Home >  Interviews > interview with Chihei Hatakeyama - 我がドローン道

Interviews

interview with Chihei Hatakeyama

interview with Chihei Hatakeyama

我がドローン道

──畠山地平、インタヴュー

取材:野田努    Aug 01,2017 UP

いまのアンビエントを俯瞰すると、正しくブライアン・イーノを継承しているのがテイラー・デュプリーで、そこを壊して進んでいるのがティム・ヘッカーで、大勢はその間に活路を見いだしているのかなとも思えますね。


Chihei Hatakeyama
Mirage

Room40

DroneShogazeAmbient

Amazon Tower HMV

 畠山地平の簡単なバイオは、デンシさんのレヴューに譲ろう。彼が主宰するレーベル〈White Paddy Mountain〉の怒濤のリリースはdiscogsにまかせておこう。彼のサッカー好きについては、紙ele-king vol.13を参照していただこう。
 ここでまず重要なことは、ぼくは深く考えずにアンビエント/ドローンという書き方をする。しからば、それは≠『アナザー・グリーン・ワールド』/“シスター・レイ”であり、まあ、たしかにこれは離れているようで同じ括りにできる。が、これをニューエイジ/シューゲイズと変換できることはできない。ということは……ジ・オーブ/マイブラはアリなわけで、ということはOPN/グルーパーもアリなのだ。
 何を言いたいのかといえば、アンビエント/ドローンといったときにその音楽的振れ幅はそれなりになり、アンビエント・ミュージシャンとして知られている畠山地平だが、しかし彼のそれには、シューゲイズ的感性がより多く入っている。言うなればティム・ヘッカーやグルーパーやローレンス・イングリッシュの側である。
 畠山地平は先日、そのローレンス・イングリッシュのレーベル〈Room40〉から新しいアルバム(ヴァイナルと配信のみ)を出したばかり。この機会に、精力的なリリースを続けるアンビエント/ドローンのプロデューサーを取材してみることにした。ゼロ年代のアンビエント/ドローンの流れを、掻い摘んで説明しながら、自らのコンセプトを語ってくれました。

もちろんグルーパーの個人的なテクニックや才能があるうえでの話なんでしょうけど、でもあのカセットテープ・レコーダーだけであんなのができちゃっているのを見て、作り手としてもう「俺らはなにをやっているんだろう」ってくらいの衝撃はありましたね。

作品のリリースが多くて、ものすごく精力的に活動されていますよね。

畠山:いまは制作意欲にも溢れていて、ライブやツアーも含めて精力的に動けてますね。

海外メディアでは、今年に入って〈White Paddy Mountain〉から3枚同時にリリースしたときはニュースになっていたもんね。

畠山:そうですね。やっぱり日本に比べるとカルチャーとして根付いているんでしょうね。あとはリスナーの数とか(笑)。

たぶんアンビエントの世界ってそれぞれの都市での数は少ないんだろうけど、世界でまとめてそれなりにいるというか、独特のネットワークを持っているでしょう?

畠山:そうなんですよね。他のジャンルに比べるとリスナーの連帯感みたいなものがあんまりないかもしれないですけど、現場に行って知り合うとかじゃなく、たぶんマニアな人が世界中に個人として確実に存在している、そういうイメージに近いのかなと。たしかに固定ファンは一定数いるんですよ(笑)。

サトミマガエさんのアルバムを聴いていて、彼女が演奏している場面を想像すると、10人くらいの小さいところでの親密なライヴ演奏というか。それと同じように畠山くんや伊達(伯欣)くんたち、あるいはhakobuneさんたちがいるようなアンビエントのシーンというのも、いろんな国のいろんな街の10人くらいのシーンがポツポツとあって、それが絶えずにリンクしているようなイメージがあるんだよね。そういう広がり方?

畠山:そうですよね。実際たしかにそうなのかもしれない。例えばいま名前を挙げてもらった伊達くんとかhakobumeくんとか……。

よく一緒にやっているフェデリコ(・デューランド)さんとか……。

畠山:フェデリコさんの場合はさらに面白いことにアルゼンチンのそれもブエノスアエルスに行くのにも1日かかる不便な山の方に住んでいるみたいですね。今年日本に来るのも家からカウントとすると4日旅して日本に来ると、それくらいの場所に住んでいるみたいです。
 いま挙げてもらった伊達くんとかhakobumeくんとかのアーティストに共通するものはエレクトロニック・ミュージックなんだけどいわゆるDTMじゃないというか。MIDIとかプラグインのソフトは使わずに、それこそクリックや小節数も関係なく作曲している。アンビエントなのにフィジカルで演奏しているという。わかりづらいんですけど(笑)。

なるほど! 言われてみればそうだよね。

畠山:だから今回の作品ではギターもあるし、モジュラー・シンセやアナログシンセも使っているんですけど、元々即興演奏したものを後で調整して形にする方法をベースにしています。最近ではアナログ卓で先にミックスして、ある程度アナログ環境で完成させてしまうので、DTM感はさらに薄まりましたね(笑)。MIDIキーボードも持っていないんですよね。

今回はローレンス・イングリッシュのオーストラリアのレーベル(<Room40>)からのリリースになるじゃないですか。彼なんかもそうなの? 海外もそう?

畠山:例えば……、グルーパーとか(笑)。

使わないですよね(笑)。

畠山:ティム・ヘッカーも演奏していますよね。

グルーパーで本当に驚いたのは、昔1000円くらいで売っていたソニーのラジカセを6台くらいミキサーにつなげて、その場で回転数を変えたりするじゃないですか(笑)。それでギター弾いて歌っているし。

畠山:グルーパーは野田さんも相当衝撃だったと思うんですけど。90年代からのラファエル・トラルやスターズ・オブ・ザ・リド等、先駆者たちの(アンビエント/ドローンが)きて、ゼロ年代でフェネスやテイラー・デュプリーなどのエレクトロニカがあって、そのあとにアンビエントみたいなものが復活して出てきたなという感じじゃないですか。そのフェネスとかの流れをグルーパーが2013年くらいに一度全部ひっくり返しちゃったような気がして(笑)。
 そこからまた流れていって、いまは2013年と比べるとアンビエントが多様化しているというか、ラファエル・トラルでいうと、その後純粋な電子音楽に行くのでわかりづらいんですけど、90年代はマイ ブラッディ ヴァレンタインをブライアン・イーノの手法で解釈するとどうなるかと、そこでギター・ドローンが生まれてきたという背景もあって、グルーパーもそうですけど、イーノとマイブラの影響は大きいのかなとは思いますね。ラファエル・トラルはインタヴューで興味深い事を言っていて彼はマイブラのケヴィン・シールズはエレクトリック・ギターの解放者だというんですね、それまでのジミ・ヘンドリックスを中心としたギター観だと、天才過ぎて真似できないと、でもケヴィン・シールズはテクニックはないので、真似しつつ先に進めると。少し話が逸れてしまいましたが、いまのアンビエントを俯瞰すると、正しくブライアン・イーノを継承しているのがテイラー・デュプリーで、そこを壊して進んでいるのがティム・ヘッカーで大勢はその間に活路を見いだしているのかなとも思えますね。

       

取材:野田努(2017年8月01日)

12

INTERVIEWS