ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. The Sleeves - The Sleeves | ザ・スリーヴス
  2. DJ KRUSH ──LIQUIDROOM(KATA)の74分DJ公演シリーズ、第3回の出演者が決定
  3. UKインディ・ロック入門──ポスト・パンク、ギター・ポップ、スカとダブ編
  4. interview with Weirdcore 謎のヴィジュアル・アーティスト、ウィアードコアへの質問
  5. FUTURE FREQUENCIES FESTIVAL 2026 ──新たなフェスティヴァルが始動、ジョイ・オービソンやザ・セイバーズ・オブ・パラダイス、ノウワーらが出演
  6. Manual - True Bypass
  7. Galliano ──復活したガリアーノ、日本限定の新作がリリース
  8. オールド・オーク - THE OLD OAK
  9. interview with The Lemon Twigs ロック/ポップスの素晴らしき忘れ物 | ザ・レモン・ツイッグス、インタヴュー
  10. Tomoaki Hara and Toru Hashimoto ──橋本徹(SUBURBIA)の人生をたどる1冊が刊行、人類学者の原知章による30時間を超えるインタヴュー
  11. Irmin Schmidt - Requiem | イルミン・シュミット
  12. Xylitol - Blumenfantasie | キシリトール
  13. Hoyo Moriya ──〈Virgin Babylon〉より森谷抱擁のファースト・アルバムがリリース
  14. Yuki Nakagawa ──チェロ奏者、中川裕貴による初のソロ・アルバムが登場
  15. ボカロが世界に与えた衝撃 一億回再生の意外な背景
  16. Cornelius ──コーネリアスが動き出した! 新シングル「夢寝見」がリリース
  17. Bill Callahan - My Days of 58 | ビル・キャラハン
  18. interview with Dolphin Hyperspace ジャズの時代、イルカの実験 | 話題のドルフィン・ハイパースペース、本邦初インタヴュー
  19. 別冊ele-king J-PUNK/NEW WAVE-革命の記憶
  20. Moemiki - Amaharashi

Home >  Reviews >  Album Reviews > HB- Black Hole in Love

HB

HB

Black Hole in Love

P Vine

Amazon iTunes

野田 努   Jun 23,2010 UP
E王

 本能や直観を理想化して、とかくイノセンスを賞揚し......と同時に自然のサイクルを祈願しながら、モダン・ライフを病んでいると思うとき、音楽はときにアフリカないしは非西欧的なリズムへと向かう。ミルフォード・グレイヴス、マニ・ノイマイヤー、ザ・スリッツやポップ・グループ、あるいはじゃがたらやボアダムスやあふりらんぽ、あるいはレッド・プラネット・シリーズにおけるマイク・バンクス、あるいはUKファンキー......まで入れて良いのかどうかわからないけれど、まあ、とにかくそうしたプリミティヴィズムというのは、われわれにとって確実にひとつの武器であることは間違いない。プリミティヴィズムにおける反知識的な態度、要するに「考える前に踊りなよ」という姿勢はつねに商業主義のワナに晒されているものの(たとえば、インディアンや東南アジアなどの民芸品を扱う雑貨屋を見ればよい)、しかし、ひとつだけはっきりしているのは、それはそれまで教えられてきた知識への素朴な抵抗である、ということだ。

 とくに僕の世代ではその感覚がよくわかる。パンク・ロックにおいてレゲエのリズムが重要視されたのもそれで、世界史を作ってきた文化が支配してきた文化のリズムをわれわれは積極的に選んだのだった......と、まあ、そこまで気合いを入れなくても、50年代のエキゾチカにおけるそれ(アフロ、ラテン、ヴードゥーのようなドラミング)でさえ上流階級の気持ちを解放したのだから彼らのリズムには特別な力があるのだ。ボアダムスやあふりらんぽのように神秘的な宇宙をのぞき込まなくても、リズムはわれわれに不思議な活力を与えるのである。

 HBは、ドラマーのmaki999を中心に2004年12月に東京で結成された女性3人によるバンドで、すでに2007年に〈残響レコード〉からデビュー・アルバム『Hard Black』をリリースしている。他のふたりはmuupy(パーカッション)とtucchie(ベース)。今回の『ブラック・ホール・イン・ラヴ』はセカンド・アルバムとなる。収録された8曲すべてがインストゥルメンタル曲で、1曲ヒゴヒロシさんが参加している。メロディといったものはほとんどなく、たまに演奏されるメロディ楽器もリズムを強調する。大雑把に言えば、ただひたすらリズムが刻まれている。笑い声からはじまり、ドラムとパーカッションは素晴らしい律動を生み、ベースは唸っている。その迷いのない演奏は誰もが言うように「心地よく」、聴く者を清々しい気分にする。この手のアイデアは決して目新しいものでないが、スネアとハイハットの音は耳にこびり付いて、パーカッションは頭のなかでこだまする。ベースは身体を震わせ、気がつくと繰り返し聴いているという有様だ。

 近いうちiPodに入れてみようかと思う。歩きながら聴くのが楽しみだ。もちろん、評判のライヴ演奏もいつか聴いてみたい。ワールドカップ期間中の僕にとっての"サプライズ"はこの『ブラック・ホール・イン・ラヴ』だった!

野田 努