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interview with Phew

interview with Phew

The Diva in The Underground

――アンダーグラウンドのディーヴァ、Phew

野田 努    photos : Yasuhiro Ohara   Sep 28,2010 UP

ないです......いや、まったくない。だけど、訊かれることはアーント・サリーや『Phew』になってしまうのは、もう仕方がないかなと思ってますけどね。でも、私のなかに愛着はないんです。愛着があるのは、強いて言えば、最新作ですよね。

■フューさんの作品って、つねにどんな作品でもトゲというか、ささくれ立ったものがあると思うんでけど。

Phew:あるのかなー(笑)

■と、思うんですけど、今回は音楽に対して違ったアプローチをしていますよね? 

Phew:トゲがないですかね?

■ないことはないと思うんですけど、今回はより柔らかく、より寛容な感覚を感じるんですよね。

Phew:それはね、曲の力だと思います。やっぱり......ちゃんとしいてます(笑)。歌い継がれてきたポップスというのかな、すごくちゃんとしいてますね。曲の力が大きいと思います。

■もちろんすべての曲が好きなんでしょうけど、とくに歌詞の点で好きな曲ってどれですか?

Phew:"どこか"ですかね。永六輔さんの歌詞が好きです。

■当時、リアルタイムで好きだったんですか?

Phew:いや、あとからですね。でもね、永六輔さんの書く歌詞は憶えているんですよ。"遠くへ行きたい"とかね、なんとなく子供心にあって......。"青年は荒野をめざす"も、なんとなくは憶えていて、あとから好きになった曲ですね。私がリアルタイムで好きだったのは、パンクですよ(笑)。

■そうでしたね(笑)。

Phew:パンクとドイツのニューウェイヴ。DAFも数ヶ月間、ものすごく夢中になりましたね(笑)。

■音楽家が歳を取っていくことについてはどのようにお考えですか? 

Phew:いわゆる天才、私がみて「この人すごい人だ」という人はみんな死んでいるんです。限りなく自殺に近い死だったり、非業の死じゃないですけど、結局、自分の場所が見つけられなくて死んでしまった。いつもその人のことがあります。生きているんだったら、なんか作らないといけないなというのがあります。本当に天才だけど、そういう人が認められなかった、音楽業界というか......。

■それは身近な方なんですか?

Phew:野田さんも知ってる人ですよ。クリスロー・ハース(元DAF、元リエゾン・ダンジェルース、Chrislo名義で〈トレゾア〉からテクノの作品も発表している。2004年に死去)。

■あー。

Phew:彼は本当にすごい天才で、彼の残した未発表がものすごいんですよ。たとえばノイバウテンの(アレキサンダー・)ハッケとか、「クリスローがいたから僕はシンセができないと思った」とか......。だから、ミュージシャン仲間ではものすごく認められていた。ああいう人が、力を発揮できずに終わってしまった音楽の世界ってどうよ、っていうのがあります。それだけにこだわるのは良くないと思うんですけど。あ、質問とちょっとずれてしいましたね(笑)。

■まあ、パンクも初期衝動における純粋な情熱みたいなものがあったと思いますし、それって強いものがありますけど、しかしアーティストも歳を取っていかなければならないわけですし、またリスナーの年齢層もずいぶん幅広くなっているし......。

Phew:歳なんか関係ないという人もいますけど、私は自覚してますね。51歳になるということも、すごく自覚している。初期衝動なんかとっくにないです。そんなものがいまもあったらただのアホですよね(笑)。でも、これ(音楽)でご飯を食べているわけではないので、止めたほうが楽だったりするんですけど、でも、別のところでやっていかないと、半分死んだ感じになる。それは身体感覚なんです。

■なるほど。

Phew:いまだにアーント・サリーや1枚目のアルバムについてよく話をされるんですけど、塚本邦雄の「表現者は処女作に向かって退行していく」という格好いい言葉があるんですけど、それを踏まえつつ作り続けるっていうことなのかなぁ。それは、「自分からは死なないよ」という感覚と近いものじゃないかと思うんです。

■フューさんのなかにはいまでもアーント・サリーに対する愛着もあるわけですよね?

