「K Á R Y Y N」と一致するもの

interview with Ed Motta - ele-king

 人間ウーファーとでも言いたくなるようなダイナミックな歌声の巨漢、エヂ・モッタは1971年、ブラジル・リオ生まれ。ブラジルを代表するソウルマン、故チン・マイアの甥にあたり、子どもの頃からソウルやロックを聴いて育った。88年、17歳でファースト・アルバムを発表。ソウル~ファンク系のシンガー・ソングライターとして人気を確立した。
 97年、70~80年代のソウル、ファンクを散りばめた名盤『Manual Prático para Festas, Bailes e Afins Vol.1(パーティー・マニュアル)』が日本でも発売された。2000年代には Mondo Grosso の『MG4』、坂本龍一がジャキス&パウラ・モレレンバウム夫妻とのユニット、Morelenbaum2/Sakamoto でアントニオ・カルロス・ジョビンの名曲をリオで録音した『Casa』にゲスト参加した。
 「俺がブラジル音楽を聴き出したのは1992年以降に過ぎない。でも聴き始めてからレコードをコレクションしまくり、今では全部持ってるぞ(笑)」と豪語。数万枚のレコード・ライブラリーはブルース、ソウル、ロック、ジャズ、映画音楽、クラシック、そしてブラジル音楽など広範囲に及び、日本のジャズ、シティ・ポップのコレクションも豊富だ。
 自身の音楽も2000年代以降、幅を広げてジャズや映画音楽などを取り入れ、2013年のアルバム『AOR』は日本でもヒット。同年の来日公演では山下達郎の「Windy lady」も歌った。
 50代を迎えたエヂ・モッタが10月20日、世界同時リリースした最新作が『Behind The Tea Chronicles』。全曲、エヂが作詞作曲し(歌詞は英語)、リオを中心にデトロイト、プラハでもレコーディングを行なった。彼の音楽の多彩なバックグラウンド、映画に対する愛と知識などを反映した、美食家エヂ・モッタの真髄ここにあり!と言える新作だ。メール・インタヴューで全曲についてコメントしてくれたので、鑑賞の参考にしてほしい。

レコード・コレクターとして、僕はこの数年間、実に多くのことをリサーチしてきた。この趣味は、毎日人生について教えてくれるんだ。

『Behind The Tea Chronicles』からは、R&B/ソウル、ジャズ、ブルース、フィルム・ミュージック、AOR、そしてスティーリー・ダンの音楽など、さまざまな要素が聴き取れる。君が書いた歌詞が映画のストーリーのようであることも含め、フィルム・ミュージックの要素が強いと感じた。コロナ禍で外出できずにいた期間、家で多くの映画を見ていたことの影響がある?

エヂ・モッタ(以下EM):音楽以外にも、僕はティーンの頃からずっと映画に夢中で、80年代後半には名作映画のファンジンを自主制作していたんだ。僕は妻のエヂナ(注:漫画家、イラストレイター)と一緒に、以前は毎晩、映画を2本、見ていた。だから映画は僕にたくさんの情報と感情を与えてくれるし、それは僕の音楽制作に繋がっているよね。レコード・コレクターとして、僕はこの数年間、実に多くのことをリサーチしてきた。この趣味は、毎日人生について教えてくれるんだ。

約3年に及ぶコロナ禍はあなたの音楽、そしてこのアルバムの制作プロセスに何か影響を与えた?

EM:もともと僕は、基本的に自宅にいるんだ。本当にたまにしか外出しないから、僕の生活はそもそもロックダウンのような感じでね。このアルバムのいくつかのパートを録音したスタジオも家の2階にあるし、本、映画、ピアノ、ワイン、僕の大好きなものは全部家の中にあるからね。

アルバムの制作プロセスについて聞きたい。まずベーシックなレコーディングをリオ郊外の自然に囲まれた環境にある、ホシナンチ・レーベルのスタジオで行なった理由は? ちなみにホシナンチ・レーベルは近年、レチエリス・レイチのアルバムなどを通じて日本でも注目されている。

EM:これは実務的な理由でホシナンチ・スタジオは、最近ではブラジルのベストのスタジオなんだ。僕はいつも、どうやったらベストのサウンドが録音できるのかを研究して、彼ら(注:ホシナンチのスタッフ)はオーディオ・マニアで、たくさんのマイクを所持していて、素晴らしい録音機材も揃っている。おかしな話だけど、都会のほうが好きな僕にとって、自然の中で過ごすのは結構おかしな気持ちになるのだけど、それでも良いサウンドで録音したいからね。

ストリングスの録音をプラハのスタジオで、ホーンズの録音をデトロイトで行なった理由と、手応えは?

EM:ミュージシャンがどこを起点に活動しているかってことだね。アメリカのビッグ・バンドの伝統とヨーロッパのクラシック音楽、それぞれのミュージシャンのサウンドから力を借りたかったんだ。

USAで行なったバッキング・ヴォーカルの録音に、ポーレット・マクウイリアムス、フィリップ・イングラムが参加したことが興味深い。彼(彼女)とは録音の前から知人だった? それともカマウ・ケニヤッタの紹介?

EM:私は彼らのことを、彼ら自身のプロジェクトで知ったんだ。ポーレットはたくさんの名作をレコーディングしているし、フィリップの Switch は素晴らしいバンドだよね。カマウはヴォーカルだけでなく、ホーン・セクションも手伝ってくれた。僕は彼らがとても複雑なハーモニーを驚くべき仕事の速さで録音してくれて感動したよ。素晴らしいね! とてつもないよ!

これから、各曲についてコメントしてほしい。まず “Newsroom customers” には、君が書いた歌詞にストーリーがあり、編曲は映画音楽を想像させる。参考にしたものは?

EM:音楽的にはブラジリアン・ミュージックらしいコード・チェンジとパーカッションが目立つ、ソウル・ミュージックとブラジル・ミュージックをブレンドした楽曲だと思っている。ストリングスは、僕が1990年にリリースしたセカンド・アルバムでとても重要な役割を果たしたんだけど、今回もストリングスを録音する機会を得たことが光栄だったし、楽しめたよ。この曲のストーリーは、偉大な作家になる才能を持っていたライターがマフィアとつるみ始めるようになる話だ。この曲でのマフィアは、アート・ビジネス、音楽、映画などのことを描写している。この曲を作るにあたって、僕が好きなふたつの映画、ビリー・ワイルダーの『地獄の英雄(Ace In The Hole)』、アレクサンダー・マッケンドリックの映画『成功の甘き香り(Sweet Smell Of Success)』(注:共に50年代のUSA映画)からも影響を受けていると思うよ。

歌詞がSF的な “Slumberland” の発想は?

EM:“Slumberland” の名前はアニメーション映画の創設者であるウィンザー・マッケイのコミック・ストリップ作品『夢の国のリトル・ニモ(Little Nemo In Slumberland)』から来ているんだ。「彼らはスウィートな妖精のように塔の中でタバコを吸って、毎日繰り返される悲痛な “善意の誇示”」という歌詞に、現実離れしていてシュールな雰囲気が漂っていてね。ミックスを終えたとき、チャールズ・ステップニーやボーンズ・ハウの気持ちになったよ。サンシャイン・ポップだ。

僕が音楽を制作するときに、スティーリー・ダンはいつも側にいるんだ。アレンジやミックスの段階でかなり影響を受けていると思う。

“Safety far” のファンキーなサウンドの参考にしたものは?

EM:ノーマン・コナーズ、スティーヴィー・ワンダー、リオン・ウェアらの、面白いコード・チェンジを使って洗練されたソウル・ミュージック。この曲は既に20万回以上、Spotify でプレイされていて、とても嬉しいね(注:再生回数は2023年10月初頭現在)。

“Gaslighting Nancy” のサウンドは、スティーリー・ダンへのオマージュ? それだけではなく別の音楽の要素もあるように思う。

EM:この曲は、かなりボサノヴァのコード・チェンジを利用しているんだ。特にブリッジでね。アントニオ・カルロス・ジョビン風だよ。でも僕が音楽を制作するときに、スティーリー・ダンはいつも側にいるんだ。アレンジやミックスの段階でかなり影響を受けていると思う。リリックについては、ジョージ・キューカーの映画『ガス燈(Gaslight)』に関係があるね。

ミシェル・リマ(ピアノ他)とふたりだけで録音した “Of Good Strain” が、アルバムの中で効果的だ。日本で言えば “ワビ” “サビ” のような。この曲のコンセプトは?

EM:「wabi」「sabi」という用語を知れて嬉しいよ! そうだね、これはミニマリズムだ。この曲はブロードウェイ・ワルツで、フランク・レッサー、サイ・コールマン、ハリー・ウォーレンといったレジェンドな作曲家たちから影響を受けたよ。曲のストーリーは、手塚治虫のアダルトなグラフィック・ノベルに関連しているかもしれないね。現実的でファンタスティックだ。

“Quatermass has told us” は歌詞もサウンドもSF的だ。この曲のコンセプトは?

EM:『クウェイターマス』は、BBCで最初に放送されたサイエンス・フィクションのテレビ・シリーズで、最終的にはカラー放送で3つの映画が公開されたんだ。アルバムの中で最もファンキーな曲で、いちばん複雑なコード・チェンジが繰り広げられる。僕の中ではジェネシスのアルバム『Wind And Wuthering』と、坂本龍一のコードが偶然、出会ったかのような曲だ。

“Buddy longway” でのエヂ・モッタは、ブルースマン?

