ele-king Powerd by DOMMUNE

Home >  Interviews > special talk : BES × senninshou - 特別対談:BES×仙人掌

special talk : BES × senninshou

special talk : BES × senninshou

特別対談:BES×仙人掌

取材・文:二木信    写真:小原泰広   Mar 31,2017 UP

俺はタカさんやSEEDAくんにヒップホップ観を変えられたし、俺がラッパーに本気で怒られたのってタカさんとSEEDAくんぐらいなんですよ。だから俺はこのふたりを認めさせたいと思ってラップしていますよ、いまも。 (仙人掌)

SEEDA feat. BES, 仙人掌“FACT”

『CONCRETE GREEN』と言えばいわゆる「ハスリング・ラップ」をシーンに認知させて、定着させたコンピでもありましたね。一方で、BACHLOGICがプロデュースした、BES、仙人掌、SEEDAの共作曲“FACT”(『CONCRETE GREEN.3』収録。2006年)も重要な曲ですよね。

BES:そのころの俺はもうファックドアップでしたね。金があるときとないときが激し過ぎて山あり谷ありで大変だった。子どももできて育てなくちゃならなかったですしね。“FACT”を作ってるときはまさにそういう時期ですね。あの曲は現実を目の前にして困惑する自分も出ている。

仙人掌:あの曲をI-DeAさんの家で録ってるときにちょうど子どもが産まれそうな時期でしたね。「(録音中に)嫁が産気づいちゃったらすみません」みたいなことをSEEDAくんに話してたのをおぼえてます。

BES:“FACT”は思い浮かぶリリックをそのまま書くっていうテーマがあった。『REBUILD』に入ってる仙人掌との“Get On The Mic”は、俺が「そろそろコレじゃダメだ。マイクとラップで生きていこう」という気持ちで作った曲でもありましたね。

仙人掌:だから実際、ハスリング・ラップがどうこうでもないと思うんですよ。SEEDAくんやタカさんやSCARSのラッパーの人たちの何が圧倒的にすごいかって、スピードなんですよ。何が正しい、何が間違っているではなくて、その瞬間をラップでパッケージするスピードなんです。リリックの言葉遣いに迷っていたり、そのころになるともう韻の数を数えてやっていたら……

BES:追っつかないよね。

仙人掌:そう、ぜんぜん追っつかないじゃないですか。そういうスピードが『CONCRETE GREEN』1枚1枚の、あのヴォリュームにもなってると思う。とにかくラップをビートに乗せて、ヤバい表現があって、それが作品なんだっていうラップとヒップホップの捉え方なんですよ。ホントにずーっとフリースタイルしてましたからね。それで作品も作っていく。そういう物事の捉え方とアウトプットとスピードが俺には衝撃的だった。

BES:しかも世に出す作品としてのクオリティが問われはじめるときだよね。

仙人掌:ホントにそうですね。俺はタカさんやSEEDAくんにヒップホップ観を変えられたし、俺がラッパーに本気で怒られたのってタカさんとSEEDAくんぐらいなんですよ。だから俺はこのふたりを認めさせたいと思ってラップしていますよ、いまも。もちろんこれからも。

BES:もう最初に会ったときにすでに認めてるけどね。

“FACT”はI-DeAさんの自宅スタジオで録音したということですけど、当時のことをおぼえてますか?

I-DeA:俺が中目黒に住んでいたときの部屋に2時間おきとかにラッパーが来て録ってました。『CONCRETE GREEN』の1、2、3あたりのSCARS関連の録音は全部俺ですよ。アカペラをインストに乗せて、エディットして、別バージョンを作ったりしていた。でも、ぜんぜん金が入ってこなかった(笑)。「遊びましょうよ」って連絡があって『ウイニングイレブン』をやって、俺が負けたらタダでRECしてましたから(笑)。そうやってRECしていって気づいたら『CONCRETE GREEN』が出てた。『SEEDA'S 27 SEEDS』(2005年)なんかもまさにそうですね。

ラッパーたちの録音の仕方とか、曲で印象に残っていることってありますか?

