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音と心と体のカルテ

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第四回:「夏らしいこと」

伊達伯欣 Aug 04,2015 UP

 最近友だちと、夏になったことを話していて「なんか夏らしいことした?」と言われた。
 夏らしいこと……
 まだ夏らしいことを、そういえばしていなかった。久しぶりの子供たちとのゆっくりした時間に、小さなプールをベランダに出して、「夏らしい」水遊びをした。太陽の光の温かさを意識的に感じながら、そういう自然のリズムに身を委ねることを、しばらくしていなかったことに気がついた。


Chihei Hatakeyama + Federico Durand
Magical Imaginary Child

White Paddy Mountain

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 そのときに僕らの環境となっていた音楽は、チヘイ・ハタケヤマ + フェデリコ・デュランド『Magical Imaginary Child』(White Paddy Mountain)だった。去年の5月頃、フェデリコが来日したときの録音で、ジャケットは石のお地蔵さん。CDを手にして開いたときに、内ジャケで待っている穏やかなお地蔵さんの写真がリスナーに「落ち着き」を与える。「岩に染み入る蝉の声」といった、日本人特有と言われることの多い「夏の音」を連想させるジャケットが気持ちいい。
 そんな静かな音楽に、子供たちのはしゃぐ声と、水の音がこの音楽に混ざり合って、その瞬間にしか聴くことのできない、一期一会の音楽がそこらへんをふわふわしていた。

 自分自身の作品も含めて、アンビエント・ミュージックと呼ばれている音楽のほとんどを、僕はアンビエント・ミュージックだとは思っていない。けれど、このアルバムは、アンビエント・ミュージックだと僕は思う。
 このタイトルがなぜついたのかは知らない。ちょうどこの録音がされた頃、畠山くんもフェデリコも僕も、子供が生まれる直前だった。2014年は、ウィル・ロング(セラー)の子供も生まれて、アンビエント・チルドレンだねなんて話を冗談でした。タイトルの『マジカル・イマジナリー・チャイルド』って単数だから、誰かの子供を言ってるんだろうか。音楽もタイトルも直球で、何か大きな驚きがあるアルバムではなかったけど、上質なアンビエント・ミュージックだと思う。

 夏には夏の光があるように、夏の音がある。環境として流された音楽の上に夏の音が加わると、その音楽はもっと豊かになる。これからも末永く、環境音楽として選ぶことになるだろうアルバム。



(イラスト:吉岡渉)

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伊達伯欣/Tomoyoshi Date伊達伯欣/Tomoyoshi Date
1977年ブラジル・サンパウロ生まれ。3歳の時に日本へ移住。ロック、ジャズ、ポスト・ロックなどを経て90年代後半より電子音楽を開始。ソロ作品に加え、Opitope、ILLUHA、Melodiaとして活動するほか、中村としまる、KenIkeda、坂本龍一、TaylorDeupreeとも共作を重ね、世界各国のレーベルから作品をリリース。西洋医学・東洋医学を併用する医師でもあり、2014年10月にアンビエント・クリニック「つゆくさ医院」を開院。自然と文明、アナログとデジタルをテーマに医療と音楽に従事している。

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