フリー・ジャズにおける新世代のサックス奏者として、近年もっとも注目すべき存在だったゾー・アンバが、なんと〈マタドール〉と契約、新作をリリースすることがアナウンスされている。これまでNYの前衛ジャズ・シーンで活躍してきた彼女だけれど、今回は出身地のテネシーへと帰還、小さな町で必死に生きる労働者階級の人びとの生活に目を向け、アパラチアのフォーク・ミュージックにとりくんでいるようだ。
来たるニュー・アルバム『Eyes Full』にはダーティ・スリーのジム・ホワイトとケヴィン・ハイランドが参加。オーヴァーダブなしの一発録音。なにはともあれ現在公開中のシングル “Another Time” を聞いてみてほしい。アンバがギターを弾きながら、歌っている! 6月5日の発売を楽しみにしていよう。
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ルイ・ヴェガとケニー・ドープによる、ニューヨークを拠点とする伝説的プロデューサー・デュオ、Masters At Work (MAW)についていまさら説明するのもナンだが、ひと言で表すなら、90年代のハウス・ミュージック黄金期の象徴、その影響はダフト・パンクからマドンナまでとおそろしく幅広い。また、その特徴は、ハウス・ミュージックをベースに、ジャズ、ファンク、ソウル、ラテンを自在にミックスしたこと。ハイブリッドなNYサウンドのひとつの型を創出したことにあります。で、ケニー・ドープ——ビート職人であり、ファンクの探求者として崇められている。当日は、間違いなく、タフなファンクの祭典となるでしょう。

