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interview with NaBaBa

interview with NaBaBa

ポスト・クール・ジャパンの情熱

画家NaBaBa、インタヴュー

橋元優歩    写真:小原泰広 画像提供:NaBaBa   Jul 19,2012 UP

なんでぜんぶ、女子の絵ばっかりなんでしょう?

でも、自己投影だったり自己模造だったりするんですよ、その女の子の絵も。

では素朴に質問するんですが、「悪夢のドリカム」展もそうですが、たとえばあのなかとかに女性・少女の絵しか出てこないのは、なんでなんでしょう?

NaBaBa:......ですよね。狙ったわけではないんですが、男性の絵が排除されていて女性の絵ばかりになってはいる。これは......なんでだろうな、日本のオタク文化の問題でもあると思います。性的な趣向という部分もある。オタク文化はしばらく男性本位のものでもあったわけで、しかもオタクだからリアルな女の子との接点もなかなかない......そんななかで女性の神秘性への憧れを引きずっているのかもしれない。ただ、いまの人たちや、このまえの展示に出ていたような方々が、そういうオリジンの持っていた憧れをどこまで引いているかはわからない。その様式だけを継承しているのかもしれないですし。まあ、オタクの象徴として女性を描くということはあるかなと思います。あと、ギャルゲーに男性の絵が出てこないことと同じかもしれないですね。

女性のほうも、じゃあ『テニプリ』(『テニスの王子様』)でもなんでも、イケメン・パラダイス的な消費とか動機とかがあるわけですが、それが反転しただけってことです?

NaBaBa:いわゆる腐女子の人とかは、男性をモチーフにされるわけですけど、男性のほうはそうやってモチーフにされることに慣れていなくって、われわれが腐女子の描いた男性の絵とかをみるとまだ生理的に受けつけられないんですよ。女性の場合はもうずいぶんと長いあいだ描かれつづけてきたからか、慣れているんじゃないでしょうか。たしかに男性本位で描かれた女性像なんだけど、それはそれとして女性も楽しめるという感じになっているんじゃないか。そこは一周まわって、『らき☆すた』や『けいおん!』とか、男性も女性も楽しめるハイブリッドが出てきているんじゃないかと思うんですけどね。いまは女性のモチーフというのはもともとの意味性を剥奪されて様式化・テンプレ化されてきてるのかなと。女性の描く男性はまだ男性も受け入れられるというレベルのテンプレ化まではきていない。

ポルノとしての機能を超えて、女性の描き方が様式化されてきているというのは納得もできるんですが、ではそうだとして、なぜ男性が男性をほとんど描かないんでしょう?

NaBaBa:なんだろうな、男性からみれば男性っていうのは魅力的ではないですし......僕についていえば、べつに男性を描いてもよかったんですけど、ピクシブなんかで目立つときに、戦略としては女性の絵を打ち出していかないとだめですよね。海外では、ある種マッチョなものへの嗜好として、男性が男性を描くっていうのはありますけどね。でも、自己投影だったり自己模造だったりするんですよ、その女の子の絵も。結果としては性別は女性に変えてしまうけどっていう。

あ、自己投影とか自己模造なんだ、なるほど......! あの女の子たちは自分なんですか......。説得力ある男性のモデル、テンプレってやつがまだできてないというようなことですかね。

NaBaBa:西洋絵画の歴史を紐解いても、女性の絵が多いわけで、それは男性社会だったから女性は絵が描けなかったということもあるかもしれないけれど、裸婦像なんかはポルノとしての役割を確実に果たしてもいた。女神だなんだと意味づけをして女性の裸を描く。描き方にもいろいろあって、ある方法にのっとればそれはオーケー。ポルノではない、とか。今回の出店した「あっち向けってんだろホイッッ!!」かは、指人間みたいなかたちで、男性の筋肉のキャラクターを描いてはあるんですけど、やっぱり、男性を出すときっていうのは、汚い、現実側の存在として描きますね。

父とか制度とかっていう?

