「CE」と一致するもの

釣心会例会 - ele-king

 これはよだれだらだらの組み合わせです。食品まつり a.k.a foodman が地元・名古屋にて続けているパーティ《釣心会例会》がなんと渋谷 WWWβ で開催、しかもシカゴのフットワークの巨星 RP Boo を招きます。名古屋からはツチヤチカら、Free Babyronia、東京からは脳BRAIN も参加するとのことで、なんとも贅沢な一夜になりそうです。6月15日はβに集合~。

食品まつり a.k.a foodman が名古屋にて主宰するロングラン・パーティ「釣心会例会」が最新アルバムを引っさげ再来日のシカゴの魔人 RP Boo と地元から 6eyes のフロントマンでもあるツチヤチカら、〈AUN Mute〉のFree Babyronia、東京からコラージュDJ 脳BRAIN を迎え WWWβ にて再始動。

- 食品まつり a.k.a foodman a.k.a 樋口爆炎 より

2004年から名古屋にて不定期開催している私主催のパーティー「釣心会例会」を渋谷WWWβにてスタートする運びとなりました。名古屋で開催時は地元の友人と一緒にクラブや路上、人の家、山の中など場所/ジャンルを変えながら開催してきましたが、今回15年の歴史の中で初めて県外での開催になります。

1発目はシカゴからジューク/フットワークのオリジネーターの一人であり3年ぶりの来日となるRP BOO師匠をお迎えして、「都会的な土着感」をテーマにしたパーティーを行いたいと思います。

国内のゲストとして名古屋からはレジェンド的ポストロックバンド6eyesのフロントマンであり、呂布カルマさんとのコラボも話題のツチヤチカらさんのソロプロジェクトと、名古屋拠点のレーベル〈AUN Mute〉を主催し、CampanellaさんやNero Imaiさんなどのビート提供もしつつビート・ミュージックをベースにしたノイズ/エクスペリメンタルなスタイルのライブが凄まじいFree Babyroniaさん。東京からはコラージュ、アバンギャルド的なスタイルでDJの概念を超えたパフォーマンスで話題の脳BRAINさんをお呼びました。

名古屋でやってた時の雰囲気そのままにお届けしたいと思っておりますので、肩の力を抜いてフラっとお越し下さいませ♨

釣心会例会
2019/06/15 sat at WWWβ
OPEN / START 24:00
ADV ¥1,800@RA | DOOR ¥2,500 | U23 ¥1,500

RP Boo [Planet Mu / Chicago]
Free Babyronia [AUN Mute / Nagoya]
ツチヤチカら [6eyes / Nagoya]
食品まつり a.k.a foodman [Nagoya]
脳BRAIN

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RP Boo [Planet Mu / from Chicago]

本名ケヴィン・スペース。シカゴの西部で生まれ、80年代に南部へと移住し、 多くのジューク/フットワークのパイオニアと同じようにシカゴ・ハウス/ジュークの伝説的なダンス一派 House -O-Matics の洗礼を受け、〈Dance Mania〉から数多くのクラシックスを生み出したゲットー・ハウスのパイオニア Dj Deeon、Dj Milton からDjを、Dj Slugo からはプロデュースを学び、それまであった Roland のドラム・サウンドの全てにアクセス、またパンチインを可能にした、現在も使い続ける Roland R-70 をメインの機材にしながらトラックを作り始め、1997年に作られた“Baby Come On”はフットワークと呼ばれるスタイルを固めた最初のトラックであり、その後1999年に作られたゴジラのテーマをチョップしたゴジラ・トラックとして知られる“11-47-99”はシーンのアンセムとなり、数多くのフットワークのトラックに共通する無秩序にシンコペートするリズム・パターンは RP Boo のトラックに起因すると言われる。地元では秘蔵っ子 Jlin も所属するクルー D'Dynamic を主宰し、〈Planet Mu〉よりリリースのフットワーク・コンピレーション『Bangs & Works Vol.1』(2010)、『Bangs & Works Vol.2』(2011)に収録され、2013年にデビュー・アルバム『Legacy』、2015年にセカンド・フル『Fingers, Bank Pads & Shoe Prints』を同レーベルより発表。2016年には初期のクラシックスを収録した「Classics Vol. 1」や新録「The Ultimate」を発表。フットワークの肝である3連を基調とした簡素なドラム・マシーンのレイヤーとシンコペーションによる複雑かつ大胆なリズムワークに、コラージュにも近いアプローチでラップのような自身のヴォイスとサンプリングを催眠的にすり込ませ、テクノにも似たドライでミニマルな唯一無二の驚異的なグルーヴを披露。古代から発掘されたフューチャー・クラシックスとも称され、先鋭的な電子音楽やアヴァンギャルドとしてもシーンを超えて崇められるフットワークの神的存在。2018年に最新アルバム『I'll Tell You What!」を〈Planet Mu〉より発表。

https://soundcloud.com/rp_boo

Foodman [Nagoya]

名古屋出身のトラックメイカー/絵描き。シカゴ発のダンス・ミュージック、ジューク/フットワークを独自に解釈した音楽でNYの〈Orange Milk〉よりデビュー。常識に囚われない独自性溢れる音楽性が注目を集め、七尾旅人、真部脩一(ex相対性理論)、中原昌也などとのコラボレーションのほか、Unsound、Boiler Room、Low End Theory 出演、Diplo 主宰の〈Mad Decent〉からのリリース、英国の人気ラジオ局NTSで番組を持つなど国内外で活躍。2016年に〈Orange Milk〉からリリースしたアルバム『Ez Minzoku』は Pitchfork や FACT、日本の MUSIC MAGAZINE 誌などで年間ベスト入りを果たした。2018年9月に〈Sun Ark / Drag City〉からLP『ARU OTOKONO DENSETSU』、さらに11月にはNYの〈Palto Flats〉からEP「Moriyama」を立て続けにリリース。2019年3月には再び〈Mad Decent〉からEP「ODOODO」をリリースした。

https://soundcloud.com/shokuhin-maturi

Free Babyronia [AUN Mute / Nagoya]

ペルー、リマ出身、日本在住。2005年頃より楽曲制作を開始。名古屋を拠点にライブ活動を行い、様々な名義で創作活動を行う。2012年にレコード・レーベル〈AUN Mute〉を設立。Campanella、Nero Imai などラッパーへのトラック提供や、Red Bull Music Academy Bass Camp への参加、イギリスの大型フェス Bloc が主宰したドキュメンタリー・フィルムに楽曲を提供、未来科学館で行われたインスタレーション「INSIDE」のサウンドを担当するなど活動は多岐に渡る。2018年には RCSLUM の MIX CD 部門、ROYALTY CLUB から「MUSIC OF ROYALTY SELECT」をリリース。同年にフルアルバム「PARADE」を〈AUN Mute〉よりリリースする。

https://soundcloud.com/yukiorodriguez

ツチヤチカら [6eyes / Nagoya]

ロック・バンド 6eyes のフロントマンとして活動。2018年10月半ば突如、ツチヤチカら名義で自身の iPhone 内のアプリ GarageBand で制作したオリジナル曲を SoundCloud にアップし始める。100曲アップロードを目標とし作られた Big Beat for 201x という名のプレイリストには様々なジャンルの曲が約半年で65曲がアップされるというハイスピードなペースで更新され続けている。ツチヤチカら曰く「現代にポケットに入ってる iPhone の GarageBand で曲を作るということは文字通り、60's の若者達がエレキ・ギターを手に取りガレージでバンドを組んで衝動に任せて演奏していたのと同じ事なんだ。」

https://soundcloud.com/chikara-tsuchiya

脳BRAIN

東京都在住。78年生まれ。10代後半から現代音楽、実験音楽の音盤収集と同時にカセットMTRにて宅録を始める。1st『Cock Sucking Freaks』、2nd『L.S.D BREAKS』、初のミックスもの『WHITEEYES』を2019年初頭にリリース。各タイトルのCD-R版をロスアプソン、ディスクユニオンにて販売中。幡ヶ谷フォレストリミット『K/A/T/O MASSACRE』『ideala』を中心にDJを行なう。

https://acidamanner.bandcamp.com/track/--2

øjeRum - ele-king

 デンマークのコペンハーゲンを拠点とするダーク・アンビエント・アーティスト øjeRum の新作『On the Swollen Lips of the Horizon』が、音響作家リチャード・シャルティエが主宰する音響系レーベルの老舗的存在の〈LINE〉からリリースされた。
 このニュースを知ったとき øjeRum をリリースするというレーベルの審美眼に唸ってしまった。いっけん意外なキュレーションだが、音響レーベルの老舗〈LINE〉が送り出す必然性があるように思えたからだ。彼の音楽/音響にはエクスペリメンタル、アンビエントにおける2010年代後期的な「何か」がある。ダーク/ゴシックな感覚とでもいうべきか。これは極めて現代的なセンスである。