EM:そうだよ! 田舎のブルースマンさ。僕はキャリアの最初の頃からブルースマンが大好きでね。サン・ハウス、ブッカ・ホワイト、スキップ・ジェイムスとか。“Buddy longway” は、70年代のフランスのコミックのキャラクターなんだ。

“Shot in the park” も、1本の映画を見ている想いにさせられる曲だ。コンセプトは?

EM:この曲は、不良のボーイフレンドにキャリアを台無しにされた歌手のことを歌った、とてもフィルムノワールな曲だ。音楽的にはドナルド・フェイゲンの『Nightfly』へのラヴ・レターだよ。このアルバムでのブルースの使われ方は本当に見事で、音楽に対する私のヴィジョンを変革させたんだ。

“Deluxe refuge” も映画のような歌詞と曲で、サウンドにはサンバ・ジャズの要素も感じる。この曲のコンセプトは?

EM:タブラを含んだエレクトリック・ジャズ・サンバで、『刑事コロンボ』に登場する宝石窃盗団の物語のように、冒険的なムードで楽曲を盛り上げているよ。

“Tolerance on high street” は “bluesy jazz cinema” な曲だ。コンセプトは?

EM:この曲もブロードウェイから影響を受けた。ホーギー・カーマイケルとハロルド・アーレンは僕のお気に入りの Blue-Jazzy コンポーザーで、ふだんからよく聴いている。彼らのクラシックである “Skylark” や “Blues In The Night” をよく歌っているよ。僕はこの曲に30s~40sのムードを感じるかな。

ピアノを弾きながら歌う “Confrere’s exile” の歌詞が印象的だ。この曲(歌詞)に、どんなメッセージを込めた?

EM:この曲は密度、感情、複雑さが詰まった、アルバムの中でいちばん奥深い曲だね。リリックはたぶん成熟についての僕の詩的なヴィジョンで、このリリックは中性的な雰囲気を作り出すのが狙いだったんだ。

アルバム・タイトル『Behind The Tea Chronicles』について。約10年前、リオの君の家を訪れたとき、君が「ワインのほかに最近、Tea をコレクションしている」と話していたことを覚えている。一口に Tea と言っても、日本の “お茶” を含め世界中にさまざまな種類の Tea があるが、中でも君の好きな Tea は、どの国のどんな Tea?

EM:ヴェージャ・オンライン(注:ブラジルの大手サイト)でお茶とワインについてのコラムを連載していたことがあって、エミリアーノという有名なホテルのために莫大なお茶のリストを作ったこともある。日本のものだと玉露がお気に入りで、eBay で複合されたヤツを見つけたこともある。他には台湾の Oolong High Mountain というお茶が大好きだね。

ブラジルを代表するレコード・コレクターとして、最近はどんな音楽を中心に dig している? 国籍、ジャンルを問わず、思いつくままにあげてほしい。

EM:数え切れないほどたくさん聞くよ。これが最近のベスト10かな。

1) Mariano Tito - Mariano Tito Y Su Orquestra De Jazz (ARGENTINA)
2) Lasse Färnlöf - The Chameleon (SWEDEN)
3) Ion Baciu Jr. - Jazz (ROMENIA)
4) Claudio Cartier - Claudio Cartier (BRASIL)
5) The Galapagos Duck - The Removalists OST (AUSTRALIA)
6) Michel Sardaby - Night Cap (MARTINIQUE)
7) Fernando Tordo - Tocata (PORTUGAL)
8) Pacific Salt - Jazz Canadiana (Canada)
9) Louis Banks - City Life (INDIA)
10) Heikki Sarmanto Sextet - Flowers In The Water (FINLAND)

最後に、日本のジャズ、シティ・ポップについて。最近、知って、気に入ってる音楽家・歌手は?

EM:日本の音楽はいつも僕のスピーカーから鳴ってるね。これがトップ5かな。

1) 鷺巣詩郎 with Something Special - Eyes
2) 松本弘&市川秀男カルテット - Megalopolis
3) 濱田金吾 - Midnight Cruisin'
4) 丸山繁雄 - Yu Yu
5) ゲルニカ - 電離層からの眼差し

Chihei Hatakeyama - ele-king

 畠山地平の『Hachir​ō​gata Lake』を毎日繰り返し聴いている。音を流すだけで、周辺の空気が変わり、「環境」について意識的になるし、その蕩けるような音の持続が心身のコリを解してくれる。個人的な感覚で恐縮だが、どこか良質なシューゲイザーのアルバムを聴いているような音の快楽があった。
 要するに日々の疲労のなか、自分を労わるように聴いてしまうのだが、秋田県にある「八郎潟」という湖を主題にしたアルバムが、なぜ聴き手の心身を癒すような、よりパーソナルな効能を持っているのだろうか。そこがとても重要に思えた。おそらくそこには90年代以降の「アンビエント・ミュージック」の大きな展開が内包されているのではないかと。

 90年代中期から00年代中期のあいだに「アンビエント・ミュージック」は、「環境のための音楽」から「環境についての音楽」という面が加わったという仮説を付け加えてみたい。かのブライアン・イーノが提唱したアンビエント・ミュージックの概念から離れつつ(拡張しつつ)、環境について問い直しつつ、「心身に効く」音楽の方へと接近していったように思えるのだ。いま思えば、この時期にアンビエントのニューエイジ化ともいえる事態が進行したのかもしれない。
 そうして生まれた00年代以降の「新しいアンビエント・ミュージック」は、環境音もドローンも環境それ自体を再考するような音楽であったとするべきだろうか。同時に音楽スタイルは、淡いドローンを基調としつつ、クラシカルからフォーク、ミニマル・ミュージックから電子音楽まで、さまざまな音楽が混合し溶け合っていくようなものとなっていった。上記のような意味でも、アンビエント・ミュージックにおいてスターズ・オブ・ザ・リッドは重要かつ偉大な存在であったといえる。加えてイックハル・イーラーズやシュテファン・マシューの初期作品もまた重要なアルバムである。

 そして畠山地平のアンビエント・ミュージックは、まさに「環境についてのアンビエント」ではないかと私は考える。彼の音楽には彼自身の旅の記憶、つまり環境への記憶が音楽のなかに溶け合っている印象があるのだ。これは畠山の多くのリリース作品に共通する傾向だが、本作はそれがさらに高みと深みを獲得しているように思えた。同時に彼の音には体のいたるところに届くような圧倒的なまでの心地よさがある。
 彼の活動歴は長く、作品も多岐に渡るが、なかでも本作は、そんな環境と心身に効く音楽として素晴らしい出来栄えを示していた。傑作といっても過言ではない。畠山は、これまで老舗〈Kranky〉やローレンス・イングリッシュが運営する〈Room40〉、自身が主宰の〈White Paddy Mountain〉などの国内外の電子音楽レーベルからアルバムを多くリリースしてきた。本作『Hachirogata Lake』は、そんな彼の作品の中でも一際、重要な指標になり得るアルバムである。

 『Hachirogata Lake』は、秋田県にある湖「八郎潟」、その草原保護区、尾形橋、排水路などでフィールド・レコーディングした音をモチーフに、彼ならではのドローンを交錯させていく実に美しい作品である。リリースは、オランダの電子音楽レーベル〈Field Records〉。このレーベルは Sugai Ken の「利根川」もリリースしており、日本の「湖」をテーマにしたシリーズの2作目だ。「日本とオランダが共同でおこなった水管理の歴史を探求するシリーズ」だという。
 じっさい八郎潟は、「第二次世界大戦後に、オランダ人技師 Pieter Jansen と Adriaan Volker の協力を得て、政府が大規模な干拓工事をおこない、1977年の工事完了後、周辺地域から植物が繁殖し、鳥類をはじめとする野生生物の種類も増え、新たな生態系が確立された」というのだ。オランダと日本の「水」をめぐるこんな素晴らしい歴史を知ることができただけでも、このアルバムを知る/聴く意味はあった。
 もちろん、先に書いたように畠山地平の音楽自体も大変素晴らしいものだ。畠山のギター・サウンドとドローンがレイヤーされ、ロマンティックな音世界が美麗に折り重なり、ずっと聴き込んでいくと、たとえようもないほどの心地よさを得ることができた。単にシネマティックというのではない。雄大・壮大であっても人の心に染み込むようなサウンドスケープなのである。身体に「効く」音なのだ。
 全9曲が収録されたアルバムだが、どの曲も環境音とギター、ドローンが溶け合うように交錯し、記憶の中に現実が溶け合っていくような感覚を得ることもできる。中でも二曲目 “水に鳥 / Water And Birds” に注目したい。水の音、鳥などの野生動物のフィールド・レコーディングされた音からはじまり、次第に音楽的な要素、アンビエントなドローンやギターなどがレイヤーされ、やがて環境音は消え去り、畠山のサウンドのみが時間を溶かすように流れ続ける。とにかく冒頭の水の音からしてアンビエントのムードを醸し出している。
 「八郎潟」という湖(の音)と、その歴史、その場所でフィールド・レコーディングした畠山の記憶が交錯し、融解し、ひとつの「アンビエント=音楽」に生成されていったとでもいうべきか。このアルバムに限らずだが、畠山地平の音楽にはいつもそういう溶け合っていく記憶のような音楽のような感覚がある。
 同時に畠山の音はとても気持ちが良い。聴いていると、あまりの心地よさに意識が遠のいてしまうそうになるほどである。この深い「癒しの感覚」は何か。彼の音楽が環境と身体という具体的なものからはじまっていることに起因するのだろうか。
 いずれにせよ『Hachirogata Lake』は、湖の「環境」を音として感じ、心と体に心地よさを与えてくれる最良のアンビエントである。
 じじつ、私はこのアルバムを聴いているとき、日常の疲れが溶けていくような感覚を得た。日々の暮らし、生活の中でも大切なアルバムになるだろう。

liQuid × CCCOLLECCTIVE 中野3会場回遊 - ele-king

 「死ぬまで遊ぼう!!!」

 AROW(fka Ken Truth)が最後に放った飾り気のない一言。それを受け彼を抱き締める拳(liQuid)。電池切れ寸前まで走り抜いたふたりの主催者の素の人間くささが表出して、音楽は鳴り止む……そんな実にありふれた幕切れを迎えたこのパーティは、ありふれているからこそ特別な一夜として記憶に焼き付いた。平日も休日も音楽について考えてばかりだと「あー楽しかった」で終われる日も次第に目減りしていってしまうものだけど、この日ばかりは100%の純度で、スカっとした感覚のまま走り切ることができた。まずはそこに純粋な感謝を。

