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interview with Downy

interview with Downy

インド、ビートルズ、沖縄、朔太郎。

――ダウニー(青木ロビン)、ロング・インタヴュー

橋元優歩    Nov 28,2013 UP

柔らかくなりあたたかくなること

いま思うと、昔はいろいろ相容れないというか、「自分は発散するけどひとのものは容れない」っていうタイプだったのかもしれないですね。いまはわりとシンプルに入ってくるし、それをまた出していけるし。

すごくいいお話です。曲はギターで作る感じですか?

青木:いや……? メロディが先な場合もありますし、トラックを作ってそれに歌を乗っける場合もあります。それに付随してコードを変えていったりとか、アレンジを変えてアンサンブルを変えていったりとか。ここでもっと盛り上げたいとか。ここはノイジーなんだとか。みたいなことは伝えますけどね。

ああ。ひとりで趣味で曲を作っているとおっしゃっていたので、もしギターを爪弾きながら曲が出てくる感じだったとすれば、それはそのままサッドコアみたいなものになるかなーと思ったんですけど。

青木:曲によりけりですね。“燦”とか“雨の犬”だったら、ギター弾きながら歌って作って、メンバーに送って、メンバーが楽器をつけていくって流れだったり。曲によっては完全にリズムから先に組んじゃって、それを叩いてもらってアレンジしてもらってとか。全然まるで変えてきちゃったりするんで、彼らは(笑)。メンバーが3人でスタジオに入って作ってきたものを僕に投げて、僕がそれをまた構成立ててっていうのもあれば、いろんなかたちがあります。

なるほど。さっき、ライヴだと映像でちゃんとイメージが提示されるってお話がありましたけど、映像でもダウニーは際立った作家性を残されているっていう印象があります。それは作られているメンバーの方が――

青木:zakuroです(笑)。

(笑)zakuroさんに一任されている感じなんですか?

青木:もちろん彼も作るんですけど、彼はディレクターみたいな形かな、いまは。いちばんわかりやすく言うとそんな感じです。あとは現場のVJですね。ひとの紹介だったりとか、僕が何人か挙げていったひとたちのパイプ役をやってもらっていて。そのあたりのイメージがわりと共通している。僕のことをすごく理解してくれています。いまは、これはないよね、これはあるよね、みたいなことをやってもらっていますね。もちろん本人もPVを作りますし。でも、今回は9年のなかで出会ったひとたちがいて、彼らとやってみたいなっていうのがあるので、オファーしているところです。いま数人でいろいろ作っていますよ。

あ、なるほど。映像も歌詞に負けず劣らずというか、けっこう思索的な内容を含んだものだなーって感じるんですよ。過去のもので、“漸”とか、“形而上学”とかの、ずっと扉が開いていくイメージ。あの正解のなさみたいなものを突きつけてくる感じっていうのはzakuroさんの個性だったりするんですか?

青木:“形而上学”は小嶋さんって方にやってもらったんですけど、それも当時僕の頭にあるものを無理矢理具現化するみたいなところがありましたね。当時は「この手法を試してみたい」とかって思って、自分でもカメラ持ちましたし、編集も立ち会いましたし。「もっと画角を」とかですね(笑)、そんなことを言ってたんです。今回は大人になって寛容になったので、向こうが言っているものが良かったりもするって、気づきました。いいものをどんどんオッケーしていけばいいなーと思ってます。

あ、じゃあその寛容さっていうのが一種の歌心みたいなものを引き寄せたりもしてるんですかね?

青木:そうなのかもしれないですね。自分では自分のことなのであんまり考えてなくて、インタヴューされてはじめて考えることのほうが多いんですけど。やっぱりいま思うと、昔はいろいろ相容れないというか、「自分は発散するけどひとのものは容れない」っていうタイプだったのかもしれないですね。いまはわりとシンプルに入ってくるし、それをまた出していけるし。ふたつのアイデアなら、1たす1は2じゃなくて、3以上にしなければいけないわけですし。それができるようになったのがいまの強みなのかなとは思っていて。考えもしなかったんで……たとえばひとに曲を書くとかですね。なんか、できるようになりました(笑)。

はあー、なるほど。本当にいいお話です。いろんな自分のなかの扉みたいなものが開かれていく感じだったんですかね。

青木:まあ、揉まれましたよね(笑)。

なるほど(笑)。

青木:いや、やっぱ優しいひとにいろいろ出会って。みんな優しいなと思って。自分もですけど、子どもを見る目としてこんな気持ちになるんだなっていうのが強くあって。何て言葉にしていいかちょっとわからないんですけどね(笑)。もちろん自分の大事なものは絶対守んなきゃいけないですし、自分の正解は必ず残すんですけど、もっといろんな見方があって、その見方を受け入れることができなかったら逆に向こうも受け入れてくれるわけがないというか……。現時点ではそこにいるんだと思います。

ハッピーだからハッピーな曲になるとか、そういう単純な表現をしないわけじゃないですか。一見重たくて厳しいような感触がありますが、今回の作品にはおそらくそういうふうなものが溶け出ているんでしょうね。

