「P」と一致するもの

Appleblim - ele-king

 シャクルトンとともに〈スカル・ディスコ〉を運営していたローレンス・オズボーンによるソロ3作目。この10年にわたってポスト・ダブステップを模索しつつ、DJにデトロイト・テクノを取り入れてきた成果が全面的に開花したようで、良くも悪くもタンジェリン・ドリームのようになってきたシャクルトンとは対照的に重心を低く設定したリズム重視のビート・アルバムを完成させた。〈スカル・ディスコ〉を閉鎖してから10年後のリリースとなったデビュー・アルバム『Life In A Laser』(18)では何をやりたいのかよくわからなかったものが、ここへきて一気に独自のセンスを開拓したというか。『Life In A Laser』と新作の間に『Ungoverned & Ungovernable(=統治不能)』という実験的なアルバムを挟んだことも功を奏したのだろう。動機はよくわからないけれど、イアン・アービナ著『アウトロー・オーシャン』(白水社)で報告されていた「海=無法地帯」の現状を音に置き換えるという試みがダブステップやデトロイト・テクノに固執していた作曲スタイルを解体し、自由なコンポジションを促すきっかけになったのかもしれない(魔術師のジョン・ディーによって排他的経済水域が提唱されるなどイギリスがパイレーツの国であることは近代国家の成り立ちを考える上でけっこう重要で、海洋覇権の移行=ニシン漁からタラ漁に切り替わる拠点となったブリストルに住んでいたオズボーンがアービナの著作に目をつけるのはなるほど納得がいくし、藤田敏八監督『海燕ジョーの奇跡』を観ると日本にも似たような精神性が宿っている気がしてしまう)。

 ジャングルやエレクトロなど多彩なリズムを取り入れた『Infinite Hieroglyphics(=無限の象形文字)』で最も目覚ましい変化を遂げているのがベース。ジュークやジャズ・ベースを予想外に変形させるなどいままで経験したことのないようなベース・ラインがとにかく腰に絡みつき、細かいパーカッション・ワークと組み合わせた“A Madman's Nod”やマッシヴ・アタックがジュークをやっているような“Zephyr”など、ウガンダやエクアドルのクラブ・シーンには期待できないベース・サウンドの醍醐味をこれでもかとぶつけてくる。『Life In A Laser』に収録されていた“Flows From Within”を順当に発展させた路線にはマッド・マイクによる「Red Plane」シリーズを4ヒーローがリミックスしたようなスリルが横溢し、明らかに“Sex In Zero Gravity”を意識した“Shimmered”など「20年後のデトロイト・テクノ」ここにありという感じも(オズボーンは時々URのTシャツを着てDJをしている)。

 テッセラやジョイ・オービソンなど多くのプロデューサーと同じくスペシャル・リクエスト『Soul Music』(13)に影響されてジャングルを再発見し、ハーフタイムかと思えばジャングル以前のブレイクビートをソフィスティケイトさせて応用する感覚もポール・ウールフォード以降の流れを引き継いだものとなるらしい(イギリス人のジャングルに対するこだわりは、ここ数年、80年代のレア・グルーヴ運動に匹敵するものを見せている)。一方で、ベルリンへの移住が影響したのか、ベーシック・チャンネルとスピーカー・ミュージックをカチ合わせたような“Beelike”も素晴らしく(サブ・ベースがぶんぶん唸っていて、確かに“蜂みたい”かも)、まだまだ化学反応が長引く気配を見せている。タイトル曲などともにこの辺りが次の流れになっていくのかもしれず、ジ・オーブ“Little Fluffy Clouds”をサム・ビンガがリミックスしたような“Stand Firm”が個人的にはベストか。最後だけがなんとなく唐突で、マッド・マイク全開になってしまうというか……レイヴに対する強い思いがそうさせるようで、ロックダウンによって、かえってレイヴに対する思いが吹き出し、丸川珠代ほどではないものの、あっという間に異次元に連れ去られる。ロウ・エンド・アクティヴィストことパトリック・コンウェイと組んだトリニティ・カーボン名義のアルバムも前後してリリースされているが、こちらは大して面白くない。

interview with Joy Orbison - ele-king

 ジョイ・オービソンは素晴らしい。なにしろ彼の叔父は80年代末という、まだこのジャンルが超アンダーグラウンドで、海のモノか山のモノかもわからなかった時期から活動しているジャングルのDJ、レイ・キースなのだ。30年ほど昔の話になるが、ぼくは彼の叔父が関わっていたロンドンの現場を経験している。それはいまだ忘れがたきハードコアで、ラフで、労働者階級的で、人種と汗の混ざったパーティだった。メインフロアがラガ・ジャングル、セカンドフロアがハウスという構成で、DJブースの脇には盛り上げ役としてMCとダンサーが立ち並んでいたが、そんな必要などないくらいにオーディエンスの熱狂が並外れていた。あんな汗まみれの現場で長年回してきたDJが身内にいる。しかも13歳にしてターンテーブルでミックスを覚えたら、それはもうUKダンス・カルチャーの申し子と言える才能が磨かれよう。
 じっさい2009年の彼のデビュー・シングル「Hyph Mngo」は出たときから評判で、ぼくもそのハイプに乗せられて都内のレコード店で買ったクチ。ジョン・オービソンまでチェックしていたらそいつはわかってると、当時はそんな空気があったのだ。で、UKガラージの癖のあるリズムとソウルの高揚感をセンス良くミックスしたその12インチ1枚だけで、ジョイ・オービソンをジェイムス・ブレイクやマウント・キンビーらと並ぶ新世代の代表だと豪語したのは大手『ガーディアン』だったが、それは正しくもあり間違ってもいた。ジェイムス・ブレイクやマウント・キンビーは有名になると汗臭いダンスフロアからは離れていったが、ジョイ・オービソンはそこにい続けて……、もちろんいまもそこにいる。

 デビューしてからこの10年あまり、アルバムを出さずにひたすら12インチを出し続けているのも、彼がダンス・カルチャーの一部であることを物語っているわけで、『still slipping vol.1』がジョイ・オービソンにとっての初の長編作品となる。14曲入り(日本盤にはボーナストラックあり)で、まあ普通これはアルバムということになるのだが、本人はこれをミックステープと定義している。その理由は以下のインタヴューで語られているが、うん、なるほどなーと思った。
 まあなんにせよ、『still slipping vol.1』にはUKアンダーグラウンド・ダンス・ミュージックの最良の部分が詰まっていることはたしかだ。90年代初頭におけるその文化は、音楽それ自体に政治性はなかったかもしれないがシーンのあり方は政治的だった。マーガレット・サッチャーが推奨し一般化させた「個人主義」に対して「みんな」だと、「集う」ことを持って反論したのだから。『still slipping vol.1』は、いま再びみんなで「集う」ことを希求している。と同時にUKダンス・カルチャーの定義をもあらためて教示してもいる。西インド諸島からやって来たベースとアメリカ北部の黒人たちが発明したダンス・ミュージックとが混ざり合ったそれは、なにひとつ面白くない日常では得られない興奮をたったひと晩で得るための強力な燃料となって吐き出されるのだ。
 ジョイ・オービソン(本名Peter O’Grady)はよく喋ってくれた。インタヴューは彼のアティチュードがよくわかる内容になっていると思う。ちなみに『still slipping vol.1』のジャケットに写っている女性が彼の従姉妹で、彼にUKガラージを教えてくれた人であり、レイ・キースのパートナーでもある。このジャケットは、彼の音楽がどこから来ているのかを暗示しているのと、ちょっとうがった見方をすれば、XLやUK音楽業界のなかのケン・ローチ的な感覚がこうしたかったのではないかと。間違っているかもしれないが正しくもあるだろう。ジョイ・オービソンが答えている。

うちは「仕事をする」ということがもっとも重要視されている家族で、僕が音楽をやりはじめたとき、僕には別の仕事があった。音楽で生計を立てることができるようになるまで、家族は僕の音楽についてとくに気にしていなかったんだ。

この12年、ずっとダンスフロアのための12インチにこだわってきたあなたがついにアルバムを完成させた、あなたはそれをミックステープと呼んでいます。

JO:僕はとくにアルバムを作りたかったわけじゃないんだよ。エレクトロニック・ミュージックのアルバムで楽しめるものってあまり多くないと思っているし、アルバムというコンセプトに魅力を感じないんだよね。だから敢えてミックステープと呼んだ。結果、自分が作りたいと考えていたものや自分の音楽の聴き方に近いものができたと思う。

