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interview with Passepied

interview with Passepied

Jポップ・オブ・ポップ

──パスピエ、インタヴュー

橋元優歩    Jun 18,2014 UP

「理想」と言えない感じ。たとえば、いまは昔にくらべて、いわゆる「応援ソング」ってものが嘘くさくなってしまいましたよね。「がんばれ」って言うと批判をくらってしまう時代というか。   (成田)

理想を言えない時代の“Shangri - La”

野田:それで“Shangri - La”(『MATATABISTEP/あの青と青と青』、2014年)をやるっていうのは、電気グルーヴのなかにニューウェイヴっぽさを見たというようなところなんですか?

成田:もちろんそれもあるんですけど、やっぱり僕はその「シャングリラ(理想郷)」っていうテーマ自体に惹かれたんだと思います。なんか、いまやることで時代の気分が出るかなとも思いました。それに、「電気グルーヴがやりたい、そのなかで有名な曲を選ぼう」ということではなくて、電気グルーヴと“Shangri - La”がセットだったという感じですかね。

■なるほど。

成田:いまは「理想」っていうことを聞かなくなったと思うんです。世の中的に。

■シニシズムということですか?

成田:うーん、そういう「理想」が言えない時代だというか。僕らが“Shangri - La”をやることによって、それを新たな意味で示すことができるんじゃないかという思いがちょっとあります。音楽的にはまじめにやっているんだけど、とらえられかたとしてフェイクに見られてしまいがちなところもふくめて、僕らがやることでぜんぜんちがう意味を乗せられるんじゃないかなと。

■ストレートに「理想」というものを蘇生させたいというのとは違って……?

成田:逆ですね。「理想」と言えない感じ。……たとえば、いまは昔にくらべて、いわゆる「応援ソング」ってものが嘘くさくなってしまいましたよね。「がんばれ」って言うと批判をくらってしまう時代というか。そういうことに近いと思います。「理想」といっても、だから、「シャングリラ」はユートピアとディストピアのどっちの意味にもとれる感じです。

野田:いま電気グルーヴを何か1曲やるとなったら、大抵は“虹”になると思うんだよね。「やっぱり昔は美しかったね」というか。そこで“Shangri - La”を選ぶというのは興味深いなと思いましたよ。

■たとえばtofubeatsさんが森高千里さんをフィーチャーしたりしていますよね。彼はとても頭がよくて、いま誰をどの文脈から引いてくるかというような駆け引きや批評に非常に長けているじゃないですか。

成田:そうですね。

■それから、それによってもっとも有効にポップ・マーケットを利用して、時代を手前側に動かしてやろうっていうような志もあると思うんです。お会いする前はもしかすると成田さんにもそういったところがおありかなと思っていたのですが、ちょっとちがってましたね。ポップ・ミュージックのシーンへの向かい方をどんなふうに考えていますか?

成田:そこはむしろすごくコンプレックスでもあったところですね。僕は中学、高校でまったくバンドというものをやってこなかったので、そういうシーンに身をおいて活動していくことに対しては初期衝動ゼロの地点からスタートしているんですよ。メンバー集めも、どんな音楽をやるかというのも、全部探しながら見つけてきたものであって、そのなかでおもしろいことをやるなら知識をつけなければだめだなという思いへとベクトルが向いていきました。

僕は中学、高校でまったくバンドというものをやってこなかったので、そういうシーンに身をおいて活動していくことに対しては初期衝動ゼロの地点からスタートしているんですよ。 (成田)

 でも、発信したいということの根元には純粋な気持ちがあると思うので、曲作りに関してはとくにまわりやシーンを意識したりすることなくやっていると思います。それをどう見せていくかということには注意していますけどね。『演出家出演』も今回のも、曲自体はそんなに変わっていないんですけど、歌の録り方とかバンドの録り方っていうのは180度変えているので、それでこれまでもお客さんの層が変わってきたし、これからも変わっていくんじゃないかなと思っています。

■初期衝動ゼロからのスタートっていうのは、パスピエの音楽を語る上ではとても本質的な言葉のような気がしますね。それに、とくに2000年代は初期衝動的なものを表現の原理とかバネにしづらかったと思うんですよ。そこにうまくはまった部分もあるんじゃないでしょうか。

成田:はまったというか……うらやましかったですね、そういうものが。

野田:神聖かまってちゃんといっしょにツアーを回ったりもしてたするじゃない? 彼らなんて初期衝動の塊だもんねえ。

成田:ああいう音が出したくても出せないわけで、それをどうしていけばいいのかなっていうことです。

パスピエをはじめてからずっとやってきたことが、「パスピエで表現すること」だったので。 (大胡田)

初期衝動ゼロからのスタート

■そこは大胡田さんはどうなんでしょう? 裸足で絶唱する、というようなことはないじゃないですか。激しかったりした時期はないんですか?

大胡田:わたしはほとんど衝動ではじめているとは思うんですが、そのスタートがすでに激しくないというか。

成田:(笑)

大胡田:たとえば絵を描きたい、歌をうたいたいと思っても、それにのめり込めないというか……。絵とか歌とかは使うものだと思っているので。だからそこにすごく熱を入れて「出してやるんだ」みたいなことはあまりないですね。全部が表現する手段のひとつです。

■じゃあ、仮にパスピエがなくなったら歌ったり描いたりしないと思います?

大胡田:しない……かもしれませんね。

■ははは! なるほど。そしたら何をするでしょうか?

大胡田:……何もしないかもしれませんね。

成田:だって、最近の夢が「よく眠れるベッドを買うこと」ですよ(笑)?

■(笑)

大胡田:わたし、最終の目標はそこなんですけど。

■それ、永遠のやつじゃあ……

大胡田:パスピエをはじめてからずっとやってきたことが、「パスピエで表現すること」だったので。いちど全部やめて、またやりたくなったらやるという感じになるかもしれないですね。

■へえー。なんでもできるのに。それゆえですかね?

大胡田:「なんでもできる」っていうのは、「なんでもやろうと思えばできる」ってことになるのかもしれないです。

成田:まあ、求められればやると思いますけどね。

大胡田:歌うということ自体、パスピエに入ってはじめたことですし。もしやめたら、次のフィールドを探すことからかな……。

■なるほど。超然としていて……かっこいいです。

取材:橋元優歩(2014年6月18日)

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