以下は、デトロイトに住む詩人、ジェシカ・ケア・ムーアのインタヴューである。彼女は黒人女性文学者として多くの著作があり、また数々の文学賞も受賞しているが、そのなかにはNAACP(全米黒人地位向上協会)やDetroit Institute of Artsからの表彰もある。オハイオ大学の米文学教授が2005年に編んだ黒人女性文学のアンソロジー『Anthology of African American Women's Literature』にも、アリス・ウォーカー、トニ・モリソン、ニッキ・ジョヴァンニ、オクタビア・バトラーらの作品に混じって、彼女の詩も掲載されている。1971年生まれの彼女は、当時そのなかでもっとも若い。
活動家でもある彼女がこの間忙しかったことは言うまでもない。しかし、いま起きていることを理解するためにも現地の黒人の声を聞きたかったし、それが女性ならなおさら良かった。また、ちょうど彼女は7月にリリースを控えているジェフ・ミルズの新しいプロジェクト、ザ・ベネフィシアリーズ(The Beneficiaries)のアルバム『The Crystal City Is Alive』に参加していることもあって繫がりやすい。エディ・フォークスもトラックを提供しているこの作品で、彼女はポエトリー・リーディングをしている。ちなみに彼女は、サイレント・ポエツの1997年の作品『For Nothing』にも1曲参加している。その曲“This Is Not An Instrumental”は受けがよく、4ヒーローとナイトメアズ・オン・ワックスのリミックス・ヴァージョンもある。
通訳を引き受けてくれた魚住洋子さんはマイアミ、ジェシカはデトロイト、そしてぼくは東京と3都市を結んでの取材は、日本時間の午前10時、現地時間の午後21時にはじまった。彼女はじつに情熱的に、そして貴重な話をしてくれている。米文学、とりあえず黒人文学に興味がある読者は彼女の詩集もチェックしましょう。
私は若い人たちがストリートに出て行動を起こしていることを誇りに思っています。私自身もかつてなんどもそういった行動を起こしてきましたから。
■デトロイトでのスピーチの様子をfecbookにアップされている動画で見ましたが、まず、アメリカ全土および日本や欧州でも熱くなっている抗議運動のなか、あなた個人はどんなことをしていたのでしょうか?
ジェシカ:私はアーティストとしてノンストップで活動しています。まずはCovid-19の影響で(最新作の)ツアーはすべてキャンセルになってしまい、方向転換してオーディエンスとオンラインで繋がる方法を模索せざるを得ませんでした。それが最初のパンデミックでした。そしてレイシズムのパンデミック……。
これはアメリカでは新しいことではない。私は自分のキャリアを通して、レイシズムやセクシズムのテーマは取り上げ続けています。ジョージ・フロイドのような事件はアメリカでは常に起きているんです。今回、Covid-19を避けるために世界中の人が家にいて、あの影像を目の当たりにしたのです。ジョージ・フロイドだけではなくアマード・アーベリーやブリアナ・テイラーの映像を見ると、さらに不安を掻き立てられます。私は若い人たちがストリートに出て行動を起こしていることを誇りに思っています。私自身もかつてなんどもそういった行動を起こしてきましたから。
私個人はいまそれとは違った行動をとっています。今日は若いエレクトロニック・ミュージックのプロデューサーのOmari Jazzと有名な詩人Ursula Ruckerを私のインスタグラムのショウに招いて話し合います。自分が何をしているかだけでなく、25歳の若者が何をしているのかを知ることはエキサイティングです。これは彼らのムーヴメントだから。これは彼らの市民権運動であり、彼らにとっての1992年LA暴動なのです。
ただ今回特別なのはCovid19による危機があり、すでに人道的危機に疲れ果てた人たち──ヘルスシステムの危機と人道的危機は関連していますから──怒りを爆発させたんでしょう。
アーティストのなかにはツアーがなくなりお金も稼げない、この際家にこもってリラックスしようとおとなしくしている人たちもいます。私は全力を尽くそうとしています。いまアーティストの存在が必要だと感じるからです。今日、ジェフが“The Crystal City Is Alive”のMVをインスタにアップしたのを見て、興奮していろいろな人に転送しました。アートがいま私たちに与えてくれるもの──バランス、少しばかりの喜び、反抗の音楽──これらがいま私たちが必要としているものです。エレクトロニック・ミュージック、ポエトリー、ヴィジュアル・アート、ダンスなどあらゆるフォーマットのアートによって。いまこの状態に反応しているアーティスト、それはこのインタヴューも含めて、私たちをコネクトする役割を担っています。私は人びととコネクトし続けることを選択しました。私は疲れています。でもやらなくてはなりません。ずっと忙しくしています。
■こういうときこそ、アーティストとして声を上げることは重要だと考えていますよね?