あらためて訊きますが、あなたがどんな家庭、どんな環境で育ち、それがあなたにどんな影響を与えのか教えて下さい。

JO:僕はある意味、家族に恵まれていたと思うけれど、うちはとくに音楽一家というわけではないんだ。父親は音楽に関してはセンスが良いほうだと思うけれど、音楽は気軽に楽しむというタイプの人間なんだ。音楽に真剣に向き合うということはしてこなかった。ただ昔父が話してくれたのは、彼はサウスロンドンで育ち、そこではレゲエのサウンドシステム文化が主流だったということ。だから彼は子供の頃、友だちとサー・コクソン・サウンドなどのパーティに行ったりしていたんだ。そういう経験が彼のセンスの一部になっていったんだと思う。僕が子供の頃は、家にR&Bやレゲエやソウルのレコードがたくさんあったからね。
 僕には多様な人種の家族や親戚がいるから、その点については恵まれていると思う。そうでなければ僕の音楽の嗜好はまったく違うものになっていたかもしれないからね。僕が生まれたときも父はスティーヴィー・ワンダーを車でかけていたらしい。だから自分の音楽の嗜好について考えるとき、いつも家族のことを思い出す。家族行事などでみんなが集まってパーティをするとき、僕はいつもDJをやらされていたんだけど、家族のみんなはトロージャンから出ているようなレゲエを聴きたがっていた。僕の祖父母はアイルランド人だから僕の家系は主に白人なんだけれど、いろいろな人種が混在しているから多様な親戚・家族になっている。レゲエのような西インド諸島の音楽は、僕のルーツであるアイルランドの伝統の一部ではないけれど、それが僕の家族のサウンドだというのは面白いよね。でもそれは西インド諸島の音楽がロンドンのアイデンティティの一部であることを意味していると思うんだ。それから、僕の従姉妹のリーアンはすごく音楽にはまっていて、その従姉妹がレイ(・キース)と結婚したんだ。僕が12歳か13歳の頃だったかな。だから僕は音楽に関しては、同年代の人たちよりもスタートが早かったと思うよ。だからリーアンの写真をスリーヴにしたんだ。彼女のおかげでいまの僕がいると思うから。リーアンが僕に音楽を教えてくれていなかったから、僕はいまごろ何を聴いていたのか想像もつかないよ。だから僕は幸運だった。リーアンが僕を正しい軌道に乗せてくれたから。

あなたが最初に「Hyph Mngo」をリリースしたときは、従姉妹のお姉さんやお父さん、叔父さん、みんな喜んだことと思いますが、あなたが新しい作品を出すたびに家族や親類から感想を聞かされるものなのですか?

JO:最初のレコードをリリースしたとき、僕が音楽を作って、音楽をリリースしたことを家族もレイも知らなかっよ。当時は友だちと一緒に軽い気持ちで音楽をやっていたからね。うちは「仕事をする」ということがもっとも重要視されている家族で、僕が音楽をやりはじめたとき、僕には別の仕事があった。音楽で生計を立てることができるようになるまで、家族は僕の音楽についてとくに気にしていなかったんだ。音楽で生計を立てられるようになってからは、僕の音楽を意識するようになったけれど、当時は別の仕事で生計を立てていたから、家族は、僕の音楽のことを趣味のひとつだと思って、よくわかっていなかったんだと思う。

レイは僕にこう言った。「お前はクラブという空間では価値がある奴かもしれないが、その空間から一歩出た瞬間に何者でもなくなる。それだけは覚えておけ」

子供の頃から身近にダンス・ミュージックがあり、親類にはトップクラスのDJ/プロデューサーがいたことで、あなたが学んだもっとも重要なことは何だったのでしょう?

JO:音楽という職業が現実的に可能だということを気づかせてくれたことだと思う。“You can't be what you can't see(自分の目に入ってこないものには、なることができない)”という表現があるように、僕は昔カフェでバイトをしていて、洗い物係だったんだけど、バイト終わりに叔父のレイが迎えにきてくれることがあった。そのときの彼はBMWのオープンカーに乗っていて、太いチェーンをいくつも首から下げていて、音楽を爆音でかけていた。子供の僕はそんな叔父を見て、こういう風になりたいなあ、と思ったんだ(笑)。
 そういう意味で、実際に音楽を生計にしている人が家族として近くにいて、それが現実的に可能だと理解できたということが僕にとって良かったと思う。僕の当時の友だちは、周りにDJやプロデューサーみたいな人なんていなかったからね。でも僕にはそういう叔父がいたから、そんな叔父を見て、自分も彼みたいな道を歩むのが可能なんだと思うことができた。時間を費やして音楽を作るということが、仕事として現実的な選択肢だと思えるようになった。

レイ・キースさんからはどんなアドヴァイスがあったのでしょうか?

JO:アドヴァイスはたくさんあったよ。彼は本当は、僕に音楽をやって欲しくなかったんだ。レイはドラムンのシーンに疲弊していたからね。いまでもドラムンベースのシーンは地位を確立できていないというか、本当はもっと評価されるべきだと僕は思っている。いまではダンスミュージックはビジネス化されていて、ダンス・ミュージックの世界に入る人は、この業界で何が達成できて、何ができないかということを承知の上で入ってきている。でもレイや、当時のダンス・ミュージック業界の人たちは開拓者というか、何の前例もなしに手探り状態で成功をつかもうとしていた。彼らが作り上げた彼ら独自の世界で、その週の稼ぎで、その週をやっと暮らすというような生活をしていた。いまはそれも変わったと思う。でも当時はそういう世界だったから、叔父は僕には適さないと思ったんだろう。彼もすごく苦労していたからね。だから、「俺がお前だったらこの道には進まない。他のことをやった方がいい。音楽をやるにしても専門技術を身につけるほうがいい」と言っていた。
 それから、とても記憶に残っているのは……、レイからのアドヴァイスというよりも、クラブでのレイの人に対する扱い方を見たときが印象に残っている。レイがDJをしているクラブに遊びに行ったとき、ある女性が酔っ払ってDJブースに入ってきたんだ。女性はドリンクを片手に持っていたんだけど、それをほぼ全部、レイのレコードバッグに溢してしまった。彼はヴァイナルしか持っていなかったんだよ。昔のドラムンはかなり攻撃的な雰囲気があった。なのにレイはすごく落ち着いていて、礼儀正しく女性をブースの外に連れ出したんだ。それだけだった。そのときの彼の態度はいまでもはっきりと覚えているよ。それで、クラブを出た後に彼にそのことについて話したんだ。そうしたら彼は僕にこう言った。「お前はクラブという空間では価値がある奴かもしれないが、その空間から一歩出た瞬間に何者でもなくなる。それだけは覚えておけ」
 レイは本当に人との付き合いを大切にする人だった。彼がそういう性格だから、いまでも彼は活動を続けられているんだと思う。人といい関係を築いて、何事にもポジティヴに取り組んできたから。ドラムンのシーンという環境にいると、すべての人がレイみたいな道を辿ることができるわけではない。だからそういうレイの姿勢や態度は昔から尊敬していたね。

昔、レコードショップにレコードを買いに来ている人の半数はガテン系の人たちや、技術職の人たちや、小売店で働いている人など、普通の人たちだった。僕の友達の兄や姉などでレコードを買っている人たちは、とくに学歴が高いとか、頭が良いというわけでもない、ただの普通の人たちだった。それが最高だと思った。

この12年間、シングルに拘り続けたのは、それがダンス・ミュージックのフォーマットだからだと思います。あらためて質問しますが、あなたにとってダンス・ミュージックの魅力とはなんでしょう?

