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interview with Nosaj Thing

interview with Nosaj Thing

ノサッジ・シング──アンビエントで繊細な美学をもった新作を語る

序文:小林拓音、質問:野田努    通訳:長谷川友美 写真:小原泰広   Dec 27,2022 UP

ジュリアナ(・バーウィック)の最新アルバムに参加していて交流があったから、この曲を聴かせてみたところ、それが彼女にとって生まれて初めて歌詞を書いてみようと思うきっかけになったみたいで。

■先ほどマッシヴ・アタックやトリッキーの名前が挙がりましたが、まさにその影響を大きく感じさせるのが “Blue Hour” です。この曲にはジュリアナ・バーウィックが参加しています。彼女もわれわれのフェイヴァリットで、当然あなたも大好きなアーティストだと思いますし、彼女のアンビエントが素晴らしいことをあなたの前でことさら言う必要はありませんが、このアルバムにおける彼女の起用法はとても気に入りました。

NT:この曲はそもそもインストゥルメンタルからはじまったんです。ぼくは画像や映像からインスピレーションを受けることが多いんですが、この曲もガールフレンドが撮った短いビデオをスマホで見ていたらコードが浮かんできて、そこから作曲しました。ぼくはジュリアナの最新アルバムに参加していて交流があったから、この曲を聴かせてみたところ、それが彼女にとって生まれて初めて歌詞を書いてみようと思うきっかけになったみたいで。彼女はいつもコーラスのような歌い方で、歌詞を書いたことがありませんでした。今回初めてちゃんと歌詞を書いて歌ったんですね。そういう感じでコレボレーションしつつ曲をつくったんですけど、じっさいに彼女と一緒に作業をしたのは2回だけです。

■“Grasp” に参加しているコビー・セイもわれわれのフェイヴァリットのひとりなのですが、彼とはどうやってつながったのでしょう? 彼のどんなところを評価していますか?

NT:この曲は個人的にもとくにお気に入りなんです。最初は自分でドラムを叩いてプログラミングをして──という感じで、この曲も最初はインストゥルメンタルにしようと考えていました。それからギター・リフを弾いたり、なんとなくつくってはいたんですけど、そのまま数か月放置していたんです。でもずっと気にはなっていて、この曲をどう練りあげていくか頭の片隅で考えていて。
 そこでサム・ゲンデルに「アイディアを足してくれない?」と頼みました。そしたら彼がサックスのパートを送ってくれたので、インストにサックスが載った感じの曲にしようと思ったんですが、それでもどこか完成していないように感じていました。どうしようか悩んでいたところ、〈Lucky Me〉のダンというひとがコビーを紹介してくれて、「彼にやってもらったら?」と言ってくれたんです。
 それでコビーに連絡をとって、「こんなアイディアがあるんだけど」と4つ5つほどアイディアを出したところ、彼がそのうちひとつをピックアップして、ヴォーカルやベースをやってくれました。何千ものパズルがひとつにまとまるようにしてできあがった感じです。自分にとっても彼は特別なアーティストだったから、一緒にできたことはいまでも信じられないですね。

■あなたは00年代後半に、《Low End Theory》を中心とするLAのビート・シーンから登場してきました。現在でもその「シーン」のようなものは続いているのでしょうか? もしそうであれば、そこに属しているという意識はありますか?

NT: 2005年か2006年だったか、かなり昔の話ですからね……。みんなそこから進化して、新しい道を歩んでいって、2012年か2013年くらいになんとなく空中分解したような感じではあるんですけど、いまでもみんな友だちだし連絡もとりあっていますよ。みんな成長して大人になって、子どもがいるひともいます。たとえばティーブスはアート・シーンに向かったり、フライング・ロータスは映画監督をやったり。みんな多様な活動をするようになりましたが、互いにサポートしあっています。

■日本語には「地味」という言葉があります。あえて飾り立てないことのカッコよさについて言うことばですね。たとえば江戸時代は、着物を羽織ったときに、生地の表面に色味を使うのは「粋=クール」じゃないという大衆文化のなかで芽生えた美意識がありました。鮮やかな色彩は、着物の裏面に使うんです。それが歩いているときや風で少しめくれたときにちらっと見える。それが「粋」です。あなたの音楽にもそういうところがあるように思いましたが、いかがでしょうか?

NT:そういうふうに思ってもらえるのはすごくありがたいですね。それがひとつの個性だと考えられたら自分でも嬉しいです。自分としては、このアルバムで表現したかったことは、映像的なものに近いんです。
 これまでの自分のミュージック・ビデオは、ちゃんとしたチームがいるわけではなかったのであまり冒険せず、実験的でもなかったと思うんですが、ぼくの頭のなかにはつねに実験的なアイディアがありました。だからいま、ヴィジュアル・アルバムを作成していているんです。それはひとつの長い映画のような作品になりそうです。ぼくのアルバムのアートワークは全部モノクロなんですけれど、そのヴィジュアル・アルバムはとてもカラフルなものになるので、いまおっしゃっていたような感覚もあるのかなと思います。1月末にリリースする予定です。

序文:小林拓音、質問:野田努(2022年12月27日)

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