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interview with Daphni

interview with Daphni

僕はクラブで汗をかいている男

──カリブーの名義で知られるダン・スナイス、インタヴュー

野田 努    通訳:Hikari Hakozaki   Oct 02,2012 UP

Daphni - Jiaolong
Merge/ホステス

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 『スイム』で感心したことは、それがダンス・ミュージックであること以上にエクスペリメンタル・ミュージックとしての面白味があったことだ。
 ジミ・ヘンドリックスはその昔、水中で音がどのように響くのかに興味をふくらませたあまりアンプごとバケツのなかに沈めたというが、水中の音体験を空想して作ったという『スイム』は、録音も凝っていて、身軽で心地よい体験だった。僭越ながら言わしてもらうと僕は水泳も好きで、昨年はwhy sheep?と50メートル自由形で勝負して勝った(まあ、どちらも遅いということでもある)。『スイム』は真剣勝負というよりも水遊びに近い。アーサー・ラッセルの歴史的名曲"レッツ・ゴー・スウィミング"の現代版である。
 カリブー名義で昨年発表したその『スイム』は、2011年、ほぼすべてのメディアから賛辞された。カリブーは、そして、リミキサーとしてもレディオヘッド、ジュニア・ボーイズ、それからジャイルス・ピーターソンにまで引っ張られている。かつてマニトバ名義でIDMもしくはサイケデリック・ロックにアプローチしていたダン・スナイスにとって、ダンスを意識した『スイム』は出世作となった。
 『スイム』は、彼に取材したときに聞いた話では、ロンドンのクラブ・カルチャーの活気に影響を受けて生まれている。セオ・パリッシュやポスト・ダブステップの面白さにうながされて、彼(ダン・スナイス)と盟友フォー・テット(キエラン・ヘブデン)はダンス・ミュージックにアプローチした。
 『スイム』が徹底徹尾のダンスだったわけではない。彼らしいIDM的なアプローチがところどころにあった。そこへいくと今回彼がダフニ名義でリリースするアルバム『ジャオロン』は、完全なダンス・ミュージックである。

夜遊びに出かける前のワクワクした感覚さ。そうやって作った曲をクラブでためしにプレイしてみたあとは、それ以上曲をいじることはしなかった。その時点でできたものを気に入ればそのままキープして、そうじゃなければ曲を消してしまったんだ。

『ジャオロン』は、あなたがダフニ名義で発表した作品やあなた自身のレーベル〈ジャオロン〉から発売されたシングルの編集盤+新曲ですが、エメラルズのダフニ・リミックスをなぜ入れなかったんですか? 正直入れてほしかったです! 

ダン:ありがとう、リミックスを気に入ってくれてうれしいよ。アルバムに入れなかった理由は、あれは実際エメラルズの曲だし、それにリミックスの曲はすでにデジタル・フォーマットで手に入るからさ。アルバムには1曲だけリミックスとして収録されている曲("ネ・ノヤ")があるけど、あれはリミックスとして制作したわけじゃなくて、コス・ベル・ザムのトラックをサンプリングした僕自身の曲として作ったんだ。でもコス・ベル・ザムのトラックの権利上の理由で、サンプルの使用権をクリアするためにはリミックスとして表示しなきゃいけなかった。

東京には〈テキスト〉や〈ジャオロン〉の固定ファンがいるので、わりとすぐに売り切れてしまうんですよ。ところで、通して聴いていて、あなたが楽しんでダンス・トラックを作っているのが伝わってくるようなCDになったと思います。まずはダフニ名義での活動と〈ジャオロン〉レーベルのポリシーみたいなものを教えてください。

ダン:僕にとってキーとなっているのは、どの曲もすばやく、そして僕自身がDJをするときに使うための新しい曲を作るっていう具体的な目的のためってことかな。曲の多くは、金曜か土曜の午後、DJのために飛行機でヨーロッパのどこかへ行く前に作っていたから、短い時間でいっきに完成させなきゃいけなかった。いまでも聴き返すと、ちょっとした間違いがあっても戻ってやり直したりせずに、急いでいっきに曲を書いているときの熱狂的なエネルギーが感じられるよ。
 曲がそういうエネルギーをうまくとらえてくれているといいなと思っているんだ、夜遊びに出かける前のワクワクした感覚さ。そうやって作った曲をクラブでためしにプレイしてみたあとは、それ以上曲をいじることはしなかった。その時点でできたものを気に入ればそのままキープして、そうじゃなければ曲を消してしまったんだ。

"パリス"みたいな曲には、ちょっとかわいらしい感覚が打ち出されていますよね。ある種のかわいらしさはこのコンピレーション全体にも言える感覚ですが、あなた自身は意識されましたか?

ダン:いや、意識してそうなったわけじゃないよ。でもまちがいなく、カリブーのレコードよりも楽しい感じのする要素が多くなっていると思う。あまり高尚なコンセプトにこだわったりしたものを作るよりも、 人びとが楽しんでくれるような要素を残したものを作りたかったんだ。

音数が少なくスペースがあって、80年代のシカゴ・ハウスやデトロイト・テクノみたいなファンキーな感覚もありつつ、あなたらしいIDM的なアプローチある、とてもユニークなトラック集だと思いました。たとえば"スプリングス"のような曲もユーモラスでお茶目な曲ですが、同時に即興的で、ライヴ感のある曲です。あなたのダンス・トラックにおいて、即興性は高いんでしょうか? 

ダン:かなりあるね。曲の多くは、サンプリングやプログラミングされた音に対応してモジュラー・シンセサイザーを僕が演奏するっていう形で作ったんだ。"スプリングス"はそのいい例さ。トラックを流しながら、シンセサイザーのつまみをいじって作った。だからベース・ドラムのピッチが上がったり下がったりしているんだよ。その予測不能さがクラブで作り出すエキサイティングな感覚が好きだね。

即興性について訊いておいてこんなこと言うのもなんですが、"ライツ"みたいな曲を聴くと、本当にリズミックな感覚を楽しんでいるなと思います。注意深く聴いていくと、曲の展開に関しては、なにげにかなり工夫されていると思いました。あなたがダンス・トラックを作るさい、どんなところに力を注いでるんでしょうか?

ダン:そういうもの(展開やアレンジ)の重要性は低いよ。カリブーの曲を作っているときにはそういうことを長い時間をかけて考えるけどね。"ライツ"の展開がうまくできていると思ってくれてうれしいけど、あれもすごくすばやくジャムをして作ったんだ。とくに途中のアシッドっぽい部分とかにそれが表れているんじゃないかな。

取材:野田 努(2012年10月02日)

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