I-DeA:DNCやSD JUNKSTA周りのラッパーと一気に知り合って、彼らが入れ代わり立ち代わり俺の自宅スタジオに来てひたすら録音していったから、その記憶しかないんですよね。あと、ビートがかかるとみんなでずーっとフリースタイルしている光景は鮮明におぼえてる。俺はラップしないから、「うぜぇなあ」とか思いながら見てましたけど(笑)。でも、いま10年ぐらい経ってあらためて思うのは、お世辞抜きに『CONCRETE GREEN』に入ってるラッパーたちのクオリティやスキルが高かったことですね。関係も近くて当時はそのことにあんまり気づいてなかったけど、レベルが高かったんだなって。

ちょっと前に田我流くんに『別冊カドカワ DIRECT』という雑誌の日本のラップ特集で取材させてもらったんですよ。仙人掌くんも同席してもらって。そこで田我流くんが、『CONCRETE GREEN』はひとつの「ムーヴメント」だったと言っていて、「いまの俺らがあるのは、『CONCRETE GREEN』の勢いがあったから。いままであのジェットコースターの勢いに乗ってやってきたと言っても過言じゃない」って強調してたのがすごく印象的でした。

BES:俺もそうっすね。それに乗っかった感じですよね。当時はずっとみんなと遊んでいたんですけど、生活が変わればサイクルも合わないし遊ぶ時間もなくなる。だから、いま会うのは〈bed〉ですよね。そういえば、当時、SCARS全員が俺らの下でワチャワチャ遊んでた高校生の卒業式のアフター・パーティみたいな会に呼ばれて行ったことがありましたね。親御さんもいて、「これでどうやっていつも通りライヴしろっていうの?」って雰囲気だった。案の定ライヴ後にシーンとなりますよね。親御さんが「いったい、これは何なの?」みたいな顔してたな(笑)。

一同:だははははっ。

辞書も引かなくなりましたね。わざわざ外人のあいだで流行ってるスラングを使う気にもならないし、それでも気になったら人に訊けばいいじゃないですか。それよりも自分が普段しゃべっている言葉でラップを作るほうがいいと考えましたね。 (BES)

JUSWANNA feat. BES & 仙人掌“Entrance”

BESさんは、「勘繰り」や「バッド・トリップ」の複雑な精神状態をラップの表現に落とし込んで、それを他に類を見ないひとつのスタイルにまでしましたよね。

BES:それをやると絡まれるから誰もやらないんですよ(笑)。“かんぐり大作戦”を作って実際に3、4人に絡まれてますしね。

仙人掌:ヤバい(笑)。

BES:まあ、ハスってると勘繰りがたぶんすごいっす。みんなそうだと思います。

勘繰りって物事の裏の裏まで読んでしまうことだと思うんですけど、本人が意図しないものも含めて、そのことによってラップの中にダブル・ミーニング、トリプル・ミーニングといくつもの意味が発生していってそれが独特のドープさになったのかなと思うんです。BESさんと同じ経験をしていなくても、聴く側はそのラップからいろんな想像力を喚起させられる余地を作るというか。

仙人掌:たしかに。それはまさにそうかもしれないですね。

しかも、スラングはあったりしますけど、特別に難しい言葉や単語をそこまで使わないですよね。

BES:そうですね。国語辞典を引いたりしていたのは初期だけですね。パトワ語の辞典も引いてましたね。でも、辞書も引かなくなりましたね。わざわざ外人のあいだで流行ってるスラングを使う気にもならないし、それでも気になったら人に訊けばいいじゃないですか。それよりも自分が普段しゃべっている言葉でラップを作るほうがいいと考えましたね。

仙人掌:タカさんの表現はアメコミっぽい部分もあると思うんですよ。俺とメシアくんとタカさんで作った“Entrance”(JUSWANNA『BLACK BOX』収録。2009年)もそうですよね。現実をただありのままに描写しているんじゃなくて、自分たちが何かと格闘しているというある設定を頭のなかに描いてラップしたりしている。それで、あの曲の最後に「火のついたマイク飛ばす」って表現が出てくる。

ああ、なるほど。

仙人掌:やっぱり人と違う言語感覚がありますよね。例えば、金色(キンイロ)をあえて金色(コンジキ)って発音することで言葉のハネやリズムを良くするとか、そういう感覚を当たり前につかんでるんですよね。仮にダサいラッパーが言葉として良い表現だからっていう理由だけでタカさんと同じ言葉を使ったとしても(言葉が)死ぬと思うんですよ。ただの言葉じゃなくて、倒置だったり、比喩だったり、リズムだったり、そういうのをすべて含めたタカさん独自の言語感覚があるし、ラップなんですよね。俺が最初観たときからそういうセンスや感覚がずば抜けていたんです。

BES:ありがとうございます(笑)。仙人掌も昔から生々しいラップをするし、自分の周りのことを歌っているのが聴いてすぐわかる。こっちもいままでそういう仙人掌のラップにずっとヤられてきたんで。俺がどんなに頭がおかしくなっても普通に付き合ってくれますしね。