5月02日(土) 名古屋 CLUB MAGO http://club-mago.co.jp
5月03日(日/祝) 大阪 CLUB JOULE https://club-joule.com
5月05日(火/祝) 福岡 KIETH FLACK https://kiethflack.net
5月08日(金) 京都 WORLD KYOTO https://world-kyoto.com
5月09日(土) 東京 MIDNIGHT EAST Spotify O-EAST / AZUMAYA https://shibuya-o.com/east/club
5月10日(日) 札幌 PRECIOUS HALL http://www.precioushall.com
KENNY DOPE (MASTERS AT WORK, KAY-DEE RECORDS, DOPEWAX / Brooklyn, NY)
グラミー賞に4度ノミネートされたDJ/プロデューサー、KENNY “DOPE” GONZALEZは、ダンスミュージック史において最も影響力のあるアーティストの一人である。ルイ・ヴェガとの伝説的デュオMasters At Workの一員として、ハウス、ヒップホップ、ラテン、ジャズ、ソウルを横断する革新的なサウンドを生み出し、ビョーク、ジャネット・ジャクソン、ダフト・パンク、ルーサー・ヴァンドロスら数多くのアーティストのプロダクションやリミックスを手がけてきた。
ソロ名義ではThe Bucketheadsとして発表した「The Bomb! (These Sounds Fall Into My Mind)」が世界的ヒットを記録。さらにケブ・ダージと共に設立したKay-Dee Recordsや、自身のレーベルDopewaxを通じてレア・ファンクの再発や新たな音楽の発掘にも尽力している。近年はMasters At Workとしてブライアン・ジャクソンのアルバム『Now More Than Ever』のプロデュースも手がけ、世代を超えたコラボレーションを展開。豊富な音楽知識と卓越したビート感覚を武器に、45sからハウスまで縦横無尽に紡ぐDJプレイは世界中のフロアを魅了し続けている。
IG : https://www.instagram.com/djkennydope
ノンディのセカンド・アルバムは、90年代の〈ワープ〉スタイルのエレクトロニカにおける現在形のような作品で、ようは部屋でぼーっと聴いていると気持ちいい。かの『アーティフィシャル・インテリジェンス』のアートワークとして、あの時代ならではの低解像度CGで描かれた人物のように、ソファに座って一服しながらこのサウンドの世界に浸れたらどんなに楽しいことだろうか……いや、でも待てよ。そうじゃない。あの時代の音楽に似ているこれは、決定的にあの時代のエレクトロニカとは違っている。
90年代の〈ワープ〉スタイルのエレクトロニカが、レイヴの混濁とした狂乱からの逃避だったと言えるなら、ノンディのセカンド・アルバムは、それらすべてが情報化されインターネット上に吸収された世界から、むしろ混濁とした狂乱という現実世界を夢見ている作品だと言えるだろう。この時空のねじれを、ぼくのようなアナログネイティブな世代は、ノンディのようなデジタルネイティブ世代と出会ったときに痛切に感じてしまう。
ペンシルベニア州ジョンズタウンという、アメリカでもよく知られていない町のプロデューサー、Nondi_ことタティアナ・トリプリンにとって、ある時期までインターネットこそが世界だった。でなければ、幼き頃、気の合う友だちがいなかった彼女がAFXに人生を救われることもなかった。「制作をはじめる決定的な動機になったのは、エイフェックス・ツインを死ぬほど聴いたことね」、彼女は『Tone Glow』のインタヴューでそう語っている。「“史上最高にクールな音楽だ”と思っていたのが、“自分でもこういう音楽を作りたい”に変わった。たぶん中学3年生の頃、エイフェックス・ツインみたいな音楽を作りたいという衝動に駆られたのは」
それから彼女は、ヴェイパーウェイヴとOPN(ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー)に心酔し、ムーディーマンとデトロイト・テクノ(とくにジェフ・ミルズとロブ・フッド)に感激した。「私はデトロイト・テクノをもう何年も、めちゃくちゃ愛している。ムーディーマンなんて、もう……最高すぎて言葉にならない。彼は、私が初めて知った黒人の電子音楽家だった」と彼女は『Finals』のインタヴューで答えている。そして、フットワークとDJラシャド。「DJラシャドを死ぬほど聴き続けてきた」とノンディは強調する。「『Flood City Trax』は、そうした音楽に強く影響を受けながらも、その場所を実際に見ることができない自分と、まわりにそれを共有できる相手が誰もいない場所で生きているという状況を反映したような作品なんだ」
90年代のエレクトロニック・ミュージシャンたちも、もちろん過去(クラフトワークその他)に対する尊敬はあった。だが、その音楽はほとんど同時代(ヒップホップ、ハウス、テクノ、ジャングル)からの刺激を主要成分とし、誰もが1年前にあったサウンドを(たとえ不可能だったとしても)更新することに腐心していた。圧倒的な「現在」があり、時間軸は過去から未来に直進し、作り手にとっても聴き手にとっても、その関心のほとんどは、まずは「それが新しいかどうか」に集中していた。しかし、ノンディのバイオグラフィーとその音楽から感じるのは、言うなれば過去への調査網と横に広がる時空であって、90年代にあった直進的な(リニアな)時間感覚ではない。非ユークリッド幾何学的に、過去を写しながら横に広がるその時空における任意の場所が、今回の場合で言えばノンディにとっての起点になっているのだ。
彼女は自らのその音楽を「ネット音楽」と認識している。デジタルネイティヴの音楽やDJのほとんどが、それ以前とは異なる時空感覚を得てしまった、ある種の「ネット音楽」ではないかとぼくは思っている。この感覚をぼくは、あまたのインディ・ロック・バンドにも、もちろんハイパーポップにも、一見アナログ世界に思える人気漫画『ふつうの軽音部』においても感じてしまう。今日のDJは現在のサウンドよりも昔の曲を多くかける(90年代では、2年前の曲をかけたらそのDJは見捨てられたものだ)。『ふつうの軽音部』では、ZAZEN BOYSや銀杏BOYZなんかがマニアックでイケてるバンドになっているが、こうした何十年も昔の作品に対して無邪気に接することのできる感覚は、パンク/ポスト・パンクの時代には……、いや、50年代にも60年代にも、いや、20世紀後半にはまずなかった。
アナログネイティブな時代では、時間は直進し時代は進化する、そんな勝手な思い込みがあったのだろう。家電の進化を経験し、原稿用紙は不要となって、電話さえも使用頻度が減る。そんな変化を経験してきた世代なのだから、「新しきものは善である」という認識が、なんとなく当たり前だと普遍化されていたのかもしれない。しかし、そんなぼくでさえも、ノンディを聴いたり、松島広人君や高校生と話したりしながら、現代のデジタルネイティブな感覚に慣れつつある。だから、ブライアン・イーノが提唱した「シーニアス(Scenius)」という概念は、いまこの時代になると、なおさらアイロニカルな説得力を持ちえてしまった。90年代はたしかに、特別な才能を持った強烈な個人よりも、シーンそのものが研磨した複数の人たちが時代を切り開いていた。シーンは濃密で、強度があった。今日、シーンと呼べるものが、ローカルなブラック・コミュニティ(ないしは非西欧圏)を除けば、ともすれば無きに等しいのではないかと錯覚してしまうのは、インターネットの影響は当然として、急激なフェスの増加にもその原因があるのだろう。
ノンディは、現実的にシーンなどない場所から登場した。いや、より正確に言えば、シーンなどない場所で生活しているからネットでしか姿を見せることができなかった(彼女は2016年、ネットレーベル〈HRR〉を始動させている)。前作『Flood City Trax』は、ネット音楽家としてのノンディのある意味そのときの集大成と言える。だが、ノンディは今作で、シーンなどない自分のリアルな生活圏にシーンを作ろうとしている。少し気取って言えば、サイバースペースからやって来た彼女が、何もないところに「場」を作ろうとしているのだ。