ジェシカ:私がアーティストとして声を上げているのは確かです。それが効果的だと思っていますし、ファーガソン事件(※2014年のミズーリ州ファーガソンにおいて18歳の黒人青年マイケル・ブラウンが白人警察官によって射殺された事件)が起きたときには、ファーガソンを訪れてラッパーのTalib Kweliとプロテストに参加しました。あのときはしばらくファーガソンに滞在して、自分がどのような役に立てるか模索しました。しかし今回はCovid-19の影響で、母親として息子の安全のため、ストリートに出てプロテストに参加することを控えています。私の母は75歳で、彼女の安全も考えなくてはなりません。普段だったらすぐにストリートに出ていくところですが、Covid-19で多くの知り合いを失いました。マイク・ハカビーのことは知っていると思いますが、私の友人でも親や兄弟を亡くした人もいます。だから今回はちょっと不安なのです。
白人の友だちからも「いま自分たちにできることは何か」と訊かれます。いまの世代の白人が行動を起こしてくれることに期待しています。レイシズムはアメリカ黒人の問題ではなく、アメリカ白人の問題だからです。黒人は犠牲者ですが、問題を起こしたのは私たちではありません。状況を改善するためには黒人の力だけではどうにもできません。
私は毎週日曜日に会社の役員など、ある意味コミュニティに精通していない人たちと話し合う機会を設けています。私の最新作(『We Want Our Bodies Back』)はサンドラ・ブランド、交通違反で警察に逮捕されて刑務所の中で自殺をした女性に関するもので、その詩をこういったミーティングで朗読し、メッセージが人びとの心に届くよう務めています。
また“I Can’t Breathe”(※2014年にジェシカが書いた作品)という詩は今回大きなインパクトを与えています。この詩はエリック・ガーナーが殺されたときに作ったものですが、ジョージ・フロイドの最後の言葉でもあり、今回さまざまな機会で披露しています。この詩は母親の観点から語られていて、この国で黒人と息子を育てる気持ち、どのようにしたら安全に暮らして、彼らの目標を達成することができるのかを語っています。この詩に触れた人たちが気持ちをひとつにして、この国で起きていることを理解することに役立っています。私はこのようにして自分の声を聞いてもらっている。

13歳の息子がなぜビルに火をつけるのかと訊いてきました。どんな意味があるのかと。ビルに火をつけるのは暴力に対する反応だと答えました。彼らが暴力的なのではなく、暴力の犠牲になったのに誰も何もしてくれないことに対する反応だと。
■いまや#BlackLivesMatterはアメリカの外側にも広がりつつありますが、この運動に関するあなたの評価を教えてください。
ジェシカ:#BlackLivesMatterは必要です。とはいえ、いまプロテストに参加しているのはBlackLivesMatterだけではなく、多くの白人もいます。BlackTransLivesMatter(黒人トランスジェンダー)、BlackWomanLivesMatterなど、他の団体や影響を受けた人たちが多く参加していることも忘れてはいけません。#BlackLivesMatterデトロイト支部から何か一緒にやらないかと連絡をもらったこともありますし、このムーヴメントは必要なものです。いま、人間性のためにすべての人間が必要です。沈黙は許されません。私の75歳の母はワシントンでトランプ大統領が教会の前で聖書を持った写真を撮るだけのために罪のない若者に向かって催涙ガスを発射したことに涙しました。聖書なんかきっと読んだこともないくせに。母は17歳でカナダから移住し、父と異人種間結婚をして、人種隔離やさまざまな苦労を経験してきました。キング牧師と一緒にマーチしたこともあります。すでに戦ってきたはずなのに2020年のいま、またこうして戦わなくてはならないことは年配の世代にもかなりのトラウマとなっています。
