「PAN」と一致するもの

七尾旅人 - ele-king

歌から生まれる音楽北中正和

 デビューしたころから既知感のある音楽だった。はじめて聞く曲ばかりなのにそんな気がしなかった。お父さんの影響で子供のころからジャズを聞いていたことや、彼が興味を持っているというミュージシャンの名前を見て、なるほどと思えるところもあったが、音楽が誰かのフォロワーというわけでもなく、その既知感がどこから来るのか、しばらく説明できなかった。しかしいつしか曲の作り方がそう感じさせるのかもしれないと思うようになった。

 いま世間では、リズム・トラックを先に作ってそこにメロディをのせて最後に歌詞を合わせていくような音楽の作り方が主流だ。そういう音楽ではリズムが細分化され、転調が多用され、コントラストの強い音がぎっしり詰めこまれている。それはそれで目立つための工夫であり、いまの社会のありようの一面をとらえた音楽ではあるのだろう。
 ところが七尾旅人の音楽はそんなふうに感じさせない。もちろん、いろんなタイプの作品があるので、一概には言い切れないのだが、あえて言えば、歌なりメロディなりが先にあって、リズムやサウンドがそれに寄り添う形で作られてきた作品が多いように思える。それは80年代までは普通にあった伝統的な曲の作り方だ。つまり彼の音楽が誰かの何かに似ているという以上に、歌声とメロディとリズムの織りなし方に、ぼくのような高齢者は既知感や懐かしさをおぼえてきたのだ。

 そんなふうに構造的にいまの時代の方法論から一歩距離を置いたオルタナティヴなところで“きみはうつくしい”や“スロー・スロー・トレイン”や“DAVID BOWIE ON THE MOON”、ジャジーな“いつか”のような曲を作れるのは素晴らしい才能だと思う。伝統的といえば、5音階的なメロディとケルト系のサウンドが重なる“天まで翔ばそ”のような曲もある。
 ただし伝統的といっても、彼はアンティーク趣味の音楽をやっているわけではない。レイヴ・パーティ的なイベントにギターひとつで出て行っても違和感がないたたずまいを持ち、ネット配信の可能性も試みてきた人だから、彼がいまのポップスのありように無関心であるはずがない。歌詞のはしばしや声の加工からひとつひとつの楽器の音色まで、どこを切り取ってもいまの音楽だ。音を引き算して聞き手の想像がふくらむ余地を残すところも、考えてそうする人が多いのだが、彼の場合はとても自然な感覚でやっている印象を受ける。
 旅する感覚にも似た、せつない希望に満ちた余韻が残るアルバムだと思う。

北中正和

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「こうしてまた、かき集められる声とともに」木津毅

 『Stray Dogs』というタイトル、そして岡田喜之による少年と犬が向かい合う可愛らしいイラストに僕はなんだか『犬ヶ島』を連想してしまったのだけれど、たしかに『Stray Dogs』はウェス・アンダーソンによるストップモーション・アニメのような愛らしい見た目と人懐こさ、茶目っけと温かみに満ちたアルバムだ。『兵士A』のような緊迫感やシリアスさはずいぶん和らぎ、怒りを堪えることができなかった七尾旅人そのひとの歌う姿を息を呑みつつ見つめなくても、寒い日の午後に紅茶でも飲みながら聴くこともできるだろう。が、あるいはこうも言えるかもしれない――『Stray Dogs』は、その柔らかく優しい感触とともに、この国や世界で起こっていることに想像を巡らせさせるようなアルバムである。その言葉とメロディ、音に耳を澄ませば、縦横無尽に繰り広げられる架空の冒険が待っている。それはどうしようもなく、僕たちが暮らす過酷な現実世界と結びついている。
 そういえば『犬ヶ島』の主人公は、野良犬(Stray Dog)だった。それまで誰にも心を開かなかった野良犬チーフは、少年アタリと暴走する権力と闘うための冒険をしているうちに彼との絆を育んでいく。僕はだから、あの映画はチーフが「thank you」とアタリに伝える声を聞くためのものだと思っている。ブライアン・クランストンによる、あの低く深い声。もちろん現実では犬の声を聞くことは僕たちにできない。だが想像のなかでなら、耳を澄ませば、もしかしたら聞こえてくるのかもしれない……。「野良犬」というのは、もちろんボヘミアンたる七尾旅人の生き方を表した言葉であるだろう。と同時に、僕には声を持たない人びとのことだと思える。七尾旅人は、世界に散らばった彼らの小さな声を懸命に拾い集めようとしている。ビリオン・ヴォイシズ。それをある種のファンタジーやフィクションに仮託して物語ること。だから、『Stray Dogs』はまったくもって『兵士A』の続きの地平で鳴っている。

 アルバムは、七尾旅人が20年でそうして集めてきた「声たち」とともに積み重ねてきた音たちをコレクションしたものだ。初期からの弾き語りフォーク、『billion voices』以降に顕著なソウルを中心としたブラック・ミュージックからの影響、いくらかのシンセ・ポップ、ギター・ポップ、ジャズ、ヒップホップ、エレクトロニカ、それに童謡。それらは少し悪戯っぽくとっ散らかりながら、しかし彼らしいチャーミングなメロディと少年性を残した声によって統合されていく。なめらかなアコースティック・ギターの演奏とシンセが重ねられる“Leaving Heaven”はあまりにも「らしい」オープニング・ナンバーだし、強めの打ちこみビートとエフェクト・ヴォイスが炸裂するエレクトロ・ポップ“Confused baby”には少し面食らうけれど、歌が入ってくれば変わらぬ愛嬌に微笑まずにはいられない。なんだかんだ言って、七尾旅人の歌はどんな装飾をしようとその芯でこそ聴き手の心をわし掴みにする。
 だから、たとえばヘリパッド建設問題で揺れる沖縄・高江で録音したと知らなければ、“蒼い魚”が政治的な歌だとは気づかないかもしれない。シンプルな言葉と強いメロディに支えられた美しいフォーク・ナンバーだ。僕たち聴き手はただ陶然とすることもできる。が、かすかに注がれる沖縄の音階と波の音、それに「泣かないで 泣かないで 蒼い魚はまだ泳いでいる」という言葉の意味をじっくりと考えてみれば、そこに沖縄で暮らす人びとの声や想いが重ねられていることがわかる。ほとんど幻想的なほどに華麗な弦の調べと反比例するように、必死に振りしぼられる歌声。そのひたむきさだけが、この歌たちの原動力になっていることがよく伝わってくる。もしくは、モザンビークからNadjaをヴォーカルに迎えた“Across Africa”はモザンビーク内戦をモチーフにしているそうで、音色やリズムはアフロ・ポップからの引用だ。日本のポップスとしてはオルタナティヴな類のものだろう。だが、誤解を恐れずに書いてしまえば、僕はこの曲をBUMP OF CHICKENやRADWIMPSのようなJ-ROCKを聴いている若い子たちにも聴いてみてほしいと思う。ナイーヴさと勇壮さを併せ持つメロディやコーラスとともに、知らない言語のスポークン・ワードを楽しんで、アフリカの歴史に想いを馳せてみてほしいと願う。それぐらいオープンなところで鳴っている歌だと、少しばかり頼りなくもしなやかなポップ・ソングだと感じる。
 僕たちは自分たちの生活や人生にいっぱいいっぱいだから、世界中に散らばった声なき声に耳を澄ましている余裕など失っているのかもしれない。シリアの現状を伝えるために危険を顧みなかったジャーナリストを攻撃せずにはいられないほどに。ただ生き延びるだけならば、そんな声たちに耳を塞いだほうがいくらか楽なのだろう。七尾旅人はそれらを無視することができず、しかし、その「できない」ことこそを歌うたいとしての力に変えていく。