本作でフィーチャーされているジャングルは、30年以上前の発明品だが、いま「イケてる」スタイルのひとつである。リニアな時空間を失ったこの世界において、ひとつの共通言語としていたるところで盛り上がっている(ぼくは実のところ、キシリトールのアルバムのレヴューをしたくてたまらないのだ)。しかしながら、彼女はジャングルを歪ませ、なにか違うものに変換しようとしている。うまくいっているとは思えないが、しかし、なにか手を加え、変えようとしている。ぼくはその濁らせ方を面白く感じている。
「私はただここに座ってシカゴをパクることはできないと思った。私はシカゴ出身じゃないから、シカゴのプロデューサーほどハードにはなれない。だから、自分に影響を与えたものに敬意を払いつつ、自分の出身地を反映した何かを作らなきゃいけない」とノンディは語る。「西ペンシルベニアには、なんだか無骨でハードなサウンドがたくさんある。ハードコアで、ラフで、ローファイなサウンドがこの地域をよく表している。みんな、いろんな種類のハードコアやロック、フォーク・パンクなんかが好き。もちろんヒップホップもたくさんあるけれど、ここのダンスサウンドはもっとハードコア寄りね」
彼女が今作の表題を自身の名義を冠した『Nondi...』とした理由もそこにあるのかもしれない。「ハードコア寄り」とはいえ、リスナーに試練を与えるような、むき出しの過剰さがあるわけではない。なにせ彼女はハローキティをこよなく愛する、ある意味真性のkawaiiオタクである。だが、今作のジャケットにおいて、それはマイメロなのかキキララなのか、kawaiiキャラが意図的にローファイ化されている。しかしいったい、ローファイ化されたハローキティなど誰が望む? ──誰も望まないわけがない。なぜなら、音楽の世界では、滑らかで輝かしく、ほやほやですべすべしたものを汚し歪ませ、別のものに転換することで、より多くの成果を成してきたのだから。なぜかって? そりゃあもう当然、ほとんどの人が音楽を単なる産業ではなく、アートの一種だと思ってきたからだ。
ノンディは孤独ではあったが、政治的だった。彼女が政治活動に興味を覚えたのは、トランプが最初の選挙で当選したときである。「社会主義理論をたくさん読み漁った。いまの状況があまりに酷いから、活動は必然として考えるようになった。情熱を持って取り組んでいるけれど、どちらかというと“ああ、これだけ世のなかがめちゃくちゃなんだから、絶対にやらなきゃいけないんだ”という義務感に近い」とノンディは言う。
彼女が初めてテクノの聖地(デトロイト)を訪れたのも音楽が理由ではなく、「パレスチナのための人民会議」に出席するためだった。それが「ムーヴメント」という野外テクノ・フェスの開催日と重なっていたのは偶然だった。「労働者階級のアーティストとして、それを労働者階級のために政治化していく責任が少なくともあると感じている」とノンディは打ち明けている。「私がこれまで出してきた音楽のほとんどは政治的なものではないし、具体的なメッセージを伝えているわけでもない。でも、活動の現場にいる年上の人たちから学んだり、いろんな理論を読んだり、さまざまな場所から影響を受けたりするなかで、自分の音楽をより政治的にしていくアプローチがあるはずだと考えるようになった」
今日のエレクトロニック・ミュージックの始祖を考える際、クラフトワークとドナ・サマーに多くの比重を置く者であれば、この音楽が身体的なリズムに起因していることをよくわかっているだろう。ゆえにこの音楽は、匿名という鎧をいいことにネット限定で暴言を吐きまくるデジタル版烏合の衆と同じ空間にいるべきではないのだ。
「いまではネットが狭く感じるようになった」とノンディが言うように、90年代には世界を良きモノとする無限の理想郷に思えたサイバースペースは、リアル世界では言えない罵詈雑言に溢れ、堅苦しく、居心地が良くないばかりか散財もうながすという、用が済んだらとっとと退却したい場所になっている。「私はゲットーで育った人間。それも “田舎のゲットー ” でね。だから、現実がどういうものか知っているし、混沌とした世界のなかで、人びとが自分を変えようとしたり世界を理解しようとしたりして、どれほど苦闘しているかもわかっている」
今日の時間感覚は、静止画像がゴムのようにところどころ、伸びたり、引っ張られたりしているだけなのだろうか、あるいは、ウロボロスのように、過去が再生して未来になる循環なのだろうか。あるいは、リニアに進んだところで、良いことはないかもしれないという予感めいたものがその感覚に干渉しているのだろうか。そうかもしれない。だが、たったいま重要なのはそこではないようだ。30年前の音楽が現在において有効であるなら、30年前にデリック・メイから言われた言葉を思い出しても良かろう。「たったふたりでも、いや、たったひとりでも、そこに人間がいたらシーンだ」
『Flood City Trax』を出したとき、ロレイン・ジェイムスからの称賛のメールが、もっとも嬉しかった出来事のとひとつだったとノンディは言う。シカゴでもデトロイトでもNYでもフィラデルフィアでもLAでもアトランタでもない、田舎で暮らす孤立したひとりの黒人が、エレクトロニック・ミュージックの歴史がほとんどない地元との接点を求めて制作したのが、どうやらこの『Nondi...』のようだ。AFXに刺激されてからかれこれ16年以上、ベッドルームで音楽を作り続けてきた彼女が、ヘッドフォンではなく、初めてスピーカーを設置して制作した作品である。混濁とした世界のなか、日常生活の雑音とともに、この元「ネット音楽」をスピーカーで聴いてほしい。
※文中にあるように、本稿は以下のインタヴューを大いに参照している。
https://toneglow.substack.com/p/tone-glow-110-tatiana-triplin-nondi_
https://finals.blog/posts/The-Nondi_-Interview
どんどん活躍の場を広げていっている若手DJのheykazma。その主催パーティ〈yuu.ten〉が、ライヴ・ハウスの月見ル君想フと共同で新企画を始動。「もぎゅるんぱ!」と題して5月3日に開催されることになった。ラッパーのなかむらみなみや徳利、トラックメーカーのimai、そしてビヨンセ研究所などが出演する。詳しくは下記より。
heykazma主催パーティー・yuu.tenとライブハウス・月見ル君想フによる共同企画『もぎゅるんぱ!』が5/3青山 月見ル君想フで開催決定。
アルファ世代の新星DJ・heykazma(ヘイカズマ)が主催する”音に溶ける”をコンセプトにしたパーティー『yuu.ten』と、青山にある文化娯楽施設&ライブハウス『月見ル君想フ』による共同企画『もぎゅるんぱ!』が2026年5月3日に 青山 月見ル君想フで開催決定。
本企画には、日本語詞とオリジナリティ溢れるフロウでトラップ、ダンスホール、クラブトラックを自在に横断する唯一無二のラッパー・「なかむらみなみ」、group_inouとしての活動をはじめ、クラブからライブハウス、大型フェスまで活動の幅を広げ続けるトラックメーカー・「imai」、ユーモアたっぷりに日常やリアルな生活感を織り交ぜたリリックで注目を集めるアーティスト・「徳利」、そしてビヨンセのステージ再現パフォーマンスを主軸に活動する日本で唯一の研究所・「ビヨンセ研究所」によるパフォーマンスなど、4組のライブアクトがラインナップ。
さらに、ジャンルの枠に収まらないプレイで各地のパーティーに名を連ね、独自の存在感を放つ「FELINE」、たぬきがやっているお祭りがコンセプトのイマジナリーパーティ『ぽんぽこ山』を主催するなど、ヘンテコ電子音楽の使い手・「テンテンコ」、月見ル君想フ・ブッキングマネージャーの「中村亮介」、yuu.tenオーガナイザーの「heykazma」がDJとして出演。フライヤーデザインは「Ginji Kimura」が手掛けた。
ここでしか見れない異なるカルチャーが交差し、音楽とパフォーマンスが溶け合う特別な一夜となる。