 øjeRum、本名はポウ・グラボウスキー(Paw Grabowski)という。2007年頃にフランスの〈Rain Music〉から音響フォーク『There Is A Flaw In My Iris』という作品をリリースしているが、現在のようなダーク・アンビエントへと変化を遂げ、大量のリリースを実践するのは、2014年に『He Remembers There Were Gardens』をセルフリリースしてからのことだ。以降、『Sange Til Døende』(2014)、『The Blossoming Of The Nothingness Trees』(2016)、『Needleshaped Silence』(2017)『Sometimes I See Myself Sleeping In A Stone Of Falling Eyes』(2018)、『Træerne & Intetheden』などのアルバムやEP、カセット、CDや7インチ盤の超限定盤リリースを膨大におこなってきたわけだ。
 くわえてヴィジュアル・アーティストでもある彼によるアートワークも美麗で、ゴシックな美意識で統一されている。CD-Rとアート写真をセットにした『A Certain Grief』(2018) のように75部しかコピーしないような私家盤に近い作品もあり、コレクションへの欲望を喚起してきた。ちなみにフランスのレンヌにあるギャラリー「Le Bon Accueil - Lieu d'arts sonores」において個展が開催されるなどヴィジュアル・アーティストとしての評価も高い。

 彼の膨大な作品の中で、2017年に発表された『Skygge』はCD作品であり、多くの耳に触れられる機会のあったアルバムである。美しい悪夢のようなゴシックなサウンドスケープがまとまったコンポジションで展開しており、「øjeRum の膨大なディスコグラフィの中で最初に聴くべきアルバムはどれか」と問われたら、「これまで」ならば『Skygge』と答えたであろう。
 この『Skygge』も含めて、øjeRum のフィジカルはほぼ売り切れとなっているものの、その多くは bandcamp などで聴くことができる。2019年もすでに『Silent Figure With Landscape』、『Syv Segl』、『Sange Til Døende {Pladeselvskab Reissue}』、『Nattesne』、『There Is A Flaw In My Iris』、『Don't Worry Mother, Everything Is Going To Be Okay』などの作品を送りだしてしているが、〈LINE〉にピックアップされたことで、さらに多くのアンビエント・音響マニアの耳に届くことになるのではないか。
 むろん著名レーベルからのデジタル・リリース作品だからといって、これまでの彼の作風となんら変わっているわけではない。そのサウンドは、闇夜で祈るかのごとき「崇高さ」を感じさせるアンビエンスだが、『On the Swollen Lips of the Horizon』も「ゴシック・ノスタルジア・アンビエント」とでも形容したいサウンドに仕上がっていた。〈LINE〉は、彼の作品・楽曲を「手書きのコラージュの視覚的な対応物を用いて、大気中および感情的に帯電した環境記録を作成する」とインフォメーションしているが、まさにそのとおりの音といえる。デイヴィッド・トゥープの語る「エーテルトーク」のようなアンビエントだ。
 アルバムには30分に及ぶ“on the swollen lips...”、22分35秒にわたる“...of the horizon”の長尺2曲と5分8秒ほどの“on the swollen lips... (excerpt)”が収録されている。ドローン、電子音、環境音が交錯し、まるで記憶にのみ存在する映画の音響空間のように霞んだ質感のサウンドスケープを生成していく。レーベルは「ウィリアム・バシンスキーとセラーのファンのための催眠的な周期的感情ジェスチャー」と書いているが、確かにバシンスキーセラーのように記憶を融解させてしまうような音響的質感を感じた。深いノスタルジアが、エーテルのように漂っているとでもいうべきか。記憶の夢、夢の記憶。夢幻のサウンドスケープ。そのアンビエンス、アンビエント……。

 本年2019年はザ・ケアテイカー、ザ・フューチャー・イヴ・フィーチャリング・ロバート・ワイアット、ヤン・ノヴァク、フェネス、サンO)))、ティム・ヘッカーの新作など、個性は違えどもアンビエントやドローンの傑作が多くリリースされているが、本作も負けず劣らず重要なアルバムだ。『Skygge』に次ぐ øjeRum の新たな代表作がここに生まれた。

Emily A. Sprague - ele-king

 覚えていますか? フロリストのあのいまにも壊れそうな、だがそれでいてどこか生命の力強さのようなものを喚起させる音楽を。同バンドでなんともはかないヴォーカルを響かせていたのがエミリー・スプレーグである。彼女はフロリストの活動を続けるかたわらアンビエント作品の制作も進めていて、すでに『Water Memory』『Mount Vision』という2作をカセットで発表しているのだけれど、即完したというそれら2作がなんとテイラー・デュプリーの手によってリマスタリングを施され、〈RVNG〉によって復刻されるというのだから落ち着かない。日本盤ボーナストラックには工藤キキも参加しているらしい。詳細は下記よりチェック。

大注目のアンビエント・アーティスト、Emily A. Sprague が自主カセット・リリースし即完したアンビエント作品2作がリマスター&ボーナス・トラック追加してリリース!
シンセサイザーを駆使してアンビエント~ニューエイジを横断する夢幻/無限の桃源郷サウンドスケイプ!
日本盤のみオリジナルのアートワークを使用した独自紙ジャケット、ボーナス・ディスク付き2枚組仕様!

Mitski、Frankie Cosmos、Hatchie なども輩出してきた、〈Double Double Whammy〉から作品をリリースしている、ブルックリンのローファイ・フォーク/ポップ・バンド、Florist のフロントマン、でヴォーカル、ギター、シンセサイザーなどをマルチに担当する Emily Sprague。2017年から2018年にかけて彼女がバンド活動の合間を縫って録音し、自主リリースしていたアンビエント作品2作『Water Memory』『Mount Vision』が、彼女の才能に着目したNYの最先鋭レーベル〈RVNG〉よりリマスター、ボーナス・トラックを追加してフィジカル化。

エミリーのサウンドは全ての繋がりに関係しており、地上の活動に人との触れ合いを導く神秘的な力に生き生きとした中心的形を与えている。
音と詩を通して、エミリーは水晶の透明性の束の間の瞬間に焦点を合わせ、複雑な意味作りのために拡張された人生について瞑想する。このビジョンは間違いなく美しく、やさしく、そして深い。
この2つの作品は海と山というタイトルからも分かるように対をなす鏡のような構造を持ち、書かれた詩によって補完される2つの章として機能している。

『Water Memory』はエミリーによる初めてのロングフォームのインストゥルメンタル・アンビエント・ミュージックで、マサチューセッツとニューヨークの間でユーロラック・モジュラー・シンセサイザー(Monome、Mannequins、Mutable Instruments、ALM Bust Circuits、4ms、Xaoc、Verbos Electronics)、Teenage Engineering OP1、および Valhalla VST Reverb を使用し、1年間の自己と音の探求によって生まれた。
古代の格言集のように展開する。時々遊び心があり、幻想的でさえあるが、常にきらびやかでリアルだ。タイトルのように、意味は水性であり – 決して固すぎず、あくまで実態がある。
対照的に、『Mount Vision』はカリフォルニア北部でもっと短い期間で録音された。シンセサイザーを駆使し、ディープに配された拡張トーンのコンポジションが天空へと漂っていくようなサウンド。ニューエイジ調のシンセ・ドローン、センシティティヴなピアノ、ミニマル・アンビエントが3編に渡って構成されている。

この惑星におけるエミリーの使命は、人間の最も深い知識と知的な性質との間の接続を容易にする、または明るくすることであろう。そして、『Water Memory』、『Mount Vision』は、この共有経路に沿った最も確かに記念碑的作品である。

今回のリリースにあたりリマスターは Taylor Deupree が担当。日本盤には追加ボーナス・トラックに加え、エミリーがそれぞれの作品に書いたポエムを Anthony Naples によるレーベル〈Incienso〉からも作品をリリースしているNY在住の日本人アーティスト/ライター、工藤キキが日本語で朗読したタイトル・トラックの日本語バージョンも収録。

Artist: Emily A. Sprague
Title: Water Memory / Mount Vision (Special Japanese Edition)
Cat#: ARTPL-116
Format: 2CD

※解説:佐々木敦(HEADZ)
※オリジナルのアートワークを使用した独自紙ジャケット
※ボーナス・ディスク付き2枚組仕様

Release Date: 2019.06.07
Price (CD): 2,300 yen +税

TRACKLIST:
01. Water Memory Poem
02. A Lake
03. Water Memory 1
04. Water Memory 2
05. Dock
06. Your Pond
07. Mount Vision Poem
08. Synth 1
09. Piano 1
10. Synth 2
11. Huckleberry
12. Synth 3
13. Piano 2 (Mount Vision)
14. Outdoor (Bonus)

BONUS DISC FOR JAPAN:
01. Water Memory Poem (Japanese – Kiki Kudo)
02. Blessings
03. Mount Vision Poem (Japanese – Kiki Kudo)
04. Untitled