JO:失礼な表現として捉えてもらいたくはないんだけど、ダンス・ミュージックはミュージシャンではない人たちのための音楽だと僕は思っている。パンクと同じだ。パンクは、コードをいくつか学んだら自分を表現するために、すぐにやれる音楽だ。ダンス・ミュージックもそう。アシッド・ハウスやシカゴ・ハウスやディープ・ハウスなどのルーツを辿ると、作っていた人たちは機材を学びながら音楽を制作していた。ダンス・ミュージックには誰にでもできるオープンさがあるんだ。僕はポップ・ソングを作曲することはできない。でもダンス・ミュージックは、音楽制作を学んでいる最中の人でも作ることのできる。そういうダン・スミュージックの一面が昔から好きだったね。エリート主義的な感じがないから。
 最近は少しエリート主義な感じも出てきたかもしれないけど、僕が子供の頃は、そんな感じはまったくなかった。昔、レコードショップにレコードを買いに来ている人の半数はガテン系の人たちや、技術職の人たちや、小売店で働いている人など、普通の人たちだった。僕の友達の兄や姉などでレコードを買っている人たちは、とくに学歴が高いとか、頭が良いというわけでもない、ただの普通の人たちだった。それが最高だと思った。万人のための音楽だと思ったから。
 天才じゃなくても最高のダンス・ミュージックを作れるんだ。ダンス・ミュージックの名曲を作ってきた人たちというのは、必ずしも……説明するのが難しいんだけど、とにかくダンス・ミュージックのそういうところが僕はすごく好きなんだ。自分でもできそうな感じがする。僕だっていまだに何の楽器も弾けないし、音調についてもよく分かっていない。でもダンス・ミュージックという文脈においてなら理解できるんだ。それがパンクに通じていて、僕はそれと同じ理由でパンクも好きだ。天才である必要もないし、楽器の名手である必要もない。クリエイティヴなことができれば、面白いものが作れるということ。

では、次にあなたの、その音楽の作り方についてお聞きします。あなたは最初、ガレージやダブステップにのめり込んで、数年後にはデビュー・シングル「Hyph Mngo」をリリースし、これがものすごい評判となった。しかしあなたはその後、「Ellipsis」やBoddikaとの一連の共作、〈Doldrums〉からリリースされた「BB」などの作品で、ハウスやテクノとの混合を試みていきますよね。音楽を作る上であなたはUKらしさというものをつねに意識していると思いますが、それはたとえば、いかにジャングルやガラージといったUK的な要素をハウスやテクノのフォーマットに落とし込むのかということなのかなと思ったのですが、いかがでしょうか?

JO:その通りだと思う。僕が作るものには、自分が受けた影響や自分が聴いている音楽のUK的なエネルギーを加えたいとつねに思っている。僕がもっとも影響を受けているのはUKの音楽だ。いまでもUKでリリースされている新しい音楽や、自分の周りで起こっている活動などが自分の音楽の影響になっている。僕が最初にレコードをリリースしたとき、僕や周りのリスナーは、UKの音楽を聴いて育った人たちで、そこからヨーロッパの音楽や、僕の音楽よりももう少し抽象的な音楽に目を向けていた人たちが多かったと思う。それを前提として僕は自分なりのアイデアを作り上げていった。
 僕もベルリンのシーンに興味があったし、ドイツのテクノも聴いていた。でも、そこにUK的な要素を加えたいという思いがつねにあった。おかしなことに、少し前までUKの音楽はあまり真面目に捉えられていなかった。僕たちは20代の頃からヨーロッパやアメリカのクラブでDJをしていたけど、当時、とくにヨーロッパではUKのダンス・ミュージックは歓迎されていなかった。もしくは、陳腐なくらいUKっぽいダンス・ミュージックならオッケーだった。だから僕たちは苦労したよ。僕たちがDJするときは、すごくUKらしさを出すか、UKらしくないふりをするかの二択しかなかった。

とはいえ、ダンス・ミュージックにおいて自分のサウンドをクリエイトすることはとても難しいと思います。

JO:たしかに自分のサウンドをクリエイトするのは難しい。ダンス・ミュージックの良いところは、機能性がベースになって作られているところだ。クラブ環境という設定で聴くのが前提だから機能性が重要視される。だからあまり仰々しくなったり派手なダンス・ミュージックは作れない。コードが変化するダンストラックなんてあまり聴いたことないだろう(笑)? 機能重視というのはそういうことで、僕はダンス・ミュージックのそういう所が好きなんだ。でもそういう領域において自分のアイデンティティを作っていくのは難しいことだと思う。だからミックステープのような作品を作る方が適していると思ったんだ。僕のミックステープから1曲だけを聴いても、あまりアイデンティティが感じられないかもしれないけれど、ミックステープを通しで聴くと僕のアイデンティティが浮上してくるかもしれないだろ? 

たしかに。ちなみに、とくに尊敬しているテクノ、ハウスのプロデューサーは誰ですか?

JO:リカルド・ヴィラロボスは昔から好きだね。彼のレコードはずっと集めてきたよ。リカルドの良いところは彼の音楽を聴いているとその世界に引き込まれるし、それに僕がやっている音楽とはまったく違うから面白いと思うんだ。あとは何だろうな……最近はあまりエレクトロニック音楽を聴かないんだよ。以前は膨大な量のエレクロトニック・ミュージックを聴いていたけれど、最近はそのペースも落ちてきて、あまり聴かないんだよね。ポルトガルのリズボンにある〈プリンシペ〉というレーベルの若手プロデューサーの音楽を集めていて、すごく刺激を受けるね。
 ただ、従来のハウスやテクノやエレクトロニック・ミュージックには、最近あまりイノベーションが起こっていない気がする。固定概念がなくて、他人の意見を気にせずにいろいろな音楽を聴いている若い子たちのほうが面白いものを作っていると思う。彼らから直接的な影響はないにしても、彼らの意欲やエネルギーを感じると、僕もワクワクしてくる。UKのグライムやジャングルも同じ理由で好きだ。そのシーンにあったエネルギー。そのシーンにいた人たちは決して音楽の専門家でも熟練のミュージシャンでもなかったけれど、素晴らしい音楽を作った。素直な音楽なんだ。考え過ぎたり、自分を疑うことを一切しないで、自分が良いと思ったものを純粋に共有する。そういう音楽が僕に刺激を与えてくれる。

ちなみにジョイ・オービソンという名義は、ロイ・オービソンとジョイ・ディヴィジョンの合体ということだそうですが、なんでもこのふたつになったんですか? 

JO:そういう風に考えたことはなかったね。

その情報は違ってましたか?

JO:DJをやりはじめたとき、フライヤーに載せる用の名前が必要だと友だちに言われた。その当時、バンド名がある人物の名前だったり、俳優の名前だったりすることが流行っていた。他にもいくつか名義があったんだけど、この名前だけ残ったんだよ。何でこの名前にしたんだっけなぁ……でも当時、僕がいたシーンでこういう名前のアクトはいなかったから、あえてこういう名前にしたというのは覚えているよ。ダンス・ミュージックの名義ではバカっぽい感じのものもあったけれど、ダブステップはシリアスな感じの名義が多かった。僕はシリアスではなかったし、お客さんに僕のことをシリアスに捉えてもらいたくなかった。いまでもそう思うところはあるよ。僕は、ジョイ・オービソンと呼ばれるのが気に入っているわけじゃないけれど、この名前を見ると、少しふざけているというか、お茶目な感じがするから、つねにそういう軽い感じをリマインドしてくれる名義なんだ。
 僕は他のミュージシャンやアーティストとスタジオでセッションをしたりするんだけど、スタジオでみんな僕のことをジョイと呼ぶんだ。それが僕の名前だと思ってるんだろうね。若い子なんかはきっとロイ・オービソンも知らないと思うし。そういうのって面白いと思う。

では、この名前には、まったく異なるモノをミックスしたいというあなたのコンセプトも含まれているのでしょうか? ロイ・オービソンとジョイ・ディヴィジョンというミュージシャンやバンドをイメージしていなかったとおっしゃっていましたが、その辺はいかがでしょうか?

JO:イメージしていなかったけど、昔からダンス・ミュージックとはまったく関係無いアーティストや人物を引き合いに出して、自分のことを説明してきたというのは覚えている。僕のWikipediaのページにも自分が受けた影響が挙げられているけれど、それは僕が当時挙げていた影響なんだよ。少し抽象的にしたかったんだと思う。ダンス・ミュージックやエレクトロニック・ミュージックにはシリアスな一面があって、殺風景でテクニカルなベッドルーム・プロデューサーみたいなイメージがある。僕はそうなりたくなかったし、僕はテクニカルでもない。だからバンドなんかを影響として挙げていたんだよ。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインなんかも挙げていたんじゃないかな。僕の音楽はまったくマイ・ブラッディ・ヴァレンタインとは似ていないけどね(笑)! 自分の音楽に近いかもしれない音楽を教えたらいろいろとばれちゃうだろ(笑)? ダンス・ミュージックという枠組みから出て、まったく違うものを引き合いに出して話せるということの方が面白いと思うね。

その通りで、あなたの初期の影響に、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインが挙げられています。また、ビーチ・ボーイズ、ヨーゼフK、GGアレンなのどのロック・バンド/アーティストもあると聞きますが、いまでもダンス・ミュージック以外からの影響はありますか?