『もぎゅるんぱ!』イベント詳細
日時: 2026年5月3日(日)18:00-
会場: 青山月見ル君想フ
料金: ADV ¥3,300 / U-25 ¥2,000 / DOOR ¥4,300 (Drink別)
販売: 月見ル君想フ公式website
出演:
[LIVE] なかむらみなみ / imai / 徳利 / ビヨンセ研究所
[DJ] FELINE / テンテンコ / heykazma / 中村亮介
最新情報は公式SNSで随時更新予定。
yuu.ten
Instagram: https://www.instagram.com/melting_yuu.ten
X: https://x.com/melting_yuuten
青山 月見ル君想フ
Instagram: https://www.instagram.com/moonromantic_jp/
X: https://x.com/moonromantic

2026年3月の3枚

Penny Goodwin
Portrait Of A Gemini
Pヴァイン
https://anywherestore.p-vine.jp/products/plp-8313cb
ミルウォーキーのジャズ・シンガー、ペニー・グッドウィンの人気作。1973年から1974年にかけ録音、プライヴェート・レーベルからのリリースだったため2,000枚しかプレスされなかったという幻の1枚。ギル・スコット・ヘロン “Lady Day & John Coltrane” やマーヴィン・ゲイ “What’s Going On” のカヴァーは必聴。

Naked Artz
Penetration
Pヴァイン
https://anywherestore.p-vine.jp/products/plp-8307
90年代半ば、『悪名』『続悪名』『Hey! Young World』といったコンピレーションへの参加やシングル/EPのリリースなどにより注目を集めたグループのデビュー・アルバム。メンバーはMili、K-ON、DJ TONK、DJ SAS。心地いいサンプリング・サウンドとMC陣による軽妙な掛け合いがみごとマッチ。RHYMESTERやRAPPAGARIYAなどゲストにも注目だ。

NRQ
Retronym
Pヴァイン
https://anywherestore.p-vine.jp/products/plp-8309
「ニュー・レジデンシャル・クォーターズ」とは新興住宅地のこと。吉田悠樹(二胡)、牧野琢磨(ギター)、服部将典(コントラバス)、中尾勘二(管楽器、ドラム)からバンドが2018年に発表した4作目。ブルーズ、カントリーからジャズ、ラテンまで文字どおりさまざまな音楽を吸収・消化、唯一無二の音楽を響かせる。パンデミック期に名をあげた “在宅ワルツ” も収録。
2026年2月の1枚

Positive Force
Positive Force feat. Denise Vallin
Pヴァイン
https://anywherestore.p-vine.jp/products/plp-6955cw
ギタリストのスティーヴ・ラッセルを中心に結成された西海岸のバンド、ポジティヴ・フォース。彼らが1983年に残した自主制作盤にして唯一のアルバム、そのクオリティの高さからソウル/AORコレクターたちを魅了しつづけてきた入手困難な1枚が、カラー・ヴァイナルで蘇った。まずは冒頭 “You Told Me You Loved Me” を聴いてみて。
2026年1月の2枚

MS CRU
帝都崩壊
Pヴァイン
https://p-vine.lnk.to/qAsYHEBB

MSC
MATADOR
Pヴァイン
https://p-vine.lnk.to/XoBDhVKf
新宿を拠点に活動していたMSCは、KAN(漢 a.k.a. GAMI)、TA-BOO(TABOO1)、PRIMAL、O2、GO a.k.a. G-PRINCEから成るグループ。2000年から活動をはじめ、コンピ『homebrewer's vol.1』への参加などを経て徐々に注目を集めていき、2002年にMS CRU名義でファーストEP「帝都崩壊」を発表。勢いそのままに翌年、満を持してのファースト・アルバム『MATADOR』(2003)が放たれる。彼らのダークなサウンドと生々しいリリックは、「構造改革」に沸く当時の日本の裏、ストリートというもうひとつの風景を浮かび上がらせていた。
2025年12月の1枚

