「PAN」と一致するもの

interview with Carnation - ele-king


CARNATION
SWEET ROMANCE

Pヴァイン

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 わたしは先日(といっても、取材のときの先日だから、いまからだと1~2ヶ月前になるのが、読者、関係諸氏にもうしわけありません)、今年リリースされたカーネーションの『天国と地獄』の「20周年記念コレクターズ・エディション」を聴き直して、彼らは、先鋭的であること、ロックであることが、当然のごとくポップでもあるということをやってのけた、音楽において稀有な、音楽ファンにとってはありがたいバンドだとあらためて思った。一回だけならそう珍しいことではない。ポピュラー・ミュージックの歴史はそれほど短いわけではない。そういったミュージシャンはいくらでもいる。ところがカーネーションは一回こっきりではない。
 "夜の煙突"のころからの彼らの足穂的な情景を喚起する力をコンテンポラリー・ブラックミュージックのグルーヴに乗せた表題曲で幕を開ける『Edo River』(1994年)、5人体制の強みをみせた『Booby』(97年)、リフレインが耳にこびりついてなかなか離れなかった『Parakeet & Ghost』(99年)の"Rock City"とか"たのんだぜベイビー"とか、あるいは音楽の思索を立体化した2000年の『Love Sculpture』など、彼の実験と実践は10枚あまりの音盤に刻まれてきた。もちろん、順風満帆だったわけではなく、作品には音楽中毒者の悩ましさもある。どうしたら、時代ととっくみあいながら聴く楽しみをつづけていけるのか、聴く側にそれをもたらし、音楽に返せるのか、と。それを追求する過程で、カーネーションは5人組からトリオになり、2009年1月の矢部浩志の脱退をもって、直枝政広と大田譲のふたり組になった。
 『SWEET ROMANCE』はその体制でつくった、『Velvet Velvet』以来となる、3年ぶり15枚目のアルバムである。彼らはふたりになったが、このアルバムには、大谷能生、岸野雄一、山本精一をはじめ、ゲストは多彩であり、張替智広の助演をボトムにしたバンド・サウンドは引き締まっている。
 つまり彼らはいまもなお、走りつづけている。先週は甲府にいた。来週は北陸だ。高地の秋は深く、日本海側はすでにもう肌寒い。そろそろ音楽の密度が空気を暖める季節である。
 みなさん、カーネーションをお聴きください。

レコードをつくるのはずっとやめたくないし、そういうことがなくなってほしくないっていうのはあるから。今回も、架空のA面、B面みたいな、そういうつくりにはこだわっているしね。そういうのがやっぱり楽しいよね。音楽について考えるにしてもね。そういうフックを効かせていかないとやっている意味がないと思うよね。

大田さんは『天国と地獄』から加入されたんですよね?

大田譲:そうですね。

『天国と地獄』を聴くと、カーネーションは渋谷系の前に渋谷系の完成形を提示していたということがわかります。しかも、いま聴いても古びていない。あの頃といまと、心境の変化というと、いきなりボンヤリした質問になっちゃいますが、そういうものはありますか? とくに大田さんは、カーネーション在籍20周年記念でもあるわけですし。

大田:あれがいちばん憶えているかな、カーネーションに入って最初のアルバムだし。

直枝政広:練習しまくっていたよね。

大田:そう。

直枝:何か見えない敵とずっと戦っていたね。競いあっていたっていうか。

大田:レコーディング前に合宿したからね。

直枝:2回ぐらい合宿したかな。

大田:2回に分けてトータルで2週間くらいやったんだよね、たぶん。レコーディング自体も合宿だった。伊豆のほうに行ってやったんだよね。だから、(メンバーで)ずっといっしょにいたんだよな?

直枝:うん、煮詰まってたね。

大田:まあ若かったからね(笑)。

直枝:僕らは、作品性という部分でも、つねに評価っていうのかな、正しい評価ってされてこなかったので「ちくしょー! ちくしょー!」って、なんとかおもしろいものつくろうってがんばっていたんですよ。

当時は正しく評価されていないと思っていたんですか?

直枝:まったく評価がなかった。湯浅(学)さんがはじめて『ミュージック・マガジン』で書いてくれて、当時はそれがいちばん好意的だったのかもしれないな。「青臭い」って書かれたんだけど、でも最終的にはいいっていうか、わかるよっていってくれたんですよ。あとは理解されていなかったので。『天国と地獄』だって、評価されるまで20年かかって、ジワジワと、なんとなくおもしろいアルバムあるよって浸透していったっていう感じですね。

理解しない音楽メディアに目にもの見せてやる、という気持ちはありましたか?

直枝:そう思っていた! いままったくそんなこと考えてないというか、逆に、もっとこう、抜けているかな。戦ってないね、そこは。

戦ってない?

直枝:批評みたいなところとは戦っていないということだね。たとえば、点数何点とか。「そんなところじゃないんじゃないか? 」っていうところはあるかもしれない。

逆に、いま自分たちにとっていちばん大切なものっていうのはなんだと思いますか?

直枝:やっぱりやり続ける以上は、純度とか気持ちの問題なんじゃないかな。

透徹したというか、バンドというものを客観的に眺めた上で、何をなすべきか、わかってやっているというのが今回の作品には感じられますね。

直枝:ありますか?

そう思いました。自己愛的なものでもなくて、かといって、皮肉めいているわけでもなくて、適度な距離感で自分たちと外を見ている感じがあると思いました。レコード文化がたとえば終焉を迎えるかもしれない時期にあって、まだそういうことがアルバム作品としてできるっていうのがちょっとした希望のような感じに思いましたね。すばらしいと思いました。

直枝:レコードをつくるのはずっとやめたくないし、そういうことがなくなってほしくないっていうのはあるから。今回も、架空のA面、B面みたいな、そういうつくりにはこだわっているしね。そういうのがやっぱり楽しいよね。音楽について考えるにしてもね。そういうフックを効かせていかないとやっている意味がないと思うよね。

『UTOPIA』を去年だして、間髪置かず『SWEET ROMANCE』の制作に入ったんですか?

直枝:いや、しばらくは迷っていましたね。去年の震災以降、スケジュールが立てにくくなっちゃって、動きにくくなっちゃったところがあったので、アルバムの制作の予定は一回ストップしたんですよ。それで、『UTOPIA』っていうミニ・アルバムにして、一回ちょっと考えてみようっていう。それでようやく、今年の3月くらいに曲出しがあらためてはじまって、5月からレコーディングで。『UTOPIA』は先行ミニ・アルバムだったんですが、そのわりに間が空いたっていう感じですね。

そのストップしたのは心情的な事情ですか?

直枝:そうですね。去年は心情的なものはとても大きかったので。どうなんのっていう。

でもそれもどこか新作には反映されてますよね?

直枝:もちろん、(前作『Velvet Velvet』からの)ここ3年くらいの流れで、葛藤みたいな心理的な揺れみたいなものは絶対あると思う。でも、それがよくなったとかそういうことじゃなくて、全部同じで、何も変わってないっていうことは、俺はもう理解してるっていうか、そのなかで大きく見ていくっていう感じになっていると思うんですよね。

まさにそうですね。現状は簡単に変えられないにしても、そのなかで自分をもってやっていかざるをえないっていうことですよね?

直枝:ある覚悟とかいうところもあるのかもしれない。開き直りというか。

ハラがすわった感じですか?

直枝:うん、泣くとこは泣くよっていう。正直に。

酸いも甘いも辛いも苦いも噛みしめているところが『SWEET ROMANCE』には出ていますよね。

直枝:そういう意味では、つい昨日じゃなくて、もうちょっと離れたところからつづけて流れを見ていかないと、形にならない。もしかして、3年っていい空白だったかもしれないです。じゃないときつい作品になったかもしれない。20年前の曲を今回、入れてみたり、10年前にまだ形になってなかったコード進行がどっかにあったり、大きな流れでやっていかないと動かない、すごく難しいデリケートなパズル・ゲームをやっていた気がしますね。

いま流行をそれほど気にすることはなかった?

直枝:全然ないね。逆に、気持ちいいものっていうところでアナログ・レコーディングっていうものを捉えていったんですよ。「ああ、俺たち、アナログといい感じに出会っているね」というかね。すごく運命的な、奇跡に近い出会いだと思った。そこを大切にしていきましたね。だからいろんな人と出会って、混ざりあって、ひとつの作品にしてくっていうことがとっても楽しかったし、新鮮に響いたんですよ。誰もやっていないものっていうよりは、どこにもないものっていう。なにか決まりきってないものとか、わけのわからないグシャとした何かとか、そのいろんな感覚が混ざりあう、そのスリルみたいなものがよかったですね。

矢部さんが辞められたときに、バンドとして、ドラマーがいなくなるのはどうなんだろうというのを、いちファンとしてはとっさに思いましたが、心配をよそに、その空白さえうまく作用したっていう感じですね。

直枝:そうですね、作用していますね。

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ある覚悟とかいうところもあるのかもしれない。開き直りというか、泣くとこは泣くよっていう。正直に。


CARNATION
SWEET ROMANCE

Pヴァイン

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おふたりになって、何か変わったことはありますか? 音楽というより、バンド内の関係性の面で。

直枝:ますますなにかこう、言葉でないところで交流してるよね?

大田:まあ、(そのことについては)いままでもあんまり意識をしてきてないからね。なんだろう、細かいところまで話し合ってやんなきゃいけないバンドじゃないんですよ。いままでもそういうところもなかったし、まあ、直枝くんがどう考えているかは、俺はわからないけど。俺は(カーネーションは)話し合いながら民主的にものをつくっていくバンドだとは思ってないからいいんですよ。敷いてもらったレールの上を走っていればいい。それに乗っかっていっしょにやれるのがバンドで、イヤになったら降りるしかないんだから、それはそれでしょうがない。だから、あんまりいろんなこと考えないほうが気が楽だと思いますね。

そうはいっても、スタジオやライヴの現場でそれまでと違ってきたところはありますよね。

大田:うーん、どうなんだろうな......。でも音出しているときには、そんなに意識をしないかな。やっぱりさすがにね、あのドラムがなくなったわけだから、違いはありますよ。だけど、まあ結局はカーネーションの曲をやるんだから、そしたらまあ自分が弾けるベースを弾くしかないし、歌をちゃんと聴かせるしかない。だからバンドですよ、ふたりでも(笑)。まあ最低限の人数じゃないですか? ふたりって。

『SWEET ROMANCE』の制作はスムーズでしたか?