Defund Police (警察の予算削減)運動がいま広がっていますが、私はこれに賛同します。すでにミネアポリス警察が予算削減を明言したのは革命的でエキサイティングなことです。私が学生だったとき、警察は学校の一部でした。警察が学校に常駐すべきではありません。プリズン・カルチャー(刑務所のような環境)がそこで生まれます。14~15歳の子供が警察に監視されている環境に慣れてしまうのはおかしい。これは黒人その他有色人種が多い学校に限られています。学生がもっと高いレベルの教育を受けられるようにすること、優れた才能ではなく労働力を生み出すことを目的とした現状の教育を改善すること、それが重要です。
私の息子(※すでに詩人としてデビュー)はクリエイティヴな仕事に就くでしょう。でもそれは社会が望んでいることではありません。(アメリカ社会は黒人に)マクドナルドで働くのでよしとされているのです。教育レベルがあがれば犯罪は減ります。メンタル・ヘルスに予算を費やせば犯罪は減ります。なぜこの国はそういったことに注目しないのでしょうか。アメリカには資源も設備もあるのに、心がないのです。心を取り戻すことが今回のムーブメントの中心で、だから人々は自分の健康の危機も顧みずにプロテストしているのです。
■抗議運動で、破壊や略奪の映像が日本でも流れましたが、警察といっしょ手を組んで行進しているような平和的なデモの映像も流れるようになりました。あなた自身は、平和的なデモを志向していることと思いますが、ああしたバイオレンスは、あなたにはどう写っていますか?
ジェシカ:警察がバイオレントなのです。アメリカは残念ながらバイオレントなところです。13歳の息子がなぜビルに火をつけるのかと訊いてきました。どんな意味があるのかと。ビルに火をつけるのは暴力に対する反応だと答えました。彼らが暴力的なのではなく、暴力の犠牲になったのに誰も何もしてくれないことに対する反応だと。例えば私が火に包まれているのと、ビルが燃えているのを同時に見たら、どちらを助けるかと息子に尋ねました。命がある私と、物質でしかないビルと。ビルに対しての暴力は人間の命とは比べものにならない。トランプ大統領が写真を撮った教会も暴力の犠牲になりました。でも教会の人たちは保険もあるしビルは再築できると言いました。でも亡くなった人の命は戻ってこないんです。
この国は貧富の差が激しく、バランスが欠けている。恵まれた人たちが「大人しく抑圧されていればいい」というのは簡単です。私自身は犯罪を犯したことはありません。でも警察官が自分の後ろにいると自動的に不安感を覚えます。何も悪いことはしていません。単なる詩人です。でも警察官が私の車を止めれば恐怖を感じます。そのような背景で育っていない人には理解できないでしょう。これは黒人全員が持っている不安感です。
私が仕事で出張して、ときには海外に数週間いることもあります、息子が家に残っていることが心配で、むしろ自分とともに連れてきたいと思います。これは本能的に感じるもので、トラウマなのです。ジョージ・フロイドに起きたこと以上に暴力的なことはありません。黒人は何世紀にもわたって、その恐怖を背負ってきているのです。私たちは困憊しています。どこかの時点で、どんな手段を取ろうとも、この重荷から逃れたいと思っていて当然でしょう。それまでにいったい何人が殺されなくてはならないのでしょうか。ジョギングの最中に、武器も持っていないのに。なぜ、誰かの息子、娘が死ななくてはならないのか。何の意味もなく。
私の世代は、いままでにも同じことが起きてきたことを知っています。でもいまはiPhoneがある。ビデオを撮ることができる。警察の改善は大昔に行われなくてはならなかったのです。権力を持ちすぎていて、軍隊のようになっている。デトロイトのウェイン州立大学の警察は軍装備を備えています。 何のために? 大学内をパトロールするのが仕事ではないのか? なぜ軍の装備が必要なのか? これがPolice Defundムーヴメントの骨子です。警察を無くそうというのではありません。地方警察が軍隊化する予算を無くして、学校教育の予算に回す。
暴力とは何なのかを考えなくてはなりません。ブラック・パンサーはバイオレントではありませんでした。暴力に対する回答でした。人びとは暴力に対する答えを出そうとしているのです。
[[SplitPage]]
■あなたが、ここ10年で重要だと思うアートを教えて下さい。