■ Emily A. Sprague

幼少期に母の教えでピアノを始める。11歳の頃からギター・レッスンを受け始めたものの、一旦やめてしまうが、14歳の時に再びギターを弾き始め、本格的にソング・ライティングに興味を持つ。その後バンド Florist を結成し、2013年に6曲入りEP「We Have Been This Way Forever」でデビュー。もう1枚の自主制作EPを経て、〈Double Double Whammy〉と契約し、2015年にリリースしたEP「Holdly」で Stereogum の「50 Best New Bands Of 2015」に選出される。2016年に『The Birds Outside Sang』、2017年に『If Blue Could Be Happiness』の2作のアルバムを発表し、インディ・ミュージック・リスナーから多くの支持を受ける。その活動と並行し、Emily はモジュラー・シンセサイザーを用いたアンビエント・ミュージックの制作を開始しセルフ・リリースした『Water Memory』、『Mount Vision』が高い評価を得ている。

Angel-Ho - ele-king

 『Death Becomes Her』は南アフリカ共和国ケープタウンを拠点に活動するアーティスト、エンジェル・ホのキャリア通算2枚目のアルバムである。2017年に自身も設立に関わったレーベル/共同体である〈NON〉から1枚目の『Red Devil』を、そして今作はロンドンの〈Hyperdub〉からのリリースとなった。
 ここで時間を2015年に巻き戻す。当時21歳だったアンジェロ・アントニオ・ヴァレリオは、植民地主義の爪痕や人種主義がアパルトヘイト後も色濃く残る南アフリカの政治に憤りを感じながら、ケープタウン大学でファイン・アートを専攻していた。『FADER』による当時のインタヴューによれば、同学部の自学年で、有色人種は彼しかいなかったという。ヴァレリオは、この年に実施された同校のキャンパスに建っていた植民地主義の象徴であるセシル・ローズの銅像を撤廃する運動などにも参加している。
 彼の創造力はローカルにとどまることなく、サイバースペースへとトランスコーディングされ、アメリカ合衆国リッチモンドのチーノ・アモービとフェイスブックで知り合い、ロンドンのアーティスト、キシとも出会う。人種、政治、ジェンダー、ディアスポラなどのトピックで共振した彼らは、2015年に〈NON〉を始動させる。
 ヴァレリオは幼い頃からのあだ名である「Angel-Ho」を自身に冠し、エンジェル・ホとしてデビューEP「Ascension」をラビットのレーベル〈Halcyon Vale〉と〈NON〉の共同リリースとして発表。このEPはアルカがマスタリングを担当している。ぶつ切りにされた多種多様な事物の音が、波形をねじ曲げられたパーカッションやシンセサイザーとリズムを構築するミュータント・サウンドが反響を呼んだ。グライムのウェイトレスな感覚を暴力的に発展させた前述のラビット、『Xen』(2014)以降のアルカ、インターネットの暗黒面をサーヴェイする M.E.S.H らのダーク・ベースミュージックらと共振しつつ、2015年の音を作り出していたといえるだろう。
 2017年、アルバム『Red Devil』を〈NON〉から発表。「Ascension」の流れを汲みつつ、南アフリカが生んだダンス・ミュージックであるゴムのような、低重心ファンクネスを内包する形で独自のテクスチャーを編み出している。この間、エンジェル・ホは「彼」から「彼女」になっている。2018年には同じく南アフリカ拠点のクイアラップ・ユニット、フェイカ(FAKA)の“Queenie”のプロダクションを手がけた。
 そして2019年、自身の声で歌うことによって生まれたのが今作『Death Becomes Her』である。「VICE」のインタヴューによれば、タイトルが物語るように、ここに様々な「死」が交差している。「ポップの死、アイデンティティの死、政治の死、すべての死。私の音楽はポップとそれらの出会い」であると彼女はいう。そして、それは「大きな葬式」であるとも。
 ゲイの男性から、トランス・ウーマンへの変化。リズムからメロディを主軸にした音楽的変化(本人は「Ascenssion」はサウンド的には自身の分岐点だったとも述べている)。「死」を「A」が「非A」へと変化するミューテーションのプロセスと捉えるならば、このアルバムはその結実だともいえるだろう。
 たしかに『Death Becomes Her』において、声は重要な要素である。クリス・ケッツ(Chris Kets)のディレクションによって制作され、アルバムに先立って公開された“Pose”のヴィデオでは、『エヴァンゲリオン』のクリップをコラージュした映像で、ガイカとボンによってプロデュースされたゴシックなベース・トラックでラップをする。ここで煽られた期待通りにアルバム冒頭の“Business”では、スロー・テンポなリズムに、ダブやエコー、波形をハックされた彼女自身の声のコーラス上でエンジェル・ホが歌う。アメリカのシンガー、Kリズをフィーチャーしたポップ・ダンスホール“Like a Girl”、ケープタウンの Qweezy と放つ声帯ノイズのトンネル“Good Friday Daddy”、同じく地元のラッパー、K-$と歌う淡いアーバンなR&B、“Baby Tee”。
 アンダーグラウンド・ダンスミュージックの作り手が、このようなダイナミックな変化の渦中で歌うのは、愛について、セックスについて、そしてトランスとして生きることについて、などである。「DAZED」のインタヴューにおいて、「トランスであることは、そうであることによる苦難を体験することを必ずしも意味しない。人生とは驚きとともに経験するもの」と、エンジェル・ホは答えている。声という身体/アイデンティティのフィルターは、彼女のマニフェストを加速させる。さらには苦痛を想定外の驚きをもってして中和し、ポップネスへと転換する装置として機能しているようだ。
 今作においてトラックそのものもかなりの強度を持っている。 “Drama”はトラップ、ゴム、トライバルの中間項を見事に射抜いたリズム・トラックであり、“Jacomina”はスラップするベース・ラインが跳ね回る生ドラムスやパーカッションの分子と接合し、極めてファンキーにグルーヴする。 “Cupid”では1分間の間に、光沢感のあるシンセとノイズが音の真空地帯を生む。彼女は音においてもトランスであること、つまり横断的かつダイナミックであることをやめてはいない。
 『Death Becomes Her』は、南アフリカのルポルタージュでも、アパルトヘイト以降の政治や人種主義との闘争でもなく、パーソナルであることをトラックと声で突き詰めて表現したアルバムである。そこで歌われるのは、アモービ『PARADISO』(2017)におけるポスト・アポカリプスでも、キシ『7 Directions』(2019)のアフロ・コスモロジーでもなく、現在に濃縮されたエンジェル・ホの「生」そのものだ。ポップでファンキーでケオティックなサウンドによってアルバムの統一感は希薄に映るかもしれない。けれども、彼女の言葉にあるように「驚き」に満ち触れた人生に、そんなものはハナから必要ないのだろう。

New Order - ele-king

 先日本国で刊行されたジョン・サヴェージによるジョイ・ディヴィジョンの本、『This searing light, the sun and everything else』の日本版を準備中です。今年はジョイ・ディヴィジョンの『アンノーン・プレジャー』から40年ですから。JDとニューオーダー、『レコード・コレクター』誌も特集してましたね。
 さて、そこでニュー・オーダーです。7月12日に、新しいライヴ盤が出ます。2017年7月、地元マンチェスターの伝説の会場=オールド・グラナダ・スタジオ(ファクトリーの創始者トニー・ウィルソンのTV番組の収録会場で、当然ジョイ・ディヴィジョンもライヴをやっている)での演奏が収録されているわけだが、まあ、ちょっと前にライヴ盤って出ているよねと思う人、今回のそれは収録曲が面白い。ほとんどライヴでやってこなかったJD〜NOの曲を中心に18曲、です。JDの“ディスオーダー”も入っております。
 こちらは先行発表されたNO“サブカルチャー”です。
  ◼︎「Sub-culture」https://smarturl.it/NOM

 また、トラックリストは以下の通り。大名曲“ビザール・ラヴ・トライアングル”も入っていますね。

CD-1
1 - Times Change (Original version on 1993’s Republic)
2- Who’s Joe (Original version on 2005’s Waiting For The Sirens’ Call)
3 - Dream Attack (Original version on 1989’s Technique)
4 - Disorder (Original version on 1979’s Unknown Pleasures)
5 - Ultraviolence (Original version on 1983’s Power, Corruption & Lies)
6 - In A Lonely Place (Original version on B-Side to 1981’s Single Ceremony)
7 - All Day Long (Original version on 1986’s Brotherhood)
8 - Shellshock (Original version featured on the 1986 soundtrack to Pretty In Pink)
9 - Guilt Is A Useless Emotion (Original version on 2005’s Waiting For The Sirens’ Call)
10 - Subculture (Original version on 1985’s Low Life)
11 - Bizarre Love Triangle (Original version on 1986’s Brotherhood)
12 - Vanishing Point (Original version on 1989’s Technique)
13 - Plastic (Original version on 2015’s Music Complete)

CD-2
1 - Your Silent Face (Original version on 1983’s Power, Corruption & Lies)
2 - Decades (Original version on 1980’s Closer)
3 - Elegia (Original version on 1985’s Low Life)
4 - Heart + Soul (Original version on 1980’s Closer)
5 - Behind Closed Doors (Original version on B-Side To 2001’s Single Crystal)

 例によって商業主義を度外視したデザインによるパッケージも相当に格好いいです。まあ、ファンは必聴ですが、それにしてもアルバム・タイトルの『∑(No,12k,Lg,17Mif) / ∑(No,12k,Lg,17Mif) New Order + Liam Gillick: So it goes..』、これなんて読んだらいいんだろうか……。


◼︎商品概要
アーティスト:ニュー・オーダー / New Order
タイトル:∑(No,12k,Lg,17Mif) / ∑(No,12k,Lg,17Mif) New Order + Liam Gillick: So it goes..
発売日:2019年7月12日(金)
品番:TRCP-243~244/ JAN: 4571260589032
定価:2,600円(税抜)*CD:2枚組
解説/歌詞対訳付
https://trafficjpn.com

大好評につき重版出来!
続編も発売中!!