NaBaBa:まあ、童貞的な世界観なのかもしれないですけどね。言ってしまえば。ギャルゲーに主役の男性像を抑えがちなのも、そういう、現実側の象徴が出てきてしまっては没入感が阻害されますから、そういうことかもしれません。かつては『Air』や、『Clannad』だのといったKey原作の京都アニメーションの作品だとかは男性のキャラクターが出てきてたんですよ。でもそれも最近はさらに排除されてきている。

童貞以外の「大人」の男性の像がない、というか、かたちにならないってこと自体クリティカルなことにも思えますね。あたらしい男の人のかたちが見えてこないことには、絵にもできない。音楽のシーンでも、2000年代っていうのはマッチョイズムの解体とともに進んできたようなところがあるんですよ。だから新しい音を創出してきた人たちは、ある意味で男性性を薄められた「しょぼい」存在かもしれないんです。けど、ならばこそ女性がそのよさを見つけ出して描いて取り出していくほうが簡単かもしれないですよね。

NaBaBa:父以外の男性の輪郭っていうのは腐女子文化によって整えられていくようにも思えますよね。それが、まだ男性の側まで届いていない。女性に理想像をつきつけられたときに、とまどってしまうことはあるかもしれないですね。僕らはまだそのような視線によって「みられる」ことに慣れてはいないですから。敗戦後はおそらく、日本では男性とか父というものに対してはある意味でダメオヤジ的な蔑むような視線が投げかけられてきたし、軍隊も持たなかった。アメリカのゲームに出てくるような強くて逞しい男性像は描きにくいです。

NaBaBaのこれから

線がブレてて、マティスっぽい背景で、建物が水墨画で、手がワタワタしてたり......

では、しめくくりとしてこれからのご活動の予定や告知などをおうかがいしたいと思います。

NaBaBa:予定は未定といったところもあるのですが、いちばん大きいのは今回の「悪夢のドリカム」展の海外での展示が控えていますので、それにむけての準備というところになるかと思います。遠い未来には自分でゲームを1本作りたい。......これ、あちこちで言ってるんで、ほんとに実行しないとまずい状況にはなってきました(笑)。

その海外にむけての準備というのは、具体的にはどういうことになりますか?

NaBaBa:そうですね、すでに新作を何点か描こうというようなことにはなっています。ライヴ・ペインティングで描いていたもの(http://www.ustream.tv/recorded/23047115)を完成させようかなと思っております。これはニコ生のほうで流れたときにいろいろとコメントがついていたんですが、ひとりだけ、昼の1時から夕方6時まで、ディスのコメントを書きつづけていた人がいたんです。たしかにディスなんだが、こんな時間ずっとこの映像にかじりついてコメントを書きつづけている執念はなんなんだと。マティスっぽいからダメだとか、水墨画のほうがいいとか、線がブレすぎ、とかいろんなことを言われたんですが、じゃあ、この人の批判点を全部ひとつの作品のなかに盛り込んだら、彼はいったいどんな気持ちになるんだろうと思って、描いちゃおうと。

あははっ。

NaBaBa:線がブレてて、マティスっぽい背景で、建物が水墨画で、手がワタワタしてたりとか、そういうオーディエンスとの緊張関係はこれからも作りつづけていきたいなと。

インタラクティヴ性みたいなことのほかに、相手の要求を技術的にも満たすっていう緊張感がありますね。

NaBaBa:そうそう。文句は言わせないけど、君の要求することは全部入れました、みたいな。やっぱそこは意識的にやられちゃうと、まえのような批判はもうできなくなると思うんですよ。その掛け合いは楽しみたいですね。

(笑)ぜひ、会場でもそのときのニコ動の映像を流してください。

NaBaBa:もう、絵のタイトルをそいつの言った言葉全部つないだやつにしようと思ってます。

(笑)とてもおもしろいお話をうかがうことができました。ありがとうございました。


取材:橋元優歩(2012年7月19日)

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