという表現が、筆者にはじつにしっくりと氏の体験をささえているように感じられた。もちろん「雨の日」という補足的な状況設定がカギである。雨の日に一種のメランコリーを感じとるイージーさ、そしてそこに「くだらない」ジャズをクロスさせるイージーさ、しかしそうしたい情動について、ありありと想像や共感を呼び起こされる。雨の帰宅後の感情のグレースケールを、そのくだらない音楽は可視化する。

 Kwjazもそのような音楽だ。先日、その話を思い出すように購入した。発表は昨年だが、2曲のボーナス・トラックを加えて今年CD化。「Kdjaz」なら「くだらないジャズ」ということで素敵なオチが作れたが、けっきょくどう読むかということは海外のサイトでもおぼつかないようであるから、仮にクワジャズと呼ぶことにしよう。ドローンやダブをメディテーティヴにもちいて、いくつものフレーズの断片がコラージュされる。別々の曲がノン・ストップでつながれたミックス・テープのような印象も受ける。必然的にかなりの長尺となり、片面各1曲のみの収録、"ワンス・イン・バビロン"は23分にもおよぶ。エスノ・サイケ的なアウトプットとスローなファンク・ビートをもった、一種のトリップ・ホップとも言えるだろうか。じっくりと水かさを増すようにしてけだるさが足元からあがってくる。ヴィブラフォンやフルートが麻酔のようにきいてくる。注意深く調整され、神経にもっとも心地よく削られたプロダクション。スネアは雨の音のように、その他の打楽器は物理的に身体をトントンと刺激するかのような錯覚を生む。

 クワジャズは、サンフランシスコのトラック・メイカー、ピーター・ベレンドのプロジェクトである。本作はもともとレンジャースのジョー・ナイトが運営するカセット・レーベル〈ブランチ・グループ〉からリリースされていたものだ。それが2010年。翌年〈ノット・ノット・ファン〉からヴァイナルで発表された。インディ・ダンスやシンセ・ポップ、あるいはダブやドローンのあらたな担い手たちが、ニューエイジ的な一種の効能性を軸にぞくぞくと合流する状況に、まさに同調するタイミングである。同レーベルから出直すということはそういうことでもある。

 感情が持つ細かな階調のほとんどを拾いきれるような、じつに幅のある音だ。行き届いているというのではなく、とてもゆるいというべきか。ただむやみにゆるいのでは粗雑さと区別がつかなくなるが、ピーター・ベレンドの音には細やかで深みのある人間のもつゆるさが――だから幅が――感じられる。ボーナス・トラックとして収録されている"ア・サーティン・スプラウト"は、本編のなんともけだるいヴァイブとは異なり、マーク・マッガイアの『リヴィング・イン・ユアセルフ』のように牧歌的なシークエンスを描き出している。同じくボーナス・トラックの"エレヴェイション:イレイション/ジャー・ワッド"はよりコズミックな感覚をおもてに出し、ソリッドなビート、また逆に完全にノン・ビートのアンビエント・パートもはさまれている。表情も存外ゆたかなのである。流行のインディ・ディスコ(マーク・マッガイア的にはそういう認識らしい)など〈100%シルク〉的なニュアンス、リアル・エステイトのとろとろに溶けたような、それでいて無菌的なサイケデリック・ジャムもつぎつぎと浮かびあがり、たぶんに時代性が意識されてもいる。

 本編にこうした要素が登場しないのは、ピーター・ベレントの徹底したコントロールによって作品の統一感が目指されているからか、時期的な、あるいは完成度の問題か、ともあれ抑制された色調のなかには彼の意図がある。非常に玄人的だが、ほんとうに玄人的であるからこそ、音楽を普段たしなまない人にまで届きうる「くだらなさ」をたたえている。

Attack The Block - ele-king

『アタック・ザ・ブロック』
監督/ジョー・コーニッシュ
出演/ジョディ・ウィッテカー、ジョン・ボヤーガ他
提供:カルチュア・パブリッシャーズ 
配給:アステア+パルコ
2011年 イギリス
6月23日(土)~7月13(金)
渋谷シネクイントほか、全国ロードショー!
https://attacktheblock.jp/

 エドガー・ライトのデビュー作『ショーン・オブ・ザ・デッド』といえば、音楽ファンのあいだでは間違いなく、襲い来るゾンビにDJ用のボックスから「このレコードはいる」とか「いや駄作だ」とか言いながら取り出した盤を投げつけて迎撃するという名シーンで記憶されていることだろう。実際、英国の映画雑誌『EMPIRE』が創刊20周年を記念して企画したスターが自分の一番のヒット作を自前の服で再演するという写真特集で、『ハリー・ポッター』とか『マトリックス』とか『ターミネーター』などの超ヒット作に混じって、サイモン・ペッグとニック・フロストのこのシーンが掲載されていて笑わせてくれた。https://www.empireonline.com/20/birthday-portfolio/6.asp
 『ショーン・オブ・ザ・デッド』がおもしろかったのは、ゾンビから逃げる主人公を親と同居のパラサイトやニートのダメ男たちにして、ゾンビ映画の定番"立てこもり"の場所をパブにしたことだった。80~90年代には、まだイギリスの自立精神は健在で、学校を卒業したらとっとと親元を離れてひとりで暮らすというのが当たり前と誰もが言っていたけど、最近ではもう金もないし楽だからと恥ずかしげもなく親元で暮らす若者もかなりいる。そういうなんとなく停滞したどんよりとした郊外の若者の雰囲気を丁寧にキャッチして、シニカルな笑いと一緒にゾンビ映画というジャンル・ムービーに落としこんだ。その後、ヒット・メイカーとなったエドガーはもっとメジャー感のある作品にステップアップしていき、『ショーン...』であったようなストリート感やダチの居間でだべってる感は後退する。しかし、僕を含めあのデビュー作のハチャメチャなパワーをいまだに一番愛してるというファンは結構いるのではないか。
 その、エドガー・ライトがプロデュースして、今度はエイリアン映画というジャンル・ムービーに挑戦したのが、『アタック・ザ・ブロック』だ。エイリアンものというのは、リドリー・スコットの『エイリアン』のように、閉鎖空間に恐ろしくて超強いモンスターが侵入してきて次々と仲間が血祭りに上げられるなか、どうにかしてサヴァイヴしていくというのがお決まりのパターンである。今回の設定は、南ロンドンの高層カウンシル・フラット(日本で言うところの市営住宅、県営住宅みたいなもの)を中心にした"ブロック"という閉鎖空間と、そこで息が詰まりそうになりながらも精一杯粋がって暮らしてるティーン(中学生くらい)の集団にスポットをあてて、そこに謎の凶暴エイリアンが襲ってきたら、どうなるか? という、またもや「こう来たか!」と唸ってしまうようなもの。
 監督は、もう40代半ばで若手とは言い難いが、これがデビュー作でフレッシュな感性を発揮しているジョー・コーニッシュ。彼は元々南ロンドンのストックウェル(悪名高いブリクストンの近所)出身だそうで、育った環境で見聞きしたこと+1年にも渡る綿密なリサーチで、現代ロンドンに潜むアンダーグラウンド文化や社会問題を、『グーニーズ』や『スタンド・バイ・ミー』的なキッズの成長譚と巧くブレンドさせている。