直枝:スムーズだったよね。すっごい順調。

つくっているときの楽しさみたいなものがすごく伝わるアルバムですよね。

直枝:アナログ・レコーディングの、あまり直しが効かない、なんか制約される感じがまたよかったっていうかね。

レコーディングのときはふつうに順録りだったんですか?

直枝:そうそう。データでドンカマとかパーカッションとか、ガイドのリズムになるトラックとかを入れてやっていました。それを聴いて「せーの」で演るんですよ。俺ら、だいたいレコーディング用のリハーサルをしないで、いきなりスタジオなんですよ。そこでセッティングして、音決めして、「じゃあ練習!」そしたら「録音しよう!」って。で、アッという間に仕上げる。

そんなに簡単にいくものなんですか?

大田:なんかそれでいけるようになってきたよね?

直枝:なんかいけるね。

アレンジもアイデアをどんどん試していくということですか?

直枝:基本的にデモ・テープのアイデアみたいなものを聴いといてもらって、それぞれが解釈してもらう形ですね。それでいい感じになればいいかなっていう。

そこにゲストの方々も、そのつど、録る曲ごとにきていただくということですね。

直枝:そうです。ピアニストの方とかにきていただいて。

岸野(雄一)さんもスタジオにいらっしゃったんですか?

直枝:岸野くんは現場にいっかい見にきましたね。それでいっしょにコーラス歌って、帰っていきました(笑)。あと、彼は自分の家で"Bye Bye(Reprise)"という曲をミックスしてくれたんですよ。

"Spike & Me"には大谷(能生)さんをラップとサックスでフィーチャーしていますね。DCPRGとか〈Black Smoker〉から出した『Jazz Abstractions』とか、大谷さんは最近よくラップしていますよね。

直枝:かっこつけるよね(笑)。大谷くんは露骨にかっこつけるんですけど、本当にそういうかっこつける人たちがいいなって思うんだ、俺(笑)。そういうことってなかなかできないからね。そういう人たちは時間をかけて積み上げてきてるから。どう見せるかって考えてきてるでしょ?

見せると同時に、どう見えるかということにも自覚的かもしれないですね。『SWEET ROMANCE』は基本的に全曲を直枝さんが作詞/作曲されていて、ラップをやった大谷さんは作詞でクレジットされていますが "Bye Bye"でミントリ(岡村みどり)さんに編曲を依頼されたのは何か理由があったんですか?

直枝:3年前に岸野くんの誕生日ライヴ(岸野雄一は毎年、1月11日の誕生日に渋谷O-Westでライヴを行っている)にカーネーションが誘われたことがあるのね。そのときに岡村さんと知り合って、宮崎貴士くんと岡村さんと3人で夜ステーキを食べる会みたいな感じで集まって遊んでいたんですよ。そのうち、ファイルとかやりとりしたりして、いつか何かできたらいいですねみたいな話をしていて、それで今回、これは絶対お願いしようと思ったんですよ。岡村さんなら、歌をすごく理解してくれるという自信があったから、内容のことに何もふれずに「お任せします」って渡したんですよ。

曲を、ですか?

直枝:いや歌詞です。歌詞を理解してくれたんです。

それはすばらしいですね。

直枝:俺はあとはなにもいいませんから、その感じでやってくださいって。もう伝わっているはずなんで、ディテールやイメージはあえて伝えませんでした。感じたままやってもらえればいいので、と。

アナログでいえばA面の最後にあたる"Bye Bye"からB面の頭の"Gimme Something, I Need Your Lovin'"への流れが、涙が出ちゃいそうなくらいいいですよね。あと本当、大田さんの歌がすごくよかった。

直枝:すっげー評判いいのよ、大田くん(笑)。

やっぱりそうですよね! 大田さんが歌う"未来図"から"遠くへ"の流れも最高でした。大田さんは"未来図"をご自分で歌うとなったときどう思いました?

大田:まあとにかく歌えと。つくるから歌え、と。「はい」って渡されました(笑)。

XTCのアルバムなんかでも、コリン・ムールディングが1曲歌ったりするじゃないですか。わたしはあれがすごい好きなんですよ。

直枝:最高ですよね。大田くんは、コリンの役割なんですよ。リンゴ・スターじゃないからね。

ハハハハ。

大田:あと、スティーリー・ダンのデイヴィット・パーマ。ファーストで、1曲歌ったりしているじゃない? あのへなちょこさ。なにこの歌みたいなさ。ああいう歌が大好きで(笑)。わざわざ呼んできたヴォーカリストなのにへなちょこじゃん。じつはそういうところ目指したいと思っていたんだよね。

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バンドで、すぐ反応してくれる人たち、俺の考えたフレーズをいっかい噛み砕いてすぐ吸収してもらえて、すぐ表現できる人たちがいるから進むんだと思うんですよ。エンジニアさんも含めて、みんなが反応し合って、みんなで高め合っているから、気持ちいいんだよね。


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さっきの見せ方の話にもつながるんですが、弱い部分を滲ませながら、それでもかっこつけてみせるのが、非常に効いていて、これをライヴの後半に聴いたらさぞや感動するだろうって、そんなことまで想像しました。そこから"遠くへ"につながるのが白眉だと思いました。

直枝:ありがとうございます。

これが比較的、全体的に抜けてるというか、自然に出てきた曲たちがあるべきところに並んでいるアルバムっていう。

直枝:そうですね。3年のあいだ、もしくは10年、20年、それくらいの考えみたいなものがずっとつながってきて、ここに結実しているんですけど。

つながっているっていう感じはありますか?

直枝:ずっとつながっているんです。このアルバムはそのくらいの長い時間で成り立っていて、かつ、俺はこうじゃなきゃいけない、ああじゃなきゃいけないっていう思いが、いま、あまりないんですよ。そのままやりゃいい、なんも考えるなっていうところにいるので、曲順なんかも考えてないかもしれない。だからそれは流れっていうか、奇跡なんですよ、ある意味ね。

それはでも、やろうと思ってできることではないと思いますが。

直枝:うーん、たまたまそうなったっていうかね。だから、とてもいい状況だったんじゃないですかね。緊張感もあって、本当に作業進めなきゃいけなくて。あと、いろんなスケジュール調整も自分でやったりして、きつかったんですけど、でもそのかわりスタジオにいる時間が幸せなときだったっていうのかな、こんなに楽しいスタジオはないなっていうくらいだった。このくらい自分が楽しいと思えなきゃウソだっていうのも最近ようやくわかってきた。雑務はやるけど、スタジオではこのくらい楽しんでいいんだなって。過去は追いつめてたっていうかね。責任をへんに背負おうとしたところがあったから。

大田:カーネーションのスタジオはむかしはピリピリしていたから。そういう時間がものすごく長かったじゃん?

直枝:長かったね。

大田:ここ何年の変わりようはすごいですよ、やっぱり(笑)。ライヴとかだと、メンバーがどんどん減ってきて、本当は自分の責任が多くなっていくじゃない? でもスタジオなんか見ていると、意外に逆をいってるというか、責任をそんなに背負っているように見えてこないというか、見ていると前より全然楽にできているのよ。

じゃあ昔はもっとカチッとつくっていたんですね。

直枝:そうそう! むかしは1ミリでも狂っちゃダメみたいな。俺のイメージはこうなんだからダメだよ! って怒って灰皿蹴飛ばしたり、そういう世界ですよ。最悪ですよ(笑)。

それは緊張感ありますね(笑)。 

大田:そんなにいうんだったら、わかった! やり直すよとかいって、ずっとベース弾いていたからね。朝まで直しとかやっていたよ、レコーディングってこういうもんなんだなって思いながらも、しょうがねーなって(笑)。

直枝:ほんとうに『Velvet Velvet』のあたりから、僕らは解放されてきていますね。いろんな人との交流みたいなものがとても自然になってきて、作業が楽しめるようになった。みんなも信頼してきてくれるし、それを理解してくれてやってもらえているのがいちばんいいのかなって。

大田:そうだね。結局言葉でいっぱい説明しないで済む人が自然にきてやってくれてるから。

それはこれだけ活動してきて、これだけのクオリティの作品を出し続けているからだとも思いますよ。たとえば、わたしたちの世代はカーネーションを十代のときに聴いているわけだから、その世代の血肉になっているんだと思います。それは教育とかそういうことじゃないですけど、音楽、あるいは文化はそういうことでまわっていくとも思いますし。

直枝:そういう循環のなかにいるんだろうな。

いると思いますね。

直枝:それはね、少しずつ結びついてきているんだよ。閉じ込められた状況から、どこかカギ外したっていう瞬間があったのかもね。僕らが楽になって、まわりももっと入りやすくなっている。これからもっとそうなってくるかもしれないし。

バンドがあって、アンサンブルをよくして、曲をよくして、自分たちでがっちりやっていかなきゃいけないっていう状況から変わったんでしょうね。

直枝:なんかね、もっと大切にするポイントが増えたっていうか、もっと重要なこともある、もうひとつ、なにかやり方があるよというか、柔らかくなっているのかもしれないですね。

柔らかさというのは、なんか柔和になったっていうのとはまたちょっと違うんですよね。

直枝:違いますね。考え方というか。それはね、ドラムの張替(智広)くんもそうなんですけど、大田くんとか、曲の理解能力がすごく早いので、立ち止まらなくていい、ストレスのなさがいい効果を与えていて、プレッシャーはあるんだけど、スピードだけは落とさねーぞっていう意地がそれぞれにあるから、気持ちいいんですよね。

打てば響く?