キング・ギドラ
空からの力:30周年記念エディション
Pヴァイン
「P-VINE CLASSICS 50」第1弾として12月にリリースされたのが、2025年にリリース30周年を迎えたキング・ギドラ『空からの力』の特別エディションだ。Kダブシャイン、Zeebra、DJ OASISからなるトリオのこのデビュー・アルバムは、日本語の押韻(ライミング)の可能性を大きく広げた1枚。重量盤LPとカセットテープの2フォーマットがすでに発売中、配信もされているので、チェックしておきたい。
一昨年、スティル・ハウス・プランツを招聘し、リキッドルームでそのすばらしいライヴを提供したMODEが、来る6月、今度はモイン(Moin)を呼ぶ。
モインは、かのレイム(Raime)を母体にしたロック・バンドで、簡単に言えば、レイム+ヴァレンティーナ・マガレッティ(Valentina Magaletti)で構成されるロック・バンドである。スティル・ハウス・プランツ同様に、ロック・サウンドを更新させようとする点において、ポスト・パンク的な感性/実験性を持っている。つまり、ディス・ヒートやワイアーたちの子孫だと言える。
ヴァレンティーナ・マガレッティは、ここ数年のキーパーソンのひとりで、最近ではNídia & Valentina名義のアルバムもあったし、昨年は日野浩志郎との共作アルバムを出しているわけだが(レヴューしようと何度も聴いて、しかし書けなかった一枚)、goatの出演もある。
これは、楽しみです!


開催日時:2026年6月6日(土) OPEN 17:30 / START 18:30
会場:LIQUIDROOM(東京都渋谷区東3-16-6 / MAP)
チケット料金 :スタンディング ¥8,000(税込・ドリンクチャージ別)[ZAIKOにて販売中]
出演者:Moin / goat
世界でもっとも乗降者数の多い新宿駅のすぐ目の前で、昨日実施された反戦パーティ「DROP BASS NOT BOMBS」。DJ Quietstorm(桑田つとむ名義)をはじめとするDJたちによる、すばらしきハウスの祝宴。まるでアンダーグラウンドのクラブをまるごと地上に強制召喚したかのような……あの “Strings of Life” の興奮はひと晩経ったいまもなお胸の奥で尾を引いている。
先日のGEZANによる武道館での公演もアツかった。問題は山積みだけれど、いまカウンターカルチャーは盛り返している。勇気ある彼らの声に耳を傾けていると、まだまだ世の中捨てたもんじゃないという気になってくる。
というわけで本日3月30日、『別冊ele-king 音楽が世界を変える──プロテスト・ミュージック・スペシャル』発売です。GEZANのマヒトゥ・ザ・ピーポーやProtest Raveの創始者、Masr89とMiru Shinodaをはじめ、シンガーソングライターの寺尾紗穂、ラッパーのダースレイダー、新世代の春ねむりやDANNY JINといったアーティストたちがそれぞれのことばで力強く語ってくれています。独立オンライン・メディア『ポリタスTV』の津田大介、日本におけるバンクシー研究の第一人者にして『ストリートの思想』の著者でもある毛利嘉孝のような識者の方々にも話を聞きました。この困難な時代をどう生きていくべきか、きっとそのヒントが得られるはずです。
はじめましょう、ここから。よりよき未来に向けて。

目次
世界を変える音楽の力(野田努)
[インタヴュー]
Mars89+Miru Shinoda 低音で空間を制圧する──Protest Raveのこれまでとこれから(小林拓音/野田祐一郎)
寺尾紗穂 ガラッと変わってしまった世界で、それでも歌いつづける(二木信/川島悠輝)
津田大介 社会全体が不感症になっているいまこそ音楽の力が必要だ(二木信/河西遼)
マヒトゥ・ザ・ピーポー 俺はすごく面白いですね、この流れはすべて、試されてるなと思う(野田努+小林拓音/野田祐一郎)
ダースレイダー 乱世にこそ輝くヒップホップ(二木信/河西遼)
毛利嘉孝 『ストリートの思想』の著者が俯瞰するここ20年の日本の変化(二木信+小林拓音/小原泰広)
春ねむり 沈黙しない音楽(野中モモ)
DANNY JIN そのラップは多くの人びとに勇気を与える(二木信/河西遼)
[コラム]
一声二節三臓のちから──日本の大衆歌が育んできた豊かな想像力(中西レモン)
橋の下でうごめく、新たな自治空間──「橋の下世界音楽祭」の挑戦(大石始)
ECDの軌跡──『失点 in the park』に刻まれた選択と孤独(高久大輝)
2003年、反戦サウンドデモの思い出(水越真紀)
いま台湾から世界が変わりはじめている──台北レイヴ・カルチャーの一側面、〈Urban Legend 1.0〉とSssound Without Borders(二木信)
[特別インタヴュー]
ニーキャップ 彼らがアイルランド語でラップする理由 (イアン・F・マーティン/竹澤彩子)
プロフィール
菊判220×148/208頁
装丁:大倉真一郎+安藤紫野
表紙写真:野田祐一郎
Hello Hello! hey hey! heykazmaですッ!!
みなさんいかがお過ごしでしょうか?
今回はひとりごとと音楽の紹介とか書いていこうと思いますヨ. • ̟ ⊹. ˖
そんなわけでね、ついこないだ仙台から上京して一年経ちました〜!
この一年を思い返してみたんですけど、3月に上京して、4月に今の運営メンバーに出会って、半年もしないうちにこの連載のお話をもらったりと、東京に来てから本当に嬉しい出来事ばかりでした。
その一方で、これからもDJを続けていくためにはもっとこうしないとな〜とか、ここは反省だな〜とか思うことも多々あったンゴ。まだまだやれることがいっぱいあるし、もっと己かまして、活動を楽しく続けていけたらいいなと思っていますょぉぉ!✧ *・゚.
最近は友達とご飯に行く余裕もまた出てきて、なかむらみなみ校長とFellsius教授とUtaeち、蕗といっしょに渋谷にバーニャカウダ食べに行ったりねっっ。
楽しい時間ってかけがえないよ、まじで!偶然揃った奇跡のメンツなんです。
あとは野菜からしか得られないパワー‼️ってまじで絶対あるよね、そういう学びがあった日!要するに超美味しかったって意味。


