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interview with Nagisa Ni Te

interview with Nagisa Ni Te

また正月かあ!

──渚にて(柴山伸二)、インタヴュー

   Dec 29,2014 UP

しまい込んでいたギターを押し入れから出してきて子どもがいないうちに触ったら、「こんないい音がするんやな!」と、自分でギターを再発見してしまったというか。

湯浅:それで新鮮さはあるんですか?

柴山:さすがに何年か触らなかったから新鮮さはありましたね。で、最初にできたのがタイトル曲の“遠泳”で、歌詞もほとんど悩まずに自然と出てきました。次はこうだな、っていうのがわかったんです。誰かが用意していてくれてたのかなって思いました(笑)。ライヴのほうも妊娠中期くらいから休んでいたので、5年ぶりくらいにそっちの方も再開したんですよ。そのときは活動休止以降の新曲だけでやって、昔の曲はアンコールで2曲やっただけでした。

湯浅:ライヴのときは子どもをどうするんですか?

柴山:最初は地元の大阪でしかライヴができなくて、しかもランチ・タイムで12時半スタートっていう(笑)。妹が車で来られる距離に住んでいるので来てもらいました。妹はとっくに子育てが終わっていて、いちばん上の子はもう就職してたから、時間の余裕があったんですよ。だから妹に子守りをしに来てもらうという(笑)。妹にはなついていたので安心できました。妹に朝9時に家に来てもらって、僕は午後4時までに帰ってましたよ。妹も5時までには帰って晩ご飯の支度をしなきゃならなかったので(笑)。

湯浅:そういう生活上の縛りがあったほうが、やることがまとまるのかもしれませんね。

柴山:メリハリがつきますね(笑)。いい意味で緊張感が生まれる。まだ小学1年生なので、夜のライヴはちょっとできないんですよ。発売記念だけはしょうがないから東京で夜にやりますけど、どうしても一泊になるのでそのときは妹に預けて、次の日夕方の明るいうちに帰るっていう(笑)。

湯浅:1年生だとあと10年はかかりますよね。

柴山:ライヴの会場にはまだ連れて行けないですよね。小学校高学年くらいになったら、いっしょに行こうと思います。中学くらいまでは厳しいかな。

湯浅:中学くらいになれば、行きたい時に行けますけどね。坂本慎太郎くんの子どもが中学2年生で、オシリペンペンズのライヴを観に来ていて、このあいだ会いましたけど。好きな音楽も選べるし、自分のオヤジの音楽聴いているって言ってたよ。それでペンペンズのファンだから来たって言ってました(笑)。

柴山:ペンペンズの方が好きなのかな(笑)。


使う単語が歳をとって簡単になっていると思います。自分で漢字で書けないものは使わない、みたいな。

湯浅:ところで、生活のなかで詞を書いていくにあたって、やっぱり昔使っている言葉と、いま使っている言葉って少しちがうっていうのはあるんですかね?

柴山:多少はちがうと思いますけどね。

湯浅:それは意識的に変えていくってことかな?

柴山:使う単語が歳をとって簡単になっていると思います。自分で漢字で書けないものは使わない、みたいな。

湯浅:それは俺もよくわかります。

柴山:「喪失感」とかね。「喪」が書けない(笑)。

湯浅:でも若い頃って、けっこう無理して難しい言葉を歌おうとしていたってことないですかね?

柴山:ありますよ。はっぴいえんどの悪影響を受けて。国語辞典を引っ張り出してきて「寂寥なんです」なんて歌詞を作って真似事をしていた時期がありましたね(笑)。これはオフにしといてください(笑)。

湯浅:何かこう、到達しない部分もあると思うんですが。

柴山:歌詞がですか?