ジェシカ:過去10年! たくさんあるからね。ジェフ(ミルズ)の他には……詩人はとても重要です。たぶんいちばん必要とされているけれど、いちばん儲からない(笑)。この数週間「アーティストに幸あれ」と言い続けています。いま私たちを生かしているのはアーティストの仕事だと思うから。10年間を振り返るのは大変だけど、最近思い起こしているのは……
まずはジェイムズ・ボールドウィン。いまジェイムズ・ボールドウィンは非常に重要です。とくに若い世代が彼に注目していることは心が安らぎます。
オードリー・ロード(Audrey Lorde):個人的に振りかえっている。とくに彼女は詩人の沈黙に関して書いているので。
アリス・ウォーカー:偉大な本を残している。『Take The Air Out Of The Heart』は彼女の最新作で、先祖は自分たちを見守ってくれていて私たちは孤独ではないということを書いています。
Ursula Rucker:フィラデルフィア出身の詩人で、The Rootsのアルバムに参加している。活動家でもあり、彼女の声はいまとても重要だと思う。
Mahogany Brown:詩人
Talib Kweli:ラッパー、彼の音楽はこの10年間つねに革新的。
Yassine Bey (ex Mos Def):90年代にカッティングエッジだった。 かつて革命的でも消え失せてしまうアーティストが多いが彼はとってもコンスタント。
Questlove:オンラインで彼がしていることが好き。
それから、あらゆるDJは大切です。彼らは人びとを動かすことができる。インスタグラムのフィードでのパーティさえも、朝の3時まで踊って友人たちとコネクトできる。
ほかにも……インディア・アリー(India Arie)、Black Woman Rocks(※ジェシカが組織する黒人女性によるロックのプロジェクト)で16年の間一緒に活動しているミュージシャンたち。Jackie Benson(ギター)、Kimberly Nicole(ヴォーカル)、Imani Uzuri(ヴォーカル)。Stephanie Christi’an (デトロイトのアーティスト)。Yazura……
いま挙げた人たちは必ずしもメインストリームではありません。しかし、これらの女性の声は他のアーチストにはないメッセージを感じる。どのように歌うかもですが、どのような作品を手がけているかも大切です。偉大なアーティストは多くいますが、偉大なアーティストであり、偉大な人間であることも重要です。
トム・モレロ(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン):偉大なミュージシャンであると同時に素晴らしい活動家。
ブーツ・ライリー(Boots Riley/The Coup):映画『Sorry To Bother You(邦題:ホワイト・ボイス)』 の監督でもある。革新的な精神を持つ。
私は、どんな逆境に立ったとしても革新的なスピリットを持った人が好きなんです。
Tamar-Kali:アフロ・パンクのアーティスト
私たちはみんなラディカル。ラジオプレイなんか考えてもいない。エレクトロニック・ミュージックだったらジェフ・ミルズ。反応など気にせずに、音楽を聴き手に届けることだけを考えている。こういうアーティストたちが私をインスパイアする。流れに逆らう人たちです。
『The Crystal City Is Alive』は共感を買おうと思って作られた作品ではない。息子が「このアルバムは面白いね」と言ってくれました。音楽はいままでに聞いたことがない、面白いものでなくてはならないのです。
最近の音楽にはあまり感動しません。よく昔の物をききます。マービン・ゲイからグラディス・ナイト。私はデトロイトで育ったんですから。テンプテーションズも聴くし、ダニー・ハザウェイやロベルタ・フラックは私のヘビーローテションです。私はオールド・スクールだからアナログで聴いていますよ。
この10年は90年代に比べると私にとってはそれほど興奮するものではなかったけれど、私が関わっているBlack Woman Rocksのミュージシャンたちなどが私に活気をくれています。
■いま映画の話も出ましたが、『プレシャス』はご覧になってますよね?