まあそんな感じで(どういう感じかな❔わロタ)、最近聴いてる音楽たちをみなさまにシェアハピしますよぉ〜ん。:゚⭑:。
小松成彰 / 子供たちへ
https://ultravybe.lnk.to/ttc
私の企画にも出演してくださってる(いつもありがとう)仲良し魔女・小松成彰氏の、先月リリースされた新曲でございます˚*.✩
小松氏のギターと歌は本当に人の心に大きな力を与えてくれるし、勇気をくれる音だなと思います。エネルギーでしかないんですよ。とてもストレートな構成なんだけど、気づいたらぐっと引き込まれてしまうというか、その場の空気をスムーズに変える力がある。本当にすごい表現者だなといつも感じます。
本物ってすごいな、と改めて思わされた。ほんとこの人から目が離せない。でも光ってて眩しい。ほんとずるいよ!₊˚✩彡
lIlI / ʌnˈhɪndʒd! (feat. Usnow)
https://linkco.re/cfYPy7rH
lIlIちゃん!あっしの推し!まじ神!天才˚⟡˖ ࣪
1年ぶりのシングルリリース、非常にありがたすぎるし、本当に待ってましたという気持ちでしかないよーーーー• ⊹ * . ⋆ ̟ .
lIlIちゃんの書く歌詞ってまじ半端じゃなくて、毎回ちゃんと心に寄り添ってくれる感じがすごい。無理に励ますわけでもなくて、でもちゃんと隣にいてくれるみたいな言葉で、本当にありがたい存在だなと思う。聴くたびに、ああ分かってくれてる人いるなって思える。トラックもすごくかっこよくて、音の鳴り方が本当に気持ちいいし、とてもフロア映えしそう♪ まじで⎳ℴ♡⎷ ℯ
yuuri / Live at Första (2026/03/06)
https://soundcloud.com/6mhtscoknngw/live-at-foersta-2026-03-06
先日仙台でDJをしたときに、MACHINE LIVEで共演してたyuuri氏のLive音源!
東北大学のオーディオ研究部としても活動しているyuuri a.k.a para氏ですが、最近ではBandcampで音源集も積極的にリリースしていて、私もここ最近かなりの頻度でDJでプレイしております。あと音楽だけじゃなくて人柄も最高!
他にも仙台のCLUB SHAFTで「exp」というパーティーもDJのrikuto氏(彼のプレイも超最高)とオーガナイズされています。次回は4/4にCOMPUMAさんをゲストにブッキングして開催するらしいですので、お近くの皆様はぜひに⋆⭒˚。⋆
以上、おすすめシェアハピコーナーでした♡
ていうかさ、MACHINE LIVEっていいですよねーーー。
私もずっとやりたいな!!と思っていて、ちょっとずつ機材揃えてるんだけど、結果全然動けていませんわ。
2026年中に動きたいなと思っている!というかここに書いちゃったので動くしかないかもしれん ^ ^ 頑張る!
てことで急にお知らせ!!
5/3に私が主催のパーティー「yuu.ten」と、青山のライヴハウス・月見ル君想フとのコラボパーティー『もぎゅるんぱ!』を開催することになりました⟡₊˚⊹♡
かなり気合い入ってます!!!!ばちばち楽しい日です!!!!
詳細は4/1に解禁予定ですので、皆様超絶ご期待くださいな!
絶対に来てください!ほんとに!お願いします!

あとねそうそう、
先日NTS Radioのfoodmanのmonthly枠にてDJ mixを提供させていただきました࣪⊹
2月にリリースしたEP「15」の世界観を広げたアッパーなmixに仕上がっています⊹܀˙
前半30分がfoodmanっち、後半30分が私のmixになっておりますので、絶対絶対要チェックでお願いします!!!
最後に!!!
ここ最近の世の中まじしんどすぎワロタ(真顔)状態ですが、ニュースを見てても本当に笑えないことばかりで、なんというか、ちゃんと怒ったり、ちゃんと考えたりしないといけないなって思うことが前よりすごく増えました。移民や難民の排除、マイノリティの権利の否定、戦争や暴力が当たり前みたいに進んでいく空気を見ていると、無関係ではいられないなと強く感じます。
融解日記 vol.3でもこの話には触れたりしましたが、もともとダンスミュージックって、異なる文化や背景を持った人たちが交わる場所から生まれてきた音楽だし、だからこそ「排除とか差別とかとは真逆のところにあるもの」だと思っています。
自分が現場に立ったり、音楽を流したり、企画をやったりするのも、小さいことかもしれないけど、その空気をちゃんと守りたいからなんだろうなと最近すごく思う。
上京して一年、嬉しいこともたくさんあったけど、その分ちゃんと自分がどうやって続けていくのかも考えさせられた一年でした。これからも己かまして、でもひとりじゃなくて、連帯しながら、もっと動いていきます!☆≡。゚.
というわけで、またどこかでお会いしましょう₊♪‧˚* またね!Love Foreverだょ〜!
シャバカ・ハッチングスは2022年の『Afrikan Culture』以来、シャバカ名義となるソロ・アルバムをリリースしてきている。『Afrikan Culture』と次作の『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace』(2024年)では、これまでのメイン楽器だったサックスではなくクラリネットやフルート、さらに尺八や南米のケーナ、アフリカのムビラなどを用い、原初的で素朴な音色を生み出していた。ドラムやパーカッションなどほかのプレイヤーもプリミティヴでミニマルな演奏を心掛け、静穏として瞑想的な作品となっていく。特にカルロス・ニーニョ、ブランディ・ヤンガー、ミゲル・アットウッド・ファーガソン、エスペランザ・スポールディング、フローティング・ポインツ、アンドレ・3000らが参加した『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace』に顕著だが、アフリカ音楽由来のスピリチュアル・ジャズとアンビエントの狭間をさまようような作品と位置づけられるだろう。この間、彼はサンズ・オブ・ケメットやコメット・イズ・カミングなどほかのプロジェクトを解散、ないしは休止し、自身のソロ活動にフォーカスしてきた。2023年末からサックスの演奏を止めたシャバカは、その間にいろいろな楽器をマスターし、またエレクトロニクスを交えたプロダクションやミキシング面も充実させ、それが『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace』へと繋がった。『Afrikan Culture』と『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace』は、いろいろな道筋をたどってきた中でのシャバカの到達点だったと言える。

