ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Helen - Linda's Head | ヘレン
  2. interview with Adrian Sherwood and Nightmares On Wax UKダブ・“トーク”・セッション | ――エイドリアン・シャーウッド×ナイトメアズ・オン・ワックス特別対談
  3. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  4. Black Marble - Life in Small Spaces | ブラック・マーブル
  5. Gaku Kiishi ──『サイコ』『オーメン』『シャイニング』『リング』から『8番出口』『バックルームズ』まで、ホラー映画の音楽を分析する1冊が刊行
  6. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  7. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  8. Horse Lords - Demand to Be Taken to Heaven Alive!  | ホース・ローズ
  9. アンビエント/ジャズ マイルス・デイヴィスとブライアン・イーノから始まる音の系譜
  10. 食品まつり a.k.a foodman - HIKARIGASASHIKOMU
  11. Columns ♯17:もしもパンクがなかったら ——その基礎知識と『パンク50周年記念号』刊行のお知らせ
  12. The Clash ——ザ・クラッシュ、結成50周年記念ベストがリリース
  13. Bicep ——バイセップが3つの新曲で、フリー・パーティ、レイヴ、サウンドシステム文化を主張する
  14. Klara Lewis - Opening | クララ・ルイス
  15. interview with Actress UKテクノ界の奇才が語るみずからの哲学 | ──アクトレス、インタヴュー
  16. RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI AMBIENT KYOTO - TOKYO -
  17. Robert Del Naja ──マッシヴ・アタックの3D、二度目の逮捕
  18. Malaria! ——80年代初頭の西ベルリンから、ポスト・パンク/アヴァンギャルド・シーンを象徴する最重要バンド、マラリア!再発
  19. Arca - XXXXX
  20. Helen - The Original Faces  | Grouper、グルーパー、ヘレン
/home/users/2/ele-king/web/ele-king.net/

Home >  News >  RIP > K-Hand

RIP

 デトロイトのテクノ/ハウスのDJでありプロデューサーとして知られるK-ハンド(ケリー・ハンド)が逝去したことが8月3日に判明した。死因は現在不明だが、親しい友人によって確認されたという話だ。56歳だったというから、デトロイト・テクノのオリジネイターたちとほとんど同じ世代になる。黒人女性DJがまだ珍しかった時代からおよそ30年以上にわたって活動してきた彼女の死に、世界中から哀悼のコメントが寄せられている。

 デトロイトで生まれ育った彼女は、80年代にはNYのパラダイス・ガラージ、シカゴのミュージック・ボックスといった伝説のクラブに通うことで最良のダンス・ミュージックを吸収した。地元デトロイトの電話会社で働きながらDJをはじめ、そして1990年には自分のレーベルを立ち上げて作品を発表するようになると、1993年にレーベル名を〈Acacia Records〉と改名し、K-ハンド名義としてのトラックをリリースしていく。日本で彼女の名前が知られるようになったのも〈Acacia〉以降で、とくにクロード・ヤング(凄腕のDJで、初期の彼女における共作者)とのスプリット盤「Everybody」は初期の人気盤だった。
 90年代の彼女のトラックの特徴のひとつはシカゴのアシッド・ハウス風の野太いリズムにあり、1994年に〈Warp〉からリリースされた「Global Warning」にもその個性は活かされている。ちなみに同タイトルは気候変動に警鐘を鳴らしているのではなく、当時のダンス・カルチャーの勢いを表現しているであろうことは、同曲のサンプリング・ソースにいちばん良い時期のラヴ・パレードのテーマ曲(Der Klang Der Familie )があることからもうかがえよう。
 初来日は1995年のYellowだったか。ぼくが彼女のDJを最後に聴いたのは、 もうずいぶん前の話で、2001年にデトロイトのハートプラザで開催されたDEMF期間中のことだったが、その年に彼女は〈Tresor〉から『Detroit-History Part 1』という同フェスティヴァルに捧げたアルバムをリリースしている。テクノ、ゲットー、アシッド、ディープ・ハウスなど、いろんなスタイルの楽曲を作ってきたケリー・ハンドだが、テクノ系で1枚選べと言われたら、ラリー・レヴァンとケン・コリアーの思い出にも捧げられ、彼女をサポートしたURとジェフ・ミルズへの感謝が記されている同作品になるだろう。シングルで1枚と言えば、迷うことなく2004年に〈Third Ear〉からリリースされた「Moody EP」だ。彼女の最高のディープ・ハウスが聴けるこの4曲入りは、音楽的にはデトロイト・ビートダウンにリンクしている。
 それにしてもあれだけ強烈な個がひしめくデトロイトのアンダーグラウンド・シーンで早い時期からレジデンシーとなり、DJプレイをもって頭角を表すことは並大抵のことではなかったと推察する。デトロイトのファーストレディが切り拓いた道は、むしろこれから先の未来においてより評価されていくのだろう。ほんとうにお疲れ様でした。