JO:もちろんあるよ。僕は家でエレクトロニック・ミュージックをあまり聴かない。DJをしているとDJをしている週末はずっとエレクトロニック・ミュージックを聴いているから、家では聴かなくなるんだ。僕の叔父も家ではドラムンベースを聴いていなかった。なぜ家で聴かないのかと訊いたら、週末はそれをずっと聴いているからと言っていた。いまの僕もそれと同じで、少しは聴くけれど、積極的には聴かない。たとえば僕はスロウダイヴというバンドが大好きなんだけど、僕の音楽に彼らの影響は少し出ている気がする。今後の作品にもそういう影響が少しずつ出ていくと思うけれど、僕はあまりジョイ・オービソンというプロジェクトを困惑させたくないんだ。ジョイ・オービソンのパンク・アルバムなんて誰も聴きたくないだろう(笑)? だからジョイ・オービソンはこういうサウンドというのがある程度明確にあったほうがいいと思う。僕は他のアーティストの音楽のプロダクションもやっていて、自分の名前をクレジットに入れたり入れなかったりする。プロダクションをやるときは、自分のアーティスト名義とは関係なしに、さまざまなスタイルやサウンドで実験できるから楽しいよ。でも、GGアレンは挑発的な回答として挙げただけかもしれない。いまなら影響として挙げないだろうな(笑)。

アルバムは2019年のEP「Slipping」の進化型ということですが、「Still Slipping」とはどういうニュアンスなのでしょうか? 最後の曲も“Born Slipping”なわけで、この「Slipping」とはどんなニュアンスなのか教えて下さい。

JO:僕はなぜか「Falling」や「Slipping」という表現に惹かれるというか、「Hyph Mngo」のB面に「Wet Look」という曲があって、そこには「I’m falling and I can’t get up」という声が入っている。また「81b」という曲の内容も「falling(落ちる、転ぶ)」ことについての声が入っている。そして『Slipping』のシリーズ…。「Slipping」の意味としては、「You're caught slipping」という表現があってそれは、自分のいるべきではないところにいるところを見つかってしまうという意味があるんだ。そして僕の解釈としては、ずれている(場違い)というイメージもある。僕は、自分のやっている音楽活動は、適当に上手くやって人を納得させるという、ずるいところがあると思っている。僕は熟練したミュージシャンでもないし、素晴らしいアーティストというわけでもないからね。でもやれることはやってる。「Slipping」は自分の活動のそういう性質を捉えている表現だと思うんだ。
 僕には、最初からずれている(born slipping)という感覚があるんだ。ガールフレンドからも「You’re punching above your weight(自分の実力ではかなわない相手と張り合っているわね)」と言われているんだけど、そういう態度が好きなんだよ。それは父親の影響があるかもしれない。父親は貧しい育ちだったけれど、エンジニアとしての仕事を熱心にやって、貧しい生活から抜け出した。そんな父親を最高だと思う。だから僕も実力以上のことをしようとするという姿勢が大好きなんだ。あまりインタヴューでこういうことは話さない方がいいと思うんだけど、僕はミュージシャンとしての資格があるわけではないからね。だから「Slipping」は、自分のベストを尽くすという姿勢を素直に表している表現だと思う。

ダンス・ミュージックやエレクトロニック・ミュージックにはシリアスな一面があって、殺風景でテクニカルなベッドルーム・プロデューサーみたいなイメージがある。僕はそうはなりたくはなかった。

UKの新進気鋭のプロデューサーを6人ほどフィーチャーしていますが、これにはどんな意図があったのでしょう? また、あなたが他の誰かと共作することを好むのは何故でしょう?

JO:コラボレーションするのが好きなんだよ。音楽の最高なことのひとつは、自分のまわりや、自分の街や、自分のシーンで起きていることと繋がることができることだと思う。自分だけの世界にこもって1人で作業していたら、外の世界と食い違いが生じるかもしれないし、個人的にも面白いと思わない。今回のミックステープにフィーチャーされているプロデューサーのほとんどはロンドンにいる僕の友だちで、僕たちはよく一緒に仕事をする。彼らとはたくさんの音楽を一緒に作ってきたんだけど、今回はそのなかでもミックステープに合うものを収録した。だから他にもたくさん彼らと作ってきた音楽があるんだよ。

日本のファッション・ブランドのC.E.からはカセットテープも出していますし、彼らのパーティでDJもしていますが、この先もC.E.となにかやる予定はありますか? 

JO:もちろんやりたいと思っているよ! C.E.のトビーとは昔からの友だちで、今回のミックステープのグッズとしてトビーが企画したC.E.とのコラボアイテムを出す予定なんだ。パーティもまた一緒にやると思うし、いろいろなコラボレーションをやっていきたいと思う。僕が日本でやったパーティは全部、C.E.絡みなんだ。本当に感謝しているよ。すごく良かったからね。C.E.のパーティは音楽だけじゃない。カルチャーなどが包括された集まりになっているからこそ、最高だと思う。

UKはとりあえクラブも通常営業に戻っていますよね。あなた自身の活動もCovid-19以前に戻っていけそうですか?

JO:どうだろうな。来週末にギグがあるから、1年以上ぶりのギグになるけれど、まだ先のことはわからない。しばらく様子を見ることにするよ。奇妙な感じはするけどね。僕は今後についても注意深く行動したいと思っている。僕はイギリスの政府を信用していないから、政府のいうことを鵜呑みにしないで、自分たちで考えて正しい決断をしないといけないと思う。早く通常の生活に戻って欲しいとは思うけれど、正しいタイミングでそうなって欲しい。急かすことではないと思うんだ。ダンス・ミュージックやダンス・カルチャーはそもそもみんなが自分自身を表現できる場であり、みんなが解放されたり、息抜きができる特別なところなんだ。その場所が、リスクの可能性のある場所になってしまうとなると本来の意味をなさない。本末転倒だよ。だから今後どうなるかはまだわからないね。もちろん通常の生活に戻って欲しいと思っているけどね。

ralph - ele-king

 初めて “斜に構える” を聴いたとき、素朴にかっこいいなと思った。「交わる気はねえ」「馴れ合いなら首を吊ればOK」と、シーン外部の視座を持った低い独特の声が、EGL & Double Clapperz によるコールドなダブステップ・サウンドと調和している。既存の日本のラップ/ヒップホップに宣戦布告しているようにも聞こえた。この組み合わせなら、ふだんラップばかりを聴いているわけではない自分でも入っていける──ニュース記事を書いた当時そう昂奮したのを覚えている。紙エレ最新号で彼らをフィーチャーした動機も、そこにあった。
 ひとつ裏話を明かせば、表紙をだれにするかしぼりこむ過程で、じつは ralph も候補のひとりにあがっていたのだ(ものすごく悩み、迷い、議論を重ねた結果、これまでのキャリアに敬意を表し ISSUGI を選んだが)。ちなみに Double Clapperz についても補足しておくと、彼らは Tohji がデビューするきっかけになったアーティストでもあった。
 ともあれ2017年の “斜に構える” 以降、ralph は少しずつ名をあげていくことになる。2018年に DBridge、Double Clapperz、Kabuki とのコラボ曲 “Hero” に参加、2019年には初のEP「REASON」を発表し、昨年2月の “Selfish” でより広汎に注目を集めることに成功。つづけて同曲を収めるセカンドEP「BLACK BANDANA」を送り出し、オーディション番組「ラップスタア誕生!」で圧倒的な存在感を誇示、みごと優勝を果たした(同年末には Leon Fanourakis & YamieZimmer とのコラボ曲も投下)。そうして去る6月末にリリースされたのが、彼にとって初のまとまった作品となるこの『24oz』だ。

 前半はこれまでの ralph のイメージを踏襲している。本人が「ハードなモードをチョイス」(“Zone”)と宣言しているとおり、「圧倒的闘争心」「かっさらうこの土地を」(“Roll Up”)、「まだ足りねえ work in progress」(“WIP”)と、リリックは戦闘的で野心に燃えている。トラックや声質に惑わされて見落としてしまいがちだが、ralph のラップの魅力はストレートに日本語の表現を追求するところにある。トラップやマンブル・ラップのスタイルを採用するラッパーが多い新世代のなかにあって、まさにその点こそが ralph を特異な存在たらしめているのだ。ゆえに比較的ことばも聴きとりやすく、ぼくのようにすぐ疲れてしまう中年のおっさんにはありがたい(高速なのでそれでも大変だけど)。
 トラックも進化している。エスキー・クリックとストリングスを活用した “Zone”、太いベースのうえで弦をより壮大に響かせる “Roll Up”、ミニマルな弦の反復を背後に敷いた “WIP”(SEEDA が客演)と、これまでのグライム~UKドリルの路線を引き継ぎつつ、新たな試みがなされている。紙エレ最新号のインタヴューで UKD は、2019年の “No Flex Man” で初めてサンプリングを導入したことを明かしているが、その手法は後の “Selfish” や「BLACK BANDANA」の “FACE” における印象的な声使いに結実。今回のストリングス使いは、それにつづく新境地と言えよう。