Phew:ないです......いや、まったくない。だけど、訊かれることはアーント・サリーや『Phew』になってしまうのは、もう仕方がないかなと思ってますけどね。でも、私のなかに愛着はないんです。愛着があるのは、強いて言えば、最新作ですよね。

■なるほど。

Phew:新しいものを作っていかなくちゃという強迫観念はないです。でも、生きている限り、何かをやっていくだろうなと、死んだ人たちといっしょに(笑)。

■ちなみに、最近、家でよく聴く音楽は何ですか?

Phew:最近、クラスターが来日していたじゃないですか。そのときにメビウスから彼の作品をもらったんです。一昨年でたアルバムなんですが、それをよく聴いています。彼も取材されれば昔のクラスターのことをよく訊かれるだろうし、コニーズ・スタジオで録音した頃の話をよく訊かれるだろうし......。

■僕も初めて取材したときにそうしましたからね。

Phew:でも、いまでもシンプルなメビウス節っていうのがあるんですよね。そのねばり強さというか、体力というか、これは音楽の中心にあるものだなと思います(笑)。それを持ち続けることって大変なことだと思うんです。マニアの人たちからすれば「最近のクラスターなんか......」という意見があると思うんですけど、だけど「最近のもすごいな」と思います。これは初期衝動じゃないんです。もっと、生きているということに近いところにあるものだと思うんですけど。

■なるほど。

Phew:私、犬をずっと飼ってて、犬の写真をメビウスに見せたんですよ。「かわいいでしょ」って。そしたら「ベトナムで犬を食べた」とか。

■ハハハハ。

Phew:すっごい面白い人なのよね(笑)。ICCで取材を受けていたときも、態度悪いんですよ。「どんなアートの影響を受けたんですか?」と訊かれても「知らない。俺は何の影響も受けてない」とかね。66歳の言葉とは思えない。素敵だなと思いましたね(笑)。

■面白い人たちですよね。

Phew:実はファーストのとき、コニー・プランクがメビウスにも声をかけていたらしいんです。でも、ちょうどそのとき都合が合わなくて。それでメビウスのほうから絶対にいっしょにやりたいって、一時期やりとりしていたことがあったんですけどね。コニーズ・スタジオがつぶれてしまいましたし......。

■コニー・プランクが亡くなってからもスタジオは続いていたんですね。

Phew:2005年まで奥さんがやってました。スタジオの切り盛りをした奥さんが亡くなって、それで終わりましたね。機材とか売ってましたよ。「これはユーリズミックスの弾いたギターだ」とか。最初に行ったときにはすごく小さなスタジオでしたけど、2度目に行ったときは立派なスタジオになっていて、びっくりしましたけど。

■ところで、ご自身の作品をお子さんに聴かせることはあるんですか?

Phew:あー、ないない。人に教えられるんじゃなくて、自分で見つけて欲しいです。よく言うんですけどね、湘南乃風とか買ってます。

■ハハハハ! 家で聴いているんですね。

Phew:いまはマキシマム ザ ホルモンが好きですね。

■いい話を聞かせていただきました(笑)。

Phew:いやいや、親の趣味を強制するのはよくないなと思って。

■「カンを聴きなさい」とは言わないわけですね(笑)。

Phew:絶対に言わない(笑)。前に「パンクを聴きたい」と言うからイギー・ポップを聴かせたんです。そうしたら、「古い」って言うんです。マキシマム ザ ホルモンなんかすごい情報量だし、楽曲もよくできているんですね。だから、あれ聴いていたらイギー・ポップが古く聴こえるんだと思います。

■なるほど。そういえば、新作は、ジャケットが可愛らしいイラストになっていますよね。いままでは、マン・レイ風のフューさんのポートレイトがジャケットになっていましたけど......。

Phew:いやいや、これはもう、カヴァー集ということで第三者の視点を入れたかったんです。イラストを描いてくれた小林エリカさんはまだ30ぐらいの若い人で、こういう絵を描いてくれて、とても嬉しかったですね。

文:野田 努(2010年9月28日)

『Five Finger Discount(万引き)』発売記念ライヴ!

10.1 (fri) Shibuya CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 START 19:00
3,300YEN (adv.drink fee charged@door)

Phew
with
石橋英子(p)、ジム・オルーク(b,syn)、向島ゆり子(vl)、山本精一(g)、山本達久(drs)、山本久土(g)
Special Guest:七尾旅人

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