青木:はい。そうだと思います。今作は自分のなかでめっちゃ明るいんですけど。めっちゃ明るい曲ばっかり並んでるなーと。だけど、いままでダウニー好きなひと大丈夫かなー、みたいな(笑)。

へえー! それすごく太字で書きたいです(笑)。

青木:明るいって言われるんじゃないかなと思ってたんですけど、どうやらそうは思われないみたいなんで、それはそれで良かったと思うんですけど(笑)。

5人が5人とも、いろんな経験をしてきたところで、単純に人間性がにじみ出た作品だと思うんですね。だから僕のなかでかなり温かい作品なんです、今回は。むしろ暑苦しいなと思っていて。

ははは! 明るいというか、プロダクションがすごく綺麗に整えられてる、角とかガサガサしたものが削られてるという感じは受けましたけどね。元々すごくソリッドなギターの音だったり、それこそポスト・パンクっぽいっていうような、ラフさみたいなものがあったと思うんですけど、今回はすごくクリーンというか音響的に透き通っているというか。ジム・オルークとまで言うと何なんですが(笑)、そんな印象を受けました。そのあたり、考えていたことはあるんですか?

青木:でも元々ダウニーは、ひずみ、ブーストするのがイヤなんで。

あ、そうなんですか? さっき言っていたようなシューゲ否定みたいな感じがあったわけですか。

青木:そこまでは言わないですけど(笑)、ひずませればいい、みたいなのがなんかね……。誰でもできるし。もっとアンサンブルで凶暴さを出すってことですね。リズム・セクションとして凶暴さというか、僕らの持っている闘う姿勢を出していけたらいいなと、いつも思ってやってます。あんまり姿勢としては変わってないんですが、やっぱり僕らも年を取ったし。5人が5人とも、いろんな経験をしてきたところで、単純に人間性がにじみ出た作品だと思うんですね。だから僕のなかでかなり温かい作品なんです、今回は。むしろ暑苦しいなと思っていて。どう映るかはちょっと置いといて(笑)。

あー、でもそれはすごくいい話です。

青木:いまの僕らにできること。だから無理矢理冷たくすることはやっぱりいまの僕らにはできないですし、怒ってないのに無理矢理怒ることもやっぱりできないです。ほんとに、いま僕らのあいだにある人間関係が生み出したものなんじゃないかなと思います。
 だからわりと楽しく作って――まあもちろんキツいんですけど。ダウニーっていうのは制作自体がほんとに何回でもボツりますし、何回でもやり直すし、正解がどこにあるのかほんとにわかんなくなるときもあるぐらい悩みながら、トラック・メイキングしていくっていうバンドなんです。それをしかも、PCという選択肢もあるのに、わざわざ自分たちで弾き直してやるので。すごくキツい作業ではあるんですけど、わりと楽しくというか、またこのバンドでできるっていう喜びをちゃんと味わいながらやれていたとは思います。

その楽しさとか温かさ、柔らかさ、それから10年分の成長なり、音楽との出会い直しとかっていう新しい要素のいっぽうで、これまで一貫してきたものとして、いま「闘う」っていうキーワードが出てきましたね。それは、何との闘いってことなのでしょう?

青木:やっぱり自分たちの作ってきたものを、10年経っても聴いてくれるひとがいて、音源を出してくれるレーベルがいてくれるというだけでも、「どれだけ信頼してるんだよ」って――愛してもらってるんだなって思うので、そのひとたちに「ダウニーはやっぱりまたスゲーの作るな」と思わせなきゃいけないですよね。
だから、いちばんの敵は自分たちだし、自分らは前作を超えなきゃいけないですし。そこについては、メンバーがみんな一貫して「ダウニーっぽい」っていうイメージを持ち続けていたのが――首を絞めもしましたが(笑)――結果やりやすくなったんじゃないかなと思います。まずレーベルのひとたちがカッコいいって言ってくれないとはじまらないですし、僕ら自身もそうですし。

自分たちが闘いの対象だというのも、ダウニーのストイックな部分のひとつだと思うんですけれども、もうちょっと社会的な部分で、外に向かう闘いみたいな、そういうことはあんまりないんですかね?

青木:まあ、べつにシーンに一石を投じるとか、そこまで大仰なことは僕も思っているわけではないんですが……。9年のブランクがあって、僕はいわばルーキーなんですよ、いま。イメージとしては学生ぐらいの感じなんで(笑)。ほんとにギター持ったばっかりの頃の初心に戻っているので、そこまでおこがましいことは思っていないですね。まあでも、ファン以外の人にも聴いてもらうわけですから、他のバンドに「あいつらと対バンしたくねー」ぐらいに思われることはやんなきゃいけないと思います。自分らの音楽が、いまのところの自分らの正解であるというところまでは、ちゃんと作り上げたいので。
 社会に対して、という部分は、僕ら元々そういうスタンスでもないですから。もっと単純に、「こういう表現がしたい」っていうことを突き詰めているバンドだと思います。僕に至っては、自分の頭にあるものを映像でも何でもいいから吐き出していくというだけですしね。そこを目的にしています。

取材:橋元優歩(2013年11月28日)

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