 より興味深いのは後半だ。スキットを経て本作はがらりと様相を変える。「いつものたまり場 ここも居場所ではないなと思うよ」「負けた数だけはだれにも負けねえ」(“RUDEBOY NEEDS”)と、リリックは内省的な側面が目立つようになっていく。クライマックスは EGL 手がける “Villains” だろう(愛知は知立の C.O.S.A. が客演)。ラップはハード・モードを解除し、感情を噛みしめ、しぼり出すようなスタイルへと変化。「善を盾にとったヒーローが俺たちの粗を探す/この音止めたきゃ殺せ いまここで」と、みずからをヴィランに見立て叙情的に単語を紡いでいく彼の姿はかつて見られなかったものだ。端的に、エモい。
 ことばを噛みしめるようなこの表現法からぼくは、『LIFE STORY』以降の BOSS の発声を思い浮かべた。THA BLUE HERB について ralph は「聴きすぎて身に染みついてる」と上述のインタヴューで語っているが、今回の表現法は彼が「ラップスタア誕生!」の決勝で見せたパフォーマンスと似ている。あのとき ralph は、「未来は俺等の手の中」というフレーズで自身の出番を締めくくったのだった。彼のなかで BOSS の存在はそうとう大きいにちがいない。
 そんなラップにあわせ、トラックのほうも変化している。声ネタを活かした “Window Shopping” や、おなじく声ネタと感傷的なピアノが主導権を握る “RUDEBOY NENE” は、従来の ralph にはなかったサウンドだ。これらの曲は、プロデューサーたる Double Clapperz のルーツの一端が、グライムやUKドリルといったストリート・ミュージックにだけでなく、tofubeats に代表される10年代前半の、ネット発カルチャーにも存していることを確認させてくれる。あるいは〈TREKKIE TRAX〉の Carpainter が手がけた2ステップの “D.N.R”(若手シンガーの AJAH が客演)。同曲はダンス・カルチャーとの接点を確保しており、ぼくのようにヒップホップにどっぷりつかっているわけではない人間のこころを確実につかむ1曲に仕上がっている。

 独特の声質によるストレートな日本語のラップ表現と、グライムやUKドリルから影響を受けたトラックとのマッチング。そのねじれこそ ralph の音楽が持つ最大の魅力であり武器だった。だが本作後半では、ラップもトラックもさらに表現の幅を広げている。
 紙エレのインタヴューで ralph は「リスナーの耳を成長させ」たいと語っていた。それはおもに日本ラップ/ヒップホップ・ファンを想定した発言なのだろうが、多くの趣向を凝らしたこの『24oz』は、ぼくのようにふだんラップをそれほど聴かないリスナー、来るべき新たな訪問者たちにもドアを開放してくれている。閉じないラップ・ミュージックの好例だ。

DMBQ - ele-king

 3年前、13年ぶりのアルバム『KEEENLY』を発表したDMBQ。コロナ禍によりライヴを休止していた彼らが、ふたたび爆音を打ち鳴らす。まずは9月26日@札幌、10月8日@名古屋、10月14日@広島の3公演。後二者では「DMBQと○○」という形式で、DMBQと交流のあるバンドとの2マンが予定されている(おとぎ話とLOSTAGE)。12月には渋谷、大阪での開催も視野に入れている模様。楽しみにしていよう。
(ちなみに10~11月にはイギリスやEUでの公演も控えているとのことで、海の向こうとこの国のコロナ状況の違いを痛感させられます。)

コロナ禍によりしばらくライブ活動を休止していたDMBQが、いよいよライブ活動を再開する。

復帰第一弾に選んだのは、地元札幌Bessie Hall。久しぶりの札幌でのライブで休止からの再スタートを切る決意だ。続いて名古屋、広島ではクラブクアトロとタッグを組んだ新企画「DMBQと○○」を開催。毎回DMBQと交流のある1アーティストを招聘した2マン形式でのライブを開催してゆくシリーズで、今回の名古屋ではおとぎ話と、広島ではLOSTAGEとの競演を果たす。12月には同シリーズで渋谷、大阪でも開催予定だ。いずれの公演も感染症対策に則り客席数を制限して開催される。チケットはチケットぴあ、ローソンチケット等で8月14日より発売予定。

また、10月~11月にかけてUK, EUへのツアー、フェス参加も予定。日々変わりつつあるコロナの状況やワクチン、出国・帰国の際の自主隔離への対応次第という所もあり詳細はまだ決まりきっていないとのことだが、海外活動の多いDMBQらしく、コロナ共生へとシフトを切りつつあるヨーロッパの状況をいち早く体感してくる予定とのこと。

公演情報:

DMBQ 札幌公演

9月26日(日) 札幌BESSIE HALL
開場16:00 開演16:30 チケット¥3500+1D
お問合せ:ベッシーホール 011-221-6076 Wess 011-611-1000

DMBQ Presents
「DMBQと おとぎ話」


10月8日(金) 名古屋クラブクアトロ
開場18:15 開演19:00 チケット¥4000+1D
お問合せ:名古屋クラブクアトロ 053-264-8211

DMBQ Presents
「DMBQと LOSTAGE」


10月14日(木) 広島クラブクアトロ
開場18:15 開演19:00 チケット¥4000+1D
お問合せ:広島クラブクアトロ 082-542-2280

Black Country, New Road - ele-king

「references, references, references(参照、参照、参照)」──“Science Fair” でヴォーカルのアイザック・ウッドが物憂げにつぶやく。強烈なギター・ノイズで幕を開け、管楽器が混乱したようにうなる、アルバムでもとりわけ不穏な響きのナンバーだ。歌詞に登場する主人公はほとんど錯乱しているかのように、現代のライフスタイルを語っていく。とくに笑えるのは、「だけど僕はまだ母親と一緒に暮らしている/影響を受けるマイクロインフルエンサーを次々と変えながら」というくだり。デジタル・ネイティヴ世代による風刺の効いた言葉だ。すべての知識や経験はインターネット上でフラットな情報となり、彼らはそれらに飲みこまれつつも巧みに「参照」することで何とか生きているのかもしれない。「僕はこの街を愛しているんだ/自分で好みを選ぶという重みを背負いながらも/なんという時代に生きているんだろう」。ほんと、なんという時代なんだろうね……と世代が違う自分も勝手に共感してしまうが、しかし、この曲は開き直ったようなこんな言葉で幕を閉じる。「失うものなど何もない/ああ、僕は逃れるために生まれた/向こうでブラック・カントリーが待っている」。「I was born to run」……? ブルース・スプリングスティーン “Born to Run(明日なき暴走)” の引用じゃないか! 頭のなかでただちに、「Baby, we’re born to run」と、あの輝かしいメロディが流れる。
「歌詞にスプリングスティーンの引用があるよ」とエレキング編集長に教えられ、あらためて歌詞を読みながらブラック・カントリー、ニュー・ロード(以下、BC,NR)による大量の参照に彩られたデビュー・アルバムを聴いていると、最終曲 “Opus” でもたしかに “Thunder Road(涙のサンダーロード)” の引用に出くわす。BC,NR はもちろん音楽的にも歌詞的にも膨大な固有名詞と接続されるバンドなので、そのなかのひとつにスプリングスティーンがあるのも驚くべきことではないのかもしれない。だけど、自分は「ああ、スプリングスティーン “も” 好きなんだね」で済ますことができない。なぜならば、よりによって “明日なき暴走” と “涙のサンダーロード” とは……ストレートに熱いセレクトすぎやしないか。若者たちが苦境にめげずに、未来に立ち向かおうとするロック・チューンだ。つい、そこに BC,NR の若々しい情熱を嗅ぎ取りたくなってしまう。