 2021年に旗揚げされ、トレンドの潮流を汲みつつ独特の違和感をブレンドしたオーガナイズを続けるプロモーター・拳(こぶし)によるパーティ・シリーズ〈liQuid〉と、2010年代末にコレクティヴ〈XPEED〉を立ち上げ現行インディ・クラブ・シーンの潮流をいち早く築き上げた立役者・AROWが新たに始動したコミュニティ〈CCCOLLECCTIVE〉初の共同企画としておこなわれたのが、この「中野3会場回遊」だった。なお同日、世間ではTohji率いる〈u-ha〉とコラボレーション開催された「BOILER ROOM TOKYO」やゆるふわギャングによる「JOURNEY RAVE」などのビッグ・パーティが各地で開催されていたが、それらと一見同質のようで全くの異物である、人と人との有機的なつながりに基づく営みであったことも印象深い。

 総計30組以上が知名度やシーンを越境して混ざり合う特異点となったこの日、メインステージのheavysick ZEROではアンビエント~ノイズ~エレクトロニカ~デコンストラクテッド(脱構築)・クラブといった実験性の強い電子音楽や、トランス~ジャングル~ゲットー・テック~レフトフィールド・テクノなどの異質さを備えたクラブ・ミュージック、レゲトンやトラップ、ダブステップなどバウンシーな熱気に下支えされたストリート・ミュージックが2フロアで同時多発的にプレイされ(B1Fではマシン・ライヴも!)、サブ・フロアとなる2022年オープンの小箱・OPENSOURCEと〈Soundgram〉主催DJ・PortaL氏が営むバー・スミスではハウシーなクラブ・マナーを下地にしつつジャンルレスな音楽がスピンされ続けた。

 無論、出演者単位で切り取るべき素晴らしいアクト、素晴らしい瞬間はいくつもあった。国内Webレーベルの筆頭〈Maltine Records〉からのリリースも話題となったDJ・illequalの希少なライヴが見せた激情と繊細さのコントラスト、世界的に活躍しながらも日本のロードサイドの慕情をこよなく愛する電子音楽家・食品まつりa.k.a FOODMANが〈ishinoko 2023〉帰りの足で披露した戦慄の前衛サイケデリック・ドローン(これはかなり怖かった)、かつて2010年代後半にアンダーグラウンド電子音楽シーンを築いたDIYレーベル〈DARK JINJA〉を率いたShine of Ugly Jewelのゴシックなレイヴ・セットなど、副都心エリアの小箱というスケール感を大きく超えたギグが同時多発的に各ヴェニューで繰り広げられていた。知らない人は知らないが、知っている人には垂涎のラインナップ。いま、クラブ――けっしてビッグ・ブランドの支配下にない、人の息遣いがすぐそばに在るインディ・クラブ――を追いかけているすべてのユースは、このタイムテーブルを前に「他会場の様子を覗きに行きたくても行けない!」というアンビヴァレントな悩みに苛まれたことだろう。

 けれど、そういったアーティスト個々の表現にフォーカスするよりは、なんとなく全体を取り巻くムード自体の方にエポックな一時があったように思える。スミスでのオープニングDJをきっかり128BPMで果たしてからはひたすら3拠点を駆けずり回り、フロア・ゾンビとなって朝を迎えた身としては、羽休めに立ち寄ったヴェニューをソフトなサウンドでロックしていた初めて出会うDJの所作や、移動中偶然会った友人と公園で過ごす10分限りのチルタイム、夜明け前の空のあの群青色、フロアの熱狂を尻目に閑散としたバーで頼んだ鍛高譚(ソーダ割り)の味……そうした合間合間に訪れるエア・ポケット的な一時がただ愛おしかった。フロアの内にも外にも色濃くクラブ的な体験が根付いている、そんな極上の遊び場を20代の我々が自力で作り上げた、という実感も含め、忘れられない高揚感に包まれた。

ちなみに、朝7時近くまで続いたパーティの終盤には、前述した複数のイベントから流れてきたユース・クラバーもいつしか合流してきていた。「みんな」というのは実に恣意的な括りであり、現象を俯瞰するには適さない表現だが、そこには最後、たしかに「みんな」がいてくれた。その事実も、ただただ嬉しいことで。

 パーティの開放感はそのままに、各々が隠し持つ美意識がラフな形であけすけに表出してゆくような美しい一幕が、3つの拠点で同時多発的に展開されていく。それは市井の人々の暮らしを切り取って提示する群像劇のように。生活と地続きであり、音楽シーンを未来へと後押しするあらゆるインディペンデントな営みを「ハシゴ」という体験とともに凝縮する、というのがおそらく裏側にあるコンセプトなのだけど……そんな説明も野暮かもしれない。とにかくめちゃくちゃ楽しくて、めちゃくちゃ刺激的だった、みたいな。もう、それに尽きる。最高の夜だった。世のさまざまな不和を打ち破るには、アクチュアルに「死ぬまで遊ぶ」ことと本気で向き合い続けるしかないと改めて痛感した。

 たぶん、なにかを粛々と続けていけば、どこかで別のなにかが生まれて、潮目が変わっていく。そんな絵空事を馬鹿正直に信じて日々を紡ぐ覚悟を無意識のうちに持っている人々が、中野の小箱に(少なく見積もっても)160名以上が集まったというのだから、それは感動的な事実なのではないだろうか?(世代的にはやや外れた年頃の自分ではあるが)我々ユース層が大人たちに「Z」と十把一絡げに括られることへの抵抗感は、やはりこうした場を知らない層への反発から起こるものだろう。だって、そんな括りでは説明できない営みが、この国の各地で日々、ハレでもケでもない夜として確実に存在しているのだから。そう、遊び場に必要なのは純度のみ。いつの時代も人々が追い求めるのはピュアネスだろうと僕は信じている。フロアは暗く、クラブ文化の未来は明るい。

追記:本パーティについて一点だけ文句をつけるとしたら、それはフォトグラファーやビデオグラファーといった記録媒体を操るプロフェッショナル(ないしはプロを超越したアマチュアの才人たち)を迎え入れなかったことにある。本記事の執筆中、自身のカメラロールを見返してもそこにあったのは数本の動画のみで、写真の用意に窮する事態となった(オーガナイザーふたりの笑顔は、iPhoneのスクリーン・ショットで無理やり用意したもの)。

 そこで、InstagramやTwitter(現X)の各地に「なにかフロアの感じが伝わるような写真を送ってください!」と呼びかけてみたものの、寄せられたのはパーティの終わりごろに訪れた青年から送られてきた画素数の粗い1枚のみに留まった。つまり、そう、これは……「ナイス・パーティ」だったことを決定的に証明する事実でもある、ということ! アーカイヴという行為がここまでイージーとなったこの時代に、デバイスの存在を失念させるほどの体験を与えてくれたふたりに改めて謝辞を送る。
 AROW、拳、heavysick ZERO、OPENSOURCE、スミス、そしてすべての来場者と出演陣へ。過去/現在/未来を繋いでくれてありがとう。でも、あくまでここはスタート地点にすぎない。満足してなんかいられない。まだまだゴールしちゃいけない。そうでしょ?