ゲーム音楽は偉大なるアートである!

1978年に産声をあげたゲーム音楽レコード、
その40年以上にもわたる歴史を網羅した決定版
膨大な数のなかから選び抜かれた名盤950枚を紹介!

「日本のゲーム音楽は、この国が生んだもっともオリジナルで、もっとも世界的影響力のある音楽だ」と『DIGGIN'』のプロデューサー、ニック・ドワイヤーは言う。これは、長年ゲーム音楽を研究し続けてきた本書執筆陣が、それぞれに思い続けてきたことでもある。ゲーム音楽は単なるゲームの付随物で終わるものではなく、かけがえのない価値を様々な形で具有している。〔……〕本書はゲーム音楽の歴史に散らばる何万枚ものサントラ盤やアレンジ盤から、これはという名盤たちを「音楽的な」観点から選び抜いた、ありそうでなかったディスクガイド本である。 (本書序文より)

試行錯誤の黎明期からサウンドチップの音楽、スーファミ~初代プレステの小容量サンプリング時代、ハードの制約から解放されたPCエンジン~CD-ROM、そして Bandcamp を筆頭に無数のサウンドが湧出し続ける配信~サブスク全盛の今日まで──膨大なタイトルのなかから厳選された極上の950枚を聴け!

監修・文:田中 “hally” 治久
文:DJフクタケ/糸田屯/井上尚昭

[執筆者紹介]

田中 “hally” 治久
ゲーム史/ゲーム音楽史研究家。チップ音楽研究の第一人者で、主著に『チップチューンのすべて』ほか。さまざまなゲーム・サントラ制作に携わる傍ら、ミュージシャンとしても精力的に活動しており、ゲームソフトや音楽アルバムへの楽曲提供を行うほか、国内外でライブ活動も展開している。

DJフクタケ
90年代よりDJとして活動。95年に世界初の GAME MUSIC ONLY CLUB EVENT 「FARDRAUT」開催に関わるなど最初期から活動する VGMDJ であり、ビデオゲーム関連アナログ盤のコレクターでもある。2014年より歌謡曲公式 MIX CD 『ヤバ歌謡』シリーズをユニバーサル・ミュージックよりリリース。2017年には企画・選曲・監修を務めた玩具・ビデオゲーム関連のタイアップ楽曲集CD『トイキャラポップ・コレクション』Vol.1~3をウルトラ・ヴァイヴより発表するなど過去音源の紹介や復刻にも精力的に取り組む。

糸田 屯 (Ton Itoda)
少年期にゲーム・ミュージックとプログレッシヴ・ロックに魅了される。レコード店スタッフなどを経て、兼業ライターとして活動。2019年現在、『ミステリマガジン』誌で「ミステリ・ディスク道を往く」を連載中。ゲーム・ミュージックというジャンルの背景に連綿と広がる影響関係、コンポーザーの音楽的背景/変遷に強い興味・関心を持ち、新たな知見を求めて日々digにいそしむ。敬愛するクリエイターは Tim Follin。

井上尚昭 (rps7575)
2001年、“レコード会社別で捉えるゲーム音楽カタログレビュー” をコンセプトにしたウェブサイト「電子遊戯音盤堂」を開設。洋邦映画アニメ実写問わずサウンドトラック全般が守備範囲で、別名義でDJプレイなども。ライター諸氏とは別機会にて妙縁があったが、商業出版への寄稿は今回が初。本業はサウンドデザイナー。

[目次]

序文
凡例

第1章 試行錯誤の黎明期

ゲーム音楽レコードの胎動 | ヒア・カムズ・マリオ! | アレンジの模索 | 声なき時代のゲーム歌謡

第2章 サウンドチップの音楽

任天堂 | ナムコ | コナミ(アーケード) | コナミ(家庭用) | タイトー | セガ | カプコン | データイースト | アイレム | SNK | アーケードその他 | 家庭用その他 | 古代祐三 | 崎元仁・岩田匡治 | 日本ファルコム | 日本テレネット~ウルフチーム | パソコン系その他 | 海外 | リバイバル

第3章 ミニマムサンプリングの音楽

スクウェア | コナミ | タイトー | ナムコ | セガ | カプコン | ソニー系 | 任天堂 | 家庭用その他(SFC) | 家庭用その他(PS・SS・N64ほか) | アーケードその他

[コラム] インターネットミームと非公式ゲーム音楽リミックス ~All Your Base are Belong to Us~ (糸田屯)

第4章 ハード的制約から解放された音楽

最初期(カセットテープ~CD-ROM初期) | 劇伴作家の仕事 | シンフォニック | シンフォニックロック | アコースティック~ニューエイジ | プログレ | フュージョン | ジャジー | シンセロック | ハードロック/ヘヴィメタル | ロックその他 | アンビエント~エレクトロニカ | クラブミュージック | ディスコ~ダンスポップ | ポスト渋谷系 | 音楽ゲーム | ヴォーカル | ジャンルミックス | その他 | CD-ROMから聴けるゲーム音楽

シリーズ作品や関連作品をまとめて聴ける「CD BOX系サントラ」リスト

第5章 ダウンロード配信世代のゲーム音楽

エレクトロニカ | エレクトロニック・ダンス | 80sリバイバル&ウェイヴ系 | レトロモダン(チップチューン進化系) | ロック | シンフォニック | アコースティック | ジャジー | ジャンルミックス | 民族音楽

シリーズ作品や関連作品をまとめて聴ける「CD BOX系サントラ」リスト2

第6章 アレンジバージョン

第一次バンドブーム | フュージョン | プログレ | ロック | 管弦・器楽 | アコースティック | シンセ | ダンス&クラブ | ジャンルミックス | ヴォーカル | その他

