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野田努 Sep 20,2019 UP
E王

 ワイリーとハドソン・モホークとの出会い? さもなければカニエ・ウェストとAFXとの鉢合わせとか? まあ、なんでもいいが、イグルーゴースト(Iglooghost)、カイ・ウィストン(Kai Whiston)、ベイビー(BABii)の3人からなるグルー(Gloo)のデビュー・アルバムは、UKクラブ・ミュージックのルーキー・オブ・ジ・イヤー間違いナシの傑出した1枚である(そう、CDを買ってしまった。正確にはシングルCDも付いて2枚です)。
 ルーキー? 厳密にいえば、彼らは新人ではない。おそらく中心になっているのはカイ・ウィストンで、昨日マーキュリーを受賞したデイヴと同じ世代(1学年下?)で、つまり圧倒的に若い。が、この男はすでに〈Big Dada〉から1枚シングルを出していて、昨年はソロ・アルバムを出している。『Kai Whiston Bitch』というのがそのタイトルなのだが、じつにこれも勢いのある、エネルギッシュかつ実験性とポップさを備えたアルバムなのだ。昨年のロテックのアルバムにも通じるモダンIDMであり、アヴァン・テクノであり、エクスペリメンタル・ヒップホップであり、まあ、なんでもいいが、しかし正直にいうと、ぼくは彼らの感性を理解するのに少々時間を要したのである。

 もちろんそれはぼくが年寄りだからにほかならない。彼ら20歳ぐらいの感性によるある種の過剰さは、90年代においてリチャード・D・ジェイムスがやったことと(スタイルは違えど)意味的には似ている気がする。つまり、もしいま日本で現代の『ファンタズマ』を作りたいなどという野心を持った若者がいたら、このあたりを参照のひとつにすると良いだろう。
 イグルーゴーストもまた……90年代に〈Rephlex〉がやったことを現代の文脈でやっていると言えそうだ。ケンモチヒデフミのライヴァルというか、フットワークの実験的かつポップな解釈であり、彼のシングルは〈Brainfeeder〉から2枚出ている(ということは〈Brainfeeder〉はいま〈Rephlex〉的な役目も負っているのだ)。ベイビーはGlooのヴォーカリストで、アルバム『XYZ』には90年代風R&Bが引用されているが(そういえば、JPEGMAFIAの新作にはTLCのメガヒット曲のカヴァーがあった)、もちろん彼らのトラックはノスタルジーには見向きもしない。これはたった“いま”起きていることで、そう、時間は止まってはいない。まったく素晴らしい『XYZ』だが、ひとつだけ難点があるとしたら、このアルバムはぼくに自分が年老いたことをこれでもかと知らしめるということである。このさいソランジュも忘れましょうや。

野田努