Shabaka
Of The Earth
Shabaka
『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace』から2年ぶりの新作『Of The Earth』は、過去2作をリリースした〈インパルス〉を離れ、自身で設立した〈シャバカ・レコーズ.〉からのリリースとなる。レコード会社からの制約は受けずに全く自由な立場で制作を行い、作曲、演奏、プロダクション、ミックスとすべてひとりで完結している。『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace』で共演したアンドレ・3000から、恐れや気負いなく誠実に新たな次元を探求していく姿勢に刺激を受け、またシャバカが初めて買ったCDというディアンジェロの『Brown Sugar』(1995年)から、セルフ・プロデュース/セルフ・パフォーマンスによるアルバムが内包するエモーショナルな可能性に触発され、『Of The Earth』は作られた。ツアー移動中にポータブル機材で制作されたビートやループが楽曲の基盤となり、フルートのほかに久しぶりとなるサックス演奏も解禁している。南アフリカからイギリスに渡って活動したジャズ・ドラマーのルイス・モホロが2025年6月に亡くなり、彼のグループでも演奏してきたシャバカはその追悼コンサートに参加し、そこでおよそ2年ぶりにサックスを演奏した。過去2年間はフルートを中心にサックスを封印してきたが、それは彼が音楽を演奏する上でサックスであることの必然性を見出すことがなくなり、逆にほかの楽器への興味が深まったからだそうだが、そうした2年間を経て再びサックスの可能性に出会い、『Of The Earth』は作られた。
アンビエントでプリミティヴな印象が強かった過去2作に比べ、『Of The Earth』はサンズ・オブ・ケメットやコメット・イズ・カミングなどのプロダクションで見られたリズムやビート面でのアプローチが強くなっている印象だ。代表が “Dance In Praise” や “Marwa The Mountain” で、ビート・ミュージック、ダブステップ、フットワークなどを咀嚼したリズム・トラックが用いられており、それとサックスやフルート、クラリネットなどが交わるトライバルなサウンドとなっている。シャバカがクウェイク・ベースらと組んでいた1000・キングスあたりに近いサウンドと言えよう。また、“Go Astray” では自身でラップをし、後期資本主義社会のシステムに支配された世界と向き合う力強いリリックを披露するなど、いままでになかったシャバカの新たな一面を発見できる作品だ。

Greg Foat & Sokratis Votskos with The Giorgos Pappas Trio
Impressions of Samos
Blue Crystal
ここ数年来、さまざまなアーティストとのコラボ作品をリリースするピアニストのグレッグ・フォート。2025年はモーゼス・ボイド、ジハード・ダルウィッシュ、フォレスト・ロウなどロンドンのアーティストとのセッションが続いたが、新作『Impressions of Samos』ではギリシャのアーティストとの共演となる。ソクラテス・ヴォツコスはマルチ・リード奏者で、以前もグレッグ・フォートとの共演作がある。その2024年作の『Live at Villa Maximus, Mykonos』はギリシャのミコノス島でのライヴ録音で、ソクラテス・ヴォツコスはクラリネットとフルートを演奏していた。一方、エーゲ海のサモス島での印象をもとにした『Impressions of Samos』では、ソクラテスはアルメニア由来の民族木管楽器であるドゥドゥクを演奏する。そして、ふたりをサポートするジョルゴス・パパス・トリオは、中東から北アフリカにかけての古来の弦楽器であるウードをフィーチャーする。このように『Impressions of Samos』は、エーゲ海を中心に、ヨーロッパ、中東、北アフリカ、アジアの文化が交錯するギリシャを音楽で表現した作品である。
“The Golden Jackals Of Samoa” でのドゥドゥクはスコットランドのバグパイプを連想させる音色で、ウードはインドのシタールを連想させる音色である。こうした民族楽器は昔からジャズの世界ではいろいろと用いられ、特にモーダル・ジャズの分野では非常に大きな役割を果たしてきた。“The Golden Jackals Of Samoa” はそうしたモーダルなテイストの異色のジャズ・ファンクで、かつてのイタリア映画のサントラやライブラリーなどに近い雰囲気を持つ。“Liberta” はモード・ジャズ、スピリチュアル・ジャズ、ジャズ・ファンクの狭間を往来するような作品で、それぞれの魅力をうまく引き出して結びつけるところがグレッグ・フォートらしいところだ。“Karsilamas” や “Eikosiefta” はアラビアや北アフリカの音楽の要素に彩られ、前者ではそれをジャズ・ファンクと結びつけてエキゾティックなグルーヴを生み、後者ではディープなスピリチュアル・ジャズへと昇華している。