ジェシカ:(原作者の)サファイアは知ってますよ。ニューヨークに住んでいた頃の知り合いです。私にとっては詩人が映画化の契約を結んだということで大きな事件でした。詩人たちに希望を与えたと思います。映画は見るのが辛いものでしたけれど。
The Beneficiaries
The Crystal City Is Alive
Axis(※7月にリリース)

■(ここら小林が用意した質問に移る)今回、ジェフ・ミルズやエディ・フォークスといっしょに「The Beneficiaries 」プロジェクトをはじめた経緯を教えて下さい。
ジェシカ:Spectacles (デトロイトにあるショップ)オーナーのZanaがジェフと共通の友人で、私はZanaは18歳くらいの頃から知っているのだけれど、彼女がジェフが誰かコラボレーションの相手を探していると。私がジェフのファンであることを彼女は知っていたし、でも私はマイク・バンクスとは親しかったのだけれどジェフとは〈Movementフェスティヴァル〉のバックステージでマイクから紹介されて瞬間会っただけでした。
私はジェフ=The Wizardを聴いて育っています。エレクトリファイ・モジョとは詩の朗読で一緒だったりして知り合いになったのですが、ジェフとはまだ知り合ってなかったんです。ただ、私はジェフといつか一緒に仕事をしたいと思っていたので、実際に声をかけてもらったら、いろいろと考えてしまいました。まずはスカイプでミーティングをしたのですが、信じられない気持ちでした。ジェフに対して大きなリスペクトを持っていますが、それは私だけではなくて、まわりのミュージシャン、たぶんジェフが知らないような人たちも大きなリスペクトを抱いています。ヒップホップの世界はもちろん、Yassine Bey(モス・デフ)も「ジェフのこと知ってるの?」と興奮してました。
最初のスカイプはお互いのことをよりよく知るのが目的で、ジェフが私の弟と同じマッケンジー高校に行っていたことや、子供の頃近所に住んでいたこと、人間性をわかり合って、そのあと質問はフューチャリズムや記憶というようなトピックに移っていきました。私はアルバムのために詩を書いたことがなかったし、会話の後インスパイアされていくつかを詩を作りました。
でも最初のコラボレーションはNASAの企画(訳注:ロンドンのNTSラジオの番組をジェフが手がけNASAの協力をもらっていました)でしたよね。彼のラジオ番組のためにナレーションをして。素晴らしい体験でした。その後、レコーディングのコラボレーションをやろうということになったのです。
正直、いままでのなかでいちばん面白い印象的なレコーディング体験でした。ほとんどの場合、コラボの相手は私にビートにのって詩を朗読することだけを要求します。それじゃあまり面白くない。私が自分でプロジェクトをやる場合にはミュージシャンと私がひとつのものを一緒に作り上げていく感じにします。ジェフとの共演では彼の耳を信じて、同じ言葉を繰り返したり、囁いたりと彼のディレクションに従いました。そして彼が私の詩を区切って使用したことも良かったと思っています。私はいつもオープンマインドです。
コラボレーションは会話~エネルギー~理解というような段階を経ていきました 。私は7ページにもわたる詩を制作してジェフに送ったら「とても興味深い」というあっさりとした返事がきて、期待していた反応を違ったので、さらに7ページ違う内容の詩を作って……。でもそうやってジェフが私を後押ししてくれたことを感謝してます。彼は私の詩にインスパイアされて音楽を制作しなくてはならない。最初に送った詩は面白いけれど、音楽制作に至るほどではなかったということでしょう。結果、興味深い以上の内容の詩ができて、本当にエキサイティングなプロジェクトになったと思います。
アルバムアートワークの色やそこからくるエネルギー、すべての曲に「The Crystal City Is Alive」のメッセージが込められていること。すべてが素晴らしいと思います。
「The Crystal City」とは私にとってはデトロイト。マジカルな都市。すべての音楽がここから生まれる。ニューヨークではないけれど、デトロイトは特別なもの、大切なものがある。そして疑う余地なくブラックな都市。ソウルにあふれている。市は巨大な負債を抱えて、いま街の人たちはCovid-19で多くを失い、でも「The Crystal City Is Alive」が、「私たちは生きている」というメッセージを伝えて人びとに喜びを与えることができれば、それがいまみんなが求めていることでしょう。