 『Stray Dogs』はそんな風にしてこの世界の悲しみや嘆きを見つめているが、驚くほど肯定的な響きを有している。たとえば近しいひとの自死がきっかけとなったという“きみはうつくしい”は、ある喪失を根拠など持たぬまま「きみはうつくしい」という断言にひっくり返してしまう。やや唐突なラップでまくしたてられる、「誰かが最後に遺したフレーズ 読まれぬまま 流れるメール/誰かが最後に あれから迷子に そう 見逃される 無数のトレイル」という誰にも顧みられないまま消えていった存在への物想いは、七尾旅人流のソウル・チューンとして昇華される。「うつくしい」という単語は5音であるがゆえに少し収まりが悪く、だが、だからこそチャーミングなフロウとなる。その歌は、どうしたってはみ出してしまう存在や想いをどうにかして肯定し、祝福しようとする。清潔な響きのピアノが純粋な想いと呼応するラヴ・ソング“スロウ・スロウ・トレイン”。オートチューンド・ヴォイスがメロウなムードを醸すダウンテンポ“DAVID BOWIE ON THE MOON”。どれもが小さな人間の感情について描いているが、それらは宇宙にだって旅をする。  ところで、はっきりと犬が主人公になっている歌はアルバムには収録されていない(と思う)。代わりに鍵盤の音がまろやかでキュートなポップ・ソング“迷子犬を探して”は、いなくなってしまった子犬を探す少年の目線で語られる。「あの子の場所をぼくに教えてよ」とお願いする七尾旅人は本当に子どものようだ。そして僕たちがもし声を持たず、帰る場所もない野良犬だとして、懸命に探してくれる誰かがいる限りは存分に彷徨い続けることができる。彼の歌はそういうものだと思う。永遠の流浪を詞に託し、ジャズ・ピアノが静かな夜を彩る“いつか”はまったくもって美しいエンディングだ。

月明かりのその下を 二匹の犬が歩いていく
どこへ行くの? どこまでも
どこへ行くんだ? どこまでも
どこまでも どこまでも
横切って消えた  “いつか”

木津毅

interview with Colleen - ele-king

 年末に刊行されるele-king vol.23では「non human」というテーマの特集を組んでいる。近年の音楽、とくにエレクトロニック・ミュージック周辺では、「人間以外」をテーマにした音楽が目立つようになっている。OPNが人類滅亡後の世界を空想したり、このご時世、ダーク・エコロジーを反映した音楽は少なくない。日本でもceroが動物たち(人間以外の生命)のことをテーマにしたり、少し前ではビョークが自然をテーマにしたり、そんな感じだ。詳しくはぜひ本誌を読んでいただきたい。ここではその予告編もかねて、去る11月に来日したコリーンのインタヴューをお届けしよう。

 だれかにもっとも美しい音楽を聴きたいと言われたら、ぼくならコリーンの『A Flame My Love, A Frequency(炎、わたしの愛、フリーケンシー)』というアルバムを差し出す。2017年の年間ベスト4位にした作品(ちなみにFACT MAGは2位)。これだけ消費スピードが速いご時世において、いまでも聴きたくなるし、じっさいいまでも聴いているたいせつな1枚だ。彼女が来日すると知って、これは取材せねばならないと思った。11月初旬のことである。
 もっともぼくにはほかにも推薦したいアルバムがもう数枚ある。2013年の『The Weighing Of The Heart(心の計量)』は間違いなくその1枚に入るし、2015年のダブにアプローチした『Captain Of None 』も、初期の作品では『Les Ondes Silencieuses(沈黙の波)』もぼくは好きだ。ヴィオラ、チェロ、クラシックギター、こうした弦楽器の音色とエレクトロニクスとの有機的な絡み合いから生じるおおらかな静寂が彼女の音楽の魅力である。

 コリーンことセシル・ショットは1976年パリ郊外で生まれ、2年間イギリスで暮らし、そしてパリに移住し、現在はスペインに住んでいる。日本には2006年の11月に来ているので、今回は彼女にとって12年ぶりの2回目の来日となるわけだが、彼女が泊まっているホテルは渋谷の公園通りを上がっていって少し脇道に入ったところにあった。通りの向こう側では、建設中のビルがインダストリアルなビートを打ち鳴らしている。なんともアイロニカルなシチュエーションだなと思いながらロビーに座って待っていると、彼女は爽やかな笑顔でやって来た。ぼくは彼女にいかに自分があなたの音楽好きかを説明し、2017年の年間ベストでは『A Flame My Love~』を4位にした旨を話ながら誌面を見せた。5位が坂本龍一の『async』であることを見ると、「FACT MAGでは坂本が1位でわたしが2位だった。知ってる?」と言った。それから「うん、ジェイリンが3位は良いね」「じゃ、1位はなんでしょう」とページをめくってコーネリアスであることを確認すると、ひとこと「わお、ナショナリスティック!」とおどけた。なるほど、こういうリアクションもあるのかとぼくは妙に感心した。

わたしは反消費主義。たとえば、服は全部自分で作る。(着ている服をつまみながら)これも、これも、このジャケットも自分で作ったものよ。基本的にショッピングとかしない人間なの。

渋谷は、世界でもトップクラスの過剰なまでの商業都市で、あなたの音楽性とは真逆の世界でもあるんですが、滞在していてどうですか?

C:答えるのは難しいな。渋谷でじっくり時間を過ごしたことがないから。商業地区は避けるようにしているの。できるだけミニマリストな生き方をしたいからね。わたしは反消費主義。たとえば、服は全部自分で作る。(着ている服をつまみながら)これも、これも、このジャケットも自分で作ったものよ。基本的にショッピングとかしない人間なの。だから渋谷や商業地域で時間を過ごすことがないから、そこがどうなのかわからない。この後、谷中や上野に行こうと思っている。わたしが好きでいつも行く場所よ。東京が魅力的なのは、たとえ渋谷や原宿でも路地裏に行けば低層の建物が並んだ、味のある街並みがまだ残っているところ。パリだとすべてが高い建物で覆われてしまって、小さい住宅はもうほとんど残っていない。わたしから見ると、東京にはまだいくつか孤立した穴場があって、木造の掘っ建て小屋のような個性あふれる風景が残っている。

あなたの音楽が好きなのは、ぼくがふだん見ている世界とは違った世界が見えるからなんですね。この世に感情がかき立てられる音楽があるとしたら、あなたの音楽は世界が広がる音楽なんです。たとえば『Les Ondes Silencieuses』のアートワークには植物や星や動物が描かれている。あなたは動物や風や珊瑚や砂の音楽も作っている。

C:それはわたしにとっては大変な褒め言葉ね。わたしにとってひとりの人間としての進化とひとりのミュージシャンとしての進化は完全に連動している。そのふたつを切り離すことはできない。そして歳を重ねるにつれ、自然をより身近に感じるようになって、生きていく上で欠かせないものになった。たとえば、『Les Ondes Silencieuses』の後、わたしは音楽面そして個人的にも重大な危機に直面して、しばらく音楽を作るのをやめた。あまりに早いペースで物事が進んでいると感じたから。そしてまた音楽を作りたいと思えるきっかけを作ってくれたもののひとつが他の表現方法に身を置くことだった。だから陶芸と石彫を勉強した。そしてもうひとつは、より純粋で素朴な生き方をすることだった。
仕事とプライヴェートのバランスを見つけるのに日々悩まされるわ。わたしにとってプライヴェートの生活のなかで調和をとるのに役立つのが自然と接することなの。だからバードウォッチングをするんだし(※彼女の趣味で、取材の前日は代々木公園で野鳥の観察をしている)。もちろん鳥が大好きだからなんだけど、自然のなかにいると、自分のことについて考えるのを忘れるのよ。自分のあるべき姿により戻してくれる。大きな宇宙のなかでわたしたちというのは本当にちっぽけな存在でしかないのに、日常のなかでわたしたちは自分たちのことに囚われすぎてしまう。だからわたしとって自然を愛すること、そして自然界に生きる動物たちは当たり前のもの、うまく説明できないんだけど、自分を癒してくれる存在なの。わたしは瞑想を実践してはいないけれど、自然のなかにいて自然を見ていると、瞑想しているみたいに思える。心を癒してくれる薬のようなものね。だから、宇宙のなかに存在する他の生き物たちの存在を音楽のなかに感じ取ってくれたのなら、それは本当に嬉しいことよ。

わたしにとってひとりの人間としての進化とひとりのミュージシャンとしての進化は完全に連動している。そのふたつを切り離すことはできない。そして歳を重ねるにつれ、自然をより身近に感じるようになって、生きていく上で欠かせないものになった。

あなたの音楽は、いくつかの生の楽器とエレクトロニクスとの融合だと言えますが、人間とテクノロジーの関係をどう考えていますか?