※以下はパーティーと主催コレクティヴについての概要です

liQuid × Cccollective 中野3会場回遊

2023/09/30(sat) 22:00
at heavysick ZERO / OPENSOURCE / スミス

▼heavysick ZERO

B1F

LIVE:
Deep Throat
illequal
Misø
食品まつりa.k.a FOODMAN

DJ:
電気菩薩(teitei×Zoe×DIV⭐)
DJ GOD HATES SHRIMP
Hiroto Katoh
ippaida storage
PortaL
Shine of Ugly Jewel

B2F

AROW
Egomania

KYLE MIKASA
London, Paris
MELEETIME
Rosa
Sonia Lagoon

▼OPEN SOURCE

AI.U
ハナチャンバギー速報
Hue Ray
DJsareo
テンテンコ

▼スミス

かりん©
Hënkį
kasetakumi
kirin
kiyota
mitakatsu
NordOst
shiranaihana

『liQuid』
2021年より東京でプロジェクト開始。オーガナイザー・拳(こぶし)の音楽体験をもとにHIPHOPからElectronicまで幅広く取り込み、ジャンルやシーンに捉われない音楽イベントのあり方を模索している。PUREな音楽体験/感動を届けることに重きを置き、オーバーグラウンドからアンダーグラウンドまで幅広い層の支持を集めている。
Instagram : https://instagram.com/liquid.project_

『CCCOLLECTIVE』
2022年末に始動した〈CCCOLLECTIVE〉は、有機的な繋がりを持ったオープンな共同体を通して参加者に精神の自由をもたらすことを目標として掲げている、自由参加型のクリエイティヴ・プラットフォームである。これまで『Orgs』と題したパーティを下北沢SPREAD、代官山SALOONにて開催。また、2023年8月からは毎月最終水曜日の深夜に新宿SPACEにて同プラットフォーム名を冠したパーティを定期開催中。シーンを牽引するアーティストらを招き、実験と邂逅の場の構築を試みている。
Instagram : https://instagram.com/cccollective22

Speaker Music - ele-king

 また1人、ブラック・ミュージックの優れた才能が宇宙に向かっている。サン・ラーやURなど地上に公平なパラダイムが見出せないミュージシャンが宇宙に独自のヴィジョンを投影する系譜はさらに先へと伸びようとしている。アメリカの黒人たちを取り巻く状況が好転せず、ブラック・ライヴス・マターを頭から非難したキャンディス・オーウェンズのようなオピニオンが力を持つことでさらに悲観的になっているということだろうか。スピーカー・ミュージックことディフォレスト・ブラウン・ジュニアが4年前にケプラと組んだコラボレーション・アルバムのタイトルは『黒人であることの対価は死(The Wages of Being Black is Death)』(19)というもので、対価(Wage)は肉体労働に限定された報酬の意。それこそ『こき使われて死ぬだけ』というタイトルをつけたわけである。このことはさらに翌年からの新型コロナでエッセンシャル・ワーカーの死亡率という具体的な数字にも表れ、『別冊ele-king アンビエント・ジャパン』で取材したチヘイ・ハタケヤマもカリフォルニアに行くと「あちこちにブラック・ライヴス・マターのステッカーが貼ってあるけれど、エッセンシャル・ワーカーとして働いているのは黒人しかいない」という光景として認識できるという。スピーカー・ミュージックのセカンド・アルバム『Black Nationalist Sonic Weaponry』(20)はそうしたブラック・ライヴス・マターの動きをフィールド録音し、ドキュメンタリーとしての側面も併せ持っていたものの、21年にブラック・ライヴス・マターの幹部であるパトリッセ・カラーズらが寄付金を着服して豪邸を手に入れていたことが報道されてからは右派だけでなく左派からも風当たりが強くなり、評価はかなり流動的な様相を呈している。また、ブラック・ライヴス・マターの副作用として警官になろうという人が全米で減少傾向にあり、警官の数がどこも少なくなっているのをいいことにこのところブラック・ライヴス・マターのデモがある時を狙ってカリフォルニアやフィラデルフィアで不特定多数のフラッシュデモが商店の打ちこわしや略奪を繰り返していることは日本のニュース番組でも報道されている通り。店舗を閉めざるを得なくなった経営者からはブラック・ライヴス・マターのデモさえなければ……という逆恨みの声も。一方で昨秋、キャンディス・オーウェンズの知名度を引き上げることに一役買ったカニエ・ウエストは「ホワイト・ライヴス・マター」と書かれたTシャツを着てファッション・ショーに出たことでほんとに人気がなくなってしまった。最近のカニエ・ウエストはビアンカ・センソリと籍を入れたことも含め宗教的な話題ばかりになってしまった。

 『Black Nationalist Sonic Weaponry』はブラック・ライヴス・マターをメインに扱ったアルバムではなく、彼の政治的な主張はアメリカの産業構造やマルクス主義など歴史性を問うものが多く、それらが斬新なサウンドと組み合わせられることで初めて意味を持つアルバムだった。耳新しいと感じたサウンドのなかではハーフ・タイムとドラム・ファンクを組み合わせたような独特のドラミングが素晴らしく、これによってベース・ミュージックに新たな地平が切り開かれたことは確か。『Black Nationalist Sonic Weaponry』と前後してリリースされたディフォレスト・ブラウン・ジュニア名義『Further Expressions Of Hi-Tech Soul』(20)や4曲入りの『Soul-Making Theodicy』 (21)でもそのドラミングはさらに中心的な役割を果たし、シンコペーションの多用を存分に楽しませてくれた。そして、3年ぶりとなった3作目のフル・アルバム『Techxodus(テクノと大量脱出の合成語)』にももちろんこのフォーマットは受け継がれ、2曲目から4曲目は同系統の曲が並べられている。比較的、安心して楽しめるパートである。スピーカー・ミュージックのデビュー・アルバム『of desire, longing』(19)では、このドラミングはまだ大きな役割を与えられていず、サウンドの基調をなすのはゆらゆらとどこか幽霊めいたドローンだった。これが『Techxodus』ではオープニングと5、6、8、9曲目でパワフルなトーンを帯びて蘇り、単純に迫力を増したドラミングとドローンの組み合わせはスピーカー・ミュージックの新局面をなしている。ノイズともいえる攻撃的なドローンはURの登場を思い出させ、アルバム全体に漲る「怒り」を印象づける。そう、『Techxodus』はエルモア・ジェームズのブルーズ・ギターを思わせるほどパッショネイトで、同時にパブリック・エナミーのような恐怖の演出も試みる。フリーキーなトーンは曲を追うごとに激しくなり、最後に置かれた“Astro-Black Consciousness”ではあまりにも混沌としたウォール・オブ・ノイズが組み上げられる。もはやそれは地獄図に等しいものがある。僕はジャズにはあまり積極的な関心はないのでちょっと適当だけれど、この5曲はジョン・コルトレーン『Ascension』(66)の混沌としたアンサンブルを想起させるものがあり、思わず聞き直してしまったほど。『Techxodus』は彼がテクノやエレクトロニック・ミュージックの歴史について書いた著書『Assembling A Black Counter Culture』(未読)のエピローグの役割を果たし、また、ドレクシアの神話を語り直したものでもあるという。どの曲がどうそれに対応しているのかはわからないけれど、エピローグにあたるということは歴史の最先端を実践しているという意味に取れるし、ドレクシアの『Grava 4』や『Harnessed The Storm』といったアルバムに曲名として出てくる〝Ociya Syndor〟をそのまま曲名に使った“Our Starship To Ociya Syndor”は明らかにドレクシアの引用で、ドレクシアの「こんな星にいられるか」というメッセージと宇宙旅行を結びつけたロング・ドローンということなんだろう。この曲だけはドラミングがカットされている。そして、コンセプトが優先されたということなのか、それとも別に理由があるのか、これが7曲目に置かれてしまったことで、せっかくの流れが寸断されてしまい、どうも後半に入ると集中力を欠くアルバムとなってしまった。この曲はオープニングか最後に置かれた方がもっと活きたはず。あるいは、まとまりがよく感じられた『Black Nationalist Sonic Weaponry』に対して『Techxodus』はそのせいで重厚長大に過ぎて一気呵成に聴き通すのが少し面倒なアルバムになってしまったと僕は思う。なので、僕は“Our Starship To Ociya Syndor”は別で聴くか、『Ascension』系の5曲だけを繰り返し聴くことが多い。兵士たちの叫びをサンプリングしてオーディエンスが興奮しているかのように聞かせる“Dr Rock’s PowerNomics Vision”、レゲエ風のブラスがむちゃくちゃに貼り合わされた“Jes’ Grew”、あるいはJ・リンに影響を受けたらしき“Feenin”の奇妙なインプロヴィゼーションと、とにかく混沌としたヴィジョンがこの5曲は凄まじい。

Christopher Willitst & ILLUHA - ele-king

 サンフランシスコを拠点に活動するクリストファー・ウィリッツが、2023年の来日公演の一環として御茶ノ水RITTOR BASEにて3Dサウンドシステムを使用したライヴコンサートとセミナーを開催します。
 また、スペシャルゲストとして〈12K〉レーベルのメンバー、ILLUHAのライヴもあり。
 ILLUHAはドラマーの山本達久を新メンバーに迎え、9月22日にアルバム『Tobira』をリリースしたばかり、今回は伊達伯欣と山本のデュオによるライヴ。イベントの最後にはウィリッツとILLUHAがギター、生ドラム、エレピによる生演奏を披露。アンビエント・ファンの皆様、ぜひお見逃しなく。
(*ウィリッツのセミナーは日本語の通訳があります)

主催: RITTOR BASE(御茶ノ水)
開催日時:2023年10月29日 (日)
Open 14:45 Start 15:00
https://rittorbase.jp/event/948/

14:45- 開場(チケット番号順の入場になります)
15:00- クリストファー・ウィリッツによるセミナー
15:45- ILLUHA live
16:45- クリストファー・ウィリッツ live
17:45- ウィリッツ+ILLUHA live
(終演予定18:30)
会場参加券:4,950円(学割:3,300円)
オンライン視聴券:3,300円

*会場参加券、オンライン視聴券ともに2023年11月5日23時までアーカイブ視聴が可能です

※なお、:2023年10月31日 (火)京都METROでも、Christopher WillitstとTomoyoshi Dateのライヴがあります。関西の方はこちらもぜひチェックしてくださいね。https://www.metro.ne.jp/schedule/231031/