悲劇と痛みが蔓延するなかで、素晴らしい未来を見ることができなければ私たちは前進できません。13歳の息子に美しい住処を提供したいし、私たちが作った国を逃げ出すという選択肢はないはずです。どこか別の国、アフリカなどに移住しようという人もいます。でもここが私たちのホーム。私のなかには西アフリカとチェロキーインディアンの血が流れています。だから誰よりもここは私の土地だと言えるし、平和に暮らす権利があるはずです。
このプロジェクトはまさしくいま、このタイミングで人びとが求めているものと言えると思います。私が期待するように人びとを感動させられれば嬉しい。
エディーとの共演も良かったです。彼の作った曲は素晴らしい。エディーとジェフがそれぞれ違ったものを作り上げたのもいいですね。すべてのテクノ・プロデューサーが「声」に対して積極的なわけではありません。マイク・バンクスとこういう話をしたときも私の言葉の数が多すぎると言われました(笑)。今回ジェフがそのバランスをうまく見つけて、ときには言葉をいくつか、あるいは詩を3行だけ使うというような、同じ言葉を繰り返し使用したりなど絶妙なバランスになっていると思います。
[[SplitPage]]

未来を考えることはいま現在起きていることを見つめることでもある。なぜならすべてはコネクトしているから。
■(小林からの質問)本作には宇宙に関係する語がよく出てきます。あなたにとって「universe」とはどのような意味を持っていますか?
ジェシカ:「Future Is Now」ですよね。未来を考えることはいま現在起きていることを見つめることでもある。なぜならすべてはコネクトしているから。
ユニバースは私にとってはつねに円形だと思っています。今回のアルバム・カヴァーもアートワークが円形にくりぬかれていて、永久を表している。人生はすべてサイクルからできているし、過去を見ることはとても大切で、過去を見ることで前進できるという考えはもともと私はとくに信じていたわけではないのですが、今回のプロジェクトで未来を考えることを余儀なくされました。
ジェフから「なぜ“いま”のことを詩にしているのか」と訊かれ「“いま”が私を必要としているから」と答えたのですが、それで未来も私を必要としているに違いないと思うようになりました。私の作品は現在の題材にしていることがほとんどですが、私の後から来る人たちが、私がそういう人たちのことも考えて制作していたということ、私の黒いボディが存在していたことは理解してもらいたいと思います。
自分の住んでいる地区から一歩も出たことがないという人がアメリカにはたくさんいます。私は旅が好きで、一箇所にとどまるということはありません。いまは年老いた母がいるのでデトロイトに戻ってきましたが、ニューヨーク、ジャマイカ、パリ、どこでも住むことができます。私はガーナやアイボリーコースト(コートジボワール)など西アフリカに関して多くの作品を書きました。でも実は一度も訪れたことはありません。 想像のなかではなんども訪れていて、すでに1997年に22歳で最初に出版された本のなかでもこれらアフリカの国に関して書いているのです。
ユニバースとはそういうことだと思います。ひとつの共同体の中に存在する。でも音楽などは時間や空間を超えて存在することを可能にする。
ジェフとは“記憶”に関して面白い会話をしました。ある日目覚めて、すべての記憶を失っていてゼロから再出発しなくてはならないのと、逆にすべての記憶を忘れることができないのとどちらがいいかと。私は記憶を保っていたい、自分が何者なのかを子供に伝えたい、自分が経験してきたことがいまの自分を作っているということを忘れずにいたいと思います。父のことも忘れたくないし。人生のなかの大切な人を忘れたくない。私は前世や先祖の存在なども信じています。人は肉体的に死んでも、エネルギーは残ると思っています。これが質問の答えになったかわからないけれど(笑)。
■(小林からの質問)“The X” には「We are the future Afropologists finding Sanctuary in the meditation of sound waves」というフレーズが登場します。「afropologist」とは、アフリカ系の人びとの文化を掘り下げる人類学者、ということでしょうか?