直枝:そうそう! で、俺はひとりで音楽ができるとは思ってないから。イメージはつくれるけど、それやろうとしたらね、ソロ・アルバムで5ヶ月かかりました(笑)。それでも人の助けが必要だったですから。だからこういうバンドで、すぐ反応してくれる人たち、俺の考えたフレーズをいっかい噛み砕いてすぐ吸収してもらえて、すぐ表現できる人たちがいるから進むんだと思うんですよ。エンジニアさんも含めて、みんなが反応し合って、みんなで高め合っているから、気持ちいいんだよね。これ、ほかだったらムリじゃないかなって思いますね(笑)。ムダに遊ばないからね。

まあでも音楽のなかに遊びはいっぱいありますよね。

直枝:そうそう(笑)。

まあ、でもそういうようなバランスというか、まさにチーム・カーネーションみたいなものができあがっているところのなかもしれないですね。

直枝:今回はチームというよりも、バンドは怪物みたいなもの、それでいいんじゃないかなって思いましたね。

カーネーションは直枝さんのバンドというより、直枝さんの手を離れていっている?

直枝:だんだんそうなってるかもしれない。どんどん勝手に進んでいる感じがするので。

自分もこう、カーネーションに助けられているという感じがありませんか?

直枝:うん。参加してくれている人たちみんなに助けられているし、外側の、ジャケットまわりの仕事とか、いろんなことに対してもそうで、やっぱりこっちがいい具合にテンションを高めたり緩やかになったりしながら、なんとなくできてくるんですね。そういうのを楽しんでますね。

そういう時期というか、誰かとめぐり会って、別れもあるでしょうけど、それは完全な別れではなくて、またどこかで出会うかもしれない予兆を孕んでいる。そのニュアンスが『SWEET ROMANCE』にはすごく出てると思いました。

直枝:あとこういうアルバムを聴いた誰かが、「こんなアルバム作りてーな!」って思うような流れとか、あったらいいなと思いましたね。そういうマジックがあればいいなって。

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チームというよりも、バンドは怪物みたいなもの、それでいいんじゃないかな。


CARNATION
SWEET ROMANCE

Pヴァイン

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楽曲に目を移すと、毎回そうなんですが、今回もやはりヴァリエーションに富んでいる。

直枝:幅みたいなものが出てきちゃいますね。あんだけ、音楽を聴いてるとね(笑)。

ところが、『天国と地獄』の頃のように、それを引用、素材として使うというよりも、もっと滲みだしてくるような感じで、そのリスナー体験がでてきているような気がしました。

直枝:うん、ちょっと笑えるようなところはありますけどね。体験なんでしょうがないんですよね。それを自分は通ってきているっていう意識はつねに忘れないようにしていますし、音楽に対してはいつも感謝していますよ。

ハハハハ。

直枝:リスペクトは、それはもうありますから、キーワードとしてかき出せばいくらでもありますよ。

その厚みですよね(笑)。

直枝:とてつもないね(笑)。わかりやすいところでこうやって人と音楽のキーワードについて話はしますけど、「それだけじゃないんだよなー」っていうのもいつもあって、そこが難しいところですね。そこから外れたいって思いも一方ではありますから。だけど、他者の音楽を好きになっていくこと、聴きつづけること、そういう作業は忘れたくないね。「俺は俺」それだけになりたくはない。自分に溺れないためにも。

文章にも書かれていましたもんね、「ひとりよがりになってるか、なっていないか」っていうのは。

直枝:あれはいろんな意味でとれますけど、ほんとうにそういうところもありますよね。

カーネーションの言葉が喚起する情景がわたしは大好きなんですが、『SWEET ROMANCE』の歌詞について、これまでと変化はありますか?

直枝:歌詞については深く考えないようにはしていました。この3年間のなかで曲が生まれて、そのうねりに身を任せればいいかなっていうところはありましたね。感情的になりすぎてはいないか、状況判断をしっかりしないといけない、デリケートな時期だから、とはもちろん思っていました。

デリケートだっていうのは震災のことをおっしゃっていますか?

直枝:感情が渦巻く時期だから、へたをすると、そういうことが歌に出てきちゃうんですよ。そこに溺れちゃうっていうことの怖さっていうのはなんとなく感じるので、言葉が武器にならないように、気をつけたところはありました。

直枝さんは歌詞を書くのははやいですか?

直枝:どうだろうな。決まるときはだいたいはスッといくんですけど、決まんないときは長いですね。今回は苦しみはあまりなかったですね。曲と詞がいっしょに出てきた曲がわりと多かったからかもしれない。

なるほど、わかりました! ツアーは10月からですが、ツアーの準備はもうそろそろやってますよね? ツアーにかける意気込みをうかがえればと思います。

直枝:いっぱい練習しますよ!

大田:今回は再現するのがなかなか大変だろうな。

直枝:だから再構築になると思うけどね。でも、そこはまた、決まったことはやらないんでね。どこか、毎回違うっていうかね。(了)

ツアー情報(2012年11月以降)

2012年11月9日(金)
富山・総曲輪かふぇ橙 (ACOUSTIC LIVE)
SPECIAL GUEST:小貫早智子
OPEN 18:30 START 19:30
前売:3,500円 当日:4,000円 (1ドリンク別)
(問)オレンジ・ヴォイス・ファクトリー 076-411-6121

2012年11月10日(土)
金沢AZ
SPECIAL GUEST:小貫早智子
OPEN 18:00 START 19:00
前売:4,000円 当日:4,500円 (1ドリンク別)
(問)AZ 076-264-2008

2012年11月11日(日)
名古屋TOKUZO
SPECIAL GUEST:大谷能生、小貫早智子
OPEN 17:00 START 18:00
前売:4,500円 当日:5,000円 (1ドリンク別)
(問)JAILHOUSE 052-936-6041

2012年11月17日(土)
札幌COLONY
OPEN 18:00 START 19:00
前売:4,000円 当日:4,500円 (1ドリンク別)
(問)WESS 011-614-9999

2012年11月18日(日)
旭川CASINO DRIVE
OPEN 18:00 START 19:00
前売:3,500円 当日:4,000円 (1ドリンク別)
(問)旭川CASINO DRIVE 0166-26-6022

2012年11月24日(土)
仙台enn 3rd
SPECIAL GUEST:ブラウンノーズ
OPEN 18:00 START 19:00
前売:4,000円 当日:4,500円 (1ドリンク別)
(問)GIP 022-222-9999

2012年11月25日(日)
石巻La Strada
SPECIAL GUEST:ブラウンノーズ
OPEN 18:00 START 19:00
前売:3,500円 当日:4,000円 (1ドリンク別)
(問)La Strada  0225-94-9002

2012年12月8日(土)
渋谷WWW
SPECIAL GUEST:梅津和時、大谷能生、小貫早智子
OPEN 18:00 START 19:00
前売:4,500円 当日:5,000円 (1ドリンク別)
(問)WWW 03-5458-7685

セオ・パリッシュJAPANツアー決定 - ele-king

 古いやつだとお思いでしょうが、わたしは1NIGHT-1DJというスタイルが大好きである。気の合ったDJ同士が織りなすひと晩のプレイも悪くはないが、ひとりのDJとしてそのひと晩をどのように演出してくれるのか、前者のほうがその力量がハッキリと出る。もちろんそれには確かな技量、知識、経験、情熱、そして興行としての成否もあり、名の知れた箱でそれを許されるのはある意味「選ばれし者」だけが得ることのできる名誉と言っても過言ではないと思っている。

 わたしが2度めの東京生活をはじめた以降も心に残る名場面がいくつかあり、LOOPでのNORIさんの30時間セットを筆頭に、同じくLOOPでのDJ CHIDA君、マイクロオフィスでのMOODMAN、最近ではリキッドルームでのDJ NOBU君の7時間セットも記憶に新しい。

 とくに近年はお客さんも短時間で簡単に判断してしまう傾向が強く、ひと晩その人の叙事詩をじっくり愛でるといった遊び方が少し敬遠される向きがあり、こういった思い切った興行が少なくなったのもさびしいところだ。何百何千の人をフォローして140文字のタイムラインを眺めるのも結構だが、タマには大家の長編小説をじっくり腰を据えて読んでみてほしい! といったところでしょうか。

 さてさてそんなことを思っていた折も折、恵比寿に移って以降めでたく8周年を迎えたリキッドルームがまたまたやってくれます。前述のDJ NOBU君のOPEN - LASTを終えて以降、メインフロアのスピーカーを一新して初の「OPEN - LAST」に指名されたのは、やはりセオ・パリッシュでした。ご存知の方も多いとは思うが、セオはあのフロアにとてもよく似合う。「デトロイトのやんちゃ坊主」といった感じもすでに過去の話で、リキッドルームで見る彼の姿はすでに風格さえ漂う。

 余談だが12インチばかりでなくLPも多用する彼のスタイルがリキッドルームの新しいスピーカーでどのように響くのか? という個人的な楽しみもある。えっちゃんの粘土を使ったフライヤーも最高だ!!!

 ぜひぜひ皆さんお誘いあわせの上、セオ・パリッシュ一晩の叙事詩をじっくり楽しんで朝方ゾンビ顔で再会しましょう!!

五十嵐慎太郎


Theo Parrish Japan Tour 2012

■11.16(FRI) Fukuoka @Kieth Flack
DJ: Theo Parrish, DJ Saita(Back To Basic)
Groove Drops Lounge
DJ: Osaki, Shibata, Ikeda, MANTIS(3rd Stone)

open 19:00 - close 1:00
Advanced 3000yen
Door 3500yen

INFO: KIETH FLACK https://www.kiethflack.net
TEL 092-762-7733
福岡県福岡市中央区舞鶴1-8-28 マジックスクウェアビル 1F/2F

■11.17(SAT) Tokyo Ebisu @LIQUIDROOM
- BLACK EMPIRE feat.THEO PARRISH -

DJ: Theo Parrish(open-last set)

open/start: 23:00
Door 3500yen
With Flyer 3000yen

INFO: LIQUIDROOM http:/www.liquidroom.net
TEL 03-5464-0800
東京都渋谷区東3-16-6

20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため、顔写真付きの公的身分証明書をご持参ください。You must be 20 and over with photo ID.