©StudioCanal S.A/UK Film Council/Channel Four Television Corporation 2011

 UKの音楽が好きなら、まず耳を奪われるのはグライム的なスタイルでぶいぶいとベースを鳴らすサントラで、ストーリーが進むにつれぐいぐい惹きつけられるだろう。この映画の公開後にイギリスで起きた暴動でも、その背景にはグライムなどのブラック音楽のシーンと重なる部分が大きいという指摘があったけども、その暴動の予言になってしまったような本作で音楽を担当してるのは、ベースメント・ジャックスである。実は、彼らのメジャー・デビュー前、たしか雑誌時代の『ele-king』の取材だったと思うが、南ロンドンの彼らのホーム・スタジオを訪れて取材したことがある。バスに揺られてちょっとやばそうなエリアに向かったそのときは全然意識していなかったが、実は彼らもずっとブリクストンの小さなクラブやバーでパーティーをやっていたし、まさによく知る地元を題材にした映画なのだ。そして、監督自身、ジョン・カーペンターが昔やっていたような電子音楽のサントラを参考にしたと言っているように、ただのクラブ・ヒットが並んだコンピみたいな必然性のない音楽じゃなく、不穏な雰囲気の演出を担う重要なサウンドの要素として成立している。
 劇中、いかにもイギリスの保守層といった風情のおばさんにモンスター呼ばわりされるキッズたちだが、年端もいかない彼ら(その大半は、貧乏人が住むというカウンシル・フラットに暮らしながら、実は中流っぽい、ふつうの親や家庭をもっている)が、犯罪に明け暮れ、出口や希望の見えないなかで徐々にディープな世界へと足を突っ込んでいってしまうという背景描写が秀逸だ。フードをかぶりバンダナで顔を隠したその出で立ちは、Hoodiesの特徴的なファッションであり、まさにロンドン暴動を引き起こした連中そっくりである。実際、あのときも、暴動にこどもが混じっている?!という話が衝撃的に伝えられたが、この映画の設定もあながち誇張しすぎと言えないと思う。
 例えば、カウンシル・フラットの中に大麻の栽培施設があって、そこを根城にしたギャング達がドラッグ売ったり爆音でトラック作ったり好き勝手やってるという、日本人から見たらギャグかと思う設定も、本当にありそうだ。僕自身、過去にこういうフラットに泊めてもらったり、友達が住んでいて遊びにいったことが何度もあるが、高級外車を乗り回す連中やどうみても怪しい奴らがたくさん目について、「職のない人や、シングルマザーとかハンディキャップのある人とか、そういう層向けの住宅じゃないの?」と聞いたら、「本来はそうだけど、実際には制度を悪用してるドラッグ・ディーラーとかも結構いる」と聞いた。そういえば、今はあるかどうかしらないが、90年代にはGrower向けの雑誌というのが普通にHMVとかマガジンスタンドに売っていて、衝撃をうけたこともある。


 都市の歪みが生んだような"モンスター"キッズが、本物のモンスターと戦うハメになって、初めて暴力、生命、仲間みたいなことを実感し、成長していくというのが本作のメイン・プロットになるが、郊外的なゆるさを背景にどこまでも笑いとペーソスで引っぱった『ショーン...』とは対照的に、ひりひりとした痛みを抱えてずっと走りづける様子は、やはりイギリスの社会的様相もだいぶ変わったことの投影であると言えるかもしれない。実際、リーマン・ショック以降の壊滅的な経済の落ち込みで、ロンドンの一等地にあった有名チェーンのショップが次々つぶれていくとか、日本以上にやばい状況がずっと続いていて、オリンピックに湧いているような外面とは裏腹にいまだにそういう暗いマグマは地下で渦巻いている。チャンネル4が昨秋スタートさせた、やはりキッズをフィーチャーした『Top Boy』というドラマ・シリーズなども、まさにそういう現代ロンドンの暗部をキャプチャーし話題となった。良識ある大人たちからは、「こんなHoodiesを描いた映画なんてとんでもない!」という反応も当然のごとくある。が、ただの説教くさいドキュメンタリーではなく、良質のエンターテインメントとして成立させながらさらにこういう「言いたいこと」を伝えてくれるという作品は希有だし、最後までちゃんと観れば、希望や感動を用意してくれた監督に拍手したくなることは間違いないのだ。


©StudioCanal S.A/UK Film Council/Channel Four Television Corporation 2011

 今回は意図的にカットしたが、サブカルや日本の文化も大好きという監督の趣味が随所に反映されて、タランティーノが絶賛したというのもよくわかる味つけもたくさんある。ダニー・ボイルの『28日後...』に言及した箇所があったり、要するにこれは、『トレインスポッティング』以降営々と引き継がれてきた英国のポップなエンタメ映画の最新最良の成果ではないか。ロンドンが好き! UKダンス・ミュージックが楽しい! という人はもちろん、もっともっとこういう作品がつくられるように、ひとりでも多くのひとに観てほしい快作だ。

Jam City - ele-king

 グライムからスタートして独自のサウンド・スタイルにたどり着いたジャック・レイサムによるデビュー・アルバム。いまやUKを代表するダンス・レーベルとなった〈ナイト・スラッグス〉からはキングダム「ドリーマ」やヘリックス「ドラム・トラックス」といった画期的なシングルが連打されているわりに、アルバムはまだエジプトリックスに続いて2枚目となる(CDには先行シングルからメイン・アトラキオンズを起用したカップリング曲も採録)。