シリーズ作品や関連作品をまとめて聴ける「CD BOX系サントラ」リスト3

第7章 アーティストアルバム

日本(バンド) | 日本(ソロ/ユニット) | 海外

索引
あとがき

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Anderson .Paak - ele-king

 前作『Oxnard』からわずか5ヶ月後という短いサイクルでリリースされた、アンダーソン・パークの4枚目となるソロ・アルバム。アーティスト本人のインタヴューでの発言によると、本作は『Oxnard』とほぼ同時期にレコーディングが行なわれたようだが、エグゼクティヴ・プロデューサーであるドクター・ドレーからは『Oxnard』と比べてより自由な権限が与えられ、アンダーソン・パークの好きな形で制作することができたという。実際、今回のプロデューサー陣も前作とは多少異なった編成になっており、ドクター・ドレーもエグゼクティヴ・プロデューサーおよびミックス・エンジニアとしてのクレジットのみで、楽曲のプロデューサーとしては参加していない。それゆえにアルバム全体の仕上がりとしては、ウェストコーストならではファンク色の濃度が多少薄れて、より聞き心地の良い雰囲気になったように感じる部分もあるが、流れとしてはやはり『Venice』から『Oxnard』までのいわゆる“ビーチ・シリーズ”の延長上にある作品あるのは間違いない。
 前作ではケンドリック・ラマーやスヌープ・ドッグ、プッシャ・T、J・コールといった錚々たるメンツをゲストに迎えたアダーソン・パークであるが、本作では参加しているアーティストがそれぞれビッグネームであることは変わらないものの、ゲストの器用の仕方がより自然なものになっており、良い意味で曲のパーツとしてゲスト・アーティストが見事に機能している。その効果は、前作でも1曲目のプロデュースを手がけたジャイラス・モジーとアンダーソン・パークとのコンビネーションによる“Come Home”から如実に現れており、この曲では終盤にアンドレ3000(アウトキャスト)が参加したパートがあるのだが、ジャイラス・モジー自身によるギターのリフとアンドレ3000のラップの絡み具合が実に見事で、畳み掛けるようなテクニカルなラップの立ちっぷりが、アルバム全体への期待度も上げている。プロデューサーとしてアルケミストが参加したノスタルジックなR&Bチューン“Make I Better”では、スモーキー・ロビンソンを贅沢にもコーラスとして起用して、ベテランならではの大人の色気が加えられ、一方、曲の前半部で大胆に展開する“Reachin' 2 Much”ではレイラ・ハサウェイを同じくコーラスに迎えて、曲の厚みを増すことに成功している。ゲスト起用の巧みさという意味では、ジャスミン・サリバンをフィーチャした“Good Heels”やブランディが参加した、個人的には本作中最も好きなブギーチューン“Jet Black”も実に魅力的であるが、今回、最も注目すべきはネイト・ドッグとのコラボレーションによるラスト・チューン“What Can We Do?”であろう。Gファンク・シーンを代表するシンガーであり、2011年に亡くなったネイト・ドッグであるが、この曲のプロデューサーであるフレッドレック自身が以前、プロデュースを手がけた未発表のヴォーカルを今回使用し、まるでネイト・ドッグが現代に蘇ったかのような、実にフレッシュなアンダーソン・パーク流のGファンク・チューンを完成させている。
 他にも前作『Oxnard』でもコンビを組んでいたカルム・コナーと〈ストーンズ・スロウ〉のアーティストでもあるキーファーによる先行シングル曲“King James”や、ファレル・ウィリアムスがプロデュースおよびコーラスでも自ら参加している、ちょっと変則的なビート感のダンス・チューン“Twilight”など、聞きどころは多数ある。ただ、個人的にはまだ『Oxnard』の余韻が残っている状態でもあり、今後、もう少しじっくりと時間をかけてこのアルバムを聞き込んでいきたいと思う。

interview with Ralf Hütter(Kraftwerk) - ele-king

 発電所(kfarftwerk)がない世界に戻ることは、ジブリの映画でもない限り想像が難しい。音楽においてもそうだ。クラフトワーク(発電所)はなかったと、いまから音楽を作ろうとしている人間のなかで、そう言えるひとはあまり多くはないだろう。
 テクノロジーの問題はたしかにある。終末論的にそれはかねがね題材にされてきている。が、しかし、クラフトワークはテクノロジーに対して基本的にニュートラルな立場でいる。もちろん、その中立から降りることは、たとえば“レディオアクティヴィティ”のような曲をいま演る場合は起こりうる。クラフトワークはつまり、原子力“発電所”に対する反対の立場をはっきりさせているし、そうした政治的な声明を恐れることもない。
 とはいえクラフトワークがテクノロジーそのものを批判することはそうそうないし、かといって『コンピューター・ワールド』がコンピュータ礼賛のアルバムであるはずもない。ただあのアルバムは、エレクトロニクスの応用が音楽を更新させるという意味において明らかに未来的だったし、いま現在のクラフトワークの基盤となっていると言ってもいいだろう。今回の来日ライヴ(4/16~4/19まで東京、22日大阪)においても、“ナンバーズ”の非の打ちどころがないエレクトロニック・グルーヴはショーの1曲目だったし、座席で座って聴くには酷ともいえる、それは’あまりにも躍動するダンス・ビート・ミュージックだった。

 1946年生まれのラルフ・ヒュッターは、いうまでもなくクラフトワークの中枢である。ヒュッターより1歳下のフローリアン・シュナイダーと1968年に出会ったことで、やがて音楽を電子化するプロジェクトの胎動がはじまった。1970年にそれがクラフトワークとなったときには、しかしまだ試行錯誤の状態、いわゆる“初期段階”だった。1973年までのあいだに残した最初の3枚のアルバムはある時期から公には封印され、いっぽうでジュリアン・コープのようにその3枚こそが名作であるという極端な意見も後を絶たないが、しかしながら、シュトックハウゼン風の電子音楽やフルクサスからの影響の名残もあるこの“初期段階”が完璧にクラフトワーク史から切り離されていないことは、セカンド・アルバムの1曲目が彼らのスタジオ名=クリング・クラングになっていることからもうかがい知れる。
 だが、いま存在するクラフトワークは1974年の『アウトバーン』以降のそれである。『コンピューター・ワールド』以降の、強力なエレクトロニック・ダンス・ビートを有するプロジェクトであり、さらにまた、たったいま存在するクラフトワークは、ヒュッターをはじめ、へニング・シュミット、フリッツ・ヒルバート、そして映像を操るファルク・グリーフェンハーゲンの4人によるオーディオ・ヴィジュアル・プロジェクトとしてのそれである。

 4月18日の午後、渋谷のBunkamuraオーチャードホールの小さな楽屋には、ラルフ・ヒュッターが取材のために佇んでいた。海外の記事を見るにつけ、気むずかしく、ときに取っつきづらいという、エレクトロニック・ミュージックの世界においてはなかば神のごとく尊敬されているこのドイツ人はなんともリラックスしているようだった。風評とは違って、質問者の緊張感を煽るような仕草はない。もちろん、宇宙から帰還した宇宙飛行士のようでもなかった。黒いポロシャツ姿のヒュッターは、ぼくたちに与えられた30分のあいだ丁寧に答えてくれたと思う。取材にはクラフトワークのライヴを1981年の初来日以来、日本およびUKのおいても何度も観ている赤塚りえ子さんに同行してもらった。ぼくはゆっくり録音機のボタンを押した。

みなさんが知っているように、私たちは1968年の世代です。なので、こうしたムーヴメントは私たち歴史の一部のようなものです。アートは社会にインパクトを与えるものです。芸術の自由やクリエイティヴィティがいまの社会にはもっと必要だと思います。

ドイツ語の通訳を手配できませんでした。申し訳ないです。とはいえ彼女は良い通訳なので。

ラルフ:なにも問題ないよ。私はフランス語も喋るし、ヨーロッパに行くときはイタリア語やロシア語も使います。日本語は喋れないけど……。デュッセルドルフにはとても大きな日本人コミュニティがあります。たくさんの日本の企業も入ってきてるし、デュッセルドルフから日本まで直行便も出てるんです。私も今回それに乗ってきました。とてもレアなんですよ。普段はフランクフルトからしか直行便が出てないんです。
 大昔に日本人の友だちに“Pocket Calculator”を“電卓”へと訳してもらいました。なので、私は日本語は喋れないけど日本語で唄います。

通訳:喋りはできないけど、日本語と触れてきたということですね?

ラルフ:そうです。わりと最近では、私の友だちの坂本龍一が“レディオアクティヴィティ”の歌詞の一部を訳してくれました。ですから、いまでは“レディオアクティヴィティ”も日本語で歌ってます。

ラルフ:今夜のライヴは見にきますか?

ぼくたちは明日行きます。ちなみに彼女は、6年目の赤坂Blitzも、1981年の来日ライヴも観ているんですよ。

赤塚:81年の『コンピューター・ワールド』ツアーのライヴですね。

ラルフ:81年! 私たちが初めて日本に来たときですよね? たしか。

赤塚:ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールのライヴも観にいきました(笑)。

ラルフ:去年のですか? いや、2年前か。

赤塚:2年前です。

ラルフ:あのロンドンでのライヴの後には、デュッセルドルフでやりましたよ。

そろそろはじめましょうか。

ラルフ:そうですね。

渋谷の街は歩かれましたか? 来年のオリンピックを控え、東京がいまものすごいスピードで再開発されているのがおわかりだと思いますが、どのような印象を持たれましたか?

ラルフ:ドイツではみんながオリンピックに対して反対しました。立候補として上がったときにドイツ国民が反対したんです。オリンピック自体が古すぎる文化だからです。

通訳:投票をしたってことですか?

ラルフ:はい、投票が行われました。次のオリンピックじゃなくて、もっと先のオリンピックだったと思います。そもそもオリンピックというのは、19世紀のものなんですよ。

通訳:ほとんどの国民が反対したんですか?

ラルフ:そうです。バカなことにお金を使いすぎだと思います。そうですね、だから、あ、でもハチ公は見ましたよ(笑)。

通訳:ハチは変わってないですもんね(笑)。

ラルフ:そうです(笑)。

ブレグジットや黄色いベスト運動など、ヨーロッパはいま政治的に揺れ動いていますが、こうした状況がクラフトワークに影響を与えることはありますか?

ラルフ:みなさんが知っているように、私たちは1968年の世代です。なので、こうした(政治的)ムーヴメントは最初から私たち歴史の一部のようなものです。アートは社会に衝動を与えるものです。芸術の自由やクリエイティヴィティがいまの社会にもっとも必要なものだと思います。

通訳:こういう運動や問題があなたに刺激を与えるってことなんですね?