■11.22(THU) Nagoya @Club Mago
- AUDI.-

Guest DJ: Theo Parrish
DJ: Sonic Weapon, Jaguar P
Lighting: Kool Kat

Advanced 3000yen
With Flyer 3500yen
Door 4000yen

INFO: Club Mago https://club-mago.co.jp
TEL 052-243-1818
名古屋市中区新栄2-1-9 雲竜フレックスビル西館B2F

■11.23(FRI/祝日) Akita @JAMHOUSE
- TIME&SPACE -

Guest DJ: Theo Parrish
DJ: SOU(codomoproduction), DOVE CREW

open/start 21:00
Door 3000yen
INFO: JAMHOUSE http:/www.jamhouse-akita.com
TEL 090-7796-9608
秋田県秋田市中通4-5-9

■11.24(SAT) Kobe @troopcafe
- Deep Sessions -

Special Guest: Theo Parrish
Act: Telly, Mituo Shiomi

open/start 23:00
With Flyer MB 3000yen with 1Drink
Door MB 3500yen with 1Drink

INFO: troopcafe https://troopcafe.tumblr.com
TEL 078-321-3130
兵庫県神戸市中央区北長狭通2-11-5

TOTAL TOUR INFO: AHB Production www.ahbproduction.com
TEL 06-6212-2587



Theo Parrish (Sound Signature)

デトロイトに拠点をおくプロデューサー、DJ。ワシントンDCに生まれ、年少期をシカゴで育つ。またその後カンザスシティー、Kansas City Art InstituteではSound Sculpture(音の彫刻)を専攻。1994年、デトロイトに移住。1997年、レ-ベルSound Signatureを立ち上げ、常に新しい発想と自由な表現で次々に作品を世に送り出す。現在Plastic People(London)にて毎月第一土曜日のレギュラーパーティーをもつ。

"Love of the music should be the driving force of any producer,performer or DJ. Everything else stems from that core, that love. With that love, sampling can become a method of tasteful assembly, collage, as opposed to a creative crutch, plagiarism. Using this same understanding openly & respectfully, can turn DJing into spiritual participation. It can turn a few hours of selection into essential history, necessary listening through movement."(Theo Parrish)

「音楽への愛」こそがプロデューサー、パフォーマー、DJたちの原動力であるべきだ。この想いがあれば、サンプリングという方法は、盗作でもなく、音作りへの近道でもなく、個性ある音のコラージュになる。それと同じ理解と想いを持つことにより、DJもまたスピリチュアルな行為となり得る。数時間分の選曲が、本質を伴った歴史の物語となり、動きを伴った音楽体験となる。
(セオ パリッシュ  訳: Yuko Asanuma)

WIRE - ele-king

 ワイアーは、UKにおけるポスト・パンクの最高のバンドである。
 コリン・ニューマンとブルース・ギルバートを中心と彼らが残した最初の3枚のアルバムは、パンク・ロックがいかにロックのクリシェを捨てて音楽的に発展したのかを示す、優れたドキュメントとなっている。PiLはダブとクラウトロックを参照したが、彼らは独自の方法論で、彼らのぱっと聴いたところシンプルだが、よく深く聴いてみると機械の内部のように細かいスタイルを発明した。コリン・ニューマンとブルース・ギルバートは、それぞれソロ活動としても身を見張る成果を残している。
 惜しくもブルース・ギルバートは脱退したが、2011年の最新アルバム『Red Barked Tree』では、その健在ぶりを証明している。そして、同年7月に開催された代官山UNITの7周年イヴェントにもメイン・ゲストとして出演、新旧織り交ぜたセットを披露し喝采を博した。
 なお、対バンには、今年の5月に約四半世紀振りの復活を遂げ大きな話題となったEP-4の佐藤薫とBANANA-UGによるエレクトロニクス・ノイズ・ユニット、EP-4 unit3 の出演も決定!
 おまえ誰だ! ワイヤー!

■2012/11/12(MON)
代官山UNIT
OPEN 18:30 START 19:30
ADVANCE ¥3,500(DRINK 別)

DAIKANYAMA UNIT EVENT INFORMATION
MORE INFORMATION : UNIT/TEL 03-5459-8630 www.unit-tokyo.com
ADVANCE TICKETS 一般発売 : 10/20 (SAT) 10:00~
LAWSON TICKET(L:77341), e+, 代官山UNIT 店頭にて発売

WIRE
guest : EP-4 unit3


■大阪公演 11/14(木)
東心斎橋LIVE SPACE CONPASS

” EXTRA III ” supported by neutralnation - WIRE (UK) JAPAN TOUR -

OPEN 19:00/START 19:30 前売¥3,500(ドリンク代別途)
info. 06-6243-1666 (CONPASS


■"NEUTRALNATION 2012" 11/11(日)
新木場STUDIO COAST

出演アーティスト:WIRE (UK)、DE DE MOUSE + Drumrolls、toe、mouse on the keys、LITE、にせんねんもんだい、ペトロールズ、eli walks、UHNELLYS、jemapur、Quarta330 and more

OPEN 12:00 START 13:00 前売¥5,000 円
more info : https://neutralnation.net/

FREE PUSSY RIOT TOKYO - ele-king

 政治的なメッセージ性の強いゲリラ・ライヴを、モスクワ地下鉄や赤の広場などで展開してきたロシアのライオット・ガール集団、プッシー・ライオット。今年2月、モスクワの大聖堂に乱入してパフォーマンスを行った際に、メンバー数人が取り押さえられ、のちに逮捕、「宗教に対する憎悪または敵意によるフーリガン行為」などの罪で起訴された事件が報じられると、瞬く間に世界的な関心と注目を浴びるようになった。これ受けるかたちで、欧米などでは自由な表現活動を擁護しようと彼女らを支持する動きが広がる。人権団体やドイツ連邦議会の議員有志をはじめマドンナやポール・マッカートニーなど、多数の有名アーティストたちも支持を表明。この事件への注目は加速度的に上がっていった。
 そんななか、イヴェントの収益を、収監されている彼女たちの裁判・弁護費用にあてようという取り組みも行われている。SHATTERJAPAN、POPULAR COMPANY、WHITE ON WHITEが主催し、イギリスで行われたFREE PUSSY RIOT LONDONでは、イギリスポンド525.35の寄付が集まった。11月、その一環として東京開催となる「FREE PUSSY RIOT TOKYO」が予定されているようだ。

SHATTERJAPAN presents
FREE PUSSY RIOT TOKYO

開催日:2012年11月4日(日)
時間:18時オープン、18時30分スタート
会場:LAS CHICAS 地下1階「東京salon」
入場料:2000円(学生割引:1000円)+ドリンクチケット500円

ゲスト:SPEAKERS:Chim↑Pom(アーティスト)、東宝製作「RENT」2012年版キャスト、岡田裕子(アーティスト)、毛利嘉孝(社会学者)、アンドレイ・ボルト(ロシア人エディター)、小林香(演劇プロデューサー)、and more...

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 事件当時がロシア大統領選前であったことや、YouTubeにアップされた動画には実際の現場に流れていないコーラス・パート「プーチンを追放して」が挿入されていることもあり、「反プーチン政権の曲のために起訴された」というニュアンスで報じられることが多いが、どちらかというと教会やキリスト教そのものへの批判の意味合いが強く、起訴の理由や彼女たちの意図がやや曲げられて捉えられているのではないか、あるいは、ロシアの文化や宗教観のなかで、教会におけるこれらの行為がどのような意味を持つものなのか、他国の人びとが十全に理解した上で支持/批判をしているのかという点を疑問視する意見もある。表現の自由という論点もふくめ、問題の中心をぐるぐると攪拌させながら拡大させる、この目の離せないgrrrlたちを応援する方はぜひ!

DBS 16th. Anniversary - ele-king

 UKアンダーグラウンド・サウンズのリアル・ヴァイブスを伝えるべく1996年11月にスタートしたドラムンベース・セッション、通称DBSが16周年を迎える。
 この16年間、ジャングル/ドラム&ベース、ダブ、ブロークン・ビーツ、クラック・ハウス、グライム、ダブステップ等、さまざななベース・ミュージックを紹介し数々の伝説を生んできた。
 今回、ダブステップの最高峰、DMZからDIGITAL MYSTIKZのCOKIが初来日! 
 Deep Medi Muzikからフューチャー・ソウルの才人、SILKIEが待望の再来日! UKベース・ミュージックのブラックネスを体感してほしい!