C:テクノロジーは我々の感情表現や生活を便利にするための道具として使うのであれば素晴らしいものだと思う。音楽という観点で見たとき、PCや誰もが使えるソフトが存在しなければ、わたしはレコーディング・アーティストになっていたとは思わない。わたしはテクノロジーをDIYのツールとして興味を持っているけど、決してテクノロジーに傾倒している人間ではないわ。たとえば、わたしはスマートフォンを初めて手にしてからまだ2年も経っていないのよ。ずっとスマートフォンなんて要らないと思っていた。2年前に、必要に迫られて持つようになっただけ。
制作面に関して言うと、テクノロジーとの関係性は5作目の『Captain of None』から変わってきていると思う。もしかしたらその前のアルバムからかもしれない。『The Weighing of the Heart』はほとんどが生楽器で構成されているけど、最後に作った曲の”Breaking Up The Earth”にはたくさんディレイを使っていて、この曲を作っていたときにたくさんのジャマイカ音楽を聴いていた。ジャマイカ音楽こそがいい例だと思うわ。貧しい国で、限られたテクノロジーしか持っていなくても、それを最大限に活用して、時代を超えた素晴らしい名作を数多く輩出している。だから、”Breaking Up The Earth”をアルバムの最後に作ったとき、自分が行きたい方向はこれだとわかった。
だからいまわたしにとってテクノロジーというのは、サウンドの世界をさらに奥深く、遠くへと探求させてくれるものなの。でも『A Flame My Love~』のように、全編エレクトロニックな作品を作るとは思っていなかった。このアルバムの前までは、わたしは生楽器の音しか好きじゃないと思っていた。もちろん生楽器の音を加工するのは前からやっていたわ。でも核にあるのはviola da gambaやアコースティック・ギターの音だとずっと思っていた。でも、自分でも驚いたのだけど、このアルバムを通じて、エレクトロニック・サウンドで旅ができることを発見したの。今夜のライヴもそうだけど、エレクトロニックの機材を操作していると自分がどこにいるかを忘れてしまうくらい、不純物のない、抽象的な周波数の世界に瞬間移動したかのような感覚になる。アルバムのタイトルに「周波数」という言葉を使ったのもそれが理由よ。だからいまは、とくにアナログ機材に興味がある。魔法を生む機械だと思う。電子機材を作る人も尊敬する。わたしは電子工学のことはてんでわからないから。でも、こういう機材を使うのは凄く面白いし、今後もサウンド操作が生み出すこの抽象的な周波数の世界をさらに探求し続けたいと思っている。

『A Flame My Love~』はパリのテロ事件に触発された作品だという話をどこかで読みましたが、アルバムの最初の2曲は、悲劇的なテロを題材にした曲で、しかしこれほどパラドキシカルに美しい曲はないと思います。

C:アルバムはあの事件に影響を受けているのはたしかよ。わたしがあの夜にパリにいたのはまったくの偶然で、実際に事件があった場所にはいなかったのだけど、ほんの数時間前に近くを通った。ヴィオラの弓の修理をしなければいけなくて、本当にたまたま近くを通ったの。同時に家族と近しいひとが病気だったので、お見舞いも兼ねてパリにいた。本当に辛い体験だった。新しい音楽の制作にちょうど取り掛かろうとしていたところだった。アルバムを作る準備を進めていたときにあの事件が起きた。制作に戻らないとと思ったわ。
あの事件が作品に反映するのは不可避だった。これはわたしの人生に起きたことだったのだから。そして曲作りに取り掛かると、最初にできてきた曲は明るく喜びに満ちたものだった。なぜなら、わたしの人生、そして世界がいまどれだけ辛くても、それはどうすることもできない。できることがあるとしたら、少しでもその苦しみを和らげてくれるものを作ることだった。自分のためでもあり、それを聴いたひとたちもそう感じ取ってくれたら嬉しいと思った。そうやって最初はビートのある曲や明るい曲に自然と寄っていった。そしてアルバムの制作が進むにつれ、1年半近く経って、わたしの気持ちも少し落ち着いて、起きたことの重苦しいことも曲にすることができるようになった。矛盾しているかもしれないけど、気持ちが回復してから悲しい曲をかけるようになった。それしか方法はなかったの。わたしの歌詞はあまり直接的ではないかもしれないけど、わたしにとっては歌詞で表現しようとしたことと音楽は明確につながっている。

あなたがムーンドッグやアーサー・ラッセルに惹かれるのはなぜでしょうか?

C:その質問に限られた時間で答えるのは難しいけれど、おそらくわたしは独自のやり方を貫いている人たちに惹かれるんだと思う。ムーンドッグやアーサー・ラッセルはふたりとも「非常に特異なミュージシャン」のいい例だと思う。どちらも多くの人に影響を与えながら唯一無二の存在だった。
アーサー・ラッセルにはいまでも強く共感するわ。彼の音楽を前ほど聴くことはなくなった。何度も何度も聴いたから、もはや自分のなかにあるんだから。基本的には自分独自のやり方を貫く人が好き。リー・ペリーもまた、限られた環境で独自の世界を作ったひとね。10万ユーロもかけて機材を揃えたスタジオがなくてもいい音楽は作れる。むしろ贅沢な設備はない方がいいのかもしれない。いまわたしが面白いと思うのは……、『A Flame My Love~』はエレクトロニックかもしれないけど、じつは作っているあいだ、エレクトロニック・ミュージックを聴いていたわけじゃないの。わたしのパートナーのIker Spozioの話をしないといけないわ。彼はわたしの作品のアートワークをすべて手がけているのだけど、彼は熱心な音楽ファンでもあって、幅広く何でも聴いている。彼のレコード・コレクションの恩恵に預かったわ。家にいるときはたとえばアフリカ音楽だったり、60年代のサイケデリック・ポップだったり、ジャマイカ音楽、そして夜にはバッハやモーツアルトを聴いたりしている。とくにアフリカ音楽はたくさん聴いているの。アフリカ音楽は、わたしのすべての作品に多大な影響を与えていると思う。それと……、リズムとメロディの関係性にも興味がある。パーカッションという意味でのリズムではなくて、どんな楽器でも弾き方によってリズム感を出すことができる。アフリカ音楽のそういう部分が面白いと思う。アフリカ音楽のギターの弾き方も凄くリズミカルよね。だから例えば『Captain Of None」ではヴィオラをよりリズミカルに演奏しようと試みた。音楽は果てしない海のようだと思う。自分が知らないものがまだまだたくさんあって、それと出会うことで新しい何かをもたらしてくれる。

世界がいまどれだけ辛くても、それはどうすることもできない。できることがあるとしたら、少しでもその苦しみを和らげてくれるものを作ることだった。自分のためでもあり、それを聴いたひとたちもそう感じ取ってくれたら嬉しいと思った。そうやって最初はビートのある曲や明るい曲に自然と寄っていった。

子供の頃から楽器を習っていたんですか?

C:全然。15歳になるまで楽器を弾いたことなんてなかった。自分も音楽をやりたいと思わせてくれた最初に夢中になったバンドがビートルズだった。ビートルズは絶大な人気を誇りながらも、非常に質の高い作曲能力があって、それに加え革新的なテクノロジーも積極的に取り入れた最たる例であり、誰も真似できていないと思う。最初は素晴らしい曲を作るシンプルなポップ・バンドだったけど、数年という短い期間にテクノロジーを駆使してバンドとして進化し続けた。そういう点では、いまでもわたしにとって大きなインスピレーションの源よ。わたしの音楽は彼らのとは全く違っていてもね。で、えっと、質問は何だったかしら……、あ、クラシックの教えを受けたか、だったわね。わたしの両親は多少音楽を聴いたけどそれほどでもなくて、わたしはいわゆる中流家庭の出で、高価なクラシックの楽器を買うお金もレッスン代を賄うお金もなかった。だから最初の楽器はクラシック・ギターで、それからエレキ・ギター。そして26歳になって安いチェロを買った。しかも正規のよりも小型の。そのあとでちゃんとしたチェロを手に入れて、それからヴィオラ・ダ・ガンバを買った。弦楽器職人に依頼してヴィオラ・ダ・ガンバを作ってもらったのよ。もうその頃は働いていて、英語の先生をやって貯めたお金があったから、自分の夢を叶えようと思ってね。そうやってヴィオラを手に入れてレッスンも受けたけど、2006年頃だからすでに30歳だったわ(笑)。

あなたの音楽はエレクトロニック・ミュージックであるとか、アンビエントであるとか、いろいろアクセスできると思うのですが、どこか固有のジャンルには属していませんよね。それは意識しているのですか?