 シングルから追ってきた人にはわかると思うけれど、「独自の」としたのは、グライムの特徴とされる重いベースは最初から強調せずに、ハットやパーカションを前景化させ、少しずつサウンド全体から丸みを取り除いて細部に至るまでソリッドに仕上げたことで、まるでグライムの骨格だけが残ったようなスタイルだからである。いわば、この10年近くハウス・ミュージックが吸収し続けたエスニック・ビートから音響的な要素をすべて剥ぎ取り、リズム・パターンだけを文脈から切り離して組み替えた状態というか。南アのクワイトが、いまやジャーマン・テクノにしか聴こえなくなってきたのとは正反対の位相にあり、発想的にはオランダのバブリングに近いといえる。グライムからハウスへのベスト・アンサーといったら大袈裟だろうけれど、ボルティモア・ビートにはじまり、バイレ・ファンキなどを経由して、いままたニュー・オリンズ・バウンスへと邁進する辺境マニアのディプロとは裏表のような位置関係にあるのかもしれない。

 そもそもグライムはUKガラージをエスニック化した音楽だし、ガラージが都会的な音楽であるためには、やはり、一定時間が経過した後で脱臭作用が必要だったとも考えられる。レイサムが「シティ」を名乗っているのはなるほど必然であり、そもそも様々なエスニシティを外縁化させたままでいられると思うほうが傲慢で、外縁化させておくポーズのためにジャム・シティを必要としたともいえる。レイサムの「気取り」は徹底しているし、そのために彼がリズム感を手離したわけでもない。むしろオフ・ビートだけで成り立っている曲もあるぐらいで、ディスコ・ミュージックがここまで複雑なリズムを獲得したことには歴史を感じてしかるべきだろう。あるいは、これは〈ナイト・スラッグス〉全体にもいえることなのかもしれないし、レーベルのボス、L-ヴィス1990のデビュー・アルバムが〈マッド・ディセント〉に提供した路線とはかなり方向性が異なっていたことでもそれはよくわかる。

 かつてレニゲイド・サウンドウェイヴは「ダンス・ノイズ・テラー」あるいは「パブリック・エネミーへのイギリスからの回答」と評されたことがある。両者を結びつけるものは、ブレイクビーツがまだ新鮮なトレンドであった時期に混沌とした音楽をつくったということしかないように思えるけれど、ここでもブラック・ミュージックに特有の騒々しさは整理され、ソリッドな質感のものに磨き上げるという転換はおこなわれていた。同じフェイクでもトーキング・ヘッズ『リメイン・ライト』に腹を立てたコニー・プランクが『ゼロ・セット』をつくったときにも似たようなことは起きていたのではないだろうか。そのような剥き出しの人工性に対する愛着が最大の魅力であり、ジャム・シティが繰り返したこともきっと同じことなのである。都市というのはどうだか知らないけれど、「都会」はまだ生きている。ジャック・レイサムはそれを証明した。そう思いたい。

 といいつつも、ハウスやテクノに溶け込もうとするエスニック・ビートにも僕はまだまだ消費意欲は掻き立てられるw。そもそも2年前にUKガラージにのめり込むきっかけをつくってくれたロスカの2作目は前作よりもかなりグライム寄りだったし、ドイツの〈ディスコB〉からはディプロへのアンサーとしては上出来のシュラフトーフブロンクス(Schlachthofbronx)『ダーティ・ダンシング』、急速に多様化を進める〈ハイパーダブ〉からはDVA『プリティ・アグリー』、プラティナム・パイド・パイパーズから〈ナイト・スラッグス〉に乗り換えつつあるシオン・ロックハート(Tiombe Lockhart)のキュービック・ジルコニア(Cubic Zirconia)『フォロウ・ユア・ハート』ほか、今年に入ってからも紹介し切れなかったものはけっこう多い。まだまだ気取らない日のほうが多いということか。

Back to Chill - ele-king

 ゴス・トラッドの『ニュー・エポック』、欧米ではかなり好意的に受け取られているようで、もうすぐ本サイトでupされるボーニンゲン(ロンドン在住の現地で評判となっている日本人バンド)のインタヴューでもさんざん語られているのだが、どうやら「トーキョーに行ったら〈バック・トゥ・チル〉を体験したい!」がロンドンのディープ・リスナーの合い言葉になっているようだ。
 さて、アメリカ・ツアーを終えたばりのゴス・トラッドも2ヶ月ぶりのホームとなる。今月の〈バック・トゥ・チル〉は7月5日、思う存分にダブステップを経験してくれ!

DATE: 7月5日
TIME: 23:00 ~ LATE
PRICE: DOOR: 3000yen/1d WF and Girls: 2000yen/1d
[All Girls Before 24:00 → FREE!!! (500yen for a drink)]
ARTISTS: GOTH-TRAD, DJ 100mado, ENA, HEAVY1, DUBTRO, DJ メメ, π, yuitty, O-konogi, CITY1, DON, and more!
https://backtochill.com/

日食どころではない、

7月25日(奇しくもよい子たちの終業式である......!)、
ふたつの巨大な惑星が衝突する!

●LIQUIDROOM 8th ANNIVERSARY 電気グルーヴ vs 神聖かまってちゃん

リキッドルームの恵比寿移転後8年目を記念したこのイヴェント、「VS」の意味するところはいまだ謎であるが、オーディエンスの年齢層や生息圏にもおそらくはいくばくかの「VS」があるはず、おもしろい撹拌が起こりそうだ! それぞれがそれぞれの時代から寒天のように押し出されてきたような批評性を帯びたればこそ、この企画はエキサイティングな予感にみちている。

出演:電気グルーヴ、神聖かまってちゃん

日時:2012年7月25日(水) 開場/開演 18:30/19:30
会場:リキッドルーム
前売券料金:5,250円[税込・1ドリンク代(500円)別途]
6月14日(木) 20:00より<https://www.liquidroom.net>にて販売開始
*先着順受付になります。受付予定枚数に達し次第、受付終了となります。ご了承ください。