2012.11.03 (SAT) at UNIT

feat.
COKI / DIGITAL MYSTIKZ
(DMZ, Don't Get It Twisted, UK)
SILKIE
(Deep Medi Musik, Anti Social Entertainment, UK)

with: KURANAKA 1945 , G.RINA

vj/laser: SO IN THE HOUSE

B3/SALOON: ITAK SHAGGY TOJO, DX, KEN, DOPPELGENGER, DUBTRO
FOOD:ポンイペアン"ROOTS"

open/start 23:30
adv. ¥3500 door ¥4000

info. 03.5459.8630 UNIT
https://www.dbs-tokyo.com

★COKI / DIGITAL MYSTIKZ (DMZ, Don't Get It Twisted, UK)
ダブステップのパイオニア、DIGITAL MYSTIKZはサウス・ロンドン出身のMALAとCOKIの2人組。ジャングル/ドラム&ベース、ダブ/ルーツ・レゲエ、UKガラージ等の影響下に育った彼らは、独自の重低音ビーツを生み出すべく制作を始め、アンダーグラウンドから胎動したダブステップ・シーンの中核となる。03年にBig Apple Recordsから"Pathways EP"をリリース、04年には盟友のLOEFAHを交え自分達のレーベル、DMZを旗揚げ、本格的なリリースを展開していく。そして名門Rephlexのコンピレーション『GRIME 2』にフィーチャーされ、脚光を浴びる。05年からDMZのクラブナイトをブリクストンで開催、着実に支持者を増やし、FWD>>と並ぶ二大パーティーとなる。COKI自身は05年以降、DMZ、Tempa、Big Apple等からソロ作を発表、ダブステップ界の重鎮となり、08年にBENGAと共作した"Night"(Tempa)は爆発的ヒットとなり、ダブステップの一般的普及に大きく貢献する。10年末にはDIGITAL MYSTIKZ 名義でアルバム『URBAN ETHICS』を発表(P-VINEより日本盤発売)、血肉となるレゲエへの愛情と野性味溢れる独自のサウンドを披露する。その後もDMZから"Don't Get It Twistes"、Tempaから"Boomba"等、コンスタントに良質なリリースを重ねつつ、11年から謎のホワイト・レーベルのAWDで著名アーティストのリワークを発表、そして12年、遂に自己のレーベル、Don't Get It Twistedを立ち上げ、"Bob's Pillow/Spooky"を発表、今、ノリに乗っている。悲願の初来日!
https://www.dmzuk.com/
https://www.facebook.com/mista.coki
https://twitter.com/coki_dmz

★SILKIE (Deep Medi Musik, Anti Social Entertainment, UK)
ダブステップのソウルサイドを代表するプロデューサーとして"ダブステップ界のLTJブケム"とも称されるSILKIEはウエストロンドン出身の26才。2001年、15才でシーケンスソフトを使って音作りを始め、多様なビーツを探求、またDJとしてReact FMでR&B(スロウジャム)をプレイする。03年にDAZ-I-KUE (BUGZ IN THE ATTIC)の協力でシングル"Order" (P Records)を初リリース。その後QUESTらとAnti Social Entertainmentを立ち上げ、"Sign Of Da Future"(05年)、"Dub Breaks"(06年)を発表。やがてDMZのMALAと出会い、08年に彼のレーベル、Deep Medi Musikから"Hooby/I Sed"、"Skys The Limit/Poltigiest"を発表、またSoul JazzやSKREAM主宰のDisfigured Dubzからもリリースがあり、SILKIEの才能は一気に開花する。そして09年、Deep Mediから1st.アルバム『CITY LIMITS VOL.1』が発表されるとソウル、ジャズ、デトロイトテクノ等の要素も内包した壮大な音空間で絶賛を浴び、ダブステップの金字塔となる。その後も彼のコンセプト"City Limit"(都市の境界)は"Vol. 1.2"、"Vol. 1.4"、"Vol.1.6-1.8"とシングルで継続され、11年6月には2nd.アルバム『CITY LIMITS VOL.2』を発表(P-VINEより日本盤発売)。DJとしても個性を発揮し、11年の"FACT Mix 255"に続き、12年7月に盟友Questと共に名門TempaのMixシリーズ『DUBSTEP ALLSTARS VOL.9』を手掛けている。震災直後に単独でDBSにやって来てくれた11年4月以来、1年半ぶりの再来日!
https://deepmedi.com/
https://www.facebook.com/silkie86
https://twitter.com/silkierose

Ticket outlets: NOW ON SALE !
PIA (0570-02-9999/P-code: 179-674)、 LAWSON (L-code: 70250)
e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
clubberia/ https://www.clubberia.com/store/
渋谷/disk union CLUB MUSIC SHOP (3476-2627)、
TECHNIQUE (5458-4143)、GANBAN (3477-5701)
代官山/UNIT (5459-8630)、Bonjour Records (5458-6020)
原宿/GLOCAL RECORDS (090-3807-2073)
下北沢/DISC SHOP ZERO (5432-6129)、JET SET TOKYO (5452-2262)、
disk union CLUB MUSIC SHOP(5738-2971)
新宿/disk union CLUB MUSIC SHOP (5919-2422)、
Dub Store Record Mart(3364-5251)
吉祥寺/Jar-Beat Record (0422-42-4877)、disk union (0422-20-8062)
町田/disk union (042-720-7240)
千葉/disk union (043-224-6372)

UNIT
Za HOUSE BLD. 1-34-17 EBISU-NISHI, SHIBUYA-KU, TOKYO
tel.03-5459-8630
www.unit-tokyo.com

HB, Traxman etc. - ele-king

 10月に入ってからいちにち中、寝て、食事して、雑務をこなしているとき以外は電子音楽を聴いている。聴いては書いて、聴いては書いて、聴いては書いている。三田格と『テクノ・ディフィニティヴ』というカタログ本を作っているのだ(自分の人生で来る日も来る日もテクノばかり聴いているのは、これで3度目である。レコードやCDを探すのが本当に大変で、あると思っていたものが見つからないと本当に悲しい)。
 聴いているのは、基本的には好きな音楽なので楽しい。とはいえ、禁欲的な生活をかれこれ10日以上も送っていると週末ぐらいは派手に遊びたくなる。そういう事情がなくても、トラックスマンには絶対に行こうと決めていたのだが、ちょうど同日の7時から渋谷でHBのライヴがあると教えられたのでそっちも行くことにした。HBのライヴを見て、続いてヴィジョンでクラークやサファイア・スローズなんかのライヴを聴いて、そして最後をジュークで締めようという企みだ。そうだ、二日酔いになるくらい酒を飲んでやる。


 7th Floorに到着するとムーグ山本がDJをしていた。ムーグさんはバーニング・スター・コア(ドローン)なんぞを、それから僕の記憶がたしかなら、『男と女』のテーマ曲かなにかをミックスしていた。しばらくしてHBが登場。じつは初めて見たのだが、これがまた、なんでいままで見なかったのだろうと後悔するほど良いライヴだった。
 HBとは女性3人組。アルバムも2枚出している。メンバーのひとりはラヴ・ミー・テンダーのドラマーのMAKIで、この日は彼女の産休前の最後のライヴだった。

 彼女たちの音楽は、メビウスとコニー・プランクとマニ・ノイメイヤーの3人によるクラウトロックの古典『ゼロ・セット』からメビウスのパート=電子音を抜いて、電気ベースを加え、パーカッションとディジュリドゥなどの生楽器を絡ませた......とでも言えばいいのか、シンプルな構成だが、多彩でオーガニックなグルーヴが次から次へと出てくる。演奏力の高さだけではなく、ユーモアもあるし、見た目も格好良い。

 30分ほど演奏すると、この晩のゲストとして柚木隆一郎が登場。久しぶりに見た彼は、リズムボックスをバックにソウルを歌ったティミー・トーマスのように、i-Padとコンパクトなミキサーを使ってソウルを歌った......が、この晩の彼はあまりにもはしゃぎすぎだった。しかし、その日7th Floorを埋めたオーディエンスにはそれが大受けだった。ところどころでは演奏の巧さも見せたり、余裕のパフォーマンスだった。

 DJを挟んでふたたびHBが登場。1曲目は4/4キックドラムを活かした踊りやすい曲で、あとは最後までエネルギッシュに突っ走った。小さな会場での割れんばかりの大きな拍手は、彼女たちのまったく素晴らしい演奏にふさわしいものだった。

 それから僕は、カメラマンの小原とヴィジョンに向かった。
 1時にはクラークのライヴがあるんじゃないかと勝手に思っていた。ブンやサファイア・スローズなんかのライヴも聴けるだろうとか図々しく。実際は1時間づつずれていた。12時前にクラブに入ってしまったので、小原といっしょにビールを飲みながら身体を休めつつ、どうしたものかと思案する。結局、1時前に我々をゲストで入れてくれたビートインクの方々に「どうしてもジュークを聴きたくなってしまいました」と謝って、代官山のUnitへ急ぐことにした。

 到着したときは、いわば「フットワーク講座」として日本人の方が丁寧に踊りのレクチャーをしているところだった。
 フロアは良い感じで埋まっていた。シカゴからやって来たダンサーが手本で踊ってみせると、フロアの温度は上がる。
 HBのメンバーのひとりは、前半の1曲、ディジュリドゥを吹いた曲を終えたあとに「これでやっとお酒が飲めます」とMCで言っていたものだが、フットワークもまた酒を飲んでいたらとてもじゃないが、踊れるものではない。汗が30メートル遠方まで飛んできそな勢いでダンサーは踊っている。
 日本人のダンサーも踊りはじめる。シカゴのダンサーがフロアに飛び降りて、踊って、しばらくすると何人かも踊りはじめる。とても良い感じ。このなかに自分も入れたら、さぞかし楽しいだろう!

 僕が思ったのは、これは現代版『ワイルド・スタイル』だなということだった。エネルギッシュで、ハードで、若々しい。昔『ワイルド・スタイル』で見たような光景が21世紀にアップデートされている。スポーツの要素も入っている(笑)。トラックスマンはステージで記念撮影したり、上機嫌だった。しばらく、日本人DJのフルトノのプレイを聴いていた......が、このあたりから記憶が断片的になっているのである......。スタートが早すぎた。翌日は当然のように二日酔いだった(おぇ)......ので、詳しいレポートは斎藤君にまかせるとしよう

野田 努

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UNIT PRESENTS
TRAXMAN with Red Legends footworkers : A.G. & DJ MANNY
@代官山UNIT & SALOON 斎藤辰也

 とあるレーベルのスタッフいわく、最近は若者がクラブに来ない、という。そう、きみみたいな人を、音楽を目的にひとりでクラブに来ている若いやつを見かけなくなったんだ、という。それはブラワン(Blawan)のDJを観に代官山UNITに行ったときの会話だったのだが、正直に言えば、23才の僕もクラブにはさして行かない。そのときUNITに行ったのも、注目していたレーベル(ジョイ・オービソンとウィル・バンクヘッドの〈ヒンジ・フィンガー〉)がブラワンのEPをリリースしていたから、どんな人なのか見たくて珍しくクラブに出向いていただけである。
 し か し 、 だ 。 そんなクラブに馴染みはないという人のなかでも、掲題の日を心待ちにしていたひとは少なくないだろう。当日の1週間ほど前から、僕は毎日のように胸騒ぎがしていた。あのクドいBPMとベースに向けた好奇心、昂揚感、恐いもの見たさが総出で湧き上がっていた。トラックスマンという超ド級のストレートさゆえに意味がよくわからなくなりそうなネーミング・センスに心が焦がされていた。