C:そう。自分がどのジャンルに属するかといったことを意識したことはない。自由であることを大事にしてきた。生きているとわたしたちはいろいろな妥協をしなければならないでしょ。いろんな出来事や出会い、人間関係に直面し、人生のいろいろな場面で妥協を強いられる。そんななかでアートというのは、自分が表現したいことを妥協することなく表現することだとわたしは思っている。もし1時間の長いドローン・ミュージックを作りたいと思ったら作ればいいし、2分のポップ・ソングが作りたいならそうすればいい。わたしはメロディアスであると同時に実験的なものを作りたいと思っていて、それを追求しない理由はない。わたしがアルバムを出し続ける理由はたったひとつで、それは伝えたいことが自分のなかにまだあるから。ある日伝えたいことが無くなったら音楽を作るのをやめて他のことをするでしょう。何にも縛られず自由であることは大事で、もの作る者にとっての本分だと思う。

あなたは英文学を勉強し、英語の教師をしていたということですが、どんな本がお好きなんですか?

C:最初に好きになったのは文学よ。子供の頃から本を読むのが大好きだった。学校で英語を勉強した際も文学の歴史に重点を置いて勉強した。高校のときもたくさん本を読んで、大学ではもっぱら英米文学を読んだ。いちばん好きな本はマルセル・プルーストの『失われた時を求めて』。読破するのにものすごく時間が掛かった。ものすごく分厚い本だから(笑)。でもわたしの読書人生のハイライトのひとつだと思う。またいつか読み返したいと思っている。
それからしばらくは音楽制作で忙しくなってしまって本を読む時間がなくなってしまった時期があった。そして日本から戻って、フランスの図書館から日本についての本をたくさん借りて読んだ。もっぱら日本の陶器や伝統美意識、禅庭についての本よ。そのあと、またしばらく読書から離れた時期があって、今度は自然に関する本をたくさん読んだ時期もあった。たとえばバードウォッチングはとにかくまず野鳥について知らないといけないから、何冊も繰り返し読んだわ。他にはアートブックを読むのも好きよ。パートナーのIkerは絵描きだから家にはアートブックがたくさんある。アフリカのお面(マスク)についての本から、マティス、ミケランジェロまで、なんでも。アートについて読むのも大好き。そして小説もまた読むようになった。今年ようやくメルヴィルの『白鯨』を読んだわ。20年もの間ずっと本棚にいつか読まなきゃと思って置いてあったのをようやく読むことができた(笑)。最近はそうやって昔に読もうと思って買った本を読むようにしているわ。

『The Weighing Of The Heart(心の計量)』というタイトルも気になっていたのですが、これはなにか書物からの引用ですか?

C:古代エジプトの『死者の書』の翻訳を読んだ。美しい絵とヒエログリフで構成されている巻物を写したヴァージョンよ。そして古代エジプト人が行なった埋葬の儀式に感動した。その儀式では死者の心臓を天秤にのせ、もう片側の皿には羽根を置く。純潔な人生を送った人はその心臓が羽根よりも軽くなる。なんて美しいイメージなんだろうと思ったわ。わたしはいい人間でありたいと思っているから、いい人生を送ることの難しさを表しているようで、余計にこのイメージが心に刺さったんじゃないかしら。わたしにとってぴったりのタイトルだった。

 パリの「黄色いベスト」運動が起きたとき、アメリカのトランプ大統領は、ほら、だれから俺はパリ協定から脱退すると言ったんだという、まったくトンチンカンだが環境のために膨大な福祉予算などつぎ込みたくなる側からすればある意味スジが通った意見を述べている。逆に言えば、人間以外(生きる権利を持っている地球上の生物)のことを考えることは、新自由主義の暴走を否定する根拠にもなってきている。コリーンのような音楽が重要なのは、デジタルとアナログとの融合などということではなく、ポジティヴな未来を考えるうえでたいせつな感性が表現されているからだと思う。
 ele-king vol.23に掲載されているアースイーターのインタヴューもぜひ読んでください。こちらは2018年もっとも感情をかき立てられたアルバムの1枚ですが、コリーンよりもさらにラディカルに「non human」というテーマが偏在しています。なぜなら彼女は本当に動物たちといっしょに育った人間であり……。(続く)

 ヨーロッパを精力的に駆け回る女性DJ、Cassyのギグが12月30/31日と大阪/東京であるのでお知らせしたい。イングランドで生まれオーストリアで育った彼女は、パリとアムステルダム、ジュネーブとベルリンのアンダーグラウンド・ハウス・シーンにコミットした。ルチアーノやヴィラロヴォスらからの賞賛とともに初期のパノラマ・バーのレジデントDJのひとりでもあった。ここ1~2年は自身のレーベル〈Kwench Records〉を拠点に12インチをリリースしている(DJスニーク、フレッドP、ロン・トレントらも含む)。
 12月30日は大阪で開催の〈The star festival 2018 closing〉、12月31日が表参道VENTに出演。間違いなく良いDJなんで、お楽しみね!

■THE STAR FESTIVAL 2018 CLOSING
12/30(sun)

line up :
Peter Van Hoesen(Time to express/Brrlin)
Cassy
Kode 9
yahyel
Metrik(Hospital records/uk)
EYヨ(Boredoms)
AOKI takamasa-live set-
BO NINGEN
Tohji (and Mall Boyz)
環ROY
SEIHO
D.J.Fulltono
YUMY

OPEN AIR BOOTH :
YASUHISA / KUNIMITSU / MONASHEE / KEIBUERGER / AKNL / MITSUYAS / DJ KENZ1 / 81BLEND / RYOTA / GT /SMALL FACE

open 21:00
adv:¥3500 door:¥4000
group ticket(4枚組) : ¥12000

チケットぴあ P-CODE(133-585)
ローソンチケット L-CODE(54171)
イープラス https://eplus.jp
Peatix : https://tsfclosing.peatix.com/


■Cassy at N.Y.E
12/31 (MON)

=ROOM1=
Cassy
Moodman
K.E.G
Koudai × Mamazu

=ROOM2=
Sotaro x EMK
EITA x Knock
Genki Tanaka × Toji Morimoto
SIGNAL × TEPPEI
JUN × UENO


OPEN : 21:00
DOOR : ¥4,000 / FB discount : ¥3,500
ADVANCED TICKET:¥3,000
https://jp.residentadvisor.net/events/1185424

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参加ボタンでディスカウントゲスト登録完了です。

※当日エントランスにて参加画面をご提示ください。 
Join the event for ¥500 off !! Click " Join " and you are on discount list !! ※You MUST show your mobile phone screen of joined event page at the entrance.
※VENTでは、20歳未満の方や、写真付身分証明書をお持ちでない方のご入場はお断りさせて頂いております。ご来場の際は、必ず写真付身分証明書をお持ち下さいます様、宜しくお願い致します。尚、サンダル類でのご入場はお断りさせていただきます。予めご了承下さい。
※Must be 20 or over with Photo ID to enter. Also, sandals are not accepted in any case. Thank you for your cooperation.
URL : https://vent-tokyo.net/

tamao ninomiya - ele-king

 2018年は新鋭ネットレーベルのリリースに大きな刺激を受けた1年だった。なかでもele-kingにも寄稿する捨てアカウント氏が主宰する〈Local Visions〉と、tamao ninomiyaの主宰する〈慕情tracks〉はその象徴的存在だろう。前者はvaporwaveの第二次ブームとも言えるような現在の状況と密接にリンクしつつ、優れた国内作家の作品を積極的に紹介しているし(僭越ながら私自身も「俗流アンビエント」という概念をこさえて、DJミックスをリリースさせてもらった。その話はまたどこかに書きたい)、後者は様々な宅録作家の紹介を行いつつ、芽生えつつある新しいインディー・ポップをネット空間を通して可視化するような役割も演じている。音楽性という面で言えば似つかわしくない両レーベルであろうが、ポストインターネット性という点でどこか符合する美意識を感じるし、単に「新しい」「古い」という進歩主義的時間尺度から逸脱した先端性を強く発散している点でも共通していると思う。
 そして、私見ではその〈慕情tracks〉が今年頭にBandcampで公開した、アンダーグラウンドな(とポジティヴな意味で呼称するにふさわしい)宅録作家による楽曲をコンパイルした『慕情 in da tracks』は、こうした動きの発火点という意味でも非常に意義深い作品だったと思う。新たな才能との出会いにわくわくする一方、ここに登場するクリエイターたちはおそらく私より圧倒的に年若だろうに、どこか現況に倦み疲れているようにも聴こえる。しかし同時に、ひと昔前のインディー音楽界にはびこっていた「本当の自分を素のままに表現してみました」式の偽造された清廉さも無く、産業化された「新しいシティ・ポップ以降」の欺瞞に安易に乗ることは(当たり前のごとく)避けられている。