〈AMBIENT KYOTO 2023〉現地レポート - ele-king

 10月14日正午、ぼくは京都駅から東京方面の新幹線に乗って、余韻に浸っていた。つい先ほどまで、取材者の特権を使い、〈AMBIENT KYOTO〉における「坂本龍一 + 高谷史郎 | async ‒ immersion 2023」をもういちど聴いて観て、感じていたばかりである。京都新聞ビル地下1階の元々は印刷所だったその場所で繰り広げられている、『async』の最新インスタレーションを、ぼくはその前日にも聴き、観て、感じている。音楽も映像も、音響も場所も、すべてが完璧に共鳴し合ったそのインパクトがあまりにも強烈だったので、京都を離れる前にもういちどと、その日の早い時間、午前10時過ぎに同所に行って、「async ‒ immersion 2023」を焼き付けておこうと思ったのである。

 この話をしたら長くなるので、後回しにする。まずは、昨年に続いて〈AMBIENT KYOTO〉が開催されたことを心から喜びたく思う。ぼくは「アンビエント・ミュージック」が大好きだし、そう呼ばれうる音楽をこの先も可能な限り聴き続けるだろう。そして、この「アンビエント」なる言葉が広く普及することを願ってもいる。だから〈AMBIENT KYOTO〉がシリーズ化されたことが、率直な話、いちファンとして嬉しい。
 とはいえ、ぼくが思う「アンビエント」なるものとは、やかましくなく、強制もせず、静寂控え目であることの強度を抽出し、BGMでありながら同時に実験的であるということであって、そこにはひねり(ウィット)を要する。つまり、静寂こそやかましく、変わらないことこそ変化であると。しかしながら今日では、もっと幅広く、場所の雰囲気(の調整のため)に重点を置いたサウンドも「アンビエント」に括られている。だからというわけではないのだろうが、〈AMBIENT KYOTO〉は、今回はサウンド・インスタレーション(音響工作によって、さまざまな空間と場を創出するアートの総称)の領域にまで広げて展示している。それはそれで意味がある。サウンド・アートという創造的分野を広く知ってもらえる機会を用意しているのだから。
 とまれ。そんなわけで、ぼくは10月13日の午後3時、京都駅から展覧会場である京都中央信用金庫を目指して歩いたのだった。
 人混みを避けるため地下道を使って歩いていくと、通路の両側のガラスのなかに〈AMBIENT KYOTO 2023〉のポスターがいくつも設置されていることに気が付く。おお〜これはすごい。わずか1年でここまで市民権を得たのかと、ちょっと感動してしまい、その風景の写真を撮りながら会場へと向かったのだった。

 地下道から出て、通りを挟んで見えるあの古い建築物には、ちゃんと今回のキーヴィジュアルが飾られている。絵になっているじゃないですか。町の風景のなかに溶け込んでいる。

 そして建物に入って、まずは3階のコーネリアスから。


Photo by Satoshi Nagare

 それはもう、コーネリアスらしいというか、コーネリアスそのものというか、ファンタズマの世界というか何というか、いきなり“霧中夢”の、言うなれば、音と光で夢を見るトリップ装置だ。サウンドとライティングがシンクロし、ちゃんとミスト(霧)も噴射される。比喩としていえば、子供も楽しめるエンターテイメントとしても成立してしまっている。




上から、ZAKが新たにミックスした立体音響のバッファロー・ドーター “ET” と “Everything Valley” 。そして山本精一の“Silhouette”。Photo by Satoshi Nagare
 “霧中夢”によってSF的な夢の世界に入ったぼくは、そのまま同階に設置されている、バッファロー・ドーターと山本精一の部屋へ。ふたつの巨大なスクリーンに投影された映像とサウンドが連動し、ここではまた別のエクスペリエンスが待っていた。ぼくはメモ帳に、忘れないようにと、いろんなことを書いてきたのだが、我ながら字が汚くて読めない。バッファロー・ドーターのきらびやかで躍動的なサウンドスケープ(“ET”と“Everything Valley”の2曲)、そして山本精一の、おそらく多くのアンビエント・ファンが思い描くであろうアンビエントの定義に忠実な、つまり川や海のように、遠くで見れば静止状態で、近く見れば変化しているかのような没入感のある映像と音響、今回の展覧会のために作られた“Silhouette”。


Photo by Satoshi Nagare

 とまあ、刺激的な空間をたっぷり堪能したので、3階のラウンジスペースでひと休み。居心地が良いので気を緩めると眠ってしまう。

 ところで今回は、どの作品においても、ZAKの手による高性能の立体音響が効いている。きわめて緻密にこれら音響空間は考慮され、設計されているのだろう。ここには、聴覚的体験におけるあらたな座標がある。その立体音響をとくにわかりやすく体感できるのが、2階に設置されたコーネリアスの“TOO PURE”である。ライヴでもお馴染みのサウンドと映像のシンプルな構成だが、しかしライヴでは味わえない宙を浮遊するサウンドたちによる、心地よい聴覚/視覚体験だ。鳥のさえずりは部屋のなかを旋回し、ギターの音色は森のなかに響いている……そんな感じで、あまりにも気持ちいいので、ぼくはここでもしばらく寝た。


Photo by Satoshi Nagare

 1階の“QUANTUM GHOSTS”も、ZAKの立体音響とコーネリアスとの共作と言える作品だ。部屋に入るとすぐベンチがあるので、ついついそこに座ってしまいそうになるかもしれないが、これは奥に設置された正方形の舞台の上に立って体感するべきもので、またしても目眩のするようなトリップ装置である。思わず踊っている人がいたが、それはある意味正しい反応だといえよう。
 最後に、アート展に行ったらショップに寄ってしまうのが人のサガ。今回もいろんなものがあって見ていて楽しい。しかも、別冊エレキング『アンビエント・ジャパン』号も売られているじゃないありませんか! ぼくは、テリー・ライリーのTシャツと「AMBINET KYOTO」Tシャツを買った(コーネリアス・タオルも迷ったのだけれど、家にいくつもタオルがあるので断念)。

 平日の午後なので空いているのかと思いきや、けっこう人がいた。その日はとくに若い人たちが多かったように思えたが、コーネリアス、バッファロー・ドーター、山本精一という名前に反応した人たちなのだろうか、各作品の解説があるような格式張ったアート展というよりは、喩えるなら、なかばクラブやライヴハウスにいるみたいな開放的な雰囲気があり、ぼくはリラックスして楽しめた。



Photo by Satoshi Nagare

 ざっとこのように、〈AMBIENT KYOTO〉の本拠地における、いわば「時間の外の世界」をおよそ1時間かけて楽しませてもらい、さて、続いては今回のクライマックスといえる京都新聞ビル地下1階を目指して地下鉄に乗る。親切なスタッフの方から7番出口を出るとすぐ入り口だと教えられ、その通りに行くと、ほんとうにすぐ会場だった。

 階段を降りて、地下一階へ。

 そして入口のドアを見つけてなかに入ると、ちょうど運良く、かかっていたのが“andata”だったので、『async』をほぼ最初から聴くことができた。
 会場内は、写真のように、じつに雰囲気のある広いスペースで、横長に、芸術的な意図をもった、素晴らしい映像が映されている。立体音響はここでも効いており、ぼくは遠い昔、タルコフスキーの『サクリファイス』を映画館で観たときのことを思い出した。あの、サウンドと映像で語りかける深淵なる何か。リスナーへの問いかけ。

Photo by Satoshi Nagare

 人の生とは何か、死とは何か、この大きなテーマに(ありきたりの宗教性に陥ることなく)立ち向かったのが『async』の本質だったことを、ぼくは感じざるえなかった。家のスピーカーではわからなかった各曲の繊細な構造的な変化や揺らぎも、ここでは充分感知することができるし、体内に入ってくる。その美しさ、そして重さも、同時に入ってくる。これは『async』に違いないのだが、高谷史郎との共同作品でもあって、そしてこれはもう、この忘れがたい場所でしか体験できないのだ。ぼくを惹きつけて止まない映像は、アルバムに合わせて毎回同じようには反復しない(非同期している)。だから目の前には、そのときだけの音楽と映像のコンビネーションがある。
 この日の夜は、テリー・ライリーのライヴがあったのだけれど、ぼくのなかでは『async』の余韻がまったく消えず、二日酔いのようにずっと残ってしまい、よって翌日もまた冒頭に書いたように同じ場所に来てしまった。敢えて極論めいて言うけれど、「坂本龍一 + 高谷史郎 | async ‒ immersion 2023」のためだけに来ても、〈AMBIENT KYOTO 2023〉には価値はある。いまだにうまく言葉にできないし、楽しむというよりは頭も使う作品であることは間違いないのだけれど、ドイツの美術館でロスコの巨大な原画の前に立ちすくんでしまった経験に近い、何か圧倒的なものに出会ってしまったときの感動を覚えた。もっと長い時間あの場所にいたかったというのが正直な気持ちである。ちなみにぼくが行った2日ともに、来ている人たちの年齢は明らかに高めで、外国人も混ざっていた。

 もちろん、京都中央信用金庫でのドリーミーな体験があったからこそ、ある種の相互作用によって「坂本龍一 + 高谷史郎 | async ‒ immersion 2023」が異なる次元において際だって見えたのだろうし、結局のところ、それぞれが独自の世界を持っていて味わい深く、面白かった。ありがとう、〈AMBIENT KYOTO 2023〉。