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 これは最新のブラック・マシン・ミュージックである。アフロ・フューチャリズム以外の何物でもない。西欧文化的なるものの内なる厳しいせめぎ合いだ。明日への新たな起爆剤、未来に向けて大いに狂ったダンス・ミュージックである。
野田努
Bangs & Works Vol. 2(The Best Of Chicago Footwork) のレヴューにて ------------

 会場に向かおうと0時過ぎに電車に乗ろうとするが、遅延。一刻もはやく会場に行きたいのに電車がこない。寒いホームを起爆剤に、線路に向けて大いに狂いそうになったが、なんとか深夜1時過ぎに恵比寿駅に着き、代官山UNITまで走った。これはすでにフットワークであったかもしれない。
 汗だくになりながら会場に着き、受付を済ませ、地下への長い階段を降りて、メインフロアに入り、ステージのほうへ駆け寄ると、ダンサーとして来日していたAGや、日本のフットワーカーによるステップのレッスンが行われている。DJ Mannyは、前日のDOMMUNEでも発表されていたが、飛行機に乗っていなかったので来日ならず。フロアは、動けなくなるほどではなかったが、前に行くのはためらわれるほど多くの人で賑わい、あたたまっていた。ヒリヒリした緊張感と熱気が会場にむせかえっていることを期待していたので、実際の和やかなレッスンの雰囲気に面食らったが、なによりまずフットワークというものがどういうものであるかを脚を動かすことでせめて来場者のみんなに覚えて帰ってほしいというアーティストたちの心意気がさっそく伝わってきた。この日この場所でみな一様にぎこちなく脚をがたがたと動かした記憶を、誰もが忘れないだろう。クラブに行く人間の誰もがうまくダンスできるわけではない。一口に踊るといっても、それは自分なりに体を揺らして動かすという喩えであることもしばしばあることだろう。しかし、このときばかりはダンスのできない人たちでさえ、恥らいながらも、型のあるダンスとして、脚をまずは動かした。なんとなくコツをつかんだ人たち、まったく要領を得ないままの人たち、基礎をあらためて確認したダンサーたち――この熱心なレッスンが20分ほど続くと、会場はじゅうぶんに熱くなった。

 DJ Fulltonoが見事なスピンをするうち、いつの間にかステージの手前、フロアの前線にてひとりのオーディエンスが大きく動きがむしゃらに踊りだしたことで拓けたスペースにサークルが成立し、周りの注目を集め始めた。誰しもがこれは幕開けの合図だと予感したに違いない。間もなくして、ステージからAG(いや、日本のダンサーだったろうか)が勢いよくサークルへ飛び降り、本場のフットワークを堂々と見せつけた。「おおおおー」という拍手喝采に包まれたそのスペースに、ステージ上のダンサーがつぎつぎと降りていった。モニターに映すカメラが間に合わないほど一連の流れはあっという間に起こった。カメラがやっとそのサークルを捉え、モニターに映されたダンサーのフットワークを観て誰かが言った。「(脚が)早すぎてカメラが追いついていない!」
 トラックスマンがその様子をステージ上から見守っていた。険しくもありしかし嬉しさの垣間見えるなんともいえない表情を浮かべながら、ときおりマイクを握り「DJフルトーノー!」とか「お前らもっと踊れ!」みたいに煽っていた。トラックスマン本人は踊らなかった。あんたも踊ってくれよ! という気持ちが会場にいたひとたちの半分以上の頭にチラッとよぎったことだろうが、彼は「俺は踊らないんだ」とボソッとつぶやいていた記憶がある。それもまた可愛らしくもあり、AGらダンサーがしっかり活躍している手前、彼自身はあくまでプロフェッショナルDJとしてのみステージに立っていたかったのではないかとも思う。ダンスに関しての主役は、あくまでAGをはじめとしたダンサーら、そしてオーディエンスひとりひとりなのだと。この夜、あくまで彼はダンスを盛り上げる役に徹していた。
 ステージから降りてきたダンサーたちがひととおり回し回しで踊った後、サークルを記録撮影していたカメラマンもカメラを投げ出して見事なフットワークを決めた。オーディエンス側から、つぎつぎと男子たちが背中を押されながらサークルへ飛び込み、みな一様に達者なフットワークを披露していく。みなさん踊れるんじゃないですか!
 その流れが15〜20分くらい続いた頃だろうか、突如、白Tシャツとタイトな白パンツできめ、髪をひとつに結んだ女性がサークルに現れ、すぐさまフットワークを踊りだした。一瞬、なにが起きたかわからなかったが、すぐに会場は感動の叫びと拍手喝采をその女性に送った。「うおおおおおおおおーーー!」。
 それを見て、ここまでサークルで踊っていたのは男子だけだったことに気付いた。会場には男性とおなじくらい女性もいたと思う。そしてギャルからすればいわばオタクとでも形容されてしまいそうな容姿の人、会社帰りらしきスーツ姿の人、久しぶりにクラブに遊びに来たのかもしれない年齢層の高めな人、ほんとうに「ヤンキー」(野田編集長談)の人、そして男女問わず若人もたくさん駆けつけていた。言ってみれば僕もそのうちのひとりだ。ふだんクラブに行かない若人さえ、この夜は、UNITで起きることを目撃しなければという気持ちがあったに違いない。そしてこの夜の感動を象徴するものが、オーディエンスとダンサーによって自発的に拓かれたサークルであり、サークルに飛び込まずとも自分の立ち位置でこそこそと脚を動かすオーディエンスであり、そして、女性がフットワークを踊りだした瞬間であり、そこに送られた握手喝采だった。トラックスマンが踊らなかった真意を、僕はそこに見えているような気がしている。このパーティの主役は、それぞれに脚を動かすオーディエンスだった。
 ふと僕の隣を見ると、おじさんから「森ガール」と形容されてしまってもおかしくなさそうな、ふわっとしたファッションのロングスカートを履いた小柄な女性が愉しそうに脚を動かしていた。僕もうやむや恥ずかしがっている場合ではないと、負けじとフットワークを試みた。


 やがてDJ Fulltonoの流すトラックはフェイドアウトし、トラックスマンはそのままDJ Fulltonoが用いていたMacBookに自分の外付けハードディスクをぶち込んだ。前日のDOMMUNEでも自慢げに見せびらかしていたが、彼のツアー機材はポケットにつっこんだハードディスク2個のみ。パソコンはバトンタッチなので一度フェイドアウトする必要があったのだろう。シカゴではよくある話、なのか。ワイルド。無音を利用してトラックスマンがコール&レスポンスをオーディエンスに要求し、観客も熱心に応える。「セイ、ゲローDJズ!セイ、テックライフ!」という具合だったろうか。すぐにはプレイせず、とにかく観客を煽りまくり、オーディエンスが声を振り絞ったころ、ようやく始まった。高速BPMの忙しないハイハット、ボボボボボボボボと響く衝撃的な低音――(史実的にどれほど劇的な瞬間なのかは理解できていないのだが)ついにトラックスマンが日本でプレイしている! この日メインの「盛り上げ役」を、オーディエンスは各々の喜びの声援とダンスとで迎えた。
 前日のDOMMUNEでいわゆるジューク/フットワークの楽曲をふんだんに披露したからか、トラックスマンのDJプレイはそれらに拘らず、むしろハウス・ミュージックを積極的にプレイしていたように思う。これもまた、ジューク/フットワークの種明かしをして日本のオーディエンスに叩き込む意図があったのだろう。矢継ぎ早に切り替わっていく楽曲群(トラックス)。それは彼なりの「Lesson」だったのではないだろうか。
 とはいえジュークもガンガンかけていた。おそろしいほど短く切り刻まれクドイほどループされるYMOの"ファイアークラッカー"のリフも、J.ディラによるファーサイドの"ランニン"とおなじスタン・ゲッツ&ルイス・ボンファによるボサノヴァも、DOMMUNEのときとはカットアップのエディットが違っていたような気がしたがどうだろうか。トラックスマンはマイクを握っていなかったが、同じことは繰り返さないぜという意気込みをひそやかに感じられた瞬間だった。ノトーリアスB.I.G.がくりかえしくりかえし哀しげに歌う。「Kickin' the door, waving the 44」! 彼は自分の出前からステージで煽りまくっていたので、自分のDJ中に針をちょびっとスキップさせてしまったあと、ステージから突如消え、しばらくして戻ってきたときに「おしっこ」なんて言ってたのも印象的だった。
 その後も高速の"ストリングス・オブ・ライフ"をプレイし、さらにブラック・サバスの"アイアン・マン"のリフをほぼそのままジュークに落とし込んだミックスを披露し、多くの人が笑いながら頭をふり腕をふり盛り上がっていた。どれも大ネタもいいところだったが、それらのキャッチーさでリスナーをジュークにぐいぐい引き付けていくトラックスマンの"Lesson"は大成功だったのではないかと思う。なにせほとんどの人が笑顔で、身体を、脚を、おもいおもいに動かしていた。野田編集長は「『ワイルド・スタイル』だと思った」と振り返っているが、まさに。ヒップホップの初期衝動にも似たフレッシュな勢いを、この夜、僕はジュークに見い出していた。いや、見せつけられたのだ。それによって突き動かされ、踊ったのだ。この日は踊りました。身体を揺らしたことの比喩ではなく、はっきりと、ダンスをしました。どう考えてもがむしゃらで下手くそだったとは思うが、はっきりそう言える。なぜか誇らしくもある。僕は踊りました。フットワークを踊りました。
 なにはともあれ、このパーティを最初から最後までステージではしゃぎながら盛り上げていたBooty Tunesの皆さんに、ありがとうございました、おつかれさまでしたと言いたい。DJ Aprilのハッピーなはしゃぎっぷりと熱にあてられて、オーディエンスも突き動かされていた部分が確実にあったと思う。
 この日、これから盛り上がろうとしているゴルジェ(Gorge)というジャンルのアーティストHANALIもライヴで出演していたということだが、僕は観ることができなかった。しかし、それは今月27日に開かれる「Gorge Out Tokyo 2012」のレポートで触れることにしたい。
 もし次クラブでジュークが聴こえたら、そこではフットワークのサークル/バトルがもっともっと多発的に興ればいいなと思う。そして、僕も踊れたらいいなと思う。部屋で練習もしている。いずれにせよ、この夜が波及して、もっと小さい数々のパーティーで人々がフットワークを踊るときがくるだろう。そのときこそ、トラックスマンとAGがシカゴから来日した意味が結実するのではないだろうか。