 現代のUKインディ・ロック・シーンから登場した7人組による『For The First Time』における音楽的参照元を挙げればキリがないが、あえていくつかポイントを絞るとすれば、スリント辺りを連想させるポスト・ハードコア、NYのノーウェイヴ、英国ポスト・パンク、スティーヴ・ライヒのミニマル・ミュージック、ポスト・クラシカル、そしてユダヤの伝統音楽クレズマーといったところだろうか。すでに多くの論者が指摘していることだ。それらは様々にぶつかり合い、混ぜられ、盟友ブラック・ミディに負けじとカオティックなうねりを生み出していく。その様は率直に言ってスリリングだ。
 BC,NR の音楽的な知識は膨大で、演奏力も抜群だが、いっぽうで、だからこそアルバムではフォーカスがあまり定まっていないのではないか……というレヴューもある。たしかに、よくも悪くも、過去の多くのアーカイヴが生み出した BC,NR はストリーミング・サーヴィスが一般化した時代ならではのバンドなのだろう。たとえば自分も聴いたことのない過去の名盤の名前に出くわしたとき、つい検索窓にコピー&ペーストしてどんなものか「確認」してしまうことが増えたが、そこに後ろめたさも感じる。それは本当に過去に出会っているということなのか? こんなに簡単に「名盤」にアクセスできてしまうことは、リスナーに過去への敬意を忘れさせるのではないか? 『For The First Time』のアートワークがネット上のフリー素材の画像を使っているというのは、現代文化への批評に他ならない。つまり、過去の優れた音楽はもはやフリー素材であり、自分たちはその時代の申し子なのだと。
 けれども、まさに BC,NR が言うように、大量のアーカイヴから「自分の好みを選ぶことの重荷」に本作は向き合っている。どれだけ多くのものにアクセスできたとしても、それらを巧みに混ぜ合わせるのだとしても、最終的にはそこから選択しなければならない。「すべての知識や経験はインターネット上でフラットな情報となり」……と冒頭で自分は書いたが、それは怠惰な認識なのだと BC,NR を聴くと気づかされる。たとえば BC,NR におけるほかのバンドと一線を画す個性であるクレズマーの要素は、サックスのルイス・エヴァンスとヴァイオリンのジョージア・エラリーが持つジャズとクラシックのバックグラウンドに由来しているとのことで、それは大所帯のバンドだからこそ実現したものだ。結局のところ、個人がどれだけ多くのものを知っていたとしても限界は必ずあって、他者と出会って起きる化学反応がなければ新しいものは生まれない。まさにクレズマーの要素が前面に出る “Instrumental” と “Opus” における祝祭的なフィーリングは、BC,NR のハイブリッド・サウンドがメンバーそれぞれの個性の集結によるものであることを讃えているように感じられる。BC,NR のエネルギッシュな音楽は、膨大な断片のなかからそれでも自分の好みを選び抜いた若者たちが集まり、そこから何か新しくて面白いものを生み出そうという……そんな自分たちのあり方を祝福するものなのだ。

 だから、スプリングスティーンの参照がたんなる情報の処理だと自分は思わない。それもやはり、彼らが情熱とともに選び抜いたものだ。「僕の新しい自転車の後ろにきみを乗せて/今夜、サンダーロードを後輪走行で駆け抜けていく/これほど勇敢な気持ちははじめてだ/いつになく寛大な気分の日曜日」──“Opus” によるどこか黙示録的で、それでも前向きなアルバムの終わり方は、BC,NR が持つ「いま、このとき」を肯定する志をよく表している。スプリングスティーンは “涙のサンダーロード” で「遅れたけど、走れば間に合うさ」と歌っていた。BC,NR はまさに「遅れてきた者たち」として、“涙のサンダーロード” の精神を引き継ぎながら、しかしスプリングスティーンのロックン・ソウルとはまったく異なる音を鳴らそうとする。サンダーロードを経由して、いま、彼らは新しい道(New Road)を颯爽と走っている。

Tyler, the Creator - ele-king

 いま現在もしジョイ・ディヴィジョンという名前のバンドがデビューしたら、どんなことになるのだろうか。1979年に彼らが登場したとき、ほとんどの人はこのバンドがナチのシンパだとは思わなかった。スージー・スーは鉤十字の腕章をしたために殴打されもしたが、メディアもファンも彼女をファシストだとは思いもしなかった。が、21世紀のいま同じことをしたらそうはいかないだろう。SNSを使ってコールアウトされるばかりか、ヘタしたらそれは拡散の娯楽(ヴァイラル・エンタテインメント)と化し、公的な屈辱(パブリック・シェイム)を味わい、そしてキャンセルされ、一生を台なしにされるかもしれない。時代は変わった。21世紀の現代ではチャールズ・ブコウスキーも昔のようには読めないのだろう。

 10年前、タイラー・ザ・クリエイターの『ゴブリン』を手放しに賞賛してしまったことをぼくは後悔した。ラップ・ミュージックをサウンドだけで評価することのリスクは間違いなくある。1999年にエミネムが“My Name Is”において性的暴力をも含んだ言葉をラップしたときも非難は多々あったが、白人下層階級出身のラッパーへの理解も同じようにあった。しかし、2011年の『ゴブリン』は、エミネムでも2ライヴ・クルーでもカンニバル・コープスでもアナル・カントでも受けなかったようなインパクトで、シリアスな批判を食らっている。そのひとつにあるのが、1枚のアルバム中に213回もゲイを罵倒するのは想像力の欠如だと辛辣な批判を書いたロクサーヌ・ゲイの著書『バッド・フェミニスト』(野中モモ訳)だった。
 海外のポップ・カルチャーに親しんでいる人にはお馴染みの話かもしれないが、この10年欧米では人種、ジェンダー、障害者への人権意識がいっきに高まっている。安倍前首相はこうした先進国の時流とは逆行した政治/教育に終始したわけだが、タイラーが歌詞に問題ありとメイ前英首相から入国をキャンセルさせられた背景には、公序良俗への脅威というよりは、こうした文化状況の変化が大きかったのだと思う。タイラーは、フェミニスト団体からの抗議によってオーストラリア公演もキャンセルされている。
 自分で蒔いた種とはいえ、タイラーはこうした逆風のなかでコンセプチャルだった『フラワー・ボーイ』以降、その作品をもって世間を見返してきた。PC を前に萎縮している様子もないし、ある意味中指を引っ込めてもいないだろう。ゆえにいまでもヘイターは少なくないと思われる。しかし、『バスタード』や『ゴブリン』の頃とは違った自分を見せているし、眩いばかりのブラック・ポップ・ミュージックが押し寄せる前作『IGOR』が各処において賞賛の嵐を起こしたことは記憶に新しい。

 言うまでもなくぼくはSupremeを着てスケートする20歳ではないし、日がな一日部屋に籠もっているオタクでもないが、タイラーが“Deathcamp”という昔の曲中で、実存的な苦闘に満ちた『イルマティック』よりも遊び心ある『In Search Of...』を持ち上げたことを興味深く思っている。N*E*R*Dが登場した時代はまだ黒人のキッズがスケート文化とリンクすることはあまりなかったように思うし、タイラーもまた人種や文化のステロタイプを打破するアーティストのひとりだと思える。彼がGGアレンを意識したかどうかまでは知らないけれど、オッド・フューチャーの初期段階においては、黒いソウルよりも白いパンクからのインスピレーションが際立っていた。そういう意味では彼もまたアイデンティティ・ポリティクスの使徒であり、文化闘争の当事者でもある。CANのもっとも有名な曲“スプーン”の、あまり有名ではないソニック・ユースによるリミックスをループさせてラップするほどだから、時代に逆行した自民党と違って、彼のクリエイティヴィティは時流に乗ったものだと言えるだろう。なにせ水曜日のカンパネラをLAに呼ぶくらいのセンスの持ち主だったりもする。

 で、ここまで書いておいてこれを言うのもナンだが、ぼくにはタイラーの言葉の際どさを楽しむほどの英語力はないので、結局いまもサウンドとしての面白さに重点を置いている(『ウルフ』、『フラワー・ボーイ』と『チェリー・ボム』は対訳付きの日本盤CDがあります)。BLM への彼のリアクションは知りたいところではあるが、「密度の高い万華鏡のようなアルバム」と中道左派を代表する『ガーディアン』が大絶賛の本作『Call Me If You Get Lost』にかつてのように火種になる言葉はないと思われるし、サウンドとしては前作『IGOR』の続編的な内容と言える。要するに、エッジが利いているスタイリッシュでヴァラエティ豊かなブラック・ポップ・ミュージックのアルバム。しかも、それをやるのはいまダサいとでも言わんばかりに、トラップもなければオートチューンもない。
 たとえばアルバムにある“Sweet / I Thought You Wanted To Dance”は、80年代半ばのスクリッティ・ポリッティを思わせるニューウェイヴ調のポップ・レゲエという、『ゴブリン』からは想像もつかない透明感のあるメロウな曲で、リル・ウェインが参加した“Hot Wind Blows”における70年代スピリチュアル・ジャズめいたフルートのサンプリングはメランコリックだがピースフルでさえある。90年代のポップR&Bスタイルの“Wusyaname”はいささかクリシェに思えるが、1曲目のDJドラマとの共作“Sir Baudelaire”におけるジャジーな響きと激しいラップとのコントラストには引きがあり、ストイックでミニマルなブレイクビートが際立つ“Massa”や“Lumberjack”もクールで、ファレル・ウィリアムスが参加した“Juggernaut”もリズムが面白い。 “Wilshire”もビートが出色で、8分もあるというのにまったく飽きさせない。前作の“Earfquake”のようなメロディアスなポップ・ソングよりも、ダンサブルなヒップホップ・ビートが通底する今作のほうがぼくは好みかな。
 というわけで『Call Me If You Get Lost』で泣きはしないが、充分に楽しませてもらっている。派手なサンプリングが印象的な最後の曲“Safari”では、彼ら自身が無茶苦茶楽しんでいることがよくわかる。そういえば“Manifesto”なる曲では「キャンセルされる前に俺がキャンセルした」などという強気なラインがあるようだが、もしタイラー・ザ・クリエイターが誇らしげに見えたのなら、時代に体当たりしている彼のもうひとつの側面に、また別の感情が湧き上がってきそうでもある。ジャケットにデザインされた身分証明書の名前の欄には、19世紀後半のパリでその作品の性描写や悪魔主義を告訴(キャンセル)された詩人の名前、タイラー・ボードレールと記されている。