Romy - ele-king

 ロミーのソロ・デビュー・アルバム『Mid Air』は、彼女が10代のときに通っていたクィア・クラブでの経験や記憶がインスピレーションになっているという。それで僕も、アルバムを聴きながらはじめてゲイ・クラブに行ったときのことを思い出していた。
 忘れもしない。大学浪人が決まったあとの18歳の春だった。クラブ・イヴェント自体慣れていなかった自分には刺激が強かったけれど、それよりも何よりも、自分が住んでいる街にこんなにもゲイがいることに驚いた。それは普段の生活のなかではまったく見えないものだったからだ。よく身体を鍛えた薄着のお兄さんたちが光に照らされて楽しそうに踊っていた。ドラァグクイーンやゴーゴーボーイのショーにも目を丸くした。ディスコ・クラシックやハウス・ミュージックがかかっていたような気がするけど、当時の自分には何もかもが衝撃的だったので音楽についてはあまり覚えていない。あのときの経験がなかったら、ゲイとしての自分の人生はもっと違うものになっていたと思う。見知らぬひとたち、だけどもしかしたら似たような経験をしてきたひとたちと同じ夜を過ごすことが、どれだけ高揚感に満ちたものかそれまで知らなかったから。

肩を並べていっしょに踊ろう
この世界にいままで存在しなかった
自分たちより親密な他人同士は
自分たちより親密なふたりなど
(“Loveher”)

 いかにもシャイな若者たちとしてザ・エックスエックスがデビューしたとき、僕はすぐにその親密なインディ・ポップに夢中になったけれど、シンガーのふたり、ロミーとオリヴァーがレズビアンとゲイであることを知ったのはもう少しあとのことだった。そのメランコリックなラヴ・ソングは「I」と「You」で綴られるジェンダーレスなものだったし、世界に自分の姿をさらけ出すことをどこか遠慮しているような奥ゆかしさがあった。ゲイ・クラブでよく流されるマドンナの「あなた自身を表現しなさい」という問答無用の強さ、エンパワーメント志向とは距離のあるものだったのだ。
 だけどそれから時間が経ち、オリヴァー・シムはHIVポジティヴである自身の経験や感情を主題にしたソロ・アルバムを発表し、ロミーはこのアルバムを「She」や「Her」によるレズビアンのラヴ・ソングでいっぱいにした。オープニング・トラック “Loveher” の舞台はおそらくクィアのナイトクラブだ。4つ打ちのハウス・ビートとはかなげなピアノの旋律が鳴らされれば、彼女は彼女を愛していると柔らかな歌声で繰り返す。けれども彼女はまだ少し恥ずかしそうに、テーブルの下でそっと愛する彼女の手を握るのだ。胸が締めつけられるようなダンス・ポップの名曲である。
 盟友のプロデューサーであるフレッド・アゲインの力を借りて2000年代初頭頃にクィア・クラブでよく流されていたポップなハウスの要素をふんだんに入れているという『Mid Air』だが、ザ・エックスエックスに通じる切ないメロディがたくさん聞こえてくるのもポイントだろう。それはつまりベッドルームの感傷であり、本作はだから、孤独な場所にいた控えめなクィアの子どもがクラブに行って仲間や恋を見つけるまでのドキュメントのようなものである。そこでは、たくさんのものがキラキラと輝いている。集まったひとたちが着る服やメイクが、ミラーボールに反射する光が、流れるダンス・ミュージックの上モノが。ダンス・トラックとしてはシングル・カットが強力ないっぽうで、たとえばミドルテンポの “One Last Try” の開放感も気持ちいい。“Strong” や “Did I” ではやや安っぽく感じられるようなトランスのサウンドも聞こえてくるけれど、それもまた、10代のロミーの心を奪ったものだった。彼女はクィア・クラブの愛すべきところとして、誰もが知るポップスが皮肉ではなくアンセミックに流されることを挙げている。サビのメロディをみんなで歌いながら光に手をかざせば、自分たちの性愛を祝福するようなフィーリングが得られるから。
 僕がそうだったように、音楽それ自体よりも出会いや仲間との楽しみを求めてクィアのクラブに来るひとが多いと思う。もちろんセックスへの期待もあるだろう。このアルバムはそうした場所のフィーリングを立ち上げつつも、ゲイ男性が占有しがちなシーンのなかにレズビアンの愛を歌ったダンス・トラックを投入することで、より現代的にインクルーシヴなものにしようとする意図も見て取れる。アルバムのハイライトである力強いハウス・トラック “Enjoy Your Life” でサンプリングされているのは、トランスジェンダーのシンガーのビヴァリー・グレン=コープランドの歌だ。「あなたの人生を楽しんで」。それはクィア、とりわけトランスジェンダーへの攻撃が世界中で激化するなかで切実なメッセージとして引用されているように僕には思える。そもそもクィアという言葉自体、何かと内部で対立しがちなLGBTQ+コミュニティを「ヘンタイ」という意味を逆手に取って緩やかに繋げようとするものだ。『Mid Air』は、ハウスのビートときらびやかなシンセ・リフで、何よりも「わたしたち」の心を結びつけようとする。まだベッドルームにいるあなたにも届くように。
 アルバムは女性が女性に恋に落ちる瞬間をとらえた軽やかなシンセ・ポップ “She’s On My Mind” で幕を閉じる。肩を横に揺らすベースラインと、静かに熱を持つ鍵盤の打音。「もう隠したくない/たとえ傷ついても/もう気にしない/恋に落ちてしまった/彼女と」。『Mid Air』は、ダンスフロアのそんな瞬間を讃えるためのポップ・アルバムだ。だから、SNSの心ない言葉を相手にしてる時間なんてない。夜の街に出て、同じ曲で歌って、踊って、仲間や恋を見つけよう。

Irreversible Entanglements - ele-king

  優れた演奏以外に、今日のジャズが何を意味するのかという問題は1990年代から議論されている。草の根の黒人解放という政治性との明白なコネクションを無くした——その歴史やノスタルジーやプロ根性はあるとしても——今日の名人芸などに意味などあるのだろうか? グレッグ・テイト『フライボーイ2』

 「結局のところ、人びとがジャズを見捨てたのは良いことだったのかもしれない。というのも、ジャズはより資本主義に適した音楽製品に成り下がったわけだから」、これはムーア・マザーの昨年のアルバム『Jazz Codes』の最後に曲において、作家トーマス・スタンレーが皮肉たっぷりにつぶやく言葉である。しかしこの後に続く言葉は、そうした過去との訣別を宣言している。いまやジャズは「生きた音楽として再発見」されて、「計量的安定性という牢獄の鉄格子から解き放たれる」のだ、と彼は言う。
 冒頭に引用したグレッグ・テイトの言葉は2011年の原稿からの抜粋だが、テイトがいまも生きていたら彼の憂いは、まあ、少なくとも軽減されていただろう。なぜならここ数年のブラック・ジャズは、シャバカ・ハッチングスをはじめ、今年アルバムを出したハープ奏者のブランディー・ヤンガー、それからゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラーの拠点〈Constellation〉から作品をリリースする前衛主義者マタナ・ロバーツ……、ことに名門〈インパルス〉(*ジョン・コルトレーン、ファロア・サンダース、アーチー・シェップ、アリス・コルトレーンなどの作品を出してきた)に関して、欧米のジャズ・ファンたちは、最近のリリース──サンズ・オブ・ケメット、ザ・コメット・イズ・カミング、シャバカ&ジ・アンセスターズという、反迎合主義的な攻めのリストゆえに、長い低迷期を抜けいま往年の輝きを取り戻しつつあるんじゃないかと気の早い話に喜んでいたりする。喜びがたとえそれがつかの間のものだったとしても、最近その機運を高めたのがイレヴァーシブル・エンタングルメンツによる、ここに紹介する最新作なのだ。

 それにしても……である。このグループ名、古くはアインシュテュルツェンデ・ノイバウテン、近年ではワンオートリックス・ポイント・ネヴァーに並ぶ憶えにくさだ。とくに日本人にとっては。まあ、とにかくそのイレヴァーシブル・エンタングルメンツ(以下、IEと略)、和訳すると「不可逆的なもつれ」なる名のクインテットは、広くはムーア・マザー(カマエ・アイエワ)という詩人/音楽家/活動家が在籍しているフリー・ジャズ・グループとして認識されているし、ぼく自身もそのように説明してきてしまった。が、しかしそれは、この5人組を説明する上では不適切である。というのも、集団であること、コミュニティであること、人が集まることをこのバンドは、それ自体がひとつのコンセプトといってくらいに大切にしている。この音楽は、抗議デモを契機に生まれているのだから。
 彼らが初めて会ったのは2015年4月の、無実な黒人を射殺したニューヨーク市警への抗議活動として開催された音楽とトークの一夜においてだった。その次に彼らが会ったのは、音楽スタジオだった。そこで1日かけて録音したデビュー・アルバムが、ホテルのラウンジでかかるような、ムーディーでスムーズなジャズである可能性は低いだろう。2017年にリリースされたそのアルバム『Irreversible Entanglements』は、怒りのこもった抗議音楽集だった。
 サックス奏者のキアー・ノイリンガー、トランペット奏者のアキレス・ナヴァロ、ベーシストのルーク・スチュワート、ドラマーのチェザー・ホルムズ、それから詩を担当するカマエ・アイエワ(ムーア・マザー)の5人は、それ以降も、フリー・ジャズのイディオムを応用しながら、真っ向からの政治的な抗議──反植民地主義、反再開発、反独裁化など──としての2枚のアルバムを録音し、シカゴのインディ・レーベルからリリースしている。だからそんなわけで、クインテットにとって4枚目のアルバムとなる『Protect Your Light』が〈インパルス〉からのリリースになったことは、「ついに来たか!」というか、ちょっとした嬉しい話なのだ。