問い合わせ先:リキッドルーム 03-5464-0800 <https://www.liquidroom.net

younGSoundsのアルバム「more than TV」
7月18日発売です!宜しくお願い致します。
https://1fct.net/archives/3744

percepto music lab
https://xxxpercepto.com/

ここ最近。2012年6月20日


1
キエるマキュウ - Hakoniwa - 第三ノ忍者

2
OH NO - Ohnomate - FIVE DAY WEEKEND

3
THE GENTLEMEN - The Gentlemen - MR.BONGO

4
OWEN MARSHALL - The Naked Truth - JAZZMAN

5
櫻井響 - This One - self release

6
CE$ & SCRATCH NICE - Live Now, Pay Later - self release

7
BLAQ CZA - The Dice Life - WHATEVA MUZIK

8
YOTTU - Dance Or Chill/Slow Flow - self release

9
TRONICS - Love Backed By Force - WHAT'S YOUR RUPTURE?

10
DJ MAYAKU - EP - GOLDFISH

DJ END (B-Lines Delight / Dutty Dub Rockz) - ele-king

B-Lines Delight/Dutty Dub Rockz主宰
栃木のベース・ミュージックを動かし続けて10数年。へヴィーウェイト・マッシヴなDrum&BassパーティーRock Baby Soundsystemを主宰。同時に伝説的なレコード・ショップBasement Music Recordsでバイヤーを務め栃木/宇都宮シーンの様々な下地を作った。現在はDutty Dub Rockzに所属、北のリアルなベース・ミュージックの現場を作り出すべくスタートしたパーティーB-Lines Delightを主宰している。
https://soundcloud.com/dj-end-3
https://b-linesdelight.blogspot.com/
https://duttydubrockz.blogspot.com/

宇都宮をホームに開催してきたB-Lines Delightが遂に東京に上陸! この記念すべき日にゲストに迎えるのはRob Smith aka.RSDと"野蛮ギャルド"なドラム&ベース・パーティ「Soi」よりDx!!師と兄が揃ったBLD的にこれ以上ない鉄板なメンツで送る6.30B-Lines Delight in Tokyo、よりカンペキな一夜をお約束します!
North Bass Music Movement
"B-Lines Delight" in TOKYO
2012.06.30(sat) open.24:00
@SECO www.secobar.jp
info : https://b-linesdelight.blogspot.jp/

BLDクルー、DD BlackのEPがAlterd Natives主宰EYE4EYE Recordingsより12"&Digitalでリリースされます!!リリース日及び詳細はブログで後程紹介しますので是非チェックしてください!

DJ END REWIND CHART


1
DD Black - EP - Forthcoming EYE4EYE Recordings

2
Henry & Louis feat.Prince Green - Love Like(RSD Remix) - 2Kings

3
Swindle - Do The Jazz - DEEP MEDi Musik

4
Grenier - Here Come The Dark Lights - Photek

5
ENA - Analysis Code - 7even Recordings

6
Pearson Sound - Footloose - PEARSON SOUND

7
Dubmonger - Experiments In Dub - Dubmonger

8
LHF - Keepers Of The Light - Keysound

9
VA - Shanggan Shake - Honest Jones

10
Death Grips - The Money Store - Epic

Hot Chip - ele-king

 ■以下、見出し例------------------------------

 ホット・チップも〈もしもし〉からデビューして8年が経つ。ザ・ビートルズであれば、とっくにコンサートはやらず、おまけの最後っ屁『レット・イット・ビー』を発表して解散裁判を開始している時期だ。

 サウンドと歌詞の相互作用というよりむしろ、歌詞の変化こそがこの端正に整理されたサウンドを求めたのだと言ってしまえるかもしれない。どうやら、この変化を指摘している日本語のレヴューはないようだ。

 アルバムを通してホット・チップが高らかに歌い上げているのは「プリーズ・プリーズ・ユー(お願いだから君を喜ばさせてくれ)」だ。リスナーへの応援歌。しかも、非常に啓発的で、啓蒙主義の性格が強い。

 もしくはUK的クラブ・ポップの進化論とねじくれた政治性のアクロバット、と同時に、UKガラージを横目に見ながら玄関先でお出かけ前の夫婦のチューをかまし、中産階級的前向きさであたりいち面のシニシズムにラヴラヴ度を見せつけたポエム型啓発本である。


 ■以下、本文----------------------------------

 ホット・チップも〈もしもし〉から『Coming On Strong』(「強引な振る舞い」の意)でデビューして8年が経つ。ザ・ビートルズであれば、とっくにコンサートはやらず、おまけの最後っ屁『レット・イット・ビー』を発表して解散裁判を開始している時期だが、幸いなことにホット・チップはいまだに世界をツアーで巡るし、ゆりかごから墓場まで―赤子から老人まで全人類/一生涯対応の、これ以上ないほど完成されたポップ・ソングを作り続け、5枚目のアルバムを発表したばかりだ。
 相変わらずの80年代のスムースなアップデート・サウンドとはいえ、モチーフはシンセ・ポップよりはむしろファンクやR&Bの影響が色濃くなっており、非常にスウィートなアルバムになっている。シングルカット曲"Night And Day"がプリンスの"All Day All Night"のオマージュであることはタイトルと節の引用(「make me feel alright」)とセクシャルな歌詞からも明らかだし、"Look At Where We Are"のサウンドは完全に(ホット・チップのTシャツではエナジードームを被せられている)R・ケリーだ。よく比較されていたニュー・オーダーの面影はだいぶ薄くなっている。"Now There Is Nothing"のテンポチェンジは決してビートルズほどナチュラルではないが、メロディはさながらエミット・ローズというかポール・マッカートニー以上にポール・マッカートニーに聴こえるほどで、影響といった枠から遂に抜け出し、完全にいまのポールを超えたのではないかと思う。

 2010年の前作『ワン・ライフ・スタンド』に対して、ファンからは賛否両論の声が上がっていた。クラブで安易に踊らせまいとするような批評的な態度のリズムを鳴らしてきたホット・チップ。彼らの変化球的なクラブ/ダンス・ミュージックのギミックを愉しんできた人たちにとって、デトロイト・テクノやシカゴ・ハウスからの影響が強い『ワン・ライフ・スタンド』のラフでシンプルなビートはあまりにも単調でスムース過ぎ、ゴスペルのように強調された歌声のハーモニーもダンスの邪魔だったのかもしれない(とはいえ、その予兆は2008年の『メイド・イン・ザ・ダーク』で見えていたのだが)。
 そんな『ワン・ライフ・スタンド』よりさらに歌声・メロディが強調されているにも関わらず、本作『イン・アワ・ヘッズ』が「いままでよりダンス・ミュージックになった」と数多から称賛されている理由は、歌の息がトラックとピタリと組み合わさり、リズムの構築をより強固なものにしているからだろう。それを実現に導いたのは、メンバーのソロ・プロジェクトでも引っ張りだこのエンジニアMark Ralph(マーク・ラルフ)の手腕によるところも大きいと思われる。