ジェシカ:「afropologist」は言葉の遊びです。「Anthropologist」と「Afrofuturism」を掛け合わせています。アフロフューチャリズムを考えつつ、過去を探すために発掘をする、というような意味です。

■最後に、フェミニズムについての意見を訊かせてください。
ジェシカ:私は自分は「Womanist」だと名乗っています。これはアリス・ウォーカーが提唱した言葉です。ウーマニズムに関して語ったベル・フックス(Bell Hooks/活動家)は私のヒーローのひとりです。私はフェミニズムには非常に若い年齢、小学校高学年で本を通して出会っています。フェミニズムは女性とその権利を守る運動です。私は男性が多い家庭、父の前の結婚での兄弟が3人、実の兄弟が2人のなかで彼らに守られて育ちました。いまの世のなかではフェミニズムでは十分ではありません。ジョージ・フロイドはフェミニズムによって守られてはいないから。それが私にとっては問題です。
ウーマニズムは家族も含めるので、私にはよりしっくりきます。私には兄弟も父も大切です。女性の権利向上のためのマーチは素晴らしいです。でもファーガソンのプロテストに行ったときに犠牲者の母親に出会って、子供を失った母親の悲しみを目の当たりにしたとき、そこにフェミニストの活動家はいませんでした。私にとってはウーマニズムの考えの方がフィットしています。私は家族の観点から語ります。コミュニティ全体が大切です。そこにはもちろん女性が含まれます。
もちろん女性の声をサポートしていくし、アメリカだけではなく世界では女性が声をあげられない国もたくさんあります。私が南アフリカに行ったとき、私が大きな声で力強く発言しているのを小さな女の子が宇宙人でも見るような目で見ていました。一緒に行ったヒップホップの男性アーティストと同等に私が語り、女性を代表している。とても重要なことですが、フェミニズムという言葉はちょっとトリッキーです。
■コミュニティのなかの個人みたいな感覚でしょうか?
ジェシカ:(フェミニズムは)男性を含まないから。グーグルなどで調べることもできると思うけれどウーマニズムはもっとコネクションを大切にします。アリス・ウォーカーはこう言いました。ウーマニズムはフェミニズムの紫色に比べてラベンダー色だと。ウーマニズムはジョージ・フロイドも話題として取り上げるでしょう。私にとって、黒人男性の命は非常に大切なことです。息子の母親として、息子が無事に生き延びていくことが重要です。もちろんフェミニズム賛成、女性賛成です。が、同時にファミリー賛成です。黒人女性として黒人男性とともに生きていくことはとても大切なことです。
もちろん黒人女性は白人女性に比べて賃金が低いのは事実だし、まだまだ戦っていかなくてはなりません。ただウーマニズムの方が排他的ではないということです。
(6月10日、ZOOMにて取材)