ラルフ:ちょっとコーヒー飲んでもいいですか? まだ時差ボケがあって……夜中に3時間ほど目がさめるんです。そのあとは普通に寝れるので大丈夫なんですけどね。生活リズムが変わっただけです。

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私たちの音楽は最初から先見の明がありました。流行を意識して作ったわけでありません。それは時代を超越したなにかです。クリング・クラング・スタジオそのものがコンセプトでした。

21世紀に入って2枚のライヴ・アルバム(2005年の『ミニマム・マキシマム』と2018年の『3-D The Catalogue』)を出しましたが、いまのあなたは新しい曲を作ることより、昔の曲をどのように更新することができるのかということに関心があるのでしょうか?

ラルフ:私たちの音楽は最初から先見の明がありました。流行を意識して作ったわけでなかったんです。それは時代を超越したなにかでした。クリング・クラング・スタジオそのものがコンセプトでした。マルチメディアがクラフトワークのコンセプトであり、すべてのコンポジション(作曲)がコンセプト・コンポジション(概念の作曲)みたいなものです。変えたり、足したり、即興したり、再プログラムもできます。マンマシーンがそこでいろんな心理的かつ物理的な部分で稼働します。クラフトワークは私、そして当時のパートナーだったフローリアン・シュナイダーがエレクトロ・アコースティックをコンセプトにはじめました。そのときのコンセプトを元に、ほかのアーティトやミュージシャンやテクニシャンと一緒に制作をするようになりました。マンマシーンは段階を踏んだり、変わり続けたりしています。いまの時代に関連性があるからこそ“レディオアクティヴィティ”も再プログラムしたんです。1975年のテーマが現代のテーマとしても存在していますよね。

通訳:常に成長したり、変わり続けているってことですか?

ラルフ:はい。ツール・ド・フランスの2003年の100回目記念のタイミングでアルバム『ツール・ド・フランス・サウンドトラック』をリリースしましたが、去年はオープニングを飾らせてもらいました。いわばスポーツ・オーケストラと私たちが興味を持っているアートとを融合させたような試みでした。「科学」、「アート」、「社会」、これらは分けて使うべき言葉ではないと思います。私たちは同じ世界で生きていて、アーティストは音楽に止まらず、社会的創造性に関与しています。音楽が文献や映画と関連性があるからこそ、私たちはアニメーションやCGを使うんです。私はクラフトワークで使うヴィジュアルにとても興味があります。それは言語のようなものだと考えています。言葉で伝えることもありますが、イメージや音楽でしか伝えられないものもあると思います。つまり総合芸術ですね、いまもっとも興味があるものは。

もともとパーカッションが2人いましたが、1980年代以降のクラフトワークは、1970年代よりもリズムに重きがおかれていますよね。実際、ディスコやクラブでもヒットしていました。いま現在のテクノロジーにおいて、電子化されたリズムにはまだまだ開拓の余地があるとお考えでしょうか?

ラルフ:70年代にパーカションが2人いたのは、当時もマシーンをある程度使っていて、しかしまだ不安定であって、リズムを安定させないといけなかったからです。1990年代からはコンピュータやシークエンスを導入したので、いまはもう2人は必要ないんです。いまは境界線のないプログラムされたリズムやアニメーテッド・リズムがあり、人間のメカニカル・スキルも高いです。70年代はメンタル・プログラミングをする方法を探していたんですけど、まだ存在していませんでした。知ってると思いますけど、昔のコンピュータはめちゃくちゃ大きかったんですよ。90年代からはラップトップが普及して、そこから専門業界でしか使えなかったツールが私たちも使えるようになったんです。お陰様で音楽の方向性が大きく変わりましたよね。

通訳:探し求めていたリズムを見つけることができたってことですか?

ラルフ:そうです、そうです。1976年に使っていたひとつのアナログ・シーケンスがあったんですけど、すごく大きなノブが付いていて、じつに不安定でした。いちどパリでのライヴ中にパリ内の大きな工場が次々と閉まっていて、エレクトロ・システムにショックが起きてしまい、私のアナログ・システムが全部消えてしまい、テンポもめちゃくちゃになってしまったことがありました。いまはすべてがパソコンのデータにあり、安全に機能しています。

赤塚:数年前に〈クラフトワーク 3D CONCERTS 12345678〉の日本ツアーを拝見しました。2016年はロンドンで3Dコンサートを拝見させていただきました。今回のライヴは3Dというカタチのコンサートの集大成なのでしょうか?

ラルフ:いや、まだまだ発展しますよ。すべてがライヴですから。赤坂で披露したパフォーマンスは2012年にニューヨークのMOMAではじまったものでした。「Ktaftwerk catalogue」としてのライヴです。6枚のアルバムたちに捧げる形を6時間かけて披露しようと考えたんですよ。しかしひと晩ではとても無理があったので、ひと晩で1枚のアルバムを演奏することにしました。とはいえ、『レディオアクティヴィティ』はヴァイナルで40分しかないレコードだったので、さすがにそれは短かすぎるということで、他の作品からの曲を混ぜてやりましたけどね。
 この形のライヴはホッケンハイムやLAのディズニー・ミュージアム・コンサートホール、ニュージーランドやベルリン美術館、シドニー・オペラハウス、そして赤坂Blitzでやりました。ミュージアム・カタログが終わった後はまたコンサートホールやフェス、ツール・ド・フランスでもやるようになりました。サラウンドサウンド・スピーカーを設置できるところではサラウンドサウンドを使って、同時にまた3Dヴィジュアルも使いました。
 今回はいろんなアルバムからいろんな曲を持ってきて、混ぜて2時間のライヴをやっています。いまのところ2回しかやっていないんですけどね。最後にやったのがベルリンのオリンピック・スタジアムでした。オリンピックには反対しますが、ライヴのために会場は使っています(笑)。

ライヴをやっていくなかで、曲に込められた意味は、それが作曲された当時から変わることはあるのでしょうか? たとえば、“レディオアクティヴィティ”はあの曲が作られた1975年のときとは違った、よりシリアスな問題提起になっていると思いますし、“ロボット”という曲が作られた1978年は、AIがいまのように普及し、“ロボット”が身近に感じられるようになる今日よりも、ずいぶん前の時代でした。

ラルフ:気持ちは確実に違います。“ロボット”の歌詞は1977年~78年に書きました。あの歌詞では、ロボットは私たちが求めることをなんでもやってくれると歌っています。しかしこの場合のロボットという表現はマシーンの暗喩ではなく、クラフトワークにはロボットのような資質があるという意味を込めています。ロボットはチェコ語で「労働」、「働く」という意味です。それが語源です。この曲は労働について歌っていて、ゆえに少しブラックユーモアも込められています。
 私たちは踊るメカニックです。クラブに行けば人はロボット・ダンスを踊っていますよね。ある種の社会学的素質みたいなもの説明しているような感じです。前回の赤坂ライヴではロボットを披露していませんでしたが、今回はしっかりプログラムして持ってきていますし、今夜から披露できます。昨日は不備があって使えなかったんです。税関でチェックされてるときに壊されてしまったんです。しかしなんとか再プログラムができたので、今夜はしっかり見れますよ。
 曲に込められた意味がよりリアルになることもあります。(その主題は)時間と人間と関わりがありますから。ときに成長をしたり、ときに減少したりもします。ヨーロッパや日本、韓国、来月行く予定の香港など、行く国によって曲のテーマがよりリアルになることもあります。
 質問の後半ってなんでしたっけ?

“レディオアクティヴィティ”もそうですよね?

ラルフ:そもそも“レディオアクティヴィティ”はコンビネーションについての曲でした。エレクトロニック・ミュージックとラジオとの関連性はとても重要です。エレクトロニック・ミュージック自体がラジオ局やラジオのツールから生まれてきたものですからね。昔はフランスやドイツで深夜ラジオから流れるエレクトロニック装置の音を聞いていたんですよ。
 放射能は、ドイツと日本にとってよく議論されるテーマですよね。何年か前に東京で行われた(坂本龍一主宰の)〈No Nukes〉に出演しました。そのとき坂本龍一が私の歌詞を少し日本語に訳してくれたんです。いまでも訳してもらったまま歌っています。私たちの音楽はオープンでシンフォニックなコンセプトがありますから。おかげさまで、“レディオアクティヴィティ”には「日本の放射能」という日本語の歌詞が入りました。私は日本語は喋れませんが、音声的に歌えるように龍一が訳してくれたんです。だからいまは歌えています。
 私たちの音楽は時代とともに変わります。印刷をすればモノが完成するという出版物とは違います。(曲は)生きているし、時間とともに働きます。私たちはアートの世界から来たんです。人生のなかのハプニングがアートになり、60年代後期の出来事から生まれています。映像やヴィジュアルや言語とともに作り上げているんです。
 そうだ、あなたがたにあとでロボット見せましょうか?

一同:ぜひ!

