Home > News > いまなお語り継がれる不世出のサックス奏者、阿部薫の本
いまなお語り継がれるサックス奏者、阿部薫。29歳という若さで生涯を終えながら、彼の限界の限界まで荒れ狂う演奏の記録は、その死から40年以上経とうがあらたなリスナーを惹きつけて止まない。昨年も未発表音源を加えたライヴ・アルバム『完全版 東北セッションズ 1971』がリリースされている。
そして、この度は阿部薫へのトリビュート本というべき『阿部薫2020 僕の前に誰もいなかった』も刊行された。これまでにも『阿部薫覚書―1949-1978』(1989)、『阿部薫1949〜1978』(1994)などが出版されているが、大友良英の言葉からはじまる本書もまた、ミュージシャンや文筆家たちが思い思いの阿部薫を語っている。阿部薫や鈴木いずみの原稿もありつつも、アンビエントの伊達伯欣や畠山地平のような人たちも文章を寄せていたりで、あらためて阿部薫の影響力の大きさを思い知る次第だ。このような伝説を語ると必要以上に力んだり、我こそは理解者とでも言わんばかりの文章が集まりがちだが、ほとんどの人が自由に自分の言葉で書いていて、杉本拓の「私は阿部薫やデレク・ベイリーが苦手だった」のようにいろんな視点を楽しむこともできる。
阿部薫とは、音楽ファンであれば人生の何処かで(しかも10代〜20代の若い頃に)出会うべく音楽であることはおそらく間違いない。そして出会った人たちには、本書をぜひ手に取って欲しいです。
阿部薫2020 僕の前に誰もいなかった
文遊社
http://www.bunyu-sha.jp/books/detail_abe2020.html