 この『忘れた頃に手紙をよこさないで』は、今年10月にデジタルリリース、先月11/28にカセット・テープとしてリリースされた、先述の「慕情tracks」主宰tamao ninomiyaによる初のフル・アルバム作品だ。これまで様々なユニット名義での音源リリースや、〈Tiny Mix Tape〉の記事翻訳、川本真琴への歌詞提供などの幅広い活動を行ってきた彼女だが、本作は宅録作家tamao ninomiyaとしての集大成というべき作品になっている。
 自らの音楽を「lo-fi chill bedroom pop」と標榜するように、その手触りは相当にインティメイトだ。ジョー・ミークやブライアン・ウィルソンを祖とする一大ジャンル「内省ポップス」の系譜に耳慣れたリスナーにとっても、この「鋭利なインティメイト」にはたじろいでしまうかもしれないほどに。それでも、かねてより彼女がネット上にアップしていた楽曲にあった剥き出しの内向からすると、やや外向的になったともいえるかもしれない。実際に、入江陽hikaru yamadaといったアーティストがゲストに迎えられていることからもそういった色彩は感じられるだろう。しかしながらその「外向」は、ベッドルームに敷き詰められた厚い布地を通して吐出される息吹のように、強い密室性によって曇らされ、内燃する体温を帯びている。
 現代において「宅録」とは、主にDAW上での打ち込み制作を指す訳だが、初期の理解において、そのような制作法はいわゆる「人間性」とかいうものを表現するには冷徹に過ぎる手法だと思われていた。いまだにそのような見方が残存する(とくに「ロック」はそこに最後の生存領域を見出そうとしている)一方で、むしろそういったプライベートなDTMこそが、濃密に個的でヒューマニックな作品を作りうるということ、そのことを過激なまでに突き詰めているのがtamao ninomiyaなのではないだろうか。夜中2時、パジャマ姿でPCとMIDIコントローラーを弄り、デスクトップ画面に現れる波を切ったり貼ったりする。そういう行為を通してしか固着されない音楽があるということを、我々は音を通して彼女の寝室を覗いてしまったような焦りとともに知る。
 かねてより90年代の忘れ去られたJ-POPのディガーとしても知られていた彼女らしく、ある種の歌謡曲的クリシェを大胆に取り入れながら、まったくもってドリーミーなポップスをあたらしく作り上げる。一方で、様々なリズムアプローチやアヴァンギャルド音楽への造詣も伺わせる各種ノイズ処理など、個別に現れる音楽要素の多様さからは、彼女がサウンドクリエイターとしてと同じくらいリスナーとしても非常に鋭敏な感性の持ち主であることを物語る。かといって、音楽ディレッタント的な印象を抱かせることは決してせず、あくまで表現者としての人格と個性が前景化する。
 そして、たんに「ウィスパーヴォイス」というワードではその色調を捉えることは難しいであろう、ゆらゆらと去来するヴォーカルの魅力。夢の中で歌う歌のように、音符を撫でて消え入るその声。有り体な表現になってしまうけれど、これは、どこでも聴いたことのないような音楽、だけどどこかで聴いたことのあるような音楽……。

 そう、いま思い出した。今年11月3日、東京・大久保の「ひかりのうま」で行われたダンボールレコード主催の「Dry flower’s」というイベントの冒頭、「休日はいつもブックオフの280円コーナーを漁ってるシティ・ポップ好きのディガー集団」こと「light mellow部(彼らの存在も2018年のある局面を象徴するものだったと思う。いずれどこかで論じたい)」の一員として彼女がトーク出演し、そこで昔からの愛聴盤として銀色夏生の『Balance』というCDを紹介していたのだった。
 当時の女子たちから絶大な人気を誇った詩人・銀色夏生が全作詞・監修を務め、一般公募で選ばれたNanami Itoというアマチュアの女子高生がヴォーカルを取る作品なのだが、『忘れた頃に手紙をよこさないで』は、1989年に産み落とされたこの不思議なアルバムと呼応する魅力を宿していると思う。J-POPというにはオブスキュア過ぎるトラック、儚げな歌唱、ここでないどこかを希求するような詩情……。斉藤由貴、伊藤つかさ、もっと遡ってシャンタル・ゴヤなど、そういう系譜上に、Nanami Itoと、そしてtamao ninomiyaの歌声を位置づけてみると(両者がローマ字表記だというのも嬉しい符合だ)、その魅力を理解しやすくなるかもしれない。
 「こうではなかったかしもれない」パラレルワールドを、独りベッドルームで夢想する少女による歌。その夢想はポップス対アヴァンギャルドという歴史的且つ父権的見取り図を超えて、様々な表象としてまろび出てきた。いまから30年前、Nanami Itoと銀色夏生が僥倖によって偶然に表現し得た夢想に通じる何か。tamao ninomiyaはいまその夢想を、それをブーストし、同時に純粋化してくれるインターネットという装置を通じて、鮮烈な形で我々に届けてくれているのではないだろうか。

 縦横に時間を駆け巡り、時間を圧縮し加速させ続ける中で、我々はいよいよもって慕情を求める。その慕情とは、過ぎ去った過去へのほの甘い憧憬であるとともに、起こらなかった「いま」へ憧憬であり、そして、誰しもに無限として広がる未来への不安と蠱惑であるのかもしれない。自分が存在する以前の時代の方が、少なくともいまより幸福な時代だったに違いないという確信めいた何か。見知らぬものへ向かう、決していまは満たされることのない慕情。不透明な未来の愛らしさ、憎らしさ。これらの圧倒的な切なさを日々眼前に突き出され続ける2018年の我々にできることは、独り音楽を聴いてまどろむことぐらいなのかもしれない。
 物事が目まぐるしく動けば動くほどに、ベッドルームに篭って、眠るようで眠らずに、ラップトップが発する朧気な明かりを浴びる。私が『忘れた頃に手紙をよこさないで』を無性に聴きたくなるのは、現代の誰しもが遭遇するであろうそんな時間だ。

食品まつり × TOYOMU - ele-king

 ば、爆裂とはいったいなんぞ? ともあれ非常におもしろそうな組み合わせである。今秋サン・アロウの〈Sun Ark〉から新作『ARU OTOKO NO DENSETSU』をリリースした食品まつり a.k.a foodman と、同じく今秋〈トラフィック〉よりデビュー・アルバム『TOYOMU』を発表した TOYOMU がこの年末、共同でイベントを開催する。その名も《食品まつりとTOYOMUの爆裂大忘年祭》。両名のほか、BO NINGEN の Taigen Kawabe、Diana Chiaki、isagen (TREKKIE TRAX)、98 yen の出演も決定しており、しかも当日は出演者全員による BONENGERS なる特別ユニットまで結成されるそうだ。この日のために現在制作が進められているという新曲も楽しみだが、個人的には特製とん汁が気になる……。12月22日は恵比寿に集合です。

「食品まつりとTOYOMUの爆裂大忘年祭」(12/22 Sat)
てんこ盛り追加情報発表!
参加アーティスト決定!
出演者全員による当日限定ユニットを結成! 新曲を披露!
「食品まつりの特製とん汁」を販売!