ラルフ:ただ、ときどきロボットを見た途端、私たちに興味をなくす人たちがいるんです(笑)。ただ興味をなくすんです。じつに興味深いリアクションですよね。

『MIX』のころから、ライヴやアートワークで自分たちをロボットに見立てていますよね。

ラルフ:マシーンへの感嘆なんですよ。だから私はクラフトワークがマシーンであるという風に歌詞を書いたんです。音楽の世界では人間とマシーンのあいだにインタラクションがあります。ミュージック・マシーンと表現していただいてもいいです。マンマシーンは人生のなかの人間である証明になる心理やシチュエーションを表現しています。マシーンとともに生きるという表現もあります。さっきも話したように昔はパワー障害で音が使えなくなったというのに、昨日はリハーサルで一瞬トラブルがあり、2秒ほど音が止まってしまいました。が、すぐに何もなかったかのように元どおりになったんです。

ロボットに関して、デトロイトのマイク・バンクスが英『WIRE』の取材で、とても面白いことを言っています。自分たちの影響がクラフトワークで良かったのは、ロボットには人種も年齢もないからだと。こうした解釈をどのように思いますか?

ラルフ:マイク・バンクスは仲の良いデトロイトの友だちです。90年代にイギリスで行われたテクノのフェスティヴァルで共演したんです。

赤塚:私もそこにいました!

※1997年のトライバル・ギャザリング:フェスの開催中にクラフトワークのライヴがはじまると、デトロイト・テクノのテントはリスペクトを込めて自らそのテントを閉めた。また、今回のライヴにおいても、クラフトワークが21世紀に発表している数少ない新曲のうちのひとつ、“Planet Of Vision”(“エキスポ2000”のURリミックスが元になっている)を演奏し、ドイツとデトロイトとのテクノ同盟を主張している。ちなみにその歌詞のサビはこうだ。「Detroit Germany We're so electric」

ラルフ:マイクがいう、人種を越えているという解釈は真実だと思います。彼は正しいことを言っています。音楽になんらかの価値があるとすれば、それは音楽がオープンであるところ、音楽を使って通信ができるところ、音楽に波があることや音楽というもののイメージが分離されておらず、劣化もしないところだと思います。
 ベルリンの壁がまだ建っていた頃、私たちは東ドイツでライヴをすることが許されていませんでした。でもラジオ波は壁を越えました。そして壁の向こうにいる人たち、ロシアやポーランドやチェコにいた人たちが私たちの音楽を聴いていたんです。1989年に壁が崩壊したその年に初めてベルリンでライヴができたんですけど、お客さんがみんな私たちの音楽を知っていました。壁は物理的にその場所に行くことを防ぐことはできても音楽を止めることはできませんでした。音楽とラジオ波はグローバルなんです。
 そうそう、もうひとつ言わなければならないのは、私たちはもちろん60年代のモータウンやソウル、ファンクなどのデトロイト・ミュージックにインスパイアされていたということです(笑)。

ここ数年のクリング・クラング・スタジオにおける……

ラルフ:あ、もうひとつ言い足してもいいですか? 私たちはホアン・アトキンスとも仲がいいんです。彼はクラフトワークのシーケンスにインスパイされてサイボトロンを結成したアーティストです。こうして、音楽が人を繋げたり、お互いにインスピレーションを与え合ったりできるきっかけにることは、素晴らしいことですよね。あ、ごめんなさい(笑)。

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私が自転車で大怪我を負ったというのはフェイクニュースです。別の年にいちど転んだことはありましたけど。そのときは3~4日病院で過ごしました。で、前にフェイク・ニュースを流されたので、そのときは病院で新しい脳をもらったというフェイク・ニュースを自ら流しました。

大丈夫です(笑)。ここ数年のクリング・クラング・スタジオにおける作業はどんなものがあるのでしょうか? ソフトウェアの開発やヴィジュアル・テクノロジーの開発などでしょうか?

ラルフ:ソーラー・エネルギーを導入しました。ソーラー・エネルギーを導入したり、新しい歌詞を作ったり、まだ秘密ですが新しいプロジェクトをはじめたりしています。新しいプロジェクトの話は完成するまで口外できません。
 あとは、昔のアーカイヴをアナログからデジタルフォーマットに移行するすることを楽しんでいます。2、3人くらいしかいない小さな会社なんです。ステージで見る4人がコミュニケーションを取りながら力を合わせて今回のツアーやミュージアム・ツアーを可能にしています。最近ルイビトンでも演奏したんですけど、オーナーはアートをとても支持している方でした。彼は、2日前に火災が起きてしまったノートル・ダム大聖堂に多額のお金を寄付したんです。人と人の触れ合いや対話から生まれる音楽、アート、ヴィジュアルアーツや言語のインスピレーションですよね。私は残念ながら日本語は喋りはできないけど、いろんな言語を使います。“電卓”は友だちに訳してもらってから何度も日本語で歌っているのでもう慣れていますが、坂本龍一に訳してもらった“レディオアクティヴィティ”はまだパソコンの画面を見て読みながらじゃないと歌えません。で、えーと、(クリング・クラング)スタジオではインタラクティヴ・ミュージックを3Dアニメーションと3Dイメージで作り上げるのに励んでいます。未来のためのコンセプト作りもやってます。

最後にぼくも自転車好きなので訊きたいのですが、かつて自転車で大怪我されたことがあると聞きましたが……

ラルフ:それはフェイクニュースです。

通訳:全部がフェイクなんですか? 怪我すらしていないってことですか?

ラルフ:そもそも、その話をしている人たちは、私と一緒にサイクリングしたことがありません。別の年にいちど転んだことはありましたけど。そのときは3~4日病院で過ごしました。で、前にフェイク・ニュースを流されたので、そのときは病院で新しい脳をもらったというフェイク・ニュースを自ら流しました。(一同笑)でもこの怪我は仕事や生活には何の影響も及ぼしていません。

通訳:軽傷だったって事ですか?

ラルフ:はい。アルバムにもツアーにも影響は出ませんでした。新しい脳を手に入れただけです(笑)。

で、あなたの自転車好きは有名ですが(公式サイトではサイクリング用グッズを売っている)、なにゆえにあなたはそこまで自転車を愛しているのでしょう?

ラルフ:サイクリング自体からはとてもインスピレーションをもらいます。はじめたのは70年代後期でした。スタジオの外でできることを探していたのがきっかけです。昔のスタジオというのは暗くて、密閉されてて、防音環境だったので、何年もスタジオにこもってばかりの生活を送っていときに、それはなんだか私が生きていく上では正しくない環境だと感じはじめたんです。私は外に出ようと思いました。しかし、歩いて散歩したりするのは、私にはペースが遅すぎたんです。私はスキーなど他のスポーツもやりますよ。
 で、そのときに私たちは気づいたんですよ。ちょうどオランダの近くに住んでいて、オランダではサイクリング文化が発達していました。フランスでの経験からツール・ド・フランスのことを知りました。もちろん、このサイクリングを始めたことがのちの「ツール・ド・フランス」に繋がっています。
 サイクリングを通して、音楽の延長線上みたいな感覚を見出したんです。自転車に乗るマン・マシーンのようなものですね。完璧なインディペンダントになれるんです。行きたいところに行けるし、精神的にも体力的にもリフレッシュができる。音楽に似ています。残念ながら日本は道路が逆(車両は左側通行)なので、私は日本ではサイクリングできません。しかしサイクリングは音楽を作る上でインスピレーションを与えてくれる素晴らしいものです。フランスやイタリアをサイクリングしたり、サイクリングを通じて世界のことを学んだりできるんですよ。サイクリング・イベントで会えるサイクリング仲間もできました。
 では、ロボットを見ましょうか?

 クラフトワークのライヴは、彼らの大衆主義の成果のひとつと言える。3Dメガネをしたオーディエンスは、ただひたすら純粋にショーを楽しむ。もちろん“レディオアクティヴィティ”のような例外はあるにせよ、基本的にぼくたちはエレクトロ・ポップの発明者のステージを2時間のあいだ無心に楽しむのだ。そしてそれは決してあなどることのできない素晴らしい体験だった。
 ヒット曲のオンパレードのライヴではあるが、たとえばかわいらしいポップ・ソングだと思っていた“電卓”が電子のうねりを有するファンクで再現されると座っている身体が不自由に感じてならない。そのように曲はアップデートされている。個人的にもっとも好きな曲のひとつ、“ツール・ド・フランス”は、レトロな映像をともなって展開する。そこには、デジタルに統率されているであろう現在のクラフトワークが、しかしアナログに対する愛着があることを示している。そしてもちろんクラフトワークがファンキーであることはライヴで充分に証明されている。ステージ衣装を見るだけでもおわかりになるだろう。

 ヒュッターが自ら言ったように、クラフトワークには「先見の明」があった。エレクトロ・ポップだけではない。ヒップホップ、ハウス、テクノ、あるいはそのミュータントたち、つまりダブステップやトラップにいたるまで、ほとんど多くのエレクトロニック・ダンス・ミュージックには1968年にふたりのドイツ人が始動させたコンセプトに借りがある。
 クラフトワークは古くならない。それはカンやヴェルヴェット・アンダーグラウンドが古くならないのと似ているのかもしれない。つまり、完璧にオリジナルで、ヒュッターが自ら説明するように、それは流行を気にして作ったものではない、ただ自分たちで発明したものだからだ。もしクラフトワークが古くなるとしたら、それは我々がロボットを笑えなくなったとき、人間たち自身が本物のロボットになったときだろう。

Flying Lotus × Anderson .Paak - ele-king

 先日待望の6枚目のアルバム・リリースがアナウンスされ、ユキミ・ナガノを招いた“Spontaneous”とサンダーキャット、ブランドン・コールマン、オノシュンスケの参加する“Takashi”が先行公開されたばかりのフライローですが、本日新たにアンダーソン・パークをフィーチャーした新曲“More”が解禁されました。やばい、めっちゃかっこいい……。きっとこれが2年前に報じられたコラボだったのでしょう。ますますアルバムへの期待が昂まりますね。リリースまであと2週間。日本先行発売です。

5/22リリースの最新作『FLAMAGRA』より
アンダーソン・パーク参加の新曲“MORE”が解禁!