 もっともこの新作は、彼らの闘争的な過去3作と違って、スピリチュアル・ジャズに寄った平和な音色にはじまっている。オープナーの“Free Love”はいたって優美で、コルトレーンたちが表現してきたその宇宙的な愛を受け継ごうとしているかのようだ。IEの音楽とは、「伝統に敬意を表しながらも、それに反抗する音楽であり、未来を主張しながらも現在に語りかける音楽」というのが彼らによる説明なのだが、それはまさにその通りで、ここには本当にいろいろなものが注がれ、スパークし合っているのだろう。 “至上の愛” を体内に注入しながらもそれとは違うもの出し、過去の再評価ではなく、現在のサウンドで人びとを鼓舞する。リズミックな躍動感をもって、ゴスペルの影響がうかがえる表題曲“Protect Your Light”には、その前向きなパワーがみなぎっている。
 ジャズ史においては聖地であろう、有名なルディ・ヴァン・ゲルダー・スタジオで録音された今回のアルバムは、長尺のインプロヴィゼーション主体だった過去作と違ってわりと短めの、ある程度アレンジされた曲が8曲収録されているが、それらはスタジオ内でのオーヴァーダブを施されたことで空間的な、繊細な音響となっている。このことからも、IEが本作をより多くの人に届けたいと思っていることはたしかで、たとえば叙情感たっぷりのサックスが激しいドラミングに重なる、もっとも政治色の強い“Our Land Back”のような曲でさえも、サウンドに艶があり、アイエワの詩の朗読が聴き取れなくても、楽曲それ自体の魅力に引きこまれる。ほかの曲もそうだが、ドラムとベースが創出するグルーヴは素晴らしく、ジャズの伝統に沿いながら、これはもう、ダンス・ミュージックとしても機能できるかもしれない。内蔵に響くような、烈火のごときIEが暴れている“Soundness”を聴けば、よし、立ち上がるぞ、という気持ちになるし、反復するビートにエレクトロニック・ノイズが渦を巻く“root <=> branch”で語られるアイエワのシンプルな言葉は胸の奥に響いてくる。

  飛ぼう/私たちは自由になれる
  苦しみから自由になれる
  闘いから自由になろう
  自由になろう/飛ぼう
  すべての悩みから自由になろう
  何ものにも縛られない
  自由になろう

 いまパレスチナで起きていることを思えば、これは祈りである。それはそうとして、ブラック・ジャズの闘争史をよく知るこのクインテットが、いちどは途絶えてしまった歴史をたぐり寄せて、火を点けようとしていることは自明だ。彼らを取材した『Wire』誌は、その炎を讃えながらも、「 “アメリカのクラシック音楽 ” としてのアカデミックな名声と敬意にジャズ業界が溺れるなかで、どんな反乱も結局は短命に終わる運命にあるのでは、という問題がある」と慎重な見解を見せている。それに、「より資本主義に適した音楽製品」としてのジャズだってこの先もずっと聴かれるだろうし、いくらいま〈インパルス〉が攻めに出ているからと言って、60年代〜70年代とは比べようのないくらいに趣味が細分化された現代では、音楽の反乱が昔のようにひと塊の何かとなって突進するなんてことも、可能性はなくはないが高くはないだろう。
 いやいや、そんなふうに “文化への期待値を下げる” のが資本主義リアリズムだとマーク・フィッシャーは言っているじゃないか。この夏IEは、ジャズのシーンに留まらず、インディ・ロックやラップやエレクトロニック・ミュージックのフェスティヴァルでも演奏しているのであって、やはり、何かが動いていると思いたい。「いま、ジャズはラザロのように蘇る」とムーア・マザーの『Jazz Codes』のなかで作家トーマス・スタンレーが言ったように、ああ、それは真実だったと。

 新作『Again』はワンオートリックス・ポイント・ネヴァーにとって記念すべき10枚目のオリジナル・アルバムにあたる。さらに今年は2010年代を代表する名作『R Plus Seven』からちょうど10年の節目でもある。いい機会だし、ここでダニエル・ロパティンの15年以上におよぶキャリアをおさらいしておきたい。オリジナル・アルバムは当然として、さまざまな相手と積極的に関わっていくところもまた彼の大きな特徴ゆえ、コラボやプロデュース仕事にも光を当てる。

主要作品紹介

 まずはやっぱりダニエル・ロパティン本人がメインとなる作品から聴いていくべきでしょう。というわけでワンオートリックス・ポイント・ネヴァー名義のオリジナル・アルバムを中心に、サウンドトラックや一部のEPもピックアップ。最初期の3枚は入手困難なため、かわりに編集盤を掲載している。

1

Oneohtrix Point Never
Rifts Software (2012)

いまとなっては入手困難な2007年のデビュー・アルバム『Betrayed In The Octagon』、2009年の『Zones Without People』、そしてNYの〈No Fun Productions〉から送り出された『Russian Mind』(同2009年)の初期3枚に、カセットやCD-Rで出ていた音源などを加えたコンピレイション。当初は09年に〈No Fun〉からリリース。3年後、再編集のうえ自身のレーベルから出し直したのがこちら。まだ素朴にシンセと戯れている。ロウファイ文脈を意識させる曲もあり。

2

Oneohtrix Point Never
Returnal Editions Mego (2010)

フェネスやジム・オルークなどのリリースをとおして実験的な電子音楽の第一人者ともいうべきポジションを築いていたウィーンのレーベル、〈Editions Mego〉からリリースされたことが重要で、これを出したがゆえにOPNは注目しないわけにはいかない音楽家の仲間入りを果たした。まずは冒頭のノイズにやられる。以降のドローンやサンプルの美しさといったら。

3

Chuck Person
Chuck Person's Eccojams Vol. 1 The Curatorial Club (2010)

当時は正体が伏せられていたため、ダニエル・ロパティンがヴェイパーウェイヴの先駆者のひとりでもあったことを知る者はリアルタイムではいなかったはずだ。退屈な仕事の合間にポップ・ソングをスクリューさせてつくった楽曲たちの集まり。いくつかはもともとYouTubeで発表されている。某超有名ポップ・スターも異形化されている。

4

Oneohtrix Point Never
Replica Software / Mexican Summer (2012)

人気作にして代表作のひとつ、通算5枚目のアルバム。自身のレーベル〈Software〉がチルウェイヴやローファイ・サウンドの拠点だった〈Mexican Summer〉傘下に設立されたのは見過ごせないポイントで、まさにインターネット時代を表現するかのごとく謎のノイズや音声が縦横無尽にサンプリングされていき、美しいシンセと合体させられていく。ジャンクなものが放つ美。

5

Oneohtrix Point Never
R Plus Seven Warp (2013)

エレクトロニック・ミュージックの名門〈Warp〉への移籍は事件であると同時に、納得感もあった。音響はデジタルなものに変化、種々の声ネタや切り刻み、反復の活用などでかつてない個性を確立した名作で、以降ロパティンが繰り広げることになる数々の冒険の起点になった6枚目のアルバム。今年でちょうど10周年。

6

Oneohtrix Point Never
Garden Of Delete Warp (2015)

メタルにハマっていた少年時代を回顧、過剰な電子音でポップ・ミュージックのグロテスクさを表現した7枚目。音声合成ソフト Chipspeech を用いた奇妙なポップ・ソング “Sticky Drama” は、これまでとは異なるファンを獲得するにいたった。のちに「半自伝的3部作」の第1作として位置づけられることに。

7

Oneohtrix Point Never
Good Time (Original Motion Picture Soundtrack) Warp (2017)

サフディ兄弟監督作の劇伴。これまでもソフィア・コッポラ作品などに作曲で参加していたロパティンの、本格的なサウンドトラック仕事としては2作目にあたる(OPN名義では初)。とにかくダークで緊張感に満ちている。最後はイギー・ポップの歌で〆。カンヌでサウンドトラック賞を授かった。

8

Oneohtrix Point Never
Age Of Warp (2018)

中世の民衆からインスパイアされたコンセプチュアルな8枚目。自身の歌を初披露。チェンバロ、ダクソフォンなど音色もかなり豊かになっている。加速主義で知られる哲学者ニック・ランド(CCRU)から触発された “Black Snow” の詞も注目を集めた。本作直後のライヴ・ツアー「MYRIAD」ではイーライ・ケスラーらとバンドを結成。

9

Oneohtrix Point Never
Love In The Time Of Lexapro Warp (2018)

『Age Of』の続編的な位置づけのEP。最大の注目ポイントは日本の巨匠、前年にOPNがリミックスを手がけていた坂本龍一からの返礼リミックスで、繊細な音響空間を味わうことができる。テーマが抗うつ剤なのはロパティンが時代に敏感な証。

10

Daniel Lopatin
Uncut Gems (Original Motion Picture Soundtrack) Warp (2019)