 以上、ジュークに詳しくもない、クラブに通わない、踊りらしい踊りをしない23歳男子によるレポートでした。ありがとうございました。フットワーク踊りましょう。

斎藤辰也

Sound Live Tokyo - ele-king

 舞台芸術を中心に、国内外のアート・シーンにおける情報と人とのプラットフォームとして芸術や文化の振興に取り組んできた特定非営利活動法人、国際舞台芸術交流センター(PARC - Japan Center, Pacific Basin Arts Communication)企画の音楽フェスティヴァル「サウンド・ライブ・トーキョー」が10月26日(金)~28日(日)にかけて行われる。

 参加アーティストは、菊地雅章、工藤冬里/マヘル・シャラル・ハシュ・バズ、サンガツ、ティム・エッチェルス、Project UNDARK + ディーター・メビウス、Baby Arabia、山下残と、先鋭的な表現活動を重ねてきた面々が多く並び、演奏のみならず展示や映画上映など、音楽から広くアートへとつながる地点でどのような音が鳴らされるのか楽しみだ。Project UNDARK + ディーター・メビウスのパフォーマンスには後藤まりこもゲスト参加する旨が追加発表されている。以下簡単にトピックスを。

 菊地雅章のピアノ・ソロは、東京文化会館という音響的に優れた環境に加え、PAなしの演奏が予定されており、理想的な条件のもとで公演を楽しむことができそうだ。
 Phewと小林エリカによるProject UNDARKは、「被曝」というテーマに果敢に取り組んだ傑作『Radium Girls 2011』を発表して以来初となる、クラスターのディーター・メビウスを迎えてのライヴ・パフォーマンスに期待が高まる。
 Baby Arabiaは、タイでアラブ/マレー音楽を演奏し、イスラム・コミュニティの聴衆を楽しませ続けているバンドだとのこと。「自分が所属しないコミュニティの歌を自分が話さない言語で35年歌っているという、彼らの音楽活動のあり方にも興味を持ってもらえれば」と言うのは担当氏だ。ライヴの前にはタイにおける「普通の」イスラム教徒をテーマにしたという連作ドキュメンタリー映画から、昨年公開の『Baby Arabia』が字幕付で上映される。
 ティム・エッチェルスの展示『Wall of Sound』の音楽監督も務める工藤冬里は、マヘルでの演奏の他、同展示のコンサートに子どもの合唱団を交えたパフォーマンスを試みる。これまた担当氏は「展示されているテクストの読解のプロセスがそのままパフォーマンスになるような、とても面白いものになりそう」と語気を弾ませる。ぜひ単日だけでなく、通しチケットの方でプログラムの全体を楽しんでいってもらいたいとのことだ(『Wall of Sound』は展示、コンサートとも入場無料)。熱意を持って取り組まれ、熟慮された構成の企画であることがよくうかがわれるだけに、シリアスな音楽ファンと
して、またワークショップ感覚でも全日程を体験したいところである。

サウンド・ライブ・トーキョー
Sound Live Tokyo

会期:2012年10月26日(金)[前夜祭]~28日(日)
会場:東京文化会館 小ホール

参加アーティスト:菊地雅章、工藤冬里/マヘル・シャラル・ハシュ・バズ、サンガツ、ティム・エッチェルス、Project UNDARK + ディーター・メビウス、Baby Arabia、山下残

日程:
10月26日(金)
17:00~20:30 ティム・エッチェルス『ウォール・オブ・サウンド』(展示)
*19:00 菊地雅章 ピアノソロ(1stセット)
20:30 菊地雅章 ピアノソロ(2ndセット)

10月27日(土)
13:00~20:30 ティム・エッチェルス『ウォール・オブ・サウンド』(展示)
*18:00 Project UNDARK + ディーター・メビウス
19:20 山下残『ヘッドホンと耳の間の距離』
20:30 工藤冬里/マヘル・シャラル・ハシュ・バズ

10月28日(日)
13:00~19:30 ティム・エッチェルス『ウォール・オブ・サウンド』(展示)
*15:30 『Baby Arabia』(HDCAM上映、74分)
17:00 Baby Arabia(コンサート)
18:15 ティム・エッチェルス『ウォール・オブ・サウンド』(コンサート、音楽監督・工藤冬里)
19:30 サンガツ

会場:東京文化会館 小ホール

チケット、詳細:https://www.soundlivetokyo.com/index.html

主催:東京都、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)、国際舞台芸術交流センター(PARC)

後援:ブリティッシュ・カウンシル、東京ドイツ文化センター

東京文化発信プロジェクトは、「世界的な文化創造都市・東京」の実現に向けて、東京都と東京都歴史文化財団が芸術文化団体やアートNPO等と協力して実施しているプロジェクトです。都内各地での文化創造拠点の形成や子供・青少年への創造体験の機会の提供により、多くの人々が新たな文化の創造に主体的に関わる環境を整えるとともに、国際フェスティバルの開催等を通じて、新たな東京文化を創造し、世界に向けて発信していきます。




© Abby Kikuchi  菊地雅章


イラスト:小林エリカ  Project UNDARK + ディーター・メビウス


山下残『せきをしてもひとり』(2010年、原宿VACANT)
山下残『ヘッドホンと耳の間の距離』


工藤冬里/マヘル・シャラル・ハシュ・バズ


Baby Arabia


スペクタクル・イン・ザ・ファーム(2010年、那須)での演奏  サンガツ


We Wanted by Tim Etchells (2011)  ティム・エッチェルス『ウォール・オブ・サウンド』

Mediafired™ - ele-king

Mediafired™ - Pixies

"we had Pepsi™ sponsorship" misssequence(メディアファイアード™本人。上記動画のコメント欄にて)

 違法ダウソしてますか?™
 愉快なコマーシャル映像まで作られたオンライン・ストレージ〈メガアップロード〉は、違法ダウンロードの温床となっていたとされ、現在は閉鎖されている(https://www.megaupload.com/)。いっぽう、おなじく人気だったオンライン・ストレージ〈メディアファイアー〉は存続してはいるが、共有が違法と思われるファイルについては積極的に削除しているようだ。アーティスト名やタイトルとともに「mediafire」を入力してグーグル検索すれば音源ファイルが見つかりますよと友人に教えられたのは3年ほど前。いま同じことをしても、ダウンロードへのリンクは見つけづらい状況だろう。それが道理なのかもしれない。しかし、利用するか否かに関わらず、オンライン文化も全盛だというのに息苦しい出来事だなとも感じる。™

 メディアファイアード™ことジョアン・コスタ・ゴンサルヴェス(Joao Costa Goncalves)もポルトガルでそういった違和感をすこしは抱えているに違いない。今作『ザ・パスウェイ・スルー・ワットエヴァー』はあからさまに他者の著作物をカットアップして作られたものだ。素材となった曲を収録順に並べると、クイーンの“イニュエンドウ”/ヴァン・ヘイレンの“キャント・ストップ・ラヴィン・ユー”/インナー・サークルの“スウェット(アララララロン)”/ケイト・ブッシュの“嵐が丘”/バックストリート・ボーイズの“アイ・ウォント・イット・ザット・ウェイ”と、そうそうたる有名どころばかり――MOR(Middle Of the Road)的である。いずれも古い。商業的にも旬を過ぎたものであって、〈メディアファイアー〉にアップされていたとしてもちょっとイケてないではないか。™

 ビートルズやマイケル・ジャクソンをおなじように剽窃したジョン・オズワルドの『プランダーフォニック』との大きな違いとして、今作には過剰にエコーがかけられていることが挙げられる。これは、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーのダニエル・ロパーティンによる『チャック・パーソンズ・エコージャムズVol.1』の、80年代のアダルト・コンテンポラリー(日本でいうAOR)やソウルの一節をループさせエコーの海に浸した手法「エコージャム」であり、「エコージャム」はタグの一種でもある(ちなみに、同アルバムの楽曲にダニエルがレトロな映像をつけたプロジェクト〈Sunsetcorp〉――斜陽企業がヴェイパーウェイヴの起こりだと思われる)。™

 今作でループさせられている一節一節は、ガンガンにエコーをかけられ、まるで巨大な聖殿に響き渡っているかのように祝祭的ですらある。景色はまるで真っ白で、鳩がパタパタと飛び立っていく画が見えるようだ。しかし、そんな演出とは対照的に、チョップとループのタイミングも展開も聴き手に心地よさを与えるものとはけっして言えないほど荒々しい。ピッチは原曲より低くされたりしながらも、スピードは上げられていたりする。祝祭的な響きをもちながらも、ポップソングがゾンビのように知性のないうめきを上げているようでもある。仕事中などにわけもなくなにかの歌の一節が脳内ループしてしまう体験に等しい。非常にストレスフルである。荒々しいが繊細に編集されている。ジェームス・フェラーロはポップ/ロックがリビングでつけっぱなしのMTVから垂れ流され平坦な環境音となり死んでいる様子を捉えたが、今作ではメディアファイアード™によってポップスがゾンビとして目覚め、リスナーに襲いかかってくる。™

 カセットのB面には「shit's cold / roam as you are」というサブタイトルがついているが、「私、キャシーよ!帰ってきたの。とても寒いから、窓から入れてちょうだい」と歌うケイト・ブッシュと、別れた恋人への未練を歌うバックストリート・ボーイズに対してメディアファイアード™が吐き捨てた言葉なのだろう。それらの曲名は“ピクシーズ”なんてバンド名がもろにつけられていたり、ソニックユースの曲名だったり、ニルヴァーナの“イン・ブルーム”の歌詞(“Spring Is Here”“Tender Age”)が引用されていたりする。俗なポップスに対して自分の趣味――すなわち自分にとっての聖(ノイジーなロック)をぶつけていく幼稚で原初的な対抗意識を演出している。™