湯浅:いや、音楽全体で。つまり、昔は無理してやっていたけど、いまでは多少はできる部分もあるんじゃないのかなって思うんですよ。

柴山:いまは逆です。昔できていたことがいまはできない(笑)。高齢化とともに、記憶と体力が衰えましたね。やっぱり50歳を過ぎたあたりから。歌詞を全部暗記できなくなったとか。20年前は全曲普通に暗記してやっていたのに、いまは譜面台を置かないと歌詞が途中で出てこない(笑)。

湯浅:あれは一回置いちゃうとだめですね。

柴山:昔はなかったんですけどね。だんだんできないことが増えている(笑)。で、その中で必要に追いやられてシンプル化が進められてきたという感じです。退化していっているような。

湯浅:やり過ぎない部分というのもあるのかもしれないですね。結果的になのかもしれないけど。

柴山:音楽的にも歌詞にも、よく言えば無駄が無くなってきたというか。ハッタリをかます必要性が無くなってきたというか。やっぱり30代くらいまでは虚勢を張ってみたりだとか、ありましたね。


音楽的にも歌詞にも、よく言えば無駄が無くなってきたというか。ハッタリをかます必要性が無くなってきたというか。

湯浅:柴山さんにもあります?

柴山:ありますよ。誰にでもあるんじゃないですか? 「お前らにこれがわかるか?」みたいなハッタリをぶつけたい衝動が。

湯浅:それはありますけどね。

柴山:村八分的な。「今日はのらないし、やめるわ」みたいな(笑)。

湯浅:ははは(笑)。あれなんか、憧れがあるんですか?

柴山:ちょっとやってみたいなと思いますよね。でも、あれはチャー坊だからサマになるんで(笑)。

湯浅:真似しても、今日は具合が悪いのかなって思われたりして。

柴山:次に会ったとき「スイマセン」って謝ったりして(笑)。そういう憧れみたいなものもだんだんとなくなってきたりして、自分のスケールも「まぁ、こんなもんなんだな」みたいな(笑)。よくも悪くも自分に見切りがつくようになってきたというか。でもまぁ、できることとできないことは、人それぞれにあるものなので。自分には何十行もあるような歌詞は作れないなとか(笑)。昔に比べたら、やっぱり言葉数は少なくなりましたね。だけど、ちょっと尺が長くなりました。短い曲が減って、5分以上の曲がほとんどになって。年寄りの話は長い、みたいな(笑)。

湯浅:でも一音一音の間合いが長いというのはあると思うんですけどね。

柴山:でもそれは自分ではよしと思っていますけれどね。長くなったといっても無駄があるわけではないので。ギター・ソロとか回数が決まっているんですよ。“残像”とかはライヴで長くなる余地が残っているので、レコーディングでは詰めましたが、ああいうのも別にここまで短くしてもなんの支障も出ないというか。“残像”はCDだと10分程度なんですけど、ライヴだと15分以上とかになります。

湯浅:そうですよね。スタジオだとまとめるほうへ行きますよね。

柴山:CDは2枚組にはできないんで、70分くらいには押さえなきゃいけないという。

湯浅:まぁでもアナログなら確実に2枚組だから。

柴山:だからアナログを出してほしいんですけど、2枚組がネックになってディレクターから返事がこないという(笑)。

湯浅:2枚組はジャケ代がかかりますからね。

柴山:CDなんか出さないで、アナログとダウンロード・チケットのセットを販売したらどうか、と提案したんですけど、返事がなかったですね(笑)。やっぱりニール・ヤングとかそういうクラスじゃないと無理かな?

湯浅:アナログにCD付録がいちばんいいですね。

柴山:CDは売れないって、売る方も買う方も言っているのに、なんでCDを出すんだっていう気もしますよ。

湯浅:そうですね。アナログを作る人がもう少し増えたらと思いますけど。化成(東洋化成)しかないから。

柴山:国内一社だけで値段が決まっちゃってますからね(笑)。一時期、東欧のプレスが運賃考えても安く作れる、というんで流行ったこともあったけど。

湯浅:なんかヨーロッパのプレスって音が悪いんだよな。

柴山:コストは安くても、再生ビニール使っている感じがしますよね。東洋化成さんにもうちょっと値段を安くしてもらって(笑)。

湯浅:立ち会いもできるし、環境はいいんだけどね。あれは独禁法に触れないのかな(笑)。

柴山:文句言う人が誰もいないんですね(笑)。

取材:湯浅学(2014年12月29日)

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