 しかし、本作『イン・アワ・ヘッズ』には、サウンド以上に歌詞においてかなり重要な変化が表れている。サウンドと歌詞の相互作用というよりむしろ、歌詞の変化こそがこの端正に整理されたサウンドを求めたのだと言ってしまえるかもしれない。どうやら、この変化を指摘している(少なくとも)日本語のレヴューはないようなので、ぜひここに記しておきたい。そして、なんといってもこの原稿が遅れたのは、その変化に筆者がひどく動揺して魘されてしまっていたからだ(野田編集長、すみません)。

 『ワン・ライフ・スタンド』(およびそれ以前の作品)と『イン・アワ・ヘッズ』のあいだにある決定的な違いは、メッセージを発する彼らの態度にある。

 ずっとずっとわかっていたんだ
 君は 僕の愛ある人生(マイ・ラヴ・ライフ)
 だから僕も 君のように輝けていいはずだ
"Hand Me Down Your Love"(2010)

 僕はただ 君の「一生かぎり」の相手になりたいだけなんだ
 教えて 君は 君の男の側に一生いますか?
"One Life Stand"(2010)

 前作『ワン・ライフ・スタンド』での歌詞から感じ取れるのは、恋人への真摯な愛を表明しつつも、そこに「自分は、相手のようには輝いていない」という劣等のコンプレックスが潜んでいることだ。それはレディオヘッドの"クリープ"のような自己嫌悪や諦念とも違い、コンプレックスが重要事項として歌われているのではなく、あくまで主題は相手に向けられた誠実な愛である。
 また、ルックスやサウンドを頻繁に「ナード」や「ギーク」などと揶揄されながらも、クラブ・ミュージックを意識的に分解しポップ・ソングに組み込んで8年ものあいだ歌ってきたのには、若さやセクシャルな熱狂を囃し立てる流行のダンス・ミュージックおよびそれを享受するクラバーに対する批評的な意識が彼らのなかに常に潜在し、そして、それはやはり劣等のコンプレックスに基づいたものでもあったということではないだろうか。ホット・チップ―つまり「山椒は小粒でもぴりりと辛い」というバンド名にもそれが窺える。

 しかし、この『イン・アワ・ヘッズ』で歌うホット・チップは、そんな劣等のコンプレックスなどまったく忘れてしまったか、大したことではないとタカを括って開き直ってしまったかのようだ。そんな彼らの居直りを、端正で非の打ち所がないサウンドが、恐ろしいほどなんの疑いもなくガッチリと肯定している。1曲目"Motion Sickness"(モーション・シックネス)のイントロで威風堂々と吹かれるホーンなどは、まるで巨大な戦艦に乗って海の向こうから彼らがやってくるかのようだ。ゼロ年代を経て、彼らはテン年代のインディ・ミュージック大海戦での勝利を確信しているのだろうか。それどころか、むしろ、「自分たちは勝ったのだ」と高らかに宣言しているようでもある。

 そうか もうやっていけないと、君は思ったんだね
 (中略)
 僕らは強くなってきていると思うし
 僕らが帰着すべき場所も 僕は知ってる
 (中略)
 今夜 もし君がステップを踏みたいなら
 僕も君とともにステップを踏もう
 前に向かって歩こう 歩きとおすんだ
 君はあっという間に成長してしまうだろう
"Don't Deny Your Heart"(2012)

 このアルバムに収められているのは、いまある平和と愛を享受するための音楽であって、悲しみを和らげたり、苦しみからの救済をリスナーに施すようなポップ・ソングではない。"Don't Deny Your Heart"(君の心を否定しないで)――ここにある言葉は、光り輝く壇上から降り注いでくるような、いわば勝者のメッセージに感じられる。恋人を鼓舞するような歌詞はまるでビートルズの"プリーズ・プリーズ・ミー"(「お願いだから僕を喜ばせてくれ」)を思い起こさせるが、アルバムを通してホット・チップが高らかに歌い上げているのは「プリーズ・プリーズ・ユー(お願いだから君を喜ばさせてくれ)」だ。リスナーへの応援歌。しかも、非常に啓発的で啓蒙主義の性格が強いムードが、ほぼアルバム全体に流れている。これは、いままでのホット・チップには見られなかった態度である。彼らは、はっきりと変わったのだ。

 そんな彼らの変化を、僕は易々とは受け入れられないでいる。「Parental Advisory」シールを貼られていた8年前の『Coming On Strong』を恋しく思ってしまうほどだ。「君の『一生かぎり』の相手になりたい」と愛を乞うていた人間が、なぜ相手に「僕はいままでいつだって君の恋人だったでしょう」("Always Been Your Love")と歌うことになるのか。やはり、彼ら自身が「ハッピー・ノイズ」と形容する結婚・出産がもたらした力なのだろうか。"How Do You Do"の「君が僕を目覚めさせてくれる時―それが僕のとっておき」などは、もはや出勤前の夫婦のチューの光景と変わらない。僕のような新卒就職を逃がしたばかりの独り身フリーターにはなかなか堪える。いまのホット・チップはあまりにも眩(まばゆ)すぎて、向き合うのが苦しい。

 僕は、たったいま、君の方を向こうとしている
 見てのとおり、僕は薄っぺらい人間だよ
"Motion Sickness"(2012)

 某日、野田編集長から何の前触れもなく「大統領選どう思う?」と電話で聞かれたときに答に詰まってしまったのは、その質問の唐突さもさることながら、どうも4年前に比べて盛り上がっていないように自分には感じられるからだ。アーケイド・ファイアが「爆弾がどこに落ちるか教えてくれ」と歌い、ゼロ年代最高のアメリカ映画の一本『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』においてポール・トーマス・アンダーソンが石油産業の血塗られた歴史を掘り起こしたのが2007年。そのときアメリカのポップ・カルチャーにはたしかに政治があった。それからリーマン・ショックがあり政権交代がありオキュパイがあり......この2012年、ブルース・スプリングスティーンが「We take care of our own(俺たちは自分たちで支え合う)」と言うとき、その「We」はオバマが4年前に支持者たちと繰り返していた「We can change」の「We」と異なる響きをしているように僕には聞こえる。そこにはもう政治家には頼りたくない、という拒絶がいくらか含まれている(「俺たちは自分たちで支え合う、星条旗がどこで翻っていようと」)。長引く不況やイラク戦争の「終結」の残尿感を噛み締めざるを得ないオバマ政権の(かつての)支持者たちは、4年前の熱狂を自己反省してしまっているのだろうか......。