Mark de Clive-Lowe, Andrea Lombardini, Tommaso Cappellato
Dreamweavers II
Mother Tongue
マーク・ド・クライヴ・ローはロサンゼルスのジャズ・シーンだけでなく、世界のいろいろな国のミュージシャンとセッションをおこなっていて、日本人ミュージシャンと組んだローニン・アーケストラなどがある。ドラマーのトマーソ・カッペラートなどイタリア出身のミュージシャンともたびたびセッションを行っていて、2020年にはトマーソ・カッペラート、ベーシストのアンドレア・ロンバルディーニと組んで『Dreamweavers』をリリースしている。このアルバムを作った当時はローニン・アーケストラでの活動時期と重なっていたこともあり、ミュート・ビートなどで活動してきたこだま和文へのオマージュとおぼしき “Kodama Shade” や、自身のソロ作でも演奏してきた “Mizugaki” (奥秩父の瑞牆山がモチーフと目される)、高野山真言宗の那谷寺からイメージしたと思われる “Natadera Spirit Walk” など、半分日本人の血をひく彼ならではの和のモチーフが表われていた。そうした和のモチーフをジャズやフュージョン・サウンドにうまく融合させるのがマーク・ド・クライヴ・ローの真骨頂でもある。
今度その『Dreamweavers』の第2弾が6年ぶりにリリースされた。今回も “Kaze No Michi” や “Sakura Fubuki” といった日本語のタイトル曲がある。ただし、和をモチーフにすると言っても、マーク・ド・クライヴ・ローはあくまで彼が日本の文化から受けるインスピレーションを音楽として表現するのであって、安易に和楽器を用いたり、日本の民謡の音階を取り入れるといった手法に出てはいない。“Kaze No Michi” は疾走感に満ちたスピリチュアル・ジャズで、イメージ的にはロニー・リストン・スミスあたりが近いだろう。極めてダンサブルなジャズでもあり、日本のクラブ・ジャズ・シーンとも交流のある彼らしいサウンドだ。“Terra De Luz” は彼が多大な影響を受けたアジムスへのオマージュと言える作品。このトマーソ・カッペラート、アンドレア・ロンバルディーニとのトリオ自体がアジムスそのものと言うべきプロジェクトであり、アジムスが黄金時代を迎えた1970年代から1980年代にかけての雰囲気に満ちている。J・ディラのカヴァーとなる “Raise It Up”、かつてのウェスト・ロンドン時代の盟友である故フィル・アッシャーに捧げた彼のカヴァー曲 “The Bass That Don’t Stop” ほか、ジャズとともにクラブ・カルチャーを通過したマーク・ド・クライヴ・ローらしいアルバムとなっている。“Back Channels” や “Lucid Dreams” もブロークンビーツを通過したダンサブルなジャズと言えよう。

Asher Gamedze
A Semblance: Of Return
Northern Spy
アッシャー・ガメゼは南アフリカのケープタウンを拠点とするジャズ・ドラマーで、シカゴのジャズ・シーンとも交流があって、これまで〈インターナショナル・アンセム〉からもいろいろ作品をリリースしている。2020年頃からアルバムをリリースしているが、アート・アンサンブル・オブ・シカゴのようなアフロ・ポリリズミックなフリー・ジャズ、スピリチュアル・ジャズが特徴で、2024年の『Constitution』は黒人の意識開放運動と結びついた革命思想を内包する作品だった。このときはブラック・ラングスという南アフリカのミュージシャンから成るグループを率いていたが、彼は作品ごとにグループを作っていて、今回の新作『Of Return』はア・センブランスというグループを率いてのものとなる。とは言っても、メンバーはブラック・ラングスのときと被るミュージシャンもいて、日頃から一緒に演奏しているケープタウンのミュージシャンとのセッションとなる。
『Of Return』は南アフリカにおける汎アフリカ主義と黒人意識に根ざし、地域や政治理念などを超えた連帯を訴える作品となっている。作品の随所にアパルトヘイト抵抗運動の活動家スティーヴ・ビコの演説からとられたワードが用いられ、2025年にオランダの音楽フェスにアッシャー・ガメゼがゲスト・キュレーターとして出演した際、用意した政治的ステートメントらアルバム・タイトルが名づけられた。“Distractions” はラスト・ポエッツ調の歌というかナレーションが盛り込まれ、サウンド的には『On The Corner』(1972年)の頃のマイルス・デイヴィスを彷彿とさせる。『On The Corner』はスライ・ストーンとの交流からファンクを導入したアルバムとして知られるが、“Of The Fire” はさらにファンク度が増す。ファンカデリック的なナンバーであり、サン・ラーの “Space Is The Place” にも通じるような作品だ。アフロ・フューチャリズムを通してアッシャー・ガメゼとジョージ・クリントンやサン・ラーが繋がっていることを伺わせる。ポリリズミックで混沌としたジャズ・ファンク “War” では、シンセを用いて変調させたサウンドが印象的。こうした音を使った遊び的なところもサン・ラーと通じるところがある。