KATA と Time Out Cafe&Diner (恵比寿リキッドルーム2F)で12月22日(土)に行われる、食品まつり a.k.a foodman と TOYOMU の共同イベント「食品まつりとTOYOMUの爆裂大忘年祭」の追加情報が決定した。

新たに決定した参加アーティストは、Taigen Kawabe (from BO NINGEN)、Diana Chiaki、isagen (TREKKIE TRAX)、98 yen の4アーティスト、そして出演者全員によるこの日限定の爆裂ユニット、その名も BONENGERS (ボーネンジャーズ)。BONENGERS はこの日披露する新曲を現在全員で制作中だが、とてつもない曲ができ上がるらしい。

また会場では、「食品まつり特製とん汁」を販売! とん汁の薬味は、京都特産の九条ネギ。TOYOMU が地元京都から九条ネギを背負って駆けつける。

チケットはこちらのサイトで絶賛発売中!
チケット購入リンク: https://daibonensai.stores.jp/

公演概要
タイトル:食品まつりとTOYOMUの爆裂大忘年祭
日程:2018年12月22日(土)
出演者:食品まつり a.k.a foodman / TOYOMU / Taigen Kawabe (from BO NINGEN) / Diana Chiaki / isagen (TREKKIE TRAX) / 98 yen / BONENGERS
会場:KATA / Time Out Cafe&Diner (恵比寿リキッドルーム2F)
時間:OPEN/START 18:00
料金:前売¥2,500 (ドリンク代別) / 当日¥3,000 (ドリンク代別)
問合わせ:Traffic Inc. / Tel: 050-5510-3003 / https://bit.ly/2J4fTSi / web@trafficjpn.com
主催・企画制作:Hostess Entertainment / Traffic Inc.

[TICKET]
絶賛発売中!
購入リンク
https://daibonensai.stores.jp/

[出演者]


食品まつり a.k.a foodman
名古屋出身のトラックメイカー/絵描き。シカゴ発のダンス・ミュージック、ジューク/フットワークを独自に解釈した音楽でNYの〈Orange Milk〉よりデビュー。常識に囚われない独自性溢れる音楽性が注目を集め、七尾旅人、あっこゴリラなどとのコラボレーションのほか、Unsound、Boiler Room、Low End Theory 出演、Diplo 主宰の〈Mad Decent〉からのリリース、英国の人気ラジオ局NTSで番組を持つなど国内外で活躍。2016年に〈Orange Milk〉からリリースしたアルバム『Ez Minzoku』は Pitchfork や FACT、日本の MUSIC MAGAZINE 誌などで年間ベスト入りを果たした。2018年9月にLP『ARU OTOKO NO DENSETSU』、さらに11月にはNYの〈Palto Flats〉からEP「Moriyama」を立て続けにリリース。
https://twitter.com/shokuhin_maturi
https://www.instagram.com/tyousinkai/


TOYOMU
京都在住のアーティスト/プロデューサー。1990年、京都生まれ。
聴けないならいっそのこと自分で作ってしまおう。カニエ・ウェストの新作を日本では聴くことができなかった2016年3月、カニエ・ウェストの新作を妄想で作り上げ、それにビルボード、ピッチフォーク、BBC、FACT など世界中の有力メディアが飛びつき、その発想の斬新さのみならず作品内容が高く評価された。2016年11月23日、デビューEP「ZEKKEI」をリリース。2018年10月、デビュー・アルバム『TOYOMU』をリリース。
https://toyomu.jp/
https://twitter.com/_toyomu_


Taigen Kawabe (from BO NINGEN)
ロンドンを拠点とする4 人組サイケデリック・ロック・バンド "Bo Ningen" の Bass / Vocalであり、日本のアイドルとプロレス、そしてイギリスの低音音楽とサウナを愛する32歳。Bo Ningen の他にも河端一(Acid Mothers Temple)との "Mainliner"、食品まつり a.k.a foodman との KISEKI、Jan st Werner (Mouse on Mars) との "miscontinuum" などのサイドプロジェクト、個人名義のソロや、Faust、でんぱ組.inc、Downy、Aqualung などへのRemix提供など活動は多義にわたる。ソロ名義のライヴではベース弾き語り、ラップトップなど機材とジャンルの幅に囚われない即興演奏をおこなう。またモデルとして Alecander McQueen や Clarks のキャンペーン・モデルをはじめ、i-D、Dazed & Confused、Another man、New York Times などのファッション紙でモデルも務める。
https://twitter.com/TaigenKawabe
https://www.instagram.com/taigenkawabe/


Diana Chiaki
2002年モデル・デビュー。NYLON、mini などのストリート・ファッション誌や commons&sense、WWD JAPAN などのモード・ファッション誌、Levi's、LIMI feu などの東京コレクションのファッション・ショーでモデルとして活躍する傍ら、LOUIS VUITTON や GUCCI などのイベントや FUJIROCK FESTIVAL' 17に出演、CAPCOM や Microsoft® 社AIのPV楽曲制作をおこなうなどの音楽面でも活躍している。インターナショナル・マガジン commons&sense で5年間に渡り写真とエッセイの連載をしているほか、渋谷のラジオでは自身がパーソナリティを務める番組がスタートした。
www.dianachiaki.com
www.instagram.com/diana__chiaki___/


isagen (TREKKIE TRAX)
1994年生まれ静岡在住のプロデューサー・DJ。2018年8月に〈TREKKIE TRAX〉より「c.b.a.g. EP」をリリースし、東京・京都・大阪などで活動中。
https://soundcloud.com/isthisisagen
https://twitter.com/isagen7


98 yen
1980yen (https://1980yen.com/)から派生したVJチーム。ドンキホーテやマンボー、地方ロードサイド店舗などのファスト・カルチャーをテーマにしたヴィジュアルで空間を埋め尽くす。

BONENGERS
出演者全員でこのイベントのために結成されたスペシャル・ユニット、その名もBONENGERS (ボーネンジャーズ)。新曲を当日初披露する。

Yves Tumor - ele-king

 この秋、サプライズでアルバム『Safe In The Hands Of Love』をリリースし話題を集めたイヴ・トゥモア、その来日公演が急遽アナウンスされました。エレクトロニック・ミュージックにおけるロック的展開を担うイヴ・トゥモア、ヴィジュアル面にも力を入れているアーティストだけに、ライヴではいったいどのようなパフォーマンスが繰り広げられるのか、要注目です。12月20日はコンタクトへ。

Yves Tumor "Safe In The Hand Of Love" release tour
12/20 (木) Open 18:30 Close 23:00
¥2500 (別途1D ¥600) Door
¥2000 (別途1D ¥600) Advance / Before 19:30
【前売取扱】 Resident Advisor / clubberia / iflyer / e+

Studio:
Yves Tumor (Warp | US) -Live
machìna -Live
Aya Gloomy -Live
SINSENSA -Live

Contact:
Compuma
Mari Sakurai
and more


■ Yves Tumor
ダーク・ポップ界のカリスマ Yves Tumor は、電子音楽を軸に多彩なジャンルを掛け合わせることからエレクトリック・ミュージック界の冒険家と称され、アーティスト/作曲家としての評価は高い。
彼のサウンドはダークでゴシックな一面を持ち、グロテスクさの中に耽美さを調和させる音楽性は、他を寄せ付けないほどに孤高的である。一方で彼のライヴは、先鋭的なノイズからクラシカルなサウンドまで、万華鏡を覗き込む様に音の変化を体感できる。
先鋭的音楽を追求するレーベル〈PAN〉からリリースしたデビュー・アルバム『Serpent Music』で Yves は、'70sソウルのエッセンスとエクスペリメンタルがサイケデリックに邂逅したような新次元の音楽を披露し、Arca や Brian Eno 等と並んで、2016年の Pitchfork エクスペリメンタル・アルバム・ベスト20に選出されている。
今年、〈Warp Records〉から初となるアルバム『Safe in the Hands of Love』をリリースし、彼の活動からますます目が離せない。

Yves Tumor 『Safe In The Hands Of Love』
[BRC-584 Warp Records ¥2400 +tax in stores]

時代を切り拓く謎の先駆者となるのか?
〈WARP〉移籍で話題を読んだイヴ・トゥモアが突如フル・アルバムをリリース!