デヴィッド・リンチをフィーチャーしたトレーラー映像と共に、待望の最新アルバム『フラマグラ』の完成を発表したフライング・ロータス。その後、リトル・ドラゴンのユキミ・ナガノをフィーチャーした“Spontaneous”、サンダーキャット、ブランドン・コールマン、オノシュンスケが共演した“Takashi”の2曲を公開し、ポップで軽快なサウンドに注目が集まる中、アンダーソン・パークが最高にソウルフルなヴォーカルを披露する新曲“More”を解禁!

Flying Lotus - More feat. Anderson .Paak
https://www.youtube.com/watch?v=Xl0XBQ08wbg

彼(アンダーソン・パーク)と知り合ったのはもっと前だけど、ちゃんと話すようになって6、7年かな。アイツ演奏もすごいんだよ! 危険なヤツさ…… ──Flying Lotus

全27曲(国内盤にはさらに1曲追加!)収録というスケールはもちろん、過去作品以上に豪華な参加アーティストも話題となっている本作。アンダーソン・パークの他にも、ジョージ・クリントン、リトル・ドラゴンのユキミ・ナガノ、ティエラ・ワック、デンゼル・カリー、シャバズ・パレセズのイシュマエル・バトラー、トロ・イ・モワ、ソランジュ、そして盟友サンダーキャットがヴォーカリストとして参加。さらに、デヴィッド・リンチの不気味なナレーションが今作の異様とも言える世界観を炙り出している。

またフライング・ロータス本人のSNSを通して、本作のアートワークで使用されたタイポグラフィは、ニッキー・ミナージュやポスト・マローンへの作品提供も行ってきた日本人グラフィックデザイナー、GUCCIMAZE(グッチメイズ)が手がけ、その他の参加ミュージシャンには、ハービー・ハンコックやロバート・グラスパーらも名を連ねていることが明かされている。

フライング・ロータスが投稿した制作風景


フライング・ロータスが、マグマのごとく燃えたぎるイマジネーションを詰め込んだ超大作『フラマグラ』は、5月22日(水)に日本先行リリース。国内盤にはボーナストラック“Quarantine”を含む計28曲が収録され、歌詞対訳と吉田雅史による解説に加え、若林恵と柳樂光隆による対談が封入される。初回生産盤CDは豪華パッケージ仕様。またTシャツ付セット(BEATINK.COM限定でXXLサイズ取扱あり)も限定数販売決定! 2枚組となる輸入盤LPには、通常のブラック・ヴァイナルに加え、限定のホワイト・ヴァイナル仕様盤、さらに特殊ポップアップ・スリーヴを採用したスペシャル・エディションも発売。

なお国内盤CDを購入すると、タワーレコードではオリジナル・クリアファイル、BEATINK.COM、HMV、diskunion、その他の対象店舗では、GUCCIMAZEによるロゴ・ステッカー、amazonではオリジナル肖像画マグネットを先着でプレゼント。また、タワーレコード新宿店でアナログ盤を予約するとオリジナルB1ポスターが先着でプレゼントされる。

label: WARP RECORDS / BEAT RECORDS
artist: FLYING LOTUS
title: FLAMAGRA
release: 2019.05.22 wed ON SALE
日本先行リリース!

国内盤CD:BRC-595 ¥2,400+tax
初回盤紙ジャケット仕様
ボーナストラック追加収録/歌詞対訳・解説書付
(解説:吉田雅史/対談:若林恵 × 柳樂光隆)

国内盤CD+Tシャツセット:BRC-595T ¥5.500+tax
XXLサイズはBEATINK.COM限定

TRACKLISTING
01. Heroes
02. Post Requisite
03. Heroes In A Half Shell
04. More feat. Anderson .Paak
05. Capillaries
06. Burning Down The House feat. George Clinton
07. Spontaneous feat. Little Dragon
08. Takashi
09. Pilgrim Side Eye
10. All Spies
11. Yellow Belly feat. Tierra Whack
12. Black Balloons Reprise feat. Denzel Curry
13. Fire Is Coming feat. David Lynch
14. Inside Your Home
15. Actually Virtual feat. Shabazz Palaces
16. Andromeda
17. Remind U
18. Say Something
19. Debbie Is Depressed
20. Find Your Own Way Home
21. The Climb feat. Thundercat
22. Pygmy
23. 9 Carrots feat. Toro y Moi
24. FF4
25. Land Of Honey feat. Solange
26. Thank U Malcolm
27. Hot Oct.
28. Quarantine (Bonus Track for Japan)

田我流 - ele-king

 stillichimiya の一員としても活躍する田我流のソロとしては実に7年ぶりとなる待望のサード・アルバム。前作『B級映画のように2』リリース以降も、バンド・プロジェクトである“田我流とカイザーソゼ”名義でのアルバム・リリースや、ヒップホップを中心とした数々のアーティストやプロデューサーの作品にゲスト出演を果たしたり、さらにライヴ活動も精力的に続けてきたことで、この7年間の彼に対する評価は常に上昇を続けている。その彼の魅力はリリックから滲み出てくる等身大の人間臭さや、その裏にあるユーモアの部分だけではない。常に真っ直ぐ芯を通しながらも、時にはやんちゃに振る舞ったかと思えば、しっかりと男としての色気すらも漂わせる。声の良さやラッパーとしての存在感の強さはもちろんのこと、ヒップホップとしての新しさもあれば、どこかオールドスクールなフレイヴァも匂わせ、山梨県を拠点に活動していることも、彼にとってはハンデどころか大きなプラスになっている。日本人ラッパーとして、これほどまでに全方位的な要素を備えている人物は他に見当たらず、本作『Ride On Time』は、そんな田我流の魅力が十二分に詰まった傑作だ。

 今回のアルバムでまず特筆すべきは、“Falcon a.k.a. Never Ending One Loop”名義で田我流自身が実質的にメイン・プロデューサーを務めているところだろう。これまで Falcon としてはビートCDや僅かなプロデュース作を発表してきただけであったが、本作ではその自らのサウンドによって見事にアルバム全体のカラーを作り上げている。さらに田我流にとっても代表曲である“ゆれる”を手がけた EVISBEATS を筆頭に、DJ UPPERCUT、Automatic (ゆるふわギャング)、VaVa、KM、ジュークのビートメイカーである Ace-up といった、実に幅広いメンツをプロデューサーとして揃え、この鉄壁な布陣によって作品として強度はさらに増している。これらの色彩豊かなサウンドに対して、田我流自身のラップも実にバラエティ豊かなスタイルを繰り広げており、“Vaporwave”のように敢えて今っぽいスタイルを取り入れたり、あるいは“Cola”のように歌を披露してみたり、自らの新しい引き出しを次々と広げている。もちろん、同時にタイトル曲“Ride On Time”や盟友、EVISBEATS との“Changes”のような彼自身の王道とも言えるスタイルも健在だ。

 フィーチャリングに関しては C.O.S.A. (“Wave”)とシンガーの NTsKi (“Anywhere”)とふたりのみであるが、いずれもゲストのカラーもしっかり反映された見事な出来で、さらにスキット“Small Talk From KB”での KILLER-BONG の存在感も絶妙なアクセントになっている。他にもイントロ明けの田我流節が全開な“Hustle”での鮮やかな疾走感であったり、ファースト・アルバム『作品集 JUST』からの続編である“Back In The Day 2”でのネタ使いも含めた良い意味でのイナタさや、素直に苦悩をリリックに綴った“Deep Soul”など、全ての曲が聞きどころと言えるほど、隙間なくアルバム全体に魅力が溢れている。頭から最後まで、じっくりと何度も何度も噛み締めてほしい作品だ。

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