K-Hand Best 11 - Selected By M87 a.k.a everywhereman

1. Etat Solide - Think About It 〈UK House Records〉(1990)

自身のレーベル(後に 〈Acacia Records〉へと改名)からの別名義による初リリース。タイトル曲(Sous-Terrain Mix)のブリーピーなド変態ベースがスゴい。

2. K. Hand Featuring Rhythm Formation - Rhythm Is Back 〈Acacia Records〉(1993)

みんな大好きJoey Beltram「Energy Flash」のベースラインを堂々と引用し、彼女のとびきりファンキーな才能を世に知らしめた傑作。

3. K. Hand / Claude Young - Everybody / You Give Me 〈Acacia Records〉(1993)

女声サンプルが連呼する「Everybody」は、オランダの 〈EC Records〉にもライセンスされ、全世界のフロアで轟いた。地元デトロイト・イーストサイドの後輩、Claude Youngの出世も後押し。

4. K HAND - Global Warning 〈Warp Records〉(1994)

〈Warp〉からの唯一のリリース。「Der Klang Der Familie」のお馴染みフレーズをサンプリングしたタイトル曲は、石野卓球氏もお気に入り。

5. K. Hand - Acid Nation 〈Loriz Sounds〉(1995)

盤面に自らが主宰するレーベルのロゴがデカデカと印刷されたピクチャーディスクにてリリース。アシッドベースの名士ぶりを発揮している。

6. K-Hand / Graffiti - Roots / Graffiti's Theme 〈Sublime Records〉(1996)

デトロイト・テクノのアーティストにヒップホップを製作してもらうという企画の一環。愛機、MPC3000を駆使したディープなトラックで新境地を見せてくれた。

7.K. Hand - Project 69 EP 〈Acacia Records〉(1997)

スカスカのリズムトラックと無慈悲なボイス・サンプルが、シカゴの〈Dance Mania〉の作品群と同じ匂いを漂わせる。彼女の心は常にゲットーと共にあった。

8.K. Hand - Project 5 EP 〈Acacia Records〉(1997)

Mike Banksから伝授されたアングラ魂が発する実験的な土着グルーヴは彼女そのもの。収録曲「Candlelights」は、02年に<LIQUIDROOM>にて開催されたURのパーティでRed PlanetなるDJがプレイ。

9.K. Hand - Supernatural〈Pandamonium〉(1999)

KDJの盟友として知られるサックス奏者Norma Jean Bellが主宰するレーベルから。デトロイトのシンガー、Billy LoことBill Beaverが作詞を手掛けたソウルフルな逸品に仕上がっている。

10.K. Hand - Detroit-History Part 1 〈Tresor〉(2001)

地元デトロイトへの感謝を込めて制作された集大成アルバム。裏ジャケには、Carl Craig、Larry Levan、Ken Collier、Mike Banks、Jeff Millsといった先達への謝意も記されている。

11.K-Hand - Project 6 EP 〈Acacia Records〉(2017)

Bee Geesネタの「You Stepped Right Into My Life」では、往年のディスコからのサンプリングも得意とする彼女の才能が炸裂。自らのレーベルからは本作が最後のリリースとなった。

野田努、M87 a.k.a everywhereman

RELATED

NEWS