ベルリンの最先端を行く実験的レーベル〈PAN〉からの前作『Serpent Music』が、アルカやブライアン・イーノらと並んで、米Pitchforkの【The 20 Best Experimental Albums of 2016】に選出されるなど、最高級の評価を獲得し、注目を集めたイヴ・トゥモア。昨年には〈Warp〉との電撃契約が発表され、同年12月には、坂本龍一のリミックス・アルバム『ASYNC - REMODELS』に、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー、アルヴァ・ノト、コーネリアス、ヨハン・ヨハンソンらと共にリキミサーとして名を連ねた。そして今年7月、移籍後第一弾シングル「Noid」をリリースすると、さっそくPitchforkで【Best New Music】を獲得。その後立て続いて「Licking An Orchid」をリリースし、今週には Beat 1 の看板DJ、ゼーン・ロウの番組で「Lifetime」が解禁(こちらもPitchfork【Best New Music】を獲得)。そして本日、それらを収録したフル・アルバム『Safe In The Hands Of Love』がデジタル配信限定でリリースされた。合わせて、ボーナストラックが追加収録された国内盤CDも10月12日にリリース。

I-LP-ON - ele-king

 パン・ソニックの強靭/強力なノイズとビートの波動がここに復活した。これこそパン・ソニックの新作と読んでも差し支えないのではないか……。
 パン・ソニックのイルポ・ヴァイサネン が〈エディションズ・メゴ〉よりリリースした I-LP-ON 名義の『ÄÄNET』を聴くと、思わずそんな大袈裟な断言(放言)をしてしまいたくもなる。つまり電子音響の傑作なのだ。
 いや、じっさいレーベル・インフォメーションによって、2000年におこなわれたパン・ソニックのツアー(クオピオ、バルセロナ、カルチュラ)で録音された音素材を使っていることが明言されているのだから、あながち誇大妄想ともいえない。
 イルポ・ヴァイサネンは過去素材を用いながらも、「より抽象的なアヴァンギャルドな傾向を持ったクラブの美学を取り入れて、実験的なエレクトロニック・ミュージックとして再定義」し、新しいサウンドを作り上げた。過去と現在をリミックスし、リコンポジションしたわけである。2017年にこの世を去った盟友ミカ・ヴァイニオの追悼アルバムとしての意味合いも強いのかもしれない。

 アルバムには全12曲が収録されていて、マシンビートからドローン、そしてノイズが交錯するトラックを存分に満喫することができる。収録曲数は違うもののパン・ソニックが2004年にリリースしたCD 4枚組のアルバム『Kesto』に近いムードだ。サウンドのヴァリエーションが豊かで、その音楽/音響から得られるインスピレーションが多様な点が共通している。ちなみにアルバム名『ÄÄNET』はフィンランド語で「SOUNDS」という意味らしい。

 そしてさらに思い出すアルバムが2作品ある。まず、2016年にリリースされ、パン・ソニックのラスト・アルバムとされていたサウンドトラック・アルバム『Atomin Paluu』だ。『Atomin Paluu』は、ミカ・ヴァイニオがまとめあげたアルバムである。対して本作『ÄÄNET』はイルポ・ヴァイサネンによってパン・ソニックの2000年のライヴ音源を用いて制作されたアルバムだ。この二作の成り立ちはどこか似ている。終わってしまったパン・ソニックというユニットへの追悼とでもいうかのように。
 追悼という意味からディルク・ドレッセルハウス(シュナイダーTM)とイルポ・ヴァイサネンのユニット die ANGEL の2017年作品『Entropien I』も挙げられる。『Entropien I』は、制作中にミカが亡くなってしまったことで、結果としてミカ・ヴァイニオ追悼アルバムになったとはいえ、制作自体はミカの存命時からおこなわれていた。となれば、この『ÄÄNET』こそ、ミカの死を受けて、その盟友(の記憶)と共に最後に共に創り上げた作品になるのではないか。
 じじつ、1曲め“SYRJÄYTYVÄ”、2曲め“RAAVITTUA KROKODILIÄ”、3曲め“TURUN SATTUMA”などの冒頭3曲からして、極めてパン・ソニック的なマシン/パルス・ビート的なトラックを展開しているのだ。
 同時に、そこかしこにイルポ・ヴァイサネンのプロジェクト I-LP-O In Dub のようなダブな音響を展開している点にも注目したい。例えば“TURUN SATTUMA”後半のダビィな展開を経て、環境音とノイズが深いリヴァーブの中で融解するような4曲め“MUISTOISSA 1, 2, 3”などはほぼノンビートのサウンドのなか、ダブと環境音が融解するようなサウンドが生成されるなど、まさに近年のイルポ的音響といえる。続く5曲め“POBLE DUB”も雨のようなノイズとさまざまな具体音が響き合うトラックである(個人的にはこの3曲が本作の特徴を表している重要なトラックに思えた)。59秒の短いインタールード的“ALUSSA”から“SEATTLE 1”、“SAN FRANCISCO KESKUSTELU”への展開も、ビートから環境音による音響へといった具合に、記憶を逆回転するように展開していく。
 アルバムはパン・ソニック的なトラックとイルポ的マシン・ダブのサウンドを交錯させつつ進行し、ラスト曲“MANAT”では、2010年リリース作『Gravitoni』の最後に収録された“Pan Finale”の終局のようにピュアな電子音の持続音の持続で幕を閉じる。『Gravitoni』は彼らの実質上のラスト・アルバムであり、となるとこれはやはり意図した符号に思えてならない。イルポは本作においてパン・ソニックの終わりを意図しているのはないか。

 それにしても、生前のミカ・ヴァイニオも、彼の没後のイルポ・ヴァイサネンも、ともにパン・ソニックというユニット=存在のまわりを周回している。これはいったいどういうことか。
 端的にいってユニットやバンドというものは、終わりという概念を超越している。50年ほどが経ってもビートルズは未発表音源やリミックスがリリースされ続けているし、YMOも活動開始から40年が経過してもなお新しいコンピレーション・アルバムが新作のような新鮮さを纏ってリリースされる。ユニットやバンドは一度結成し、リスナーから認知されれば、永遠の存在となる。メンバー個人を超えた存在になってしまうのだ。
 それゆえパン・ソニックもまた終わることはないのかもしれない。もちろんミカ・ヴァイニオはもうこの世にはいない。イルポ・ヴァイサネンは、ひとりではこのユニット名を名乗ることはないだろう。パン・ソニックというユニットは実体的には終わった。だが、しかし、その音は、ノイズは、ビートは、反復は、持続は、いまだ生々しく耳の奥に、身体に、空間に、残存している。音楽家の身体がこの世から消えても、彼が発した音の記憶はいまだ蠢いている。
 「パン・ソニックの生涯からインスピレーションを受けた」という、I-LP-ON『ÄÄNET』を聴き、そんな思いを持ってしまった。そもそも追悼とは新たな始まりの儀式でもあるはずだ。

Fit Siegel Japan Tour 2018 - ele-king

 フィット・シーゲルは、21世紀のデトロイトのアンダーグラウンドの主要人物のひとり、オマーSの〈FXHE〉から登場し、DJ Sotofettとのコラボレーション作品でいちやく脚光を浴びたDJ/プロデューサー。12月に初来日が決定した。
 we must go there!

■Fit Siegel Japan Tour 2018
12.15 (SAT) 東京 Nakameguro Solfa
- Fit Siegel Japan Tour 2018 supported by bamboo -

ROOM 1
FIT SIEGEL (FIT Sound/FXHE)
COMPUMA
KABUTO (DAZE OF PHAZE/LAIR)
U-T (bamboo)
FAT PEACE (bamboo)

ROOM 2
Wataru Sakuraba
DJ Razz
DAIZEN (LAMERACT)
kenjamode (Mo’House)
Takuya Honda
bungo

Open 21:00
Door 3000yen / With Flyer 2500yen / Entry Before 11PM 2000yen

Info: solfa https://www.nakameguro-solfa.com
東京都目黒区青葉台1-20-5 oak build.B1F TEL 03-6231-9051

自身の主宰するレーベルFit Sound、ディストリビューション会社”Fit Distribution”を運営し現在のデトロイトのミュージックシーンを根底から支えるFIT SIGELが来日。2012年にOmar Sのレーベル、FXHEからのリリースを皮切りに今年度はDJ Sotofettとのプロジェクト、S & M Trading Co.でのリリース、現在のデトロイトアンダーグラウンドの支柱となるアーティストの来日に期待が高まる。競演には、長いキャリアの中で今もなお、日々フレッシュでユニークなジャンルを横断したイマジナリーな音楽世界の探求を続けFit SiegelもNYで氏のMIX CDを購入しラブコールを送るCOMPUMA、自身の主宰するパーティーDAZE OF PHAZEでは世界各地の実力派DJを招聘しながらも、世界のアーティストを相手に全く引けを取らないプレイで日本国内のパーティークオリティを見せ続けるKABUTOを始め、各地で活躍するDJが集結。年の瀬に相応しいスペシャルな一夜となっている。

12.16 (SUN) 大阪 Compufunk Records
- Compufunk Records feat. FIT Siegel -
Guest: FIT Siegel (Fit Sound/FXHE)
MITSUKI (Mole Music)
COTA (NIAGARA)
DJ Compufunk