 電話で話を聞きながら僕は、この4年ほどのジョージ・クルーニーの円熟、そして枯れと疲労感について考えていた。カウンター・カルチャーに対するビターなノスタルジーあるいはレクイエム『ヤギと男と男と壁と』(グラント・ヘスロヴ監督、09年)、資本主義の暴挙に傷つけられるか弱い共同体によるささやかな抵抗『ファンタスティック・Mr.Fox』(ウェス・アンダーソン監督、09年)、人びとが職を失い衰退していくアメリカの上空をただ飛び続けるしかない『マイレージ、マイライフ』(ジェイソン・ライトマン監督、09年)......。クルーニーはそれらの映画で、人生の黄昏に突入する中年男の侘しさと諦念を静かに受け止めるかのように立っている(あるいは、発話している)。彼がそのような境地を醸し出せる俳優にまでなったという事実は、それこそ『ER』の頃から何となく追い続けていた自分には驚きだし、客観的に言ってもゼロ年代半ばにはコーエン兄弟やスティーヴン・ソダーバーグといったハリウッドの優等生監督たちとつるんだり、『シリアナ』(スティーヴン・ギャガン監督、05年)や『グッドナイト&グッドラック』(ジョージ・クルーニー監督、05年)、『フィクサー』(トニー・ギルロイ監督、07年)といったわかりやすくポリティカルな作品の「顔」を引き受けたりしていたことを思い返せば、その緩やかだがたしかな変化に何かを嗅ぎ取りたくなってくる。「ハリウッドでもっとも重要な男」にまでなっていたはずのジョージ・クルーニーが――いまもその地位は他に譲ってはいないだろうが――、しかし映画のなかではくたびれた中年であるのはどうしてなのか?


ファミリー・ツリー
監督/アレクサンダー・ペイン
出演/ジョージ・クルーニー、シャイリーン・ウッドリー他
配給/20世紀フォックス映画
2011年 アメリカ

Official Site

 今年日本で公開された出演作二作はとくに象徴的だ。自身が監督・出演しアメリカでは昨年公開された『スーパー・チューズデー』においてクルーニーは、若くカリスマティックで、そして革新的な――同性婚を若者との討論のなかで支持するような――大統領候補を演じている。ライアン・ゴズリングが扮するその参謀は彼をはじめ信奉しながらも、彼のスキャンダルを知ってしまうことで政治の泥仕合の渦中に放り込まれ、理想を失っていく......というのは原作の戯曲を書いたボー・ウィリモンが2004年の民主党大統領予備選挙で実際にした経験から着想を得た物語ではあるのだが、ここでクルーニーは民主党内部のリーダーに対する失望感、もしくはアメリカの政治のあり方そのものへの徒労?感の表象になっているのである。それが極めて2012年的なテーマのように感じられるのは、何も劇中でクルーニー演じる大統領候補の選挙ポスターがオバマのそれと酷似しているからだけではないだろう。そこでは民主党を支持し続けることへのいくらかの疑念や、政治そのものへの疲労感が滲んでいる。現実世界では変わらずオバマ政権を支持し、資金集めのパーティ(参加費は4万ドルだそうだ)を開催するいっぽうで、クルーニーはこの2012年にオバマ(あるいは政治)に熱狂することの難しさを代弁する。
 そしてアレクサンダー・ペイン監督の『ファミリー・ツリー』では、アメリカの辺境としてのハワイを舞台にしながら、白髪のジョージ・クルーニーは人生のどうにもならなさに翻弄されるばかりだ。もちろん、それはペイン監督が描いてきた中年以降の人生の苦さについての物語ではあるのだが、そこにこれまででももっとも枯れたクルーニーがいることでアメリカの斜陽を思う。昏睡状態に陥った妻の不倫を聞かされても、怒りの行き着く場所はない。そうたぶん、いまのアメリカでは正義や理想に基づく怒りの矛先は定まらず、何となく落ちぶれていく「中年男のような」侘しさが漂っているようなのだ。けれども『ファミリー・ツリー』は、全編を緩やかに覆うペーソスと拭いきれない愛によって、枯れてゆく人生をゆっくりと肯定する。

 きわめてアメリカ的なアイコンであり続け、浮き沈みを経ながらもゼロ年代を通して申し分ないキャリアを積んできたジョージ・クルーニーはいま、誰よりも年老いていくことを受け止めているように見える......それは、あの国がゆっくりと老いていることをどこか慈しむようでもある。チョコレートのカカオの成分が舌に残るようなその後味は、じわじわとたしかに衰えていくこの国に住む我々にも覚えがあるのではないか。
 4年前のような盛り上がりはまだ感じられなくとも、秋にもなればまた政治の季節はやってくるだろう。それまでは、この哀愁に浸ることも悪くはないと僕は思う。『ファミリー・ツリー』でクルーニーは、透き通った涙を流していた。

interview with Richard Russell - ele-king


Bobby Womack
The Bravest Man In The Universe

XL Recordings/ホステス

Amazon iTunes

 一作年は詩人ギル・スコット・ヘロンの(結局は......)遺作となった『アイム・ニュー・ヒア』を、昨年はアフリカのコンゴのミュージシャンとのプロジェクト、DRCミュージックによる『Kinshasa One Two』を、ともにデーモン・アルバーンらと共同で制作しているのがリチャード・ラッセル、〈XL・レコーディングス〉の社長である。
 今年に入ってつい先日も、フレッシュ・タッチなる名義でエチオピアのミュージシャンとの共同作業の成果を12インチ・シングルとして発表しているが、リチャード・ラッセルと〈XL・レコーディングス〉はこの6月にもボビー・ウーマックの『ザ・ブレイヴェスト・マン・イン・ジ・ユヴァース(The Bravest Man In The Universe)』をリリースしたばかりだ。1960年代から活動しているアメリカの超ベテランのソウル・シンガーをポップの最前線へとフックアップしたのはデーモン・アルバーンのゴリラズだったけれど、ウーマックにとって18年ぶりのオリジナル・アルバムとなる本作『ザ・ブレイヴェスト・マン・イン・ジ・ユヴァース』は、アデルの『21』がロング・セラー中のレーベル社長の音楽愛、そして同時に英国音楽産業のプライドの高さを感じる1枚でもある。