owls (GREEN ASSASSIN DOLLAR & rkemishi) - ele-king

 GREEN ASSASSIN DOLLAR と言えば、舐達麻などのプロデュースで近年大きな注目を集めているビートメイカーだ。その GAD とMCの rkemishi (エミシ)から成るユニット、owls が昨年発表したセカンド・アルバム『24K Purple Mist』が完全限定プレスにてアナログでリリースされる。
 さらに、同作のアートワークを手がけたえすうとのコラボ企画として、限定ボックスセット『24K Purple Mist - ESSU Edition』も発売される。こちらは完全手づくりのすごい内容になっているようなので、チェックを。詳細は下記より。

owlsのセカンド・アルバム『24K Purple Mist』が完全限定プレスでアナログ化! さらにジャケットを描いたライター、"えすう" とのコラボによるスペシャルなボックスセット『24K Purple Mist - ESSU Edition』が完全限定20セットで発売! 8/6(金)18時より予約受付開始!

 舐達麻などの楽曲プロデュースでシーン内外・多方面から大きな注目を集めているGREEN ASSASSIN
DOLLARと東京ストリートで暗躍する要注意人物なMC、rkemishi(エミシ)による世間を騒がす噂のユニット、owls(オウルズ)。STICKY(SCARS)やDOGMA、T2K a.k.a. Mr. Tee、Gottz(KANDYTOWN)とそうそうたる面々が参加し、大きな話題となった2020年リリースのセカンド・アルバム『24K Purple Mist』が完全限定プレスで待望のアナログ・リリース!
 今回のアナログ盤には川崎のレジェンダリーなラッパーであるA-THUG(SCARS)、SEEDA作品などでも知られる人気シンガーのEMI MARIAを迎え、GREEN ASSASSIN DOLLARが新たにトラックも作り直し、アルバム・リリース後にデジタル・シングルとしてリリースされた話題曲 "blessin remix" もボーナストラックとして収録!
 さらにジャケットを描いたライター、"えすう" とのコラボレーション<owls x えすう>としてのボックスセット『24K Purple Mist - ESSU Edition』が完全限定20セットで発売! そのジャケットデザインをえすう自身がハンドペイント&シルクスクリーンプリントしたスペシャルなLP、ジャケットデザインをパックプリントして "えすう" がシルクスクリーンなどを加えたオリジナルTシャツ、"えすう" が手掛けたowlsのジン、レンチキュラー(3D)ポストカード、ステッカーをセットにしてボックスにコンパイル。さらにそのボックス自体も "えすう" のデザインでパッケージングしたオンリーワンな逸品で、こちらはP-VINE OFFICIAL SHOPでのみ20セット限定で予約を受け付けております。(※ボックスセットの予約・購入はお一人様2セットまでとなります)

*owls x えすう "24K Purple Mist - ESSU Edition" 予約ページ / ※8/6(金)18時より受付開始
https://anywherestore.p-vine.jp/products/owls-24klpdx

★ボックスセットに関する注意事項
※ひとつひとつが手作りになりますので色味やデザインなどが商品ごとに異なり、作品の性質上Tシャツやジャケット、ボックスなどにインクなどが付着している可能性もあります。あらかじめご了承ください。
※商品発送は8/25(水)を予定していますが、新型コロナウィルスやオリンピック・パラリンピック開催による状況などによっては発送が遅れる可能性がございます。あらかじめご了承ください。
※受注数が販売予定数に到達した時点で受注は終了となります。
※オーダー後のキャンセル・変更は不可となります。
※配送の日付指定・時間指定は出来ません。
※TシャツのボディはGILDAN T2000 6oz ウルトラコットンヘビーウェイトになります。

[LP情報]
アーティスト:owls
タイトル:24K Purple Mist
レーベル:P-VINE, Inc.
発売日:2021年8月25日(水)
仕様:LP
品番:PLP-7145
定価:3,520円(税抜3,200円)
Stream/Download/Purchase:
https://smarturl.it/owls_24KPurpleMist

[ボックスセット情報]
アーティスト:owls x えすう
タイトル:24K Purple Mist - ESSU Edition
レーベル:P-VINE, Inc.
発売日:2021年8月25日(水)
仕様:シルクスクリーンジャケットLP+オリジナルTシャツ+ジン+レンチキュラーポストカード+ステッカー〈特殊ボックス仕様〉
定価:22,000円(税抜20,000円)

LP:トラックリスト ※ボックスセットのLPも同内容になります。
SIDE A
1. owl side theory
2. killah
3. greedy feat. Gottz
4. back yard
5. 4:20 feat. DOGMA
6. mood at shibuya
SIDE B
1. b2h
2. smoke sleep (co-prod. Aru-2)
3. blessin
4. fonk you
5. 4:20 remix feat. T2K a.k.a. Mr.Tee & STICKY
6. blessin remix feat. A-THUG & EMI MARIA (Bonus Track)

Escape Velocity - ele-king

 3ヶ月に1冊というペースで順調に公開しているジェフ・ミルズ編集の『Escape Velocity』の最新号が公開された。ジョージ・オーウェルからデヴィッド・ボウイやルー・リードやゴッホまでと、未来に関するいろんな発言引用からはじまる最新号、今回の目玉は音楽と未来的ファッションの関係性に関する記事、オールドスクールのテクノ・ファンには馴染みのあるロンドンの「Lost」の主宰者のひとり、シュリー・ラシットが巻頭で長いエッセーを書いている。ほかに気を引かれるのは、ケネディー・スペースセンターがあるCape Canaveral周辺において、宇宙産業が地元民の潜在意識にどんな影響を及ぼしたのかというレポート(写真多数あり)。また、前号に引き続きフランク・ミュラーのエッセーもあったり、大駱駝艦とのコラボレーション写真、Axisレーベルの最新情報(注目のプロジェクト、The Paradoxの写真も)などなど……、かなり盛りだくさんでジェフ・ミルズに休むときはあるのかと心配になるような充実した内容。巻末には日本語訳もあるので、ぜひ、チェックしましょう。

https://www.axisrecords.com/escape-velocity-magazine/issue-three/

Paul Johnson - ele-king

野田努

 ケリー・ハンドに続いて悲しいニュースが届いた。8月4日、シカゴのハウスDJ/プロデューサーのポール・ジョンソンが新型コロナに感染し、集中治療室において死去した。1971年シカゴのサウスサイド生まれ、50歳だった。

 ポール・ジョンソンは、シカゴ・ハウス第二世代を代表するひとりで、たとえば90年代前半はオランダの〈Djax-Up-Beats〉から、ディケイドの後半はUKの〈Peacefrog〉、そして2000年代も欧州の複数のレーベルから作品を出しているように、国際的な評価の高いプロデューサーだったが、彼の主戦場はゲットー・ハウスで知られる〈Dance Mania〉であり、〈Cajual〉であり、〈Dust Traxx〉だったりと、地元のシカゴのレーベルからまるで生活必需品であるかのように大量にリリースされた12インチ・シングルだった。
 ぼくがもっとも思い入れのある作品はもちろん1996年の『Feel The Music』で、これはもう、この時期のロン・トレントやシェ・ダミエ、そしてグレン・アンダーグラウンドらの諸作と並ぶ、シカゴ・ディープ・ハウスの名盤中の名盤だろう(中古で見つけたら迷わないほうがいい)。こうした美しくソウルフルな作品を出すいっぽうで、ポール・ジョンソンはシカゴのダーティでファンキーなゲットー・ハウスの魅力も大量の12インチ・シングル(一説には300枚以上とも?)において追求した。フットワークのプロデューサーで知られるRPブーが尊敬するのもうなずける話で、当たり前だが、彼の音楽はすべてダンスのためにあったし、そのダンスには、1987年に銃で撃たれてのちに片足を失い、そして2010年の自動車事故によってもう片方の足を失ってしまう元ブレイクダンサーという経歴の、このDJすべての情熱が注がれていた。
 彼の作品のなかには、1999年のいちど聴いたら忘れられない“Get Get Down”のようなメインストリームでのヒット曲もある。ダフト・パンクのヒーローでもあったポール・ジョンソンは、両足を失ってからも精力的にDJを続け、作品を出し続け、そしてシカゴの素晴らしいグルーヴを世界中に撒き散らしていた。誰でも入っていける彼の音楽は、もちろんこの先も多くの人たちをダンスさせるだろうし、変わりなくシカゴの魅力を伝えていくのだろう。