Open 18:00
Advance 2000yen with 1Drink
Door 2500yen with 1Drink

Info: Compufunk Records https://www.compufunk.com/?mode=f3
大阪市中央区北浜東1-29 北浜ビル2号館2F TEL 06-6314-6541


FIT Siegel (Fit Sound/FXHE)
FIT Siegel(a.k.a FIT)は、デトロイト・アンダーグラウンドの支柱となるべく、静かに立ち上がっている。Underground Resistanceの本部、Submergeの”Mad” Mike Banksから音楽制作を学び、2012年にOmar Sのレーベル、FXHEから『Tonite』でデビュー。
O.m.a.r - S & L'Renee『S.E.X.』のリミックス制作に関わったり、Gunnar WendelことKassem Mosseとのコラボレーション、FIT Featuring Gunnar Wendel『Enter The Fog』をFXHEからリリース。2015年リリース作、FIT Siegel名義でのEP『Carmine』は各方面から高く評価されることとなった。2018年にはDJ Sotofettとのプロジェクト、S & M Trading Co.『Metal Surface Repair』をリリースしている。レーベル"Fit Sound"とディストリビューション会社"Fit Distribution"を運営し、そこにはURやFXHEの持つ猛烈なDIY精神を内在している。
DJとしては、ジャンルレスなアプローチを好み、DiscoやPunk~現在デトロイトで作り出される異例なテクノやハウス・ミュージックを自由に横断する。自身のDJ活動や音楽制作と並行して、レーベルとディストリビューション運営の役目を平衡し、今後もその創造的追求を極めていくだろう。

Facebook https://www.facebook.com/fitofdetroit/
Soundcloud https://soundcloud.com/fit


Fatima - ele-king

 こうなる瞬間を待っていた。ある種の奇跡だろう。たとえばアルチュール・ランボーの有名な詩の一節。「ぼくは歩く、自然のなかを、恋人を連れ添っているみたいにウキウキしながら」。10代の思春期の真っ直中に読むとじつにうっとりする詩だ。20代になってもぼくはこの詩が好きで、しかし30代になってからはじょじょにだけれど「好き」が薄れていったので、自分はかつてこの詩がとても好きだったという事実だけは忘れないようにしようと思った。
 音楽が好きになった大きな理由のひとつも、音楽を聴いて恋する気持ちが湧き上がるからだ。やたら胸がときめき、切なくなり、うれしくなる。この無意味な一生をどうやって過ごせばいいんだよバカヤローなどと思っていた昨日までの自分は消えて、幸せな感覚が身体をかけめぐる。何十億儲けても儲け足りなかったゴーンよりも確実に幸せだと思える感覚だ。そんなときめきを素晴らしいポップ・ミュージックは何気なく誘発する。ファティマの『アンド・イェット・イッツ・オール・ラヴ(そしていまだそれはすべての愛)』をはじめて聴いた瞬間、つまり1曲目がはじまると、スローモーションになった世界では、落葉樹の黄色がほのかに輝き、心地良い風に包まれながら自分はとろとろに溶けていく。いても立ってもいられれなくなり、花屋に入って花を買ったほどだ。

 2014年のファティマの最初のアルバム『Yellow Memories』をぼくがなぜ買ったのかといえば、フローティング・ポインツとセオ・パリッシュが関わっているからで、レーベルも〈イグロ〉だし、彼女がロンドンのプラスティック・ピープルから出てきたシンガーであることも気になっていたし、いずれにせよ音楽的な理由によるものだ。そのレヴューでも書いているように、ローリン・ヒルやジル・スコットを聴いて育った彼女の『Yellow Memories』には、マッドリブの弟やコンピュータ・ジェイといった西海岸のビートメイカーも参加している。それを思えば、新作『アンド・イェット・イッツ・オール・ラヴ』がよりソウルフルなヒップホップに向かうことは自然の成り行きだったのかもしれない。ただ、それにしてもこのアルバムの恍惚感は出色なのだ。

 ぼくのお気に入りは以下の2曲。〈ストーンズ・スロー〉からの作品で知られるmndsgn(マインドデザイン)がトラックを手掛けた1曲目の“Dang”は、キラキラとした、メロウで官能的な波乗りだ。温かい音色によるグルーヴの合間をなめらかに滑るファティマの歌声。今後このアルバムを聴くことがあれば、まずは“Dang”をかける。“Attention Span Of A Cookie”は、ぶ厚いシンセ・ベースが効果的に入っているクラブ映えしそうな曲で、これも“Dang”と同じようにメロディラインが秀逸だ。
 ほかにも良い曲はあるし、全体的にメリハリの効いているアルバムだと言える。“I See Faces In Everything”も“Attention Span~”同様にキャッチーだし、ロンドンのグライム・プロデューサー、ザ・ピュアリストによるウェイトレス・トラックを擁する“Take It All”は、深夜の友として聴くには最高かもしれない。グライム系ではほかにJD Reidが参加しているが、その曲“Somebody Else”のリズムはたしかに目新しく、一風変わっていて面白い。LAのビートメイカーではSwarvy、そしてサー・ラーのTaz Arnold(ケンドリックの『トゥ・ピンプ~』にも参加している)もそれぞれ1曲ずつ提供している。
 しかしぼくがこのアルバムを聴いているのは、そうした音楽的な情報ゆえではない。恋人を連れ添っているみたいにウキウキするから、それでしかないし、ゆえにこのアルバムは素晴らしいと思う。そしていまだそれはすべての愛、おそらくこれからも。

Kankyō Ongaku - ele-king

 相変わらず再評価が活発ですね。なかでもこれは決定打になりそうな予感がひしひし。シアトルのレーベル〈Light In The Attic〉が、日本産アンビエントをテーマとしたコンピレイション『Kankyō Ongaku: Japanese Ambient, Environmental & New Age Music 1980-1990』をリリースします。編纂者は、昨今のニューエイジ・リヴァイヴァルとジャポネズリに火を点けたヴィジブル・クロークスのスペンサー・ドーラン。彼は昨年、自身のレーベル〈Empire Of Signs〉から吉村弘の代表作『Music For Nine Post Cards』をリイシューしていますが(『表徴の帝国』をレーベル名にした真意を尋ねたい)、今回のコンピにはその吉村をはじめ、久石譲や土取利行、清水靖晃、イノヤマランド、YMO、細野晴臣、さらにLP盤には高橋鮎生、坂本龍一と、錚々たる面子が居並んでおります。これを聴けば、いまあらためて日本の音楽が評価されているのはいったいどういう観点からなのか、その糸口がつかめるかもしれません(ドーランによるエッセイを含む詳細なライナーノーツも付属とのこと)。発売は来年2月15日。

Various Artists
Kankyō Ongaku: Japanese Ambient, Environmental & New Age Music 1980-1990

Light In The Attic
LITA 167
3LP / 2CD / Digital
Available February 15

https://lightintheattic.net/releases/4088-kankyo-ongaku-japanese-ambient-environmental-new-age-music-1980-1990

[Tracklist]

01. Satoshi Ashikawa / Still Space
02. Yoshio Ojima / Glass Chattering
03. Hideki Matsutake / Nemureru Yoru (Karaoke Version)
04. Joe Hisaishi / Islander
05. Yoshiaki Ochi / Ear Dreamin'
06. Masashi Kitamura + Phonogenix / Variation III
07. Interior / Park
08. Yoichiro Yoshikawa / Nube
09. Yoshio Suzuki / Meet Me In The Sheep Meadow
10. Toshi Tsuchitori / Ishiura (abridged)
11. Shiho Yabuki / Tomoshibi (abridged)
12. Toshifumi Hinata / Chaconne
13. Yasuaki Shimizu / Seiko 3
14. Inoyama Land / Apple Star
15. Hiroshi Yoshimura / Blink
16. Fumio Miyashita / See The Light (abridged)
17. Akira Ito / Praying For Mother / Earth Part 1
18. Jun Fukamachi / Breathing New Life
19. Takashi Toyoda / Snow
20. Yellow Magic Orchestra / Loom
21. Takashi Kokubo / A Dream Sails Out To Sea - Scene 3
22. Masahiro Sugaya / Umi No Sunatsubu
23. Haruomi Hosono / Original BGM
24. Ayuo Takahashi / Nagareru (LP Only)
25. Ryuichi Sakamoto / Dolphins (LP Only)

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