邦題『アンカット・ダイヤモンド』のサウンドトラック。サフディ兄弟監督とは2度目のタッグだ。名義が本名に戻ったのはただの思いつきだそう。スティーヴ・ライシュ風あり、芸能山城組風あり、アシッドありと、じつに多彩な1枚。声楽やサックス、フルートが新鮮に響く。

11

Oneohtrix Point Never
Magic Oneohtrix Point Never Warp (2020)

ロックダウン中の内省の影響を受け、自身の原点たるラジオ放送(「ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー」はラジオ局「106.7(ワンオーシックス・ポイント・セヴン)」のもじり)をコンセプトにした通算9枚目。初期を思わせるシンセ・サウンドからバンド風、ラップ入りの曲、歌モノまで、まさにラジオを聴いているかのように展開していく。のちに「半自伝的3部作」の第2作として位置づけられることに。

12

Oneohtrix Point Never
Again Warp (2023)

満を持してリリースされた通算10枚目、聴きどころ満載の最新アルバム。意表をつく弦楽合奏(指揮はロンドン・コンテンポラリー・オーケストラ創設者のロバート・エイムズ)にはじまり、OpenAI社の生成AI、存在感を放つリー・ラナルドのギター、さりげなく参加しているジム・オルークなど、注目ポイントが盛りだくさん。「半自伝的3部作」の完結編にあたるそうだ。

コラボレーション&プロデュース作品

 孤高の精神、ただひとり屹立するやり方はOPNの流儀ではない。MVやアートワーク含め、いろんな作家たちと積極的に関わろうと試みるのはダニエル・ロパティンという音楽家が持つ魅力のひとつだ。というわけでここではコラボ作&プロデュース作を見ていくが、あまりに数が多いため厳選している。以下を入口にほかの作品にも注目していただけたら。

13

Borden, Ferraro, Godin, Halo & Lopatin
FRKWYS 7 RVNG Intl. (2010)

ダニエル・ロパティンのみならず、ジェイムズ・フェラーロやローレル・ヘイローなど、当時若手でのちに2010年代のキーパースンとなる面々がミニマル・ミュージックの巨匠デイヴィッド・ボーデンを囲む。いま振り返ると歴史的なコラボレイションだ。サイケ感もある魅惑のアンビエント。

14

Ford & Lopatin
Channel Pressure Software (2011)

ロパティンが同級生のジェイムズ・フォードと組んだシンセ・ポップ・プロジェクト、ゲームズ名義から発展。そのレトロな佇まいは、素材をスクリューさせる『Eccojams』とはまたべつの切り口から80年代を再解釈しているともいえる。歌モノも楽しい。

15

Tim Hecker & Daniel Lopatin
Instrumental Tourist Software (2012)

00年代後半以降におけるアンビエント~ドローンの牽引者ティム・ヘッカーと、『Returnal』や『Replica』で音楽ファンを虜にしていた当時新進気鋭のロパティンとの組み合わせは、時代を象徴するようなコラボだった。どこまでもダークなサウンド。寂寥の極致。

16

Anohni
Hopelessness Secretly Canadian (2016)

ルー・リード作品に参加したことから注目を集め、アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズとして大いに賞賛された稀代の歌手による改名後第1作。ロパティンはハドソン・モホークとともにプロデューサーとして貢献しており、OPNらしい音色も確認できる。

17

DJ Earl
Open Your Eyes Teklife (2016)

まさかフットワークにも挑戦していたとは。ダンス・カルチャーとは接点を持たないように見えるOPNとシカゴのシーンにおける最重要クルー〈Teklife〉との合流は、当時もかなり意外性があった。3曲で共作、ミックスも担当している。

18

David Byrne
American Utopia Nonesuch / Todomundo (2018)

巨匠デイヴィッド・バーンとのまさかの出会い。OPNはたまに「現代のイーノ」と形容されることがあるが、まさにそのブライアン・イーノらに交じって作曲と演奏で5曲に参加、4曲目ではそれこそイーノ風のシンセを響かせている。

19

The Weeknd
After Hours XO / Universal Music Group (2020)

本格的にメジャー・シーンに進出することになったターニング・ポイントが本作かもしれない。『Uncut Gems』時に共作したトロント出身のポップ・スター、ウィーケンドの4枚目。このときはまだ関与は3曲のみだが、次作『Dawn FM』ではがっぷり四つに組むことになる。

20

Moses Sumney
GRÆ Jagjaguwar (2020)

インディ・ロック・シーンとも接点を持つガーナ系シンガー・ソングライターのセカンド・アルバムに、ロパティンはシンセ演奏と追加プロデュースで参加。サムニーのソウルフルなアヴァン・ポップ・サウンドをうまく補強している。

21

Charli XCX
CRASH Asylum / Warner Music UK (2022)

関わっているのは1曲のみではあるものの、UKのポップ・スターとも接点を有していたとは驚きだ。ここでは〈PC Music〉のA・G・クックと “Every Rule” を共同プロデュース。しっとりしたシンセ・ポップを楽しもう。

22

Soccer Mommy
Sometimes, Forever Loma Vista (2022)

ナッシュヴィルのシンガー・ソングライターの3枚目を全面プロデュース。ロパティンは基本的には黒子に徹しているものの、スウィートなポップ~シューゲイズ・サウンドの影に、たまにその存在が感じられる。

※当記事は小冊子「ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーとエレクトロニック・ミュージックの現在」掲載の文章をもとに、加筆・修正したものです。


 フィンランドはヘルシンキに注目しておきたいレーベルがある。ジャズ・フェスティヴァル《We Jazz Festival》を母体に、DJの Matti Nives が2016年に設立した〈We Jazz Records〉がそれだ。〈Blue Note〉にも作品を残す当地のヴェテラン・サックス奏者 Jukka Perko からジャズ・ロック、フリー・ジャズ、実験的なものからカール・ストーンによるリワーク集まで、すでに多くのタイトルを送り出している同レーベルだが、このたび初めて日本盤がリリースされることになった。今回発売されるのは2タイトル。
 1枚は、昨年〈ECM〉からアルバムを出したベーシスト、ペッター・エルドが率いるバンドのコマ・サクソ。もう1枚は、おなじく〈ECM〉から作品を発表し、スクエアプッシャーのバンドでも演奏したことのあるピアニスト、キット・ダウンズを中心とするトリオのエネミー。どちらもなかなかよさそうです。ぜひチェックをば。

Koma Saxo『Post Koma』
2023.11.22 CD Release

Edition RecordsやECMでも活躍するスウェーデンのベーシスト/プロデューサーのペッター・エルド率いるKoma Saxo(コマ・サクソ)最新アルバム『POST KOMA』。常に進化を続け、エッジと流動性に満ちた様々なサウンドスケープを表現した最高傑作!!ボーナストラックを追加収録し、CDリリース決定!!


photo by Maria Louceiro

気鋭のジャズ・ベーシストで作曲家、プロデューサーのペッター・エルド率いるコマ・サクソを、遂に紹介できるタイミングが訪れた。2022年の傑作アルバム『Koma West』からさらに進化したサウンドとヴィジョンを、このアルバムで提示している。ジャズを出発点に、クラシック音楽、ルーツのスウェーデン民謡、中東音楽、ソウルとファンク、ヒップホップとエレクトロニカ、様々の音楽の断片が交錯しながら、大胆で美しいアンサンブルが出現する。掛け値なしにいま最も観たいグループだ。(原 雅明 ringsプロデューサー)

[リリース情報]
アーティスト名:KOMA SAXO(コマ・サクソ)
アルバム名:Post Koma(ポスト・コマ)
リリース日:2023年11月22日
フォーマット:CD
レーベル:rings / We Jazz Records
品番:RINC115
JAN: 4988044094314
価格: ¥2,860(tax in)

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008736163

http://www.ringstokyo.com/koma-saxo-post-koma/

ENEMY『The Betrayal』
2023.11.22 CD Release

ピアニストのキット・ダウンズが中心となり、ECMからリリースされた『Vermillion』の続編ともいえるメンバーで構成されたピアノ・トリオENEMY(エネミー)による、新たな方向性を示した大注目のサード・アルバム『The Betrayal』が、ボーナストラックを追加収録しCDリリース決定!!


photo by Juliane Schutz

ピアニストのキット・ダウンズ、ベーシストのペッター・エルド、ドラマーのジェームズ・マドレンによるエネミーは、ECMから『Vermillion』のリリースでも知られる、欧州きっての先鋭的で美しいピアノ・トリオだ。この最新作では、爆発的なエネルギーと繊細な叙情性を併せ持つトリオの真髄を聴くことができる。全てがダウンズとエルドのオリジナル曲で、「意図的な矛盾と脱皮」がテーマとなっている。スリリングというしかない展開のアルバムに仕上がった。エルドが率いるコマ・サクソの『Post Koma』と共に本作を紹介できることもこの上ない喜びだ。(原 雅明プロデューサー)

[リリース情報]
アーティスト名:ENEMY(エネミー)
アルバム名:THE BETRAYAL(ザ・ベトレイアル)
リリース日:2023年11月22日
フォーマット:CD
レーベル:rings / We Jazz Records
品番:RINC114
JAN: 4988044094307
価格: ¥2,860(tax in)

https://rings.lnk.to/mQLhFXsS

http://www.ringstokyo.com/enemy-the-betrayal/

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