仙人掌:ははは。それはホントに勘弁してくれって思いますけどね(笑)。

仮にダサいラッパーが言葉として良い表現だからっていう理由だけでタカさんと同じ言葉を使ったとしても(言葉が)死ぬと思うんですよ。ただの言葉じゃなくて、倒置だったり、比喩だったり、リズムだったり、そういうのをすべて含めたタカさん独自の言語感覚があるし、ラップなんですよね。 (仙人掌)

仙人掌も昔から生々しいラップをするし、自分の周りのことを歌っているのが聴いてすぐわかる。こっちもいままでそういう仙人掌のラップにずっとヤられてきたんで。俺がどんなに頭がおかしくなっても普通に付き合ってくれますしね。 (BES)

仙人掌 feat. ISSUGI & YUKSTA-ILL“STATE OF MIND”

それぞれの最新作を聴いてお互いどんな感想を持ちましたか?

BES:仙人掌は選ぶトラックがやっぱりオシャレだなっていうのはありますよね。

仙人掌:タカさんの選ぶビートは俺にはつねに驚きがありますね。『THE KISS OF LIFE』もかなりヴァリエーションがあるっすよね。

BES:そうだね。作り始めたときは振れ幅があってまとまりのないアルバムにしようと思って。最終的には起承転結のついたアルバムとしてまとまっているけれど、まずはそこまで意識しないで曲作りをしようと思った。次に作る曲のことを考えながらいま作ってる曲をやらないようにした。まず、目の前にある曲に対して思ったことを書いて、完成したら次の曲を録る。そうやって作ったね。(I-DeAを見ながら)先生もそれを手伝ってくれましたね。昔からレコーディングのときに的確なアドバイスをいただいているんで。

仙人掌:B.T.REOくんのビートの曲(“ピキペキガリガリ”)、おもしろいっすよね。ディストーションがかかったようなミックスにしてますね。あれは自分のアイディアですか?

BES:あれは先生のアイディアでしたね。

I-DeA:あれはBESくんのアイディアじゃなかったでしたっけ? BESくんがそういう感じにしたいって言ってたと思う。

BES:もう忙し過ぎておぼえてないっすね(笑)。

一同:ははははは。

MVもアップされている“Check Me Out Yo!! Listen!!”のRECはどうでしたか?

仙人掌:ビートが決まるのもRECも早かったですよね。ふたりでMalikのビートを聴いて「これだ!」って決めて、スタジオ行く前に駅前のマックで1時間ぐらいでリリックも書いた。即行作らないと緊張するんですよ。これまでタカさんと曲を作るとき俺のほうが待たせたこととか多いから。俺も無意識に力が入っちゃうんですよ。でも、俺、タカさんとやるときはラップ、キレてると思うっすね。

BES:たしかにキレキレですね。この曲のアナログも出しますよ。

仙人掌:だから、タカさんとやるときは「このフロウで食らわしてやろう」みたいな気持ちっすね。

SHAKUもかっこいいですよね。

BES:かっこいいっすよね。JOMOさん(〈bed〉のマネージャー/ヒューマンビートボクサー/DJ)に「最近〈bed〉でいい若いラッパーいます?」って訊いたときに名前が挙がったのがSHAKUだったんですよ。自主でCDも出しててかっこいいんですよ。今日、持って来れば良かったな。

仙人掌:このアルバムもそうだし、『REBUILD』も『Bunks Marmalade』も何がヤバいって、ほとんどのメンツが〈bed〉で完結してるんですよ。そうやってフッドを上げることはヒップホップのなかでいちばんかっこいい行為だと思うんですよね。それは何にも代えがたい行為でもあるし、そういうタカさんを尊敬してますね、俺は。

BES:ラッパーとしてのノウハウをおぼえていろんな勉強をして、お世話になってきた場所が〈bed〉だからね。すべてのきっかけとなったのが、俺はあそこだから。俺のホームなんですよ。だから、リリパは〈bed〉でやるって決めてる。今日もこれから〈MONSTER BOX〉でライヴがあるしね。

仙人掌:今日あらためて、普通に、冷静に、タカさんとこうやって話せるの、自分的にヤバかったです。ありがとうございました。

仙人掌“Be Sure”

取材・文:二木信(2017年3月31日)

12

Profile

二木 信二木 信/Shin Futatsugi
1981年生まれ。音楽ライター。共編著に『素人の乱』、共著に『ゼロ年代の音楽』(共に河出書房新社)など。2013年、ゼロ年代以降の日本のヒップホップ/ラップをドキュメントした単行本『しくじるなよ、ルーディ』を刊行。漢 a.k.a. GAMI著『ヒップホップ・ドリーム』(河出書房新社/2015年)の企画・構成を担当。

INTERVIEWS