 『ザ・パスウェイ・スルー・ワットエヴァー™』が『プランダーフォニック』のようなカルト的な支持を得ることはないだろう。なにしろ元ネタが基本的にcheezyでダサい懐メロからだ。しかし、それらはストレスフルな編集がなされているぶん原曲以上に印象的でもある。繰り返すが、編集は凝っている。最後の曲のアウトロでは飛行機が風を切る音が聞こえるが、これは“アイ・ウォント・イット・ザット・ウェイ”のミュージック・ヴィデオのイントロで挿入されている音だ。そう。つまり、そういうことだろう(I want it that way)。™

[UK Bass Music, Darkwave, etc] - ele-king

Darkstar - Timeaway



 『ノース』への大胆な方向転換の直後に〈ハイパーダブ〉から〈ワープ〉へ移籍したダークスターによる2年ぶりの新曲。ヴァイナルは11月20日に発売される(https://bleep.com/release/39342-darkstar-timeaway)。野田編集長はいまだにデュオだと思っていたみたいだが、『ノース』の時点ですでにヴォーカルにジェームス・バタリーを迎えたトリオになっている。
 プロデューサーにはワイルド・ビースツ/スペクタクルズ/エジプシャン・ヒップ・ホップなども手がけたリチャード・フォーンビーを起用しており、「イギリス北部ペナイン山脈のどこか深いところ」にある「ヴィクトリア調のジェントルの邸宅」を借りて録音されたアルバムは、来たる2013年初頭にリリース予定とのこと。
 この録音場所がなるほどと思えるほど、"タイムアウェイ"の旋律は、荘厳なエコーでメランコリーなイメージを讃えている。ダブステップ期もいまは昔。たださえ意外な方角へ舵をきった『ノース』以上にヴォーカルとハーモニーがフューチャーされ、いくぶんか明るくなった印象もあるが、陰鬱さを讃える美学はよりいっそう磨かれている。

 ダークスターのYouTubeアカウントには、レコーディング中のスローモーション映像にドローン/アンビエント風で静かな音楽を添えたものが"Nowhere"として4つアップされている。

 忘れもしない2011年4月9日、ロンドンはショーディッチにあるヴィレッジ・アンダーグラウンドというヴェニューにて、ダブステップのダも知らなかった僕がダークスターを観た。日本では聴いたことがないほどバカデカいベース音に全身を震わせられたとき、心臓を潰されて死ぬかと本気で思った。おおきな教会を改修したような広い会場。酒で酔っ払い喋りまくる、カルチャーめいたオーディエンス。機材トラブルによる1時間近くの遅延を経て、不穏な空気が拭えないなか、殺気だちながら透き通った目の青年が喉を震わせた。

 日本でのステージが実現することを期待しよう。


Dazed and Confused Live PART 2 with Darkstar & Gang Gang Dance

 これは先述の〈DAZED LIVE〉での映像。ダークスターはもちろん、トリのSBTRKTも凄かった。1時間以上も時間が押した結果、ギャング・ギャング・ダンス終了後には25:30近くなりオーディエンスは続々と帰ってしまった。ガラガラの会場にイラついていたように見えたが、SBTRKTは圧倒的にベスト・アクトだった。

Trimbal - Confidence Boost (Harmonimix)



 ロンドンのグライム系ラッパーであるトリンバル(元ロール・ディープ・クルー、基本的にはトリム名義)と、ジェームス・ブレイクの別名義ハーモニミクスによる作品のミュージック・ヴィデオ。ツイッターを見ていても、発表されると同時に瞬く間に話題となっていた。リリースは〈R&S〉から。撮影は、ザ・トリロジー・テープスの記事でも紹介したロロ・ジャクスンである(と、このようにウィル・バンクヘッドの陰がロンドンの地下水脈では散見される)。
 ミスター"CMYK"がトリムの叩きつける言葉を名義のごとくハモるその後ろでは、ノイズが大胆にブーストしている。

ポーズをとれ。
アイツがどれだけ信頼を寄せていようと知ったこっちゃないなら。
ポーズをとれ。
ガール、自分の服を着て自分がイケてると思ったなら。
ポーズをとれ。
きみが問題を抱えているなら、気にするな、
誰も知ったこっちゃない。
ポーズをとれ。ポーズをとれ。
Strike a pose.

 ポーズをとっているのかはわからないが、時折出てくるジェームス・ブレイクがイケメンであり可愛いことは間違いない。

Eaux - i



 〈ソーシャル・レジストリー〉に在籍していた気高く美しいシアン・アリス・グループ(Sian Alice Group)は解散してしまったが、そのメンバーであったシアン・エイハーンとベン・クルックにステフン・ウォリントンが合流したトリオがオー(EAUX)だ。
 11月に発売される新作EP『i』からタイトル曲が先行公開された。以前にリリースしていた両A面7インチ『Luther / No More Power』はダークなシンセ・ポップで、それこそ女性ヴォーカルの気高いダークスターという印象だったが、今作はほぼインストゥルメンタルである。ドラムがいないため、打ち込みのリズムにベンのギターやステファンのシンセを被せるかたちに落ち着いている。シアンは1音節の語を繰り返し発語する。

i i i i i i i i i
gotten gotten gotten gotten

 ジ・XXの新譜の先行試聴会で思い出したのが、サウンドこそ違うが、似た編成のオーだった。こちらはメランコリーを秘めていながらも甘美な部分を見いださせようとはせず、むしろ厳しさをたずさえる姿勢は、シアン・アリス・グループから通じているものだ。
 これだけではまだなにも分かる気がしないので、EPの発売を待ちたい。

Eaux - Luther

Zomby - Devils

https://twitter.com/ZombyMusic/status/256219187247210496

 ゾンビー(Zomby)が1分半ほどの新曲"Devils"をツイッター上で突如フリーでリリースしている。おそらくアルバムには収録しないということなのだろう。ゾンビーが「5人目のビートルズ」と称える亡き父親を弔った『デディケイション』とはずいぶん違う忙しなさがある。EP「Nothing」にも高速ビーツのトラックはあったが、今作にはより不安を煽るような態度がある。
 ツイッターも相変わらず順調に挑発的でブッ飛ばしているし、次のアルバムはダークで扇動的なものになりそうだ。

 他にもホット・チップのアレクシス・テイラーから、彼がチャールズ・ヘイワード/ジョン・コクソン/パット・トーマスとともに組んでいるアバウト・グループ(About Group)のアルバムが完成したということと、彼のソロEPが12月にドミノからリリースされるという報告を受けました。これは喜ばしい。

 ちなみに、今日ご紹介したアーティストはすべて〈ザ・トリロジー・テープス〉主宰のウィル・バンクヘッドと関わりがある。

Meditations 2012.10.15 - ele-king

Chart


1

Jean Dubuffet - Experiences Musicales (II) Rumpsti Pumsti (Musik)
これは事件でしょう...アール・ブリュット提唱者Jean Dubuffetによる61年美術館級音源の未CD再発部分が遂にCDになりました。以前のCDでは聴けなかった激しい演奏ばかりが満載です!

2

Sensations' Fix - Music Is Painting In The Air (1974 - 1977) Rvng Intl.
Spectrum Spoolsの再発で知られるFranco Falsiniが中心である伊プログレバンドの既発、未発&新ミックス盤。黄金色に輝くギターの浮遊感が素晴らしい!

3

Uku Kuut - Estonian Funk Bigtree Records
PPUの編集盤で度肝を抜かされたエストニアのファンク作家による最新作。新曲&リミックスのトレンドからは微妙に外れたハウス/ファンクな音楽性は、今回も多くの音楽好きに爪痕を残します!

4

Ricardo Donoso - Assimilating The Shadow Digitalis Recordings
2LPに渡る壮大な宇宙への旅~ 退廃した近未来世界を思わ暗さを持つコスミッシェ作品。派手な展開はないものの、宇宙地下道をロマンチックに突き進む展開は素晴らしい。影の傑作!

5

Ian Drennan - The Wonderful World Underwater Peoples Records
OESB周辺からこんなものが...!Big Troublesのメンバーによる初ソロ作。ワールド/ニューエイジ臭漂うアンビエントを軸に、破天荒な展開を重ねるポップ/アヴァンの混沌具合...たまりません。

6

Woo - It's Cosy Inside Drag City
Nite Jewelお気に入りのユニットによる89年2ndが再発。現れては消えて行く優しいアンビエンスは唯一無二で、あらゆる人に聴いもらいたい名盤です。今再発されるというのも良いタイミング。

7

M.B. - Neuro Habitat Urashima
言わずと知れたイタリアのノイズ巨匠の82年代表作が再発。ミンチ状に怪音が刻まれ続けるA面に、幻覚から必死に抜け出そうと重くもがき苦しむB面。絶品です...

8

Elg - Mil Pluton Hundebiss Records
Ghedalia Tazartesとの共作でも知られるElgの怪ポップ! 宇宙電子音、コンクレート、EBMにボーカルが絡むという破綻寸前の所でポップに仕上げてます。今年の発狂盤の中でもこれは上位でしょう!

9

Natural Snow Buildings - Night Coercion Into The Company Of Witches Ba Da Bing!
フォークとドローンの間から陰惨な破滅を導き続ける男女ユニット。08年作の再発盤となるここでは、3CDという長尺で最初から最後まで一直線に破滅へと導くノイズ・ドローンを披露。純粋なノイズでは無い分余計にむごいです。

10

Roberto Cacciapaglia - Sei Note In Logica Wah-Wah Records Sound
前作に続いて79年の2ndも再発。児童による演劇を観ているような、危なっかしいハラハラした感覚と素朴な楽しさが心地良い電子音楽/ミニマリズム。蛍が現れては消えていく淡々とした美しさです。
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