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渡部政浩

 すこし記憶をたどってみる。たぶん、僕がこのシカゴのレジェンドを知ったのは高校生のころ、ダフト・パンク“Teachers”を聴いたときのことだったと思う。機械的なビートとベースにのせて、ハウス・ミュージックにおいて重要な役割を果たしてきたシカゴのDJたちの名前が、まずは「ポール・ジョンソン」にはじまり、そこから「DJファンク、DJスニーク、DJラッシュ……」と、たんたんと歌われてゆく(語られてゆく、と言うべきか)。あるいは、ダフト・パンクが1997年に提供したBBC Essential Mixにおいて、自身の曲やパリ、デトロイトを織り交ぜつつ、そこにはDJディーオン、ジャミン・ジェラルド、ロイ・デイヴィス・ジュニア、カジミアのようなゲットー・ハウス、シカゴ・ハウスへの敬意があり、なによりこのすばらしいミックスはポール・ジョンソンの“Hear The Music”で幕を上げたのだった。

 偶然にも、“Teachers”とミックスのはじまりはどちらもポール・ジョンソンだったわけだが、当時の僕はといえば、彼のこのサンプル・ヘヴィーなハウス・ミュージックにすぐ入れ込んだわけではなかった。むしろ、EDMが全盛をきわめていた学生時代において、つまり過剰な上昇と下降(EDMにおけるビルドアップ、ドロップの構造)が溢れかえっていたときにおいて、彼の提供する、反復とフィルター、音の抜き差しによってテンションとグルーヴを創出するサウンドは、かなしいかな、まだ僕の耳と体ではまったく反応しなかった。が、この高校生がシカゴ・ハウスとポール・ジョンソンを教えられた(Teaching)ことによって、そのときはなにもわからなかったとしても、時を経て、ときおり迂回しながら、すこしづつ理解していくことで、僕の音楽体験はのちのちおおきな広がりをみせることになる。彼の音楽に出会っていなければ、僕は90年代のシカゴにおける素晴らしいハウス・ミュージック――ゲットー・ハウスよりもディープ・ハウスを好んで聴いていた――をほぼ知らずに過ごすことになったのだ。そう思うとすこしぞっとする。

『Feel The Music』をいまでもときおり家で流すが、このシカゴから鳴らされるサウンドが、宝石のようなディープ・ハウスの集まりであるという事実は、僕にとってはささやかなことに過ぎない(もちろん、めちゃくちゃ好きだけど)。それ以上にポール・ジョンソンは、まだ遭遇したことのない音を聴かせてくれたひとりだったし、アンダーグラウンドなダンス・ミュージックへ招待してくれたきっかけだったのだ。

 高校生から大学生にかけての、僕のこの個人的な経験はかけがいないものだ。つまり、まったくわからなかったものがわかるようになること、まったく駄目だと思っていたものが素晴らしく聴こえるようになること、その過程に音楽の重要な喜びのひとつがあると思うし、ポール・ジョンソンの音楽は、僕にその経験をさせてくれた。アンダーグラウンドな音楽に魅力があることも、ほんとうに素晴らしいものはときに理解し難いということも、ハウス・ミュージックは最高だということも……すべて、いまでは僕にとって自明のように感じられることだが、それは彼の音楽がひとつのきっかけとなって、僕の体に染み込んでいる考えなのだと思える。いろいろなことを教えてくれました、ありがとう。

Phew - ele-king

 先日ニュー・アルバム『New Decade』のリリースがアナウンスされた Phew ですが、嬉しい続報です。10月22日に発売される日本盤CDと輸入盤LP、それぞれにTシャツ付きの限定盤が登場! ディスクユニオンのみで購入できます。どちらもS、M、L、XLの4サイズあり。数に限りがあるため、早めに予約しておきましょう。

Phew、ニュー・アルバム『ニュー・ディケイド』のTシャツ付限定盤をディスクユニオン限定で発売!

Phewのニュー・アルバム『ニュー・ディケイド』(New Decade)のTシャツ付限定盤がディスクユニオン限定で発売されることとなった。Tシャツのデザインは、ニュー・アルバムのアートワークを手掛けた鈴木聖、写真は塩田正幸によるもので、対象商品は日本盤CDと輸入盤LPとなり、オリジナル商品と同様10月22日に発売される。

Traffic / MUTEレーベルよりワールドワイド・リリースされるニュー・アルバム、現在は第一弾先行シングル「Into The Stream」が公開されている。日本盤CDには、20分以上にも及ぶドローン作品「In The Waiting Room」がボーナス・トラックとして収録される。

■ディスクユニオン 予約リンク
https://diskunion.net/jp/ct/news/article/0/98955

■第一弾先行シングル「Into The Stream」ミュージックビデオ
(青木理紗監督)
https://youtu.be/K060lQ7sEAU

■ニュー・アルバム詳細
https://trafficjpn.com/news/phew-2/

■プレスリリース抜粋
「感傷的なものは排除したかった」と語る、約30年ぶりにMuteから発売されるアルバム『ニュー・ディケイド』は、世界の、自己陶酔する偽物たちへの彼女からの断固たる反撃なのだ。「今の状況を考えると、私はラッキーだったのかもしれません。昨年は特に、生きているだけでもある意味、幸運という状況でしたから。ミュージシャンやアーティストとして、自分の気持ちを率直に語ることができるのは、このような状況下においてはある種の特権であり、それを濫用してはいけないと感じました」

「30年前には、“ニュー” という言葉は、進歩や物事がよくなることの同義語でした」と、80年代のバブル期の日本が熱狂した拡大主義を思い出して、Phewがいう。「今はもう、そんな事は信じていません」そして、このアルバムを通して、時間の認識についての、緩いコンセプトが流れているのだという。「80年代、そして90年代までは、物事が過去から現在、未来へという流れで進行していましたが、特に21世紀が始まって以来、その流れが変わってしまったと感じます。個人的には、現在から連なる未来というものが、見えなくなってしまいました」

*プレスリリース全文
https://trafficjpn.com/news/phew-pr/

■商品概要

アーティスト:Phew (Phew)
タイトル:ニュー・ディケイド:Tシャツ付限定盤(New Decade: Limited Edition with T-Shirts)
発売日:2021年10月22日(金)

Tracklist
1. Snow and Pollen
2. Days Nights
3. Into the Stream
4. Feedback Tuning
5. Flashforward
6. Doing Nothing
7. In The Waiting Room (日本盤CD:bonus track)

●仕様: 日本盤 CD+T-SHIRTS

定価:5,450円(税抜)
サイズ:S、M、L、XL

●仕様: 輸入盤 LP+T-SHIRTS

定価:6,264円(税抜)
サイズ:S、M、L、XL

*Tシャツ・サイズ、品盤など詳細
https://trafficjpn.com/releases/phew-new-decade-shirts/

[ディスクユニオン 予約リンク]
https://diskunion.net/jp/ct/news/article/0/98955

■プロフィール

伝説のアート・パンク・バンド、アーント・サリーの創設メンバーであり、1979年解散後はソロとして活動を続け、1980年に坂本龍一とのコラボレーション・シングルをリリース、1981年には、コニー・プランク、CANのホルガー・シューカイとヤキ・リーベツァイトと制作した1stソロ・アルバム『Phew』を発売。1992年、MUTEレーベルより発売された3rdアルバム『Our Likeness』は、再びコニー・プランクのスタジオにて、CANのヤキ・リーベツァイト、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンのアレックサンダー・ハッケ、そしてDAFのクリスロ・ハースと制作された。2010年代に入り、声と電子音楽を組み合わせた作品を次々に発売し、エレクトロニック・アーティストとしても世界的評価を高めた。ピッチフォークは「日本のアンダーグラウンド・レジェンド」と評している。また、アナ・ダ・シルヴァ(レインコーツ)、山本精一(ex. ボアダムス)等とのコラボレーション作品も発売。2021年10月、最新ソロ・アルバム『ニュー・ディケイド』はTraffic/Muteより世界発売。

https://www.instagram.com/originalphew007/
https://twitter.com/originalphew
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