 ギル・スコット・ヘロンに引き続き、リチャード・ラッセルは、USのブラック・ミュージックの伝説にUKのクラブ・サウンドの――ベース・ミュージック以降の――モードを注いでいる。古いソウルと更新されたビートがある。つまり、『アイム・ニュー・ヒア』とジェイミー・XXによるそのリミックス盤『ウィアー・ニュー・ヒア』の2枚と同じように、『ザ・ブレイヴェスト・マン・イン・ジ・ユヴァース』は世代に関係なく楽しめるアルバムである......などと適当なことを言ってしまいそうなほど、アップデートされたソウル・アルバムとしての完成度は高い。
 たとえばアルバムのオープニングをつとめるタイトル曲、ウーマックによる迫力満点の、宇宙を震わせるかのようなヴォーカリゼーションからはじまって、そして鋭いビートがミックスされる、この展開、わかっちゃいるけどグッと来る。ウーマックのアコースティックな響きのブルース・ギターもフィーチャーされているように、『ザ・ブレイヴェスト・マン・イン・ジ・ユヴァース』はメロウで、とてもリラックスしている。情報筋によれば、このところUKではブロークン・ビーツがリヴァイヴァルとしているそうだが、たしかに僕は本作を聴きながらニュー・セクター・ムーヴメントの最初のアルバムの陶酔を思い出した。20年前にプロディジーで一発当てた社長が、10年前に4ヒーローがやっていたようなことをいまやるというのも、歴史を知る人には感慨深いモノがあるだろう......。まあ、そういうわけで、ジャザノヴァの新作とも共通した感覚を有している。

熱心な音楽ファンは、素晴らしいアーティストの音楽を聴けばその価値がわかるものさ。そして独自性があって素晴らしいアーティストを人びとに紹介するのが僕らの役割だ。そういう役割を担うっていうのはとても名誉のあることだよ。

ボビー・ウーマックの功績、素晴らしいキャリアについていまさら言うまでもありませんが、彼をリリースした理由は、彼があなたの個人史におけるヒーローのひとりだからでしょうか? それともレーベル・オーナーとしてのあなたにとって新しい試みのひとつとして重要だったのでしょうか? あるいは、あなた個人のプロデューサーとしての試みとして重要だったのでしょうか?

リチャード・ラッセル(以下、RR):〈XL・レコーディングス〉はただこのアルバムが良いアルバムだからリリースしたいと思ったんだ、それが唯一の基準だよ。もちろんボビーは偉大な功績を持った素晴らしいアーティストだけど、それだけでなくこのアルバム自体が彼自身の最高傑作と言えるだけのクオリティでなければならなかったんだ。

レーベルの経営と音楽の制作現場への介入とでは作業や考えることが違いますが、ギル・スコット・ヘロンをやり遂げたことで、あなたのなかによりプロデュースへの情熱が燃えたぎったんじゃないですか?

RR:ギルと一緒に働くのはとても光栄なことだったし、いろいろなことを学べる素晴らしい機会だった。そして間違いなく僕自身にとって、自分がどれだけスタジオが好きかを思い出すいい機会にもなったね。

こういうプロジェクトをやっていて何がいちばん面白いですか?

RR:僕は自分でクリエイティヴなことをする機会を持つってことと、他の人びとがクリエイティヴになれる環境を提供するっていうことが大好きなんだ。そういうことが楽しくてたまらないね!

あなたの言葉でボビー・ウーマックの音楽の魅力、そして彼の人柄を説明してください。

RR:彼はとても優しくて繊細であると同時にタフで厳格でもあって、それがとてもバランスのいい組み合わせになっていると思う。とてもユニークで、惹き付けるような魅力のある人物だよ。

デーモン・アルバーンのどんなところをあなたは評価していますか?

RR:デーモンとは、アフリカ・エクスプレスと一緒にエチオピアに行ったときに知り合ったんだ。その後一緒にコンゴに行って、Oxfam(イギリス発祥の慈善事業団体)のためのプロジェクト、DRCミュージックとしてアルバム『Kinshasa One Two』を制作した。彼は素晴らしいミュージシャンだし、みんなにやる気を起こさせる、非常にカリスマ性のある人物だね。

実際に今回のアルバム制作はどんな風に進行したのでしょうか?

RR:僕らは一緒にスタジオにあるテーブルを囲んで、ボビーはアコースティック・ギター、デーモンはシンセサイザー、僕はアカイのMPCを持って、一緒にジャムをしながらアイデアを引き出していったんだ。とても良い制作の仕方だったよ。

あなた自身、スタジオでは具体的にどんなことをしているのでしょう? プログラミングも自分でやられるんですか?

RR:僕自身はMPCとロジック、そしてCDJを使うよ。僕が20年以上かけて集めている膨大な量のサンプルやサウンドのライブラリがあって、それらを自分の手で実際に操作して使っている。あとは、アメリカのFolktechという会社が作っている楽器も使っている。どれもとても面白くて、変わっているんだよ。その他には生のドラムとパーカッションも演奏するし、その場にある楽器や叩けるモノ何でも叩いて鳴らしてみたりするのも好きだね!

ボビー・ウーマックといっしょに作業してみて、とても面白かったエピソードをひとつ教えてください。

RR:ボビーは僕が〈XL〉と関わりがあるとすら知らなかったんだ。彼は、僕がデーモンの連れてきたミュージシャンだと思っていた。とても光栄なことだね!

〈XL・レコーディングス〉の主要リスナーにとってギル・スコット・ヘロンやボビー・ウーマックのような音楽家はそれほど馴染みがないだろうし、ギル・スコット・ヘロンやボビー・ウーマックの昔ながらの年配のリスナーがジ・XXやM.I.A.に夢中になっているとも思えないですよね。とても興味深い文化的なシェイクだと思うのですが、反応はいまのところどうでしょうか?

RR:熱心な音楽ファンは、素晴らしいアーティストの音楽を聴けばその価値がわかるものさ。そして独自性があって素晴らしいアーティストを人びとに紹介するのが僕らの役割だ。そういう役割を担うっていうのはとても名誉のあることだよ。

ギル・スコット・ヘロンのファンがダブステップに興味を持ったなんていう話はありますか?

RR:すべてのものは繋がっているし、人びとはみんな広い視野を持って、さまざまなジャンルの音楽を好きになることができると信じているよ。

[[SplitPage]]

僕自身はMPCとロジック、そしてCDJを使うよ。僕が20年以上かけて集めている膨大な量のサンプルやサウンドのライブラリがあって、それらを自分の手で実際に操作して使っている。

昔と同じように、いまの音楽シーンも愛していますか?

RR:僕は現在の音楽シーンが大好きだよ。驚くほどエキサイティングだし、音楽シーンっていうのはいつだってそうだ。本当に独創性のある音楽というのを探し続けることが大事だよ。

ラナ・デル・レイの起用は誰のアイデアですか? リスキーな起用とも言えますよね?

RR:〈XL〉のImran Ahmed(ヴァンパイア・ウィークエンドのマネージャー)が提案したことだよ。それまで僕は彼女(ラナ・デル・レイ)のことを知らなかった。彼女はスタジオで素晴らしい仕事をしてくれたよ、ボビーは彼女に感銘を受けていたね。でき上がったアルバムでも彼女の歌は素晴らしく聴こえていると思う。

アルバムのタイトルはあなたが付けたんですよね? どういう経緯で生まれたのですか?

RR:ボビーが書いて来た歌詞の中のフレーズで、ボビー自身それをアルバムのタイトルにしたいと思っていたんだ。

ギル・スコット・ヘロンのときのようにリミックスは当然考えてらっしゃるでしょうけど、もしも、すでにミキサーが決まっていたら教えてください。

RR:しばらくは時間をおいて、いいアイデアが出てくるのを待つよ。まずは人びとに僕らがアルバムとして作ったものを聴いてもらって理解してもらうのが大事なんだ。

〈XL・レコーディングス〉は今後もこうしたリジェンドとの共同制作を続ける予定はありますか?

RR:あまり先のことを予測はしないようにしているよ。いままで一緒にやったアーティストもみんな、もともとはそうなるとは予期していなかったしね。

実は自分は〈XL・レコーディングス〉がプロディジーの「チャーリー」がヒットしていた頃、1992年ですが、ロンドンのオフィスまで行って取材をお願いしたことがあります。たしか住宅街の坂を上ったか、下がったところあったように記憶しています。あの頃、〈XL・レコーディングス〉がギル・スコット・ヘロンやボビー・ウーマックのアルバムを出すことになるとは誰も想像できなかったと思います。しかし、あなた自身のなかには、いつかはこういうことをやりたいという夢がずっと前からあったんでしょうか?

RR:僕自身、元々ソウル・ミュージックに大して深い情熱を持っていた。その情熱が僕の血に流れているんだ。でもどの音楽のジャンルにも、何かしら好きな部分があるよ。そこに流れるスピリットが何より大事だね。

〈XL・レコーディングス〉はこの20年、なんだかんだとダンス・カルチャーと関わっていますが、20年前の良かったところ、そして現在の良いところとふたつについて話してください。

RR:いつの時代も誰かしら他と違っていてエキサイティングなものを作っている人がいるよ、いまならジェイミー・XXみたいにね。

レーベルのこの20年の歩みについてどのような感想を持っているのか話してください。

RR:昔を振り返ったりはしないよ、そしてできる限り先のことも考えないんだ。なるべくいま現在に集中して、いま自分がやっていることをやっている最中にしっかり体験するようにしている。

ここ1~2年のUKのインディ・シーンについてはどのような感想を持っていますか? ノスタルジックな空気も感じますし、ダブステップ以降のクラブ・ミュージックの勢いも感じます。

RR:どんなときも、どんなジャンルでも、必ず誰かマジカルなことをやっている人間がいるし、誰かしら純粋に独創的な人はいる。個人的には、ザ・ホラーズやジ・XXは素晴らしいと思うよ。

最後に、もういちど生まれたら、またレーベル経営をやりたいですか?

RR:いや、鳥になりたいな。彼らはすごく自由に見えるからね。


  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727 728 729 730 731 732 733 734 735 736 737 738 739 740 741 742 743 744 745 746 747 748 749 750 751 752 753 754 755 756 757 758 759 760 761 762 763 764 765 766 767 768 769 770 771 772 773 774 775 776 777 778 779 780 781 782 783 784 785 786 787 788 789 790 791 792 793 794 795 796 797 798 799 800 801 802 803 804 805 806 807 808 809 810 811 812 813 814 815 816 817 818 819 820 821 822 823 824 825 826 827 828 829 830 831 832 833 834 835 836 837 838 839 840 841 842 843 844 845 846 847 848 849 850 851 852 853 854 855 856 857 858 859 860 861 862 863 864 865 866 867 868 869 870 871 872 873 874 875 876 877 878 879 880 881 882 883 884 885 886 887 888 889 890 891 892 893 894 895 896 897 898 899 900 901 902 903 904 905 906 907 908 909 910 911 912 913 914 915 916 917 918 919 920 921 922 923 924 925 926 927 928 929 930 931 932 933 934 935 936 937 938 939 940 941 942 943 944 945 946 947 948 949 950 951 952 953 954 955 956 957 958 959 960 961 962 963 964 965 966 967 968 969 970 971 972 973 974 975 976 977 978 979 980 981 982 983 984 985 986 987 988 989 990 991 992 993 994 995 996 997 998 999 1000 1001 1002 1003 1004 1005 1006 1007 1008 1009 1010 1011 1012 1013 1014 1015 1016 1017 1018 1019 1020 1021 1022 1023 1024 1025 1026 1027 1028 1029 1030 1031 1032 1033 1034 1035 1036 1037 1038 1039 1040 1041 1042 1043 1044 1045 1046 1047 1048 1049 1050 1051 1052 1053 1054 1055 1056 1057 1058 1059 1060 1061 1062 1063 1064 1065 1066 1067 1068 1069 1070 1071 1072 1073 1074 1075 1076 1077 1078 1079 1080 1081 1082 1083 1084 1085 1086 1087 1088 1089 1090 1091 1092 1093 1094 1095 1096 1097 1098 1099 1100 1101 1102 1103 1104 1105 1106 1107 1108 1109 1110 1111 1112 1113 1114 1115 1116 1117 1118 1119 1120 1121 1122